説明

シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ

眼科学的に相溶性のコンタクトレンズは、動物またはヒトの目の角膜上に装着するような形状を与えた、レンズ本体を含む。該レンズ本体は、親水性珪素-含有ポリマー材料で作られている。該レンズ本体は、睡眠中においてさえ、レンズ着用者が装着することを可能とする、酸素透過率、含水率、表面湿潤性、可撓性、および/またはデザインを有している。本発明のレンズは、夜通しの装着をも包含する、日々を基本として装着でき、あるいは数日間に渡り、例えば約30日間に及び、取り出しまたは清浄化を行うことなく、着用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件特許出願は、2004年8月27日付で出願した、米国仮特許出願第60/604,961号および2004年10月22日付で出願した、米国仮特許出願第60/621,525号に基く利益を、ここに請求する。これら仮特許出願の内容全体を、参考としてここに組入れる。
本発明は、延長された長い期間に渡り、連続的に着用できるコンタクトレンズに関する。特に、本発明は、諸特性の有利な組合せを持つ、可撓性の、親水性珪素-含有コンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、基本的にソフト型およびハード型レンズに分類される。ハードコンタクトレンズは、文字通りに硬質であり、かつその着用は、幾分か不快なものであり得る。他方、ソフトコンタクトレンズは、その着用はより快適であるが、一般的には各着用日の終了時点において、目から取出される。ソフトコンタクトレンズは、ヒドロゲル型および非-ヒドロゲル型レンズに分類される。
従来のソフトヒドロゲルコンタクトレンズは、しばしばヒドロキシエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン等の親水性モノマーのコポリマーで構成されており、また旋盤-切削法、スピンキャスティング法、流込み成型法またはこれらの組合せによって製造し、次いで生理塩水および/またはリン酸緩衝液中で膨潤処理して、約20%または約30%〜約80質量%なる範囲の含水率を持つレンズとして得ることができる。
【0003】
ソフトシリコンまたはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、長期間に渡り連続的に着用することが、示唆されている。例えば、幾つかのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、夜通し着用するものとされている。幾つかのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約2週間に渡り連続的に着用でき、また幾つかのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約一ヶ月または約30日間に渡り、連続的に着用することができる。このような連続着用式レンズは、比較的高い酸素透過率を有していて、このようなレンズの長期間の着用中における、着用者の角膜と酸素との接触を可能とする。
【0004】
酸素透過率(Dk)は、コンタクトレンズの設計において、コンタクトレンズ着用者の目の健康を維持する上で、重要なファクタの一つである。1984年にHolden & Mertzによって確立されたように、最低でも87×10-9 (cm ml O2)/(sec ml mmHg)なる酸素透過率が、一夜に渡る浮腫を4%に制限するために、ヒドロゲルコンタクトレンズにとって必要とされる(Holden等, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 1984, 25:1161-1167)。物理的特性、例えば酸素フラックス(j)、酸素透過率(Dk)、および酸素伝達率(Dk/t)が、コンタクトレンズの諸特性を引合いに出す際に使用される。ここで、酸素フラックス(oxygen flux)とは、設定された時間に渡り、コンタクトレンズの指定された領域を透過する酸素の体積として定義することができる。この酸素フラックスの物理的単位は、μlO2(cm2 sec)として記載することができる。酸素透過率は、設定された時間に渡り、かつ所定の差圧の下で、コンタクトレンズ材料を透過する酸素の量として定義することができる。この酸素透過率の物理的単位は、1バラー(barrer)、即ち10-11 (cm3 O2 cm)/(cm3 sec mmHg)として記載することができる。酸素伝達率とは、設定された時間に渡り、かつ所定の差圧の下で、特定の厚みを持つコンタクトレンズを透過する酸素の量として定義することができる。この酸素伝達率の物理的単位は、10-9 (cm ml O2)/(ml sec mmHg)として定義することができる。この酸素伝達率は、特定の厚みを持つ型のレンズに関連する。酸素透過率は、レンズの酸素伝達率から計算することのできる、材料の特定の性質である。
【0005】
酸素伝達率は、一般的に、当業者には公知のポーラログラフィー法および電量法を利用して測定される。酸素透過率は、あるレンズの酸素伝達率(Dk/t)に、測定領域の平均の厚みを乗じることによって計算することができる。しかし、該ポーラログラフィー技術は、高いDkを持つシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、例えば約100バラーを越えるDkを持つシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに対して、正確な測定値を与えることができないものと考えられる。該ポーラログラフィー技術と関連する変動性は、100バラーを越えるDkを持つシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに関して、該ポーラログラフィー技術による測定値が、100バラーを越えるDk値において、平坦化する傾向があるという結果と関連しているものと考えられる。該電量法は、100バラーを越えるDkを持つものと考えられる、レンズのDk値を測定するのに、しばしば使用される。
【0006】
高い含水率を持つ、公知技術のソフト型珪素-含有親水性コンタクトレンズは、低下された、またはより低い酸素透過率を持つ傾向がある。例えば、フォーカスナイト&デイ(Focus Night & Day)(CIBAビジョン社(CIBA Vision Corporation)から入手できる)なる商品名の下で入手できる、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、含水率約24%およびDk値約140バラーを持つ。O2オプチックス(O2 Optix) (CIBAビジョン社から入手できる)なる商品名の下で入手できる、もう一つのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、含水率約33%およびDk値約110バラーを持つ。アキュビューオアシス(Acuvue Oasys) (ジョンソン&ジョンソン(Johnson & Johnson)社から入手できる)なる商品名の下で入手できる、更に別のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、含水率約38%およびDk値約105バラーを持つ。ピュアビジョン(PureVision)(ボーシュ&ローム(Bausch & Lomb)社から入手できる)なる商品名の下で入手できる、更に別のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約36%なる含水率および約100バラーなるDk値を持つ。アクアビューアドバンス(Acuevue Advance) (ジョンソン&ジョンソン社から入手できる)なる商品名の下で入手できる、更に別のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約46-47%なる含水率および約65バラーなるDk値を持つ。対照的に、アキュビュー2(Acuvue2) (ジョンソン&ジョンソン社から入手できる)なる商品名の下で入手できる、非-シリコーン系ヒドロゲルコンタクトレンズは、約58%なる含水率および約25バラーなるDk値を持つ。
【0007】
更に、既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約0.4〜約1.4mPaなる範囲のモジュラスを有している。例えば、上記のフォーカスナイト&デイコンタクトレンズは、約1.4mPaなるモジュラスを有し、上記ピュアビジョンコンタクトレンズは、約1.3mPaなるモジュラスを有し、上記O2オプチックスコンタクトレンズは、約1.0mPaなるモジュラスを有し、上記アドバンスコンタクトレンズは、約0.4mPaなるモジュラスを有し、また上記オアシスコンタクトレンズは、約0.7mPaなるモジュラスを有している。一般的に、既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに関しては、該Dk値が増大すると、該レンズのモジュラスは増加する。
更に、既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、所定の表面湿潤特性を持たない。例えば、該フォーカスナイト&デイコンタクトレンズは、濡れ角約67度を有し、該ピュアビジョンコンタクトレンズは、濡れ角約99度を有し、該O2オプチックスコンタクトレンズは、濡れ角約60度を有し、また該アドバンスコンタクトレンズは、濡れ角約107度を有する。対照的に、非-シリコーン系ヒドロゲルコンタクトレンズは、濡れ角約30度を有する。
【0008】
コンタクトレンズは、着用者にとって快適であり、かつ安全であることが、重要である。例えば、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、毎日の使用、一夜の着用、および/または長期間に渡るまたは連続的な着用という観点から、その着用が快適であり、かつ安全である必要がある。長期間に渡りまたは連続的に着用されるコンタクトレンズにおいて生じる一つの問題は、レンズ着用中の、該レンズの角膜への接着であり、これは着用者に不快感をもたらし、目を刺激し、角膜の着色および/またはその他の目に対する損傷をもたらす恐れがある。高い含水率を持つレンズは、より柔軟であり、しかも着用者にとってより快適であるが、このような公知技術のレンズは、このコンタクトレンズの快適かつ安全な着用をもたらすのに有用な、1またはそれ以上の特性を持たない可能性がある。例えば、既存のコンタクトレンズは、望ましいDk値、所定の表面湿潤性、所定のモジュラス、所定のデザイン、および/または所定の含水率を持たない可能性がある。例えば、高いDk値を持つシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、より低い含水率を持つ。更に、このようなレンズは、より高い含水率を持つレンズに比して、一層剛性であり、またこのようなレンズは、湿潤性が低い。
【0009】
コンタクトレンズの毎日の着用中に見られる間質性酸素欠乏症を減じるためには、少なくとも約45なる酸素伝達率を有するレンズを製造することが望ましい。50を越える酸素伝達率を持つレンズ、例えば幾つかの既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、毎日の着用中に見られる間質性酸素欠乏症を減じる目的で開発されてきた。
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの諸特性の改善を補助するために、幾つかのレンズが製造されており、これらレンズの製造方法は、該レンズの表面をより親水性のものとするために、1またはそれ以上の表面処理または表面変性処理を含む。その他のレンズも作られており、これらは、ポリビニルピロリドンおよび珪素-含有ポリマーの相互貫入網状組織を含む。
増強された可撓性または低い剛性、より良好な湿潤性、および/またはより良好なレンズデザイン性等の、有利な諸特性の組合せを持つ、新規なシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに対する需要が、依然として存在する。
【発明の開示】
【0010】
ここでは、新規なコンタクトレンズを発明した。例えば、親水性の珪素-含有ポリマー成分を含むコンタクトレンズ(例えば、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ)を開発した。本発明のレンズは、以下の諸特徴、即ち自然な湿潤性(例えば、未処理表面の湿潤性)、高いDk値、高い含水率、低いモジュラス、不快感を低減しつつ、該コンタクトレンズの着用を容易にするデザイン等の内の一つ、2つまたはそれ以上と、関連付けられているものと理解することができる。例えば、本発明のレンズは、既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズと比較した場合に、上記諸特性の内の1またはそれ以上を持つ。あるいは、別の言い方をすれば、本発明のレンズは、上記諸特性の内の1またはそれ以上に関して違った値を持つ。本発明のレンズの、これら諸特性は、既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズと比較して、本発明のコンタクトレンズを着用している、該レンズの着用者に対して、不快感の低減をもたらす。
幾つかの態様において、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、より親水性となるように処理されてはいない、1またはそれ以上の表面を有し、湿潤剤を含まず、および/またはタンパク質または脂質の沈着が少なく、または殆どない。
【0011】
幾つかの態様において、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、例えば本明細書に記載したようなものと比較して、比較的高いDk値および比較的高い含水率を持つ。例えば、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約30〜約60質量%なる範囲の平衡含水率、および約200〜約80バラーなる範囲のDk値を持つことができる。一態様において、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約20〜約70質量%なる範囲の平衡含水率、および約220〜約60バラーなる範囲のDk値を持つ。本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの一例は、約30質量%なる平衡含水率、および約200バラーなるDk値を持つ。幾つかの態様において、本発明のレンズは、20質量%を越える平衡含水率および160バラーを越えるDk値を持つ。本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのもう一つの例は、約60質量%なる平衡含水率、および約80バラーなるDk値を持つ。一態様において、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、50質量%を越える含水率および70バラーを越えるDk値を持つ。本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの更に別の例は、約48質量%なる含水率および100バラーを越えるDk値を持つ。従って、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに対して、より高い含水率と、より高いDk値とを持つことができることを理解することができる。
【0012】
本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの幾つかの態様は、ここに記載したような既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズと比較して、比較的高いDk値および比較的低いモジュラスを持つ。例えば、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約100〜約200バラーなる範囲のDk値および約0.4〜約1.4mPaなる範囲のモジュラスを持つ。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの一例は、90バラーを越えるDk値および0.3〜1.5mPaなる範囲のモジュラスを持つ。幾つかの態様において、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約100なるDk値および約0.4mPaなるモジュラスを持つ。他の態様では、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約200なるDk値および約1.4mPaなるモジュラスを持つ。更に別の態様では、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約150なるDk値および約0.8mPaなるモジュラスを持つ。対照的に、既存のアキュビューアドバンス(Acuvue Advance)シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約0.4mPaなるモジュラスおよび約70バラーなるDk値を持つ。既存のフォーカスナイト&デイシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約1.4mPaなるモジュラスおよび約130バラーなるDk値を持つ。従って、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの幾つかの態様は、既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズよりも、比較的高いDk値および比較的高い含水率を持ち、しかも比較的柔軟である。
【0013】
本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、ここに記載したようなシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ等の、既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズよりも大きな湿潤性を持つ表面を含むことができる。当業者には理解されるように、コンタクトレンズ表面の湿潤性は、静止液滴法(sessile drop method)等の方法を用いて、濡れ角を測定することによって決定できる。低い濡れ角は、高い表面の湿潤性に対応する。比較の目的で言えば、ここに記載したような既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約60度〜約110度なる範囲の濡れ角を与える表面を持つ。本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、60度未満の濡れ角を持つ、前方表面および/または後方表面等の表面を含むことができる。幾つかの態様において、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約50度未満の濡れ角を持つ、表面を含む。更なる態様において、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約30度の濡れ角を持つ、表面を有する。本発明のコンタクトレンズの少なくとも1例は、約40度に満たない濡れ角を持つ、表面を有する。より低い濡れ角を持つ、従って高い表面の湿潤性を示す、本発明のコンタクトレンズは、ここに記載したような既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズと比較して、より高いDk値、より高い含水率、および/またはより低いモジュラスを持つ。
【0014】
本発明のレンズは、ここにおいて論じる如く、既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズと比較して、患者の快適性における改善または増強をもたらし得る。例えば、既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを装着している患者の、僅かに約15%のみが、これらレンズを十分な快適性を持って装着している旨報告したが、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを装着している患者の約40%が、これらレンズを十分な快適性を持って装着している旨、報告した。
特定の一態様において、本発明のコンタクトレンズは、約115〜約149バラーなる範囲のDk値、約48質量%の含水率、および約0.84mPaなるモジュラスを有している。例えば、コンタクトレンズは、105バラーを越えるDk値、45質量%を越える含水率および0.8mPaを越えるモジュラスを持つことができる。幾つかの態様において、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約50質量%を越える含水率、約0.3〜約0.5mPaなる範囲のモジュラス、および約70〜約100バラーなる範囲のDk値を有する。例えば、コンタクトレンズは、50質量%を越える含水率、0.2〜0.6mPaなる範囲のモジュラス、および60バラーを越えるDk値を持つことができる。このような態様は、毎日装着するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズとして有用であり得る。付随的な態様において、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも約120バラーなるDk値および少なくとも約48質量%の含水率を持つ。このような態様は、長期間に渡り、または継続的に着用されるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズとして有用であり得る。比較のために、ここで論じたように、上記のアクアビューアドバンスシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約105バラーなるDk値、約46質量%なる含水率および0.7mPaなるモジュラスを持つ。
【0015】
本発明のレンズは親水性であり、またここに記載したような諸特性の、固有の、有利な組合せを有している。該諸特性の組合せは、本発明のレンズを装着するための適当な条件を見積もる上で役立つ。例えば、高い含水率、比較的低いDk値、および低いモジュラス等の、諸特性の幾つかの組合せは、毎日装着されるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、例えば洗浄すること無しに夜通し着用できるが、典型的には日々を基本にして廃棄されるようなレンズにとって望ましく、あるいはこのようなレンズとして許容し得る。高いDk値、高い含水率および低いモジュラス等の、諸特性の他の組合せは、継続的なまたは長期に渡る適用、例えば一晩を越える、例えば少なくとも約5日間、例えば約2週間またはそれ以上、あるいは少なくとも約1ヶ月間に渡る、このようなレンズの使用を、容易にする上で効果的であり得る。本発明のコンタクトレンズは、比較的容易に、かつコスト的に有効に製造することができる。このようなレンズの使用は、軽減された取扱い性およびメンテナンス性を伴う視力補正、コンタクトレンズの継続的なまたは長期に渡る着用性等の利点をもたらし、しかも眼科学的に相溶性であり、かつ着用者に快適性と安全性とを与える。
【0016】
一つの広い局面において、コンタクトレンズは、動物またはヒトの目の角膜上に配置または設置できるような形状とされた、レンズ本体を含む。このレンズ本体は、親水性の珪素-含有ポリマー材料または複数のこのような材料を含む。該レンズ本体は、約70バラーまたは約80バラーまたは約100バラーまたは約105バラーまたは約110バラーまたは約115バラーまたは約120バラーまたは約125バラーまたは約130バラーまたは約150バラーまたは約180バラーまたは約200バラーを越える、またはそれ以上のDk値、即ち酸素透過率を有し、また約15質量%または約30質量%または約35質量%または約40質量%を越える、またはそれ以上の平衡含水率を持つ。本発明のコンタクトレンズは、眼科学的に相溶性であり、また有利にはヒトまたは動物の目の角膜上に、継続的に、例えば1日、または5日間あるいは少なくとも約5日間またはそれ以上に渡り装着するのに適しており、またそのような構造とされており、および/またはそのような装着にとって効果的である。
【0017】
一態様において、本発明のコンタクトレンズの、該レンズ本体、即ち該眼科学的に相溶性のレンズ本体は、その前方表面および/または後方表面等において、表面処理または変性されておらず、例えばこのような処理無しに製造されている。幾つかの公知技術のレンズにおいては、表面の湿潤性および/または該レンズの1またはそれ以上の他の特性を高める目的で、このような表面処理が必要とされていた。本発明のレンズは、有利にはこのような表面処理または変性処理を必要とすることなしに、眼科学的な相溶性を持つ。例えば、本発明のレンズは、コンタクトレンズ金型アセンブリー内で、レンズプリカーサ組成物を重合することにより製造でき、このようにして得たコンタクトレンズは、各個人の目の上に配置する際に、十分な湿潤性を維持するための、重合後の表面変性処理を必要とすることなく、金型からの抜出しおよび包装段階を行うことのできるものである。更に、本発明のレンズの幾つかの態様は、該レンズの所定の湿潤性を得るための、ポリビニルピロリドン(PVP)含有相互貫入網状構造等を得るためのPVP、および/または他の添加剤を必要としない。幾つかの態様において、本発明のレンズは、表面変性または表面処理されておらず、またPVP-含有相互貫入網状構造を含まない。換言すれば、本発明のコンタクトレンズは、コンタクトレンズ成型金型内で、レンズプリカーサ組成物を重合または硬化し、また成型物を抜出し、かつこの重合したレンズを水和させることにより製造できる。該金型内で作られた、この水和されたレンズは、前方表面および/または後方表面を含み、これらの表面は、レンズの着用者に対して、不快感を軽減した状態で、または実質的に不快感を与えること無しに、しかも表面処理を必要とすること無しに、目に装着するのに十分に湿潤性である。従って、本発明の態様は、表面処理されていないシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズにあるものとして理解することができる。
【0018】
一態様において、本発明のコンタクトレンズのレンズ本体は、諸特性のある組合せを含むことができ、該諸特性は、ヒトまたは動物の目の角膜上に、8時間またはそれ以上、例えば約1日または約5日間、あるいは約10日間、あるいは約20日間または約30日間もしくはそれ以上の間、該コンタクトレンズを継続的に着用した後の、角膜染色、例えば表面的なまたは中程度の角膜染色を越える重度の角膜染色を、実質的に回避し、もしくはまさに実質的に防止するのに効果的なまたは適当な、イオノフラックス特性を包含する。
本発明のレンズ本体の酸素透過率は、湿潤状態または完全に水和された状態にある該コンタクトレンズを用いて測定することができる。酸素透過率、即ちDkは、バラー(barrer)単位、即ち10-10 (ml O2 mm)/(cm2 sec. mmHg)または10-10 ml O2 mm cm-2 sec.-1 mmHg-1で表される。好ましくは、このレンズ本体は、少なくとも約80バラーまたは約100バラーまたは約105バラーまたは約110バラーまたは約115バラーまたは約120バラーまたは約125バラーまたは約130バラー、または少なくとも約150バラーまたは約180バラーあるいは更に少なくとも約200バラーまたはそれ以上のDk値を持つ。本発明のレンズ本体のDk値が大きいほど、上記の如く、コンタクトレンズを、長期間に渡り継続的に角膜上に設置した際においても、目の角膜が、実質的に酸素を利用できる点において、著しく有用である。
【0019】
本発明のレンズ本体は、効果的なまたは適当な構造上または機械的な諸特性、例えばモジュラス、引裂き強さ、伸び率および/または同様な特性の1またはそれ以上を有していて、ここに記載するように、拡張されまたは延長された期間に渡る、連続的なコンタクトレンズの装着に耐えることができる。例えば、本発明のレンズ本体は、連続的に装着されるコンタクトレンズとして使用するのに有効なまたはそのために適したモジュラスを持つことができる。
本発明のコンタクトレンズは、親水性珪素-含有ポリマー材料を含む、レンズ本体を含有する。一態様において、該ポリマー材料は、珪素-含有モノマー由来の単位、例えば異なる分子量を持ち、また好ましくは異なる化学構造を持つ、2種の珪素-含有マクロマー由来の単位を含む。このような態様は、継続的に装着されるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、例えば約30日間に渡り継続的に装着できる、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ等にとって特に有用であり得る。もう一つの態様において、本発明のコンタクトレンズは、比較的大きな分子量を持つ、ただ一種の珪素-含有マクロマーのみを含む。この態様、即ち一種の珪素-含有マクロマーを含む態様は、睡眠中にも装着できるが、典型的には日々を基本として廃棄される、毎日装着する型のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズにとって特に有用であり得る。
【0020】
ここに記載した各特徴およびその全ておよびこのような特徴の2またはそれ以上の各組合せおよびその全ては、本発明の範囲内に含まれるが、このような組合せに含まれる諸特徴は、相互に矛盾するものではない。更に、任意の特徴またはその組合せは、本発明の任意の態様から、具体的に排除することも可能である。
本発明の上記したおよびその他の局面並びに利点は、以下の詳細な説明、実施例および添付した特許請求の範囲において明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のコンタクトレンズは、該コンタクトレンズの長期間に及ぶ装着の目的での、該レンズの着用者による、該レンズの使用を容易にする諸特性の、固有の、かつ有利な組合せを持つ。例えば、本発明のレンズは、ヒトが眠っている間にも着用することができる。幾つかの態様において、これらのレンズは、夜通しの着用をも含む、毎日着用する目的での、該レンズの使用を容易にする、諸特性を持つ。他の態様では、これらレンズは、継続的なまたは長期に及ぶ、例えば5日以上(例えば、約30日間)の装着利用における、これらのレンズの使用を容易にする、諸特性を持つ。本発明のコンタクトレンズは、レンズの取扱い性およびメンテナンス性において軽減された視力補正、コンタクトレンズの継続的なまたは長期に渡る着用性等の利点をもたらし、しかも眼科学的に相溶性であり、および/または着用者に快適性と安全性とを与える。
【0022】
一つの広い局面において、本発明は、表面処理されていないレンズ本体を含む、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを提供する。このレンズ本体は、親水性珪素-含有ポリマー材料を含み、また該レンズの着用者による、少なくとも1日に渡る、該コンタクトレンズの眼科的に相溶性の(目に適合した)着用を容易にする上で効果的な、酸素透過率、含水率、表面の湿潤性、モジュラス、およびデザインの内の少なくとも一つを持つ。幾つかの態様において、該レンズ本体は、酸素透過率、含水率、表面の湿潤性、モジュラス、およびデザイン等の上記特徴の2またはそれ以上を持つ。付随的な態様において、該レンズ本体は、上記特徴の内の3またはそれ以上を持つ。ここで使用する用語「眼科的に相溶性」とは、不快感を殆どまたは全く伴わずに、また既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに関連した特長、例えば脂質またはタンパク質の沈着、角膜の染色等を殆どまたは全く発生すること無しに、レンズの着用者が、本発明のレンズを着用することを意味するものと理解できる。幾つかの態様において、該レンズ本体は、上記諸特性の全てを有し、これは毎日装着されるレンズを包含する、少なくとも1日間に渡り着用されるレンズにおいて有用である。更なる態様において、該レンズ本体は、上記諸特性の全てを有し、これは継続的に装着されるコンタクトレンズを包含する、約30日に及び着用されるレンズにおいて有用である。
【0023】
該コンタクトレンズの、本発明の毎日装着されるレンズ等の、幾つかの態様は、親水性珪素-含有マクロマー、例えば一種の親水性珪素-含有マクロマー由来の単位を含む、親水性珪素-含有ポリマー材料を含有する。該コンタクトレンズの、本発明の継続的に装着されるレンズを包含する、他の態様は、各々異なる分子量を持つ、2種の異なる親水性珪素-含有マクロマー由来の単位を含む、親水性の珪素-含有ポリマー材料を含有する。本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに係る態様は、レンズ本体を含み、このレンズ本体は、少なくとも約70バラーなる酸素透過率、少なくとも約30質量%なる含水率、約1.4mPa未満のモジュラス、および約60度未満の、該レンズ本体表面上における接触角を持つ。幾つかの態様において、該レンズ本体は、約110バラーを越える酸素透過率を持つ。幾つかの態様において、該レンズ本体は、約45質量%を越える含水率を持つ。幾つかの態様において、該レンズ本体は、約0.9mPa未満のモジュラスを持つ。例えば、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの一態様は、少なくとも約115バラーなる酸素透過率、約48質量%なる含水率、および約0.84mPaなるモジュラスを持つ、レンズ本体を含む。もう一つの例として、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの一態様は、約70〜約100バラーなる範囲の酸素透過率、少なくとも約50質量%なる含水率、および約0.3〜約0.5mPaなる範囲のモジュラスを持つ、レンズ本体を含む。本発明のレンズに関するこれらのおよびその他の特徴は、以下の説明および以上の概要に含まれている。
【0024】
もう一つの広い局面において、本発明は、動物またはヒトの目の角膜上に配置または設置するように形状付与された、レンズ本体を含有するコンタクトレンズの提供を目的とする。該レンズ本体は、1または複数の親水性珪素-含有ポリマー材料を含有する。該レンズ本体は、約70バラーまたは約75バラーまたは約80バラーまたは約85バラーまたは約90バラーまたは約95バラーまたは約100バラーまたは約105バラーまたは約110バラーまたは約115バラーまたは約120バラーまたは約125バラーまたは約130バラー、または約150バラーまたは約180バラーまたは約200バラーを越えるDk値、および約15%または約30%または約35%または約40質量%を越える平衡含水率を持つ。本発明のコンタクトレンズは、上で定義したように、眼科学的に相溶性であり、また有利にはヒトまたは動物の目の角膜上に、継続的に、例えば約1日間、または約5日間あるいは少なくとも約5日間または約10日間または約20日間または約30日間もしくはそれ以上に渡り装着するのに適しており、またそのような構造とされており、および/またはそのような装着にとって効果的である。
【0025】
ここで使用するように、本発明のコンタクトレンズおよびレンズ本体に適用される如き用語「眼科学的に相溶性」とは、同様に、このようなレンズおよびレンズ本体が、継続的に装着する用途において、以下のような特徴を与えるのに有効であることを意味するものと理解できる:(1) 長期に渡り角膜の健康を維持するために十分な量の酸素を、該レンズを装着した目の角膜に到達させ;(2) 該レンズを装着した目の角膜における、過度の角膜の膨潤または浮腫を引起すことが実質的になく、例えば一夜の睡眠中、目の角膜上に装着された後の、約5%以下または約10%以下の角膜の膨潤を引起すに過ぎず;(3) 該レンズと目との間の、涙液の流動を容易にするのに十分に、該レンズを装着した目の角膜上での、該レンズの移動を可能とし、換言すれば、実質上正常なレンズの運動を阻止するのに十分な力による、該レンズと目との接着を引起すことがなく;(4) 過度のまたは著しい不快感および/または刺激および/または苦痛を及ぼすこと無しに、目に該レンズを装着することを可能とし、例えば実質的な快感を伴っておよび/または実質的に刺激を与えずにおよび/または実質的に苦痛を与えずに、該レンズを装着することを可能とし;(5) 装着中に該レンズの機能を実質上妨害するに足る程の、脂質および/またはタンパク質の沈着を阻害または実質的に防止し、例えば該レンズの着用者が、このような沈着のために、該レンズを取出さざるを得なくする程の、脂質および/またはタンパク質の沈着を阻害または実質的に防止する。有利には、更に眼科学的に相溶性のコンタクトレンズおよびレンズ本体は、該レンズを、目の角膜上に連続的に、例えば一夜に及ぶ睡眠中装着した後の、角膜の染色を阻止し、減じ、またはまさに実質上防止する。
【0026】
角膜染色は、角膜上皮細胞の損傷または破壊に関する一尺度である。該角膜上皮は、厚み約5μmを持ち、また5-7層の細胞層を含む。該上皮は、瞬きの助けによる、細胞の最外層の涙液膜への脱落を伴って、定常的に再生されている。最も内側の細胞層は、下方での新たな細胞の成長によって、前方に押し出され、この層は徐々に変化して、約7日に渡る新たな成長の反復的サイクルに従って、細胞の最外層となる。損傷を受けたまたは死んだ上皮細胞は、ナトリウムフルオレセインに暴露した際に染色される。従って、このような染色の程度を、細胞の損傷/破壊の程度を測定するのに利用できる。ある程度の角膜の染色は、しばしば従来の毎日装着されるおよび継続的に装着されるコンタクトレンズの着用によっても見られ、またコンタクトレンズを装着しない場合にも起り得る。
【0027】
ナトリウムフルオレセインの使用は、角膜上皮の損傷の程度を明らかにするために、臨床的実務において日常的に利用されている。これは、ナトリウムフルオレセインが、損傷を受けた細胞または細胞が除去されている領域におけるプールに、受動的に蓄積される可能性があるからである。フルオレセイン染色を示す角膜の領域の程度、並びに該フルオレセインが、該角膜固有質に侵入しおよび拡散することができるか否かの両者を評価することにより、上皮損傷の臨床的な有意性、および結果として、その管理を決定することができる。該間質への拡散に要する時間が短いほど、より多くの数の層が損傷を受けている。更に、染色のパターンは、同様な角膜染色の病因学、例えば表在性の点状表層角膜炎、上部上皮弓状病変(SEALs)、異物飛跡(tracking)、弓状染色等の決定的な指標でもある。目盛り付のスケール(物差し)が、角膜染色の定量化の目的で開発されており、また周知である。これについては、Terry RL等,「継続的コンタクトレンズ装着に関する基準(Standards for Successful Contact Lens Wear)」Optom. Vis. Sci., 1993, 70(3):234-243を参照のこと。
【0028】
一態様において、本発明のレンズは、夜通しの睡眠中または少なくとも1日間、または少なくとも5日間、または少なくとも10日間、または少なくとも20日間、または少なくとも30日間、該レンズを継続的に装着した後の、角膜の染色を実質的に阻止し、事実上実質的に防止するように構成され、および/またはその目的のための諸特性の組合せを持つ。例えば、本発明のレンズの着用は、有利なことに、代表的なレンズ着用者集団を基準として、約30%、または約20%、または約10%未満の、角膜染色(目盛り付スケールで1.0またはそれ以上)の発生をもたらす可能性がある。
【0029】
直ぐ上の段落において、考察する角膜染色の型は、下角膜脱水染色である。この染色は、特徴的に、該レンズの前方表面上の涙液膜の脱水が、最大となり、また該レンズの装着中に、該コンタクトレンズからの水分を抜取る浸透圧勾配を発生する、該角膜の下方の半分において発生する。該レンズが十分に薄く、またその材料が水分を失い易い傾向を持つ場合、例えば比較的高いイオノフラックスを持つ場合には、該浸透圧勾配は、該コンタクトレンズ背後の涙液膜を脱水し、また角膜上皮を実質上脱水する程に大きくなる可能性がある。この上皮の脱水は、角膜の損傷を引起し、結果としてフルオレセインによる角膜染色をもたらす。この染色は、通常該上皮表面の2-3層に制限され、また角膜の下方部分に拡がっているが、その刺激が十分に大きい場合には、損傷は深く、かつ重篤であって、間質にまで及ぶ、フルオレセインの迅速な拡散をもたらす可能性がある。この染色は、該レンズの挿入後の数時間以内に迅速に起る可能性があるが、通常は4-6時間またはそれ以上かかる。同様に、この上皮の損傷は、一旦該脱水を引起す刺激が取除かれれば、2-3時間以内に迅速に解決することができる。この刺激が大きいほど、該染色はより急速に誘発され、また治癒のために長期間を要するが、典型的にはその解消のために、4-6時間を要することはないであろう。
【0030】
一態様において、本発明のコンタクトレンズのレンズ本体は、本明細書に記載するように、角膜の染色を実質上阻害し、あるいは実際に事実上防止するために、効果的なまたは適当なイオノフラックスを含む諸特性の組合せを持つことができる。有用な一態様において、本発明のレンズ本体は、約5を越えない、より好ましくは約4を越えないまたは約3なる、例えば約2を越えないまたは約1またはそれ以下のイオノフラックスを持つ。イオノフラックスは、10-3mm2/分として表される。
本発明のコンタクトレンズの眼科学的に相溶性のレンズ本体は、該レンズ本体の表面湿潤性および/または1またはそれ以上の他の有利な特性を高めるために、表面処理または変性を受けておらず、例えば該レンズ本体の前方表面および後方表面上等の、表面処理または変性を行うこと無しに製造できる。有利には、このような表面処理または変性は、本発明の眼科学的に相溶性のレンズ本体の前方表面および後方表面の何れについても行われない。このような表面処理または変性を行わないことによって、該レンズの製造工程は、複雑さおよび経費の面でより緩和または軽減され、またより効果的となる。更に、このような表面処理/変性を行わないことによって、本発明のレンズ本体は、有利なことに、より再現性の高いおよび/またはより均質な表面を持つ。更に、レンズの着用者は、該レンズ上の表面処理に露呈されることがなく、この露呈は、本来的にまたはそれ自体、目の刺激等を引起す可能性がある。
【0031】
本発明のレンズ本体の酸素透過率は、湿潤したまたは完全に水和された状態にあるコンタクトレンズについて測定される。該酸素透過率、即ちDkは、10-10 (ml O2 mm)/(cm2 sec. mmHg)またはバラーなる単位で表される。好ましくは、該レンズ本体は、少なくとも約70バラーまたは約75バラーまたは約80バラーまたは約85バラーまたは約90バラーまたは約95バラーまたは約100バラーまたは約105バラーまたは約110バラーまたは約115バラーまたは約120バラーまたは約125バラーまたは約130バラーまたは約150バラーまたは約バラーまたは約180バラーまたは実際上少なくとも約200バラーまたはそれ以上のDkを持つ。本発明の眼科学的に相溶性のレンズ本体の、比較的高いDk値は、コンタクトレンズが、ここに記載されるような長期間に渡り継続的に角膜上に配置される場合においてさえ、目の角膜が実質的に酸素を利用できる点において、著しく有利である。
【0032】
本発明の眼科学的に相溶性のコンタクトレンズおよびレンズ本体を提供する際に有用であり得る、もう一つの機械的特性は、伸び率である。本発明のレンズ本体は、レンズの取り扱いを容易にし、レンズの構造上の保全性、レンズ着用者の快適性、角膜上でのレンズの効果的な移動等の利益を享受するのに十分な伸び率を持つ。不十分な伸び率を持つレンズ本体は、しばしばこれらの領域の1種以上において欠陥を被る。極めて有用な態様において、本発明のレンズ本体は、少なくとも約90%または約100%または約120%の伸び率を持つ。少なくとも約180%または約200%なる伸び率を持つレンズ本体は、極めて有用である。
本発明のレンズ本体の平衡含水率および/または比較的低いイオノフラックスおよび/または比較的高い伸び率と共に、本発明のレンズ本体のDk値は、本発明のコンタクトレンズの眼科学的相溶性および/または本発明のコンタクトレンズの高い安全性およびその着用者の高い快適性の獲得を、効果的により簡単なものとし、このことは、このようなレンズの継続的な着用を、該レンズ着用者にとってより有利なものとする。
【0033】
更に、本発明の眼科学的に相溶性のレンズ本体は、有用なまたは効果的なDk値および平衡含水率、並びに有利なことに比較的低いイオノフラックスを持つことに加えて、このようなレンズ本体は、十分な構造上のまたは機械的な諸特性、例えばレンズ/目の相互作用、例えばSEALs、コンタクトレンズ乳頭状結膜炎(CLPC)等を減じるためのモジュラス、引裂き強さ、および/または1またはそれ以上の同様な機械的特性を有していて、ここに記載するように、該レンズ本体を、延長されたまたは拡張された期間に渡る、継続的なコンタクトレンズの着用に絶え得るものとし、あるいは少なくとも該継続的な着用を容易にする。
【0034】
本発明の眼科学的に相溶性のレンズ本体は、その継続的に着用するコンタクトレンズとして利用するのに十分なモジュラスを持つ。有用な一態様において、該レンズ本体のモジュラスは、約1.5mPa、約1.4mPa、または約1.2mPaまたはそれ以下、好ましくは約1.0mPaまたはそれ以下およびより好ましくは約0.8mPaまたはそれ以下、または約0.5mPaまたはそれ以下、または約0.4mPaまたはそれ以下、または約0.3mPaまたはそれ以下である。例えば、本発明のレンズの一態様は、約0.84mPaなるモジュラスを持つ。本発明のレンズのもう一つの態様は、約0.3mPa〜約0.5mPaなる範囲のモジュラスを持つ。継続的に着用するコンタクトレンズとして使用するのに十分であるが、従来の継続的に着用するレンズに比して低いモジュラス、例えば1.0mPa未満のモジュラスを持つレンズ本体は、例えば継続的に着用するコンタクトレンズを着用する者の快適性にとって有利である。
【0035】
本発明の特に有用な局面において、本発明のコンタクトレンズは、親水性珪素-含有ポリマー材料で構成されるレンズ本体を含む。一態様において、該ポリマー材料は、異なる分子量を持つ、および好ましくは異なる化学的な構造を持つ、少なくとも2種の珪素-含有マクロマー由来の単位を含む。有利には、該マクロマーの一方は、約5,000を越える、または約8,000を越える、もしくは約10,000を越える数平均分子量を持つ。別の態様では、該ポリマー材料は、ただ一種の珪素-含有マクロマー由来の単位を含む。例えば、本発明のレンズの一態様は、少なくとも約10,000なる数平均分子量を持つ珪素-含有マクロマー由来の単位を含む。
該ポリマー材料は、約5,000未満の、例えば約3,000未満または約2,000未満の数平均分子量を持つ珪素-含有マクロマー由来の単位を含むことができる。
2種の珪素-含有マクロマー由来の単位が、該ポリマー材料に含まれる場合、このようなマクロマーは、有利には少なくとも約3000または約5000だけ、より好ましくは少なくとも約10,000だけ異なる数平均分子量を持つ。有用な一態様において、高分子量の珪素-含有マクロマー由来の単位は、低分子量の珪素-含有マクロマー由来の単位に比して、多量の質量基準の量で、該ポリマー材料中に存在する。例えば、本発明のレンズ本体を製造するのに使用する、高分子量マクロマー対低分子量マクロマーの質量比は、約1.5または約2:約5または約7なる範囲にある。
【0036】
本発明を、如何なる特定の作用理論に制限するつもりはないが、本発明のレンズ本体の製造における、分子量の異なる2種の珪素-含有マクロマーの使用は、適当なまたは効果的な高い酸素透過率および適当なまたは効果的な平衡含水率および/または比較的低いイオノフレックスを得る上で有利であり、しかも所望により約30日間に渡り着用することのできる、継続的に着用するコンタクトレンズ、例えば眼科学的に相溶性のコンタクトレンズにおいて有効に利用できる、レンズ本体を与える。分子量の異なる珪素-含有マクロマーの使用は、該レンズ本体を製造するのに使用される他の成分との相溶性をもたらし、また例えば分子レベルで、本発明のレンズ本体に、ある程度の不均質性を与えて、結果として、継続的に着用するコンタクトレンズにおける、該レンズ本体の使用を、極めて有利なものとするのを助ける、物性の望ましい組合せを持つ、レンズ本体の提供を少なくとも促進する。一種の珪素-含有マクロマー由来の単位を含む他の態様では、毎日を基本とする、例えば一晩中装着するような該レンズの使用を助ける、適当なレンズ特性を得ることができる。
【0037】
有用な一態様において、該珪素-含有マクロマーの一種、好ましくは低分子量のマクロマーは、単官能性であり、即ち該珪素-含有ポリマー材料を製造するための重合反応に関与する基を、分子当たり唯一つを含む。本発明を、如何なる特定の作用理論に制限するつもりはないが、この単官能性マクロマーは、該ポリマー材料の、例えば分子レベルにおける、成分の相溶性および/または不均質性を促進しまたは高めるものと、考えられる。即ち、該レンズ本体の該ポリマー材料に関する形態は、十分に不均一または不均質であり、異なる相のドメインが、該ポリマー材料中に存在するものと考えられる。この高められた不均質な形態は、このポリマー材料の眼科学的相溶性を増大し、および/またはそのDk値および平衡含水率の少なくとも一方を増大し、および/またはそのイオノフラックスを減じ、一方でただ一種の珪素-含有マクロマー由来の単位を含む同様なポリマー材料に対して、あるいは両者共に分子当たり少なくとも2個の官能基を含む、2種の珪素-含有マクロマー由来の単位を含む同様なポリマー材料に比して、該ポリマー材料のモジュラスを維持しもしくは実際に低下しさえするものと考えられる。
【0038】
何れにしても、固有のおよび有利な諸特性の組合せを持ち、これら諸特性の組合せのために、本発明のレンズが、眼科学的に相溶性となり、かつ有利にも継続的または長期に渡る装着のために著しく効果的なものとなるような、該コンタクトレンズは、驚くべきことに、ここに記載するように、コンタクトレンズのレンズ本体における、マクロマーおよびモノマーを選択し、また加工することによって得ることができることが分かった。
本発明のコンタクトレンズの組成物には、該レンズが、該諸特性の組合せを有し、および/またはここに記載するような、毎日の着用用途、または継続的もしくは長期に渡る着用用途において機能する限りにおいて、制限はない。
一態様において、本発明によるコンタクトレンズは、以下の式Iによって示される親水性シロキサニルメタクリレート由来の単位を含むポリマーを含有する:






【0039】
【化1】

【0040】
ここで、X1は、以下の式によって示される、重合性の置換基であり:
【0041】
【化2】

【0042】
ここでR1、R2、R3およびR4は、独立に炭素原子数1〜12の炭化水素基およびシロキサニル基、例えばトリメチルシロキシ基から選択される基であり、また構造[Y1]は、2以上のシロキサン単位を含むポリシロキサン主鎖であり、R5は水素原子またはメチル基であり、Z1は-NHCOO-、-NHCONH-、-OCONH-R6-NHCOO-、-NHCONH-R7-NHCONH-および-OCONH-R8-NHCONH-であり、R6、R7およびR8は独立に炭素原子数2〜13の炭化水素基から選択される基であり、mは0〜約10なる範囲の整数であり、nは約3〜約10なる範囲の整数であり、pはmが0である場合には0であり、かつmが1またはそれ以上である場合には1であり、またqは0〜約20なる範囲の整数である。
上記式Iにおいて、該構造単位Y1は、以下の式を持つことができる:
【0043】
【化3】

【0044】
ここで、R9およびR10は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、例えばメチル基、1またはそれ以上のフッ素原子で置換されている炭化水素基、トリメチルシロキシ基、および親水性置換基から選択される基であり、逐次連鎖において相互に異なっていてもよく、またrは約7〜約1000なる範囲の整数である。
本発明に従う、このような親水性シロキサニルメタクリレートの使用は、継続的なレンズ装着中における、高い酸素透過率、低いタンパク質および脂質の沈着性、優れたまたは高いレンズの水に対する湿潤性の保持能力、目の角膜上での許容できるレンズの移動性、および角膜に対する低い接着性を持つコンタクトレンズを与える。
一態様において、少なくとも一つの上記R1、R2、R3およびR4は、以下の式(1a)、(2a)および(3a)で表される基から選択される:
【0045】
【化4】

【0046】
ここで、gは1〜約10なる範囲の整数である。
1またはそれ以上の親水性置換基は、該珪素-含有モノマー中に含まれていてもよく、また例えば、以下の式(3b)および(4b)で表される基等のヒドロキシル基およびオキシアルキレン基から選択される少なくとも一つの置換基と結合している、直鎖または環式炭化水素基であってもよい:
-R21(OH)i (3b)
ここで、R21は炭素原子数約3〜約12の炭化水素基であり、また炭素原子間に挿入された-O-、-CO-、または-COO-基を含むことができる。但し、同一の炭素原子上のヒドロキシル基の数は、1のみに制限され、またiは1よりも大きな整数である。
-R22-(OR23)j-OZ2 (4b)
ここで、R22は炭素原子数約3〜約12の炭化水素基であり、また炭素原子間に挿入された-O-、-CO-、または-COO-基を含むことができ、R23は炭素原子数約2〜約4の炭化水素基であり、jが2以上である場合には、該基の炭素原子の数は相互に異なっていてもよく、jは1〜約200なる範囲の整数であり、Z2は水素原子、炭素原子数約1〜約12の炭化水素基および-OOCR24(ここで、R24は炭素原子数約1〜約12の炭化水素基である)から選択される基である。
【0047】
親水性の基の例は、何ら限定されるものではないが、一価のアルコール残基、例えば-C3H6OH、-C8H16OH、-C3H6OC2H4OH、-C3H6OCH2CH(OH)C3、-C2H4COOC2H4OH、-C2H4COOCH2CH(OH)C2H5等;多価アルコール残基、例えば-C3H6OCH2CH(OH)CH2OH、-C2H4COOCH2CH(OH)CH2OH、-C3H6OCH2C(CH2OH)3等;およびポリオキシアルキレン置換基、例えば-C3H6(OC2H4)4OH、-C3H6(OC2H4)30OH、-C3H6(OC2H4)10OCH3、-C3H6(OC2H4)10、-(OC3H6)10OC4H9等を包含する。これらの中で、特に有用な基は、アルコール残基、例えば-C3H6OH、-C3H6OCH2CH(OH)CH2OHおよび-C3H6OC2H4OH;およびポリオキシアルキレン置換基、例えば-C3H6(OC2H4)kOHおよび、-C3H6(OC2H4)LCH3を包含し、ここでkおよびl各々は、優れた親水性および酸素透過率の観点から、独立に約2〜約40なる範囲、好ましくは約3〜約20なる範囲の整数である。
【0048】
1またはそれ以上のフッ素原子含有置換基は、該ポリマー材料に対して、耐染色性を与えるが、過度の置換は親水性を損なう可能性がある。フッ素原子と結合した、炭素原子数1〜約12の炭化水素基が、極めて有用である。このような有用なフッ素原子含有置換基は、何ら限定されるものではないが、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1,2,2-テトラヒドロフルオロオクチル基、1,1,2,2-テトラヒドロパーフルオロデシル基等を包含する。これらの中で、3,3,3-トリフルオロプロピル基は、生成するレンズ本体において達成される、親水性および酸素透過率の観点から、極めて有用である。
該親水性の置換基およびフッ素原子含有置換基以外にも、珪素原子と結合した置換基は、何ら限定されるものではないが、炭素原子数1〜約12の炭化水素基、トリメチルシロキシ基等を含むことができ、これらは相互に同一でも異なっていてもよい。極めて有用な基は、1〜約3個の炭素原子を持つアルキル基であり、またメチル基は、特に有用である。
【0049】
上記一般式Iにおいて、mは、有利には、0〜約4なる範囲の整数である。mが約5またはそれ以上である場合には、このモノマーは、著しく疎水性となってしまい、他のモノマーとの相溶性を確保できず、重合中に濁ってしまい、また該モノマーの均一混合を困難にする。上記式(3a)において、gが約10を越える場合、該モノマーは、他のモノマーとの低い相溶性を持つ可能性がある。
上記親水性シロキサニルメタクリレートは、2-イソシアナトエチルメタクリレートとシロキサニルアルキルアルコールとを反応させることによって合成することができる。
【0050】
本発明のコンタクトレンズは、約25-60質量%なる範囲の平衡含水率を持ち、親水性珪素-含有ポリマー材料を含み、かつ約80または約90または約100または約110または約120以下の、Dkで表される酸素透過率を持つことができる。これらのレンズは、以下の諸特性、即ちレンズ内部部分へのタンパク質および脂質の低い吸着性、レンズ手入れの容易性、許容できる目の上におけるレンズの移動性、レンズ形状における許容できる安定性、融通性および装着の快適性の内の、1またはそれ以上、例えば少なくとも2または3またはそれ以上、および有利にはその全てを持つことができ、従って継続的な着用用途における使用が可能となる。極めて有用な一態様において、本発明のコンタクトレンズは、少なくとも5日間、または少なくとも10日間、または少なくとも20日間、または少なくとも30日間に渡る継続的な着用を、有効なものとするのに十分な程度に、眼科学的に相溶性である。
【0051】
潜在的に該レンズを装着している目の角膜に対して、該レンズを接着させる恐れのある、レンズへの脂質の容易な吸着のために、5質量%未満または15質量%未満の含水率は、しばしば望ましいものではない。60%を越える含水率は、しばしば望ましいものとは言えず、低強度、レンズの脱水性、取扱い中の貧弱な引掻き抵抗、破壊容易性および高いタンパク質の吸着性を持つレンズを与える。約80未満なるDk、即ち酸素透過率を持つレンズは、継続的に着用されるレンズとして、望ましいものではない。約0.2×107 dyn/cm2 (MPa)未満の引張弾性率を持つレンズは、レンズ形状における安定性が比較的低く、またレンズの取扱いが困難であることから、しばしば望ましいものとはいえない。約1.5×107 dyn/cm2 (Mpa)または約2×107 dyn/cm2 (Mpa)を越える引張弾性率を持つレンズは、例えば角膜上でのレンズの移動性における大幅な低下および該角膜への高い接着性、レンズの可撓性に係る問題、レンズの着用中の快適性の問題および同様な関連事項のために、望ましいものとはいえない。
【0052】
本発明のコンタクトレンズにとって有用な他の親水性珪素-含有モノマーとしては、以下の式IaおよびIbで表される構造を持つものであるが、その理由は、このようなモノマー由来の単位を、例えば他の珪素-含有モノマー由来の単位と共に含有するポリマー材料から製造したレンズは、タンパク質および脂質の低い沈着性と共に、含水率、酸素透過率およびモジュラスを包含するが、これらに限定されない諸特性の十分に釣合いの取れた組合せをもたらし、また有利には眼科学的に相溶性である:
【0053】
【化5】

【0054】
ここで、hは、約8〜約70なる範囲の整数であり、R11は非-重合性または非-官能性の基、例えば炭素原子数約1〜約6の炭化水素基である。極めて好ましい一態様において、R11は、-C4H9である。一態様において、式(Ib)によって同定される化合物は、例えば約1,000〜約3,000または約5,000なる範囲の分子量を持つ、マクロマーであると考えることができる。該整数hは、所定の分子量を持つマクロマーを与えるように選択される。このようなマクロマーは、本明細書の至る所に記載されているように、高い分子量を持つ珪素-含有マクロマーとの組合せとして、特に有用である。
【0055】
例えば、また何ら限定されるものではないが、例えば「r」の値を適当に選択することによって、一般式Iの化合物は、少なくとも約5,000または約8,000または約10,000〜約25,000またはそれ以上の数平均分子量を持つマクロマーであり得る。このような高分子量のマクロマーは、例えば上記式Ibで示されるような低分子量マクロマーとの組合せとして使用して、本明細書の至る所に記載されているように、継続的な着用用途において有効なものとするのに十分な程度に眼科学的に相溶性である、コンタクトレンズ用のレンズ本体を得ることができる。一態様において、コンタクトレンズ本体を製造するための、このような高分子量および低分子量の珪素-含有マクロマーの組合せによる使用は、該高分子量マクロマーまたは低分子量マクロマーの何れかを使用することなく製造した、実質的に同等なコンタクトレンズ本体に比して、改善された眼科学的相溶性および/または改善されたこのような継続的な着用用途における有用性をもたらす。
【0056】
1またはそれ以上の、ここに記載した親水性珪素-含有モノマーおよび/またはマクロマー由来の単位を含む任意のポリマーを、本発明のコンタクトレンズにおいて使用することができる。例えば、該ポリマーは、以下に列挙するような共重合性の化合物との、コポリマーを含むことができる:アクリル酸系モノマー、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレートおよびアクリル酸;メタクリル酸系モノマー、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートおよびメタクリル酸;シロキサンモノマー、例えばトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピルメタクリレート、ペンタメチルジシロキサンプロピルメタクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルオキシエチルメタクリレート、およびトリス(ポリジメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート;フルオロシロキサンモノマー、例えばトリ(ジメチルトリフルオロプロピルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート;フルオロアルキルモノマー、例えば2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメタクリレートおよびヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート;ヒドロキシル基を含むフルオロアルキルおよびフルオロアルキルエーテルモノマー、例えば1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート;親水性モノマー、例えばN-ビニルピロリドン、N,N'-ジメチルアクリルアミドおよびN-ビニル-N-メチルアセタミド;架橋性モノマー、例えばエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートおよびテトラメチルジシロキサンビス(プロピルメタクリレート)。
【0057】
これらの中で、シロキサンメタクリレート、フルオロアルキルシロキサンメタクリレート、フルオロアルキルメタクリレート、ヒドロキシル基を含むフルオロアルキルエーテルメタクリレート、親水性モノマー、分子内に2またはそれ以上の不飽和基を含む架橋性モノマー、および分子末端部分に重合性の不飽和基を含むシロキサンマクロマーとのコポリマーが、十分に釣合いの取れた物性、例えば酸素透過率、耐汚染物沈着性および機械的強度を持つことから、好ましい。本発明における好ましい親水性モノマーは、N-ビニル基を含むアミドモノマーであり、また特にN-ビニルピロリドンまたはN-ビニル-N-メチルアセタミドは、優れた表面の湿潤性を持つコンタクトレンズを与えることができる。
このようなコンタクトレンズの例は、以下のものに制限されないが、約30〜約70%または約80質量%の親水性珪素-含有モノマーまたはマクロマー、約5〜約50質量%のN-ビニルピロリドン、0〜約25質量%のN-ビニル-N-メチルアセタミド、0〜約15質量%の2-ヒドロキシブチルメタクリレート、0〜約10質量%のイソボルニルメタクリレート、0〜約15質量%のメチルメタクリレート、および約0.005〜約5質量%の架橋性化合物から誘導されるポリマー材料を含む。
【0058】
本発明のコンタクトレンズは、従来のレンズの製造方法によって製造することができる。このような方法は、限定されるものではないが、例えば研磨を伴う、ポリマーブロックの旋盤-切削による方法、重合を伴う、モノマー(およびマクロマー)組成物の、対応するレンズ形状を持つ金型内での流込み成型法、および重合金型を用いた、流込み成型法によるレンズ片面のみの成型と、これに続く旋盤-切削および研磨法による他面の完成による方法等を包含する。
以下の一般式IIによって示される親水性のポリシロキサンモノマー由来の単位を含むポリマー材料は、本発明のコンタクトレンズに対して利用することができる:
【0059】
【化6】

【0060】
ここで、R12は水素原子またはメチル基であり;R13、R14、R15およびR16各々は、夫々独立に、1〜約12個の炭素原子を持つ炭化水素基およびトリメチルシロキシ基から選択され;Yは、以下に示す構造単位(I')および(II')の組合せから選択され、該構造単位(I')対該構造単位(II')の比は約1:10〜約10:1なる範囲にあり、かつ該構造単位(I')および(II')の総数は、約7〜約200または約1000なる範囲にあり;aおよびc各々は独立に、1〜約20なる範囲の整数であり、dは2〜約30なる範囲の整数であり;bは0〜約20なる範囲の整数であり;Xは-NHCOO-基または-OOCNH-R16-NHCOO-基であり、ここでR16は約4〜約13個の炭素原子を持つ炭化水素基であり;











【0061】
【化7】

【0062】
ここで、R17およびR18各々は、夫々独立に、1〜約12個の炭素原子を持つ炭化水素基または1〜約12個の炭素原子を持つフッ素化された炭化水素基であるが、R17およびR18の少なくとも一つのがフッ素化された炭化水素基であることを条件とし;またR19およびR20各々は、夫々独立に炭化水素基または酸素-含有基であるが、R19およびR20の少なくとも一つのが酸素-含有基であることを条件とする。R19および/またはR20として使用するのに極めて有用な酸素-含有基は、以下に例示するものであるが、これらに限定されない:
-C3H6(OC2H4)eOH および -C3H6(OC2H4)fOCH3
ここで、eおよびfは、約2〜約40なる範囲、好ましくは約2〜約20なる範囲の整数である。
【0063】
該式IIのモノマーは、マクロマー、例えば二官能性のマクロマーであると考えることができる。例えば、式IIのマクロマーの分子量は、該マクロマー中の、構造単位(I')および(II')の数を調節することによって制御することができる。有用な一態様において、該式IIのマクロマーは、比較的高い分子量、例えば少なくとも約5,000、および好ましくは約10,000〜約25,000なる範囲、またはそれ以上の分子量(数平均分子量)を持つ。該式IIのマクロマーは、本発明のコンタクトレンズにおいて、単独で、即ち唯一の珪素-含有モノマーとして使用することができる。
有利には、該高分子量マクロマーは、本明細書の随所において記載したように、低分子量マクロマーとの組合せで使用して、本発明のレンズまたはレンズ本体に含められるポリマー材料を形成する。
【0064】
この態様において、該モノマーまたはマクロマーから誘導される単位は、該ポリマー材料の、約30または約40質量%〜約70または約80質量%を構成することができる。
高分子量および低分子量珪素-含有マクロマー両者を使用する場合においては、高分子量マクロマーは、該ポリマー材料の少なくとも約20質量%または約30質量%または約40質量%を構成する。有用な一態様において、該高分子量マクロマーおよび該低分子量マクロマーの組合せを由来とする単位は、該ポリマー材料の、少なくとも約30質量%または約40質量%または約50質量%である。
上記式IIで表される該モノマーまたはマクロマーは、1またはそれ以上の他のモノマーまたはマクロマー、例えば本明細書のいたるところに記載したようなものと共重合させることが可能である。
【0065】
主成分または第一成分として、上記のポリシロキサンモノマーまたは複数のモノマー(マクロマーまたは複数のマクロマー)を含むコンタクトレンズは、従来のレンズの製造方法、例えばモノマー組成物を対応するレンズの形状を持つ重合金型内に注入し、次いで重合させる、流込み成型法によって製造できる。該金型表面に極性基を持つ材料で作られた金型、例えばエチレン-ビニルアルコール(EVOH)コポリマー、ポリアミド、およびポリエチレンテレフタレート製の金型を用いて製造したレンズが好ましい。このような金型は、該レンズ本体表面に、厚い安定な親水性の層を形成するのを促進する上で効果的であるものと考えられ、結果として該レンズを継続的にまたは長期に渡り装着した際に、その表面特性を全くまたは殆ど変更せず、しかも実質的に安定なレンズ性能、例えば優れた水に対する湿潤性および低いタンパク質および脂質の沈着性をも併せ持つ。有利には、EVOH金型を含む、このような金型内で製造されるレンズは、幾つかの既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズと関連する、表面処理または表面変性を必要とせずに、所定の表面湿潤性を持つ。
【0066】
本明細において、該珪素-含有モノマーまたはマクロマー由来の上記式[I]および[II]で示される構造単位は、ブロック型の結合として表されるが、本発明はランダム結合型のものをも含む。
重合の観点から、重合性の不飽和基は、シロキサン鎖の端部に結合しており、また該不飽和基の構造は、アクリレートまたはメタクリレート基であることが好ましい。Si原子に対する結合基としては、ウレタンまたはウレア結合を含有する炭化水素基が好ましく、またこれらはオキシエチレン基を介してSi原子と結合することができる。ウレタンまたはウレア結合は、著しく極性の高いものであり、また該ポリマーの親水性および強度を高める。2種のこのような基を持つ構造は、ジイソシアネート結合と、炭素原子数約2〜約13の、ヒドロキシル-含有またはアミン-含有分子との間の反応によって形成することができ、また直鎖、環式または芳香族型であってもよい。
【0067】
親水性珪素-含有モノマー(マクロマー)に関する様々な合成法がある。このような方法の多くは、当分野、例えばシリコーンポリマー化学の分野において公知であり、また周知である試薬、反応、合成戦略および技術を利用している。
有用な合成方法の一例は、ヒドロシラン基(Si-H)を含む環式シロキサン、炭化水素基を持つ環式シロキサン、および両末端部にヒドロキシアルキル基を持つジシロキサンを含む混合物を、幾つかの場合においては、フッ素で置換された炭化水素基を持つ環式シロキサンと共に、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸および酸性クレー等の酸性触媒を用いて、開環重合することによって、両末端にヒドロキシル基を持つ、ヒドロシリル基-含有ポリシロキサン化合物を得る工程を含む。この場合において、様々な重合度およびフッ素含有置換基対ヒドロシリル基の導入比を持つ、シロキサン化合物は、各環式シロキサン対ジシロキサン化合物の供給比を変えることにより、得ることができる。
【0068】
次に、イソシアネートで置換されたアクリレートまたはイソシアネートで置換されたメタクリレートを、該ポリシロキサンの両端におけるヒドロキシル基と反応させて、両末端部に重合性の不飽和基を持つ、ウレタン-含有フッ素化シロキサン化合物を得る。
現時点において有用な単官能性マクロマーは、公知のおよび周知の化学的合成技術を利用して製造することができる。例えば、単官能性のヒドロキシルポリシロキサン、例えば市販品として入手できる単官能性のヒドロキシルポリシロキサンを、触媒、例えば錫-含有触媒の存在下にて、単一末端の、アクリレートまたはメタクリレートポリシロキサンマクロマーを得るのに有効な条件下で、イソシアネート-置換アクリレートまたはイソシアネート-置換メタクリレートと反応させることが可能である。
有用なイソシアネート-置換メタクリレートは、以下に列挙するモノマーを含むが、これらに限定されない:メタクリルオキシエチルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート等、およびこれらの混合物。ヒドロキシル基-含有アクリレートまたはメタクリレート、例えばヒドロキシエチルメタクリレートおよびヒドロキシブチルアクリレートと、様々なジイソシアネート化合物との反応によって得られた、アクリレートまたはメタクリレート基を持つイソシアネート化合物を、使用することも可能である。
【0069】
親水性のポリシロキサンモノマーおよび/またはマクロマーは、不飽和炭化水素基含有親水性化合物を、塩化白金酸等の遷移金属触媒を用いて、所謂ヒドロシリル化反応を利用して、該ヒドロシランに付加することによって得ることができる。このヒドロシリル化反応において、活性水素化合物、例えばヒドロキシル基含有化合物およびカルボン酸等が存在する場合には、副反応として、脱水反応が起ることが知られている。従って、これらの活性水素原子が、導入すべき親水性化合物中に存在する場合には、予め該活性水素原子を保護しておくか、あるいは緩衝剤を添加することによって、該副反応を抑制すべきである。これについては、例えば米国特許第3,907,851号を参照することができ、その開示事項全体を、参考として、ここに組入れる。
もう一つの合成経路は、以下の通りである:両末端部にヒドロキシル基を持つヒドロキシル基-含有ポリシロキサン化合物を合成した後、親水性の基または部分を、前もってヒドロシリル化によって導入し、次いで重合性の基を、イソシアネート-置換メタクリレート等との反応によって、該シロキサンの両末端部に導入する。
【0070】
この場合、該イソシアネートと反応性の、活性水素原子が、該親水性化合物中に存在する場合には、例えば保護基の導入等によって、該イソシアネートとの副反応を阻止すべきである。あるいは、例えば、環式シロキサンの代わりに、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン化合物等のシリケートエステル誘導体を、出発原料物質として使用することができる。2またはそれ以上の親水性ポリシロキサンモノマーを含む、このようにして得た混合物を使用することも可能である。
1またはそれ以上の、ここに記載された親水性珪素-含有モノマーおよび/またはマクロマーを含む任意のポリマーを、本発明のコンタクトレンズにおいて使用できる。
【0071】
少なくとも1種の親水性モノマーを、該親水性珪素-含有モノマーまたはマクロマーに加えて、コモノマー成分として使用することができる。好ましくは、アミドモノマー、例えばN-ビニル基を含むアミドモノマーは、優れた透明性、耐染色性および表面の湿潤性を得る上で有用である。本発明を、如何なる特定の作用理論に限定することも無しに、分子レベルで相分離した構造が、例えば2またはそれ以上のこれらモノマー間の、共重合性、分子量、極性等における差異のために、本発明において開示した該親水性ポリシロキサンモノマー(マクロマー)または複数のかかるモノマー(複数のマクロマー)との共重合において生成し得るものと考えられ、これは安定な耐染色性、高い親水性および高い酸素透過率、および好ましくは高い眼科学的相溶性の度合いの達成をもたらす。
N-ビニル基を含むアミドモノマーは、何ら限定されるものではないが、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセタミド、N-ビニルイソプロピルアミド、N-ビニル-N-メチルアセタミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等およびこれらの混合物から選択することができる。N-ビニル-N-メチルアセタミドおよびN-ビニルピロリドンが、極めて有用である。
【0072】
本発明による有用なポリマー材料は、該親水性ポリシロキサンモノマーおよび該N-ビニル基を含むアミドモノマー以外のモノマーの付加により得られる、コポリマーを包含する。本発明においては、モノマーが共重合性である限り、任意のモノマーを使用することができ、中でも親水性モノマーが有用である。有用な親水性モノマーは、該親水性ポリシロキサンモノマーおよび/またはマクロマーとの良好な相溶性を有し、また更に該ポリマー材料の表面湿潤性を改善し、かつ含水率を改善することができる。有用な親水性モノマーは、例えば、また何ら限定されること無しに、機械的な特性、例えば強度、伸び率、引裂き強さ等の改善を可能とする、1またはそれ以上のヒドロキシル基を含むモノマー、例えば2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、1-ヒドロキシメチルプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレートおよびグリセロールメタクリレート;フッ素置換基を含むモノマー、例えば3-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート;ここに列挙したメタクリレートに相当するアクリレートを包含する。2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレートおよびこれらの混合物が、極めて有用である。
【0073】
他の有用な親水性モノマーは、例えば、また何ら限定されるものではないが、カルボキシル基を含むモノマー、例えばメタクリル酸、アクリル酸およびイタコン酸;アルキル置換アミノ基を含むモノマー、例えばジメチルアミノエチルメタクリレートおよびジエチルアミノエチルメタクリレート;アクリルアミドまたはメタクリルアミドモノマー、例えばN,N'-ジメチルアクリルアミド、N,N'-ジエチルアクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミドおよびジアセトンアクリルアミド;オキシアルキレン基を含むモノマー、例えばメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートおよびポリプロピレングリコールモノメタクリレート等およびこれらの混合物を包含する。
シロキサニルアクリレートは、例えば酸素透過率を調節するために有用なコモノマーである。例えば、このようなモノマーは、何ら限定されるものではないが、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピルメタクリレート、ペンタメチルジシロキサニルメタクリレート等およびこれらの混合物を包含する。メタクリレート基で置換された重合性ポリジメチルシロキサン等およびこれらの混合物も、同様な目的で使用することができる。
【0074】
使用できる他のモノマーは、何ら限定されるものではないが、フッ素化されたモノマー、例えばフルオロアルキルアクリレートおよびフルオロアルキルメタクリレート、例えばトリフルオロエチルアクリレート、テトラフルオロエチルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、ペンタフルオロプロピルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、これらアクリレートに対応するメタクリレート等およびこれらの混合物を包含する。
更に、必要ならばおよび/または所望ならば、アルキルアクリレートモノマーおよびアルキルメタクリレートモノマーを使用することもできる。これらは、例えばまた何ら限定されるものではないが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、ステアリルアクリレート、これらアクリレートに対応するメタクリレート等およびこれらの混合物を包含する。更に、高いガラス転移点(Tg)を持つモノマー、例えばシクロヘキシルメタクリレート、t-ブチルメタクリレートおよびイソボルニルメタクリレート等およびこれらの混合物を使用して、機械的特性を高めることができる。
【0075】
更に、親水性ポリシロキサンモノマー以外の、架橋性モノマーを使用して、機械的な諸特性および安定性を改善し、かつ含水率を調節することができる。例えば、何ら限定されるものではないが、これらは、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ビニルメタクリレート;これらのメタクリレートに対応するアクリレート;1またはそれ以上のアルキル基を含むモノマー、何ら限定されるものではないが、例えばトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートおよびアリルメタクリレート;シロキサン誘導体、例えば1,3-ビス(3-メタクリルオキシプロピル)テトラメチルジシロキサン等およびこれらの混合物を包含する。
ウレタン基と結合した架橋性モノマーは、機械的諸特性の改善と共に、相溶性および親水性を与えるために、特に有用である。以下の式(10b)で示される、二官能性の架橋性モノマーが有用である:


【0076】
【化8】

【0077】
ここで、R24およびR26は、夫々独立に水素原子およびメチル基から選択され;Z3はウレタン結合基であり;R25は2〜約10個の炭素原子を持つ炭化水素基および-(C2H4O)u-C2H4- (ここで、uは、2〜約40なる範囲の整数である)によって表される、ポリオキシエチレン基から選択され;tは0〜約10なる範囲の整数であり; sはtが0である場合には0であり、またtが1またはそれ以上である場合には、1である。
本発明を、如何なる特定の作用理論に限定する意図も無いが、上記の二官能性化合物は、良好な相溶性および共重合性を有し、また分子間相互作用によって、強度の改善に寄与するが、これは該親水性ポリシロキサンモノマーが、同様な主鎖、例えばウレタン基-含有主鎖を持つからである。ウレタン結合を持つ架橋性モノマーの例は、何ら限定されるものではないが、2-メタクリロイルカルバモイルオキシエチルメタクリレート、2-2(2-メタクリルオキシカルバモイルオキシ)エチルアクリレート、2-(2-メタクリルオキシエチルカルバモイルオキシ)プロピルメタクリレート、2-メタクリルオキシエチルカルバモイルオキシテトラエチレングリコールメタクリレート等およびこれらの混合物を包含する。
特に有用な架橋性のモノマーは、以下の式(11b)で表されるものである:
【0078】
【化9】

【0079】
これらの架橋性のモノマーは、単独でまたは組合せとして使用することができる。
親水性ポリマー材料の諸特性、例えば光学的特性、酸素透過率、機械的強度、変形からの回復性、コンタクトレンズの装着中における耐染色性、涙液中での寸法安定性および耐久性の釣り合いを改善するために、これら共重合性モノマーを含む混合モノマーを使用することができる。
このようなコンタクトレンズの例は、何ら限定されるものではないが、約30〜約70または約80質量%の親水性珪素-含有モノマーまたはマクロマー、約5〜約50質量%のN-ビニルピロリドン、0または約0.1〜約25質量%のN-ビニルN-メチルアセタミド、0または約0.1〜約15質量%の2-ヒドロキシブチルメタクリレート、0または約0.1〜約15質量%のメチルメタクリレート、および約0.005〜約5質量%の架橋剤化合物から誘導されるポリマー材料を含む。必要ならば、重合前またはその後に、更に様々な添加物を加えることもできる。添加物の例は、何ら限定されるものではないが、様々な着色特性を持つ染料または顔料、UV吸収剤等およびこれらの混合物を包含する。更に、レンズを金型を用いて製造する場合には、離型剤、例えば界面活性剤等およびその混合物を添加して、該金型からの該レンズの分離性を改善することができる。
【0080】
本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの一態様は、米国で採用された名称(United States Adopted Name: USAN)であるコンフィルコン(Comfilcon) Aを持つ材料を含む。この本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、公知のレンズ製造法によって作ることができる。これらの方法は、例えばポリマーブロックの旋盤-切削およびその後の研磨による方法、重合を伴う、モノマー(およびマクロマー)組成物の、対応するレンズ形状を持つ金型内での流込み成型法、および重合金型を用いた、流込み成型法によるレンズ片面のみの成型と、これに続く旋盤-切削および研磨法による他面の完成による方法等を包含する。
【0081】
本発明のコンタクトレンズで使用するポリマー材料は、成型法によって、眼科学的レンズに形成され、該方法は、例えば1またはそれ以上の親水性ポリシロキサンモノマーおよびN-ビニル基を含むアミドモノマーを含有するモノマー混合物を、金型内に充填し、次いで公知の方法によりラジカル重合するか、あるいはスピンキャスティング成型法によって、モノマー混合物を回転可能な半球型の金型に供給し、次いで重合することを含む。これらの場合において、金型に溶媒と共に添加される、モノマー混合物溶液の重合は、重合度またはレンズの膨潤比を調節するのに利用することができる。溶媒を含む場合、該モノマーを、効果的に溶解する溶媒を、有利に使用することができる。該溶媒の例は、何ら限定されるものではないが、アルコール、例えばエタノールおよびイソプロパノール;エーテル、例えばジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキサンおよびテトラヒドロフラン;ケトン、例えばメチルエチルケトン;エステル、例えば酢酸エチル等およびこれらの混合物を包含する。
【0082】
任意の成型材料は、これらがモノマー混合物に対して実質的に不溶性であり、また重合後のレンズが分離可能である限り、金型重合または流延重合で利用できる。例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレン等のポリオレフィン樹脂を使用することができ、また表面に極性基を持つ材料が好ましい。ここで使用する「極性基」なる用語は、水との強いアフィニティーを持つ原子団を意味し、またヒドロキシル基、ニトリル基、カルボキシル基、ポリオキシエチレン基、アミド基、ウレタン基等を包含する。極めて重要な成型材料は、重合用モノマー組成物に対して不溶性であり、また約90度以上の、好ましくは約65度〜約80度なる範囲の、少なくとも一つのレンズ表面を形成するための部分における、静止液滴法により測定した水に対する接触角を持つ。80度未満の表面接触角を持つ成型材料を用いて製造したコンタクトレンズは、特に優れた水に対する湿潤性および脂質沈着における安定な性能等を示す。65度未満の表面接触角を持つ成型材料は、重合後の該金型からの分離が困難となり、結果としてレンズの端部部分における微細な表面損傷または破壊をもたらすために、有利なものではない。モノマー組成物に対して溶解性の成型材料も、生成するレンズの分離の困難さ、並びに粗いレンズ表面の生成および低い透明性のために、使用することは困難である。
【0083】
より好ましくは、成型材料は、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートおよびエチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH)等から選択される樹脂である。例えば、成型の容易性、寸法的に安定な成型体を与え、また該成型されたレンズに、安定な水に対する湿潤性を与えるという観点から、エチレン-ビニルアルコールコポリマーが、特に有用である。使用すべきエチレン-ビニルアルコールコポリマー樹脂製品の例は、日本合成化学工業社(Japan Synthetic Chem. Ind. Co., Ltd.)から「ソアーライト(Soarlite)」として、あるいはクラレ(Kuraray Co., Ltd.)から「エバル(EVAL)」として入手できる。約25-50モル%なる範囲のエチレン共重合比を持つ様々なグレードのEVOHを、本発明において使用することができる。
【0084】
重合開始に関連して、光重合法を利用して、モノマー混合物における光重合開始剤の存在下で、UVまたは可視光の照射によって重合を開始することができ、あるいはアゾ化合物または有機パーオキシドを使用する、ラジカル重合法を利用して、熱的に重合することができる。光重合開始剤の例は、何ら限定されるものではないが、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α,α'-ジエトキシアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等およびこれらの混合物を包含する。有機パーオキシドの例は、何ら限定されるものではないが、ベンゾインパーオキシド、t-ブチルパーオキシド等およびこれらの混合物を包含する。アゾ化合物の例は、何ら限定されるものではないが、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等およびこれらの混合物を包含する。これらの中では、短いサイクル時間にて、安定な重合をもたらすことから、光重合法が極めて有用である。
【0085】
これら成型したレンズの表面は、所望ならば、プラズマ処理、オゾン処理、コロナ放電処理、グラフト重合処理等によって、変性することができる。しかし、好ましい一態様において、本発明のコンタクトレンズは、如何なる表面処理または変性をも必要とすること無しに、著しく有利な諸特性の組合せを持つ。
実施例および比較例におけるレンズ特性の評価方法は、以下の通りである:
含水率
ソフトコンタクトレンズを、23℃にて16時間を越える期間に渡り、リン酸緩衝塩水(PBS)中に浸漬した。該レンズを取り出し、かつ素早く表面の水分を拭い取った後に、該レンズを正確に計量した。次いで、このレンズを、真空乾燥機中で、80℃にて、一定質量となるまで乾燥させた。質量変化から、含水率を以下のようにして算出した:
含水率=(質量差/乾燥前質量)×100(%)
【0086】
酸素透過率(Dk値)
Dk値は、例えばモコンオックス-トランシステム(Mocon Ox-Tran System)なるモデル名の下に市販品として入手できるテスト装置を用いた、所謂モコン法(Mocon Method)によって測定した。この方法は、Tuomela等の米国特許第5,817,924号に記載されている。その開示事項全体を、参考としてここに組入れる。
該Dk値は、バラー(barrer)、即ち10-10 (ml O2 mm)/(cm2 sec. mmHg)単位で表される。
引張弾性率
幅約3mmのテスト片を、レンズの中心部分から切り出し、かつ引張弾性率(単位:MPaまたは107 dyn/cm2)は、オートグラフ(Autograph)(島津製作所(Shimadzu Corp.)製のModel AGS-50B)を使用し、25℃の生理塩水溶液中で、100mm/分なる速度にて実施した、引張テストにより得た、応力-歪曲線の初期勾配から決定した。
【0087】
イオノフレックス
コンタクトレンズまたはレンズ本体のイオノフラックスは、Nicolson等の米国特許第5,849,811号に記載されている、所謂「イオノフラックス技術(Ionoflux Technique)」と実質上同様な技術を用いて、測定される。該米国特許の開示事項全体を、参考としてここに組入れる。
伸び率
コンタクトレンズまたはレンズ本体の伸び率は、完全に水和された状態において測定する。この測定は、実質的に公知の、標準的な方法で行われ、またインストロンマシーン(Instron Machine)を使用して、検体を引張る工程を含む。
他の機械的特性
引張強さ、引裂き強さ等の他の機械的特性は、周知の、かつ標準化されたテスト技術を利用して測定した。
【実施例】
【0088】
以下に示す非-限定的な実施例は、本発明の様々な局面および特徴を例示するものである。
合成例1:ヒドロシラン基を持つポリシロキサンジオール(A1)の合成
150gのオクタメチルシクロテトラシロキサン、22.6gの1,3,5-トリメチルトリフルオロプロピルシクロトリシロキサン、5.2gの1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、9.8gの1,3-ビス(3-(2-ヒドロキシエトキシ)プロピル)テトラメチルジシロキサン、200gのクロロホルムおよび1.5gのトリフルオロメタンスルホン酸を含む混合物を、25℃にて24時間攪拌し、次いで該混合物のpHが中性となるまで、精製水によって繰返し洗浄した。水を分離した後、クロロホルムを、減圧下で留去した。得られる残留液体を、アセトン(36g)に溶解し、メタノール(180g)で再度沈殿させ、分離された液体から、真空下で揮発性成分を除去し、透明で粘性の高い液体を得た。この液体は、125gなる収量で、以下の式によって表されるヒドロシラン基を持つシロキサンジオール(H3R)であった。ここで、結合基Yの構造式は、各シロキサン単位で構成されるブロック構造として示されているが、実際には、これはランダム構造を含み、またこの式は、各シロキサン単位の比のみを示すものである。このことは、合成例全体に関して正しい。
【0089】
【化10】

【0090】
125gの上記シロキサンジオール、40gのポリエチレングリコールアリルメチルエーテル(平均分子量:400)、250gのイソプロピルアルコール、0.12gの酢酸カリウム、および25mgの塩化白金酸を含む混合物を、還流冷却器を備えたフラスコに充填し、攪拌しつつ、3時間に渡り、加熱還流した。この反応混合物を濾過し、次いでイソプロパノールを減圧条件下で留去し、引続きメタノール/水混合物で数回洗浄した。更に、真空下で揮発性成分を除去することによって、収量120gにて、透明で粘性の高い液体を得た。この液体は、以下の式によって表されるヒドロシラン基を持たないシロキサンジオール(M3R)であった:
【0091】
【化11】

【0092】
120gの上記シロキサンジオール(M3R)、9.5gのメタクリロイルオキシエチルイソシアネート、120gの無水2-ブタノンおよび0.05gのジブチル錫ジラウレートを含有する混合物を、褐色のフラスコに流込み、35℃にて5時間攪拌し、次いで6gのメタノールを添加した後に、更に攪拌した。引続き、2-ブタノンを減圧条件下で留去し、また生成した液体を、メタノール/水混合物で数回洗浄し、引続き真空下で揮発性成分を除去することによって、収量120gにて、透明で粘性の高い液体を得た。この液体は、以下の式によって表されるポリシロキサン-ジメタクリレート(M3-U)であった:










【0093】
【化12】

【0094】
M3-Uとして同定されたこの物質は、約15,000なる数平均分子量を持つ。
合成例1A
合成例1を、使用する成分の量および/または条件を適当に調節して、繰返すことによって、Yが以下の構造を持つことを除いて、M3-Uと同様な構造を持つマクロマーを製造する:








【0095】
【化13】

【0096】
M3-UUとして同定されたこの物質は、約20,000なる数平均分子量を持つ。
合成例2
50gのα-ブチル-ω-[3-(2'-ヒドロキシエトキシ)プロピル]ポリジメチルシロキサン、10gのメタクリロイルオキシエチルイソシアネート、150gの無水n-ヘキサンおよび0.2gのジブチル錫ジラウレートを含有する混合物を、褐色のフラスコに流込み、2時間加熱還流し、次いで6gのメタノールを添加した後に、更に攪拌した。引続き、n-ヘキサンを減圧条件下で留去し、また生成した液体を、メタノール(30g)/水(15g)で数回洗浄し、引続き真空下で揮発性成分を除去することによって、収量54gにて、透明で粘性の高い液体を得た。この液体は、以下の式によって表されるポリシロキサン-メタクリレート(FMM)であった:



























【0097】
【化14】

【0098】
FMMとして同定されたこの物質は、約1500なる数平均分子量を持つ。
実施例3
64質量部の、上記合成例1Aにおいて記載したポリシロキサンM3-U、10質量部の、N-ビニル-2-ピロリドン(以下NVPと言う)、10質量部の、N-ビニル-N-メチルアセタミド(以下VMAと言う)、6質量部の、イソボルニルメタクリレート(以下IBMと言う)、10質量部の、メチルメタクリレート(以下MMAと言う)、0.1質量部の、トリアリルイソシアヌレート(以下TAICと言う)、および最後に添加される、0.1質量部の、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(以下TPOと言う)を含む混合物を、攪拌しつつ混合した。この混合物を、エチレン-ビニルアルコール樹脂(以下EVOH樹脂と言う)でできたコンタクトレンズを製造するための金型(日本合成化学工業社(Japan Synthetic Chem. Ind. Co., Ltd.)によって作られたソアーライト(Soarlite) S)中に注入し、次いで露光装置内で、1時間、紫外光(UV)により照射して、レンズ-形状を持つポリマーを得た。このようにして得たレンズを、1.5時間に渡りエチルアルコールに浸し、次いで新たなエチルアルコールに、更に1.5時間浸し、次に、エチルアルコール/水(1/1)混合物に0.5時間浸し、脱イオン水に3時間浸し、また引続きPBS溶液に入れ、次いで20分間に渡りオートクレーブ処理した。このようにして得たレンズは、透明かつ可撓性であり、また良好な水に対する湿潤性を示した。物性の評価は、以下の表1に記載する結果を示した。
【0099】
実施例4、5および6
生成される混合物が、表1に示すような組成を持つことを除き、実施例3を3回繰返した。このようにして得られたレンズ各々は、透明かつ可撓性であり、また良好な水に対する湿潤性を示した。物性の評価は、以下の表1に記載する結果を示した。
実施例7、8、9および10
生成される混合物が、表1に示すような成分および組成を持つことを除き、実施例3を、更に4回繰返した。これら実施例の各々では、10質量部のFMMを含有させた。従って、該混合物の各々は、分子量約15,000を持つ一種の珪素-含有マクロマー、および約1,400なる分子量を持つもう一つの珪素-含有マクロマーを含む。このようにして製造したレンズ各々は、透明かつ可撓性であり、また良好な水に対する湿潤性を示した。物性の評価は、以下の表1に記載する結果を示した。
【0100】
実施例11
レンズを、実施例5に従って製造した。
水和されたレンズを、グリセロールモノメタクリレート(GMMA)/グリセロールジメタクリレート(GDMA) (質量基準で97/3)の、2質量%水性溶液に入れた。該レンズが含まれているこの溶液を、脱気し、かつ5分間窒素でパージした。この水性溶液を、穏やかに攪拌して、水和を維持した。この溶液を、70℃にて40分間加熱した。2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(バゾ(Vazo) 56)の水性溶液を、該レンズ/溶液に添加した。30分間に渡り重合させた。このレンズを取出し、脱イオン水で繰返し濯ぎ/浸漬した。このようにして得たレンズは、透明かつ可撓性であり、また良好な水に対する湿潤性を示した。物性の評価は、以下の表1に記載する結果を示した。
比較例12および13
2種の市販品として入手できる長期に渡り装着されるコンタクトレンズを、特性テストのために選択した。これら2種のレンズに関する物性の評価は、以下の表1に記載する結果を示した。















【0101】
【表1】


【0102】
【表2】

*:D-Met:ジメタクリレート;**:Met:メタクリレート;***:M-Met:モノメタクリレート;(A):B&Lピュアビジョン(Pure Vision);(B):チバナイトアンドデイ(Ciba Night and Day);※:テキスト参照。
【0103】
本発明のコンタクトレンズ、即ち実施例3〜11のコンタクトレンズは、このようなレンズ各々を、継続的にまたは長期間に渡り装着する用途において、特に実施例12および13の比較例としての市販品と比較考量した場合に、有効なものとする、物性の固有の、かつ有利な組合せを有する。
実施例3〜11において製造したレンズ各々は、抽出可能な物質を除去し、またヒトの目に装着するための準備において該レンズを水和させるための適当な処理後、ヒトの目に装着し、6時間着用させた。この期間の終了後、該レンズを取出し、またその目を角膜染色につきテストする。これらレンズ各々は、約20%に満たない角膜染色をもたらした。
実施例3〜11のレンズ各々は、例えば含水率、酸素透過率、モジュラスおよび/または1またはそれ以上の他の機械的な関連特性、および例えばレンズ機能の有効性、着用者の快適性および安全性の観点から、継続的な着用用途における、高い性能をもたらす、イオノフラックスを含む、諸特性の組合せを持つ。実施例3〜11のレンズ物性のこれら組合せは、例えば実施例12および13の競合的なレンズとは一致しない。
【0104】
実施例3〜11のレンズは、少なくとも約5日間または約10日間または約20日間または約30日間の継続的な着用中に、眼科学的に相溶性である。例えば、このようなレンズは、このような継続的着用中に、その角膜と接着することはない。
簡単に言えば、実施例3〜11の本発明によるコンタクトレンズは、本発明の態様の、実質的な継続的装着という利点を例示している。
ここにおける開示に鑑みて、本発明のコンタクトレンズは、既存のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズとは異なる、1またはそれ以上の特徴を含むものと理解することができる。本発明のレンズの一態様において、そのレンズ本体は、約50%(例えば、47%または約48%)なる含水率および約4〜約5なる範囲のイオノフレックスを持つ。更なる態様において、このようなレンズ本体は、100を越えるDk値を持つ。
【0105】
米国特許第6,867,245号の開示全体を、参考としてここに組入れる。
多くの刊行物、特許、および特許出願を上で引用してきた。これらの引用された刊行物、特許、および特許出願を、これらの開示事項全体として、本明細書に参考文献として組入れる。
以上、本発明を様々な具体例および態様を参照しつつ説明してきたが、本発明は、これらに限定されるものではなく、また本発明は、添付した特許請求の範囲内で、様々に実施できるものと理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、親水性の珪素-含有ポリマー材料で構成される、表面処理されていないレンズ本体を含み、該レンズ本体が、レンズの着用者による、少なくとも1日に渡る、該コンタクトレンズの目に適合した着用を容易にする上で効果的な、酸素透過率、含水率、表面の湿潤性およびデザインの内の少なくとも1つを持つことを特徴とする、上記コンタクトレンズ。
【請求項2】
該レンズ本体が、該レンズの着用者による、少なくとも1日に渡る、該コンタクトレンズの目に適合した着用を容易にする上で効果的な、酸素透過率、含水率、表面の湿潤性、モジュラスおよびデザインを持つ、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
該レンズ本体が、該レンズの着用者による、少なくとも約30日に渡る、該コンタクトレンズの目に適合した着用を容易にする上で効果的な、酸素透過率、含水率、表面の湿潤性、モジュラスおよびデザインを持つ、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
該ポリマー材料が、一種の珪素-含有マクロマー由来の単位を含む、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
該ポリマー材料が、二種の異なる珪素-含有マクロマー由来の単位を含み、各マクロマーが、異なる分子量を持つ、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
該レンズ本体が、少なくとも約70バラーなる酸素透過率、少なくとも約30質量%なる含水率、約1.4mPa未満のモジュラス、および約60度未満なる、該レンズ本体表面上の接触角を持つ、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
該レンズ本体が、約110バラーを越える酸素透過率を持つ、請求項6記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
該レンズ本体が、約45質量%を越える含水率を持つ、請求項6記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
該レンズ本体が、約0.9mPa未満のモジュラスを持つ、請求項6記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
該レンズ本体が、少なくとも約115バラーなる酸素透過率、約48質量%なる含水率および約0.84mPaなるモジュラスを持つ、請求項6記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
該レンズ本体が、約70〜約100バラーなる範囲の酸素透過率、少なくとも約50質量%なる含水率および約0.3mPa〜約0.5mPaなる範囲のモジュラスを持つ、請求項6記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
コンタクトレンズであって、親水性の珪素-含有ポリマー材料を含有する、レンズ本体を含み、該レンズ本体が、約110バラーを越えるDkおよび約30質量%を越える平衡含水率を有し、該コンタクトレンズが、眼科学的に相溶性であることを特徴とする、上記コンタクトレンズ。
【請求項13】
該レンズ本体が、少なくとも約150バラーなるDkを持つ、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
該レンズ本体が、少なくとも約35質量%なる平衡含水率を持つ、請求項12記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
該レンズ本体が、前方表面および後方表面を有し、かつ該前方および後方表面の少なくとも一方が、変性されていない、請求項12記載のコンタクトレンズ。
【請求項16】
該前方および後方表面が両者共に、変性されていない、請求項15記載のコンタクトレンズ。
【請求項17】
該レンズ本体が、約1.4mPaまたはそれ以下のモジュラスを持つ、請求項12記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
該レンズ本体が、少なくとも約90%なる伸び率を有する、請求項12記載のコンタクトレンズ。
【請求項19】
該レンズ本体が、約5×10-3mm2/分を越えないイオノフラックスを持つ、請求項12記載のコンタクトレンズ。
【請求項20】
該ポリマー材料が、一種の珪素-含有マクロマー由来の単位を含む、請求項12記載のコンタクトレンズ。
【請求項21】
該ポリマー材料が、異なる分子量を持つ、二種の珪素-含有マクロマー由来の単位を含む、請求項12記載のコンタクトレンズ。
【請求項22】
高分子量珪素-含有マクロマー由来の単位が、低分子量珪素-含有マクロマー由来の単位よりも、より多量の質量基準の量で、該ポリマー材料中に存在する、請求項21記載のコンタクトレンズ。
【請求項23】
該ポリマー材料が、少なくとも約10,000なる数平均分子量を持つ、珪素-含有マクロマー由来の単位を含む、請求項21記載のコンタクトレンズ。
【請求項24】
該二種の珪素-含有マクロマーが、少なくとも約5,000だけ異なっている数平均分子量を持つ、請求項21記載のコンタクトレンズ。
【請求項25】
該高分子量珪素-含有マクロマー由来の単位が、該ポリマー材料を基準として、少なくとも約40質量%である、請求項22記載のコンタクトレンズ。
【請求項26】
該高分子量珪素-含有マクロマー由来の単位および該低分子量珪素-含有マクロマー由来の単位が、該ポリマー材料を基準として、総計で少なくとも約50質量%である、請求項22記載のコンタクトレンズ。
【請求項27】
該珪素-含有マクロマーの一方が、単-官能性である、請求項21記載のコンタクトレンズ。
【請求項28】
該ポリマー材料が、複数の親水性モノマー由来の単位を含む、請求項21記載のコンタクトレンズ。
【請求項29】
コンタクトレンズであって、親水性の珪素-含有ポリマー材料を含有する、レンズ本体を含み、該レンズ本体が、約70バラーを越えるDkおよび約30質量%を越える平衡含水率を有し、該レンズ本体が、表面処理無しに製造され、該コンタクトレンズが、眼科学的に相溶性であることを特徴とする、上記コンタクトレンズ。
【請求項30】
該レンズ本体が、少なくとも約90バラーなるDkを持つ、請求項29記載のコンタクトレンズ。
【請求項31】
該レンズ本体が、少なくとも約35質量%なる平衡含水率を持つ、請求項29記載のコンタクトレンズ。
【請求項32】
該レンズ本体が、約1.4mPaまたはそれ以下のモジュラスを持つ、請求項29記載のコンタクトレンズ。
【請求項33】
該レンズ本体が、少なくとも約90%なる伸び率を有する、請求項29記載のコンタクトレンズ。
【請求項34】
該レンズ本体が、約5×10-3mm2/分を越えないイオノフラックスを持つ、請求項29記載のコンタクトレンズ。
【請求項35】
該ポリマー材料が、一種の珪素-含有マクロマー由来の単位を含む、請求項29記載のコンタクトレンズ。
【請求項36】
該ポリマー材料が、異なる分子量を持つ、二種の珪素-含有マクロマー由来の単位を含む、請求項29記載のコンタクトレンズ。
【請求項37】
該ポリマー材料が、複数の親水性モノマー由来の単位を含む、請求項36記載のコンタクトレンズ。
【請求項38】
コンタクトレンズであって、親水性の珪素-含有ポリマー材料を含有する、レンズ本体を含み、該レンズ本体が、約100バラーを越えるDk、約30質量%を越える平衡含水率および約5×10-3mm2/分を越えないイオノフラックスを有し、該コンタクトレンズが、眼科学的に相溶性であることを特徴とする、上記コンタクトレンズ。
【請求項39】
該レンズ本体が、少なくとも約130バラーなるDkを持つ、請求項38記載のコンタクトレンズ。
【請求項40】
該レンズ本体が、少なくとも約35質量%なる平衡含水率を持つ、請求項38記載のコンタクトレンズ。
【請求項41】
該レンズ本体が、前方表面および後方表面を有し、かつ該前方および後方表面の少なくとも一方が、処理されていない、請求項38記載のコンタクトレンズ。
【請求項42】
該前方および後方表面が両者共に、処理されていない、請求項41記載のコンタクトレンズ。
【請求項43】
該レンズ本体が、約1.4mPaまたはそれ以下のモジュラスを持つ、請求項38記載のコンタクトレンズ。
【請求項44】
該ポリマー材料が、異なる分子量を持つ、二種の珪素-有マクロマー由来の単位を含む、請求項38記載のコンタクトレンズ。
【請求項45】
該ポリマー材料が、複数の親水性モノマー由来の単位を含む、請求項38記載のコンタクトレンズ。
【請求項46】
コンタクトレンズであって、親水性の珪素-含有ポリマー材料を含有する、レンズ本体を含み、該レンズ本体が、約15質量%を越える平衡含水率を有し、該ポリマー材料が、異なる分子量を持つ、二種の珪素-含有マクロマー由来の単位を含み、該レンズ本体が、眼科学的に相溶性であることを特徴とする、上記コンタクトレンズ。
【請求項47】
該マクロマーの一方が、約10,000を越える数平均分子量を持つ、請求項46記載のコンタクトレンズ。
【請求項48】
該ポリマー材料が、複数の親水性モノマー由来の単位を含む、請求項46記載のコンタクトレンズ。
【請求項49】
該レンズ本体が、少なくとも約70バラーなるDkを持つ、請求項46記載のコンタクトレンズ。
【請求項50】
該レンズ本体が、少なくとも約30質量%なる平衡含水率を持つ、請求項46記載のコンタクトレンズ。
【請求項51】
該レンズ本体が、前方表面および後方表面を有し、かつ該前方および後方表面の少なくとも一方が、処理されていない、請求項46記載のコンタクトレンズ。
【請求項52】
該レンズ本体が、表面処理を全く含まない、請求項46記載のコンタクトレンズ。
【請求項53】
該レンズ本体が、約1.4mPaまたはそれ以下のモジュラスを持つ、請求項46記載のコンタクトレンズ。
【請求項54】
該レンズ本体が、約5×10-3mm2/分を越えないイオノフラックスを持つ、請求項46記載のコンタクトレンズ。
【請求項55】
該レンズ本体が、少なくとも約90%なる伸び率を有する、請求項46記載のコンタクトレンズ。

【公表番号】特表2008−511870(P2008−511870A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530179(P2007−530179)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/030491
【国際公開番号】WO2006/026474
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(390031015)旭化成アイミー株式会社 (8)
【出願人】(506298068)クーパーヴィジョン インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】