説明

シリカ系ゾル

本発明は、少なくとも約10の軸比及び少なくとも約600m2/gの比表面積を有するシリカ系粒子を含有するゾルに関する。本発明は、少なくとも約10の軸比及び約25以下のS値を有するシリカ系粒子を含有するゾルにさらに関する。本発明は、そのシリカ系粒子が表面改質される、少なくとも約10の軸比及び少なくとも約400m2/gの比表面積を有するシリカ系粒子を含有するゾルにさらに関する。本発明は、そのシリカ系粒子が少なくとも400m2/gの比表面積を有する、少なくとも50cPの粘度及び少なくとも3重量%のシリカ含有量を有するシリカ系粒子を含有するゾルにさらに関する。本発明は、本発明による水性シリカ系ゾルを製造するための方法、その方法によって得ることができるシリカ系粒子を含有するゾル、そのシリカ系粒子を含有するゾルの凝集剤としての使用にさらに関する。本発明は、上記シリカ系粒子を含有するゾルを濾水及び歩留まり向上剤として使用する、紙を製造するための方法にさらに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ系ゾルならびにそれらの製造及び使用に関する。本発明は、高い安定性及びSiO含有量ならびに製紙の際に改善された濾水及び歩留まり性能を有するシリカ系ゾルを提供する。
【背景技術】
【0002】
製紙技術分野では、セルロース系繊維、ならびに任意のフィラー及び添加剤、を含有する水性懸濁液を、フォーミングワイヤ上にセルロース懸濁液を吐出するヘッドボックスに供給する。そのセルロース懸濁液から水を排出させて湿潤紙ウェブを生じさせ、それをさらに脱水し、紗紙機の乾燥部で乾燥させる。従来、そのセルロース懸濁液に濾水及び歩留まり向上剤を導入して、濾水を助長し、セルロース系繊維上への微粒子の吸着を増加させてそれらを繊維に留まらせていた。
【0003】
シリカ系粒子のゾルは、通常は荷電有機ポリマーと併用で、濾水及び歩留まり向上剤として広く用いられている。そのような添加剤系、特に、高い表面積のミクロゲル又は凝集粒子を含有するシリカ系ゾルを含むものは、製紙業界において現在使用されている最も有効なものの1つである。このタイプのシリカ系ゾルの例としては、米国特許第5,176,891号、米国特許第5,368,833号、米国特許第5,603,805号及び米国特許第6,372,806号、ならびに国際公開第98/30753号、国際公開第98/56715号、国際公開第00/66491号、国際公開第00/66492号、国際公開第2005/097678号及び国際公開第2005/100241号に記載されているものが挙げられる。
【0004】
球状シリカ系粒子は、その条件に依存して様々な方法で成長及び凝集し得る。一定の条件下ではそれらの粒子が対称に成長し、それによって球形を維持する。他の条件下では球状粒子が凝集して粒子のクラスタになり、三次元網目構造及びミクロゲルを形成する。シリカ系粒子は、ほぼ線形である細長い凝集物にもなり、例えば、異なる方向又は軸で異なる凝集度を有する凝集物にもなる。
【0005】
ミクロゲルを含有する高表面積水性シリカ系ゾルは、通常、劣った安定性を有し、完全なゲル化を避けるために高い希釈度を通常必要とする。そのような製品に付随する安定性の問題、及び安定しているが極めて希薄な製品の非常に高い出荷費用のため、ミクロゲルを含有する高表面積水性シリカ系ゾルは、使用が予定される場所で、例えば、製紙工場で調製されることが好ましい。
【0006】
凝集したシリカ系粒子のゲルは、S値及び軸比をはじめとする種々のパラメータによって定義することができる。S値は、凝集物又はミクロゲル形成度を示し、低いS値ほど、シリカ系粒子の高い凝集度を示す。軸比は、シリカ粒子の細長い凝集物に適用でき、長軸の短軸に対する比を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,176,891号
【特許文献2】米国特許第5,368,833号
【特許文献3】米国特許第5,603,805号
【特許文献4】米国特許第6,372,806号
【特許文献5】国際公開第98/30753号
【特許文献6】国際公開第98/56715号
【特許文献7】国際公開第00/66491号
【特許文献8】国際公開第00/66492号
【特許文献9】国際公開第2005/097678号
【特許文献10】国際公開第2005/100241号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
改善された濾水及び歩留まり性能を有するシリカ系ゾルを提供できると有利である。シリカ系ゾル、ならびに、特に、非常に高い表面積及びSiO含有量で改善された表面安定性を有する凝集物又はミクロゲル含有シリカ系ゾルを提供できることも有利である。そのようなシリカ系ゾルを製造するための方法を提供できることも有利である。改善された濾水及び歩留まり性能を有する製紙方法を提供できることも有利である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一般に、少なくとも10の軸比及び少なくとも600m/gの比表面積を有するシリカ系粒子を含有するゾルに関する。
【0010】
本発明は、さらに、一般に、少なくとも約10の軸比及び約35以下のS値を有するシリカ系粒子を含有するゾルに関する。
【0011】
本発明は、さらに、一般に、少なくとも約10の軸比及び少なくとも約400m/gの比表面積を有するシリカ系粒子を含有するゾルに関し、この場合、上記シリカ系粒子は、表面改質される。
【0012】
本発明は、さらに、一般に、少なくとも50cPの粘度及び少なくとも約3重量%のシリカ含有量を有するシリカ系粒子を含有するゾルに関し、この場合、上記シリカ系粒子は、少なくとも約400m/gの比表面積を有する。
【0013】
さらに、一般に、本発明は、
(a)水とそのイオン交換容量の少なくとも一部を水素形で有するカチオン交換樹脂とを含む反応容器を準備するステップ、
(b)1時間あたり反応容器中に存在するイオン交換樹脂1kgにつき少なくとも約400gのSiOという速度でアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を上記反応容器に添加して、ケイ酸塩水溶液スラリーを形成するステップ、
(c)水性相のpHが約5.0から約9.0の範囲になるまで上記ケイ酸塩水溶液スラリーを攪拌するステップ、
(d)1つ又はそれ以上のアルカリ性材料を上記水性相に添加して、pHを約7.0から約11.0の範囲にするステップ、及び
(e)ステップ(c)の後又はステップ(d)の後に上記イオン交換樹脂を上記水性相から分離するステップ
を含む、シリカ系粒子を含有するゾルを製造するための方法に関する。
【0014】
一般に、本発明は、
(a)水とそのイオン交換容量の少なくとも一部を水素形で有するカチオン交換樹脂とを含む反応容器を準備するステップ、
(b)上記反応容器にアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を添加して、ケイ酸塩水溶液スラリーを形成するステップ、
(c)水性相のpHが約5.0から約8.5の範囲になるまで上記ケイ酸塩水溶液スラリーを攪拌するステップ、
(d)1つ又はそれ以上のアルカリ性材料を上記水性相に添加して、pHを約7.0から約8.5の範囲にするステップ、及び
(e)ステップ(c)の後又はステップ(d)の後に上記イオン交換樹脂を上記水性相から分離するステップ
を含む、シリカ系粒子を含有するゾルを製造するための方法にも関する。
【0015】
本発明は、さらに、本発明による方法によって得ることができるシリカ系粒子を含有するゾルに関する。
【0016】
さらに、本発明は、凝集剤などの本発明によるシリカ系粒子を含有するゾルの様々な使用、特に、製紙の際の濾水及び歩留まり向上剤としてのならびに浄水用の凝集剤としての使用に関する。
【0017】
さらに、一般に、本発明は、
(a)セルロース系繊維を含む水性懸濁液を提供するステップ、
(b)本発明によるシリカ系粒子を含有するゾルを含む1つ又はそれ以上の濾水及び歩留まり向上剤を上記懸濁液に添加するステップ、及び
(c)得られた懸濁液を脱水して、紙のシート又はウェブを生じさせるステップ
を含む、紙を製造するための方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に従って、製紙及び浄水の際の凝集剤としての、特に、製紙の際の濾水及び歩留まり向上剤としての使用に適する、シリカ系粒子を含有するゾル(本明細書ではシリカ系ゾルとも呼ぶ)を提供する。用語「濾水及び歩留まり向上剤」は、本明細書において用いる場合、1つ又はそれ以上の添加剤であって、水性セルロース懸濁液に添加されたとき、上記1つ又はそれ以上の添加剤を添加していないときに得られるものより良好な濾水及び/又は歩留まりを生じさせるものを指す。本発明のシリカ系ゾルは、長期間にわたって良好な安定性、非常に高い軸比及び表面積安定性、ならびにゲル形成を完了する高い安定性を示す。さらに、シリカ系ゾルは、製紙に使用すると、結果として改善された濾水及び歩留まりを生じさせる。これにより、本発明は、抄紙機の速度を上昇させることができ、及びより少ない添加剤投与量を用いて対応する濾水及び歩留まり効果を生じさせることができ、それの結果、改善された製紙方法及び経済的恩恵をもたらすことができる。
【0019】
本発明による水性シリカ系ゾルは、好ましくはアニオン性である及び好ましくはコロイド状、すなわちコロイド粒径範囲である、シリカ系粒子、すなわちシリカ又はSiOに基づく粒子を含有する。このタイプの水性分散液は、通常、ゾルと呼ばれる。好ましくは、上記シリカ系粒子は、ホモ重合又は共重合することができるケイ酸含有化合物、例えばケイ酸及びケイ酸塩の縮合重合よって作製されている。上記シリカ系ゾルは、改質され、他の成分、例えばアルミニウム、ホウ素、窒素、ジルコニウム、ガリウム及びチタン、を含有する場合があり、それらの成分は、そのゾルの水性相に存在することもあり、及び/又はそのシリカ系粒子中に存在することもある。そのような成分は、シリカ系ゾル中に不純物として存在する場合もある。
【0020】
本発明によるシリカ系ゾルは、非対称又は細長いシリカ系粒子を含有する。好ましくは、そのような非対称粒子は、軸比、すなわち長軸の短軸に対する比、によって特徴付けられる回転楕円体としてモデル化される。粒子非対称性は、コロイド状シリカ系粒子の並進及び回転拡散係数に影響を及ぼし、それらのゾル又は溶液の粘度にも影響を及ぼす。これらの特性を用いて、粘度と動的光散乱を併用して直接又は間接的に軸比を決定することができる。本発明のシリカ系ゾルは、通常、少なくとも約10又は少なくとも約11、適切には少なくとも12、及び好ましくは少なくとも13の軸比を有する。通常、上記軸比は、約100以下又は約50以下、適切には約40以下、及び好ましくは約35以下である。本明細書に与える軸比は、ゾル中に存在するシリカ系粒子の平均軸比を表す。この軸比は、等価の非溶媒和長楕円の寸法及び軸比を決定している、D.Biddle、C.Walldal及びS.WallによってColloids and Surfaces, A: Physiochemical and Engineering Aspects 118(1996), 89-95に記載されたように、測定し、計算する。この楕円体モデルは、長いほうの直径(a)と短いほうの直径(b)の間の比によって特徴づけられる。この軸比をa/bと定義する。用いるモデルは、固有粘度測定値及び動的光散乱測定値から得られるデータと回転楕円体の固有粘度及び分別因子それぞれについてのSimha及びPerrinの関係の組み合わせである。そこでこれらのデータを用いて楕円形への数学的あてはめを繰り返し、それによってシリカ系粒子の形状を表現する軸比を得ることができる。
【0021】
本発明のシリカ系ゾルは、通常、少なくとも約4%又は少なくとも約6%、適切には少なくとも8%、及び好ましくは少なくとも10%のS値を有する。通常、このS値は、約50%以下又は約35%以下、適切には約30%以下、及び好ましくは約25%以下である。このS値は、R.K.Her及びR.L.DaltonよってJ. Phys. Chem. 60(1956), 955-957に記載されているように、測定し、計算する。シリカ系ゾルのS値は、凝集又はミクロゲル形成度を示し、S値が低いほど、高い凝集物又はミクロゲル形成度を示す。
【0022】
上記ゾル中のシリカ系粒子は、通常、少なくとも約400m/g又は少なくとも約500m/g、適切には少なくとも600m/g又は少なくとも約700m/g、好ましくは少なくとも約800m/g、及びさらに好ましくは少なくとも1000m/gの比表面積を有する。この比表面積は、通常、1600m/g又は少なくとも約1500m/g以下、適切には約1400m/g以下、及び好ましくは約1300m/g以下である。上記比表面積は、例えばSearsによって米国特許第5,176,891号に記載されているように、滴定を妨げることがあるサンプル中に存在する任意の化合物、例えばアルミニウム及びホウ素化合物、を適切に除去又は調整した後、G.W.Sears,Jr.によってAnalytical Chemistry 28(1956): 12, 1981-1983に記載されているようなNaOHでの滴定によって測定する。本明細書に与える比表面積は、ゾル中に存在するシリカ系粒子の平均比表面積を表す。
【0023】
本発明の1つの実施形態において、シリカ系ゾルは、アルミニウムで改質される。適するアルミニウム化合物の例としては、本明細書において定義するものが挙げられる。この実施形態によると、シリカ系粒子は、好ましくは少なくともアルミニウムで表面改質される。アルミニウムで表面改質された場合、そのシリカ系ゾルは、通常、約1:1から40:1、適切には約3:1から30:1、及び好ましくは約5:1から20:1のSi:Alのモル比を有する。
【0024】
本発明の1つの実施形態において、シリカ系ゾルは、有機窒素含有化合物で改質される。適する有機窒素含有化合物の例としては、本明細書において定義するものが挙げられる。この実施形態によると、シリカ系粒子は、好ましくは少なくとも有機窒素含有化合物で表面改質される。有機窒素含有化合物で改質された場合、そのシリカ系ゾルは、通常、約1:1から50:1、適切には約2:1から40:1、及び好ましくは約2.5:1から25:1のSi:Nのモル比を有する。
【0025】
本発明のシリカ系ゾルは、通常、少なくとも5:1、適切には少なくとも6:1、好ましくは少なくとも7:1、及び最も好ましくは少なくとも8:1のSi:Xのモル比(この場合、X=アルカリ金属)を有する。このSi:Xのモル比(この場合、X=アルカリ金属)は、通常、30:1以下、適切には20:1以下、好ましくは15:1以下、及びさらに好ましくは12:1以下である。
【0026】
本発明のシリカ系ゾルは、少なくとも約6.0又は少なくとも約6.5、適切には少なくとも約7.0、少なくとも約7.5又は少なくとも約8.0のpHを有する。通常、シリカ系ゾルのpHは、約12.0以下もしくは約11.0以下、適切には約10.5以下、約10.0以下であり、又は9.5以下、約9.0以下でさえあり、又は8.5以下もしくは約8.0以下である場合もある。
【0027】
本発明のシリカ系ゾルは、通常、少なくとも約2重量%、適切には約3重量%又は少なくとも4重量%、及び好ましくは少なくとも約5重量%のシリカ(SiO)含有量を有する。通常、このシリカ含有量は、約30重量%以下又は約20重量%以下、適切には約15重量%以下、及び好ましくは約10重量%以下である。出荷を単純にし、輸送費用を低減するために、一般に、本発明による高濃度シリカ系ゾルを出荷するのが好ましいが、勿論、完成紙料成分との混合を改善するために使用前にシリカ系ゾルを実質的により低いシリカ含有量に、例えば0.05から2重量%の範囲内のシリカ含有量に、希釈して混合することができ、通常はそのほうが好ましい。
【0028】
本発明のシリカ系ゾルの粘度は、例えばそのゾルのシリカ含有量に依存して、変動し得る。通常、この粘度は、少なくとも5cP、多くの場合、少なくとも約10cP又は少なくとも約20cPであり、少なくとも約50cP又は少なくとも75cPであることさえある。通常、この粘度は、約200cP以下又は約175cP以下、適切には約150cP以下である。上記粘度は、公知の技術によって、例えば、ブルックフィールドLVDV II+粘度計を使用して、測定することができる。
【0029】
本発明のシリカ系ゾルは、好ましくは安定している。好ましくは、シリカ系ゾルは、一定の期間にわたってそのパラメータの一部を維持する。通常、本ゾルは、20℃、暗所及び非攪拌条件での保管又は老化に対して、少なくとも3ヶ月間、少なくとも約10、適切には少なくとも約11、及び好ましくは少なくとも約12の軸比を維持する。適切には、これらの軸比は、重量で少なくとも約3及び好ましくは重量で少なくとも約5のシリカ含有量で維持される。通常、本ゾルは、20℃、暗所及び非攪拌条件での保管又は老化に対して、少なくとも3ヶ月間、少なくとも約400m/g又は少なくとも約600m/g、適切には少なくとも約800m/g、及びさらに好ましくは少なくとも約1000m/gの比表面積を維持する。適切には、これらの比表面積は、重量で少なくとも約3及び好ましくは重量で少なくとも約5のシリカ含有量で維持される。通常、本ゾルは、20℃、暗所及び非攪拌条件での保管又は老化に対して、少なくとも3ヶ月間、上で定義した粘度値を維持する。適切には、これらの粘度値は、重量で少なくとも約3及び好ましくは重量で少なくとも約5のシリカ含有量で維持される。
【0030】
本発明のシリカ系ゾルは、制御及び調整が単純、迅速、且つ、容易である方法によって、製造することができる。
【0031】
上記方法のステップ(a)は、水及びイオン交換樹脂を含有する水性相を含む反応容器の準備を含む。この方法において使用されるイオン交換樹脂は、カチオン性であり、そのイオン交換容量の少なくとも一部を水素形で有する(すなわち、酸性カチオン性イオン交換樹脂、好ましくは弱酸性カチオン性イオン交換樹脂)。適切には、上記イオン交換樹脂は、そのイオン交換容量の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%を水素形で有する。適するイオン交換樹脂は、幾つかの製造業者によって市場に供給されている(例えば、Rohm & HaasからのAmberilite(商標)IRC84SPI)。好ましくは、混合のための手段、例えば攪拌機、を装備した反応容器に、上記イオン交換樹脂及び水が充填される。好ましくは、上記イオン交換樹脂は、酸、例えば硫酸の添加により、好ましくは製造業者の説示に従って再生される。
【0032】
上記方法のステップ(b)は、水及びイオン交換樹脂、好ましくは再生イオン交換樹脂、が入っている上記反応容器にアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を添加して、ケイ酸塩水溶液スラリーを形成することを含む。通常、上記アルカリ金属ケイ酸塩水溶液は、1時間あたりその反応容器内に存在するイオン交換樹脂1kgにつき少なくとも約400、適切には少なくとも約450、及び好ましくは少なくとも約500gのSiOという速度で反応容器に添加される。通常、この速度は、1時間あたりその反応容器内に存在するイオン交換樹脂1kgにつき約10000g以下又は約7000g以下、適切には約5000g以下、及び好ましくは約4000g以下のSiOである。
【0033】
適するアルカリ金属ケイ酸塩水溶液又は水ガラスの例としては、従来の材料、例えば、ケイ酸リチウム、ナトリウム及びカリウム、好ましくはケイ酸ナトリウムが挙げられる。上記ケイ酸塩溶液中のシリカのアルカリ金属酸化物に対する、例えばSiOのNaO、KOもしくはLiO又はそれらの混合物に対するモル比は、15:1から1:1の範囲、適切には4.5:1から1.5:1の範囲、好ましくは3.9:1から2.5:1の範囲であり得る。使用されるアルカリ金属ケイ酸塩水溶液は、約2から約35重量%、適切には約5から約30重量%、及び好ましくは約15から約25重量%のSiO含有量を有し得る。上記アルカリ金属ケイ酸塩水溶液のpHは、通常、11より上、典型的には12より上である。
【0034】
本発明の好ましい実施形態によると、上記方法のステップ(b)は、形成されるケイ酸塩水溶液スラリーの温度を少なくとも約0℃、適切には少なくとも約5℃、及び好ましくは少なくとも約10℃から、約80℃まで又は50℃まで、適切には約40℃まで、及び好ましくは約35℃までに保持又は維持することを含む。これは、水及びイオン交換樹脂が入っている反応容器にアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を添加している間、その反応容器の温度を冷却又は制御することによって達成することができる。
【0035】
上記方法のステップ(c)は、その水性相が一定のpH値に達するまで上記ケイ酸塩水溶液スラリーを攪拌することを含む。通常、上記水性相は、少なくとも約5.0、適切には少なくとも約6.0又は少なくとも約6.5、好ましくは少なくとも約7.0のpHを有する。通常、上記水性相は、約9.0以下、適切には約8.5以下、及び好ましくは約8.0以下のpHに達する。好ましくは、上記ケイ酸塩水溶液スラリーを攪拌している間に粒子の成長が発生する。形成されるシリカ系粒子は、通常、少なくとも300m/g、適切には少なくとも約600m/g、及び好ましくは少なくとも約1000m/gの比表面積を有する。上記比表面積は、通常、非常に高く、例えば、約1600m/g以下又は約1400m/g以下である。適切には、上記スラリーを、シリカ系粒子の粒子凝集及び、好ましくは、細長い凝集物の形成を可能にするように攪拌する。上記攪拌は、通常、約1から約480分、適切には約3から約120分及び好ましくは約5から約60分間にわたって行われる。
【0036】
本発明の1つの実施形態によると、上記方法のステップ(c)は、攪拌している間、上記ケイ酸塩水溶液スラリーの温度を少なくとも約0℃、適切には少なくとも約5℃及び好ましくは少なくとも約10℃から、約80℃まで又は50℃まで、適切には約40℃まで及び好ましくは約35℃までに保持又は維持することを含む。これは、上記ケイ酸塩水溶液スラリーを攪拌している間、その反応容器の温度を冷却又は制御することによって達成することができる。
【0037】
所望される場合、水性相の粘度を低下させるために、ならびにシリカ系粒子の粒子成長、粒子凝集及び細長い凝集物の形成の速度を低下させるために、ステップ(c)中又は後にその反応容器への追加の水があってもよい。
【0038】
上記方法のステップ(d)は、上記水性相への1つ又はそれ以上のアルカリ性材料の添加を含む。通常、上記1つ又はそれ以上のアルカリ性材料の添加は、上記水性相のpHを少なくとも約6.0又は少なくとも約6.5、適切には少なくとも約7.0、少なくとも約7.5又は少なくとも約8.0に上昇させる。通常、上記水性相のpHは、約12.0以下もしくは約11.0以下、適切には約10.5以下、約10.0以下であり、又は9.5以下、約9.0以下でさえあり、又は8.5以下もしくは約8.0以下である場合もある。好ましくは、少なくとも1つのアルカリ性材料は、単独で又は少なくとも1つの第二の材料と併用で添加される。
【0039】
適するアルカリ性材料の例としては、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液、例えば、上で定義したもののいずれか、好ましくはケイ酸ナトリウム;アルカリ金属水酸化物水溶液、例えば、水酸化ナトリウム及びカリウム、好ましくは水酸化ナトリウム;水酸化アンモニウム;アルカリ性アルミニウム塩、例えば、アルミン酸塩、適切にはアルミン酸塩水溶液、例えば、アルミン酸ナトリウム及びカリウム、好ましくはアルミン酸ナトリウムが挙げられる。
【0040】
適する第二の材料としては、アルミニウム化合物及び有機窒素含有化合物が挙げられる。適するアルミニウム化合物の例としては、中性及び本質的に中性のアルミニウム塩、例えば、硝酸アルミニウム、アルカリ性アルミニウム塩、例えば、上で定義したもののいずれか、好ましくはアルミン酸ナトリウムが挙げられる。
【0041】
適する有機窒素含有化合物の例としては、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン及び第四級アミンが挙げられ、最後のものは第四級アンモニウム化合物とも呼ばれる。上記窒素含有化合物は、好ましくは、水溶性又は水分散性である。上記アミンは、非電荷である場合もあり、カチオン性である場合もある。カチオン性アミンの例としては、第一級、第二級及び第三級アミンならびに好ましくは第四級アンモニウム化合物の酸付加塩、ならびにそれらの水酸化物が挙げられる。上記有機窒素含有化合物は、通常、1,000未満、適切には500未満、及び好ましくは300未満の分子量を有する。好ましくは、低分子量有機窒素含有化合物、例えば、25個以下の炭素原子、適切には20個以下の炭素原子、好ましくは2から12個の炭素原子、及び最も好ましくは2から8個の炭素原子を有する化合物が使用される。好ましい実施形態において、上記有機窒素含有化合物は、例えばヒドロキシル基及び/又はアルキルオキシ基の形態の酸素を有する、1つ又はそれ以上の酸素含有置換基を有する。このタイプの好ましい置換基の例としては、ヒドロキシアルキル基、例えばエタノール基、ならびにメトキシ及びエトキシ基が挙げられる。上記有機窒素含有化合物は、1個又はそれ以上、好ましくは1個又は2個の窒素原子を含むことができる。好ましいアミンとしては、少なくとも6、適切には少なくとも7、及び好ましくは少なくとも7.5のpKa値を有するものが挙げられる。
【0042】
適する第一級アミン、すなわち1個の有機置換基を有するアミンの例としては、アルキルアミン、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン及びシクロヘキシルアミン;アルカノールアミン、例えば、エタノールアミン;ならびにアルコキシアルキルアミン、例えば、2−メトキシエチルアミンが挙げられる。適する第二級アミン、すなわち2個の有機置換基を有するアミンの例としては、ジアルキルアミン、例えば、ジエチルアミン、ジプロピルアミン及びジイソプロピルアミン;ジアルカノールアミン、例えば、ジエタノールアミン、及びピロリジンが挙げられる。適する第三級アミン、すなわち3個の有機置換基を有するアミンの例としては、トリアルキルアミン、例えば、トリエチルアミン;トリアルカノールアミン、例えば、トリエタノールアミン;N,N−ジアルキルアルカノールアミン、例えば、N,N−ジメチルエタノールアミンが挙げられる。適する第四級アミン、又は第四級アンモニウム化合物、すなわち4個の有機置換基を有するアミンの例としては、テトラアルカノールアミン、例えば、水酸化テトラエタノールアンモニウム及び塩化テトラエタノールアンモニウム;アルカノール置換基とアルキル置換基の両方を有する第四級アミン又はアンモニウム化合物、例えば、N−アルキルトリアルカノールアミン、例えば水酸化メチルトリエタノールアンモニウム及び塩化メチルトリエタノールアンモニウム;N,N−ジアルキルジアルカノールアミン、例えば、水酸化ジメチルジエタノールアンモニウム及び塩化ジメチルジエタノールアンモニウム;N,N,N−トリアルキルアルカノールアミン、例えば、水酸化コリン及び塩化コリン;N,N,N−トリアルキルベンジルアミン、例えば、水酸化ジメチルココベンジルアンモニウム、塩化ジメチルココベンジルアンモニウム及び水酸化トリメチルベンジルアンモニウム;テトラアルキルアンモニウム塩、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム、塩化ジエチルジメチルアンモニウム、水酸化トリエチルメチルアンモニウム及び塩化トリエチルメチルアンモニウムが挙げられる。適するジアミンの例としては、アミノアルキルアルカノールアミン、例えば、1から4個の炭素原子の1又は2個の低級アルキル基を有するアミノエチルエタノールアミン、ピペラジン及び窒素置換ピペラジンが挙げられる。好ましい有機窒素含有化合物の例としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、アミノエチルエタノールアミン、2−メトキシエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、水酸化コリン、塩化コリン、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム及び水酸化テトラエタノールアンモニウムが挙げられる。
【0043】
好ましくは、金属ケイ酸塩水溶液は、単独で、又はアルミン酸ナトリウム水溶液もしくは有機窒素含有化合物水溶液と組み合わせて添加される。
【0044】
本発明の方法のステップ(d)においてアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を使用するとき、そのアルカリ金属ケイ酸塩水溶液は、通常、1時間あたりその反応容器内に存在するイオン交換樹脂1kgにつき少なくとも約300又は少なくとも約350、及び適切には少なくとも約400又は少なくとも約450gのSiOという速度で反応容器に添加される。通常、この速度は、1時間あたりその反応容器内に存在するイオン交換樹脂1kgにつき約10000g以下又は約7000g以下、適切には約5,000g以下、及び好ましくは約4000g以下のSiOである。
【0045】
少なくとも1つのアルカリ性材料及び少なくとも1つの第二の材料を含む2つ又はそれ以上の材料を使用するとき、それらの材料は、任意の順序で添加することができ、好ましくは、アルカリ性材料が添加され、続いて第二の材料が添加される。
【0046】
1つの実施形態において、アルカリ金属ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウム、が最初に添加され、次にアルカリ性アルミニウム塩、例えばアルミン酸ナトリウム水溶液、が添加される。もう1つの実施形態において、アルカリ金属水酸化物水溶液、例えば水酸化ナトリウム、が最初に添加され、次にアルカリ性アルミニウム塩、例えばアルミン酸ナトリウム水溶液が添加される。アルミニウム化合物の添加は、アルミン酸化ケイ素系ゾルを生じさせる。適切には、アルミニウム化合物の添加は、結果として、シリカ系粒子に対するアルミニウム改質を生じさせ、好ましくは、それらの粒子は、アルミニウムによって表面改質される。使用されるアルミニウム化合物の量は、広い範囲内で変えることができる。通常、添加されるアルミニウム化合物の量は、約1:1から約40:1、適切には約3:1から約30:1、及び好ましくは約5:1から約20:1のSi:Alのモル比に相当する。
【0047】
もう1つの実施形態において、アルカリ金属ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウム、が最初に添加され、次に有機窒素含有化合物、例えば水酸化コリン水溶液、が添加される。もう1つの実施形態において、アルカリ金属水酸化物水溶液、例えば水酸化ナトリウム、が最初に添加され、次に有機窒素含有化合物、例えば水酸化コリン水溶液、が添加される。有機窒素含有化合物の添加は、窒素改質シリカ系ゾルを生じさせる。使用される有機窒素含有化合物の量は、広い範囲内で変えることができる。通常、添加される有機窒素含有化合物の量は、1:1から50:1、適切には2:1から40:1、及び好ましくは2.5:1から25:1のSi:Nのモル比に相当する。
【0048】
本発明の1つの実施形態によると、上記方法のステップ(d)は、上記1つ又はそれ以上のアルカリ性材料を水性相に添加している間、その水性相の温度を少なくとも約0℃、適切には少なくとも約5℃及び好ましくは少なくとも約10℃から、約80℃まで又は約50℃まで、適切には約40℃まで及び好ましくは約35℃までに保持又は維持することを含む。これは、上記1つ又はそれ以上のアルカリ性材料を水性相に添加している間、その反応容器の温度を冷却又は制御することによって達成することができる。
【0049】
所望される場合、水性相の粘度を低下させるために、ならびにシリカ系粒子の粒子成長、粒子凝集及び細長い凝集物の形成の速度を低下させるために、ステップ(d)中又は後にその反応容器への追加の水があってもよい。
【0050】
上記方法のステップ(e)において、イオン交換樹脂は、例えば濾過によって、水性相から分離される。これは、ステップ(c)の後、例えば、ステップ(c)の後だがステップ(d)の前、又はステップ(d)の後に行うことができる。ステップ(d)の間に水性相からイオン交換樹脂を分離することもできる。例えば、イオン交換樹脂は、アルカリ金属を添加した後、しかし第二の材料を添加する前に分離することができる。あるアルカリ性材料、例えばアルカリ金属ケイ酸塩水溶液の一部を添加し、次にその水性相からイオン交換樹脂を分離し、その後、そのアルカリ性材料の残りの部分を添加することもできる。好ましくは、イオン交換樹脂は、ステップ(d)の後に水性相から分離される。
【0051】
上記方法において使用される出発原料水溶液、例えばアルカリ金属ケイ酸塩水溶液、アルカリ金属水酸化物水溶液及びアルミン酸ナトリウム水溶液の濃度は、好ましくは、上で定義したようなシリカ(SiO)含有量を有するシリカ系ゾルを生じさせるように調整される。
【0052】
所望される場合、水性相からイオン交換樹脂を分離した後に得られるシリカ系ゾルを濃縮に付すことができる。これは、公知の方法で、例えば、浸透圧法、蒸発及び限界濾過などによって、行うことができる。この濃縮を行って、上で定義したようなシリカ含有量を有するシリカ系ゾルを生じさせることができる。
【0053】
本発明によるシリカ系ゾルは、例えばパルプ及び紙の製造の際の凝集剤としての、特に、濾水及び歩留まり向上剤としての使用、ならびに浄水の分野内では、異なる種類の廃水の浄化とパルプ及び製紙工業からの特に白水の浄化の両方のための使用に適する。シリカ系ゾルは、アニオン性、両性、非イオン性及びカチオン性ポリマーならびにそれらの混合物から選択することができる有機ポリマーと併用で、凝集剤として、特に濾水及び歩留まり向上剤として、使用することができる。凝集剤としてのならびに濾水及び歩留まり向上剤としてのそのようなポリマーの使用は、当分野において周知である。上記ポリマーは、天然源から得られる場合もあり、又は合成源から得られる場合もあり、ならびに線状である場合もあり、分岐している場合もあり、又は架橋されている場合もある。一般に適する有機ポリマーの例としては、アニオン性、両性及びカチオン性デンプン;本質的に線状、分岐及び架橋アニオン性及びカチオン性アクリルアミド系ポリマーをはじめとする、アニオン性、両性及びカチオン性アクリルアミド系ポリマー;ならびにカチオン性ポリ(ジアリル−ジメチルアンモニウムクロライド);カチオン性ポリエチレンイミン;カチオン性ポリアミン;カチオン性ポリアミドアミン及びビニルアミド系ポリマー、メラミン−ホルムアルデヒド及び尿素−ホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。適切には、シリカ系ゾルは、少なくとも1つのカチオン性又は両性ポリマー、好ましくはカチオン性ポリマーと併用される。カチオン性デンプン及びカチオン性ポリアクリルアミドが特に好ましいポリマーであり、それらは、単独で、互いに一緒に、又は他のポリマー、例えば他のカチオン性及び/もしくはアニオン性ポリマー、と一緒に使用することができる。上記ポリマーの重量平均分子量は、適切には1,000,000より上、及び好ましくは2,000,000より上である。上記ポリマーの重量平均分子量の上限は重要ではなく、約50,000,000、通常は30,000,000及び適切には約25,000,000であり得る。しかし、天然源から得られるポリマーの重量平均分子量は、より高いことがある。
【0054】
シリカ系ゾルは、上で説明した有機ポリマーの併用を伴い、又は伴わずに、カチオン性凝集剤と併用することもできる。適するカチオン性凝集剤の例としては、水溶性有機ポリマー凝集剤及び無機凝集剤が挙げられる。カチオン性凝集剤は、単独で使用することができ、又は一緒に使用することができ、すなわち、ポリマー系凝集剤を有機凝集剤と併用することができる。適する水溶性有機ポリマー系カチオン性凝集剤の例としては、カチオン性ポリアミン、ポリアミドアミン、ポリエチレンイミン、ジシアノジアミン縮合ポリマー、及び水溶性エチレン性不飽和モノマー又はモノマーブレンド(50から100モル%のカチオン性モノマーと0から50モル%の他のモノマーからなるもの)のポリマーが挙げられる。カチオン性モノマーの量は、通常、少なくとも80モル%、適切には100モル%である。適するエチレン性不飽和カチオン性モノマーの例としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)−アクリレート及び−アクリルアミド、好ましくは四級化形態のもの、ならびに塩化ジアリルジアルキルアンモニウム、例えば塩化ジアリルジメチルアンモニウム(DADMAC)、好ましくはDADMACのホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。上記有機ポリマー系カチオン性凝集剤は、通常、1,000から700,000、適切には10,000から500,000の重量平均分子量を有する。適する無機凝集剤の例としては、アルミニウム化合物、例えば、ミョウバン及びポリアルミニウム化合物、例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸アルミニウム、ポリケイ酸硫酸アルミニウム及びそれらの混合物が挙げられる。
【0055】
本発明による濾水及び歩留まり向上剤の成分は、ストック、すなわち水性セルロース懸濁液、に、従来の方法で及び任意の順序で添加することができる。シリカ系ゾル及び有機ポリマーを含む濾水及び歩留まり向上剤を使用するとき、たとえ反対の添加順序を用いることができるとしても、シリカ系ゾルを添加する前に有機ポリマーをストックに添加するほうが好ましい。ポンピング、混合、精選などから選択することができる剪断段階の前に有機ポリマーを添加し、その剪断段階後にシリカ系ゾルを添加するのがさらに好ましい。シリカ系ゾルならびにアニオン性及びカチオン性有機ポリマーを含む濾水及び歩留まり向上剤を使用するとき、シリカ系ゾル及びアニオン性有機ポリマーを添加する前にカチオン性有機ポリマーをストックに添加するのが好ましい。カチオン性凝集剤を使用するとき、シリカ系ゾルの添加の前に、好ましくは、同じく有機ポリマーの添加の前に、それをセルロース懸濁液に添加するのが好ましい。
【0056】
本発明による濾水及び歩留まり向上剤の成分は、脱水すべきストックに、中でも成分のタイプ及び数、完成紙料のタイプ、フィラーのタイプ、添加の時点などに依存して広い範囲内で変わることがあり得る量で添加される。一般に、上記成分は、それらの成分を添加しないときに得られるものより良好な濾水及び歩留まりを生じさせる量で添加される。上記シリカ系ゾルは、SiOとして計算して、乾燥完成紙料、すなわち乾燥セルロース系繊維及び任意のフィラー、に基づき、通常、少なくとも約0.001重量%、多くの場合、少なくとも約0.005重量%の量で添加され、その上限は、通常、約1.0重量%、及び適切には0.5重量%である。上記それぞれの有機ポリマーは、乾燥完成紙料に基づき、通常、少なくとも約0.001重量%、多くの場合、少なくとも約0.005重量%の量で添加され、その上限は、約3重量%、及び適切には約1.5重量%である。カチオン性ポリマー系凝集剤を使用するとき、それは、乾燥完成紙料に基づき、少なくとも約0.05重量%の量で添加することができる。適切には、この量は、約0.07から約0.5重量%の範囲、好ましくは約0.1から約0.35重量%の範囲である。アルミニウム化合物を無機凝集剤として使用するとき、添加される総量は、Alとして計算して、乾燥完成紙料に基づき、通常、少なくとも約0.05重量%である。適切には、この量は、約0.1から約3.0重量%の範囲、好ましくは約0.5から約2.0重量%の範囲である。
【0057】
例えば、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、蛍光増白剤、染料、サイジング剤、例えばロジン系サイジング剤及びセルロース反応性サイジング剤、例えばアルキル及びアルケニルケテン二量体及びケテン多量体、無水コハク酸アルキル及びアルケニルなどにような製紙において慣例的であるさらなる添加剤を本発明による添加剤と、勿論、併用することができる。上記セルロース懸濁液、すなわちストックは、例えば、カオリン、白土、二酸化チタン、石膏、タルクならびに天然及び合成炭酸カルシウム、例えばチョーク、粉砕大理石及び沈降炭酸カルシウムなどの、従来のタイプの鉱物フィラーを含有する場合もある。
【0058】
本発明の方法は、紙の製造に使用される。用語「紙」は、本明細書において用いる場合、勿論、紙及びその製造ばかりでなく、他のセルロース系シート又はウェブ様製品、例えば板紙及び厚紙など、ならびにそれらの製造も包含する。本方法は、種々のタイプのセルロース含有繊維懸濁液からの紙の製造に使用することができ、上記懸濁液は、適切には、乾燥物質に基づき少なくとも約25重量%及び好ましくは少なくとも約50重量%のそのような繊維を含有する。上記懸濁液は、化学パルプ、例えば硫酸塩、亜硫酸及びオルガノソルブパルプ、硬木と軟木の両方からのメカニカルパルプ、例えばサーモメカニカルパルプ、ケモメカニカルパルプ、リファイナーパルプ及び砕木パルプ、ならびにそれらの混合物からの繊維に基づく場合があり、ならびに再循環繊維、場合によってはインキ抜きパルプからのもの、及びそれらの混合物に基づく場合もある。上記懸濁液、ストックのpHは、約3から約10の範囲内であり得る。このpHは、適切には約3.5より上であり、好ましくは、約4から約9の範囲内である。
【0059】
本発明を以下の実施例においてさらに説明するが、本実施例は、本発明を限定するためのものではない。部及び%は、特に記載がない限り、それぞれ重量部及び重量%に関する。
【実施例1】
【0060】
特に記載がない限り、以下の装置及び出発原料を使用して本発明によるシリカ系ゾルを製造した。
(a)攪拌機を装備した反応器、
(b)製造業者の説示に従って硫酸で再生したイオン交換樹脂Ameberlite
(商標)IRC84SPI(Rohm & Haasから入手可能)、
(c)約23.9重量%のSiO含有量及び約3.4のSiO対NaOのモル比を有する、ケイ酸ナトリウム水溶液、及び
(d)約24.5重量%のAlを含有する、アルミン酸ナトリウム水溶液。
【実施例2】
【0061】
この実施例は、本発明によるシリカ系ゾルの調製を説明するものである。
【0062】
再生イオン交換樹脂(400g)及び水(1350g)を反応器に添加した。得られたスラリーを攪拌し、その反応全体を通して約21℃の温度に保った。ケイ酸ナトリウム水溶液(449g)をそのスラリーに5.5分間、添加した(2927g SiO/(時 × kg イオン交換樹脂)の添加速度)。その後、そのスラリーを約19分間攪拌し、すると水性相のpHは約7.4になった。水(6×200g)をそのスラリーに17分間、添加し、その後、そのスラリーを、そのpHが約7.2になるまでさらに36分間、さらに攪拌した。アルミン酸ナトリウム水溶液(33g)を水(297g)で希釈し、得られたアルミン酸ナトリウム希釈溶液をそのスラリーに5分間添加し、その後、9分間攪拌し続け、その後、その得られたシリカ系ゾルをイオン交換樹脂から分離した。
【0063】
得られたケイ酸系粒子のゾル(実施例2として示す)は、3.1重量%のSiO含有量、9.4のSi:Naモル比、9.8のSi:Alモル比、7.7のpH、96cPの粘度、30の軸比、1210m/gの比表面積、及び6%のS値を有した。
【実施例3】
【0064】
この実施例は、本発明のもう1つのシリカ系ゾルの調製を説明するものである。
【0065】
再生イオン交換樹脂(332g)及び水(1350g)を反応器に添加した。得られたスラリーを攪拌し、その反応全体を通して約21℃の温度に保った。ケイ酸ナトリウム水溶液(449g)をそのスラリーに5.5分間、添加した(3526g SiO/(時 × kg イオン交換樹脂)の添加速度)。その後、そのスラリーを約55分間攪拌し、すると水性相のpHは約7.6になった。水(4×200g)をそのスラリーに15分間、添加し、その後、そのスラリーを、そのpHが約7.5になるまでさらに44分間、さらに攪拌した。アルミン酸ナトリウム水溶液(33g)を水(297g)で希釈し、得られたアルミン酸ナトリウム希釈溶液をそのスラリーに4分間添加し、その後、5分間攪拌し続け、その後、その得られたシリカ系ゾルをイオン交換樹脂から分離した。
【0066】
得られたケイ酸系粒子のゾル(実施例3として示す)は、3.6重量%のSiO含有量、10.3のSi:Naモル比、10.6のSi:Alモル比、8.2のpH、30cPの粘度、18の軸比、1080m/gの比表面積、及び8%のS値を有した。
【実施例4】
【0067】
この実施例は、本発明によるさらにもう1つのシリカ系ゾルの調製を説明するものである。
【0068】
再生イオン交換樹脂(400g)及び水(1350g)を反応器に添加した。得られたスラリーを攪拌し、その反応全体を通して約21℃の温度に保った。ケイ酸ナトリウム水溶液(449g)をそのスラリーに5.5分間、添加した(2927g SiO/(時 × kg イオン交換樹脂)の添加速度)。その後、そのスラリーを約20分間攪拌し、すると水性相のpHは約7.4になった。アルミン酸ナトリウム水溶液(33g)を水(297g)で希釈し、得られたアルミン酸ナトリウム希釈溶液をそのスラリーに3分間、追加の水(440g)と共に添加し、その後、15分間攪拌し続けた。さらなる水(440g)をそのスラリーに添加し、その後、その得られたシリカ系ゾルをイオン交換樹脂から分離した。
【0069】
得られたケイ酸系粒子のゾル(実施例4として示す)は、3.6重量%のSiO含有量、10.9のSi:Naモル比、10.9のSi:Alモル比、8.3のpH、22cPの粘度、14の軸比、1200m/gの比表面積、及び8%のS値を有した。
【実施例5】
【0070】
この実施例は、本発明によるさらにもう1つのシリカ系ゾルの調製を説明するものである。
【0071】
再生イオン交換樹脂(4500L;4130kg)及び水(22立方メートル)を反応器に添加した。得られたスラリーを攪拌し、その反応全体を通して約29℃の温度に保った。452g SiO/(時 × kg イオン交換樹脂)に相当する8000kg/時の速度で、ケイ酸ナトリウム水溶液(4400kg;29重量% SiO)をそのスラリーに添加した。その後、そのスラリーを約5から10分間攪拌し、すると水性相のpHは、約7になった。追加のケイ酸ナトリウム水溶液(1600kg)を8000kg/時の速度でそのスラリーに添加し、その後、アルミン酸ナトリウム水溶液(650kg)を650kg/時の速度で、追加の水(5300kg/時)と共にインラインで添加し、その後、15分間攪拌し続けた。追加の水(3000kg)を添加しながら水性相をイオン交換樹脂から分離し、得られたシリカ系粒子のゾルを限外濾過に付した。
【0072】
得られたケイ酸系粒子のゾル(実施例5として示す)は、6.5重量%のSiO含有量、10のSi:Naモル比、10のSi:Alモル比、8.3のpH、22cPの粘度、14の軸比、1100m/gの比表面積、及び14%のS値を有した。
【実施例6】
【0073】
この実施例は、本発明によるもう1つのシリカ系ゾルの調製を説明するものである。
【0074】
再生イオン交換樹脂(3815kg)及び水(21099kg)を反応器に添加した。得られたスラリーを攪拌し、その反応全体を通して約25℃の温度に保った。ケイ酸ナトリウム水溶液(4416kg)をそのスラリーに添加した(623g SiO/(時 × kg イオン交換樹脂)の添加速度)。その後、そのスラリーを約9分間攪拌し、すると水性相のpHは約7.5になった。追加のケイ酸ナトリウム水溶液(1577kg)を7278kg/時の速度でそのスラリーに添加し、その後、アルミン酸ナトリウム水溶液(644kg)を追加の水(6007kg)と共に1380kg/時の速度で添加した。追加の水(4000kg)をそのスラリーに添加しながら、その得られたシリカ系ゾルをイオン交換樹脂から分離し、その後、限外濾過に付した。
【0075】
得られたケイ酸系粒子のゾル(実施例6として示す)は、6.6重量%のSiO含有量、9のSi:Naモル比、9のSi:Alモル比、8.3のpH、146cPの粘度、19の軸比、1100m/gの比表面積、及び12%のS値を有した。
【実施例7】
【0076】
この実施例は、本発明によるさらにもう1つのシリカ系ゾルの調製を説明するものである。
【0077】
再生イオン交換樹脂(3545kg)及び水(20845kg)を反応器に添加した。得られたスラリーを攪拌し、その反応全体を通して約28℃の温度に保った。ケイ酸ナトリウム水溶液(4599kg)をそのスラリーに30分間添加した(705g SiO/(時 × kg イオン交換樹脂)の添加速度)。その後、そのスラリーを約12分間攪拌し、すると水性相のpHは約7.4になった。追加のケイ酸ナトリウム水溶液(1348kg)を6221kg/時の速度でそのスラリーに添加し、その後、アルミン酸ナトリウム水溶液(601kg)を追加の水(6007kg)と共に522kg/時の速度で添加した。追加の水(4000kg)をそのスラリーに添加しながら、その得られたシリカ系ゾルをイオン交換樹脂から分離し、その後、限外濾過に付した。
【0078】
得られたケイ酸系粒子のゾル(実施例7として示す)は、6.5重量%のSiO含有量、8のSi:Naモル比、9のSi:Alモル比、7.8のpH、115cPの粘度、18の軸比、1000m/gの比表面積、及び12%のS値を有した。
【実施例8】
【0079】
この実施例は、本発明によるさらにもう1つのシリカ系ゾルの調製を説明するものである。
【0080】
再生イオン交換樹脂(4500L;5130kg)及び水(21立方メートル)を反応器に添加した。得られたスラリーを攪拌し、その反応全体を通して約29℃の温度に保った。420g SiO/(時 × kg イオン交換樹脂)に相当する7500kg/時の速度で、ケイ酸ナトリウム水溶液(4400kg;29重量% SiO)をそのスラリーに添加した。その後、そのスラリーを約9分間攪拌し、すると水性相のpHは、約7になった。追加のケイ酸ナトリウム水溶液(1800kg)を7500kg/時の速度でそのスラリーに添加し、その後、アルミン酸ナトリウム水溶液(600kg)を650kg/時の速度で、追加の水(5300kg/時)と共にインラインで添加し、その後、15分間攪拌し続けた。追加の水(3000kg)を添加しながら水性相をイオン交換樹脂から分離し、得られたシリカ系粒子のゾルを限外濾過に付した。
【0081】
得られたケイ酸系粒子のゾル(実施例8として示す)は、7.4重量%のSiO含有量、10のSi:Naモル比、10のSi:Alモル比、8.8のpH、11cPの粘度、11.9の軸比、1060m/gの比表面積、及び17%のS値を有した。
【実施例9】
【0082】
本実施例の濾水及び歩留まり性能試験において比較のために以下の製品を利用した。
【0083】
参照例1は、商品名Nalco 8691で市販されているシリカゾルであり、これは、10.9のpH、3cPの粘度、11.4のSiO含有量、7の軸比及び35%のS値を有し、且つ、800m/gの比表面積を有するシリカ粒子を含有した。
【0084】
参照例2は、国際公開第00/66491号の一般開示に従って調製したシリカ系ゾルであり、これは、10.6のpH、8cPの粘度、15のSiO含有量、11のSi:Naモル比、8の軸比及び35%のS値を有し、且つ、720m/gの比表面積を有するシリカ粒子を含有した。
【0085】
参照例3は、米国特許第5,368,833号の一般開示に従って調製したシリカ系ゾルであり、これは、9のpH、5cPの粘度、7.8のSiO含有量、17のSi:Naモル比、19のSi:Alモル比、9の軸比及び21%のS値を有し、且つ、810m/gの比表面積を有するシリカ粒子を含有した。
【0086】
参照例4は、水性懸濁液の形態のベントナイトである。
【実施例10】
【0087】
本発明のシリカ系ゾル及び比較に利用した製品の性能を評価するために、以下の手順及び装置を用いた。
【0088】
設定容積のストックの濾水についての時間を測定する、スウェーデンのAkribiから入手できるDynamic Drainage Analyser(DDA)によって、濾水性能はを評価した。この試験全体を通してバッフル付ジャーの中でストックを1500rpmの速度で攪拌し、その間に化学物質の添加を行った。栓を抜き、そのストックが存在する面とは反対側の抄紙網の面を真空にすると、800mLのストック容積が抄紙網を通して濾水された。濾水性能を脱水時間(秒)として報告する。以下の一般手順に従って、添加を行った:
(i)あれば成分Dをそのストックに添加し、その後、(d)秒間攪拌する、
(ii)あれば成分Cをそのストックに添加し、その後、(c)秒間攪拌する、
(iii)成分Bをそのストックに添加し、その後、(b)秒間攪拌する、
(iv)成分Aをそのストックに添加し、その後、(a)秒間攪拌する、及び
(v)脱水時間を自動的に記録しながらそのストックを脱水する。
【0089】
ポリマー及びベントナイトの添加レベルは、乾燥ストック系に対する乾燥製品として計算し、ポリ塩化アルミニウムの添加レベルは、Alとして計算し、乾燥ストック系に基づくものであり、ならびにシリカ又はシリカ系ゾルの添加レベルは、SiOとして計算し、乾燥ストック系に基づくものであった。
【0090】
歩留まり性能(初回通過時歩留まり)は、上記濾水性能試験において得られたストックを濾水することによって得られる、Dynamic Drainage Analyser(DDA)からの濾液、白水の濁度を測定することによって、比濁計により評価した。濁度は、比濁計単位(NTU)で報告する。
【実施例11】
【0091】
実施例10の一般手順に従って、濾水及び歩留まり性能を評価した。
【0092】
この実施例において用いたセルロース懸濁液、すなわちストックは、50重量%の過酸化物さらし硫酸塩パルプ及び50重量%の非塗工損紙に基づく液体包装板紙を製造する板紙製造工場からの完成紙料に基づくものであった。ストック粘稠度は、4.7g/Lであり、pHは、約7.7であり、導電率は、1800μS/cmであり、Ca2+イオン含有量は、40mg/Lであり、及びカチオン要求量は、−195μ当量/Lであった。成分Bは、10kg/tの量の量で添加し、その後、15秒間攪拌した、カチオン性デンプン(Perlbond 930)であった。成分Aは、様々な量で添加し、その後、5秒間攪拌した、参照例1又は実施例5のいずれかであった。表1は、SiOの様々な投与量での結果を示すものである。
【表1】

【実施例12】
【0093】
実施例11のストックを用いて実施例10の一般手順に従って濾水及び歩留まり性能を評価した。
【0094】
成分Cは、0.3kg/tの量で添加し、10秒間攪拌した、ポリ塩化アルミニウム(Eka ATC 8210)であった。成分Bは、10kg/tの量で添加し、その後、15秒間攪拌した、カチオン性デンプン(Perlbond 930)であった。成分Aは、様々な量で添加し、その後、5秒間攪拌した、参照例1又は実施例5のいずれかであった。表2は、SiOの様々な投与量での結果を示すものである。
【表2】

【実施例13】
【0095】
実施例11のストックを用いて実施例10の一般手順に従って濾水及び歩留まり性能を評価した。
【0096】
成分Dは、0.3kg/tの量で添加し、その後、10秒間攪拌した、高荷電低分子量カチオン性ポリアクリルアミド(Eka ATC 5439)であった。成分Cは、0.2kg/tで添加し、その後、5秒間攪拌した、高分子量カチオン性ポリアクリルアミド(Eka PL 1510)であった。成分Bは、5kg/tで添加し、その後、20秒間攪拌した、カチオン性デンプン(Perlbond 930)であった。
【0097】
成分Aは、様々な量で添加し、その後、5秒間攪拌した、参照例1又は実施例5のいずれかであった。表3は、SiOの様々な投与量での結果を示すものである。
【表3】

【実施例14】
【0098】
実施例11のストックを用いて実施例10の一般手順に従って濾水及び歩留まり性能を評価した。
【0099】
成分Cは、8kg/tで添加し、その後、15秒間攪拌した、カチオン性デンプン(Perlbond 970)であった。成分Bは、0.25kg/tで添加し、その後、10秒間攪拌した、高分子量アニオン性ポリアクリルアミド(Eka PL 8660)であった。成分Aは、様々な量で添加し、その後、5秒間攪拌した、参照例2又は実施例5のいずれかであった。表4は、SiOの様々な投与量での結果を示すものである。
【表4】

【実施例15】
【0100】
実施例11のストックを用いて実施例10の一般手順に従って濾水及び歩留まり性能を評価した。
【0101】
成分Cは、8kg/tで添加し、その後、15秒間攪拌した、カチオン性デンプン(Perlbond 970)であった。成分Bは、0.25kg/tで添加し、その後、10秒間攪拌した、高分子量カチオン性ポリアクリルアミド(Eka PL 1510)であった。成分Aは、様々な量で添加し、その後、5秒間攪拌した、参照例2又は実施例5のいずれかであった。表5は、SiOの様々な投与量での結果を示すものである。
【表5】

【実施例16】
【0102】
実施例10の一般手順に従って濾水及び歩留まり性能を評価した。
【0103】
この実施例で使用したストックは、約65重量%のユーカリ繊維及び約35重量%のPCCを含有する非塗工コピー用紙を製造する上質紙製造工場からの完成紙料に基づくものであった。粘稠度は、12.5g/Lであり、pHは、約7.1であった。
【0104】
成分Bは、5kg/tの量で添加し、その後、20秒間攪拌した、カチオン性デンプン(Amylofax 2200)であった。成分Aは、様々な量で添加し、その後10秒間攪拌した、参照例3又は実施例5のいずれかであった。表6は、SiOの様々な投与量での結果を示すものである。
【表6】

【実施例17】
【0105】
完成紙料を抄紙機の第二精選不良品から取り、粘稠度は15g/Lであったが、実施例16のものに類似したストックを使用して、実施例10の一般手順に従って、濾水及び歩留まり性能を評価した。
【0106】
成分Cは、10kg/tの量で添加し、その後、20秒間攪拌した、カチオン性デンプン(Amylofax 2200)であった。成分Bは、0.2kg/tの量で添加し、その後、10秒間攪拌した、高分子量カチオン性ポリアクリルアミド(Eka PL 1710)であった。成分Aは、様々な量で添加し、その後10秒間攪拌した、参照例2又は実施例5のいずれかであった。表7は、SiOの様々な投与量での結果を示すものである。
【表7】

【実施例18】
【0107】
実施例10の一般手順に従って濾水及び歩留まり性能を評価した。
【0108】
この実施例で使用したストックは、60重量%カバノキ及び40重量%トウヒ/マツのさらし硫酸塩パルプを含有する液体包装板紙を製造する板紙製造工場からの完成紙料に基づくものであった。ストック粘稠度は、6.3g/Lであり、pHは、約8.3であり、導電率は、1000μS/cmであった。
【0109】
成分Bは、6kg/tの量で添加し、その後、15秒間攪拌した、カチオン性デンプン(HiCat 142)であった。成分Aは、様々は量で添加し、その後、5秒間攪拌した、参照例4又は実施例5のいずれかであった。表8は、成分Aの様々な投与量での結果を示すものである。
【表8】

【実施例19】
【0110】
実施例10の一般手順に従って濾水及び歩留まり性能を評価した。
【0111】
この実施例で使用したストックは、白色の上層と褐色の下層からなるホワイト・トップ・ライナを製造するライナー製造工場からのものであった。その白色上層ストックを使用し、それは、8.4g/Lの粘稠度、約8.7のpH及び800μS/cmの導電率を有した。成分C、B及びAを添加する前に、100kg/tのPCCフィラー(Hypercarb FS260)をそれぞれの試験サンプルに別々に添加した。
【0112】
成分Cは、10kg/tの量で添加し、その後、15秒間攪拌した、カチオン性デンプン(PBタピオカ)であった。成分Bは、0.4kg/tの量で添加し、その後、20秒間攪拌した、カチオン性ポリアクリルアミド(Percol 292NS)であった。成分Aは、様々な量で添加し、その後、10秒間攪拌した、参照例4、参照例3又は実施例5であった。表9は、成分Aの様々な投与量での結果を示すものである。
【表9】

【実施例20】
【0113】
実施例10の一般手順に従って濾水及び歩留まり性能を評価した。この実施例で使用したストックは、再循環パルプからなる二層ライナーを製造するライナー製造工場からのものであった。そのストックは、13.5g/Lの粘稠度、約6.4のpH及び2000μS/cmの導電率を有した。
【0114】
成分Bは、0.75kg/tの量で添加し、その後、10秒間攪拌した、高分子量カチオン性ポリアクリルアミド(Eka PL 1510)であった。成分Aは、様々な量で添加し、その後、10秒間攪拌した、参照例3又は実施例5のいずれかであった。表10は、成分SiOの様々な投与量での結果を示すものである。
【表10】

【実施例21】
【0115】
設定容量のストックを濾水するときに微粉歩留まりを測定する、Paper Research Materialsから入手できるDynamic Drainage Jar(DDJ)によって、歩留まり性能を評価した。この試験を通してバッフル付ジャーの中で1200rpmの速度でそのストックを攪拌した。500mLのストック容積を用い、化学物質の添加を行った。抄紙網の下のジャーの底の開口部に接続されたチューブのクランプを開けると、ストックはその抄紙網を通して濾水された。そのチューブに接続されたチップ開口部のサイズによってある程度設定される流量で、30秒間、濾水をビーカー回収した。流量は、約130〜160mL/分であった。オーブンの中で105℃で蒸発させることによって、ビーカー内の乾燥材料の量を定量した。全微粉画分を別々に定量した。結果を微粉歩留まり(%)として報告する。
【0116】
実施例10の一般手順に従って化学物質の添加を行った。
【0117】
この実施例で使用したストックは、80%硬木及び20%軟木の化学パルプを含有する完成紙料に基づくものであった。この完成紙料は、50%のこのパルプ及び50%の粉砕炭酸カルシウムを含有した。塩を添加して約1.5mS/cmの導電率を生じさせ、pHは、約8.1から8.2であり、パルプ粘稠度は、約5g/Lであった。
【0118】
成分Cは、10kg/tの量で添加し、その後、20秒間攪拌した、カチオン性デンプン(Perlbond 930)であった。成分Bは、0.5kg/tの量で添加し、その後、20秒間攪拌した、高分子量カチオン性ポリアクリルアミド(Eka PL 1510)であった。成分Aは、様々な量で添加し、その後、10秒間攪拌した、参照例3、実施例2、実施例4、実施例5又は実施例7のいずれかであった。表11は、SiOの様々な投与量での結果を示すものである。
【表11】

【実施例22】
【0119】
実施例21において使用したものに類似したストックを使用して、実施例10の一般手順に従って、濾水性能を評価した。
【0120】
成分Bは、2.0kg/tの量で添加し、その後、20秒間攪拌した、高分子量カチオン性ポリアクリルアミド(Eka PL 1510)であった。成分Aは、様々な量で添加し、その後、10秒間攪拌した、参照例3、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5又は実施例7のいずれかであった。表12は、SiOの様々な投与量での結果を示すものである。
【表12】

【実施例23】
【0121】
実施例21において使用したものに類似したストックを使用して、実施例10の一般手順に従って、濾水性能を評価した。
【0122】
成分Cは、10kg/tの量で添加し、その後、15秒間攪拌した、カチオン性デンプン(Perlbond 930)であった。成分Bは、0.5kg/tの量で添加し、その後、10秒間攪拌した、高分子量カチオン性ポリアクリルアミド(Eka PL 1510)であった。成分Aは、様々な量で添加し、その後、10秒間攪拌した、参照例3、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6又は実施例7のいずれかであった。表13は、SiOの様々な投与量での結果を示すものである。
【表13】

【実施例24】
【0123】
等価の非溶媒和長楕円の寸法及び軸比を決定している、D.Biddle、C.Walldal及びS.WallによってColloids and Surfaces, A: Physiochemical and Engineering Aspects 118(1996), 89-95に記載されたように、軸比を測定し、計算した。この楕円体モデルは、長いほうの直径(a)と短いほうの直径(b)の間の比によって特徴づけられ、この軸比をa/bと定義する。用いるモデルは、固有粘度測定値及び動的光散乱測定値から得られるデータと回転楕円体の固有粘度及び分別因子それぞれについてのSimha及びPerrinの関係の組み合わせである。そこでこれらのデータを用いて楕円形への数学的あてはめを繰り返し、それによって軸比、a/b、を得た。
【0124】
表14は、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6、実施例7及び参照例3の軸比、ならびに本発明によるシリカ系粒子のゾルを使用したときに実施例21、22及び23において観察された歩留まり(R)及び濾水(D)改善のうち0.5kg/t SiOの投与量での参照例3と比較しての改善を示すものである。
【表14】

【実施例25】
【0125】
実施例21において使用したものに類似したストックを使用して、実施例10の一般手順に従って、濾水性能を評価した。
【0126】
成分Bは、0.8kg/tの量で添加し、その後、20秒間攪拌した、高分子量カチオン性ポリアクリルアミド(Eka PL 1510)であった。成分Aは、様々な量で添加し、その後、10秒間攪拌した、参照例3又は実施例8のいずれかであった。表15は、SiOの様々な投与量での結果を示すものである。
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約10の軸比及び少なくとも約600m/gの比表面積を有するシリカ系粒子を含有するゾル。
【請求項2】
少なくとも約10の軸比及び約25以下のS値を有するシリカ系粒子を含有するゾル。
【請求項3】
少なくとも約10の軸比及び少なくとも約400m/gの比表面積を有するシリカ系粒子を含有するゾルであって、前記シリカ系粒子が表面改質された、ゾル。
【請求項4】
少なくとも50cPの粘度及び少なくとも約3重量%のシリカ含有量を有するシリカ系粒子を含有するゾルであって、前記シリカ系粒子が少なくとも約400m/gの比表面積を有する、ゾル。
【請求項5】
11から35の範囲の軸比を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のシリカ系粒子を含有するゾル。
【請求項6】
前記シリカ系粒子が少なくとも約1000m/gの比表面積を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のシリカ系粒子を含有するゾル。
【請求項7】
前記シリカ系粒子がアルミニウムで表面改質された、請求項1から6のいずれか一項に記載のシリカ系粒子を含有するゾル。
【請求項8】
少なくとも約3重量%のシリカ含有量を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のシリカ系粒子を含有するゾル。
【請求項9】
約5から約20%の範囲のS値を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のシリカ系粒子を含有するゾル。
【請求項10】
約7.0から約10.0の範囲のpHを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のシリカ系粒子を含有するゾル。
【請求項11】
(a)水とそのイオン交換容量の少なくとも一部を水素形で有するカチオン交換樹脂とを含む反応容器を準備するステップ、
(b)1時間あたり前記反応容器内に存在するイオン交換樹脂1kgにつき少なくとも約400gのSiOという速度でアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を前記反応容器に添加して、ケイ酸塩水溶液スラリーを形成するステップ、
(c)水性相のpHが約5.0から約9.0の範囲になるまで前記ケイ酸塩水溶液スラリーを攪拌するステップ、
(d)1つ又はそれ以上のアルカリ性材料を前記水性相に添加して、pHを約7.0から約11.0の範囲にするステップ、及び
(e)ステップ(c)の後又はステップ(d)の後に前記イオン交換樹脂を前記水性相から分離するステップ
を含む、水性シリカ系ゾルを製造するための方法。
【請求項12】
(a)水とそのイオン交換容量の少なくとも一部を水素形で有するカチオン交換樹脂とを含む反応容器を準備するステップ、
(b)前記反応容器にアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を添加して、ケイ酸塩水溶液スラリーを形成するステップ、
(c)水性相のpHが約5.0から約8.5の範囲になるまで前記ケイ酸塩水溶液スラリーを攪拌するステップ、
(d)1つ又はそれ以上のアルカリ性材料を前記水性相に添加して、pHを約7.0から約8.5の範囲にするステップ、及び
(e)ステップ(c)の後又はステップ(d)の後に前記イオン交換樹脂を前記水性相から分離するステップ
を含む、シリカ系粒子を含有するゾルを製造するための方法。
【請求項13】
ステップ(c)において達成されるpHが約6.0から約8.5の範囲である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(c)において達成されるpHが約6.0から約8.0の範囲である、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記アルカリ性材料がアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記アルカリ金属ケイ酸塩がケイ酸ナトリウムである、請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記アルカリ性材料がアルミン酸ナトリウムを含む、請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(d)のpHが約7.5から約9.5の範囲である、請求項11から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
イオン交換樹脂からの分離後に得られる水性相を濃縮するステップをさらに含む、請求項11から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項11から19のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、シリカ系粒子を含有するゾル。
【請求項21】
請求項1から10及び20のいずれか一項に記載のシリカ系粒子を含有するゾルの凝集剤としての使用。
【請求項22】
前記シリカ系粒子を含有するゾルが製紙の際に濾水及び歩留まり向上剤として使用される、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記シリカ系粒子を含有するゾルが浄水用の凝集剤として使用される、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
(a)セルロース系繊維を含む水性懸濁液を提供するステップ、
(b)請求項1から10及び19のいずれか一項に記載のシリカ系粒子を含有するゾルを含む1つ又はそれ以上の濾水及び歩留まり向上剤を前記懸濁液に添加するステップ、及び
(c)得られた懸濁液を脱水して、紙のシート又はウェブを生じさせるステップ
を含む、紙を製造するための方法。
【請求項25】
前記1つ又はそれ以上の濾水及び歩留まり向上剤がカチオン性デンプンを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記1つ又はそれ以上の濾水及び歩留まり向上剤がカチオン性合成ポリマーを含む、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ又はそれ以上の濾水及び歩留まり向上剤がアニオン性ポリマーを含む、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記1つ又はそれ以上の濾水及び歩留まり向上剤がポリアクリルアミドを含む、請求項24から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
カチオン性凝集剤を前記懸濁液に添加するステップをさらに含む、請求項24から27のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−528969(P2010−528969A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511145(P2010−511145)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【国際出願番号】PCT/SE2008/050657
【国際公開番号】WO2008/150230
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】