説明

ショベル系建設機械

【課題】解体作業機のようなショベル系建設機械において、機体の安定性を確保するための制御システムを設ける場合に、作業範囲が狭くなってしまうことを回避する。
【解決手段】機体の安定性を確保できる破砕機8の許容作業範囲を設定する場合に、下部走行体2に対する上部旋回体3の旋回位置を検出する旋回位置検出手段(旋回角度検出用プレート18a、18b、近接スイッチ19)を設け、該旋回位置検出手段により検出される旋回位置に基づいてクローラ20の前後方向に対するフロント作業機4の向きを判定し、該フロント作業機4の向きに応じて許容作業範囲を広狭変更する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の安定性を確保するための制御システムが設けられたショベル系建設機械の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ショベル系建設機械は、クローラ式の下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に支持される上部旋回体と、該上部旋回体のフロント部に装着されるフロント作業機とを備えると共に、該フロント作業機は、基端部が上部旋回体のフロント部に上下動自在に支持される作業腕の先端部に各種作業アタッチメントを装着して構成されるが、この様なショベル系建設機械の一つとして、ビル等の解体を行なうための解体用アタッチメントが装着された解体作業機が知られている。
ところで、前記解体作業機では、高所での解体作業を容易に行なえるように、例えば、ブームと多関節アームとからなる長尺の作業腕が用いられるのが一般的であるが、この様な長尺の作業腕を用いた場合には、フロント作業機が機体バランスに及ぼす影響が大きいため、解体用アタッチメントの位置によっては機体バランスが損なわれてしまう惧れが生じる。
そこで従来、ブームおよびアームにそれぞれ角度検出器を、また車体にコントローラを設け、角度検出器からの検出信号に基づきコントローラにおいて作業機全体の重心位置と、下部走行体の接地面における安定支点の支持力を演算し、該支持力値を表示器に表示すると共に、支持力が安全作業確保上の限界値以下になった場合に警報を発するように構成した技術が提唱されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平7−247578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前述したショベル系建設機械においては、上部旋回体を旋回させることによってクローラに対するフロント作業機の向きが変わり、これに伴いフロント作業機が機体バランスに及ぼす影響も異なってくるが、特に、前述した長尺の作業腕が用いられている解体作業機のようなショベル系建設機械にあっては、フロント作業機がクローラの前後方向に対して同方向を向いている場合と横方向を向いている場合とでは、フロント作業機が機体バランスに及ぼす影響が大きく異なることになる。しかるに、前記従来のものでは、クローラに対するフロント作業機の向きが異なっても演算される支持力は同一であるため、安定性の悪い場合、つまり、フロント作業機がクローラの前後方向に対して横方向を向いている場合を想定して機体安定性を判断せざるを得ず、このため、フロント作業機がクローラの前後方向と同方向を向いているときには機体安定性が確保されているにも関わらず警報が発せられる場合が生じ、作業アタッチメントの作業範囲が狭くなって作業効率に劣るという問題があり、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、クローラ式の下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に支持される上部旋回体と、該上部旋回体のフロント部に装着されるフロント作業機とを備えると共に、該フロント作業機を、基端部が上部旋回体に上下揺動自在に支持される作業腕の先端部に作業アタッチメントを装着して構成してなるショベル系建設機械において、該ショベル系建設機械に、作業アタッチメントの位置を検出するアタッチメント位置検出手段と、機体の安定性を確保できる作業アタッチメントの許容作業範囲を設定する作業範囲設定手段と、作業アタッチメントの位置が許容作業範囲内であるかを判断する判断手段とを具備した制御システムを設けるにあたり、該制御システムに、下部走行体に対する上部旋回体の旋回位置を検出する旋回位置検出手段を設けると共に、前記作業範囲設定手段は、旋回位置検出手段により検出される旋回位置に基づいてクローラの前後方向に対するフロント作業機の向きを判定し、該フロント作業機の向きに応じて許容作業範囲を広狭変更することを特徴とするショベル系建設機械である。
請求項2の発明は、作業範囲設定手段は、フロント作業機がクローラの前後方向と同方向を向く縦向姿勢であるか横方向を向く横向姿勢であるかを判定し、縦向姿勢と判定された場合には横向姿勢であると判定された場合よりも許容作業範囲を広く設定することを特徴とする請求項1に記載のショベル系建設機械である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることにより、フロント作業機の向きにより異なる機体安定性に応じた許容作業範囲の設定を行なえることになって、確実に機体安定性を確保できると共に、作業アタッチメントの作業範囲をできるだけ広くすることができて、作業効率の向上に大きく貢献できる。
請求項2の発明とすることにより、フロント作業機が縦向姿勢と判定された場合には、機体安定性に劣る横向姿勢と判定された場合よりも広い許容作業範囲が設定されることになると共に、この様にフロント作業機の向きに応じて縦向姿勢か横向姿勢かを判定することによって、制御が簡単になるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図において、1はショベル系建設機械の一例である解体作業機であって、該解体作業機1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3のフロント部に装着されるフロント作業機4を備えて構成されると共に、該フロント作業機4は、基端部が上部旋回体3に上下揺動自在に支持されるブーム5、該ブーム5の先端部に揺動自在に支持される第一アーム6、該第一アーム6の先端部に揺動自在に支持される第二アーム7、該第二アーム7の先端部に取付けられる破砕機(解体用アタッチメントの一つであって、本発明の作業アタッチメントに相当する)8、これらブーム5、第一アーム6、第二アーム7、破砕機8をそれぞれ揺動せしめるべく伸縮作動するブーム用シリンダ9、第一アーム用シリンダ10、第二アーム用シリンダ11、アタッチメント用シリンダ12等を備えて構成されている。尚、本実施の形態において、前記ブーム5、第一アーム6、および第二アーム7は、本発明の作業腕を構成する。
【0007】
さらに、13はブーム5の上部旋回体3に対する揺動角度(ブーム角度α)を検出するブーム角度センサ、14は第一アーム6のブーム5に対する揺動角度(第一アーム角度β)を検出する第一アーム角度センサ、15は第二アーム7の第一アーム6に対する揺動角度(第二アーム角度γ)を検出する第二アーム角度センサであって、これら各角度センサ13〜15の検出信号は、後述する制御装置16に入力されるようになっている。
【0008】
また、17A、17Bは旋回ベアリング17を構成するアウターレース、インナーレースであって、アウターレース17Aは上部旋回体3側に取付けられ、インナーレース17Bは下部走行体2側に取付けられているが、該インナーレース17Bの外周部には、前後一対の旋回角度検出用プレート18a、18bが止着されている。一方、上部旋回体3の下面には、前記旋回角度検出用プレート18a、18bの近接を検出する近接スイッチ19が止着されており、該近接スイッチ19の検出信号は、前記制御装置16に入力されるようになっている。ここで、前記旋回角度検出用プレート18a、18bは、上部旋回体3に装着されるフロント作業部4の向きが、下部走行体2のクローラ20の前後方向(図1(B)のY方向)に対して平行になる旋回位置を中心として所定旋回角度範囲θa、θb(例えば、80〜90度)のときに近接スイッチ19に検出されるように取付けられていると共に、本実施の形態では、上記近接スイッチ19が旋回角度検出用プレート18a、18bを検出する旋回位置のときを、フロント作業機4の向きがクローラ20の前後方向に対して同方向を向く縦向姿勢とし、また、近接スイッチ19が旋回角度検出用プレート18a、18bを検出しない旋回位置のときを、フロント作業機4の向きがクローラ20の前後方向に対して横方向を向く横向姿勢として設定している。つまり、フロント作業部4の向きがクローラ20の前後方向に対して平行になる旋回位置を中心として所定旋回角度範囲θa、θb内のときを、フロント作業機4の向きがクローラ20の前後方向に対して同方向を向く縦向姿勢とし、また、フロント作業部4の向きが上記所定旋回角度範囲θa、θb外のときを、クローラ20の前後方向に対して横方向を向く横向姿勢としている。尚、前記縦向姿勢、横向姿勢に含まれるフロント作業機4の向きの範囲は、所定旋回角度範囲θa、θbの設定を変更することによって適宜変更することができる。また、前記旋回角度検出用プレート18a、18bおよび近接スイッチ19は、本発明の旋回位置検出手段を構成する。
【0009】
次いで、図2に、前記ブーム用、第一アーム用、第二アーム用の各シリンダ9〜11の油圧回路を示すが、該図2において、21は前記各シリンダ9〜11の油圧源になる油圧ポンプ、22はパイロット油圧源になるパイロットポンプ、23は油タンク、24〜26はブーム用、第一アーム用、第二アーム用の各コントロールバルブである。
【0010】
前記ブーム用、第一アーム用、第二アーム用の各コントロールバルブ24〜26は、伸長側、縮小側パイロットポート24a〜26a、24b〜26bを備えた三位置切換弁であって、両パイロットポート24a〜26a、24b〜26bにパイロット圧が入力されていない状態では、ブーム用、第一アーム用、第二アーム用の各シリンダ9〜11に対する油給排を行なわない中立位置Nに位置しているが、伸長側或いは縮小側パイロットポート24a〜26a、24b〜26bにパイロット圧が入力されることにより伸長側位置X或いは縮小側位置Yに切換わって、各シリンダ9〜11を伸長或いは縮小せしめるべく油給排制御を行なうように構成されている。
【0011】
また、27〜29はブーム用、第一アーム用、第二アーム用の各パイロットバルブであって、これらパイロットバルブ27〜29は、ブーム用、第一アーム用、第二アーム用の各操作具30〜32の操作に基づいて、前記ブーム用、第一アーム用、第二アーム用の各コントロールバルブ24〜26の伸長側、縮小側パイロットポート24a〜26a、24b〜26bにパイロット圧を出力する。而して、ブーム用、第一アーム用、第二アーム用の各操作具30〜32の操作に基づいてパイロットバルブ27〜29から出力されるパイロット圧によりコントロールバルブ24〜26が伸長側位置X或いは縮小側位置Yに切換わって、ブーム用、第一アーム用、第二アーム用の各シリンダ9〜11の伸縮作動が行なわれる構成になっている。
【0012】
さらに、33A〜35A、33B〜35Bはブーム用、第一アーム用、第二アーム用の伸長側、縮小側電磁比例減圧弁であって、これら電磁比例減圧弁33A〜35A、33B〜35Bは、前記パイロットバルブ27〜29からコントロールバルブ24〜26の伸長側、縮小側パイロットポート24a〜26a、24b〜26bに至るパイロット油路に配されている。そして、これらブーム用、第一アーム用、第二アーム用の伸長側、縮小側電磁比例減圧弁33A〜35A、33B〜35Bが、後述する制御装置16からの制御指令に基づいて、パイロットバルブ27〜29から伸長側、縮小側パイロットポート24a〜26a、24b〜26bへの出力パイロット圧を遮断、或いは減圧することによって、操作具30〜32が操作されてもコントロールバルブ24〜26の伸長側、縮小側パイロットポート24a〜26a、24b〜26bにパイロット圧が入力されない、或いは減圧されることになり、これによって各シリンダ9〜11の伸縮作動を停止、或いは減速させることができるようになっている。
【0013】
一方、前記制御装置16は、マイクロコンピュータ等を用いて構成されるものであって、図3のブロック図に示すごとく、入力側に、前記ブーム角度センサ13、第一アーム角度センサ14、第二アーム角度センサ15、近接スイッチ19等が接続され、また、出力側に、前記ブーム用、第一アーム用、第二アーム用の伸長側、縮小側電磁比例減圧弁33A〜35A、33B〜35B、解体作業機1のキャブ1a内に配設されるモニタ表示器36、ブザー等の警報器37が接続されている。
【0014】
次いで、前記制御装置16の行なう制御について、前記図3に基づいて説明すると、制御装置16は、まず、ブーム角度センサ13、第一アーム角度センサ14、第二アーム角度センサ15により検出されるブーム角度α、第一アーム角度β、第二アーム角度γを、アタッチメント位置演算部38に入力する。該アタッチメント位置演算部38は、入力されたブーム角度α、第一アーム角度β、第二アーム角度γに基づいて、第二アーム7の先端部位置Pを演算し、該第二アーム7の先端部位置Pを破砕機8の位置Pとして、作業範囲判断部39に出力する。尚、本実施の形態では、作業アタッチメントである破砕機8の基端部が取付けられる第二アーム7の先端部位置Pを、破砕機8の位置P、つまりアタッチメント位置として演算すると共に、本発明のアタッチメント位置検出手段は、前記ブーム角度センサ13、第一アーム角度センサ14、第二アーム角度センサ15、およびアタッチメント位置演算部38によって構成されている。また、破砕機8の位置(アタッチメント位置)Pは、例えば、ブーム5の基端部の揺動支軸を原点とし、上部旋回体3の前後方向をX軸、上下方向をY軸とする座標で表わされる。
【0015】
また、40は制御装置16に設けられるメモリであって、該メモリ40は、縦向姿勢許容作業範囲データ部41と横向姿勢許容作業範囲データ部42とを有している。ここで、縦向姿勢許容作業範囲データ部41には、フロント作業機4の向きが下部走行体2のクローラ20の前後方向に対して同方向を向く縦向姿勢の場合に、機体安定性を確保できる状態で破砕機8の作業を行うことができる縦向姿勢許容作業範囲がデータとして記憶されており、また、横向姿勢許容作業範囲データ部42には、フロント作業機4の向きがクローラ20の前後方向に対して横方向を向く横向姿勢の場合に、機体安定性を確保できる状態で破砕機8の作業を行うことができる横向姿勢許容作業範囲がデータとして記憶されている。この場合、縦向姿勢は横向姿勢に比して機体安定性に優れるため、縦向姿勢許容作業範囲は横向姿勢許容作業範囲よりも広く設定されている(図4、図5参照)。尚、本実施の形態では、図4、5に示す如く、縦向姿勢許容作業範囲、横向姿勢許容作業範囲の外側境界線Lに近い部分に、外側境界線Lに近いことをオペレータに警告するための警告領域が設定されていて、該警告領域のデータも、縦向姿勢許容作業範囲データ部41、横向姿勢許容作業範囲データ部42に保存されている。また、前記縦向姿勢許容作業範囲データ、横向姿勢許容作業範囲データは、作業アタッチメントの種類や容量、或いは作業条件等に応じて適宜設定、変更できるように構成されている。
【0016】
さらに、前記図3において、43は信号切換器であって、該信号切換器43は、前記近接スイッチ19の検出信号を入力し、該検出信号に基づいて、前記縦向姿勢許容作業範囲と横向姿勢許容作業範囲とのうち何れかのデータを選択して作業範囲判断部39に出力する。つまり、近接スイッチ19が旋回角度検出用プレート18a、18bを検出すると、信号切換器43にON信号が入力されるが、この場合には、フロント作業部4の向きがクローラ20の前後方向に対して同方向を向く縦向姿勢であると判定されて、信号切換器43により縦向姿勢許容作業範囲のデータが選択される。一方、近接スイッチ19が旋回角度検出用プレート18a、18bを検出しない場合には、信号切換器43にOFF信号が入力されるが、この場合には、フロント作業部4の向きがクローラ20の前後方向に対して横方向を向く横向姿勢であると判定されて、信号切換器43により横向姿勢許容作業範囲のデータが選択される。そして、該信号切換器43により選択された縦向姿勢許容作業範囲、横向姿勢許容作業範囲の何れか一方のデータが、許容作業範囲として作業範囲判断部39に出力されるようになっている。尚、前記縦向姿勢許容作業範囲データ部41、横向姿勢許容作業範囲データ部42および信号切換器43は、本発明の作業範囲設定手段を構成する。
【0017】
前記作業範囲判断部39は、アタッチメント位置演算部38から入力される破砕機8の位置Pと、信号切換器43から入力される許容作業範囲(縦向姿勢許容作業範囲或いは横向姿勢許容作業範囲)とに基づいて、破砕機8の許容作業範囲に対する位置を演算し、そして、破砕機8が許容作業範囲内であるか、或いは警告領域内に侵入しているか否かを判断する。尚、前記作業範囲判断部39は、本発明の判断手段に相当する。
【0018】
そして、作業範囲判断部39により破砕機8が警告領域内に侵入したと判断された場合には、モニタ装置36に警告領域内に侵入したことを表示すると共に、警報器37に対して警告を発するように制御指令を出力する。さらに、破砕機8が許容作業範囲の外側境界線Lに近づく方向へのブーム用シリンダ9、第一アーム用シリンダ10、第二アーム用シリンダ10の伸縮作動を減速するべく、前記ブーム用、第一アーム用、第二アーム用の伸長側、縮小側電磁比例減圧弁33A〜35A、33B〜35Bに対して、パイロットバルブ27〜29からコントロールバルブ24〜26の伸長側、縮小側パイロットポート24a〜26a、24b〜26bへの出力パイロットを減圧するように制御指令を出力する。これにより、警告領域内では、破砕機8の許容作業範囲の外側境界線Lに近づく方向への移動が減速されるようになっている。
【0019】
さらに、作業範囲判断部39により破砕機8が許容作業範囲の外側境界線Lに達したと判断された場合には、モニタ装置36に許容作業範囲の外側境界線Lに達したことを表示すると共に、警報器37に対して警告を発するように制御指令を出力する。さらに、破砕機8が許容作業範囲外に出ようとする方向のブーム用シリンダ9、第一アーム用シリンダ10、第二アーム用シリンダ10の伸縮作動を停止するべく、前記ブーム用、第一アーム用、第二アーム用の伸長側、縮小側電磁比例減圧弁33A〜35A、33B〜35Bに対して、パイロットバルブ27〜29からコントロールバルブ24〜26の伸長側、縮小側パイロットポート24a〜26a、24b〜26bへの出力パイロットを遮断するように制御指令を出力する。これにより、破砕機8が許容作業範囲の外側境界線Lに達した場合には、破砕機8が許容作業範囲外に出ようとする方向へのブーム用シリンダ9、第一アーム用シリンダ10、第二アーム用シリンダ10の伸縮作動が停止して、破砕機8が許容作業範囲外に出てしまうことを阻止できるようになっている。
【0020】
叙述の如く構成された本形態において、解体作業機1には、機体の安定性を確保した状態で破砕機8の作業を行なうべく、破砕機8の許容作業範囲を設定する作業範囲設定手段(縦向姿勢許容作業範囲データ部41、横向姿勢許容作業範囲データ部42、信号切換器43)が設けられているが、該作業範囲設定手段は、旋回位置検出手段(旋回角度検出用プレート18a、18b、近接スイッチ19)により検出される上部旋回体3の旋回位置に基づいて、クローラ20の前後方向に対するフロント作業機4の向きを判定し、そして、フロント作業機4がクローラ20の前後方向と同方向を向く縦向姿勢であると判定された場合には、クローラ20の前後方向に対して横方向を向く横向姿勢であると判定された場合よりも許容作業範囲を広く設定することになる。
【0021】
この結果、フロント作業機4が横向姿勢の場合には、縦向姿勢と比して機体安定性に劣る姿勢であるため許容作業範囲を狭く設定しても、横向姿勢よりも機体安定性に優れる縦向姿勢の場合には、横向姿勢よりも広い許容作業範囲が設定されることになり、而して、フロント作業機4の向きにより異なる機体安定性に応じた許容作業範囲の設定を行なえることになって、確実に機体安定性を確保できると共に、機体破砕機8の作業範囲をできるだけ広くすることができて、作業効率の向上に大きく貢献できる。
【0022】
尚、本発明は、前記実施の形態に限定されないことは勿論であって、前記実施の形態では、クローラ20の前後方向に対するフロント作業機4の向きを示す姿勢として縦向姿勢か横向姿勢かを判定する構成になっているため、縦向姿勢許容作業範囲と横向姿勢許容作業範囲との二種類のデータで対応できることになって、制御が簡単になるという利点があるが、さらに多くの姿勢(例えば、フロント作業機4がクローラ20の前後方向に対して斜め方向を向く傾斜姿勢)を設定し、これら各姿勢のフロント作業機4の向きに応じて許容作業範囲を広狭変更する構成にすることもできる。また、下部走行体に対する上部旋回体の旋回位置を検出する旋回位置検出手段としては、上部旋回体の旋回角度を検出する角度センサを用いることもでき、この場合には、各旋回角度に応じて許容作業範囲をより細かく広狭変更する構成にすることもできる。
さらに、ショベル系建設機械としては、解体作業機に限定されることなく、本発明は、各種ショベル系建設機械に実施することができるが、特に、解体作業機のように長尺の作業腕を有するショベル系建設機械に有益である。また、作業腕としても、前記実施の形態のようにブームと第一、第二アームとから構成されるものに限定されることなく、例えば、ブームと一本のアームとから構成されるもの、或いは伸縮自在なブームやアームから構成されているもの等であっても良い。さらに、作業アタッチメントの位置を検出するアタッチメント位置検出手段は、前記作業腕を構成する各種部材に応じた検出手段を、適宜採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(A)は解体作業機の側面図、(B)は(A)のX−X断面図である。
【図2】ブーム用シリンダ、第一アーム用シリンダ、第二アーム用シリンダの油圧回路図である。
【図3】制御装置の入出力、および制御を示すブロック図である。
【図4】(A)、(B)は縦向姿勢許容作業範囲を示すである。
【図5】(A)、(B)は横向姿勢許容作業範囲を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 解体作業機
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 フロント作業機
5 ブーム
6 第一アーム
7 第二アーム
8 破砕機
13 ブーム角度センサ
14 第一アーム角度センサ
15 第二アーム角度センサ
18a、18b 旋回角度検出用プレート
19 近接スイッチ
20 クローラ
38 アタッチメント位置演算部
39 作業範囲判断部
41 縦向姿勢許容作業範囲データ部
42 横向姿勢許容作業範囲データ部
43 信号切換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラ式の下部走行体と、該下部走行体に旋回自在に支持される上部旋回体と、該上部旋回体のフロント部に装着されるフロント作業機とを備えると共に、該フロント作業機を、基端部が上部旋回体に上下揺動自在に支持される作業腕の先端部に作業アタッチメントを装着して構成してなるショベル系建設機械において、該ショベル系建設機械に、作業アタッチメントの位置を検出するアタッチメント位置検出手段と、機体の安定性を確保できる作業アタッチメントの許容作業範囲を設定する作業範囲設定手段と、作業アタッチメントの位置が許容作業範囲内であるかを判断する判断手段とを具備した制御システムを設けるにあたり、該制御システムに、下部走行体に対する上部旋回体の旋回位置を検出する旋回位置検出手段を設けると共に、前記作業範囲設定手段は、旋回位置検出手段により検出される旋回位置に基づいてクローラの前後方向に対するフロント作業機の向きを判定し、該フロント作業機の向きに応じて許容作業範囲を広狭変更することを特徴とするショベル系建設機械。
【請求項2】
作業範囲設定手段は、フロント作業機がクローラの前後方向と同方向を向く縦向姿勢であるか横方向を向く横向姿勢であるかを判定し、縦向姿勢と判定された場合には横向姿勢であると判定された場合よりも許容作業範囲を広く設定することを特徴とする請求項1に記載のショベル系建設機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−127011(P2010−127011A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303471(P2008−303471)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】