説明

シリコーン系保護膜を有する偏光板

【課題】プロジェクターでの表示画像においても、表示ムラを生じない優れた偏光板を提供すること。
【解決手段】一般式(1)[RSiO3/2(1)(Rは(メタ)アクリロイル基を有する有機官能基であり、nは8、10又は12)で表され、篭型構造のポリオルガノシルセスキオキサンを主成分とするシリコーン樹脂(A)と、分子中に−R−CR=CH又は−CR=CH(但し、Rはアルキレン基、アルキリデン基又は−OCO−基を示し、Rは水素又はアルキル基を示す)で表される不飽和基を少なくとも1個含む数平均分子量が2500以上のウレタンオリゴマー(B)と、該オリゴマー(B)以外の、重合性不飽和化合物(C)からなり、該(A)、(B)及び(C)の重量割合が5〜80:1〜50:10〜80であるシリコーン樹脂組成物の保護フィルムと偏光素子とを、ジアリルアミン系重合物で接着したことを特徴とする偏光板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン系保護膜と偏光素子とをジアリルアミン系重合物を含有する接着剤で接着した偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に偏光素子は、二色性色素であるヨウ素又は二色性染料をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着配向後に一軸延伸させることにより製造される。この偏光素子は通常機械的強度に劣るため通常「ケン化処理されたトリアセチルセルロースからなるフィルム」(以下、TACと省略)などを保護フィルムとして貼合し、偏光板として液晶表示装置などに用いられている。偏光素子と保護フィルムとの接着には通常ポリビニルアルコール系接着剤が用いられている。
近年、偏光板の諸特性に対する要求は高く、更なる改善が求められる。例えば、偏光特性の向上、複屈折性の低減、全光線透過率の向上、透湿度の制御、機械的強度(鉛筆硬度、耐摩擦性)の向上、耐久性の向上、表示ムラの改善などが挙げられる。これらの要求に応えるため、偏光素子と保護フィルムの改良が進められている。特に、保護フィルムについては通常用いられてきたTAC以外のシリコーン系フィルム、オレフィン系フィルム(シクロオレフィン系フィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム)、ビニルエステルからなるフィルム等を用いる技術が検討されている。
【0003】
しかしながら、これらTAC以外の保護フィルムを用いる場合、保護フィルムと偏光素子間の接着性が悪くなるという問題が生じる。特にシリコーン系樹脂フィルムは耐久性等の点で優れているが、他の樹脂フィルムと積層する際に、一般的に接着性が悪いことが知られている。そのため、特許文献1では、シロキサン架橋型アクリルシリコーン樹脂フィルムの接着側の面にシランカップリング剤層を形成することで、ポリビニルアルコール系接着剤で偏光素子と接着する技術が開示されている。 しかしながら、保護フィルムに別途接着性改良のための層を形成する方法は、その層の成形に伴う、加工工程とコスト増加、形成された層の不均一性による品質の不安定化等を引き起こす恐れがある。そのため、より簡便に接着することができ、かつTAC以外の高耐久性のフィルムを保護膜として有する偏光膜の開発が求められている。
【特許文献1】WO2008/066157A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明はシリコーン樹脂フィルムを保護膜として用いた場合に、該シリコーン樹脂フィルムと偏光素子とを比較的容易に接着することができる接着剤を開発して、高湿熱耐性を有する偏光板を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討の結果、ジアリルアミン系重合物で、下記のポリオルガノシルセスキオキサン樹脂組成物の硬化フィルムと偏光素子とを直接接着することにより、接着性の改良のためのシランカップリング剤層を設けなくとも、接着性の点で優れた高湿熱耐性を有すると共に、高温での長時間使用においても表示ムラが非常に少ない高温使用での耐久性のよい偏光板が得られることを見出し本発明を完成した。
すなわち本発明は、
(1)
保護フィルムが、
(i) 一般式(1)
[RSiO3/2(1)
(但し、Rは(メタ)アクリロイル基を有する有機官能基であり、nは8、10又は12である)で表され、
構造単位中に篭型構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンを主たる成分とするシリコーン樹脂(A)と、
(ii) 分子中に−R−CR=CH又は−CR=CH(但し、Rはアルキレン基、アルキリデン基又は−OCO−基を示し、Rは水素又はアルキル基を示す)で表される不飽和基を少なくとも1個含み、該シリコーン樹脂(A)とラジカル共重合が可能な数平均分子量が2500以上のウレタン結合を有するオリゴマー(B)と、
(iii) 該オリゴマー(B)以外の該シリコーン樹脂(A)とラジカル共重合が可能な不飽和化合物(C)を含有し、
且つ、該シリコーン樹脂(A)、該オリゴマー(B)及び該不飽和化合物(C)を5〜80:1〜50:10〜80の重量割合で含有するシリコーン樹脂組成物の硬化物フィルムであり、
該保護フィルムと偏光素子とが、ジアリルアミン系重合物を含む接着剤で接着されていることを特徴とする偏光板、
(2)保護フィルムが、
(i)(A)成分が、篭型構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンをシリコーン樹脂(A)の全量に対して70重量%以上含有するシリコーン樹脂、
(ii) (B)成分が、数平均分子量が2500〜10000であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、
(iii)(C)成分が下記一般式(2)
【0006】

【0007】
(式中、Zは(2a)又は(2b)で表される何れかの基を示し、R’は水素原子又はメチル基を示す)
で表される脂環式ジ(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含む(メタ)アクリレート化合物、
であり、シリコーン樹脂組成物全量に対して、(A)成分のシリコーン樹脂を15〜60重量%、(B)成分のウレタンアクリレートオリゴマーを1〜20重量%、及び(C)成分の(メタ)アクリレート化合物を30〜80重量%、
で含み、更に、重合開始剤及びその他の任意の添加剤を残部含むシリコーン樹脂組成物の硬化物フィルムである上記(1)に記載の偏光板、
(3)ジアリルアミン系重合物が、ジアリルアミン系化合物の単独重合物又はジアリルアミン系化合物の共重合物であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の偏光板、
(4)ジアリルアミン系重合物がエピハロヒドリン変性重合体であることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれか一項に記載の偏光板、
(5)保護フィルムの偏光素子側の接着面がコロナ処理またはプラズマ処理されていることを特徴とする(1)ないし(4)のいずれか一項に記載の偏光板、
(6)接着剤が、アミン系シランカップリング剤を含有していることを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれか一項に記載の偏光板、
(7)偏光素子が二色性色素を含有するポリビニルアルコール系樹脂フィルムよりなる上記(1)ないし(6)のいずれか一項に記載の偏光板、
(8)上記(1)ないし(7)のいずれか一項に記載の偏光板を有することを特徴とする画像表示装置、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の偏光板は、保護フィルムとして、吸湿性が少なく、耐久性に優れる特定のシリコーン系樹脂フィルムを用いると共に、接着剤として、ジアリルアミン系重合物を含む水性接着剤により、該保護フィルムと偏光素子とを強固に接着していることから、接着性の点で高湿熱耐性に優れると共に、高温での使用耐久性がよく、更に、液晶プロジェクターでの投影画像でも表示ムラのない表示画像を得ることができる偏光板であり、更に、前記公知技術のように、接着性改良のためのシランカップリング層を、シリコーン系樹脂製保護フィルムに設けて、該保護フィルムと偏光素子とを接着する必要が無いことから、本発明の偏光板は製造も容易であるという特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の偏光板は、特定のシリコーン系樹脂フィルムからなる保護フィルムを有し、該保護フィルムと偏光素子とを、ジアリルアミン系重合物を含む水性接着剤を用いて接着したことを特徴とする。
本発明の偏光板に用いる接着剤は、ジアリルアミン系重合物を含む組成物であり、通常水性組成物である。
本発明におけるジアリルアミン系重合物としては、ジアリルアミン系化合物の単独重合体、ジアリルアミン系化合物の共重合体又はそれらの変性体の何れでもよい。通常ジアリルアミン系化合物の重合体(単独重合体又は共重合体)の変性体としては、例えばハロゲノエポキシ変性ジアリルアミン系重合物が好ましく、より好ましくはエピハロヒドリン変性体、特にエピクロルヒドリン変性体(以下エピハロヒドリン又はエピクロルヒドリン変性ジアリルアミン系重合物ともいう)が好ましい。
【0010】
ジアリルアミン系化合物の単独重合体としては、後記のジアリルアミン系化合物の単独重合体を挙げることができる。
ジアリルアミン系化合物の共重合体としては、後記ジアリルアミン系化合物を主成分として含む共重合体が好ましい。好ましい共重合体の1つは上記ジアリルアミン系化合物の少なくとも2種が共重合した共重合体である。ジアリルアミン系化合物以外の他の重合性成分を含む共重合体としては、例えば、上記ジアリルアミン系化合物の少なくとも1種と、(メタ)アクリル酸(アクリル酸又はメタクリル酸)又はその塩、(メタ)アクリルアミド(アクリルアミド又はメタクリルアミド)又はその塩など(メタ)アクリル基を有する化合物との共重合物が挙げられる。これらの他の重合性成分を含む共重合体中におけるこれらの他の重合性成分の含量(モル割合)は共重合体全体に対して、0〜40モル%、より好ましくは0〜20モル%、更に好ましくは0〜10モル%であり、残部がジアリルアミン系化合物成分である。
ハロゲノエポキシ変性ジアリルアミン系重合物としては、ジアリルアミン系化合物の単独重合体又は共重合体を、エピハロヒドリン等のハロゲノグリシジル化合物と反応させて得られる変性体を挙げることでき、より好ましくは、エピクロロヒドリン変性体である。
【0011】
上記におけるジアリルアミン系化合物としては、CH2=CR-CH2-(Rは水素原子又はメチル基)で表される基(以下単に「(メタ)アリル」又は「(メタ)アリル基」ともいう)を窒素原子上に2つ有するアミン化合物を挙げることができる。該アミン化合物は、2級アミン又は3級アミン若しくはその塩、又は4級アンモニウム塩の何れであってもよい。
好ましいジアリルアミン系化合物としては下記式(a)
(CH2=CR-CH2)2 N(R1)n (a)
(式中Rは水素原子又はメチル基、R1はC1〜C4アルキル基、nは0〜2の整数を表し、nが2のとき、R1は同一であっても又は異なっていてもよい)
で表される化合物又はその塩(付加塩)を挙げることができる。
上記の2級アミン又はその塩としては、ジアリルアミンまたはジメタリルアミン及びその無機または有機酸塩が挙げられる。該無機または有機酸塩としては、上記アミンの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、及び、シュウ酸塩などを挙げることができる。
上記の3級アミン又はその塩としては、ジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミン及びジアリルブチルアミンなどのジアリル(C1−C4アルキル)アミン、又はジアリル(C1−C4アルキレン)ジアミン、又はその無機または有機酸塩が挙げられ、ジアリル(C1−C4アルキル)アミン又はその塩が好ましい。より具体的には、ジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミン又はジアリルブチルアミンの、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩又はシュウ酸塩等が挙げられる。より好ましくはジアリルメチル又はエチルアミンの塩である。塩の中では塩酸塩が最も普通である。
また、上記の窒素原子上にアリル基を2つ有する4級アンモニウム塩としては、ジアリルジメチルアンモニウム塩及びジアリルジエチルアンモニウム塩などのジアリルジ(C1−C4アルキル)アンモニウムイオンと無機または有機イオンとの塩が挙げられ、具体的には、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムブロマイド、ジアリルジエチルアンモニウムクロライド、ジアリルジブチルアンモニウムクロライド、及びジアリルメチルエチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0012】
本発明で使用するジアリルアミン系重合物の単独重合体は、上記ジアリルアミン系化合物をそれぞれ単独で重合させればよく、また共重合体は上記ジアリルアミン系化合物を少なくとも2種組み合わせるか、上記ジアリルアミン系化合物を少なくとも1種とその他の重合性単量体とを重合させることにより得ることができ、更に、これらの変性体は、これらの単独重合体又は共重合体を、エポキシ含有化合物、例えばエピハロヒドリン、より好ましくはエピクロルヒドリンなどのグリシジル基含有ハロゲノ化合物と反応させることにより、得ることができる。
該ジアリルアミン系重合物は、水溶性の高分子であり、該高分子の数平均分子量は100〜1,000,000程度、好ましくは1,000〜500,000程度、より好ましくは10,000〜100,000程度、更に好ましくは30,000〜100,000程度である。
【0013】
本発明の偏光板に用いられる接着剤は接着力と接着剤の品質保持時間のバランスからジアリルアミン系重合物が1.0〜40重量%、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは5〜25重量%、更に好ましくは8〜20重量%であるのが良く、残部は任意の添加剤と水性溶媒(例えば水単独、又は水とメタノール若しくはエタノール等の水よりも低沸点の水溶性溶媒との混合溶媒)、好ましくは水である。
好ましい任意の添加剤としては、カップリング剤、好ましくはアミン系シランカップリング剤を挙げることができる。該カップリング剤の添加量は、接着剤中のジアリルアミン系重合物に対して、0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%、更に好ましくは、0〜6重量%である。
カップリング剤の効果を十分に出すためには、接着剤中のジアリルアミン系重合物に対して0.5重量%以上添加するのが好ましく、より好ましくは1重量%以上で、上記上限の範囲が好ましい。
従って、より好ましい接着剤はジアリルアミン系重合物を、接着剤全量に対して、1.0〜40重量%、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは5〜25重量%、更に好ましくは8〜20重量%含み、カップリング剤、好ましくはアミン系シランカップリング剤を、ジアリルアミン系重合物に対して、0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜6重量%含み、残部が水である。
以下、本明細書において「%」と記載した場合、特に断らない限り重量%を表す。
【0014】
該接着剤は、偏光板と保護フィルムとの接着に好適であるが、他の樹脂フィルムの積層用の接着剤としても好ましい。特にジアリルアミン系重合物とシランカップリング剤、好ましくはアミン系シランカップリング剤を含む水性接着剤が好ましく、エピハロヒドリン変性ジアリルアミン系重合物を接着成分として含有する接着剤は、樹脂フィルム用の接着剤として更に好適である。接着する樹脂フィルムとしては、合成樹脂フィルムであれば特に制限はないが、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、アクリル樹脂フィルム、ビニル樹脂フィルム、シリコン樹脂フィルムなどから選択される同種のフィルム同士又は異種のフィルム同士の何れでもよい。
該接着剤は、接着性成分であるジアリルアミン系重合物が酸との塩、通常塩酸などとの塩となっているので、使用時に、塩基性水溶液で活性化させて用いるのが好ましい。塩基性水溶液としては、例えば好ましいものとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム及び水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物等の塩基性化合物の水溶液が挙げられる。通常は水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等の水溶液が好ましい。
該塩基性化合物の添加量はジアリルアミン系重合物に付加する酸を中和でき、ジアリルアミン系重合物をフリーの状態にできる量が好ましい。通常は該接着剤中のジアリルアミン系重合物の全量に対して、塩基性化合物の量で、1.0〜30%、好ましくは3〜10%添加するのがよい。
【0015】
上記接着剤が任意成分のシランカップリング剤、好ましくはアミン系シランカップリング剤を含む場合、接着力向上の点で、より好ましい。シランカップリング剤の添加量は、本発明のジアリルアミン系重合物に対して通常0〜20%、程度、好ましくは0.1〜10%程度、さらに好ましくは0.5〜6%程度である。場合により、上記の更に好ましい範囲は0.5〜3%、又は1〜3%でもよい。
アミン系シランカップリング剤の具体例としては例えば、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名:SZ−6032)、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名:SZ−6083)、γ−ジアリルアミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名:AX43−065)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−602)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−603)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBE−603)、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−903)、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBE−903)、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−573)、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名:SH6020)、及び、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名:SH6023)等のアミノプロピルトリ(C1〜C3アルコキシ)シラン化合物又はアミノプロピルジ(C1〜C3アルコキシ)C1〜C3アルキルシラン化合物が挙げられる。該シラン化合物のアミノ基は、フェニル基、アミノC1〜C3アルキル基、C2〜C3不飽和脂肪族基(好ましくはビニル基又はアリル基)及びベンジル基からなる群から選ばれる1〜2個の置換基を有してもよい。
上記本発明の接着剤には、本発明の効果を損なわない範囲(例えばカップリング剤との合計で、固形分全量に対して0〜20%)で、シランカップリング剤以外の添加剤を含有してもよいが、通常はそれらを含まなくてよい。
【0016】
本発明の偏光板における保護フィルムは接着性向上のため種々の表面処理を施されているものが好ましい。 該表面処理としては、例えば、溶剤表面処理、機械的表面処理および電気的表面処理などが挙げられ、電気的表面処理が好ましい。電気的表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、大気圧放電処理および紫外線オゾン処理などが挙げられる。処理の程度は、用いる保護フィルムの性質及び表面状態等によって異なるが、処理後の保護フィルム接着面の水の接触角が0度以上20度以下程度になるように処理された保護フィルムが好ましい。上記電気的表面処理では、コロナ処理又はプラズマ処理が好ましく、コロナ処理がとくに好ましい。
【0017】
本発明の偏光板を構成する保護フィルムは、下記するようにアクリル系樹脂と篭型シリコーン樹脂の共重合架橋型硬化フィルムである。本発明の保護フィルムは接着面とは反対側に必要に応じて反射防止処理やアンチグレア処理、ハードコート処理などの表面処理が施されていても良い。
【0018】
より詳しくは、本発明の偏光板で使用される保護フィルムは、
(i)一般式(1)
[RSiO3/2(1)
(但し、Rは(メタ)アクリロイル基を有する有機官能基であり、nは8、10又は12である)で表され、構造単位中に篭型構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンを主たる成分とするシリコーン樹脂(A)(以下、シリコーン樹脂(A)ともいう)と、
(ii)分子中に−R−CR=CH又は−CR=CH(但し、Rはアルキレン基、アルキリデン基又は−OCO−基を示し、Rは水素又はアルキル基を示す)で表される不飽和基を少なくとも1個含み、該シリコーン樹脂(A)とラジカル共重合が可能な数平均分子量が2500以上のウレタン結合を有するオリゴマー(B)(以下、オリゴマー(B)又はウレタンオリゴマー(B)ともいう)と、
(iii)該オリゴマー(B)以外の、該シリコーン樹脂(A)とラジカル共重合が可能な不飽和化合物(C)(以下、不飽和化合物(C)ともいう)を含有し、
且つ、該シリコーン樹脂(A):該オリゴマー(B)及び該不飽和化合物(C)が5〜80:1〜50:10〜80の重量割合で配合されているシリコーン樹脂組成物の硬化物フィルムである。
【0019】
本発明の保護フィルムに用いられるシリコーン樹脂組成物は、上記シリコーン樹脂(A)、上記ウレタン結合を有するオリゴマー(B)、及び、上記不飽和化合物(C)を必須成分とし、これらの成分を主成分とするものである。残部は光重合開始剤及びその他の任意の添加剤である。
本発明で「主成分」という場合、全量に対して少なくとも50重量%以上を占めることを言い、好ましくは60〜97重量%程度の範囲を言う。
シリコーン樹脂組成物全量に対する上記各成分の割合は通常下記の通りである。なお、%は何れも重量%である。
本発明で用いる保護フィルムは、通常上記シリコーン樹脂組成物を成形硬化することにより得ることができる。又、場合により、上記シリコーン樹脂組成物を硬化後、成形してもよい。上記のシリコーン樹脂組成物は架橋重合体であることから、硬化性樹脂と同様な成形硬化法が採用できる。通常は後記するように塗布して塗膜を形成し、重合させることにより得ることができる。保護フィルムの厚さは通常1μm〜200μm程度である。
【0020】
シリコーン樹脂(A)は、前記一般式(1)で表され、構造単位中に篭型構造を有するポリオルガノシルセスキオキサン(篭型シルセスキオキサンともいう)を主成分とし、通常篭型シルセスキオキサンを60〜95重量%含有し、残部は非篭型のシリコーン樹脂成分である。
一般式(1)中、Rは(メタ)アクリロイル基を有する有機官能基であり、好ましいRとしては下記一般式(4)で表される(メタ)アクリロイルオキシC1−3アルキル基を挙げることができる。
【0021】

【0022】
一般式(4)中、mは1〜3の整数であり、Rは水素原子又はメチル基である。なお、一般式(4)はCH=CR−COO−(CH)m−としても表すことができる。好ましいRの具体例としては、3−メタクリロキシプロピル基、メタクリロキシメチル基、及び3−アクリロキシプロピル基が挙げられる。
【0023】
前記一般式(1)中のnが8、10又は12である篭型ポリオルガノシルセスキオキサンの具体的な構造としては、下記構造式(5)、(6)及び(7)に示す篭型構造体が挙げられる。なお、下記式中のRは、一般式(1)におけるRと同じである。
【0024】

【0025】
本発明で使用されるシリコーン樹脂(A)は、WO2004/085501A1等に記載の方法で製造可能である。
即ち、シリコーン樹脂(A)は、RSiXで表されるケイ素化合物を極性溶媒及び塩基性触媒存在下で加水分解反応させると共に一部縮合させ、得られた加水分解縮合生成物を更に非極性溶媒及び塩基性触媒存在下で再縮合させて得ることができる。
ここで、Rは(メタ)アクリロイル基を有する有機官能基であり、Xは加水分解性基を示すが、好ましくは、Rは前記一般式(4)で表される基である。好ましいRの具体例を示せば、3−メタクリロキシプロピル基、メタクリロキシメチル基、及び3−アクリロキシプロピル基が例示される。
【0026】
加水分解性基Xは、加水分解性を有する基であれば特に限定されず、アルコキシ基、アセトキシ基、及び塩素原子等が挙げられるが、アルコキシル基であることが好ましい。アルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、n−及びi−プロポキシ基、並びに、n−、i−及びt−ブトキシ基等が挙げられる。これらの中で、メトキシ基は反応性が高いため好ましい。
【0027】
RSiXで表されるケイ素化合物の中で好ましい化合物を示せば、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシラン、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び、3−アクリロキシプロピルトリクロロシランが挙げられる。中でも、原料の入手が容易である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いることが好ましい。
【0028】
加水分解反応に用いられる塩基性触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物、あるいはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシドなどの水酸化アンモニウム塩が例示される。これらの中でも、触媒活性が高い点からテトラメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましく用いられる。塩基性触媒は、通常水溶液として使用される。
【0029】
加水分解反応条件については、反応温度は0〜60℃が好ましく、20〜40℃がより好ましい。反応温度が0℃より低いと、反応速度が遅くなり加水分解性基が未反応の状態で残存してしまい反応時間を多く費やす結果となる。一方、60℃より高いと反応速度が速すぎるために複雑な縮合反応が進行し結果として加水分解縮合生成物の高分子量化が促進される。また、反応時間は2時間以上が好ましい。反応時間が2時間に満たないと、加水分解反応が十分に進行せず加水分解性基が未反応の状態で残存してしまう状態となる。
【0030】
加水分解反応は水の存在が必須であるが、これは塩基性触媒の水溶液から供給することもできるし、別途水として加えてもよい。水の量は加水分解性基を加水分解するに足る量以上、好ましくは理論量の1.0〜1.5倍量である。また、加水分解時には有機極性溶媒を用いることが必要で、有機極性溶媒としてはメタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類、或いは他の有機極性溶媒を用いることができる。好ましくは、水と溶解性のある炭素数1〜6の低級アルコール類であり、2−プロパノールを用いることがより好ましい。非極性溶媒を用いると反応系が均一にならず加水分解反応が十分に進行せず未反応のアルコキシル基が残存してしまい好ましくない。
【0031】
加水分解反応終了後は、水又は水含有反応溶媒を分離する。水又は水含有反応溶媒の分離は、減圧蒸発等の手段が採用できる。水分やその他の不純物を十分に除去するためには、非極性溶媒を添加して加水分解反応生成物を溶解させ、この溶液を食塩水等で洗浄し、その後無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤で乾燥させる等の手段が採用できる。非極性溶媒を、蒸発等の手段で分離すれば、加水分解反応生成物を回収することができるが、非極性溶媒が次の反応で使用する非極性溶媒として使用可能であれば、これを分離する必要はない。
【0032】
加水分解反応では加水分解と共に、加水分解物の縮合反応が生じる。縮合反応が伴う加水分解での反応生成物は、通常、数平均分子量が1400〜5000の無色の粘性液体となる。この加水分解縮合生成物は、反応条件により異なるが数平均分子量が1400〜3000のオリゴマーとなり、加水分解性基Xの大部分、好ましくはほぼ全部がOH基に置換され、更にそのOH基の大部分、好ましくは95%以上が縮合されている。加水分解縮合生成物の構造については、複数種のかご型、はしご型、ランダム型のシルセスキオキサンであり、かご型構造をとっている化合物についても完全なかご型構造の割合は少なく、かごの一部が開いている不完全なかご型の構造が主となっている。したがって、この加水分解で得られた加水分解縮合生成物を、更に、塩基性触媒存在下、有機溶媒中で加熱することによりシロキサン結合を縮合(再縮合という)させることによりかご型構造のシルセスキオキサンを選択的に製造する。
【0033】
水又は水含有反応溶媒を分離したのち、非極性溶媒及び塩基性触媒の存在下に再縮合反応を行う。再縮合反応の反応条件については、反応温度は100〜200℃の範囲が好ましく、さらには110〜140℃がより好ましい。また、反応温度が低すぎると再縮合反応をさせるために十分なドライビングフォースが得られず反応が進行しない。反応温度が高すぎると(メタ)アクリロイル基が自己重合反応を起こす可能性があるので、反応温度を抑制するか、重合禁止剤などを添加する必要がある。反応時間は2〜12時間が好ましい。非極性溶媒の使用量は加水分解反応生成物を溶解するに足る量であることがよく、塩基性触媒の使用量は加水分解反応生成物に対し、0.1〜10重量%の範囲である。
【0034】
非極性溶媒としては、水と溶解性の無い又は殆どないものであればよいが、炭化水素系溶媒が好ましい。かかる、炭化水素系溶媒としてはトルエン、ベンゼン、キシレンなどの沸点の低い非極性溶媒がある。中でもトルエンを用いることが好ましい。塩基性触媒としては、加水分解反応に使用される塩基性触媒が使用でき、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物、あるいはテトラメルアンモニウムヒヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシドなどの水酸化アンモニウム塩が挙げられるが、テトラアルキルアンモニウム等の非極性溶媒に可溶性の触媒が好ましい。
【0035】
また、再縮合に使用する加水分解縮合生成物は水洗、脱水し濃縮したものを用いるのが好ましいが、水洗、脱水を行わなくても使用できる。この反応の際、水は存在してもよいが、積極的に加える必要はなく、塩基性触媒溶液から持ち込まれる水分程度にとどめることがよい。なお、加水分解縮合生成物の加水分解が十分に行われていない場合は、残存する加水分解性基を加水分解するに必要な理論量以上の水分が必要であるが、通常は加水分解反応が十分に行われる。再縮合反応後は、触媒を水洗し取り除き濃縮し、シルセスキオキサン混合物が得られる。
【0036】
このようにして得られるシルセスキオキサンは、反応条件や加水分解縮合生成物の状態により異なるが、構成成分は、複数種かご型シルセスキオキサンが全体の70%以上であり、残部は非篭型の縮合物である。複数種のかご型シルセスキオキサンの構成成分は一般式(5)で表されるT8が20〜40%、一般式(6)で表されるT10が40〜50%で、残部はその他の成分で、通常一般式(7)で表されるT12である。T8はシロキサン混合物を20℃以下で放置することで針状の結晶として析出させ分離することができる。
本発明で使用するシリコーン樹脂(A)における篭型シルセスキオキサンは、T8、T10及びT12の混合物であってもよく、これらから1種又は2種を分離又は濃縮したものであってもよい。また、本発明で使用するシリコーン樹脂(A)は、上記製法で得られたシリコーン樹脂に限定されるものではない。
【0037】
次ぎに、ウレタンオリゴマー(B)について説明する。
前記シリコーン樹脂組成物において、シリコーン樹脂(A)と共に使用されるオリゴマー(B)は、分子中に−R−CR=CH又は−CR=CHで表される不飽和基を少なくとも1個含み、本シリコーン樹脂とラジカル共重合が可能な数平均分子量が2500以上のウレタン結合を有するオリゴマーである。ここで、Rはアルキレン基、アルキリデン基又は−OCO−基を示すが、アルキレン基及びアルキリデン基としては、炭素数1〜6の低級アルキレン基及び炭素数1〜6の低級アルキリデン基が好ましい。Rは水素原子又はアルキル基を示すが、好ましくは水素原子又はメチル基である。好ましい不飽和基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基及びビニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基が挙げられる。
【0038】
前記オリゴマー(B)は、従来から一般的に用いられる方法により製造することができる。そのような方法としては例えば、ポリオール、ポリイソシアネート、及び、末端に重合性不飽和基と水酸基とを有する化合物から合成する方法等が挙げられる。その際に、原料物質の分子量、あるいは反応時のモル比を適宜調節することにより本発明の樹脂組成物に用いられるウレタンアクリレートを得ることができる。
【0039】
上記ポリオールとしては、例えば多塩基酸と多価アルコールを重縮合して得られるポリエステルポリオール;ε−カプロラクトン及びγ−バレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシド等のアルキレンオキシド、テトラヒドロフラン、及びアルキル置換テトラヒドロフラン等の環状エーテルの重合体又はこれらの2種以上の共重合体であるポリエーテルポリオール;等が挙げられる。
【0040】
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロペンタジエンジイソシアネート、及び、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられる。
【0041】
上記の末端に重合性不飽和基と水酸基とを有する化合物としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、及び、各種エポキシアクリレート等が挙げられる。
なお、オリゴマー(B)は、市販されているものを使用することができ、例えば、共栄社化学株式会社製のウレタンアクリレートオリゴマーUF−8001(数平均分子量:2600)やUF−503(数平均分子量:3800)が好ましく使用される。
好ましいウレタンオリゴマー(B)としては、数平均分子量が1,000〜10,000程度のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができ、より好ましくは数平均分子量が2,500〜10,000程度、更に好ましくは数平均分子量が2,500〜6,000程度のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである。
【0042】
本発明で用いられる前記不飽和化合物(C)は、オリゴマー(B)以外の不飽和化合物であって、シリコーン樹脂(A)と共重合可能な不飽和化合物である。不飽和化合物(C)としては上記条件を満足するものであれば制限はないが、不飽和化合物(C)中に少なくとも脂環式不飽和化合物を10〜100重量%含有させることで、低吸水性の成形体とすることができるため、好ましい。該脂環式不飽和化合物としては、下記一般式(2)
【0043】

【0044】
(式中、Zは(2a)又は(2b)で表される何れかの基を示し、R’は水素又はメチル基を示す。)で表される脂環式不飽和化合物が好ましい。一方、不飽和化合物(C)中における、脂環式不飽和化合物以外の残部の非脂環式不飽和化合物としては、鎖式不飽和化合物や芳香族不飽和化合物が好ましく挙げられる。
【0045】
一般式(2)で表される脂環式不飽和化合物において、Zが式(2a)で表される基である場合の具体的な化合物としては、Rが水素であるペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカンジメチロールジアクリレートがあり、Zが式(2b)で表される基である場合の具体的な化合物としては、Rが水素であるジシクロペンタニルジアクリレート、又は、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメチロールジアクリレートがある。
本発明においては、より耐久性のよい保護フィルムを得る目的から、上記の脂環式不飽和化合物、好ましくは一般式(2)で表される脂環式不飽和化合物を多く含むのが好ましく、該不飽和化合物(C)の全量に対して、該脂環式不飽和化合物が、少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上であることが好ましい。場合により、該不飽和化合物(C)の全量が該脂環式不飽和化合物であるとき最も好ましい。
【0046】
上記の脂環式不飽和化合物以外の不飽和化合物(C)としては、構造単位の繰り返し数が2〜20程度の重合体である反応性オリゴマーと、低分子量、低粘度の反応性モノマーに大別される。また、不飽和基を1個のみ有する単官能不飽和化合物と2個以上有する多官能不飽和化合物に大別される。良好な3次元架橋体を得るためには、場合により、不飽和化合物(C)中、上記一般式(2)以外の多官能不飽和化合物を更に含んでいてもよい。
共重合体の耐熱性、強度等を期待する場合には、不飽和化合物(C)における、重合性の不飽和結合基を1分子当たり平均1.1個以上、好ましくは1.5個以上、より好ましくは1.6個以上、5個以下とすることがよい。このためには、単官能不飽和化合物と不飽和基を2〜5個有する多官能不飽和化合物を混合使用して、平均の官能基数を適宜調整することが出来る。上記一般式(2)の脂環式ジ(メタ)アクリレートのみを、不飽和化合物(C)として使用したときは重合性の不飽和結合基の1分子当たり平均は2となる。
【0047】
上記の反応性オリゴマーとしては、エポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニルアクリレート、ポリエン/チオール、シリコーンアクリレート、ポリブタジエン、及びポリスチリルエチルメタクリレート等を例示することができる。
【0048】
上記の反応性の単官能モノマーとしては、スチレン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−デシルアクリレート、イソボニルアクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、及び、トリフルオロエチルメタクリレート等を例示することができる。
【0049】
上記の反応性の多官能モノマーとしては、一般式(2)で表される化合物を含めたトリプロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及び、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を例示することができる。
【0050】
不飽和化合物(C)としては、以上に例示したもの以外に、各種反応性オリゴマー、及びモノマーを用いることができる。
また、一般式(2)で表される化合物以外の反応性オリゴマーやモノマーは、本発明においては脂環式不飽和化合物、好ましくは一般式(2)の化合物と共に、それぞれ単独若しくは2種類以上を併用してしてもよい。
【0051】
本発明で用いられるシリコーン樹脂組成物は、上記シリコーン樹脂(A)、上記オリゴマー(B)及び上記不飽和化合物(C)を主成分とし、これらの合計がシリコーン樹脂組成物全量に対して、60〜97重量%、好ましくは70〜96重量%、更に好ましくは80〜95重量%程度占めるのが好ましく、残部が光重合開始剤及びその他の任意成分である。
シリコーン樹脂(A)、オリゴマー(B)及び不飽和化合物(C)の各成分の混合比率(重量比)は、5〜80:1〜50:10〜80の範囲であるが、好ましくは10〜70:5〜40:10〜70の範囲である。シリコーン樹脂(A)の比率が5重量%未満であると、硬化後の成形体の耐熱性、透明性、吸水性等の物性値が低下するため好ましくない。また、シリコーン樹脂(A)の比率が80重量%を超えると、組成物の粘度が増大するため、成形体の製造が困難となるのでやはり好ましくない。また、オリゴマー(B)の比率が1〜50重量%のとき、巻き取り性良くロール状に成形することができる。オリゴマー(B)の比率が50重量%を超えるとシリコーン樹脂との相溶性が悪く均一な樹脂組成物が得られなくなるので好ましくない。シリコーン樹脂の割合が多いと、得られる共重合体はシリコーン樹脂としての物性が優勢となる。また、不飽和化合物(C)の割合が多いと、得られる共重合体は、不飽和化合物(C)からなる樹脂としての物性が優勢となるが、シリコーン樹脂優勢の場合に生じる欠点のいくつかが改良される。また重合成樹脂組成物において、不飽和化合物(C)に含まれる脂環式不飽和化合物の割合が多いと、得られる共重合体は低吸湿性に優れ、不飽和化合物(C)に含まれる非脂環式多官能不飽和化合物の割合が多いと、得られる共重合体は低線膨張性に優れる。本発明における保護膜フィルムにおいては低吸湿性であることが好ましいことから、脂環式不飽和化合物の割合が多い方が好ましく、前記式(2)で表される脂環式ジ(メタ)アクリレート化合物が多い方が好ましい。
【0052】
本発明で用いられるシリコーン樹脂組成物には、偏光板の偏光素子の耐光性を向上させる目的で、400nm以下の波長を吸収する紫外線吸収剤を配合させるのが好ましい。その添加量はシリコーン樹脂(A)、オリゴマー(B)及び不飽和化合物(C)の合計100重量部に対して、0.1〜5重量部の範囲とすることがよい。該紫外線吸収剤を5重量部より多く配合すると光硬化を阻害して、硬化物を形成しにくくなるおそれがある。
【0053】
該紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、シアノアクリルレート系化合物、及びニッケル系化合物等の化合物を好適に使用することができる。具体的には、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、ベンゼンプロパン酸−3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7−9側鎖及び直鎖アルキルエステル、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、ベンゼンプロパン酸−3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7−9側鎖及び直鎖アルキルエステル、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、並びに、2,4−ビス「2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル」−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン等を例示することができる。
【0054】
上記シリコーン樹脂組成物には、紫外線によって反応を促進する添加剤として光重合開始剤、光開始助剤、及び、鋭感剤等を配合することができる。光重合開始剤を配合する場合、その添加量はシリコーン樹脂(A)、オリゴマー(B)及び不飽和化合物(C)の合計100重量部に対して、0.1〜5重量部の範囲とすることがよく、0.1〜3重量部の範囲とすることが更に好ましい。この添加量が0.1重量部に満たないと硬化が不十分となり、得られる成形体の強度、剛性が低くなり、一方、5重量部を超えると成形体の着色等の問題が生じるおそれがある。
【0055】
上記シリコーン樹脂組成物を光硬化性組成物とする場合に用いられる光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサンソン系、及びアシルホスフィンオキサイド系等の化合物を好適に使用することができる。具体的には、トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、チオキサンソン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、カンファーキノン、ベンジル、アンスラキノン、及び、ミヒラーケトン等を例示することができる。また、紫外線吸収剤を用いることによる硬化不足を補う目的で、紫外線吸収剤の吸収波長とは異なる吸収波長を有する光重合開始剤を組み合わせて用いることができ、光重合開始剤と組み合わせて効果を発揮する光開始助剤や鋭感剤を併用することもできる。
【0056】
上記シリコーン樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で上記以外の各種添加剤を添加することができる。各種添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、有機/無機フィラー、可塑剤、難燃剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、発泡剤、核剤、着色剤、架橋剤、分散助剤、及び、樹脂成分等を例示することができる。
しかしながら、通常は本発明においては、有機/無機フィラー、可塑剤、核剤、着色剤、及び、前記(A)〜(C)成分以外の樹脂成分等の添加剤は必要としない。
【0057】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系等の化合物を好適に使用することができる。具体的には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セパケート等を例示することができる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系等の化合物を好適に使用することができる。具体的には、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール等を例示することができる。
【0058】
上記本発明で用いられるシリコーン樹脂組成物をフィルム状に成型して硬化させることで、本発明に用いる保護フィルムを得ることができる。具体的には、該樹脂組成物に光重合開始剤を添加し、次いで該樹脂組成物を直接、あるいは必要に応じて水又は有機溶剤等の溶剤で希釈後、平滑な基材に塗布し、溶剤で希釈した場合には加熱などにより溶剤を除去後、必要に応じて空気界面側をカバーで覆うなどしてから紫外線を照射して該樹脂層を硬化させ、その後にカバーや基材から剥離して得ることができる。該樹脂組成物の塗布方法は平滑性、厚さの均一性が維持できれば特に制限は無いが、例えばドクターブレードやロール状のコーターを用いて塗布する方法等が挙げられる。
また、紫外線照射は空気中あるいは窒素雰囲気下で行われ、その照射量は波長10〜400nmの紫外線を1000〜20000mJ/cm照射することで、成形体を得ることができる。用いる光の波長は特に制限されるものではないが、特に波長200〜400nmの近紫外線が好適に用いられる。紫外線発生源として用いられるランプとしては、低圧水銀ランプ(出力:0.4〜4W/cm)、高圧水銀ランプ(40〜160W/cm)、超高圧水銀ランプ(173〜435W/cm)、メタルハライドランプ(80〜160W/cm)、パルスキセノンランプ(80〜120W/cm)、無電極放電ランプ(80〜120W/cm)等を例示することができる。これらの紫外線ランプは、各々その分光分布に特徴があるため、使用する光開始剤の種類に応じて選定される。また、樹脂組成物の硬化物からなる層の厚さは0.5μm〜500μm程度が好ましく、より好ましくは1μm〜200μm程度が良い。
【0059】
こうして得られた本発明に用いる保護フィルムは偏光板としての十分な偏光特性や表示ムラ改善効果を得るために、面内および厚さ方向の位相差値が550nmの波長において5nm以下、好ましくは3nm以下、より好ましくは1nm以下であるのが良い。そのような位相差値にするには、該保護フィルムを形成する際あるいは形成後に、位相差を発現するような応力を極力かけないことや、該保護フィルムを作製する際の樹脂組成物中に液晶性化合物等の複屈折性を生じやすい化合物を極力用いないことが好ましい。
【0060】
また、本発明に用いる保護フィルムは、表面硬度が硬いという特徴を有する偏光板とするために、JIS−5600−5−4に基づき鉛筆法で得られる鉛筆硬度が、500g荷重で3H以上であれば良く、より好ましくは4H以上とするのが良い。
さらに、耐熱性に優れた偏光板とするために、JISC6481−3DMA(引張り法)より得られるガラス転移温度が好ましくは300℃以上、さらに好ましくは、350℃以上である保護フィルムを使用するのが良い。そのような硬さおよび高いガラス転移温度にするには、樹脂組成物の不飽和基を充分反応させる必要がある。
【0061】
本発明の偏光板に用いられる偏光素子(偏光子)は、光源からの光を偏光にする機能を有する素子であれば特に制限は無く、特定の方向の光を吸収して偏光にする吸収型偏光素子及び特定の方向の光を反射して偏光にする反射型偏光素子のいずれも用いることができる。吸収型偏光素子としては、例えば、染料や多価のヨウ素イオン等の二色性色素を含有するポリビニルアルコール系フィルム等の親水性高分子フィルムを一軸延伸して得られる偏光素子、ポリビニルアルコール系フィルムの一軸延伸の前後に酸により脱水してポリエン構造を形成して得られる偏光素子、及び、一定方向に配向するよう処理された配向膜上にリオトロピック液晶状態を発現する二色性色素の溶液を塗布し、その後に溶剤を除去して得られる偏光素子等が挙げられる。一方、反射型偏光素子としては、例えば、複屈折の異なる多数の積層体からなる偏光素子、選択反射域を有するコレステリック液晶と1/4波長板とを組み合わせてなる偏光素子、及び、基板上に微細なワイヤーグリッドを設けた偏光素子等が挙げられる。本発明の効果をより効果的に得るためには、偏光素子として偏光特性に優れている、染料又は多価のヨウ素イオン等の二色性色素を含有するポリビニルアルコール系フィルム等の親水性高分子フィルムを一軸延伸して得られる偏光素子、又は、ポリビニルアルコール系フィルムの一軸延伸の前後に酸により脱水してポリエン構造を形成して得られる偏光素子を用いることが好ましい。
【0062】
上記偏光素子は、従来の方法により製造することができるが、例えば染料及び多価のヨウ素イオン等の二色性色素を含有するポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光素子の場合、まず、ポリビニルアルコール系フィルムを温水等で膨潤させた後、二色性色素を溶解した染色槽に浸漬し、該フィルムを染色し、ついで、硼酸や硼砂といった架橋剤を含む槽で一軸方向に延伸し、乾燥させることにより、該偏光素子を得ることができる。染色に使用する色素としては、ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液、『機能性色素の応用』(入江正浩監修、シーエムシー出版)98−100頁に記載のアゾ系化合物、シー.アイ.ダイレクト.イエロー12、シー.アイ.ダイレクト.イエロー28、シー.アイ.ダイレクト.イエロー44、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ26、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ39、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ107、シー.アイ.ダイレクト.レッド2、シー.アイ.ダイレクト.レッド31、シー.アイ.ダイレクト.レッド79、シー.アイ.ダイレクト.レッド81、シー.アイ.ダイレクト.レッド247、シー.アイ.ダイレクト.グリーン80、シー.アイ.ダイレクト.グリーン59、並びに、特開2001−33627、特開2002−296417、特開2003−215338、WO2004/092282、特開2001−0564112、特開2001−027708、特開平11−218611、特開平11−218610及び特開昭60−156759号公報に記載された有機染料等が挙げられる。これらの二色性色素は遊離酸の他、アルカリ金属塩(例えばNa塩、K塩及びLi塩等)、アンモニウム塩、アミン類の塩、又は錯塩(例えばCu錯体、Ni錯体及びCo錯体等)等が挙げられる。偏光素子の性能は二色性色素の持つ二色性や延伸時の延伸倍率等で調整することができる。
【0063】
本発明の偏光板は、上記の偏光素子の少なくとも片面に、通常は両面に、前記の保護フィルムを、両フィルムの間に前記の接着剤を介して、積層後、乾燥することによって得ることができる。乾燥の条件は用いる接着剤の濃度や保護フィルムの透湿度によっても異なるが、25〜100℃で10〜150分程度行うのが良い。
通常はこうして得られた本発明の偏光板の少なくとも片面には、他のフィルム又は液晶セルと貼り合せるために、粘着層が形成される。粘着層としては透明で、光学異方性が無ければ特に制限は無く何れの粘着剤も使用できるが、アクリル系粘着剤が好適に用いられる。
【0064】
本発明の偏光板を、画像表示装置の光通路内、例えば液晶表示装置の少なくとも液晶セルの片側等に配置することで、本発明の画像表示装置、例えば液晶表示装置を得ることができる。液晶表示装置は用いる液晶セルの種類によって種々のモードがあるが、何れの場合にも本発明の偏光板を使用できる。例えばVA(ヴァーティカリーアラインメント)型、IPS(インプレーンスイッチング)型、OCB(オプティカリーコンペンセイテッドベンド)型、TN(ツイステッドネマティック)型、STN(スーパーツイステッドネマティック)型など種々のモードの液晶表示装置に、本発明の偏光板を使用することができる。
なお、本発明の偏光板と液晶セルとの間に、視野角特性やコントラストを改善するための位相差フィルムを挿入しても良い。位相差フィルムは用いる液晶セルの種類によって異なるが、VA型の場合にはnegative−C−plateやA−plateとnegative−C−plate等を用い、IPSの場合にはbiaxial−plateやpossitive−C−plate等を用い、TN型にはハイブリッド配向したディスコティック液晶を固定化したフィルム等を用い、STN型にはbiaxial−plate等が挙げられる。
また、本発明の偏光板は液晶プロジェクターに好適に用いることができる。その場合には、通常、赤、緑及び青のそれぞれの光源に対してスイッチングを行う液晶セル用のカラー偏光板として使用される。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0066】
実施例1
<篭型構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンの合成例>
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、溶媒として2−プロパノール(IPA)40mlと塩基性触媒として5%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TMAH水溶液)を装入した。滴下ロートにIPA 15mlと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MTMS:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製SZ−6300)12.69gを入れ、反応容器を撹拌しながら、室温でMTMSのIPA溶液を30分かけて滴下した。MTMS滴下終了後、加熱することなく2時間撹拌した。2時間撹拌後溶媒を減圧下で溶媒を除去し、トルエン50mlで溶解した。反応溶液を飽和食塩水で中性になるまで水洗した後、無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで加水分解縮合生成物(シルセスキオキサン)を8.6g得た。このシルセスキオキサンは種々の有機溶剤に可溶な無色の粘性液体であった。
【0067】
次に、撹拌機、ディンスターク、冷却管を備えた反応容器に上記で得られたシルセスキオキサン20.65gとトルエン82mlと10%TMAH水溶液3.0gを入れ、徐々に加熱し水を留去した。更に130℃まで加熱しトルエンを還流温度で再縮合反応を行った。このときの反応溶液の温度は108℃であった。トルエン還流後2時間撹拌した後、反応を終了とした。反応溶液を飽和食塩水で中性になるまで水洗した後、無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで目的物であるかご型シルセスキオキサン(混合物)を18.77g得た。得られたかご型シルセスキオキサンは種々の有機溶剤に可溶な無色の粘性液体であった。
【0068】
再縮合反応後の反応物の液体クロマトグラフィー分離後の質量分析を行ったところ上記構造式(5)、(6)及び(7)の分子構造にアンモニウムイオンが付いた分子イオンが確認され、構成比率はT8:T10:T12及びその他が約2:4:1:3であり、かご型構造を主たる成分とするシリコーン樹脂であることが確認できた。
【0069】
<本発明で用いられるシリコーン樹脂組成物の調製およびこれを硬化させたフィルムの作製>
上記合成で得たメタクリル基を有する篭型ポリシルセスキオキサン:30重量部、ジシクロペンタニルジアクリレート:65重量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(共栄社化学株式会社製、商品名:UF−503、数平均分子量:3800):5重量部、ベンゼンプロパン酸−3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7〜9側鎖及び直鎖アルキルエステル(チバ・ジャパン株式会社製、商品名:TINUVIN384−2):4重量部、及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:2重量部、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド:1重量部、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート:1重量部、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート:1重量部を混合し、本発明の重合性樹脂組成物を得た。
次にロールコーターを用いて、上記シリコーン樹脂組成物を厚さ85μmになるようにキャスト(流延)し、30W/cmの高圧水銀ランプを用い、2000mJ/cm2の積算露光量で硬化させ、所定の厚みとしたシート状のシリコーン樹脂組成物の硬化物からなるフィルム(保護フィルム)を得た。
得られたフィルムの透過率は92%であり、表面硬度は500g荷重条件の鉛筆硬度試験(JIS5600−5−4準拠)で4Hであり、位相差値は自動複屈折計(王子計測機器株式会社製、商品名:KOBRA−21ADH)で測定したところ、波長550nmに対して0.6nmであった。
【0070】
<接着剤の調製>
エピクロロヒドリン変性メチルジアリルアンモニウム塩酸塩の重合物を含む水溶液(センカ株式会社製、商品名:ユニセンスKCA101L、固形分濃度20%)の固形分濃度を11%に調整した。得られた溶液に、該重合物に対して3%のN−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−603)を加えて、カップリング剤を含む本発明の接着剤とした。更に、そこに該重合物に対して5%の水酸化ナトリウムを水溶液で添加し、よく攪拌して保護フィルム接着に使用する接着剤水溶液とした。
【0071】
<偏光板の作製>
上記シリコーン樹脂組成物の硬化物からなる保護フィルムにCORONA GENERATOR(春日電機株式会社製、AGF-B10)で出力0.25kW、速度0.5m/minを5 Passの条件でコロナ処理することにより、接着面のコロナ処理された保護フィルムを得た。偏光素子として、2色染料を吸着させたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸して得られた偏光素子(株式会社ポラテクノ製、SHC偏光素子)を用い、上記で得た2枚の保護フィルムのコロナ処理した面に、前記で得た接着剤を塗布して、該塗布面で偏光素子をロールで挟持し、偏光素子の両面に保護フィルムを接着した。次いで70℃で30分加熱して乾燥することにより、本発明の偏光板を得た。
【0072】
比較例1
接着剤としてPVA糊(日本合成化学工業株式会社製、商品名:ゴーセノールNH−26)4%水溶液を用いる以外は実施例1と同様の操作を行い、比較用の偏光板を得た。
【0073】
比較例2
保護フィルムとして、表面をアルカリ処理した膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム株式会社製、商品名:TD−80U)を用い、2枚の保護フィルムのアルカリ処理した面に、PVA糊(日本合成化学社製 ゴーセノールNH−26)4%水溶液を塗布して、該塗布面で、2色染料を吸着させたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸して得られた偏光素子(株式会社ポラテクノ製、SHC偏光素子)を挟持し、偏光素子の両面に保護フィルムを接着した。次いで70℃で10分加熱して乾燥することにより、比較用の偏光板を得た。
【0074】
試験例1
<接着性評価>
実施例1、比較例1で作製した偏光板について、各偏光板サンプル40mm×40mm片を湿熱条件85℃85%RH下に100時間放置し、剥れの有無を目視で観察した。その観察結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
試験例2
<表示ムラ評価>
実施例1及び比較例2の偏光板につき、偏光素子の延伸方向に対して斜め45°にカットしたそれぞれ2枚の偏光板をガラスに貼り合わせて得られたそれぞれの2枚のサンプルを、105℃の雰囲気下に24時間放置した。次に吸収軸がaである偏光板と吸収軸がbである偏光板をそれぞれの吸収軸が直交するように積層した。その積層した偏光板を27000cd/m2の輝度を有する光源の上に配置し、暗状態にした。この状態で、該偏光板における、図1に示されたA、B、C、D、及びEの各測定位置での輝度を輝度計(コニカミノルタセンシング株式会社製、商品名:CA−2000)にて測定した。得られた輝度の測定結果から、下記式により、中心部Aの輝度と端部B、C、D、Eの輝度との差を、表示ムラの程度(表示ムラ度)として算出した。
表示ムラ度=(端部輝度B、C、D、Eの平均輝度)/(中心輝度A)
表示ムラ度の結果を表2に示した。
【0077】
【表2】

【0078】
試験例3
<液晶プロジェクターでの表示ムラ評価>
実施例1または比較例2で得られた偏光板を液晶プロジェクターの出射側液晶セルに貼り付けた。入射側の液晶プロジェクター付属の偏光板を回転させて偏光板の軸調整を行い、最も低い輝度が得られるように調整した。次にこの液晶プロジェクターで黒画像を40インチスクリーンに投影し、表示ムラ(部分的に濃度が高い又は低い領域)の有無を目視にて確認した。
評価基準は下記の通りとした。
表示ムラ有り:目視で、黒画像上に、明らかに濃淡のムラが認められる。
表示ムラ無し:目視で均一な黒画像を示し、濃淡のムラが認められない。
結果を表3に示した。
【0079】
【表3】

【0080】
実施例1と比較例1との比較から分かるように、本発明の偏光板は、比較例に比べ、別途接着性改良のための層を設けることなく、上記シリコーン樹脂組成物の硬化物フィルムからなる保護フィルムに対して十分な接着力を有し、優れた湿熱耐性を示すことが分かる。また、実施例1と比較例2との比較から分かるように、本発明の偏光板は、従来の保護フィルムを用いた偏光板と比べて、105℃の雰囲気下に24時間放置後においても、表示ムラが少なく、液晶プロジェクター等に用いても良好な画像が得られることが分かる。従って、本発明の偏光板を用いることにより、光学特性、機械特性、耐久性、表示ムラ等を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】吸収軸が直交するように積層された偏光板
【符号の説明】
【0082】
A,B,C,D,E:表示ムラ輝度の測定位置
a:2枚の上側の偏光板の吸収軸
b:2枚の下側の偏光板の吸収軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護フィルムが、
(i) 一般式(1)
[RSiO3/2(1)
(但し、Rは(メタ)アクリロイル基を有する有機官能基であり、nは8、10又は12である)で表され、
構造単位中に篭型構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンを主たる成分とするシリコーン樹脂(A)と、
(ii) 分子中に−R−CR=CH又は−CR=CH(但し、Rはアルキレン基、アルキリデン基又は−OCO−基を示し、Rは水素又はアルキル基を示す)で表される不飽和基を少なくとも1個含み、該シリコーン樹脂(A)とラジカル共重合が可能な数平均分子量が2500以上のウレタン結合を有するオリゴマー(B)と、
(iii) 該オリゴマー(B)以外の該シリコーン樹脂(A)とラジカル共重合が可能な不飽和化合物(C)を含有し、
且つ、該シリコーン樹脂(A)、該オリゴマー(B)及び該不飽和化合物(C)を5〜80:1〜50:10〜80の重量割合で含有するシリコーン樹脂組成物の硬化物フィルムであり、
該保護フィルムと偏光素子とが、ジアリルアミン系重合物を含む接着剤で接着されていることを特徴とする偏光板。
【請求項2】
保護フィルムが、
(i)(A)成分が、篭型構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンをシリコーン樹脂(A)の全量に対して70重量%以上含有するシリコーン樹脂、
(ii) (B)成分が、数平均分子量が2500〜10000であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、
(iii)(C)成分が下記一般式(2)

(式中、Zは(2a)又は(2b)で表される何れかの基を示し、R’は水素原子又はメチル基を示す。)
で表される脂環式ジ(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含む(メタ)アクリレート化合物、
であり、シリコーン樹脂組成物全量に対して、(A)成分のシリコーン樹脂を15〜60重量%、(B)成分のウレタンアクリレートオリゴマーを1〜20重量%、及び(C)成分の(メタ)アクリレート化合物を30〜80重量%、
で含み、更に、重合開始剤及びその他の任意の添加剤を残部含むシリコーン樹脂組成物の硬化物フィルムである請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
ジアリルアミン系重合物が、ジアリルアミン系化合物の単独重合物又はジアリルアミン系化合物の共重合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項4】
ジアリルアミン系重合物がエピハロヒドリン変性重合体であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項5】
保護フィルムの偏光素子側の接着面がコロナ処理またはプラズマ処理されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項6】
接着剤が、アミン系シランカップリング剤を含有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項7】
偏光素子が二色性色素を含有するポリビニルアルコール系樹脂フィルムよりなる請求項1ないし6のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の偏光板を有することを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−96848(P2010−96848A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265498(P2008−265498)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【出願人】(594190998)株式会社ポラテクノ (30)
【Fターム(参考)】