シリンジ濾過作業用補助具
【課題】先端にフィルタを取り付けたシリンジを用いて液体の濾過を行う際に、シリンジとフィルタとの接続部が損傷するのを防止する。
【解決手段】シリンジ濾過作業用補助具10は、液体中に混入している異物を、先端に少なくとも1個のフィルタが取り付けられたシリンジ21を用いて濾過する際に用いられ、支持部材11と、支持部材11に設けられたフランジ下面規制部材12及び下側規制部材14とを備えている。フランジ下面規制部材12は、フィルタ22,23が取り付けられたシリンジ21のフランジ21aの下面と係合してその移動を規制するとともに、シリンジ21の一部が収容される収容溝12aを有する。下側規制部材14は、シリンジ21に取り付けられたフィルタ22の下面と係合してその移動を規制するとともに、フィルタ22の出口ノズル22aの一部が収容される収容溝14aを有する。
【解決手段】シリンジ濾過作業用補助具10は、液体中に混入している異物を、先端に少なくとも1個のフィルタが取り付けられたシリンジ21を用いて濾過する際に用いられ、支持部材11と、支持部材11に設けられたフランジ下面規制部材12及び下側規制部材14とを備えている。フランジ下面規制部材12は、フィルタ22,23が取り付けられたシリンジ21のフランジ21aの下面と係合してその移動を規制するとともに、シリンジ21の一部が収容される収容溝12aを有する。下側規制部材14は、シリンジ21に取り付けられたフィルタ22の下面と係合してその移動を規制するとともに、フィルタ22の出口ノズル22aの一部が収容される収容溝14aを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ濾過作業用補助具に係り、詳しくは試液等の液体中に混入している異物を、先端にフィルタが取り付けられたシリンジを用いて濾過する際に用いるシリンジ濾過作業用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
各種化学分析の前処理として、試液等の液体中に混入している異物を除去するため、フィルタを通した後にそれらの液体を用いることが行われる。特に少量の試液を扱う場合、市販のシリンジに試液を吸入し、シリンジの先端に市販のフィルタを取り付け、シリンジ内に挿入されるプランジャによりに試液を押し出す方法が用いられる。
【0003】
多数の試液を扱う場合、この作業を繰り返さなければならず、手数を要すると共に多くの力を必要とする肉体労働とならざるを得ない。さらに、この作業中の加圧によりフィルタが外れる場合もあり、その際には試液のロスに繋がる。
【0004】
従来、図11に示すように、フレーム50内にシリンジ51、フィルタ52及び濾液受け容器53を複数個配置し、プランジャ54の上部を手動ねじ機構を有する押出し器55により加圧濾過する装置が提案されている(特許文献1参照)。フレーム50は、シリンジ51及び濾液受け容器53が挿入される開口を有する保持棚56,57と、フィルタ52を支持するフィルタ支持棚58とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−160203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の装置では、フィルタ52が連結されたシリンジ51は、フィルタ52がフィルタ支持棚58上に載置され、シリンジ51が保持棚56の開口に挿入された状態でプランジャ54がシリンジ51内に押し込まれることにより、試液がフィルタ52を通過して濾過される。その際に、フィルタ52に対してシリンジ51が真っ直ぐになるよう、プランジャ54を押し込めば問題はないが、フィルタ52に対してシリンジ51が傾いた状態でプランジャ54を押し込むとシリンジ51とフィルタ52との接続部に掛かる応力により、接続部が損傷する虞がある。
【0007】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、先端にフィルタを取り付けたシリンジを用いて液体の濾過を行う際に、シリンジとフィルタとの接続部が損傷するのを防止することができるシリンジ濾過作業用補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、液体中に混入している異物を、先端に少なくとも1個のフィルタが取り付けられたシリンジを用いて濾過する際に用いるシリンジ濾過作業用補助具である。そして、支持部材と、前記支持部材に設けられ、前記フィルタが取り付けられたシリンジのフランジの下面と係合してその移動を規制するとともに、前記シリンジの一部が収容される収容溝を有するフランジ下面規制部材と、前記支持部材に設けられ、前記シリンジに取り付けられた前記フィルタの下面と係合してその移動を規制するとともに、前記フィルタの出口ノズルの一部が収容される収容溝を有する下側規制部材とを備えている。
【0009】
ここで、「シリンジのフランジの下面」とは、フランジのプランジャ挿入側と反対側の面を意味する。また、「フィルタの下面」とは、シリンジに取り付けられたフィルタが1個の場合はそのフィルタのシリンジに対応する側の面と反対側の面を意味し、フィルタが複数個の場合はシリンジから最も離れたフィルタのシリンジに対応する側の面と反対側の面を意味する。
【0010】
シリンジ濾過作業用補助具を使用する際は、先端に少なくとも1個のフィルタが取り付けられ、濾過すべき液体を収容した状態のシリンジは、少なくともシリンジが加圧されるとフランジの下面がフランジ下面規制部材に係合し、かつフィルタの下面が下側規制部材に係合した状態で支持部材に支持される。その状態でプランジャがシリンジ内に押し込まれると、シリンジ内が加圧され、液体は不純物がフィルタで濾過されて濾液が容器に回収される。その際に、フィルタに対してシリンジが傾く方向に力が加わると、接続部が損傷する虞がある。しかし、この発明では、フィルタに対してシリンジが傾く方向に力が加わった場合でも、フランジの下面がフランジ下面規制部材に係合し、フィルタの下面が下側規制部材に係合した状態となるため、シリンジが傾いた状態でフィルタに押し込まれることが防止され、その結果、シリンジとフィルタとの接続部が損傷するのを防止することができる。また、フランジ下面規制部材がシリンジに加わる下向きの力の一部を担うため、シリンジとフィルタとの接続部に加わる応力を抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記支持部材には、前記フランジの上面と係合してその移動を規制するとともに、前記シリンジに挿入されているプランジャの一部が収容される収容溝を有するフランジ上面規制部材が設けられている。ここで、「シリンジのフランジの上面」とは、フランジのプランジャ挿入側の面を意味する。
【0012】
プランジャがシリンジ内に押し込まれることにより、液体がフィルタを通過して濾過される際に、フィルタにおける抵抗が大きくなり、シリンジ内及びフィルタ内の圧力が上昇する。フィルタ内の圧力が上昇すると、フィルタに対してはフィルタを押し下げる力が作用し、シリンジに対してはシリンジを押し上げる力が作用する。そのため、圧力上昇が大きいと、シリンジがフィルタから外れる虞がある。しかし、この発明では、フィルタは下面が下側規制部材に係合して下方への移動が規制され、シリンジはフランジの上面がフランジ上面規制部材に係合して上方への移動が規制される。したがって、フィルタ内の圧力が上昇しても、シリンジがフィルタから外れることを防止することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記規制部材の少なくとも一つは、位置調整可能に前記支持部材に固定されている。シリンジやシリンジに取り付けられるフィルタは1種類ではなく、シリンジやフィルタによっては長さが異なる。そのため、フランジ下面規制部材、下側規制部材及びフランジ上面規制部材がいずれも支持部材に位置調整不能に固定された構成では、長さの異なるシリンジやフィルタに対応して支持部材を準備する必要がある。しかし、この発明では、長さの異なるシリンジやフィルタを使用する場合、あるいは、複数のフィルタの組み合わせを変更する場合等には、フランジ下面規制部材、下側規制部材及びフランジ上面規制部材の少なくとも一つの支持部材に対する固定位置を調整することにより、シリンジやフィルタの種類の変更に対応することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記フランジ下面規制部材、前記下側規制部材及び前記フランジ上面規制部材のうちの位置調整可能な規制部材は、前記支持部材にその長手方向に沿って延びるように形成されたスリットを貫通するねじを介して前記支持部材に固定されている。この発明では、位置調整可能な規制部材の位置調整は、規制部材を支持部材に固定するためのねじを弛めた状態でスリットに沿って所定位置まで規制部材を移動させた後、その位置でねじを締め付けることにより、無段階で固定位置の調整を簡単に行うことができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記支持部材は、前記シリンジを支持する状態で自立可能な形状に形成されている。したがって、この発明では、濾過作業を行なう際、作業者はシリンジや支持部材等を支持せずに、プランジャをシリンジに押し込む作業をするだけで、液体中に混入している異物を濾過することができ、支持部材が自立可能でない場合に比べて濾過作業が簡単になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、先端にフィルタを取り付けたシリンジを用いて液体の濾過を行う際に、シリンジとフィルタとの接続部が損傷するのを防止することができるシリンジ濾過作業用補助具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態を示し、(a)はシリンジ濾過作業用補助具の斜視図、(b)はシリンジ濾過作業用補助具の背面図、(c)はシリンジ濾過作業用補助具にシリンジを取り付けた状態の側面図、(d)は同じく正面図。
【図2】(a)は作用を説明する正面図、(b)はシリンジの下側への移動が規制されない構成の作用を説明する斜視図。
【図3】(a)は第2の実施形態のシリンジ濾過作業用補助具の部分斜視図、(b)は部分側面図。
【図4】(a)は別の実施形態のシリンジ濾過作業用補助具の部分斜視図、(b)は部分側面図。
【図5】(a)は別の実施形態のシリンジ濾過作業用補助具の部分斜視図、(b)は部分側面図。
【図6】(a)は別の実施形態のシリンジ濾過作業用補助具の部分斜視図、(b)は部分側面図。
【図7】(a)は別の実施形態のシリンジ濾過作業用補助具の部分斜視図、(b)は部分側面図。
【図8】(a),(b),(c),(d)はそれぞれ別の実施形態のシリンジ濾過作業用補助具の部分斜視図。
【図9】(a)はシリンジ濾過作業用補助具の別の実施形態の側面図、(b)は別の実施形態の収容溝の形状を示す平面図。
【図10】(a),(b)は別の実施形態のシリンジ濾過作業用補助具の側面図。
【図11】従来技術の加圧濾過装置の使用状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、シリンジ濾過作業用補助具10は、支持部材11と、支持部材11にそれぞれ設けられたフランジ下面規制部材12と、フランジ上面規制部材13と、下側規制部材14と、接続部側面規制部材15とを備えている。図1(b)に示すように、支持部材11にはその長手方向に沿って延びるようにスリット16が一対形成されている。フランジ下面規制部材12、フランジ上面規制部材13、下側規制部材14及び接続部側面規制部材15は、位置調整可能に支持部材11に固定されている。
【0019】
各規制部材12,14,15は、側面L字状に形成されるとともに、支持部材11に固定される部分が下側に延びる状態で支持部材11に固定されている。各規制部材12,14,15には支持部材11に形成された各一対のスリット16と対向するように一対のねじ孔が形成され、スリット16を貫通してねじ孔に螺合するねじ17により支持部材11に締め付け固定されている。フランジ上面規制部材13はフランジ下面規制部材12と一体に形成されている。フランジ上面規制部材13は、基端が下方へ屈曲形成されるとともに屈曲部の端面がフランジ下面規制部材12の上面に固着され、フランジ下面規制部材12との間にシリンジ21のフランジ21aが嵌合可能な間隔を有するように形成されている。
【0020】
支持部材11は、シリンジ濾過作業用補助具10が図1(c),(d)に示すように、先端に2個のフィルタ22,23が取り付けられたシリンジ21を支持する状態で自立可能となるように、下部11aが各規制部材12,13,14,15と平行に延びる状態に形成されている。シリンジ21には少なくとも1個のフィルタが取り付けられていればよいが、この実施形態では2個のフィルタ22,23が取り付けられており、フィルタ22は固形物濾過用フィルタであり、フィルタ23は脱脂用フィルタである。
【0021】
フランジ下面規制部材12は、フィルタ22,23が取り付けられたシリンジ21のフランジ21aの下面と係合してその移動を規制するとともに、シリンジ21の一部が収容される収容溝12aを有する。フランジ上面規制部材13は、シリンジ21のフランジ21aの上面と係合してその移動を規制するとともに、シリンジ21に挿入されているプランジャ24の一部が収容される収容溝13aを有する。下側規制部材14は、シリンジ21に取り付けられたフィルタ22の下面と係合してその移動を規制するとともに、フィルタ22の出口ノズル22aの一部が収容される収容溝14aを有する。接続部側面規制部材15は、シリンジ21に取り付けられたフィルタ23のシリンジ21との接続部23aの側面と係合してその横方向への移動を規制するとともに、接続部23aの一部が収容される収容溝15aを有する。
【0022】
各収容溝12a,13a,14a,15aは、支持部材11の規制部材取り付け面11bと直交する方向に延びるように形成されている。シリンジ21のフランジ21aは外形が楕円状に形成され、フランジ下面規制部材12及びフランジ上面規制部材13はフランジ21aの全体を支承可能に、収容溝12a,13aの長さが前記楕円の短軸の長さより長く形成されている。収容溝12a,13aの幅はそれぞれシリンジ21の外径、プランジャ24の外径より若干大きく形成されている。収容溝14aの幅はフィルタ22の出口ノズル22aの外径より若干大きく形成されている。収容溝15aの幅は接続部23aの外径より若干大きく形成されている。また、シリンジ21の射出部21bはシリンジ21の中心位置ではなく偏心した位置に形成されている。
【0023】
規制部材12,13,14,15及び支持部材11の材質としては、強度面でステンレスなどの金属製が良いと考えられるが、金属製に限らず、プラスチック製や木製、セラミック製などでも良い。
【0024】
次に前記のように構成されたシリンジ濾過作業用補助具10の作用を説明する。
シリンジ濾過作業用補助具10を使用する際は、図1(c),(d)に示すように、先端に2個のフィルタ22,23が取り付けられたシリンジ21に、濾過すべき液体を収容した状態で、そのシリンジ21をフランジ21aの下面がフランジ下面規制部材12に係合し、フランジ21aの上面がフランジ上面規制部材13に係合し、フィルタ22の下面が下側規制部材14に係合した状態で支持部材11に支持させる。このとき、フィルタ23は、その接続部23aの一部が接続部側面規制部材15の収容溝15aに収容された状態になる。また、出口ノズル22aの下方に濾液を回収する容器25が配置される。この状態で作業者の手作業によりプランジャ24がシリンジ21内に押し込まれると、液体がフィルタ22,23内に押し込まれ、液体は脂肪分がフィルタ23で、固形物がフィルタ22で濾過されて濾液が容器25に回収される。
【0025】
プランジャ24をシリンジ21内に押し込む際、フィルタ23に対してシリンジ21が傾いた状態でプランジャ24を押し込むと、シリンジ21とフィルタ23との接続部23aが損傷する虞がある。特に使い捨てのシリンジ21の場合はシリンジ21がプラスチック製のため、接続部23aがより損傷し易い。また、この実施形態のようにシリンジ21の射出部21bが偏心した位置に形成されている場合は、中心位置に形成された場合に比べてフィルタ23に対してシリンジ21が傾いた状態となり易く、プランジャ24を押し込む際に接続部23aが損傷し易い。
【0026】
しかし、図2(a)に示すように、フランジ21aの下面がフランジ下面規制部材12に係合し、フィルタ22の下面が下側規制部材14に係合した状態のため、フィルタ23に対してシリンジ21が傾いた状態でプランジャ24を押し込むことが防止される。その結果、シリンジ21が傾いた状態でシリンジ21とフィルタ23との接続部23aに過大な応力が掛かることが回避され、接続部23aが損傷するのを防止することができる。
【0027】
また、プランジャ24がシリンジ21内に押し込まれると、液体がフィルタ23,22を順に通過して濾過される際に、フィルタ22,23における抵抗が大きくなり、シリンジ21内及びフィルタ22,23内の圧力が上昇する。シリンジ21内の圧力が上昇すると、フィルタ22,23に対してはフィルタ22,23を押し下げる力が作用し、フィルタ22,23内の圧力が上昇するとシリンジ21に対してはシリンジ21を押し上げる力が作用する。このとき、図2(a)に示すように、フィルタ22は下面が下側規制部材14に係合して下方への移動が規制され、シリンジ21はフランジ21aの上面がフランジ上面規制部材13に係合して上方への移動が規制される。したがって、シリンジ21内及びフィルタ22,23内の圧力が上昇しても、シリンジ21がフィルタ23から外れることは防止される。
【0028】
一方、特許文献1の場合は、図2(b)に示すように、シリンジ51の上側への移動を規制する部材が存在しないため、フィルタ52内の圧力上昇が大きくなると、シリンジ51が上側へ移動して、シリンジ51がフィルタ52から外れる場合がある。
【0029】
シリンジ21をシリンジ濾過作業用補助具10に取り付ける際は、プランジャ24が収容溝13a、シリンジ21のフランジ21a近傍が収容溝12a、出口ノズル22aが収容溝14a、接続部23aが収容溝15aの各開口と対応する位置から、シリンジ21を支持部材11側に向かって移動させることにより、所定位置に配置される。そのため、特許文献1のようにシリンジを濾過装置の上方から保持棚の開口に挿入する構成と異なり、フィルタ22,23の外径がシリンジ21の外径より大きくてもシリンジ濾過作業用補助具10に取り付けることができる。
【0030】
シリンジ21やシリンジ21に取り付けられるフィルタ22,23はそれぞれ1種類ではなく、シリンジ21やフィルタ22,23によっては長さが異なるものがある。そのため、フランジ下面規制部材12、フランジ上面規制部材13及び下側規制部材14がいずれも支持部材11に位置調整不能に固定された構成では、長さの異なるシリンジ21やフィルタ22,23に対応して支持部材11を準備する必要がある。しかし、この実施形態では、長さの異なるシリンジ21やフィルタ22,23を使用する場合、あるいは、複数のフィルタ22,23の組み合わせを変更する場合等には、フランジ下面規制部材12、フランジ上面規制部材13及び下側規制部材14の少なくとも一つの支持部材11に対する固定位置を調整することにより、対応することができる。規制部材の位置調整は、規制部材を支持部材11に固定するためのねじ17を弛めた状態でスリット16に沿って所定位置まで規制部材を移動させた後、その位置でねじ17を締め付けることにより、無段階で固定位置の調整を簡単に行うことができる。
【0031】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)シリンジ濾過作業用補助具10は、液体中に混入している異物を、先端に少なくとも1個のフィルタが取り付けられたシリンジ21を用いて濾過する際に用いられ、支持部材11と、支持部材11に設けられたフランジ下面規制部材12と、下側規制部材14とを備えている。フランジ下面規制部材12は、シリンジ21のフランジ21aの下面と係合してその移動を規制するとともに、シリンジ21の一部が収容される収容溝12aを有する。下側規制部材14は、シリンジ21に取り付けられたフィルタ22の下面と係合してその移動を規制するとともに、フィルタ22の出口ノズル22aの一部が収容される収容溝14aを有する。したがって、先端にフィルタ22,23を取り付けたシリンジ21を用いて液体の濾過を行う際に、フィルタ23に対してシリンジ21が傾いた状態でプランジャ24を押し込むことが防止され、その結果、シリンジ21とフィルタ23との接続部が損傷するのを防止することができる。また、フランジ下面規制部材12がシリンジ21に加わる下向きの力の一部を担うため、シリンジ21とフィルタ23との接続部に加わる応力を抑制することができる。また、特許文献1の濾過装置と異なり、フィルタ22,23の外径がシリンジ21の外径より大きくても、フィルタ22,23が取り付けられたシリンジ21をシリンジ濾過作業用補助具10に支障なく取り付けることができる。
【0032】
(2)支持部材11には、フランジ21aの上面と係合してその移動を規制するとともに、シリンジ21に挿入されているプランジャ24の一部が収容される収容溝13aを有するフランジ上面規制部材13が設けられている。したがって、先端にフィルタ22,23を取り付けたシリンジ21を用いて液体の濾過を行う際に、シリンジ21がフィルタ23から外れることを防止することができる。
【0033】
(3)フランジ下面規制部材12、フランジ上面規制部材13及び下側規制部材14の少なくとも一つは、位置調整可能に支持部材11に固定されている。したがって、長さの異なるシリンジ21やフィルタ22,23を使用する場合、あるいは、複数のフィルタ22,23の組み合わせを変更する場合等には、フランジ下面規制部材12、フランジ上面規制部材13及び下側規制部材14の少なくとも一つの支持部材11に対する固定位置を調整することにより、対応することができる。
【0034】
(4)各規制部材12〜15は、支持部材11にその長手方向に沿って延びるように形成されたスリット16を貫通するねじ17を介して支持部材11に固定されている。したがって、各規制部材12〜15は、無段階で固定位置の調整を簡単に行うことができる。
【0035】
(5)支持部材11は、シリンジ21を支持する状態で自立可能な形状に形成されている。したがって、濾過作業を行なう際、作業者はシリンジ21や支持部材11等を支持せずに、プランジャ24をシリンジ21に押し込む作業をするだけで、液体中に混入している異物を濾過することができ、支持部材11が自立可能でない場合に比べて濾過作業が簡単になる。
【0036】
(6)フランジ上面規制部材13はフランジ下面規制部材12と一体に形成されている。フランジ下面規制部材12とフランジ上面規制部材13との間に配置されるフランジ21aの厚さは、一般にシリンジ21の長さが変わっても同じため、フランジ上面規制部材13をフランジ下面規制部材12と独立して移動することが必要な場合は少なく、別体にする場合に比べて、支持部材11への取り付け作業や位置調整の作業が簡単になる。
【0037】
(7)支持部材11には、シリンジ21に取り付けられたフィルタ23のシリンジ21との接続部23aの側面と係合してその横方向への移動を規制する接続部側面規制部材15が設けられている。液体の濾過時に作業者がプランジャ24をシリンジ21内に押し込む際、プランジャ24を真っ直ぐ押し込まずに、シリンジ21に斜めの力が作用するように押し込む場合もある。その際、接続部側面規制部材15がフィルタ23のシリンジ21との接続部23aの側面に係合することにより、接続部23aが横方向へ移動するのが規制され接続部23aに無理な力が作用するのが抑制される。
【0038】
(8)支持部材11は下部11aが規制部材12,13,14と平行に延びる状態に形成されている。したがって、支持部材11がシリンジ21を支持する状態で自立可能にする構成が簡単になる。
【0039】
(9)各規制部材12,14,15は側面L字状に形成されるとともに、ねじ17により支持部材11に固定されている。したがって、各規制部材12,14,15を平板で形成して、その基端において接着剤や溶接で支持部材11に固定する場合に比べて固定が簡単で強度が高くなる。
【0040】
(10)各規制部材12〜15の収容溝12a〜15aは、支持部材11の規制部材取り付け面11bと直交する方向に延びるように形成されている。したがって、シリンジ21をシリンジ濾過作業用補助具10の所定位置に配置する際、シリンジ21を支持部材11の正面から真っ直ぐに移動させることにより簡単に所定位置に配置することができる。
【0041】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施形態を図3にしたがって説明する。この実施形態では、規制部材の支持部材11に対する固定方法が前記実施形態と大きく異なっている。第1の実施形態と同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略する。なお、各規制部材の固定方法は同じため、一つの規制部材18で代表して説明する。
【0042】
図3(a),(b)に示すように、支持部材11は半円柱状に形成されている。規制部材18は側面L字状に形成されるとともに、支持部材11に対してUボルト19及びナット20を介して固定されている。Uボルト19は、支持部材11の円弧面とほぼ同じ曲率の円弧部と、円弧部の両端から真っ直ぐに延びる直線部とを有し、直線部に雄ねじ19aが形成されている。規制部材18には支持部材11に対する取り付け面に両雄ねじ19aと同じ間隔で一対の孔が形成されている。そして、図3(b)に示すように、規制部材18は、両孔を貫通した雄ねじ19aに螺合したナット20が締め付けられることにより、支持部材11の所望の位置に固定されるようになっている。収容溝18aは、支持部材11の規制部材取り付け面11bと直交する方向に延びるように形成されている。
【0043】
このシリンジ濾過作業用補助具10で濾過作業を行う場合、作業者は支持部材11を支持した状態で、プランジャ24をシリンジ21に押し込む作業を行う。
したがって、この第2の実施形態によれば、第1の実施形態の(1)〜(3),(6),(7),(9),(10)と同様な効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0044】
(11)規制部材18は側面L字状に形成されるとともに、支持部材11に対してUボルト19及びナット20を介して固定されている。したがって、支持部材11にスリットを形成せずに、無段階で規制部材18の固定位置の調整を簡単に行うことができる。
【0045】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 規制部材の固定位置を無段階で連続的に調整可能な構成に限らず、段階的に調整可能な構成としてもよい。例えば、図4(a),(b)に示すように、平板状の支持部材11に複数対の孔31を使用予定のシリンジ21やフィルタ22,23の長さに対応した間隔で形成する。規制部材18には支持部材11の規制部材取り付け面11bと対向する面にフック32を形成する。孔31は、幅がフック32の幅とほぼ同じで高さはフック32を支障なく挿入可能に、フック32の厚さより大きくかつ、挿入したフック32が支持部材11に引っ掛かる程度に低く形成されている。そして、孔31に挿入されたフック32と規制部材18の背面とで支持部材11を挟持することにより規制部材18が支持部材11に固定される。
【0046】
○ 規制部材の固定位置を段階的に調整可能な構成として、第1の実施形態の支持部材11に、スリット16に代えてねじ17が挿通される孔を、位置調整を行う各規制部材用に複数対ずつ設けてもよい。
【0047】
○ 規制部材の固定位置を無段階で連続的に調整可能な構成は、第1及び第2の実施形態の構成に限らない。例えば、図5(a),(b)に示すように、支持部材11に一対のスリット16を形成し、規制部材18の取り付け面にねじ33を突設し、スリット16に挿通されたねじ33に螺合されるナット20により規制部材18を締め付け固定してもよい。また、図6(a),(b)に示すように、第2の実施形態における支持部材11を四角柱状に形成し、Uボルト19に代えて平面コ字状に形成されるとともに両端部に雄ねじが形成されたボルト34を使用してもよい。
【0048】
○ 規制部材18は、側面L字状に限らず、平板状であってもよい。例えば、図7(a),(b)に示すように、支持部材11を円柱状のボルトで構成し、平板状の規制部材18を2個のナット35により挟持して固定するようにしたり、図8(a)に示すように、支持部材11を円柱状で構成し、平板状の規制部材18を2個のホースバンド36により挟持して固定するようにしたりしてもよい。これらの構成のシリンジ濾過作業用補助具10は、支持部材11を支持台に固定しない状態では自立不能なため、作業者は支持部材11を持って濾過作業を行う。
【0049】
○ 規制部材18の位置調整を行う構成として、規制部材18の支持部材11に対する固定位置を変更する構成に代えて、支持部材11を伸縮可能にして規制部材18を支持部材11に固着した構成としてもよい。例えば、図8(b)に示すように、伸縮調整部37を備えた伸縮棒で支持部材11を構成し、平板状の規制部材18を支持部材11に溶接等で固着する。伸縮調整部37の数は位置調整が必要な規制部材18に対応して設定する。伸縮調整部37を回転することにより、支持部材11の長さが変更され、規制部材18の位置調整が行なわれる。
【0050】
○ 図8(c)に示すように、規制部材18を円筒部18bの上端に平板状の規制部18cが形成された構成とし、支持部材11を規制部材18が遊挿される円柱又は円筒で構成する。そして、円錐台筒状に形成されるとともに、内径が支持部材11の外径に等しく、先端外径が円筒部18bの上端内径より小さく、基端外径が円筒部18bの下端外径より大きなストッパ38を使用して、ストッパ38を円筒部18bの下部に嵌合することにより規制部材18を支持部材11の所望の位置に固定してもよい。また、図8(d)に示すように、円筒部18bに形成されたねじ孔に螺合するねじ39により、規制部材18を支持部材11の所望の位置に固定するようにしてもよい。
【0051】
○ フィルタ22及びフィルタ23は、フィルタ22が上側に、フィルタ23が下側に配置されるようにシリンジ21に取り付けられてもよい。この場合、フィルタ23の下面が下側規制部材14に係合し、フィルタ22の接続部が接続部側面規制部材15と係合する。
【0052】
○ シリンジ21に取り付けられるフィルタは少なくとも1個であればよく、2個に限らず、1個としたり、3個以上としたりしてもよい。例えば、1個の固形物濾過用のフィルタ22あるいは脱脂用のフィルタ23のみをシリンジ21に取り付けてもよい。また、他の不純物濾過用のフィルタと固形物濾過用のフィルタ22あるいは脱脂用のフィルタ23とを組み合わせてもよい。
【0053】
○ 作業者が手で保持した状態で使用するシリンジ濾過作業用補助具10の構成としては、例えば、図9(a)に示すように、平板状に形成された支持部材11に各規制部材12,13,14,15が固定された構成としてもよい。
【0054】
○ シリンジ濾過作業用補助具10がプランジャ24をシリンジ21に押し込む際にも自立状態に維持される構成は、支持部材11の下部11aが各規制部材12,13,14,15と平行に延びる状態に形成された構成に限らない。例えば、図10(a)に示すように、支持部材11の下部11aを前側に屈曲した後、後側に屈曲した形状にしたり、図10(b)に示すように、支持部材11の下部11aを後側に屈曲形成するとともに、下部11aを支持台40に固定した構成としたりしてもよい。また、支持部材11の下部11aを屈曲させずに支持台40に固着した構成にしてもよい。
【0055】
○ 各規制部材12,13,14,15の収容溝12a,13a,14a,15aは、支持部材11と直交する方向に延びる形状に限らない。例えば、図9(b)にフランジ上面規制部材13を代表例として示すように、収容溝12a,13a,14a,15aが円弧状に形成されて、シリンジ21がシリンジ濾過作業用補助具10に対してその側方から取り付けられる構成としてもよい。また、収容溝12a,13a,14a,15aが斜めやL字状に延びるよう形成された構成としてもよい。
【0056】
○ フランジ下面規制部材12及び下側規制部材14は必須であるが、フランジ上面規制部材13及び接続部側面規制部材15は省略してもよい。
○ フランジ上面規制部材13を設けた場合は、シリンジ21内からプランジャ24を引き出す際の吸引力により、液体を、フィルタ22等を通過させてシリンジ21内に吸入することにより液体中の不純物を濾過する方法に適用してもよい。
【0057】
○ シリンジ21は、フランジ21aの外形を円形状にしたり、射出部21bを偏心位置ではなく中心位置に形成したりしてもよい。
○ シリンジ濾過作業用補助具10は1本のシリンジ21を支持する構成に限らず、複数本のシリンジ21を支持して複数本同時にあるいは1本ずつシリンジ21内の液体をプランジャ24でフィルタ22,23を経て容器25へ押し出すようにしてもよい。
【0058】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項5に記載の発明において、前記支持部材は下部が前記規制部材と平行に延びる状態に形成されている。
【0059】
(2)請求項1〜請求項5及び前記技術的思想(1)のいずれか1項に記載の発明において、前記規制部材は側面L字状に形成されるとともに、前記支持部材に固定される部分がねじにより支持部材に固定されている。
【符号の説明】
【0060】
10…シリンジ濾過作業用補助具、11…支持部材、12…フランジ下面規制部材、13…フランジ上面規制部材、14…下側規制部材、18…規制部材、12a,13a,14a,15a,18a…収容溝、16…スリット、17,33,39…ねじ、21…シリンジ、21a…フランジ、22,23…フィルタ、22a…出口ノズル、24…プランジャ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ濾過作業用補助具に係り、詳しくは試液等の液体中に混入している異物を、先端にフィルタが取り付けられたシリンジを用いて濾過する際に用いるシリンジ濾過作業用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
各種化学分析の前処理として、試液等の液体中に混入している異物を除去するため、フィルタを通した後にそれらの液体を用いることが行われる。特に少量の試液を扱う場合、市販のシリンジに試液を吸入し、シリンジの先端に市販のフィルタを取り付け、シリンジ内に挿入されるプランジャによりに試液を押し出す方法が用いられる。
【0003】
多数の試液を扱う場合、この作業を繰り返さなければならず、手数を要すると共に多くの力を必要とする肉体労働とならざるを得ない。さらに、この作業中の加圧によりフィルタが外れる場合もあり、その際には試液のロスに繋がる。
【0004】
従来、図11に示すように、フレーム50内にシリンジ51、フィルタ52及び濾液受け容器53を複数個配置し、プランジャ54の上部を手動ねじ機構を有する押出し器55により加圧濾過する装置が提案されている(特許文献1参照)。フレーム50は、シリンジ51及び濾液受け容器53が挿入される開口を有する保持棚56,57と、フィルタ52を支持するフィルタ支持棚58とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−160203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の装置では、フィルタ52が連結されたシリンジ51は、フィルタ52がフィルタ支持棚58上に載置され、シリンジ51が保持棚56の開口に挿入された状態でプランジャ54がシリンジ51内に押し込まれることにより、試液がフィルタ52を通過して濾過される。その際に、フィルタ52に対してシリンジ51が真っ直ぐになるよう、プランジャ54を押し込めば問題はないが、フィルタ52に対してシリンジ51が傾いた状態でプランジャ54を押し込むとシリンジ51とフィルタ52との接続部に掛かる応力により、接続部が損傷する虞がある。
【0007】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、先端にフィルタを取り付けたシリンジを用いて液体の濾過を行う際に、シリンジとフィルタとの接続部が損傷するのを防止することができるシリンジ濾過作業用補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、液体中に混入している異物を、先端に少なくとも1個のフィルタが取り付けられたシリンジを用いて濾過する際に用いるシリンジ濾過作業用補助具である。そして、支持部材と、前記支持部材に設けられ、前記フィルタが取り付けられたシリンジのフランジの下面と係合してその移動を規制するとともに、前記シリンジの一部が収容される収容溝を有するフランジ下面規制部材と、前記支持部材に設けられ、前記シリンジに取り付けられた前記フィルタの下面と係合してその移動を規制するとともに、前記フィルタの出口ノズルの一部が収容される収容溝を有する下側規制部材とを備えている。
【0009】
ここで、「シリンジのフランジの下面」とは、フランジのプランジャ挿入側と反対側の面を意味する。また、「フィルタの下面」とは、シリンジに取り付けられたフィルタが1個の場合はそのフィルタのシリンジに対応する側の面と反対側の面を意味し、フィルタが複数個の場合はシリンジから最も離れたフィルタのシリンジに対応する側の面と反対側の面を意味する。
【0010】
シリンジ濾過作業用補助具を使用する際は、先端に少なくとも1個のフィルタが取り付けられ、濾過すべき液体を収容した状態のシリンジは、少なくともシリンジが加圧されるとフランジの下面がフランジ下面規制部材に係合し、かつフィルタの下面が下側規制部材に係合した状態で支持部材に支持される。その状態でプランジャがシリンジ内に押し込まれると、シリンジ内が加圧され、液体は不純物がフィルタで濾過されて濾液が容器に回収される。その際に、フィルタに対してシリンジが傾く方向に力が加わると、接続部が損傷する虞がある。しかし、この発明では、フィルタに対してシリンジが傾く方向に力が加わった場合でも、フランジの下面がフランジ下面規制部材に係合し、フィルタの下面が下側規制部材に係合した状態となるため、シリンジが傾いた状態でフィルタに押し込まれることが防止され、その結果、シリンジとフィルタとの接続部が損傷するのを防止することができる。また、フランジ下面規制部材がシリンジに加わる下向きの力の一部を担うため、シリンジとフィルタとの接続部に加わる応力を抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記支持部材には、前記フランジの上面と係合してその移動を規制するとともに、前記シリンジに挿入されているプランジャの一部が収容される収容溝を有するフランジ上面規制部材が設けられている。ここで、「シリンジのフランジの上面」とは、フランジのプランジャ挿入側の面を意味する。
【0012】
プランジャがシリンジ内に押し込まれることにより、液体がフィルタを通過して濾過される際に、フィルタにおける抵抗が大きくなり、シリンジ内及びフィルタ内の圧力が上昇する。フィルタ内の圧力が上昇すると、フィルタに対してはフィルタを押し下げる力が作用し、シリンジに対してはシリンジを押し上げる力が作用する。そのため、圧力上昇が大きいと、シリンジがフィルタから外れる虞がある。しかし、この発明では、フィルタは下面が下側規制部材に係合して下方への移動が規制され、シリンジはフランジの上面がフランジ上面規制部材に係合して上方への移動が規制される。したがって、フィルタ内の圧力が上昇しても、シリンジがフィルタから外れることを防止することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記規制部材の少なくとも一つは、位置調整可能に前記支持部材に固定されている。シリンジやシリンジに取り付けられるフィルタは1種類ではなく、シリンジやフィルタによっては長さが異なる。そのため、フランジ下面規制部材、下側規制部材及びフランジ上面規制部材がいずれも支持部材に位置調整不能に固定された構成では、長さの異なるシリンジやフィルタに対応して支持部材を準備する必要がある。しかし、この発明では、長さの異なるシリンジやフィルタを使用する場合、あるいは、複数のフィルタの組み合わせを変更する場合等には、フランジ下面規制部材、下側規制部材及びフランジ上面規制部材の少なくとも一つの支持部材に対する固定位置を調整することにより、シリンジやフィルタの種類の変更に対応することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記フランジ下面規制部材、前記下側規制部材及び前記フランジ上面規制部材のうちの位置調整可能な規制部材は、前記支持部材にその長手方向に沿って延びるように形成されたスリットを貫通するねじを介して前記支持部材に固定されている。この発明では、位置調整可能な規制部材の位置調整は、規制部材を支持部材に固定するためのねじを弛めた状態でスリットに沿って所定位置まで規制部材を移動させた後、その位置でねじを締め付けることにより、無段階で固定位置の調整を簡単に行うことができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記支持部材は、前記シリンジを支持する状態で自立可能な形状に形成されている。したがって、この発明では、濾過作業を行なう際、作業者はシリンジや支持部材等を支持せずに、プランジャをシリンジに押し込む作業をするだけで、液体中に混入している異物を濾過することができ、支持部材が自立可能でない場合に比べて濾過作業が簡単になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、先端にフィルタを取り付けたシリンジを用いて液体の濾過を行う際に、シリンジとフィルタとの接続部が損傷するのを防止することができるシリンジ濾過作業用補助具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態を示し、(a)はシリンジ濾過作業用補助具の斜視図、(b)はシリンジ濾過作業用補助具の背面図、(c)はシリンジ濾過作業用補助具にシリンジを取り付けた状態の側面図、(d)は同じく正面図。
【図2】(a)は作用を説明する正面図、(b)はシリンジの下側への移動が規制されない構成の作用を説明する斜視図。
【図3】(a)は第2の実施形態のシリンジ濾過作業用補助具の部分斜視図、(b)は部分側面図。
【図4】(a)は別の実施形態のシリンジ濾過作業用補助具の部分斜視図、(b)は部分側面図。
【図5】(a)は別の実施形態のシリンジ濾過作業用補助具の部分斜視図、(b)は部分側面図。
【図6】(a)は別の実施形態のシリンジ濾過作業用補助具の部分斜視図、(b)は部分側面図。
【図7】(a)は別の実施形態のシリンジ濾過作業用補助具の部分斜視図、(b)は部分側面図。
【図8】(a),(b),(c),(d)はそれぞれ別の実施形態のシリンジ濾過作業用補助具の部分斜視図。
【図9】(a)はシリンジ濾過作業用補助具の別の実施形態の側面図、(b)は別の実施形態の収容溝の形状を示す平面図。
【図10】(a),(b)は別の実施形態のシリンジ濾過作業用補助具の側面図。
【図11】従来技術の加圧濾過装置の使用状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、シリンジ濾過作業用補助具10は、支持部材11と、支持部材11にそれぞれ設けられたフランジ下面規制部材12と、フランジ上面規制部材13と、下側規制部材14と、接続部側面規制部材15とを備えている。図1(b)に示すように、支持部材11にはその長手方向に沿って延びるようにスリット16が一対形成されている。フランジ下面規制部材12、フランジ上面規制部材13、下側規制部材14及び接続部側面規制部材15は、位置調整可能に支持部材11に固定されている。
【0019】
各規制部材12,14,15は、側面L字状に形成されるとともに、支持部材11に固定される部分が下側に延びる状態で支持部材11に固定されている。各規制部材12,14,15には支持部材11に形成された各一対のスリット16と対向するように一対のねじ孔が形成され、スリット16を貫通してねじ孔に螺合するねじ17により支持部材11に締め付け固定されている。フランジ上面規制部材13はフランジ下面規制部材12と一体に形成されている。フランジ上面規制部材13は、基端が下方へ屈曲形成されるとともに屈曲部の端面がフランジ下面規制部材12の上面に固着され、フランジ下面規制部材12との間にシリンジ21のフランジ21aが嵌合可能な間隔を有するように形成されている。
【0020】
支持部材11は、シリンジ濾過作業用補助具10が図1(c),(d)に示すように、先端に2個のフィルタ22,23が取り付けられたシリンジ21を支持する状態で自立可能となるように、下部11aが各規制部材12,13,14,15と平行に延びる状態に形成されている。シリンジ21には少なくとも1個のフィルタが取り付けられていればよいが、この実施形態では2個のフィルタ22,23が取り付けられており、フィルタ22は固形物濾過用フィルタであり、フィルタ23は脱脂用フィルタである。
【0021】
フランジ下面規制部材12は、フィルタ22,23が取り付けられたシリンジ21のフランジ21aの下面と係合してその移動を規制するとともに、シリンジ21の一部が収容される収容溝12aを有する。フランジ上面規制部材13は、シリンジ21のフランジ21aの上面と係合してその移動を規制するとともに、シリンジ21に挿入されているプランジャ24の一部が収容される収容溝13aを有する。下側規制部材14は、シリンジ21に取り付けられたフィルタ22の下面と係合してその移動を規制するとともに、フィルタ22の出口ノズル22aの一部が収容される収容溝14aを有する。接続部側面規制部材15は、シリンジ21に取り付けられたフィルタ23のシリンジ21との接続部23aの側面と係合してその横方向への移動を規制するとともに、接続部23aの一部が収容される収容溝15aを有する。
【0022】
各収容溝12a,13a,14a,15aは、支持部材11の規制部材取り付け面11bと直交する方向に延びるように形成されている。シリンジ21のフランジ21aは外形が楕円状に形成され、フランジ下面規制部材12及びフランジ上面規制部材13はフランジ21aの全体を支承可能に、収容溝12a,13aの長さが前記楕円の短軸の長さより長く形成されている。収容溝12a,13aの幅はそれぞれシリンジ21の外径、プランジャ24の外径より若干大きく形成されている。収容溝14aの幅はフィルタ22の出口ノズル22aの外径より若干大きく形成されている。収容溝15aの幅は接続部23aの外径より若干大きく形成されている。また、シリンジ21の射出部21bはシリンジ21の中心位置ではなく偏心した位置に形成されている。
【0023】
規制部材12,13,14,15及び支持部材11の材質としては、強度面でステンレスなどの金属製が良いと考えられるが、金属製に限らず、プラスチック製や木製、セラミック製などでも良い。
【0024】
次に前記のように構成されたシリンジ濾過作業用補助具10の作用を説明する。
シリンジ濾過作業用補助具10を使用する際は、図1(c),(d)に示すように、先端に2個のフィルタ22,23が取り付けられたシリンジ21に、濾過すべき液体を収容した状態で、そのシリンジ21をフランジ21aの下面がフランジ下面規制部材12に係合し、フランジ21aの上面がフランジ上面規制部材13に係合し、フィルタ22の下面が下側規制部材14に係合した状態で支持部材11に支持させる。このとき、フィルタ23は、その接続部23aの一部が接続部側面規制部材15の収容溝15aに収容された状態になる。また、出口ノズル22aの下方に濾液を回収する容器25が配置される。この状態で作業者の手作業によりプランジャ24がシリンジ21内に押し込まれると、液体がフィルタ22,23内に押し込まれ、液体は脂肪分がフィルタ23で、固形物がフィルタ22で濾過されて濾液が容器25に回収される。
【0025】
プランジャ24をシリンジ21内に押し込む際、フィルタ23に対してシリンジ21が傾いた状態でプランジャ24を押し込むと、シリンジ21とフィルタ23との接続部23aが損傷する虞がある。特に使い捨てのシリンジ21の場合はシリンジ21がプラスチック製のため、接続部23aがより損傷し易い。また、この実施形態のようにシリンジ21の射出部21bが偏心した位置に形成されている場合は、中心位置に形成された場合に比べてフィルタ23に対してシリンジ21が傾いた状態となり易く、プランジャ24を押し込む際に接続部23aが損傷し易い。
【0026】
しかし、図2(a)に示すように、フランジ21aの下面がフランジ下面規制部材12に係合し、フィルタ22の下面が下側規制部材14に係合した状態のため、フィルタ23に対してシリンジ21が傾いた状態でプランジャ24を押し込むことが防止される。その結果、シリンジ21が傾いた状態でシリンジ21とフィルタ23との接続部23aに過大な応力が掛かることが回避され、接続部23aが損傷するのを防止することができる。
【0027】
また、プランジャ24がシリンジ21内に押し込まれると、液体がフィルタ23,22を順に通過して濾過される際に、フィルタ22,23における抵抗が大きくなり、シリンジ21内及びフィルタ22,23内の圧力が上昇する。シリンジ21内の圧力が上昇すると、フィルタ22,23に対してはフィルタ22,23を押し下げる力が作用し、フィルタ22,23内の圧力が上昇するとシリンジ21に対してはシリンジ21を押し上げる力が作用する。このとき、図2(a)に示すように、フィルタ22は下面が下側規制部材14に係合して下方への移動が規制され、シリンジ21はフランジ21aの上面がフランジ上面規制部材13に係合して上方への移動が規制される。したがって、シリンジ21内及びフィルタ22,23内の圧力が上昇しても、シリンジ21がフィルタ23から外れることは防止される。
【0028】
一方、特許文献1の場合は、図2(b)に示すように、シリンジ51の上側への移動を規制する部材が存在しないため、フィルタ52内の圧力上昇が大きくなると、シリンジ51が上側へ移動して、シリンジ51がフィルタ52から外れる場合がある。
【0029】
シリンジ21をシリンジ濾過作業用補助具10に取り付ける際は、プランジャ24が収容溝13a、シリンジ21のフランジ21a近傍が収容溝12a、出口ノズル22aが収容溝14a、接続部23aが収容溝15aの各開口と対応する位置から、シリンジ21を支持部材11側に向かって移動させることにより、所定位置に配置される。そのため、特許文献1のようにシリンジを濾過装置の上方から保持棚の開口に挿入する構成と異なり、フィルタ22,23の外径がシリンジ21の外径より大きくてもシリンジ濾過作業用補助具10に取り付けることができる。
【0030】
シリンジ21やシリンジ21に取り付けられるフィルタ22,23はそれぞれ1種類ではなく、シリンジ21やフィルタ22,23によっては長さが異なるものがある。そのため、フランジ下面規制部材12、フランジ上面規制部材13及び下側規制部材14がいずれも支持部材11に位置調整不能に固定された構成では、長さの異なるシリンジ21やフィルタ22,23に対応して支持部材11を準備する必要がある。しかし、この実施形態では、長さの異なるシリンジ21やフィルタ22,23を使用する場合、あるいは、複数のフィルタ22,23の組み合わせを変更する場合等には、フランジ下面規制部材12、フランジ上面規制部材13及び下側規制部材14の少なくとも一つの支持部材11に対する固定位置を調整することにより、対応することができる。規制部材の位置調整は、規制部材を支持部材11に固定するためのねじ17を弛めた状態でスリット16に沿って所定位置まで規制部材を移動させた後、その位置でねじ17を締め付けることにより、無段階で固定位置の調整を簡単に行うことができる。
【0031】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)シリンジ濾過作業用補助具10は、液体中に混入している異物を、先端に少なくとも1個のフィルタが取り付けられたシリンジ21を用いて濾過する際に用いられ、支持部材11と、支持部材11に設けられたフランジ下面規制部材12と、下側規制部材14とを備えている。フランジ下面規制部材12は、シリンジ21のフランジ21aの下面と係合してその移動を規制するとともに、シリンジ21の一部が収容される収容溝12aを有する。下側規制部材14は、シリンジ21に取り付けられたフィルタ22の下面と係合してその移動を規制するとともに、フィルタ22の出口ノズル22aの一部が収容される収容溝14aを有する。したがって、先端にフィルタ22,23を取り付けたシリンジ21を用いて液体の濾過を行う際に、フィルタ23に対してシリンジ21が傾いた状態でプランジャ24を押し込むことが防止され、その結果、シリンジ21とフィルタ23との接続部が損傷するのを防止することができる。また、フランジ下面規制部材12がシリンジ21に加わる下向きの力の一部を担うため、シリンジ21とフィルタ23との接続部に加わる応力を抑制することができる。また、特許文献1の濾過装置と異なり、フィルタ22,23の外径がシリンジ21の外径より大きくても、フィルタ22,23が取り付けられたシリンジ21をシリンジ濾過作業用補助具10に支障なく取り付けることができる。
【0032】
(2)支持部材11には、フランジ21aの上面と係合してその移動を規制するとともに、シリンジ21に挿入されているプランジャ24の一部が収容される収容溝13aを有するフランジ上面規制部材13が設けられている。したがって、先端にフィルタ22,23を取り付けたシリンジ21を用いて液体の濾過を行う際に、シリンジ21がフィルタ23から外れることを防止することができる。
【0033】
(3)フランジ下面規制部材12、フランジ上面規制部材13及び下側規制部材14の少なくとも一つは、位置調整可能に支持部材11に固定されている。したがって、長さの異なるシリンジ21やフィルタ22,23を使用する場合、あるいは、複数のフィルタ22,23の組み合わせを変更する場合等には、フランジ下面規制部材12、フランジ上面規制部材13及び下側規制部材14の少なくとも一つの支持部材11に対する固定位置を調整することにより、対応することができる。
【0034】
(4)各規制部材12〜15は、支持部材11にその長手方向に沿って延びるように形成されたスリット16を貫通するねじ17を介して支持部材11に固定されている。したがって、各規制部材12〜15は、無段階で固定位置の調整を簡単に行うことができる。
【0035】
(5)支持部材11は、シリンジ21を支持する状態で自立可能な形状に形成されている。したがって、濾過作業を行なう際、作業者はシリンジ21や支持部材11等を支持せずに、プランジャ24をシリンジ21に押し込む作業をするだけで、液体中に混入している異物を濾過することができ、支持部材11が自立可能でない場合に比べて濾過作業が簡単になる。
【0036】
(6)フランジ上面規制部材13はフランジ下面規制部材12と一体に形成されている。フランジ下面規制部材12とフランジ上面規制部材13との間に配置されるフランジ21aの厚さは、一般にシリンジ21の長さが変わっても同じため、フランジ上面規制部材13をフランジ下面規制部材12と独立して移動することが必要な場合は少なく、別体にする場合に比べて、支持部材11への取り付け作業や位置調整の作業が簡単になる。
【0037】
(7)支持部材11には、シリンジ21に取り付けられたフィルタ23のシリンジ21との接続部23aの側面と係合してその横方向への移動を規制する接続部側面規制部材15が設けられている。液体の濾過時に作業者がプランジャ24をシリンジ21内に押し込む際、プランジャ24を真っ直ぐ押し込まずに、シリンジ21に斜めの力が作用するように押し込む場合もある。その際、接続部側面規制部材15がフィルタ23のシリンジ21との接続部23aの側面に係合することにより、接続部23aが横方向へ移動するのが規制され接続部23aに無理な力が作用するのが抑制される。
【0038】
(8)支持部材11は下部11aが規制部材12,13,14と平行に延びる状態に形成されている。したがって、支持部材11がシリンジ21を支持する状態で自立可能にする構成が簡単になる。
【0039】
(9)各規制部材12,14,15は側面L字状に形成されるとともに、ねじ17により支持部材11に固定されている。したがって、各規制部材12,14,15を平板で形成して、その基端において接着剤や溶接で支持部材11に固定する場合に比べて固定が簡単で強度が高くなる。
【0040】
(10)各規制部材12〜15の収容溝12a〜15aは、支持部材11の規制部材取り付け面11bと直交する方向に延びるように形成されている。したがって、シリンジ21をシリンジ濾過作業用補助具10の所定位置に配置する際、シリンジ21を支持部材11の正面から真っ直ぐに移動させることにより簡単に所定位置に配置することができる。
【0041】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施形態を図3にしたがって説明する。この実施形態では、規制部材の支持部材11に対する固定方法が前記実施形態と大きく異なっている。第1の実施形態と同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略する。なお、各規制部材の固定方法は同じため、一つの規制部材18で代表して説明する。
【0042】
図3(a),(b)に示すように、支持部材11は半円柱状に形成されている。規制部材18は側面L字状に形成されるとともに、支持部材11に対してUボルト19及びナット20を介して固定されている。Uボルト19は、支持部材11の円弧面とほぼ同じ曲率の円弧部と、円弧部の両端から真っ直ぐに延びる直線部とを有し、直線部に雄ねじ19aが形成されている。規制部材18には支持部材11に対する取り付け面に両雄ねじ19aと同じ間隔で一対の孔が形成されている。そして、図3(b)に示すように、規制部材18は、両孔を貫通した雄ねじ19aに螺合したナット20が締め付けられることにより、支持部材11の所望の位置に固定されるようになっている。収容溝18aは、支持部材11の規制部材取り付け面11bと直交する方向に延びるように形成されている。
【0043】
このシリンジ濾過作業用補助具10で濾過作業を行う場合、作業者は支持部材11を支持した状態で、プランジャ24をシリンジ21に押し込む作業を行う。
したがって、この第2の実施形態によれば、第1の実施形態の(1)〜(3),(6),(7),(9),(10)と同様な効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0044】
(11)規制部材18は側面L字状に形成されるとともに、支持部材11に対してUボルト19及びナット20を介して固定されている。したがって、支持部材11にスリットを形成せずに、無段階で規制部材18の固定位置の調整を簡単に行うことができる。
【0045】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 規制部材の固定位置を無段階で連続的に調整可能な構成に限らず、段階的に調整可能な構成としてもよい。例えば、図4(a),(b)に示すように、平板状の支持部材11に複数対の孔31を使用予定のシリンジ21やフィルタ22,23の長さに対応した間隔で形成する。規制部材18には支持部材11の規制部材取り付け面11bと対向する面にフック32を形成する。孔31は、幅がフック32の幅とほぼ同じで高さはフック32を支障なく挿入可能に、フック32の厚さより大きくかつ、挿入したフック32が支持部材11に引っ掛かる程度に低く形成されている。そして、孔31に挿入されたフック32と規制部材18の背面とで支持部材11を挟持することにより規制部材18が支持部材11に固定される。
【0046】
○ 規制部材の固定位置を段階的に調整可能な構成として、第1の実施形態の支持部材11に、スリット16に代えてねじ17が挿通される孔を、位置調整を行う各規制部材用に複数対ずつ設けてもよい。
【0047】
○ 規制部材の固定位置を無段階で連続的に調整可能な構成は、第1及び第2の実施形態の構成に限らない。例えば、図5(a),(b)に示すように、支持部材11に一対のスリット16を形成し、規制部材18の取り付け面にねじ33を突設し、スリット16に挿通されたねじ33に螺合されるナット20により規制部材18を締め付け固定してもよい。また、図6(a),(b)に示すように、第2の実施形態における支持部材11を四角柱状に形成し、Uボルト19に代えて平面コ字状に形成されるとともに両端部に雄ねじが形成されたボルト34を使用してもよい。
【0048】
○ 規制部材18は、側面L字状に限らず、平板状であってもよい。例えば、図7(a),(b)に示すように、支持部材11を円柱状のボルトで構成し、平板状の規制部材18を2個のナット35により挟持して固定するようにしたり、図8(a)に示すように、支持部材11を円柱状で構成し、平板状の規制部材18を2個のホースバンド36により挟持して固定するようにしたりしてもよい。これらの構成のシリンジ濾過作業用補助具10は、支持部材11を支持台に固定しない状態では自立不能なため、作業者は支持部材11を持って濾過作業を行う。
【0049】
○ 規制部材18の位置調整を行う構成として、規制部材18の支持部材11に対する固定位置を変更する構成に代えて、支持部材11を伸縮可能にして規制部材18を支持部材11に固着した構成としてもよい。例えば、図8(b)に示すように、伸縮調整部37を備えた伸縮棒で支持部材11を構成し、平板状の規制部材18を支持部材11に溶接等で固着する。伸縮調整部37の数は位置調整が必要な規制部材18に対応して設定する。伸縮調整部37を回転することにより、支持部材11の長さが変更され、規制部材18の位置調整が行なわれる。
【0050】
○ 図8(c)に示すように、規制部材18を円筒部18bの上端に平板状の規制部18cが形成された構成とし、支持部材11を規制部材18が遊挿される円柱又は円筒で構成する。そして、円錐台筒状に形成されるとともに、内径が支持部材11の外径に等しく、先端外径が円筒部18bの上端内径より小さく、基端外径が円筒部18bの下端外径より大きなストッパ38を使用して、ストッパ38を円筒部18bの下部に嵌合することにより規制部材18を支持部材11の所望の位置に固定してもよい。また、図8(d)に示すように、円筒部18bに形成されたねじ孔に螺合するねじ39により、規制部材18を支持部材11の所望の位置に固定するようにしてもよい。
【0051】
○ フィルタ22及びフィルタ23は、フィルタ22が上側に、フィルタ23が下側に配置されるようにシリンジ21に取り付けられてもよい。この場合、フィルタ23の下面が下側規制部材14に係合し、フィルタ22の接続部が接続部側面規制部材15と係合する。
【0052】
○ シリンジ21に取り付けられるフィルタは少なくとも1個であればよく、2個に限らず、1個としたり、3個以上としたりしてもよい。例えば、1個の固形物濾過用のフィルタ22あるいは脱脂用のフィルタ23のみをシリンジ21に取り付けてもよい。また、他の不純物濾過用のフィルタと固形物濾過用のフィルタ22あるいは脱脂用のフィルタ23とを組み合わせてもよい。
【0053】
○ 作業者が手で保持した状態で使用するシリンジ濾過作業用補助具10の構成としては、例えば、図9(a)に示すように、平板状に形成された支持部材11に各規制部材12,13,14,15が固定された構成としてもよい。
【0054】
○ シリンジ濾過作業用補助具10がプランジャ24をシリンジ21に押し込む際にも自立状態に維持される構成は、支持部材11の下部11aが各規制部材12,13,14,15と平行に延びる状態に形成された構成に限らない。例えば、図10(a)に示すように、支持部材11の下部11aを前側に屈曲した後、後側に屈曲した形状にしたり、図10(b)に示すように、支持部材11の下部11aを後側に屈曲形成するとともに、下部11aを支持台40に固定した構成としたりしてもよい。また、支持部材11の下部11aを屈曲させずに支持台40に固着した構成にしてもよい。
【0055】
○ 各規制部材12,13,14,15の収容溝12a,13a,14a,15aは、支持部材11と直交する方向に延びる形状に限らない。例えば、図9(b)にフランジ上面規制部材13を代表例として示すように、収容溝12a,13a,14a,15aが円弧状に形成されて、シリンジ21がシリンジ濾過作業用補助具10に対してその側方から取り付けられる構成としてもよい。また、収容溝12a,13a,14a,15aが斜めやL字状に延びるよう形成された構成としてもよい。
【0056】
○ フランジ下面規制部材12及び下側規制部材14は必須であるが、フランジ上面規制部材13及び接続部側面規制部材15は省略してもよい。
○ フランジ上面規制部材13を設けた場合は、シリンジ21内からプランジャ24を引き出す際の吸引力により、液体を、フィルタ22等を通過させてシリンジ21内に吸入することにより液体中の不純物を濾過する方法に適用してもよい。
【0057】
○ シリンジ21は、フランジ21aの外形を円形状にしたり、射出部21bを偏心位置ではなく中心位置に形成したりしてもよい。
○ シリンジ濾過作業用補助具10は1本のシリンジ21を支持する構成に限らず、複数本のシリンジ21を支持して複数本同時にあるいは1本ずつシリンジ21内の液体をプランジャ24でフィルタ22,23を経て容器25へ押し出すようにしてもよい。
【0058】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項5に記載の発明において、前記支持部材は下部が前記規制部材と平行に延びる状態に形成されている。
【0059】
(2)請求項1〜請求項5及び前記技術的思想(1)のいずれか1項に記載の発明において、前記規制部材は側面L字状に形成されるとともに、前記支持部材に固定される部分がねじにより支持部材に固定されている。
【符号の説明】
【0060】
10…シリンジ濾過作業用補助具、11…支持部材、12…フランジ下面規制部材、13…フランジ上面規制部材、14…下側規制部材、18…規制部材、12a,13a,14a,15a,18a…収容溝、16…スリット、17,33,39…ねじ、21…シリンジ、21a…フランジ、22,23…フィルタ、22a…出口ノズル、24…プランジャ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に混入している異物を、先端に少なくとも1個のフィルタが取り付けられたシリンジを用いて濾過する際に用いるシリンジ濾過作業用補助具であって、
支持部材と、
前記支持部材に設けられ、前記フィルタが取り付けられたシリンジのフランジの下面と係合してその移動を規制するとともに、前記シリンジの一部が収容される収容溝を有するフランジ下面規制部材と、
前記支持部材に設けられ、前記シリンジに取り付けられた前記フィルタの下面と係合してその移動を規制するとともに、前記フィルタの出口ノズルの一部が収容される収容溝を有する下側規制部材と
を備えているシリンジ濾過作業用補助具。
【請求項2】
前記支持部材には、前記フランジの上面と係合してその移動を規制するとともに、前記シリンジに挿入されているプランジャの一部が収容される収容溝を有するフランジ上面規制部材が設けられている請求項1に記載のシリンジ濾過作業用補助具。
【請求項3】
前記規制部材の少なくとも一つは、位置調整可能に前記支持部材に固定されている請求項1又は請求項2に記載のシリンジ濾過作業用補助具。
【請求項4】
前記フランジ下面規制部材、前記下側規制部材及び前記フランジ上面規制部材のうちの位置調整可能な規制部材は、前記支持部材にその長手方向に沿って延びるように形成されたスリットを貫通するねじを介して前記支持部材に固定されている請求項3に記載のシリンジ濾過作業用補助具。
【請求項5】
前記支持部材は、前記シリンジを支持する状態で自立可能な形状に形成されている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のシリンジ濾過作業用補助具。
【請求項1】
液体中に混入している異物を、先端に少なくとも1個のフィルタが取り付けられたシリンジを用いて濾過する際に用いるシリンジ濾過作業用補助具であって、
支持部材と、
前記支持部材に設けられ、前記フィルタが取り付けられたシリンジのフランジの下面と係合してその移動を規制するとともに、前記シリンジの一部が収容される収容溝を有するフランジ下面規制部材と、
前記支持部材に設けられ、前記シリンジに取り付けられた前記フィルタの下面と係合してその移動を規制するとともに、前記フィルタの出口ノズルの一部が収容される収容溝を有する下側規制部材と
を備えているシリンジ濾過作業用補助具。
【請求項2】
前記支持部材には、前記フランジの上面と係合してその移動を規制するとともに、前記シリンジに挿入されているプランジャの一部が収容される収容溝を有するフランジ上面規制部材が設けられている請求項1に記載のシリンジ濾過作業用補助具。
【請求項3】
前記規制部材の少なくとも一つは、位置調整可能に前記支持部材に固定されている請求項1又は請求項2に記載のシリンジ濾過作業用補助具。
【請求項4】
前記フランジ下面規制部材、前記下側規制部材及び前記フランジ上面規制部材のうちの位置調整可能な規制部材は、前記支持部材にその長手方向に沿って延びるように形成されたスリットを貫通するねじを介して前記支持部材に固定されている請求項3に記載のシリンジ濾過作業用補助具。
【請求項5】
前記支持部材は、前記シリンジを支持する状態で自立可能な形状に形成されている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のシリンジ濾過作業用補助具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−55874(P2012−55874A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204645(P2010−204645)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
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