説明

シリアルプリンター

【課題】印刷時間を抑制しつつ、シート搬送距離の精度を高める。
【解決手段】シートの搬送と停止を繰り返す搬送部と、停止した前記シートに画像を印刷する印刷部と、搬送される前記シートを撮像した動画データを出力するデジタルカメラと、前記動画データを解析することにより前記シートの搬送距離を検出する解析手段と、前記シートが停止する前に検出されたシートの搬送距離を、前記シートを停止させるまでの搬送制御量にフィードバックする搬送制御手段と、を備えるシリアルプリンター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリアルプリンターに関し、特に紙やフィルムなどのシートを正確に搬送するためのフィードバック制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリアルプリンターにおいては、ローラーや無端ベルトを駆動して紙やフィルムなどのシートを搬送している。シートの搬送距離はローラーの回転角度によっておよそ検出することが可能である。しかし、シートがローラーに対して滑ったり、ローラーが偏心していたり摩耗すると、ローラーの回転角度から導かれる搬送距離に誤差が生ずる。
【0003】
特許文献1に記載されているように、搬送中のシートをデジタルカメラで撮影して得る動画データを解析することによってシートの搬送距離を検出する技術が知られている。この技術を用いると、モーターの回転角度をフィードバック制御することに加えて、シートの搬送距離をフィードバック制御することができる。具体的には、帯状画像の印刷とシートの搬送とを交互に繰り返すシリアルプリンターにおいて、シートを搬送開始してから停止するまでの搬送区間において検出された搬送誤差を打ち消すように、後続の搬送区間における搬送制御量を補正することが行われている。また複数の搬送区間において生ずる搬送誤差の傾向を取得し、既に生じた搬送誤差を打ち消すように搬送制御量を補正することが行われている。
【0004】
また特許文献2に記載されているように、シートを搬送するローラーの偏心量に応じてローラーの回転角度の制御量を補正する技術や、特許文献3に記載されているように、給紙側ローラーと排紙側ローラーの周速度差によって生ずる搬送誤差を副走査方向位置の関数である補正関数として設定するとともに補正関数を用いてローラーの回転角度を制御する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4014535号
【特許文献2】特開2004−276425号公報
【特許文献3】特開2004−182420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の技術は、いずれも一旦停止するまでに生じた搬送誤差に基づいて搬送を再開する際に適用される搬送制御量を補正するものであって、搬送中に生ずる搬送誤差に基づいて停止するまでの搬送誤差を低減しようとするものではない。したがって上述した従来の技術によると、搬送開始から停止までの搬送区間毎に異なる搬送誤差が生ずる場合には搬送誤差を打ち消すことができないため、1ページにわたって累積される搬送誤差は相当大きくなるという問題がある。
また、特許文献2,3に記載されているように印刷中においては補正量が固定化されている場合には、印刷中の外乱に全く対応できないという問題がある。
そして仮に1つの搬送区間についてシートを搬送して停止させる度に搬送距離を検出し、その度に誤差相当の距離だけシートを再度搬送するとすれば、搬送誤差は無くなるものの、シートの搬送時間を含む1ページ全体の印刷時間が非常に長くなるという問題がある。
【0007】
本発明はこれらの問題に鑑みて創作されたものであって、印刷時間を抑制しつつ、シートを搬送する距離の精度を高めることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するためのシリアルプリンターは、シートの搬送と停止を繰り返す搬送部と、停止した前記シートに画像を印刷する印刷部と、搬送される前記シートを撮像した動画データを出力するデジタルカメラと、前記動画データを解析することにより前記シートの搬送距離を検出する解析手段と、前記シートが停止する前に検出されたシートの搬送距離を、前記シートを停止させるまでの搬送制御量にフィードバックする搬送制御手段と、を備える。
本発明によると、シートの搬送中にシートの搬送距離を検出することによってシートの搬送中に搬送誤差の経過値を特定可能である。そしてシートの搬送中に生ずる搬送誤差をシートが停止するまでの搬送制御量によって打ち消すことができる。したがって本発明によると、印刷時間を抑制しつつ、シートを搬送する距離の精度を高めることができる。なお、"搬送誤差"とは実際にシートが搬送された距離とシートを搬送しようとする距離との差である。
【0009】
(2)上記目的を達成するためのシリアルプリンターにおいて、前記搬送制御手段は、前記シートの搬送を開始してから停止させるまでの搬送区間毎に、前記シートが停止する前に検出された前記シートの搬送距離を、前記シートを停止させるまでの搬送制御量にフィードバックしてもよい。
この構成によると、搬送区間毎にシートの搬送距離を正確に制御できるため、印刷画質を向上させることができる。
【0010】
(3)上記目的を達成するためのシリアルプリンターにおいて、前記搬送制御手段は、前記シートの搬送を開始してから停止させるまでの搬送制御量と検出された前記シートの搬送距離とに応じて、前記シートを停止させるまでに生ずる搬送誤差を予測し、前記予測した搬送誤差に応じて前記シートを停止させるまでの搬送制御量を更新してもよい。
シートの搬送を開始してから停止させるまでの搬送制御量と検出された搬送距離とによって、停止させるまでにシートを搬送すべき距離すなわち残距離が特定される。そして残距離において生ずる搬送誤差は、残距離の長さに応じて決まる。すなわち残距離が長くなるほど残距離において生ずる搬送誤差は大きくなる。したがってシートの搬送を開始してから停止させるまでの搬送制御量と検出されたシートの搬送距離とに応じて、シートを停止させるまでに生ずる搬送誤差を予測することができる。このようにして予測した搬送誤差に応じてシートを停止させるまでの搬送制御量を更新することにより、シートを搬送する距離の精度をさらに高めることができる。
【0011】
(4)上記目的を達成するためのシリアルプリンターにおいて、前記搬送制御手段は、前記シートの搬送距離を検出してから前記シートを停止させるまでに生ずる搬送誤差を搬送モードに応じて予測し、前記予測した搬送誤差に応じて前記シートを停止させるまでの搬送制御量を更新してもよい。
搬送モードとは、特定の搬送速度や加減速特性が設定される制御モードである。シートの搬送距離を検出してからシートを停止させるまでに生ずる搬送誤差は、シートの搬送速度や加減速特性と強い相関を持つ。したがってシートを停止させるまでに生ずる搬送誤差を搬送モードに応じて予測することができる。このようにして予測した搬送誤差に応じてシートを停止させるまでの搬送制御量を設定することにより、シートを搬送する距離の精度をさらに高めることができる。
【0012】
(5)上記目的を達成するためのシリアルプリンターにおいて、前記搬送制御手段は、前記シートの搬送距離を検出してから前記シートを停止させるまでに生ずる搬送誤差を前記シートの種類に応じて予測し、前記予測した搬送誤差に応じて前記シートを停止させるまでの搬送制御量を更新してもよい。
シートの種類が異なればシートの摩擦係数や質量が異なる。シートの搬送距離を検出してからシートを停止させるまでに生ずる搬送誤差は、シートの摩擦係数や質量と強い相関を持つ。したがってシートを停止させるまでに生ずる搬送誤差をシートの種類に応じて予測することができる。このようにして予測した搬送誤差に応じてシートを停止させるまでの搬送制御量を設定することにより、シートを搬送する距離の精度をさらに高めることができる。
【0013】
(6)上記目的を達成するためのシリアルプリンターにおいて、前記搬送制御手段は、前記搬送部に前記シートが挿入される毎に、前記デジタルカメラから出力される画像データに基づいて前記シートの種類を判定してもよい。
この構成を採用すると、シートの種類をユーザーに設定させなくても、シートの搬送距離を検出してからシートを停止させるまでに生ずる搬送誤差をシートの種類に応じて予測できる。
【0014】
(7)上記目的を達成するためのシリアルプリンターにおいて、前記搬送制御手段は、前記シートの搬送距離を検出してから前記シートを停止させるまでに生ずる搬送誤差を前記シートを停止させた後に学習し、前記シートの搬送距離を検出してから前記シートを停止させるまでに生ずる搬送誤差を学習結果に応じて予測してもよい。
この構成を採用すると、シートを搬送する距離の精度をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態にかかるブロック図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるグラフである。
【図3】本発明の実施形態にかかるフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態にかかるグラフである。
【図5】本発明の実施形態にかかる模式図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる模式図である。
【図7】本発明の実施形態にかかるグラフである。1フレーム期間の長さは細線の間隔に対応する。
【図8】本発明の実施形態にかかるグラフである。
【図9】本発明の実施形態にかかるグラフである。細線で表された矩形の大きさは対応するフレーム画像のフレームサイズを示している。また細線で表された矩形の横軸方向の位置は、対応するフレーム画像が撮像されるタイミングを示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。尚、各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
1.概要
図1に示すプリンター1は、本発明の一実施形態としてのシートフィードセンサーを備えたインクジェットプリンターである。モーター15は印刷用紙などのシートPを間欠的に搬送する。すなわち図2に示すように、モーター15によって搬送されるシートPは、加速と減速と停止とを搬送区間毎に繰り返す。搬送区間とは、シートPの搬送開始から停止するまでの区間である。各搬送区間においてデジタルカメラ20を用いて検出されるシートPの搬送距離は、当該搬送区間におけるCPU33によるモーター15の制御量にフィードバックされる。CPU33によるこのようなフィードバック制御は、搬送区間毎に1回だけ実施される。シートPの搬送距離をCPU33によるモーター15の制御量にフィードバックできるタイミングは、デジタルカメラ20から出力されるフレーム画像の解析が終了するタイミングに対応する。デジタルカメラ20から出力されるフレーム画像の解析が完了する周期が短いほど、シートPの搬送距離をCPU33によるモーター15の制御量にフィードバックするタイミングを停止直前まで引き延ばすことができる。そこで、各搬送区間内の減速区間では、フレームレートを上げるようにデジタルカメラ20が制御される。このためシートPの搬送距離をモーター15の制御量にフィードバックできるタイミングが到来する周期は減速区間において短くなる。したがって、モーター15のフィードバック制御のタイミングを停止する寸前まで引き延ばすことができる。その結果、過去の搬送誤差をフィードバック制御によって打ち消せない距離が短くなるため、シート搬送距離の精度を高めることができる。
【0017】
2.構成
プリンター1には、シートPを間欠的に搬送するための搬送部として、モーター15と、モーター15によって駆動される搬送ローラー11aと,搬送ローラー11aに従動して回転する従動ローラー11bと、モーター15の回転角度および回転速度を検出するロータリーエンコーダー161を有する駆動回路であるモータードライバー16とが備えられている。またプリンター1には、シートPが停止する度に帯状の画像を印刷するための印刷部として、印刷ヘッドを備えるキャリッジ12と、主走査方向に架設されてキャリッジ12の移動方向を案内するガイドロッド14と、キャリッジ12を牽引するための図示しない無端ベルトと、無端ベルトを駆動する図示しないモーターとが備えられている。図示しない印刷ヘッドは、キャリッジ12に搭載されるインクカートリッジ13から供給されるインクを圧電素子によって図示しないノズルから吐出する。
【0018】
プリンター1には、シートPを撮像した動画データを出力するデジタルカメラ20が備えられている。動画データは、フレームレートの逆数の周期で連続的に出力される静止画像データであるフレーム画像の系列によって構成される。デジタルカメラ20には、ノズルから吐出されたインクが着弾するシートPのインク受容面の裏面を照明するLED(Light Emitted Diode)等の光源22と、シートPの表面を結像するためのレンズ等の光学系21と、光学系21によって結像されるシートPの表面を撮像するためのイメージセンサー24と、光源22およびイメージセンサー24を制御するとともにイメージセンサー24の出力を処理するためのFPGA(Field Programmable Gate Array)からなる制御部23とが備えられている。本実施形態において、イメージセンサー24は有効画素数が640画素×480画素のCMOSイメージセンサーである。イメージセンサー24は長辺がプリンター1の副走査方向(シートフィード方向)に対応するように配置される。
プリンター1には、デジタルカメラ20のフレームレートとフレームサイズとを制御するカメラ制御手段と、デジタルカメラ20から出力される動画データを解析することによりシートPの搬送距離を検出する解析手段と、検出した搬送距離をモーター15の制御量にフィードバックしながらモーター15を制御する搬送制御手段として機能するコンピューターが備えられている。このコンピューターは、CPU33、RAM31、ROM32およびインターフェース30を備えている。CPU33は、ROM32からRAM31にロードされる印刷制御プログラムを実行することにより、搬送部、印刷部およびデジタルカメラ20を制御する。
【0019】
3.シートフィード方法
図3は、プリンター1におけるシートフィード方法を示すフローチャートである。図3に示す処理は印刷制御プログラムを実行するCPU33によって制御され、シートPに印刷ヘッドの幅(副走査方向長さ)に相当する幅を有する帯状の画像を印刷した後に、次の帯状の画像を印刷する位置までシートPを移動させるために実行される。すなわち、図3に示す処理は搬送区間毎に実行される。
【0020】
はじめにCPU33は、モータードライバー16に対してモーター15の停止位置および搬送モードを設定して起動を指示し、シート搬送距離の検出を開始する(S100)。シートPの搬送制御量としての停止位置は、例えばモーター15の回転角度によって指定される。搬送モードは印刷画質の設定に対応する。搬送モードが設定されることによってモーター15の加減速特性が決まる。印刷画質が高くなるほど加速区間および減速区間におけるモーター15の角加速度の絶対値は小さくなる。モータードライバー16は、停止位置及び搬送モードが設定されると、モーター15の回転角度および回転速度をロータリーエンコーダー161によって検出しながら、図4に示すように、設定された停止位置において停止できるようにモーター15の回転角度をフィードバック制御する。
【0021】
ここで図5を参照しながらシートPの搬送距離を検出する方法を具体的に説明する。シートPの搬送距離は連続する2つのフレーム画像の局所領域のパターンマッチングによって検出される。まず、CPU33によってデジタルカメラ20に設定するフレームサイズとフレームレートに応じてデジタルカメラ20からRAM31にフレーム画像25が出力される。モーター15の起動時におけるフレーム画像25のフレームサイズ(画像サイズ)Fの設定はイメージセンサー24の有効画素数に対応する640画素×480画素である。モーター15の起動時におけるフレームレートSの設定は例えば30フレーム/秒である。そしてRAM31にフレーム画像25が格納される毎に、CPU33は、前回のフレーム画像25aの端部に表れる局所パターンが今回のフレーム画像25bに表れる領域を探索する。局所パターンの探索は、フレーム画像25より小さいサイズのウィンドウ251によって前回のフレーム画像25aの端部領域から切り取られるパターンと、今回のフレーム画像25bの任意の領域からウィンドウ251によって切り取られるパターンとの類似度を検出した結果に基づいて行われる。具体的には、今回のフレーム画像25bにおいて端部領域(図5では左端領域)からウィンドウ251を1画素ずつ移動させながら、ウィンドウ251によって切り取られるパターンと、前回のフレーム画像25aの端部領域から切り取られるパターンとの類似度を検出するとともにウィンドウ251の位置に対応付けて記憶し、今回のフレーム画像25bにおいてこれら2つのパターンの類似度が最も高くなる位置に対応する副走査方向の長さVを、1フレーム期間(連続する2つのフレーム画像が撮像される時間間隔すなわちフレームレートの逆数)にシートPが移動した距離を示すフレーム間移動距離として検出する。CPU33は、このように検出されるシートPのフレーム間移動距離Vを搬送開始から積算し、積算値をシートPの搬送距離として検出する。
【0022】
次にCPU33は、モーター15が減速を始めるタイミングを検出する(S101)。具体的には例えば、モーター15の回転速度または回転角度を示すモータードライバー16のステータス信号に基づいて、モーター15が減速を始めるタイミングが検出される。
【0023】
モーター15が減速を始めると、CPU33はシートPのフレーム間移動距離がV以下になるタイミングを検出する(S102)。すなわち、シートPの搬送速度が第一の所定速度以下になったか否かが繰り返し判定される。具体的には、直近のフレーム画像25において検出されたフレーム間移動距離がV以下になったか否かが判定される。
【0024】
シートPのフレーム間移動距離がV以下になると、CPU33はデジタルカメラ20のフレームサイズをFからFに縮小するとともに、デジタルカメラ20のフレームレートをSからSにチェンジアップする(S103)。本実施形態においてフレームレートSは、60フレーム/秒とする。フレームサイズを縮小するとき、縮小前後の画像データの重心に対応するイメージセンサー24の画素を一致させる。尚、フレームサイズを縮小するとき、縮小前後の画像データの辺とイメージセンサー24の有効画素領域の辺とを一致させてもよい。
【0025】
ここで、デジタルカメラ20のフレームサイズと画角の関係について説明する。図6において円Aは光学系21の焦点距離によって決まるデジタルカメラ20の結像範囲を示している。イメージセンサー24の有効画素数に対応するフレームサイズFより小さいフレームサイズFに対応する画角は、フレームサイズFに対応する画角よりも狭くなる。すなわち、フレームサイズをFからFに縮小すると、デジタルカメラ20の画角が狭くなる。このためフレームサイズFは、フレームレートSにおいてデジタルカメラ20を駆動するときに、1フレーム期間すなわち1/S秒間にシートPが移動する距離であるフレーム間移動距離よりもフレーム画像の長辺(副走査方向に対応する辺)が長くなるように設定しなければならない。フレームレートは減速中にチェンジアップするため、チェンジアップ後のフレーム間移動距離がチェンジアップのタイミングにおけるフレーム間移動距離よりも長くなることはない。したがって、FからFへの縮小直前または直後のフレーム間移動距離に応じてフレームサイズFを設定すればよい。
【0026】
具体的には例えば、モーター15の起動時のフレームサイズFに所定の縮小係数Dと搬送モードに応じて決めるモード係数mとシート種類によって決まるシート係数μとを掛け合わせたフレームサイズをFとする。
すなわち、
=h画素×v画素
=h画素×v画素
とすると、
=F×D×m×μ
となる。本実施形態においては、アスペクトレシオを維持してフレームサイズを縮小するが、アスペクトレシオを変えてフレームサイズを縮小しても良い。
【0027】
本実施形態において縮小係数Dは0.7とする。モード係数mは、搬送モードに応じて搬送速度および加速度が異なるために乗ずる係数である。シート係数μは、シートPの種類によって摩擦係数や質量が異なり、その結果、シートPの種類によって搬送誤差が異なるために乗ずる係数である。適正なシート係数μは、予め複数種類記憶しておき、ユーザーによるシート種類の設定操作に応じて対応するシート係数を設定すればよい。なお、シートPの摩擦係数を決める表面状態はデジタルカメラ20から出力されるフレーム画像を解析することによって判定することができるため、シート係数を画像解析の結果に基づいて設定したり、シートの種類を画像解析の結果に基づいて分類するとともに種類に応じた適切なシート係数を学習することもできる。シート係数を画像解析の結果に基づいて設定したり、シートの種類を画像解析の結果に基づいて分類するとともに種類に応じた適切なシート係数を学習すると、未知の種類のシートが搬送部に挿入された場合でも正確なフィードバック制御を実現できる。
【0028】
次にCPU33はシートPのフレーム間移動距離がV以下になったか否かを繰り返し判定する(S104)。すなわち、シートPの搬送速度が第二の所定速度以下になったか否かが繰り返し判定される。
【0029】
シートPのフレーム間移動距離がV以下になると、CPU33はデジタルカメラ20のフレームサイズをFからFにさらに縮小するとともに、デジタルカメラ20のフレームレートをSからSにさらにチェンジアップする(S105)。フレームサイズFもFと同様にFからFへの縮小直前または直後のフレーム間移動距離に応じて設定すればよい。例えばF=h画素×v画素、縮小係数をDとすると、
=F×D×m×μ
とする。本実施形態において縮小係数Dは0.5とする。
【0030】
次にCPU33は、シートPの搬送距離を搬送制御量である停止位置にフィードバックするタイミングを検出する(S200)。本実施形態において、フィードバックのタイミングは減速期間中の停止直前のシートPを撮像したフレーム画像がデジタルカメラ20から出力されるタイミングに対応させる。具体的には、停止直前にフレーム画像がデジタルカメラ20から出力されると、シートPの搬送距離を搬送制御量である停止位置にフィードバックするタイミングが到来したと判定される。フィードバックのタイミングを決めるフレーム画像は、搬送モード毎に特定される。具体的には、モーター15を起動するとともにシート搬送距離の検出を開始してから連続的に出力されるフレーム画像のフレーム数に対応するカウンタを用意し、フレーム画像が出力される度にそのカウンタをインクリメントしながら、搬送モードに応じて決まる閾値とそのカウンタの値とを比較すればよい。
【0031】
シートPの搬送距離を停止位置にフィードバックするタイミングが到来すると、CPU33は、シートPの搬送距離と搬送誤差と搬送モードとシートの種類とに応じて、モーター15の起動時の設定値よりも正確な制御量としての停止位置を推定する(S201)。モーター15を起動してから停止直前のフレーム画像をデジタルカメラ20が出力するまでの期間に検出されたフレーム間移動距離の積算値であるシートPの搬送距離をLとし、モーター15を起動してから停止直前のフレーム画像をデジタルカメラ20が出力するまでの期間においてロータリーエンコーダー161によって検出されるモーター15の回転角度によって決まるシートPの搬送距離(搬送制御量)をLとすると、搬送距離の確定誤差Eは次式(1)によって表される。
E=L−L・・・(1)
【0032】
停止直前のフレーム画像をデジタルカメラ20が出力するタイミングにおいてモータードライバー16が保持している停止位置までの残距離をLとすると、そのタイミングにおける停止位置までの真の残距離は、L+L−Lとなる。αを停止位置までに生ずる残りの搬送誤差の予測値(予測誤差)とすると、モータードライバー16の制御量として設定すべき残り搬送距離Lは次式(2)によって表される。
=L+L−L+α=E+L+α・・・(2)
【0033】
ここで予測誤差αは、停止直前のシートPを撮像したフレーム画像をデジタルカメラ20が出力するタイミングにおける停止位置までの真の残距離(L+L−L)の関数である。この関数を誤差関数というものとする。モーター15の減速特性は搬送モードによって異なり、減速時の搬送ローラー11a、従動ローラー11bとシートPとの滑り特性はシートPの特性(摩擦係数、質量等)によって異なる。このため、αを求める誤差関数の係数は搬送モードとシート種類の組み合わせ毎に決まる。そしてこの係数は、搬送モードとシート種類の組み合わせ毎に学習することによって補正することができる。学習によって補正された係数は、次の搬送区間に適用することができる。シートPの種類は、前述したように、画像解析によって特定可能である。したがって、シートPが搬送部に挿入されたときにデジタルカメラ20によってシートPを撮像した画像データを取得し、取得した画像データを解析することによってシートPの種類を判定するとともに、シートPの特性に応じた誤差関数の係数を初期設定しておいても良い。
【0034】
次に、CPU33は、このようにして導出した正確な制御量としての停止位置(残り搬送距離L)にモータードライバー16の設定を更新する(S202)。
次にCPU33は、シートPが停止したかどうかを繰り返し判定する(S203)。具体的には、モータードライバー16がステータスとして保持する回転速度またはフレーム画像の解析によって導出されるフレーム間移動距離が0になると、シートPが停止したと判定される。
シートPが停止すると、CPU33は、シートPの停止後にフレーム画像を解析して検出される搬送距離と搬送制御量とに応じて誤差関数の係数を学習し、学習結果に基づいて、次の搬送区間に適用する誤差関数の係数を設定する(S204)。
【0035】
以上説明したシートフィード方法によると、シートの搬送中にシートの搬送距離を検出することによってシートの搬送中に搬送誤差の経過値を特定可能である。そして、搬送区間の途中までに生じた搬送誤差を当該搬送区間内で打ち消すように搬送距離をフィードバック制御するため、搬送区間毎のシート搬送距離の誤差を低減することができる。このため、副走査方向に帯状の画像を印刷するシート上の副走査方向の位置精度が高まり、その結果、印刷画質が向上する。
【0036】
また、搬送区間毎に搬送区間内で搬送誤差を打ち消すようにシートの搬送距離をフィードバック制御するため、局所変動に対応でき、外乱に強い。また、ローラーの周速度から独立した変数であるシートの搬送距離を搬送制御量にフィードバックするため、ローラー等の搬送機構を構成する部品の製造交差基準を緩和することができる。このため、製造コストを低減することができる。また、ローラー等の搬送機構を構成する部品の摩耗等による搬送誤差を低減するための補正テーブルが不要になる。
【0037】
また、図7に示すように減速区間においてデジタルカメラ20のフレームレートを上げて1フレーム期間をt、t、tと順次短く切り換えるため、切り換えない場合に比べると、デジタルカメラ20を用いて検出するシートPの搬送距離をフィードバックするタイミングを引き延ばすことができる。したがって、搬送誤差を予測して適用する制御量としての搬送距離が短くなり、その結果、搬送区間毎のシート搬送距離の精度をさらに高めることができる。この効果を図8を用いて詳細に説明すると次の通りである。減速区間においてフレームレートを1/tから1/t(t=3t)にチェンジアップしたとする。フレームレートを1/tにチェンジアップする場合には、シートPが停止する瞬間を基準としてフレームレートを1/tに維持する場合に比べると、搬送距離を搬送制御量にフィードバックするタイミングは時刻Tから停止直前の時刻Tまで引き延ばされる。すなわち、予測誤差を適用してモーター15を制御する期間がtからtへと1/3に短縮され、予測誤差が適用されるモーター15の制御量もLからLへと低減される。その結果、フレームレートを1/tにチェンジアップする場合には、フレームレートを1/tに維持する場合に比べて、搬送区間を通した搬送誤差はΔdからΔdへと低減されるのである。
【0038】
また、図9に示すように搬送速度の低下に伴ってデジタルカメラ20のフレームレートを上げるのと同時にフレームサイズをFからF、Fへと縮小するため、単位時間あたりの解析対象となる画像データ量の増大を抑制することができる。したがって、画像解析に用いるコンピューターに必要な処理能力を抑制しつつフレームレートを上げて、搬送区間毎のシート搬送距離の精度をさらに高めることができる。
【0039】
3.他の実施形態
以上、本発明を実施形態を用いて具体的に説明したが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、上述した実施形態に限定されないことはいうまでもない。
例えば、シートフィードセンサーによって検出する搬送距離は、1フレーム期間ごとに検出してもよく、搬送区間毎に検出しなくても良い。また、フレームレートとフレームサイズの切換は、3段階ではなく2段階でもよいし、減速区間における1フレーム期間毎にフレームレートとフレームサイズを変更しても良い。シートの搬送速度を検出することなくフレームレートとフレームサイズの切換のタイミングを決定しても良い。例えば、予め決められている搬送速度制御カーブに応じて決まる時間が搬送開始から経過したタイミングにおいてフレームレートとフレームサイズとを切り換えても良い。この場合、シートの滑りを考慮したマージンを取って切換のタイミングを決定することが望ましい。
【0040】
さらに、搬送距離をフィードバックするタイミングを搬送区間毎に2回以上設けても良い。例えば、搬送距離がフィードバック制御されるタイミングとシートが停止するタイミングとの間の期間が過剰に短くなると、残りの区間では既に生じた搬送誤差を打ち消せない場合も生ずる。逆に、搬送距離がフィードバック制御されるタイミングとシートが停止するタイミングとの間の期間が長くなると、予測誤差を適用してモーター15を駆動する期間が長くなるため、搬送距離の誤差が大きくなる。そこで例えば、次のようにフィードバック制御を2回実行してもよい。すなわち、既に生じた搬送誤差を残りの区間で確実に打ち消せるタイミングで1回目のフィードバック制御を実行し、さらに、2回目のフィードバック制御を実行するタイミングをシートが停止する直前までなるべく引き延ばしてもよい。
【0041】
また、シートが加速する加速区間においてもフレームレートおよびフレームサイズを変更してもよい。シートの搬送速度が一定でない加速区間においても減速区間と同様に、連続する2つのフレーム画像に生ずる被写体ブレの程度に差がある。被写体ブレの程度の差が大きくなると、パターンマッチングの精度が低下するため、フレーム間移動距離の検出精度が低くなる。したがって、シートが加速する加速区間においてもフレームレートおよびフレームサイズをシートの搬送速度に応じて変更すると、フレーム間移動距離の検出精度が高まり、その結果、搬送区間毎に搬送距離の検出精度をさらに高めることができる。
【0042】
また、最新の搬送区間における搬送距離の予測誤差の学習結果を次の搬送区間に適用することに加えて、加速区間において搬送距離の予測誤差を学習し、学習結果を同じ搬送区間の減速区間に適用しても良い。具体的には、まず、加速区間の終点直前すなわち定速区間の始点直前において、上述した実施形態と同様に搬送距離をフィードバック制御するとともに誤差関数の係数を学習しておく。そして、加速区間において学習した誤差関数の係数に基づいて、同じ搬送区間の減速区間に適用する誤差関数の係数を設定しても良い。さらに、直前の搬送区間の減速区間において学習した誤差関数の係数に基づいて、直後の搬送区間の加速区間に適用する誤差関数の係数を設定しても良い。なお、誤差関数の係数を学習せずに搬送モード毎に固定してもよい。
【0043】
また、搬送区間毎に搬送誤差を打ち消すようにフィードバック制御せずに、2つ以上の搬送区間をまたいで搬送誤差を打ち消すようにシートの搬送距離をフィードバック制御する実施形態においても、本明細書において説明したシートフィードセンサーは有効である。また例えば、搬送区間内においてはフレームレートとフレームサイズとを変化させずに、低速区間における搬送速度が異なる搬送モード毎にフレームレートとフレームサイズとを変化させてもよい。
【0044】
また、本明細書において説明したシートフィードセンサーは、インクジェットプリンターに限らず熱昇華型プリンターなどの他のシリアルプリンターにも、ページプリンターにも適用できる。また、イメージスキャナーのADF(Auto Document Feeder)などに本明細書において説明したシートフィードセンサーを適用しても良い。もちろん、イメージセンサーの種類や有効画素数やフレームレートやフレームサイズや縮小係数が単なる例示であることはいうまでもない。例えばイメージセンサーはCCDイメージセンサーでも良いし、イメージセンサーの有効画素数はQVGAでもSVGAでもよいし、縮小係数Dを0.8や0.6や0.5としてもよいし、縮小係数Dを0.4や0.3や0.2としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…プリンター、11a…搬送ローラー、11b…従動ローラー、12…キャリッジ、13…インクカートリッジ、14…ガイドロッド、15…モーター、16…モータードライバー、20…デジタルカメラ、21…レンズ、22…光源、23…制御部、24…イメージセンサー、25…フレーム画像、25a…フレーム画像、25b…フレーム画像、30…インターフェース、161…ロータリーエンコーダー、251…ウィンドウ、E…搬送誤差、F…フレームサイズ、F…フレームサイズ、F…フレームサイズ、P…シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの搬送と停止を繰り返す搬送部と、
停止した前記シートに画像を印刷する印刷部と、
搬送される前記シートを撮像した動画データを出力するデジタルカメラと、
前記動画データを解析することにより前記シートの搬送距離を検出する解析手段と、
前記シートが停止する前に検出されたシートの搬送距離を、前記シートを停止させるまでの搬送制御量にフィードバックする搬送制御手段と、
を備えるシリアルプリンター。
【請求項2】
前記搬送制御手段は、前記シートの搬送を開始してから停止させるまでの搬送区間毎に、前記シートが停止する前に検出された前記シートの搬送距離を、前記シートを停止させるまでの搬送制御量にフィードバックする、
請求項1に記載のシリアルプリンター。
【請求項3】
前記搬送制御手段は、前記シートの搬送を開始してから停止させるまでの搬送制御量と検出された前記シートの搬送距離とに応じて、前記シートを停止させるまでに生ずる搬送誤差を予測し、前記予測した搬送誤差に応じて前記シートを停止させるまでの搬送制御量を更新する、
請求項1または2に記載のシリアルプリンター。
【請求項4】
前記搬送制御手段は、前記シートの搬送距離を検出してから前記シートを停止させるまでに生ずる搬送誤差を搬送モードに応じて予測し、前記予測した搬送誤差に応じて前記シートを停止させるまでの搬送制御量を更新する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のシリアルプリンター。
【請求項5】
前記搬送制御手段は、前記シートの搬送距離を検出してから前記シートを停止させるまでに生ずる搬送誤差を前記シートの種類に応じて予測し、前記予測した搬送誤差に応じて前記シートを停止させるまでの搬送制御量を更新する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のシリアルプリンター。
【請求項6】
前記搬送制御手段は、前記搬送部に前記シートが挿入される毎に、前記デジタルカメラから出力される画像データに基づいて前記シートの種類を判定する、
請求項5に記載のシリアルプリンター。
【請求項7】
前記搬送制御手段は、前記シートの搬送距離を検出してから前記シートを停止させるまでに生ずる搬送誤差を前記シートを停止させた後に学習し、前記シートの搬送距離を検出してから前記シートを停止させるまでに生ずる搬送誤差を学習結果に応じて予測する、
請求項1から6のいずれか一項に記載のシリアルプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−201152(P2011−201152A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71018(P2010−71018)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】