説明

シリコーンエラストマー多孔質体形成用油中水型エマルジョン組成物

【課題】液状シリコーンゴム材の硬化後の脱水性を改善したシリコーンエラストマー多孔質体形成用油中水型エマルジョン組成物を提供する。
【解決手段】硬化してシリコーンエラストマーを生成する液状シリコーンゴム材、界面活性剤、水、および400m2/g以上の比表面積を有する多孔質フィラーを含有することを特徴とするシリコーンエラストマー多孔質体形成用油中水型エマルジョン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンエラストマー多孔質体形成用油中水型エマルジョン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンエラストマー多孔質体は、種々の分野で利用されており、例えば、複写機、レーザプリンタなどの作像部品、例えば、現像ローラ、トナー供給ローラ、転写ローラ、ドラムクリーニングローラに、また複写機、各種プリンタ、プロッタの用紙搬送ローラに使用され、さらには定着装置の加圧ローラにも使用されている。
従来、多孔質体は、主に、発泡現象を利用して製造されているが、従来のシリコーンエラストマー多孔質体の製造方法では、シリコーンゴムの硬化と発泡を同時に行っているため、得られる多孔質体中のセル(気泡)のサイズが均一でなく、大きくばらつくばかりでなく、微細なサイズのセルを形成させることが困難である。特許文献1には、シラノール基を有するポリシロキサン、特定の架橋剤、硬化触媒、乳化剤等を含有する室温硬化型のポリシロキサンエマルジョンを冷凍して凍結し、解凍することなく水を昇華させて乾燥することによってシリコーンエラストマー多孔質体を製造する方法が開示されているが、この方法でも、均一で微細なサイズのセルを有する多孔質体を製造することが困難である。また、この方法によって得られる多孔質体は、連続気泡型である。
【特許文献1】特開平6−287348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる事情に鑑み、本出願人は、発泡現象を伴わずに均一な微細セル(気泡)を有するシリコーンエラストマー多孔質体を生成し得る油中水型エマルジョン組成物として、硬化してシリコーンエラストマーを生成する液状シリコーンゴム材、界面活性作用を有するシリコーンオイル材、および水を含有することを特徴とするシリコーンエラストマー多孔質体形成用油中水型エマルジョン組成物について出願するとともに、かかるエマルジョンから得ることができるシリコーンエラストマー多孔質体についても出願した(特願2004−319779号、特願2004−141406号;以下、先願という)。このエマルジョン組成物から製造されたシリコーンエラストマー多孔質体は、実質的に独立気泡型のものであり、均一で微細なセル有するものである。
【0004】
先願に係るシリコーンエラストマー多孔質体は、先願に係る油中水型エマルジョン組成物を、エマルジョン中の水を揮発させることなく液状シリコーンゴム材を加熱硬化させた後、硬化したシリコーンゴム中に閉じ込められた水を除去するために加熱することによって製造することができる。
【0005】
しかし、上に述べたように、このシリコーンゴムエラストマーは実質的に独立気泡型のものであるため、加熱による水の蒸発に比較的時間を要することが判明した。
【0006】
したがって、本発明は、液状シリコーンゴム材の硬化後の脱水性を改善したシリコーンエラストマー多孔質体形成用油中水型エマルジョン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、硬化してシリコーンエラストマーを生成する液状シリコーンゴム材、界面活性剤、および水を含有するシリコーンエラストマー多孔質体形成用油中水型エマルジョン組成物に特定の比表面積を有する多孔質フィラーを添加することにより、液状シリコーンゴム材の硬化後の脱水性が改善されることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明によれば、硬化してシリコーンエラストマーを生成する液状シリコーンゴム材、界面活性剤、水、および400m2/g以上の比表面積を有する多孔質フィラーを含有することを特徴とするシリコーンエラストマー多孔質体形成用油中水型エマルジョン組成物が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の油中水型エマルジョン組成物は、硬化してシリコーンエラストマーを生成する液状シリコーンゴム材、界面活性剤、水および400m2/g以上の比表面積を有する多孔質フィラーを含有する。
【0011】
液状シリコーンゴム材は、加熱により硬化してシリコーンエラストマーを生成するものであれば特に制限はないが、いわゆる付加反応硬化型液状シリコーンゴムを使用することが好ましい。付加反応硬化型液状シリコーンゴムは、主剤となる不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンと架橋剤となる活性水素含有ポリシロキサンを含む。不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンにおいて、不飽和脂肪族基は、両末端に導入され、側鎖としても導入され得る。そのような不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンは、例えば、下記式(1)で示すことができる。
【化1】

【0012】
式(1)において、R1は、不飽和脂肪族基を表し、各R2は、C1〜C4低級アルキル基、フッ素置換C1〜C4低級アルキル基、またはフェニル基を表す。a+bは、通常、50〜2000である。R1によって表される不飽和脂肪族基は、通常、ビニル基である。各R2は、通常、メチル基である。
【0013】
活性水素含有ポリシロキサン(ハイドロジェンポリシロキサン)は、不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンに対し架橋剤として作用するものであり、主鎖のケイ素原子に結合した水素原子(活性水素)を有する。水素原子は、活性水素含有ポリシロキサン1分子当たり3個以上存在することが好ましい。そのような活性水素含有ポリシロキサンは、例えば、下記式(2)で示すことができる。
【化2】

【0014】
式(2)において、R3は、水素またはC1〜C4低級アルキル基を表し、R4は、C1〜C4低級アルキル基を表す。c+dは、通常、8〜100である。R3およびR4で表される低級アルキル基は、通常、メチル基である。
【0015】
これら液状シリコーンゴム材は、市販されている。なお、市販品では、付加反応硬化型液状シリコーンゴムを構成する不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンと活性水素含有ポリシロキサンとは別々のパッケージで提供され、以後詳述する両者の硬化に必要な硬化触媒は、活性水素含有ポリシロキサンに添加されている。
【0016】
界面活性剤は、エマルジョン中に水を安定に分散させるための分散安定剤として作用するものであり、いうまでもなく、水に対し親和性を示すとともに、液状シリコーンゴム材に対しても親和性を示すものである。かかる界面活性剤としては、界面活性作用を有するシリコーンオイル材を少なくとも1種用いることができる。このシリコーンオイル材は、エーテル基等の親水性基を有することが好ましい。また、このシリコーンオイル材は、通常3〜13のHLB値、好ましくは4〜11のHLB値を示す。より好ましくは、HLB値が3以上異なる2種類のエーテル変性シリコーンオイルを併用する。その場合、さらに好ましくは、7〜11のHLB値を有する第1のエーテル変性シリコーンオイルと、4〜7のHLB値を有する第2のエーテル変性シリコーンオイルとを組み合わせて使用する。いずれのエーテル変性シリコーンオイルも、ポリシロキサンの側鎖にポリエーテル基を導入したものを用いることができ、例えば、下記式(3)で示すことができる。
【化3】

【0017】
式(3)において、R5は、C1〜C4低級アルキル基を表し、R6は、ポリエーテル基を表す。e+fは、通常、8〜100である。R5で表される低級アルキル基は、通常、メチル基である。また、R6により表されるポリエーテル基は、通常、(C24O)x基、(C36O)y基、または(C24O)x(C36O)y基を含む。主に、x、yの数により、HLB値が決定される。これら界面活性作用を有するシリコーンオイル材は市販されている。
【0018】
多孔質フィラーは、400m2/g以上の比表面積(BET法)を有する。多孔質フィラーの比表面積が400m2/g未満であると、脱水性の向上に寄与し得ないおそれがある。多孔質フィラーは、通常、400〜1000m2/gの比表面積を有し、好ましくは400〜900m2/gの比表面積を有する。また、多孔質フィラーの平均粒径は、1〜20μmであることが好ましい。多孔質フィラーの平均粒径が1μm未満の場合には、脱水効果が十分に発揮されないおそれがあり、20μmを超えると、均一なセルを有する多孔質体が得られないおそれがある。多孔質フィラーは、通常、シリカ、特にアモルファスシリカで形成されている。そのうち、球状アモルファスシリカは、市販されており、例えば、サンスフェア(登録商標)Hシリーズとして洞海化学工業(株)から入手することができる。
【0019】
水は、いうまでもなく、本発明の油中水型エマルジョン中において、粒子(水滴)の形態で不連続相として分散して存在する。後に詳述するように、この水粒子の粒径が、本発明の油中水型エマルジョンから得られる多孔質体のセル(気泡)の径を実質的に決定する。水は、1〜50μmの平均粒径を有する粒子の形態で存在し得る。特に、本発明の油中水型エマルジョンにおいて、粒径20μm以下の水粒子が、全水粒子数の90%以上の割合で存在し得る。エマルジョン中の水粒子のサイズは、マイクロスコープ観察によって測定することができる。
【0020】
本発明の油中水型エマルジョンは、液状シリコーンゴム材を硬化させるために、硬化触媒を含有することができる。硬化触媒としては、それ自体既知のように、白金触媒を用いることができる。白金触媒の量は、白金原子として、1〜100重量ppm程度で十分である。硬化触媒は、シリコーンエラストマー多孔質体を製造するときに本発明の油中水型エマルジョンに添加してもよいが、エマルジョンを製造する際に配合することもできる。
【0021】
本発明の油中水型エマルジョンにおいて、液状シリコーンゴム材100重量部に対し、界面活性剤を0.2〜5.5重量部の割合で、水を10〜250重量部の割合で使用することが、水分散安定性に特に優れたエマルジョンを得る上で好ましい。界面活性剤が、前記第1のエーテル変性シリコーンオイルと前記第2のエーテル変性シリコーンオイルとの組合せからなる場合、液状シリコーンゴム材100重量部に対し、第1のエーテル変性シリコーンオイルを0.15〜3.5重量部の量で、第2のエーテル変性シリコーンオイルを0.05〜2重量部の量(合計0.2〜5.5重量部)で用いることが好ましい。また、液状シリコーンゴム材が不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンと活性水素含有ポリシロキサンとの組合せからなる場合、前者と後者の重量比は、6:4〜4:6であることが好ましい。多孔質フィラーは、液状シリコーンゴム材100重量部に対し、0.5〜30重量部の割合で配合することが好ましい。多孔質フィラーの量が0.5重量部未満であると、添加効果が十分に得られないおそれがあり、他方30重量部を超えると、得られるシリコーンエラストマーの物性が低下するおそれがある。多孔質フィラーは、液状シリコーンゴム材100重量部に対し、好ましくは5〜20重量部の割合で配合される。
【0022】
本発明の油中水型エマルジョンは、得られる多孔質体の用途に応じて、種々の添加剤を含有することができる。そのような添加剤としては、着色料(顔料、染料)、導電性付与材(カーボンブラック、金属粉末等)、充填材(シリカ等)を例示することができる。さらに、本発明の油中水型エマルジョンは、例えば、脱泡を容易にすること等を目的としてエマルジョンの粘度を調整するために、分子量の低い、非反応性のシリコーンオイルを含有することができる。本発明の油中水型エマルジョンは、1cSt〜20万cStの粘度を有すると、脱泡が容易に行え、取り扱いに都合がよい。
【0023】
本発明の油中水型エマルジョンは、種々の方法により製造することができる。一般的には、液状シリコーンゴム材、界面活性作用を有するシリコーンオイル材、多孔質フィラーおよび水を、必要に応じてさらなる添加剤とともに混合し、十分に撹拌することによって製造される。液状シリコーンゴム材が、不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンと活性水素含有ポリシロキサンとの組合せにより提供される場合には、不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンと界面活性作用を有するシリコーンオイル材の一部を混合・撹拌して第1の混合物を得、他方活性水素含有ポリシロキサンと界面活性作用を有するシリコーンオイル材の残りを混合・撹拌して第2の混合物を得ることができる。ついで、第1の混合物と第2の混合物を混合・撹拌しながら、徐々に多孔質フィラーと水を添加して、撹拌することにより所望のエマルジョンを得ることができる。いうまでもなく、本発明の油中水型エマルジョンの製造方法はこれに限定されるものではない。液状シリコーンゴム材、界面活性作用を有するシリコーンオイル材、多孔質フィラーおよび水、並びに必要に応じて添加される添加剤の添加順序は、どのようなものでもよい。エマルジョンを形成させるための撹拌は、例えば、300rpm〜1000rpmの攪拌器回転速度で行うことができる。エマルジョン形成後、エマルジョンを、加熱することなく、例えば真空減圧機を用いて、脱泡処理に供してエマルジョン中に存在する空気を除去することができる。
【0024】
本発明の油中水型エマルジョンを用いてシリコーンエラストマー多孔質体を製造するためには、硬化触媒の存在下に、本発明の油中水型エマルジョンを液状シリコーンゴム材の加熱硬化(一次加熱)条件に供することができる。一次加熱では、エマルジョン中の水を揮発させることなく、液状シリコーンゴム材を加熱硬化させるために、130℃以下の加熱温度を用いることが好ましい。一次加熱の際の加熱温度は、通常、80℃以上であり、加熱時間は、通常、5分〜60分程度である。この一次加熱により、液状シリコーンゴムが硬化し、エマルジョン中の水粒子をエマルジョン中の状態のまま閉じ込める。硬化したシリコーンゴムは、以下述べる二次加熱による水分の蒸発の際の膨張力に耐える程度までに硬化する。
【0025】
次に、水粒子を閉じ込めた硬化シリコーンゴムから水分を除去するために、二次加熱を行う。この二次加熱は、70℃〜300℃の温度で行うことが好ましい。加熱温度が70℃未満では水の除去に長時間を要し、加熱温度が300℃を超えると、硬化したシリコーンゴムが劣化し得る。70℃〜300℃の加熱では、1時間〜24時間で水分は揮発除去される。二次加熱により水分が揮発除去されるとともに、シリコーンゴム材の最終的な硬化も達成される。揮発除去された水分は、硬化したシリコーンゴム材(シリコーンエラストマー)中に、水粒子の粒径にほぼ等しい気泡径のセルを残す。
【0026】
本発明のエマルジョンは、多孔質フィラーを含んでいるため、二次加熱の際の脱水時間が有意に短縮される。すなわち、一次加熱により硬化し、なお水を含んでいるエラストマー多孔質体のセル間に多孔質フィラーが介在し、それにより水を含んだセル同士が多孔質フィラーを介して連通し、水の逃げ道が形成されるものと考えられる。この水の逃げ道の形成により水の脱水が促進される。
【0027】
このように、本発明の油中水型エマルジョンは、発泡現象を伴うことなくシリコーンエラストマーを生成させることができる。エマルジョン中の水粒子は、一次加熱により硬化したシリコーンゴムに閉じ込められ、二次加熱の際には、単に揮発するだけである。こうして、実質的に独立気泡型のシリコーンエラストマー多孔質体が得られる。この多孔質体は、セル(気泡)が微細であり、しかもセルサイズの分布が狭く、均一性が高いものである。本発明のシリコーンエラストマー多孔質体は、30μm以下の平均セル径、特に20μm以下の平均セル径を有し、60%以上の単泡率を有し得る。
【0028】
なお、各セルの径は、各セルの長径mと短径nの和を2で除した値に相当する。ここで、セルの長径mとは、シリコーンエラストマー多孔質体の断面に現れる各セルについて、そのほぼ中心を通る、セルの輪郭上の最大2点間直線距離を意味し、短径nとは、各セルについて、そのほぼ中心を通る、セルの輪郭上の最小2点間距離を意味する。より具体的には、シリコーン多孔質体の任意の断面をSEMで撮影し、100〜250個程度のセルが存在する領域で各セルの長径mと短径nを計測する。この計測は、ノギスを用いて手作業で行うことができる。平均セル径は、画像処理により行うこともできる。画像処理は、例えば、TOYOBO製解析ソフト「V10 for Windows 95 (登録商標)Version 1.3」を用いて行うことができる。
【0029】
本発明の油中水型エマルジョンから生成されるシリコーンエラストマー多孔質体は、種々の分野で利用することができる。例えば、複写機、レーザプリンタなどの作像部品、例えば、現像ローラ、トナー供給ローラ、転写ローラ、ドラムクリーニングローラに、また複写機、各種プリンタ、プロッタの用紙搬送ローラに使用することができ、さらには定着装置の加圧ローラにも使用することができる。いずれのローラも基本構成は同じであり、芯金の周りに、本発明のシリコーンエラストマー多孔質体からなる弾性層を有する。弾性層の厚さは、個々のローラにより異なるが、一般的に、0.1mm〜15mm程度であり、長さは通常、400mmまでである。芯金の外径も、個々のローラにより異なるが、通常、5mm〜50mm程度である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
【0031】
実施例1
本実施例では、液状シリコーンゴム材として、東レ・ダウコーニング社から入手した液状シリコーンゴム(商品名TLN3002−04)を用いた。この液状シリコーンゴムは、活性水素含有ポリシロキサン(粘度:16Pa・S)と、ビニル基含有ポリシロキサン(粘度:15Pa・S)とが別々のパッケージとして提供され、ビニル基含有ポリシロキサンには、触媒量の白金触媒が添加されているものであった。以下、前者をシリコーンゴムA剤、後者をシリコーンゴムB剤と表示する。活性水素含有ポリシロキサンは、各R4がメチル基である上記式(2)の構造を有し、他方ビニル基含有シリコーンオイルは、各R1がビニル基であり、各R2がメチル基である上記式(1)の構造を有する。
【0032】
また、分散安定剤としては、いずれも信越化学社製ポリエーテル変性シリコーンオイルであるKF−618(HLB値:11);以下、「分散安定剤I」)およびKF−6015(HLB値:4);以下、分散安定剤II)を用いた。
【0033】
多孔質フィラーとしては、洞海化学工業(株)から入手したサンスフェア(登録商標)H−33(球状アモルファスシリカ多孔質フィラー;平均粒径:2.4μm、BET比表面積701m2/g、吸油量375mL/100g)を用いた。
【0034】
まず、50重量部のシリコーンゴムA剤に、1.75重量部の分散安定剤Iと0.75重量部の分散安定剤IIとを予め混合した混合物を添加し、ハンドミキサーで5分間撹拌し、十分に分散させて混合物Aを調製した。他方、50重量部のシリコーンゴムB剤に、1.75重量部の分散安定剤Iと0.75重量部の分散安定剤IIとを予め混合した混合物を添加し、ハンドミキサーで5分間撹拌し、十分に分散させて混合物Bを調製した。
【0035】
得られた混合物Aと混合物Bを混合し、ハンドミキサーで3分間撹拌しながら、10重量部の水を添加した後、さらに2分間撹拌した。この混合物をハンドミキサーで撹拌しながら、表1に示す量の多孔質フィラーと130重量部の水を徐々に添加し、エマルジョンを調製した。
【0036】
得られたエマルジョンを真空減圧機内で脱泡させ、混入空気を除去した後、深さ12mmの円形圧縮成形金型に流し込み、プレス盤を用いて、設定温度100℃で30分間加熱(一次加熱)し、厚さ12mm、半径12mmの円板体を成形した。得られた円板体(多孔質体前駆体)を電気炉中、200℃で加熱(二次加熱)し、経時的に重量減少率を下記式により求めた。
【0037】
重量減少率=(初期重量−各時間後の重量)÷(初期の重量−12時間後の重量×100
ここで、12時間の加熱は、水を完全に除去するに十分なものである。
【0038】
各時間経過後の重量減少率を表1に併記する。また、表1に示す重量減少率の変化を図1にもグラフとして示す。表1には、100%脱水後の円板体(多孔質体)の平均気泡径を測定した結果も示す。平均気泡径の測定は、円板体を切断し、その断面をSEMで撮影し、140個のセルについて長径mと短径nをノギスで計測することにより行い、長径と短径の計測結果から平均セル径を算出した。
【表1】

【0039】
これらの結果から、液状シリコーンゴム材100重量部に対し、多孔質フィラーを0.5重量部以上配合することにより、脱水性が向上することがわかる。特に、液状シリコーンゴム材100重量部に対し、多孔質フィラーを5重量部以上配合すると、脱水性は顕著に向上する。
【0040】
実施例2
本実施例では、多孔質フィラーの添加量を5重量部と一定にし、多孔質フィラーの種類を変えた以外は実施例1の手順を繰り返した。使用した多孔質フィラーは、いずれも洞海化学工業(株)から入手したサンスフェア(登録商標)H−33(上記)、H−53(球状アモルファスシリカ多孔質フィラー;平均粒径:5.2μm、BET比表面積745m2/g、吸油量359mL/100g)、H−51(球状アモルファスシリカ多孔質フィラー;平均粒径:5.3μm、BET比表面積793m2/g、吸油量147mL/100g)およびH−201(球状アモルファスシリカ多孔質フィラー;平均粒径:18.3μm、BET比表面積861m2/g、吸油量160mL/100g)であった。
【0041】
各時間経過後の重量減少率を表2に示す。また、表2の重量減少率の変化を図2にもグラフとして示す。得られた多孔質体について、実施例と同様にして平均セル径を求めた。結果を表2に併記する。
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】多孔質フィラーの添加量と水分減少率との関係を示すグラフ。
【図2】多孔質フィラーの種類と水分減少率との関係を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化してシリコーンエラストマーを生成する液状シリコーンゴム材、界面活性剤、水、および400m2/g以上の比表面積を有する多孔質フィラーを含有することを特徴とするシリコーンエラストマー多孔質体形成用油中水型エマルジョン組成物。
【請求項2】
前記液状シリコーンゴム材が、付加反応硬化型のものであることを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤が、界面活性作用を有するシリコーンオイル材を少なくとも1種含むことを特徴とする請求項1または2に記載のエマルジョン組成物。
【請求項4】
前記液状シリコーンゴム材100重量部当たり、前記界面活性剤を0.2〜5.5重量部、前記水を10〜250重量部、および多孔質フィラーを0.5〜30重量部の割合で含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物。
【請求項5】
前記水が、1〜50μmの平均粒径を有する粒子の形態で存在することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−316220(P2006−316220A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142711(P2005−142711)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000227412)日東工業株式会社 (99)
【Fターム(参考)】