説明

シリカ系複合酸化物粒子の製造方法

【課題】 反射防止層や透明な高屈折率樹脂やフィルムの添加剤として極めて有用な単分散性、円形度の高いシリカ系複合酸化物粒子を効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】 水を含む反応溶媒中にテトラアルコキシシランなどのシリカ原料物質とチタンテトライソプロポキシドなどの異種酸化物原料物質を添加して反応させてシリカ系複合酸化物粒子を製造するに際し、上記反応溶媒中にアセトニトリルを添加すると共に、反応液に含まれるアセトニトリルの濃度を20質量%以上に保ちながら前記反応を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカとシリカ以外の金属酸化物よりなる単分散性の高い球状のシリカ系複合酸化物粒子の製造方法に関する。さらに詳しくは、従来製造することが難しかった単分散性、円形度の高いシリカ系複合酸化物粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テトラエトキシシランやテトラメトキシシランのような金属アルコキシドを原料とし、水を含む有機溶媒中で、前記金属アルコキシドを触媒の存在下で加水分解・重縮合させることによって単分散性の高い球状のシリカ粒子を製造する方法が知られている。このように金属アルコキシドなどの有機金属化合物を原料とし、重縮合反応を利用して金属酸化物粒子を製造する方法は、一般にゾル−ゲル法と呼ばれており、原料にケイ素のアルコキシドとケイ素以外の金属のアルコキシドを併用することによって、シリカ−チタニア、シリカ−アルミナ、シリカ−ジルコニア等のいわゆるシリカ系複合酸化物粒子を製造することができる。
【0003】
ゾル−ゲル法により製造したシリカ系複合酸化物粒子は、シリカを主成分にして各種の金属酸化物を複合化することによって、シリカのみでは得られない様々な特徴ある性能を発揮することが可能であることから、様々な用途に応用されている。例えば、シリカとシリカ以外の金属酸化物の配合比率を変えることにより、光学的な透明性を損なうことなく粒子の屈折率を任意に調節できる。樹脂と屈折率の一致した粒子をフィラーとして用いることで、透明性を維持しながら、樹脂の機械的強度、低熱膨張性などの性能を向上させた優れた透明複合樹脂を得ることができる。
【0004】
ところで、従来法においてはシリカ以外の金属酸化物の含有率が20モル%を超えた場合には、粒子の凝集や新たな微粒子の発生が起こりやすく、単分散性の良好な球状のシリカ系複合酸化物粒子を得ることが困難であるという問題があった。一般に、球状の無機酸化物粒子を得ようとする場合には、シリカ以外の金属酸化物の含有率を30モル%以下、さらには20モル%以下におさえるのが好ましく、特にシリカ以外の金属酸化物の含有率を0.01〜15モル%の範囲で選択するときは粒子径が揃った真球に近いものとなることが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
シリカ以外の金属酸化物の含有量が30〜50モル%であって、粒子径の変動係数が30%以下である球状シリカ粒子を製造法する方法も知られているが、ここで得られている粒子の性状は、粒子径0.11〜0.45μm、変動係数8〜19%というものであり、変動係数が7%以下の単分散性の優れた粒子は合成できていない(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特公平3−33721号公報
【特許文献2】特開2003−252616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、単分散性、円形度の高いシリカ系複合酸化物粒子を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、常にアセトニトリルの濃度が特定の値以上となるように反応液の組成を制御しながら反応を行った場合には、シリカ以外の金属酸化物の含有量が高くても単分散性、円形度の高いシリカ系複合酸化物粒子を合成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、水及び有機溶媒を含んでなる反応溶媒中に、“シリコンのアルコキシド及び/又は該アルコキシドから誘導される可縮合性化合物”(「シリカ原料物質」ともいう)、並びに“シリコン以外の金属のアルコキシド、該アルコキシドから誘導される可縮合性化合物、及びシリコン以外の金属の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種”(以下、「異種酸化物原料物質」ともいう)を添加して反応させる工程を含むシリカ系複合酸化物粒子の製造方法において、前記有機溶媒の少なくとも1成分としてアセトニトリルを使用すると共に、反応液に含まれるアセトニトリルの濃度を20質量%以上に保ちながら前記反応を行うことを特徴とする方法である。
【0010】
また、他の本発明は、(1)シリカ原料物質と、異種酸化物原料物質とを混合する工程、及び(2)該工程で得られた混合物を、水及び有機溶媒を含んでなる反応溶媒中に添加して反応させる工程を含むシリカ系複合酸化物粒子の製造方法において、前記有機溶媒の少なくとも1成分としてアセトニトリルを使用すると共に、反応液に含まれるアセトニトリルの濃度を20質量%以上に保ちながら前記反応を行うことを特徴とする方法である。
【0011】
なお、ここでいう反応液とは、反応開始時における反応溶媒(粒子が生成した場合には、分散媒にもなる)、触媒、反応により生成した固体成分(シリカ系複合酸化物粒子)、反応により生成したアルコールなどの副生物、反応系に添加された未反応の原料、及び必要に応じて反応中に添加される水や有機溶媒などの全ての成分を含む混合物を意味し、上記アセトニトリルの濃度はこの混合物の総質量を基準とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によれば、従来製造することが難しかった単分散性、円形度の高いシリカ系複合酸化物粒子を効率よく得ることができる。特に、シリカ以外の金属酸化物としてチタニアやジルコニアを配合したシリカ系複合酸化物粒子の製造に本発明の方法を採用した場合には、従来法を採用した場合と比べてより単分散性の高い真球状粒子が得られる。
【0013】
また、本発明の方法で得られるシリカとチタニアやジルコニアとの複合酸化物粒子は、光学的な透明性の高い高屈折率粒子であり、反射防止層や透明な高屈折率樹脂やフィルムの添加剤として極めて有用である。
【0014】
このような本発明効果は、シリカ以外の金属酸化物の含有率が高いほど顕著であり、本発明の方法は、シリカ以外の金属酸化物の含有率が20モル%以上、特に30モル%以上のシリカ系複合酸化物粒子であって、粒子径の変動係数が7%以下で且つ粒子の円形度が0.8以上である粒子を効率的に製造できるという点で、従来法と比べて優れた方法であるといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の製造方法は、従来のゾル−ゲル法と同様に、水及び有機溶媒を含んでなる反応溶媒中にシリカ原料物質、及び異種酸化物原料物質を添加して、これら原料物質を反応させる工程を含むが、本発明の製造方法では該工程における反応を、常に所定濃度のアセトニトリルの共存下で行う必要がある。すなわち、本発明の製造方法では、前記有機溶媒の少なくとも1成分としてアセトニトリルを使用すると共に、反応液に含まれる液体成分中のアセトニトリルの濃度を20質量%以上に保ちながら前記反応を行う必要がある。このような条件を満足することにより、単分散性および円形度の高いシリカ系複合酸化物粒子を効率よく得ることが可能となる。
【0016】
ゾル−ゲル法によるシリカ系複合酸化物粒子の合成に際しては、シリカ以外の金属酸化物の含有率が高くなると、粒子の表面電位が低下し十分な反発力を得られず粒子が凝集しやすくなり、単分散性および円形性の高い粒子を得ることが困難になる。このような表面電位の低下は反応を非プロトン性の極性溶媒を高濃度で含む溶媒(或いは分散媒)中で行うことによりある程度抑制することができると考えられるが、本発明者が種々の非プロトン性の極性溶媒を用いて実験を行ったところ、アセトニトリル以外の非プロトン性の極性溶媒を用いた場合には、所期の効果を得ることができなかった。今の所、その機構は不明であるが、アセトニトリルを用いたときに特有の何らかの作用により、特異的に単分散性および円形性の高いシリカ系複合酸化物粒子が得られるようになったものと思われる。
【0017】
このような効果は、反応液に含まれる液体成分中のアセトニトリルの濃度を20質量%以上に保つことにより得ることができるが、効果の高さの観点からは20質量%以上に保つことが好ましい。また、反応初期におけるアセトニトリルの濃度を高くすることが好ましく、反応開始時におけるアセトニトリルの濃度は70質量%以上、特に80質量%以上とするのが好適である。
【0018】
反応中には原料物質(シリカ原料物質及び異種酸化物原料物質)の供給や必要に応じて供給されるアンモニア水などにより反応液中のアセトニトリルの濃度は反応開始時における反応溶媒中の濃度から低下していく。このため、反応液に含まれる液体成分中のアセトニトリルの濃度を20質量%以上に保つには、予めこれらの質量増加を考慮して、反応開始時に使用する反応溶媒として十分な量のアセトニトリルを含むものを使用するか、或いは、アセトニトリルの濃度が所定の範囲を維持するように反応中にアセトニトリルを断続的又は連続的に供給すればよい。
【0019】
本発明の製造方法は、アセトニトリルを含む溶媒中でシリカ原料物質および異種酸化物原料物質の反応を行い、反応が行われる間中、常にアセトニトリルの濃度が所定の値以上となるように保つ以外は、従来のゾル−ゲル法でシリカ系複合酸化物粒子を製造する場合と特に変わる点はなく、反応試剤も従来法で使用されているものが特に制限無く使用できる。
【0020】
即ち、シリカ原料物質としては、一般式Si(OR)またはSiR’n(OR)4−nで示されるケイ素のアルコキシド(前記式中、RおよびR′はエーテル結合、エステル結合を含んでも良い有機基であり、nは1〜3の整数である。)、これらケイ素のアルコキシドを部分的に加水分解して得られる低縮合物(該低縮合物は、分子内にアルコキシ基又は水酸基を有している縮合可能な化合物、即ち可縮合性化合物である)、又はこれらの混合物が好適に使用できる。なお、上記ケイ素のアルコキシドの一般式において、1分子中に含まれる複数のRは互いに異なっていても良いが、原料の入手が容易であるため、通常は1分子中に含まれる複数のRは同じである化合物が好適に使用される。RおよびR’は上記有機基のものが制限なく使用できるが、アルキル基である場合、原料の入手が容易であるため好適に使用でき、特にメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基などの低級アルキル基である場合、有機溶媒への相溶性が良好で加水分解の結果生成するアルコールの沸点が低く、容易に粒子から除去できるため好適である。
【0021】
また、異種酸化物原料物質としては、周期律表第1族、第2族、第3族、第4族、第13族および第14族の金属のアルコキシドが特に制限されず使用される。好適に使用できる金属アルコシドとしては、一般式M(OR)、M(OR)、M(OR)、M(OR)、M13(OR)、M14(OR)(ただし、Rはアルキル基、特に好ましくは、炭素数4以下のもの)で表示される金属アルコキシドを挙げることができる。ここで、Mは第1族の金属、Mは第2族の金属、Mは第3族の金属、Mは第4族の金属、M13は第13族の金属、M14は第14族の金属であり、好適な金属を例示すれば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、チタン、ホウ素、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、ゲルマニウム、スズまたは鉛を挙げることができる。
【0022】
本発明において一般に好適に使用される上記化合物を更に具体的に例示すると、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド等の有機ナトリウム化合物;これら化合物においてナトリウム原子をリチウム、カリウム等に置換した第1族化合物;マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムプロポキシド等の有機マグネシウム化合物;これら化合物においてマグネシウムをカルシウム、ストロンチウム、バリウム等に置換した第2族化合物;チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド等のTi化合物;これら化合物におけるチタン原子をジルコニウム、ハフニウム、ゲルマニウム、スズ、鉛等に置換した第4族または第14族化合物;アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド等のAl化合物;これら化合物においてアルミニウム原子をホウ素等で代替した第13族化合物;などを挙げることができる。また、金属アルコキシド以外に上記金属の酢酸塩、アセト酢酸塩等のカルボン酸塩、塩化カルシウム、サリチル酸カルシウム一水和物等の化合物も使用できる。さらにシリカ原料物質における場合と同様に、金属アルコキシドから誘導される可縮合性化合物も使用できる。
【0023】
なお、単分散性の特に高い球状のシリカ系複合酸化物粒子を得ようとする場合には、上記の化合物の中でも周期律表第4族の金属のアルコキシドを使用するのが好適であり、その中でもチタンおよび/またはジルコニウムのアルコキシドを使用するのが最も好適である。
【0024】
本発明の製造方法では上記シリカ原料物質及び異種酸化物原料物質を水及び有機溶媒を含んでなる反応溶媒中に添加して反応させるが、反応溶媒にはアセトニトリルが20質量%以上含まれている必要がある。該反応溶媒には反応、具体的には加水分解反応及び縮重合反応を促進するための触媒を添加することが好ましい。
【0025】
本発明で使用する触媒としては、金属アルコキシドの加水分解及び重縮合反応を促進する機能を有するものであれば特に限定されない。通常、酸や塩基が使用できるが、球状で単分散性の高い粒子が得られるという理由から、塩基触媒を使用するのが好適である。本発明で好適に使用できる塩基触媒を例示すれば、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ピリジン、イミダゾール、ピペリジン、キノリン、ピロール、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−セン、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの有機塩基;を挙げることができる。これらの中でも、アンモニアやアミンのように金属を含まない塩基の場合、製造したシリカ系酸化物粒子を焼成することにより、粒子中に塩基成分や金属成分が残留しないため、このような触媒を使用するのが特に好適である。
【0026】
触媒の添加量は、用いる触媒の種類や反応液中の水と有機溶媒の種類や配合比率によって異なるために一概には言えないが、反応溶媒のpHが10以上、好ましくは11以上になるように添加するのが好ましい。なお、原料を添加しながら反応を行うと反応液の量が増大し触媒の濃度が変化するので、反応中も反応液のpHが上記範囲を保つように連続的又は断続的に触媒を供給することが好ましい。触媒として最も好適なアンモニアの場合は反応の開始から終了まで反応液の質量を基準として2〜15質量%、好ましくは3〜7質量%の範囲とするのが好適である。ここで言う反応液の質量とは、具体的には、初期に仕込んだ水を含む有機溶媒、供給された原料、供給された触媒などを含む反応液全体の質量である。
【0027】
上記反応溶媒は、水及び20質量%以上のアセトニトリルを含むものであれば特に限定されないが、効果の観点からアセトニトリルの濃度(初期濃度)は70質量%以上、特に80質量%以上であるのが好ましい。また、水濃度は特に限定されないがアセトニトリル及び触媒を除く全ての成分は水であることが好ましい。なお、特に必要は認められないが、反応溶媒にはアルコールなどの水溶性有機溶媒を添加することもできる。
【0028】
このような有機溶媒に原料を添加して反応させる方法も、従来のゾル−ゲル法と同様にして行うことができるが、良好な性状のシリカ系複合酸化物粒子を製造するためには、シリカ原料物質と異種酸化物原料物質とを予め混合してから反応溶媒に添加するのが好ましい。シリカ原料物質としてシリコンのアルコキシドを使用する場合には、混合に先立ち、シリコンのアルコキシドの一部又は全部を部分的に加水分解させておく(以下では、部分加水分解ともいう)ことが、より均質な粒子が得られるという理由から好適である。部分加水分解する際には、該アルコキシドと水の両方に対して相溶性のあるアルコール等の有機溶媒を併用することが好ましい。また、部分加水分解を行う際に触媒を添加した場合、部分加水分解反応が迅速に進行するため好適である。触媒としては酸が好適であり、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸などが挙げられるが、特に制限はない。酸の濃度としては、pHが1〜4の範囲のものを使用するのが好ましい。
【0029】
シリカ原料物質と異種酸化物原料物質との混合は、得ようとするシリカ系複合酸化物の組成に応じて夫々所定量の原料物質を適宜混合し、撹拌することにより好適に行われる。こうすることにより両原料物質が複合化された複合アルコキシドが形成されるので、シリカ以外の金属酸化物の含有率が30モル%以上であっても、粒子径の変動係数が7%以下で且つ真球状のシリカ系複合酸化物粒子を効率良く得ることができるようになる。なお、シリコンのアルコキシドを部分加水分解した場合には、そのときの反応液と異種酸化物原料物質を混合すればよい。
【0030】
なお、本発明の方法では、各原料物質を別々に反応溶媒に添加して反応を行うことも勿論可能である。
【0031】
反応溶媒にシリカ原料物質及び異種酸化物原料物質、或いは予混合により調製された複合アルコキシドを添加する場合、これら原料物質はアルコールやアセトニトリル等の有機溶媒で希釈して添加しても差しつかえはないが、反応液におけるスラリー濃度を上げるためには、全く希釈せずに用いるか、または、希釈する場合にも希釈率は50質量%程度にとどめることが望ましい。
【0032】
これら原料物質を反応溶媒に添加する場合、凝集粒子が形成されにくいという観点から、液中滴下することが好ましい。液中滴下とは、原料物質の供給管の先端(原料物質の吐出口)が反応液中に浸されていることを言う。吐出口先端の位置は、液中にあれば特に限定されないが、撹拌羽根の近傍などの充分に撹拌が行われる位置が望ましい。
【0033】
また、触媒としてアンモニアなどの塩基性触媒を使用した場合には、原料物質と共に、別途調製されたアルカリ性水溶液を、反応液中に同時に滴下しても良い。該アルカリ性水溶液としては、10〜30質量%のアンモニア水が好適である。なお、供給に際しては、同時に供給される原料物質に含まれるケイ素とケイ素以外の金属の総モル数に対して、供給されるアルカリ性水溶液中の水のモル数が1〜6倍、好ましくは2〜5倍となるような供給量でアルカリ性水溶液を滴下することが好ましい。アルカリ性水溶液の滴下は、特に液中滴下する必要はないが、撹拌羽根近傍で液中滴下した方が、反応液中での撹拌が充分に行われるので好ましい。上記のようにアルカリ性水溶液を同時滴下することによって、固形分濃度を高くして粒子を合成できるので、収量(生産性)の高い合成が可能となる。
【0034】
また、単分散性を上げるためには、滴下速度は遅くした方が好ましい。しかしながら、滴下速度を遅くしすぎると合成が終了するまでに長時間を要するようになるため、合成初期は滴下速度を遅くし、後半になってから滴下速度を速めるのが好ましい。
【0035】
原料物質およびアルカリ性水溶液は、それぞれ滴下を開始してから終了するまで連続的に滴下することが好ましい。なお、ここで言う連続的とは、好ましくは10分以上、さらに好ましくは3分以上の間隔を空けないことを言う。滴下速度は、必ずしも一定である必要はないが、滴下速度を変える場合には連続的に変えた方が望ましい。間隔を空けて断続的に供給した場合には、急激な水の添加によって反応液中の雰囲気が乱され、粒子同士の凝集や、新たな核粒子の発生などが起こることがある。
【0036】
反応を行うときの反応液の温度は、用いる原料物質の種類に応じて適宜すればよいが、通常は0〜50℃の範囲であれる。反応は原料物質の供給後速やかに進行し、加水分解に引き続き起こる縮重合反応(通常、脱アルコール縮合)によりSi−O−Si結合やSi−O−M結合(Mはシリコン以外の金属原子を意味する)が形成され、結果的にシリカ系複合酸化物粒子が生成する。
【0037】
本発明の製造方法では、生成したシリカ系複合酸化物粒子は、反応液中に分散したコロイド状の粒子分散液として得られる。用途によっては、そのまま使用しても良いが、遠心分離、ろ過、減圧留去、スプレードライなどの手法で固液分離し、粉末の形で取り出しても良いし、溶媒を水もしくはアルコールなどの有機溶媒に置換した後に使用しても良い。溶媒の置換方法に特に制限は無く、粉末の形で取り出した後に所望の溶媒を添加して再分散してもよいし、限外ろ過などによる濃縮と所望の溶媒を添加する、という操作を繰り返して置換しても良い。
【0038】
また、粒子を合成した後、取り出した粉末は乾燥させることができる。乾燥を行う場合の乾燥温度は50〜300℃の範囲が好適であり、乾燥時間は数時間から数日の間が好適である。乾燥した粉末はさらに高い温度で焼成することができる。焼成温度は300〜1300℃の範囲が好適で、焼成時間は1〜24時間の範囲が好適である。乾燥または焼成後の粒子は、ボールミルやジェットミルなどを使用して解砕することができる。また、樹脂等に分散して使用する場合には、高シェアの分散機を使用することによって、樹脂への分散と同時に粒子の解砕を行うことができる。
【0039】
本発明の製造方法によれば、たとえばシリカ以外の金属酸化物の含有割合が20モル%、或いは30モル%と以上と高い場合であっても、粒子径の変動係数が7%以下、好ましくは6%以下という優れた単分散性を示すシリカ系複合酸化物粒子を効率よく製造することができる。また、本発明の製造方法によれば粒子の円形度は0.8以上、好ましくは0.9以上である真球に近い形状を有するシリカ系複合酸化物粒子を効率よく製造することもできる。
【0040】
なお、シリカ系複合酸化物粒子の形状は、走査型や透過型の電子顕微鏡等を用いることによって確認することができる。また、該粒子の平均粒子径や単分散性(粒子径の変動係数)は、前記電子顕微鏡像を解析したり、精度の高い粒度分布計などで計測したりすることによって決定することができる。
【0041】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0042】
なお、シリカ系複合酸化物粒子の各種物性測定は次のようにして行った。
【0043】
(1)「平均粒子径」、「粒子径の変動係数」、及び「円形度」
これら物性は、走査型電子顕微鏡の撮影像を用いて200個以上の粒子を、画像解析装置を用いて解析することにより求めた。ここで、「円形度」とは粒子がどれだけ球に近いかを表すパラメーターで、粒子の投影面積をS、周囲長をLとしたときに(4π×S)/Lで表される値である。
【0044】
(2)屈折率
粒子の屈折率は液浸法により測定した。即ち、異なる屈折率の溶媒(例えば、トルエン、1−ブロモナフタレン、1−クロロナフタレン、ジヨードメタン、イオウ入りジヨードメタンなど)を適当に配合することにより任意の屈折率の混合溶媒を作り、その中に粒子を分散させて25℃において最も透明な粒子分散液の屈折率を粒子の屈折率とした。溶媒の屈折率はアッベ屈折率計を用いて25℃で測定した。
【0045】
(3)結晶形態
粒子の結晶形態は、X線回折装置を用いて同定した。
【0046】
実施例1
(複合アルコキシド溶液の調製)
2リットルのねじ口瓶に、テトラメトキシシラン(多摩化学(株))548g、メタノール110gを仕込み撹拌した。この中に0.04質量%希塩酸29gを加え15分間テトラメトキシシランの部分加水分解を行った。なお、テトラメトキシシランの部分加水分解に用いた水の量は、後に添加するチタンテトライソプロポキシドに対して4.0当量であった。続いて、得られた反応液にチタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)、商品名:A−1)114g(テトラメトキシシランとチタンテトライソプロポキシドの合計のモル数に対するチタンテトライソプロポキシドの配合比率は、10モル%)をイソプロピルアルコール23gで希釈した液を加え、無色透明な複合アルコキシド溶液を得た。
【0047】
(シリカ系複合酸化物粒子の製造)
撹拌翼をセットした内容積5リットルのジャケット付ガラス製反応器に、アセトニトリルおよびアンモニア水(25質量%)をそれぞれ667gおよび133g仕込み、ジャケットの循環水の温度を40℃に設定し、100rpmで撹拌した。次に、このようにして調製した反応溶媒に予め調製した上記複合アルコキシド溶液823gを5時間かけて全量を供給した。供給には1/8インチのSUS製管を用いた。このときのアセトニトリルの割合は反応開始時が83質量%、反応終了時が37質量%であった。
【0048】
反応終了後、シリカ系複合酸化物粒子のスラリーを取り出した。得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は球形であった。画像解析の結果、平均粒子径は0.24μm、粒子径の変動係数は4.9%、粒子の円形度は0.93であった。その後、得られたスラリーを凝集沈降させ、ろ過、乾燥した粒子の一部を900℃で10時間焼成した。焼成した粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径は7%ほど小さくなったが、他の数値は上記とほぼ同様であった。また、粒子の屈折率は1.52であった。X線回折の結果、乾燥した粒子、焼成した粒子はともに非晶質であった。
【0049】
実施例2
(複合アルコキシド溶液の調製)
2リットルのねじ口瓶に、テトラメトキシシラン(多摩化学(株))487g、メタノール97gを仕込み撹拌した。この中に0.04質量%希塩酸58gを加え15分間テトラメトキシシランの部分加水分解を行った。なお、テトラメトキシシランの部分加水分解に用いた水の量は、後に添加するチタンテトライソプロポキシドに対して4.0当量であった。続いて、チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)、商品名:A−1)227g(テトラメトキシシランとチタンテトライソプロポキシドの合計のモル数に対するチタンテトライソプロポキシドの配合比率は、20モル%)をイソプロピルアルコール46gで希釈した液を加え、無色透明な複合アルコキシド溶液を得た。
【0050】
(シリカ系複合酸化物粒子の製造)
撹拌翼をセットした内容積5リットルのジャケット付ガラス製反応器に、アセトニトリルおよびアンモニア水(25質量%)をそれぞれ667gおよび133g仕込み、ジャケットの循環水の温度を40℃に設定し、100rpmで撹拌した。次に、このようにして調製した反応溶媒に予め調製した上記複合アルコキシド溶液915gを5時間かけて全量を供給した。供給には1/8インチのSUS製管を用いた。このときのアセトニトリルの割合は反応開始時が83質量%、反応終了時が35質量%であった。
【0051】
反応終了後、シリカ系複合酸化物粒子のスラリーを取り出した。得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は球形であった。画像解析の結果、平均粒子径は0.18μm、粒子径の変動係数は5.2%、粒子の円形度は0.91であった。その後、得られたスラリーを凝集沈降させ、ろ過、乾燥した粒子の一部を900℃で10時間焼成した。焼成した粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径は7%ほど小さくなったが、他の数値は上記とほぼ同様であった。また、粒子の屈折率は1.60であった。X線回折の結果、乾燥した粒子は非晶質であり、900℃で焼成した粒子は、25.2°付近にアナターゼ型チタニア由来のピークを検出した。したがって、焼成粒子は、シリカマトリックス中にチタニアの微結晶が分散した球形の粒子であることが分かった。
【0052】
実施例3
(複合アルコキシド溶液の調製)
2リットルのねじ口瓶に、テトラメトキシシラン(多摩化学(株))408g、メタノール82gを仕込み撹拌した。この中に0.04質量%希塩酸48gを加え15分間テトラメトキシシランの部分加水分解を行った。なお、テトラメトキシシランの部分加水分解に用いた水の量は、後に加えるチタンテトライソプロポキシドに対して2.0当量であった。続いて、チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)、商品名:A−1)375g(テトラメトキシシランとチタンテトライソプロポキシドの合計のモル数に対するチタンテトライソプロポキシドの配合比率は、33モル)をイソプロピルアルコール75gで希釈した液を加え、無色透明な複合アルコキシド溶液を得た。
【0053】
(シリカ系複合酸化物粒子の製造)
撹拌翼をセットした内容積5リットルのジャケット付ガラス製反応器に、アセトニトリルおよびアンモニア水(25質量%)をそれぞれ667gおよび133g仕込み、ジャケットの循環水の温度を40℃に設定し、100rpmで撹拌した。次に、このようにして調製した反応溶媒に予め調製した上記複合アルコキシド溶液988gを5時間かけて全量を供給した。供給には1/8インチのSUS製管を用いた。このときのアセトニトリルの割合は反応開始時が83質量%、反応終了時が34質量%であった。
【0054】
反応終了後、シリカ系複合酸化物粒子のスラリーを取り出した。得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は球形であった。画像解析の結果、平均粒子径は0.12μm、粒子径の変動係数は5.8%、粒子の円形度は0.87であった。その後、得られたスラリーを凝集沈降させ、ろ過、乾燥した粒子の一部を900℃で10時間焼成した。焼成した粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径は7%ほど小さくなったが、他の数値は上記とほぼ同様であった。また、粒子の屈折率は1.70であった。X線回折の結果、乾燥した粒子は非晶質であり、900℃で焼成した粒子は、25.2°付近にアナターゼ型チタニア由来のピークを検出した。したがって、焼成粒子は、シリカマトリックス中にチタニアの微結晶が分散した球形の粒子であることが分かった。
【0055】
実施例4
(複合アルコキシド溶液の調製)
5リットルのねじ口瓶に、テトラメトキシシラン(多摩化学(株))365g、メタノール73gを仕込み撹拌した。この中に0.04質量%希塩酸43gを加え15分間テトラメトキシシランの部分加水分解を行った。なお、テトラメトキシシランの部分加水分解に用いた水の量は、後で添加するチタンテトライソプロポキシドに対して1.5当量であった。続いて、チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)、商品名:A−1)455g(テトラメトキシシランとチタンテトライソプロポキシドの合計のモル数に対するチタンテトライソプロポキシドの配合比率は、40モル%)をイソプロピルアルコール91gで希釈した液を加え、無色透明な複合アルコキシド溶液を得た。
【0056】
(シリカ系複合酸化物粒子の製造)
撹拌翼をセットした内容積5リットルのジャケット付ガラス製反応器に、アセトニトリルおよびアンモニア水(25質量%)をそれぞれ667gおよび133g仕込み、ジャケットの循環水の温度を40℃に設定し、100rpmで撹拌した。次に、このようにして調製した反応溶媒に予め調製した上記複合アルコキシド溶液1027gを5時間かけて全量を供給した。供給には1/8インチのSUS製管を用いた。このときのアセトニトリルの割合は反応開始時が83質量%、反応終了時が33質量%であった。
【0057】
反応終了後、シリカ系複合酸化物粒子のスラリーを取り出した。得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は球形であった。画像解析の結果、平均粒子径は0.11μm、粒子径の変動係数は6.1%、粒子の円形度は0.85であった。その後、得られたスラリーを凝集沈降させ、ろ過、乾燥した粒子の一部を900℃で10時間焼成した。焼成した粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径は7%ほど小さくなったが、他の数値は上記とほぼ同様であった。また、粒子の屈折率は1.76であった。X線回折の結果、乾燥した粒子は非晶質であり、900℃で焼成した粒子は、25.2°付近にアナターゼ型チタニア由来のピークを検出した。したがって、焼成粒子は、シリカマトリックス中にチタニアの微結晶が分散した球形の粒子であることが分かった。
【0058】
実施例5
(複合アルコキシド溶液の調製)
2リットルのねじ口瓶に、テトラメトキシシラン(多摩化学(株))408g、メタノール41g、アセトニトリル41gを仕込み撹拌した。この中に0.04質量%希塩酸48gを加え15分間テトラメトキシシランの部分加水分解を行った。なお、テトラメトキシシランの部分加水分解に用いた水の量は、後で加えるチタンテトライソプロポキシドに対して2.0当量であった。続いて、チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)、商品名:A−1)375g(テトラメトキシシランとチタンテトライソプロポキシドの合計のモル数に対するチタンテトライソプロポキシドの配合比率は、33モル%)をアセトニトリル75gで希釈した液を加え、無色透明な複合アルコキシド溶液を得た。
【0059】
(シリカ系複合酸化物粒子の製造)
撹拌翼をセットした内容積5リットルのジャケット付ガラス製反応器に、アセトニトリルおよびアンモニア水(25質量%)をそれぞれ667gおよび133g仕込み、ジャケットの循環水の温度を40℃に設定し、100rpmで撹拌した。次に、このようにして調製した反応溶媒に予め調製した上記複合アルコキシド溶液988gを5時間かけて全量を供給した。供給には1/8インチのSUS製管を用いた。このときのアセトニトリルの割合は反応開始時が83質量%、反応終了時が40質量%であった。
【0060】
反応終了後、シリカ系複合酸化物粒子のスラリーを取り出した。得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は球形であった。画像解析の結果、平均粒子径は0.11μm、粒子径の変動係数は5.3%、粒子の円形度は0.90であった。その後、スラリーを凝集沈降させ、ろ過、乾燥した粒子の一部を900℃で10時間焼成した。焼成した粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径は7%ほど小さくなったが、他の数値は上記とほぼ同様であった。また、粒子の屈折率は1.70であった。X線回折の結果、乾燥した粒子は非晶質であり、900℃で焼成した粒子は、25.2°付近にアナターゼ型チタニア由来のピークを検出した。したがって、焼成粒子は、シリカマトリックス中にチタニアの微結晶が分散した球形の粒子であることが分かった。
【0061】
実施例6
(複合アルコキシド溶液の調製)
2リットルのねじ口瓶に、テトラメトキシシラン(多摩化学(株))408g、メタノール204gを仕込み撹拌した。この中に0.04質量%希塩酸48gを加え15分間テトラメトキシシランの部分加水分解を行った。なお、テトラメトキシシランの部分加水分解に用いた水の量は、後で添加するチタンテトライソプロポキシドに対して2.0当量であった。続いて、チタンテトライソプロポキシド(日本曹達(株)、商品名:A−1)375gをアセトニトリル750g(テトラメトキシシランとチタンテトライソプロポキシドの合計のモル数に対するチタンテトライソプロポキシドの配合比率は、33モル%)で希釈した液を加え、無色透明な複合アルコキシド溶液を得た。
【0062】
(シリカ系複合酸化物粒子の製造)
撹拌翼をセットした内容積5リットルのジャケット付ガラス製反応器に、アセトニトリルおよびアンモニア水(25質量%)をそれぞれ667gおよび133g仕込み、ジャケットの循環水の温度を40℃に設定し、100rpmで撹拌した。次に、このようにして調製した反応溶媒に予め調製した上記複合アルコキシド溶液1786gを5時間かけて全量を供給した。供給には1/8インチのSUS製管を用いた。このときのアセトニトリルの割合は反応開始時が83質量%、反応終了時が23質量%であった。
【0063】
反応終了後、シリカ系複合酸化物粒子のスラリーを取り出した。得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は球形であった。画像解析の結果、平均粒子径は0.12μm、粒子径の変動係数は6.7%、粒子の円形度は0.82であった。その後、スラリーを凝集沈降させ、ろ過、乾燥した粒子の一部を900℃で10時間焼成した。焼成した粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径は7%ほど小さくなったが、他の数値は上記とほぼ同様であった。また、粒子の屈折率は1.70であった。X線回折の結果、乾燥した粒子は非晶質であり、900℃で焼成した粒子は、25.2°付近にアナターゼ型チタニア由来のピークを検出した。したがって、焼成粒子は、シリカマトリックス中にチタニアの微結晶が分散した球形の粒子であることが分かった。
【0064】
実施例7
(複合アルコキシド溶液の調製)
2リットルのねじ口瓶に、テトラメトキシシラン(多摩化学(株))518g、メタノール104gを仕込み撹拌した。この中に0.04質量%希塩酸43gを加え15分間テトラメトキシシランの部分加水分解を行った。なお、テトラメトキシシランの部分加水分解に用いた水の量は、後で加えるジルコニウムテトラブトキシドに対して4.0当量であった。続いて、ジルコニウムテトラブトキシド230g(テトラメトキシシランとジルコニウムテトラブトキシドの合計のモル数に対するジルコニウムテトラブトキシドの配合比率は、15モル%)をn−ブタノール46gで希釈した液を加え、無色透明な複合アルコキシド溶液を得た。
【0065】
(シリカ系複合酸化物粒子の製造)
撹拌翼をセットした内容積5リットルのジャケット付ガラス製反応器に、アセトニトリルおよびアンモニア水(25質量%)をそれぞれ667gおよび133g仕込み、ジャケットの循環水の温度を40℃に設定し、100rpmで撹拌した。次に、このようにして調製した反応溶媒に予め調製した上記複合アルコキシド溶液941gを5時間かけて全量を供給した。供給には1/8インチのSUS製管を用いた。このときのアセトニトリルの割合は反応開始時が83質量%、反応終了時が35質量%であった。
【0066】
反応終了後、シリカ系複合酸化物粒子のスラリーを取り出した。得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は球形であった。画像解析の結果、平均粒子径は0.24μm、粒子径の変動係数は6.4%、粒子の円形度は0.88であった。その後、スラリーを凝集沈降させ、ろ過、乾燥した粒子の一部を900℃で10時間焼成した。焼成した粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒子径は7%ほど小さくなったが、他の数値は上記とほぼ同様であった。また、粒子の屈折率は1.54であった。X線回折の結果、乾燥した粒子、焼成した粒子はともに非晶質であった。
【0067】
比較例1
アセトニトリルの代わりにイソプロピルアルコールを用いた以外は、実施例2と同様にしてシリカ系複合酸化物粒子の合成を行った。このとき反応開始時から反応終了時までアセトニトリルの割合は0質量%であった。反応終了後、シリカ系複合酸化物粒子のスラリーを取り出し、得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は球形ではあるが、ややいびつであった。画像解析の結果、平均粒子径は0.47μm、粒子径の変動係数は15.2%、粒子の円形度は0.71であり、単分散性、円形度の高い粒子は得られなかった。
【0068】
比較例2
アセトニトリルの代わりにイソプロピルアルコールを用いた以外は、実施例3と同様にしてシリカ系複合酸化物粒子の合成を行った。このとき反応開始時から反応終了時までアセトニトリルの割合は0質量%であった。反応終了後、シリカ系複合酸化物粒子のスラリーを取り出し、得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状は球形ではあるが、ややいびつであった。画像解析の結果、平均粒子径は0.95μm、粒子径の変動係数は21.3%、粒子の円形度は0.67であり、単分散性、円形度の高い粒子は得られなかった。
【0069】
比較例3
アセトニトリルの代わりにメタノールを用いた以外は、実施例3と同様にしてシリカ系複合酸化物粒子の合成を行った。このとき反応開始時から反応終了時までアセトニトリルの割合は0質量%であった。反応終了後、シリカ系複合酸化物粒子のスラリーを取り出したが、粒子のほとんどは沈降していた。得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状でなく数μmの凝集した固まりであり、単分散性、円形度の高い粒子は得られなかった。
【0070】
実施例1〜7及び比較例1〜3の反応条件及び得られた粒子性状を表1及び2に纏める。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
比較例4〜10
アセトニトリルの代わりに表3に示した溶媒を用いた以外は、実施例3と同様にしてシリカ系複合酸化物粒子の合成を行った。このとき反応開始時から反応終了時までアセトニトリルの割合は0質量%であった。反応終了後、シリカ系複合酸化物粒子のスラリーを取り出したが、粒子のほとんどは沈降またはゲル化していた。得られた粒子を走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒子形状でなく数μmの凝集した固まりであり、単分散性、円形度の高い粒子は得られなかった。
【0074】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水及び有機溶媒を含んでなる反応溶媒中に、シリコンのアルコキシド及び/又は該アルコキシドから誘導される可縮合性化合物、並びにシリコン以外の金属のアルコキシド、該アルコキシドから誘導される可縮合性化合物、及びシリコン以外の金属の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を添加して反応させる工程を含むシリカ系複合酸化物粒子の製造方法において、前記有機溶媒の少なくとも1成分としてアセトニトリルを使用すると共に、反応液に含まれるアセトニトリルの濃度を20質量%以上に保ちながら前記反応を行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
(1)シリコンのアルコキシド及び/又は該アルコキシドから誘導される可縮合性化合物と、シリコン以外の金属のアルコキシド、該アルコキシドから誘導される可縮合性化合物、及びシリコン以外の金属の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種とを混合する工程、及び(2)該工程で得られた混合物を、水及び有機溶媒を含んでなる反応溶媒中に添加して反応させる工程を含むシリカ系複合酸化物粒子の製造方法において、前記有機溶媒の少なくとも1成分としてアセトニトリルを使用すると共に、反応液に含まれるアセトニトリルの濃度を20質量%以上に保ちながら前記反応を行うことを特徴とする方法。
【請求項3】
シリコン以外の金属のアルコキシドとしてチタンのアルコキシド及び/又はジルコニウムのアルコキシドを使用する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
粒子径の変動係数が7%以下であるシリカ系複合酸化物粒子を製造することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
粒子の円形度が0.8以上であるシリカ系複合酸化物粒子を製造することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の方法。