説明

シリアルプリンタ

【課題】先行給紙を行うプリンタにおいて、先行給紙動作のために特別な電力供給能力を用意しないで先行給紙動作が発生する場合のみ、ヘッドのパワーモニターの閾値を下げて、使用する電力が電源の供給能力を超えないように制御する。又は、パワーモニターにかからないタイミングを見計らって先行給紙を行う。
【解決手段】先行給紙を行う場合には、記録動作に必要な電力と先行給紙に必要な電力を試算し、両者の合計が電源の供給能力を超えないよう記録に要する電力を制限するようにパワーモニターの閾値を変更するか、先行給紙のタイミングを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリアルプリンタの記録制御に関し、記録動作と同時に給紙モータが動作する場合の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置は高速化が求められている。高速動作をさせるためには、モータ等の同時駆動、高速駆動、記録動作と別の動作の(同時)平行処理等が必要になり、電源に高い電力供給能力が必要となっている。
【0003】
とりわけ、シリアル記録装置においては、前の紙の印字中に次の紙を所定の位置まで給紙し、給紙時間を短縮する、いわゆる先行給紙動作を高速化の手段として用いられている。この際も、記録動作と給紙動作を平行に行うため、電源に高い電力供給能力が必要であった。
【0004】
又、記録操作における記録量と電源の電源供給能力とに基づいて記録動作の態様を設定することを可能とし、記録ヘッドの種類、或いは電源の種類に応じて適切な制御を行なわれている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開平08−252938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電源の電力供給能力を高くすると、電源のAC−DC変換効率が悪くなり、待機時にパワーオフ時の電力が高くなってしまい、各種省エネ規格を満足することが難しくなったり、又電源回路が複雑になったり、電源サイズが大きくなってしまうという問題が生じていた。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、電源に先行給紙動作分の余分な電力供給能力を用意することなく、先行給紙動作が実現でき、高速化を可能とするできるシリアルプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのシリアルプリンタは、記録中の記録用紙に対して所定量の紙送りを行う状態で次の記録用紙への記録データが存在する場合に、記録動作と平行して次の記録用紙を所定の位置まで移動させるシリアルプリンタであって、記録に必要な電力を算定する手段と、先行給紙に必要な電力を算定する手段との両者の合計が予め設定した閾値を超えると判断した場合、記録データの一部をマスクする制御を行う制御手段とを備える。
【0009】
電源が先行給紙を想定しない場合の電力供給能力のままでも、記録データのDutyが一定以下の場合(記録ヘッドを駆動するのに必要な電力が小さい場合)には、スループットを下げることなく記録が可能であり、且つ、記録データのDutyが一定以上の場合(記録ヘッドを駆動するのに必要な電力が大きい場合)でも、電源の電力供給能力の範囲内で記録が可能となる。
【0010】
又、先行給紙を記録データのDuty が低い場合に限定して行うことにより、電源の電力供給能力を上げることなく先行給紙動作が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録動作中に先行給紙を伴う可能性がある場合には、記録動作電力(P1)と先行給紙電力(P2)を算定し、その合計が電源の電力供給能力(P)を超えているかどうかを判断する。そして、超えていると判断した場合には、記録データの一部をマスクして記録動作電力(P1)を下げたり、先行給紙の開始タイミングを変更したりして電源の供給能力を超えないように制御する。このことにより、電源に先行給紙動作分の余分な電力供給能力を用意することなく、先行給紙動作が実現でき、シリアルプリンタの高速化が可能となる。
【0012】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施例に記載のシリアルプリンタである(主要な部分の概観斜視図)、図2は本発明の実施例に記載のシリアルプリンタのカセットからの給紙機構を横から見た模式図である。
【0013】
以下、図1及び図2に従って、本発明に係るシリアルプリンタの発明に係る部分を説明する。
【0014】
本実施の形態では、カセットからとASFからの給紙機構を持つ構成を例として挙げているが、どちらからの給紙機構にも適用される。本実施の形態では、カセットからの給紙を例にしてに説明を進める。
【0015】
給紙モータ(26)で駆動される給紙ローラ(306)によってカセットからLFローラまで給紙する。その途中で、紙の後端検知をするためのセンサ(18)が存在し、紙の後端を検知することができる。本実施の形態では、紙の後端センサ(18)は給紙ローラ(306)とLFローラ(305)の中間に配置した構成としたが、カセット(8)から記録ヘッド(1)までの間であればどの位置に配置されても良い。又、複数のセンサを配置し、紙の位置をより正確に認識することも可能である。尚、記録ヘッドの駆動信号、駆動電力は不図示のフレキケーブルで不図示のコントロール基板と接続されている。
【0016】
図3は本発明の実施例に記載のシリアルプリンタにおける制御ブロック図である。以下図3に従って、制御ブロックの主要部分を説明する。
【0017】
CPU(12)は、ROM(13)に格納されているプログラムに従って動作し、ホストコンピュータから送られる記録データをインターフェース回路(11)で受信し、一旦RAM(14)に格納した後、CPUで記録可能なデータに加工処理して、再びRAM(14)に格納し、キャリッジ(2)の動作に合わせてRAM(14)からデータを読み出し、記録ヘッド駆動回路(27)に転送して記録を行う。
【0018】
後述する使用電力の算定や記録データのマスク処理は、ここではCPUが行なうものとして説明する。給紙モータ駆動回路(25)と給紙モータ(26)で一定位置まで紙を給紙する。その後は、LFモータ(24)によって紙送りを行なう。又、用紙後端検出センサ(18)は、用紙が所定量紙送りされたかどうかを判断するために用いられ、先行給紙のタイミングを決定するために用いられる。電源回路(10)は、装置の内部又は外部に設けられ、入力されるAC又はDC電力からロジックを動作させるための電力VCC(5V、3.3V等)とヘッドを駆動するための電力VH(BK用、Color用に分かれる場合もある)とモータを駆動するための電力VM(複数種類ある場合もある)を作成する。尚、VMとVHが同じ電圧である場合は、共通で使用される可能性もある。
【0019】
図4は本発明の実施の形態1に記載のシリアルプリンタにおける制御フローチャートである。
【0020】
以下、図4に従って制御フローを説明する。
【0021】
先ず、ステップS1で記録動作(印字)が行われるか否かを判断する。印字が行われなければ、記録ヘッド駆動電力(P11)が不要であり、先行給紙動作をするための電力供給が行えるため、ここでの処理は終了する。(但し、実際に印字は行われなくても記録ヘッド駆動電力(P11)が消費される状態、例えば、記録ヘッドを保温するために消費しているような場合は、ステップS2に進む)。
【0022】
一方、キャリッジの走査とともに記録(印字)が行われる場合には、ステップS2に進み、現在記録している用紙の後端が検知されたか否かを判断する。ここでは、紙の後端検知を行って、所定量の紙送りがなされたかを判断し、先行給紙を開始するか否かを判断するが、予め長さの分かっている紙に印字する場合は、紙の先端からの紙送り量(紙送りモータの回転量)で所定量を判定し、先行給紙を開始するか否かを判断することも可能である。又、ここでは紙の後端を検知したら先行給紙を行なうこととして説明するが、後端検知後更に紙送りをした後、先行給紙を開始する構成も考えられる。紙の後端検知用のセンサは複数箇所に持つことにより、紙の位置をより詳しく判別し、給紙のタイミングを判断することも可能である。
ここで、ステップS2で紙の後端を検知した場合は、ステップS3に進み、次の紙に記録すべきデータが存在するか否かを判断し、先行給紙が必要か否かを判定する。尚、別の構成として、次の紙に記録すべきデータが存在するか否かを判定せず、先行給紙を実行する構成も考えられる。即ち、ステップS3を飛ばす構成である。この場合、現在記録中の記録用紙への記録が終了した時点で次の紙に記録するデータが存在するか否かを判断し、存在すれば、記録用紙を所定の位置まで移動して記録を進め、データが存在しない場合には記録用紙をそのまま保持するか、排紙してしまうか、最初に用紙がセットされていた場所に紙を戻す等の処理が必要である。
【0023】
ステップS2で紙の後端がまだ検知されていない場合(即ち、現在記録中の紙が所定量紙送りされていない場合)には、次の紙の給紙動作を開始できないため、ステップS7に進み、通常の記録動作を行う。
【0024】
そして、ステップS3で次の紙に記録するデータが存在し、先行給紙が必要と判断した場合は、ステップS4に進む。しかし、ステップS3で次の紙に記録するデータが存在せず、先行給紙は必要ないと判断した場合は、ステップS7に進み、通常の記録動作を行う。
ステップS4では、記録動作電力(P1)と先行給紙電力(P2)を算定し、電源の電力供給能力(P)を超えていないかどうかを判断する。ここで、記録動作電力(P1)には記録ヘッドを駆動する電力(P11)や記録ヘッドを保温(又は冷却)する電力(P11に含む)、キャリッジを移動させるための電力(P12)、記録データを処理するための電力(P13)等の他、記録時にファンモータが駆動される場合の電力、記録紙を保持するための電力、記録紙を乾燥させる電力、記録結果を定着させる電力など記録装置の構成により様々なものが含まれる。ここでは、必要不可欠な記録ヘッドを駆動する電力(P11)とキャリッジを移動させる電力(P12)を例にとって説明を行う。尚、記録データを処理するための電力(P13)は先行給紙の有無や記録データの種類によって大きく変動しないと仮定し、ここでは説明を省略する。
【0025】
記録動作電力(P11)の算定はキャリッジ(記録ヘッド)が1走査中(1回のスキャン)に記録ヘッドにより記録される記録データの各色の記録ドットの数(単位面積当りのドット数。デューティー。)を積算し、1ドット記録するのに必要な電力を掛け合わせることで求める。
【0026】
又、これに記録ヘッドの保温に必要な電力を含める場合もある。記録動作電力(P11)には、瞬間的(1列から数十列の印字)に必要とされる最大電力と、キャリッジ1走査を通した平均電力の2つに大別され、両者を満足させる必要がある。
【0027】
キャリッジを移動させる電力(P12)の算定は設計上の電力値を定数として用いる場合やキャリッジ駆動用のモータの電力を予め測定しておき、常に定数として扱う場合や記録動作を開始する前にキャリッジの移動のみを行って、記録装置自体が必要な電力を測定し、機械的な負荷変動による変化を定数に反映させる等の方法で行う。
【0028】
尚、モータ駆動用の電力がキャリッジ1走査中で大きく変動する場合は、記録動作電力(P11)と同様、瞬間的に必要な電力と1走査と通した平均電力の両者が満足される必要がある。
【0029】
先行給紙電力(P2)の算定も、キャリッジを移動させる電力(P12)の算定と同様、給紙モータを駆動するために必要な設計上の電力値を定数として用いる場合や予め測定して定数とする場合、給紙動作時の電力を装置内で測定し、定数に反映させる場合等がある。
【0030】
尚、給紙モータ駆動用の電力が給紙動作中に大きく変動する場合は、記録動作電力(P11)、キャリッジを移動させる電力(P12)と同様、瞬間的に必要な電力と平均電力の両者が満足される必要がある。
【0031】
電源の電力供給能力(P)は予め設計されている電力に関する値を定数として用いる。本実施の形態では、記録ヘッド駆動電力(P1)と先行給紙電力(P2)で使用できる電力を(P)として説明をしているが、無論、電源はこの他の処理に必要な電力も供給している。又、電源の電力供給能力(P)も瞬間電力と平均電力の2種類の供給能力で判断する必要がある。
【0032】
ステップS4では、以上のような算定値から、記録動作電力(P1)と先行給紙電力(P2)の合計が電源の電力供給能力(P)を超えているかどうかを判断し、超えていなければステップS6へ進み、記録動作と先行給紙動作を行う。
【0033】
一方、超えている場合はステップS5へ進み、記録動作電力(P1)と先行給紙電力(P2)の合計が、電源の電力供給能力(P)以下になるように記録データの一部をマスクし、複数パス(走査)に分けて記録を行うことで記録動作電力(P1)を下げて、P1+P2≦Pとなるようにして記録動作と先行給紙動作を行う。尚、記録データの一部をマスクして、複数パス(走査)に分けて記録を行うより、マスクしないで記録を行った後給紙を行った方が結果的に時間を短縮できると判断した場合は、そのように処理することも考えられる。
【0034】
ここでは、記録データをマスクする方法は記録データを記録領域の上下(ノズル列方向の上流側、下流側)で分割し、それぞれを別のパスで記録して記録画像を完成させる。尚、このマスクはこの他にランダムマスクを用いたり、列単位(カラム単位)で間引いたり、千鳥配置で間引いたりする等、何でも良い。
【0035】
次に、ステップS7〜S9の通常の記録動作について説明する。
【0036】
ステップS7は記録動作電力(P1)が電源の電力供給能力(P)を超えているかどうかで、記録データをマスクする必要があるか否かを判断する。超えている場合は、先に述べたと同様なマスク手段で記録データをマスクし、記録動作電力(P1)が電源の電力供給能力(P)以下になるようにして記録動作を行う。
【0037】
しかし、記録動作電力(P1)が電源の電力供給能力(P)を超えていない場合は、ステップS9に進み、そのまま記録動作を行う。尚、ステップS7、S8は記録動作電力(P1)が電源の電力供給能力(P)を超えることが無いシステムである場合には、省略しステップS9を行うことができる。
【0038】
<実施の形態2>
図5は本発明の実施の形態2に記載のシリアルプリンタにおける制御フローチャートである。
【0039】
本実施の形態では、先行給紙の開始タイミングを選択し、記録動作電力(P1)と先行給紙電力(P2)の合計が電源の電力供給能力(P)以下となるように制御する。即ち、紙の後端検出を行った後、直ぐに先行給紙を行っても良いし、更に紙送りがなされた後、先行給紙を行っても良い場合に、記録動作電力(P1)が小さい場合を見計らって先行給紙を行うものである。但し、記録動作電力(P1)が小さくなる場合が存在しない場合には、記録動作終了後に給紙を行なうか、記録データをマスクして複数パスで記録することになる。
以下、図5に従って制御フローを説明する。
【0040】
ステップS101〜S103は図4のステップS1〜S3と同じであるため、説明を省略する。
【0041】
又、ステップS110は図4のステップS7〜S9と同等であるため、説明を省略する。
【0042】
ステップS3で先行給紙を行うと判断した場合、ステップS4で記録動作電力(P1)と先行給紙電力(P2)の合計が電源の電力供給能力(P)を超えているかどうかを判断する。超えている場合は、ステップS105に進み、先行給紙を行わないで通常の記録動作を行なう。ここで、通常の記録動作とはステップS110と同様、図4のステップS7〜S9と同等の処理を示し、もし、記録動作電力(P1)が電源の電力供給能力(P)を超えてしまう場合は、記録データをマスクし、複数パスに分けて記録する必要がある。
【0043】
ステップS105を終えたら、ステップS106に進み、現在記録中の用紙に記録すべきデータがまだ存在するかどうかを判断する。存在しなければ、ステップS108に進み、現在の紙の排紙と次に記録する紙の給紙を行ない、処理を終える。
【0044】
一方、ステップS106で記録すべきデータがまだ存在する場合は、ステップS107に進み、所定量の紙送りを行なって記録動作が行える状態にする。そして、再びステップS4に進み、先ほどと同様な判断をする。
【0045】
尚、ステップS104で記録動作電力(P1)と先行給紙電力(P2)の合計が電源の電力供給能力(P)を超えていない場合は、ステップS109に進み、記録動作と先行給紙動作を行う。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態に記載のシリアルプリンタの主要な部分を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に記載のシリアルプリンタのカセットからの給紙機構を横から見た模式図である。
【図3】本発明の実施の形態に記載のシリアルプリンタにおける制御ブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に記載のシリアルプリンタにおける制御フローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態に記載のシリアルプリンタにおける制御フローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
10 電源回路
18 用紙後端検出センサ
25 給紙モータ駆動回路
26 給紙モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録中の記録用紙に対して所定量の紙送りを行う状態で、次の記録用紙への記録データが存在する場合に、記録動作と平行して、次の記録用紙を所定の位置まで移動させるシリアルプリンタであって、
記録に必要な電力を算定する手段と、先行給紙に必要な電力を算定する手段と、両者の合計が予め設定した閾値を超えると判断した場合、記録データの一部をマスクする制御を行う制御手段とを備えることを特徴とするシリアルプリンタ。
【請求項2】
前記制御手段は、両者の合計が予め設定した閾値を超えると判断した場合、記録用紙の紙送り量が第2の所定量に達するまで先行給紙動作を行わないように制御することを特徴とする請求項1記載のシリアルプリンタ。
【請求項3】
データの有無を判断しないで行う先行給紙に必要な電力を算定する手段を更に有し、両者の合計が予め設定した閾値を超えると判断した場合、記録データの一部をマスクし、記録に必要な電力を下げて、前記両者の合計が予め設定した閾値を超えないよう制御することを特徴とする請求項1記載のシリアルプリンタ。
【請求項4】
予め設定した閾値を超えると判断した場合、記録用紙の紙送り量が第2の所定量に達するまで、データの有無を判断しないで行う先行給紙動作を行わないように制御することを特徴とする請求項3に記載のシリアルプリンタ。
【請求項5】
前記紙送り量は、記録用紙の後端検出位置又は後端検出後からの紙送り量で規定することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のシリアルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−123237(P2006−123237A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311998(P2004−311998)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】