説明

シリンジ

流体を供給するシリンジ(2)であって、そのシリンジが、吐出通路を画定する吐出側端部(10)を含むバレル(4)と、そのバレル内に配設されたプランジャ(15)とを含み、そのプランジャが、プランジャおよび吐出側端部がバレル内に変更可能な体積のチャンバを画定しプランジャが流体をチャンバから吐出通路を通して押し出すことができるように、バレル内を移動するように適合され、シリンジが、シリンジの長手方向軸を中心に回転するように適合された回転要素(20a、20b、24a、24b)を含み、その回転要素がバレルの吐出側端部に対する第1の軸配置を有し、プランジャおよび/またはバレル上に第1のストップが設けられ、その第1のストップが、回転要素の第1の配置においてプランジャの軸方向の移動を制限するように適合されており、回転要素が、バレルの吐出側端部に対して第2の軸配置を有し、その第2の軸配置においては、第1のストップが係合解除され、プランジャが第2のストップまで移動できるようになる、シリンジ(2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジに関し、詳細には、所定の投与量を投与する前にプライミングできるように適合されたシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
正確かつ再現可能な方法で比較的少量の流体をシリンジから送達することが望ましいことが多い。典型的には、流体を収容するシリンジは、第1に、空気または他の気体がシリンジ内に確実に存在しないようにプライミングされ、次いで、第2に、必要な体積の流体を送達する送達(投与)ステップが実行される。しかし、従来のシリンジを用いた送達ステップ中に比較的少量の流体を正確に送達することは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
WO01/62319、米国特許第3,934,586号、およびWO03/004080は全て、2段階シリンジを記載しているが、それらはいずれも正確かつ再現可能に比較的少量の流体を送達するという問題に対処していない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、流体を供給するシリンジであって、そのシリンジが、吐出通路を画定する吐出側端部を含むバレルと、そのバレル内に配設されたプランジャとを含み、そのプランジャが、プランジャおよび吐出側端部がバレル内に変更可能な体積のチャンバを画定しプランジャが流体をチャンバから吐出通路を通して押し出すことができるように、バレル内を移動するように適合され、シリンジが、シリンジの長手方向軸を中心に回転するように適合された回転要素を含み、その回転要素が、バレルの吐出側端部に対する第1の軸配置(向き、配向)を有し、プランジャおよび/またはバレル上に第1のストップが設けられ、その第1のストップが、回転要素の第1の配置においてプランジャの軸配置の移動を制限するように適合されており、回転要素が、バレルの吐出側端部に対して第2の軸配置を有し、その第2の軸配置においては、第1のストップが係合解除され、プランジャが第2のストップまで移動できるようになる、シリンジが提供される。
【0005】
本発明によれば、プランジャを、第1のストップに係合するまで吐出側端部に向かって第1の軸配置に変位させることができる。これがプライミングステップを構成する。次いで、回転要素を第1の軸配置から第2の軸配置に回転させ、その際、第1のストップは係合解除されるかまたは避けられ、プランジャをさらに、第2のストップに向かって変位させることができる。第1のストップと第2のストップとの間の間隔は、バレルの特定の内径に関して送達ステップ中にシリンジから供給される体積を画定する。比較的体積が小さい流体の場合は、第1のストップから第2のストップへの変位は、比較的短いが、本発明によるシリンジによって正確に制御される。
【0006】
回転要素は、第1の軸配置と第2の軸配置との間で回転するように適合されている。したがって、第2の軸配置は、典型的には、第1の軸配置から角度的に変位する。
【0007】
本発明の一実施形態では、プランジャは回転要素を備える。しかし、代替的実施形態では、プランジャの第1の部分は、バレルの吐出側端部および/またはプランジャの第2の部分に対して回転するように適合されてもよい。他のさらなる実施形態では、バレルの一部分、例えば、バレルのうちの吐出側端部の反対側の端部分が、回転要素を備え、バレルの吐出側端部に対して回転するように適合されてもよい。
【0008】
第1の軸配置から第2の軸配置に誤って移動するのを防止するために、例えばプライミングステップが完了する前に、プランジャが回転要素を備えるかまたは含む実施形態では、プランジャは配置制御要素を含むことができ、その配置制御要素は、プランジャが第1のストップに係合するまで第1の配置から第2の配置へのプランジャの回転を防止するように適合される。これにより、プライミングステップが完了しプランジャが第1のストップに係合するまでプランジャが第1の軸配置に確実に留まる。
【0009】
本発明の一実施形態では、本明細書のどこかで定義するように、配置制御要素は、プランジャによって担持されたスプライン(長手方向に延在するリブ)を含み、そのプランジャは、使用時はバレルの少なくとも一部分に画定されたスプラインチャネル内に配置されている。例えば、バレルは、吐出チャネルに対して反対側の端部に配置されたカラーを含むことができ、そのカラーがスプラインチャネルを画定する。
【0010】
プランジャによって担持されるスプラインとスプラインチャネルとの相互作用により、無用の移動、例えば、第1の軸配置から第2の軸配置へのバレルに対するプランジャの回転が防止される。
【0011】
バレルに対するプランジャの回転などの移動を可能にするために、スプラインは切り欠きを含むことができ、その切り欠きは、長手方向軸を中心にバレルに対するプランジャの回転を可能にするように適合される。切り欠きをスプライン内に画定することもでき、プランジャのうちのスプラインの一端部とプランジャの隣接する端部との間の部分によって画定することもできる。換言すると、スプラインは、プランジャの端部まで延在することができないが、プランジャの端部とスプラインの端部と間に画定された隙間が切り欠きを画定するように、一端部がプランジャの端部から離間している。一実施形態では、切り欠きは、または2つ以上の切り欠きが含まれるときの各切り欠きは、プランジャが第1のストップに係合しているときにのみプランジャの回転が可能になるように画定される。
【0012】
プランジャがスプラインを2つ以上含むことができ、スプラインがそれぞれ、全ての切り欠きがプランジャの一端部から均等に離間するような切り欠きをそれぞれ含むことを当業者なら理解するであろう。こうした配置では、切り欠きは、プランジャを中心に円周方向に離間しており、切り欠きがスプラインチャネルと同心に配置されるときはその切り欠きによりプランジャの回転が可能になる。カラーは、バレルから取り外すことができ、バレルの端部に係合するように適合されている。
【0013】
このような実施形態では、バレルは、典型的には、各スプラインごとに対応するスプラインチャネルを含む。
【0014】
プランジャの通常の配置は、十字形のシャフトを含むべきである。したがって、本明細書のどこかで定義する本発明の一実施形態では、プランジャは、バレル内に配置されたピストンと、ピストンから延在する細長いシャフトと、シャフトのうちのピストンの反対側の端部にある押しボタンとを含み、プランジャシャフトは断面が十字形の構成であり、十字形のシャフトの各アームは、全ての切り欠きが押しボタンから均等に離間するように切り欠きを画定する。
【0015】
このような実施形態では、スプラインチャネルは相補的な十字形でよい。
【0016】
本発明のさらなる実施形態では、バレルは、吐出側端部の反対側の端部にカラーを含み、カラーおよびプランジャのうちの一方が、軸方向突出部を含み、カラーおよびプランジャの他方が、第1の停止面と、突出部を内部に受容するようにサイズ設定および構成された凹所とを含み、突出部が、プランジャの第1の配置において第1の停止面と軸方向に位置合わせするように適合され、第2の軸配置において凹所と軸方向に位置合わせするように適合され、それにより、突出部と第1の停止面との相互作用によってプランジャの移動が第1の配置に制限され、突出部が凹所に受容されることによって第2の配置におけるプランジャのさらなる移動が可能になる。
【0017】
この実施形態では、プライミングステップは、第1の停止面に係合する軸方向の突出部によって制限される。次いで、プランジャを、第1の配置から第2の配置に(例えば、その長手方向軸を中心にした回転によって)移動させ、その構成で送達または投薬ステップを行うことができる。送達ステップ中に送達される流体の体積は、突出部が凹所内に延在する距離に比例する。
【0018】
適切なことに、プランジャは、バレル内に配置されたピストンと、ピストンから延在する細長いシャフトと、シャフトのうちのピストンの反対側の端部にある押しボタンとを含み、押しボタンが突出部を担持し、カラーが第1の停止面および凹所を画定する。
【0019】
第1の停止面を、プランジャまたはカラーのベース面を形成する部分から延在する第2の突出部によって画定することができる。このような実施形態では、ベース面のうちの第2の突出部を担持しない部分として凹所を画定することができる。したがって、第1の突出部を、第1の軸配置において第2の突出部と軸方向に位置合わせすることができ、第2の軸配置において第1の突出部が第2の突出部を越えて摺動できるように、第2の軸配置において第2の突出部とは軸方向に位置合わせされない。
【0020】
この実施形態では、凹所への第1の突出部の最大の変位は、第1の突出部および第2の突出部のうちの長い方によって定められ、その長さは、関連の突出部がそれぞれのベース面から延在する距離として定められる。
【0021】
本発明のさらなる実施形態では、第1の突出部は、対向する1対の第1の突出要素を含み、第2の突出部は、対向する1対の第2の突出要素を含み、第1の突出要素は、第1の配置において第2の突出要素と軸方向に位置合わせされ、第2の配置において第2の突出要素間に画定されたそれぞれの凹所と軸方向に位置合わせされる。
【0022】
他のさらなる実施形態では、プランジャは、バレル内に配置されたピストンと、そのピストンから延在する細長いシャフトと、シャフトのうちのピストンの反対側の端部にある押しボタンとを含み、その押しボタンが、対向する1対の第1の突出要素を担持し、その第1の突出要素が、第1のベース面から延在し1対の第1の凹所をその第1の突出要素間に画定し、カラーが、対向する1対の第2の突出要素を担持し、その第2の突出要素が、第2のベース面から延在し1対の第2の凹所をその第2の突出要素間に画定し、第1の配置においては、第1の突出要素が第2の突出要素と軸方向に位置合わせされ、第2の配置においては、第1の突出要素が第2の凹所と軸方向に位置合わせされ、第2の突出要素が第1の凹所と軸方向に位置合わせされ、それにより、第1の配置における第1の突出要素と第2の突出要素との相互作用により、第1のストップが画定され、第1の突出要素と第2のベース面との相互作用および/または第2の突出要素と第1のベース面との相互作用により、第2のストップが画定される。
【0023】
本明細書のどこかで説明するような本発明のさらなる実施形態では、回転要素は、押しボタンを備えることができ、その押しボタンは、プランジャシャフトに対して回転するように適合される。その代わりに、回転要素は、カラー備えることができ、そのカラーは、バレルおよび/またはプランジャシャフトに対して回転するように適合されてもよい。さらにその代わりに回転要素は、プランジャシャフトの第1の部分を備えることができ、そのプランジャシャフトの第1の部分は、プランジャシャフトの第2の部分に対して回転するように適合される。
【0024】
本明細書のどこかで定義する本発明の他のさらなる実施形態では、シリンジは、第2のストップを複数含むことができる。このような実施形態では、シリンジを複数投与のシリンジとすることができ、その際、第2のストップはそれぞれ、隣接する第2のストップから軸方向に離間し、そのため、プライミングステップ後に、プランジャをある第2のストップから次の第2のストップに移動させることによって、シリンジが連続した複数の薬剤投与量を送達することができる。さらに、またはその代わりに、複数の第2のストップは、投与量選択ステップを含むことができ、その際、所定の投与量を投与することを可能にするように第2のストップのうちの特定のものとプランジャを軸方向に位置合わせする。このような実施形態では、第2のストップはそれぞれ、隣接する第2のストップから回転方向に変位することができる。言い換えると、第2のストップは、互いに円周方向に間隔をあけて配置され、第2のストップはそれぞれ、第1のストップから異なる軸方向距離の位置に配設される。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、シリンジバレルと共に使用するプランジャアセンブリであって、そのアセンブリがカラーおよびプランジャを含み、カラーが、バレルの一端部と係合するように適合されており、プランジャが、バレル内に配置されるように適合されたピストンと、ピストンから延在する細長いシャフトと、シャフトのうちのピストンの反対側の端部にある押しボタンとを含み、カラーが、細長いシャフトに摺動可能に接続され、プランジャが、カラーに対する第1の軸配置を有し、プランジャおよび/またはカラーに第1のストップが設けられ、その第1のストップが、第1の配置においてプランジャの軸方向の移動を制限するように適合されており、プランジャが、カラーに対する第2の軸配置を有し、その第2の軸配置では、第1のストップが係合解除され、プランジャが第2のストップまで移動できるようになる、プランジャアセンブリが提供される。
【0026】
プランジャアセンブリのカラーがバレルの一方の端部に係合するように適合されているので、このプランジャアセンブリにより、標準的なシリンジバレルを用いて上記で説明したようなプライミング/投与シリンジを作り出す手法が提供される。
【0027】
本発明の第1の態様に関連して本明細書で説明および定義した追加の特徴を、本発明の第2の態様に同等に適用することができる。したがって、本発明の第2の態様は、本明細書で上記に説明した追加の特徴のうちのいずれか、いくつか、または全てを含むことができる。
【0028】
本発明の第3の態様によれば、シリンジバレルおよび本発明の第2の態様によるプランジャアセンブリを含むシリンジキットが提供される。
【0029】
本発明の第4の態様によれば、流体を供給する予め充填したシリンジであって、そのシリンジが、吐出通路を画定する吐出側端部を含むバレルであって、流体の形態の薬剤を内部に収容するバレルと、バレル内に配設されたプランジャであって、プランジャおよび吐出側端部がバレル内に変更可能な体積のチャンバを画定しプランジャが流体をチャンバから吐出通路を通して押し出すことができるように、バレル内を移動するように適合された、プランジャとを含み、シリンジが、シリンジの長手方向軸を中心に回転するように適合された回転要素を含み、その回転要素がバレルの吐出側端部に対する第1の軸配置を有し、プランジャおよび/またはバレル上に第1のストップが設けられ、その第1のストップが、回転要素の第1の配置においてプランジャの軸配置の移動を制限するように適合されており、回転要素がバレルの吐出側端部に対して第2の軸配置を有し、その第2の軸配置においては、第1のストップが係合解除され、プランジャが第2のストップまで移動できるようになる、シリンジが提供される。
【0030】
本発明の別の態様は、流体を供給するシリンジであって、そのシリンジが、吐出通路を画定する吐出側端部を含むバレルと、バレル内に配設されたプランジャとを含み、そのプランジャが、プランジャおよび吐出側端部がバレル内に変更可能な体積のチャンバを画定しプランジャが流体をチャンバから吐出通路を通して押し出すことができるように、バレル内を移動するように適合され、バレルが、吐出側端部の反対側の端部にカラーを含み、シリンジが、シリンジの長手方向軸を中心に回転するように適合された回転要素を含み、その回転要素が、バレルの吐出側端部に対する第1の軸配置を有し、プランジャおよび/またはバレル上に第1のストップが設けられ、その第1のストップが、回転要素の第1の配置においてプランジャの軸方向の移動を制限するように適合されており、その回転要素が、バレルの吐出側端部に対して第2の軸配置を有し、その第2の配置においては、第1のストップが係合解除され、プランジャが第2のストップまで移動できるようになり、プランジャが、プランジャが第1のストップに係合するまでプランジャが第1の配置から第2の配置まで移動するのを防止するように適合された配置制御要素を含み、前記配置制御要素が、プランジャによって担持された少なくとも1つのスプラインを備え、そのプランジャが使用時はバレルの少なくとも一部分に画定されたスプラインチャネル内に配置されており、カラーおよびプランジャのうちの一方が、軸方向の第1の突出部を含み、カラーおよびプランジャのうちの他方が、第1の停止面と、突出部を内部に受容するようにサイズ設定および構成された凹所とを含み、突出部が、プランジャの第1の配置において第1の停止面と軸方向に位置合わせするように適合され、第2の軸配置において凹所と軸方向に位置合わせするように適合され、それにより、突出部と第1の停止面との相互作用によってプランジャの移動が第1の配置に制限され、突出部が凹所に受容されることによって第2の配置におけるプランジャのさらなる移動が可能になる、シリンジを提供する。
【0031】
本発明の第1の態様に関連して本明細書で説明および定義する追加の特徴は、本発明の第4の態様に同等に適用することができる。したがって、本発明の第4の態様は、本明細書で上記に説明した追加の特徴のうちのいずれか、いくつか、または全てを含むことができる。
【0032】
本発明の実施形態に関連して上記で明示した特徴を互いに組み合わせること、および定義した本発明の態様のいずれとも組み合わせることができると当業者は理解するであろう。したがって、本発明は、任意選択の特徴として本明細書のどこかで説明した2以上の特徴との組み合わせた本発明の一態様を本発明の範囲内に包含する。本明細書で説明した特徴のこうした組み合わせは全て、当業者に入手可能になると考えられる。
【0033】
次に、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら単なる例として詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】カラーを示す、本発明によるシリンジの斜視図である。
【図2】押しボタンを詳細に示す、図1のシリンジの斜視図である。
【図3】図1および図2のシリンジの立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
誤解を避けるために、本明細書中の用語「up(上)」、「down(下)」、「front(前方)」、「rear(後方)」、「upper(上側)」、「lower(下側)」、「width(幅)」が図に示すような通常の使用のために組み付けられたときのシリンジに見られる構成要素の配置を指すことを当業者は理解するであろう。
【0036】
本発明によるシリンジ2を図1、図2、および図3に示す。シリンジ2は、シリンダを内部に画定するバレル本体4を含む。バレル4の後方にカラー6が配置され、バレル4の反対側の端部、すなわち前方に吐出側端部10が配置され、その吐出側端部10は内部に吐出通路を画定する。バレル4の吐出側端部10には皮下注射針12の連結カラー8が固定されている。
【0037】
皮下注射針連結カラー8がバレルの吐出側端部10との単純な摩擦嵌めでもよく、バレルの吐出側端部10に固着されてもよく、ルアーロックカラーなどのロックカラーでもよいことを当業者なら理解するであろう。シリンジバレルへの皮下注射針の連結は、当技術分野でよく知られており、本明細書では詳細に説明しない。
【0038】
プランジャ15が、カラー6に摺動可能に接続され、バレルシリンダ内のピストン(図示せず)と、断面が十字形の細長いシャフト14とを含む。そのシャフト14は、フランジ16の後方に向いた面がプランジャ15用の押しボタンを形成するように、シャフト14のうちのピストンの反対側の端部にあるフランジ16において終端する。
【0039】
カラー6の後方に向いた面は、実質的に平面のカラーベース面7を画定する。そのカラーベース面7から、対向する円弧状の1対の突出部20a、20bが軸方向に突出する。
【0040】
対向する2つの突出部20a、20bは、バレルの長手方向軸を中心に同心円状に形成された架空の円の対向する2つの円弧を規定し、それらの間に対向する1対の円弧状の隙間22a、22bを画定する。隙間22a、22bも、架空の円の対向する円弧の形態であり、そのため、突出部20a、20bと隙間22a、22bが一緒になって架空の円の円周を規定する。突出部20a、20bによって規定された円弧は、突出部20aと20bとの間の隙間22a、22bによって画定された円弧よりも短い。
【0041】
図2に、フランジ16およびシャフト14の前向きの部分の詳細図を示す。
【0042】
フランジ16は、実質的に平面の前向きのベース面17を画定し、そのベース面17から、1対の対向する円弧状の突出部24a、24bが軸方向に突出する。フランジ突出部24a、24bは、カラー突出部20a、20bと実質的に同一の配置になるように配置される。したがって、フランジ突出部24a、24bは、それらの間に円弧状の隙間26a、26bを画定し、フランジ突出部24a、24bとそれらの間に画定された隙間26a、26bが一緒になって、シャフト14の長手方向軸を中心に同心円状に配置された架空の円の円周を規定する。
【0043】
カラー6上の突出部20a、20bおよび隙間22a、22bと同様に、フランジ16のベース面17から突出部24a、24bによって規定された円弧は、突出部24aと24bとの間の隙間26a、26bによって画定された円弧よりも短い。
【0044】
ピストンが吐出側端部10から離間しており、その結果、図示のようにフランジ16がカラー6から離間しているときは、カラー突出部20a、20bはフランジ突出部24a、24bから離間している。このように離間しているときは、カラー突出部20a、20bがフランジ突出部24a、24bと軸方向に位置合わせされている。
【0045】
十字形のシャフト14は、カラー6内に形成された相補的な形状(すなわち十字形の形状)の貫通孔内に摺動可能に配置される。これにより、シャフト14およびフランジ16は、2対の突出部20a、20bと24a、24bとが互いに離間し軸方向に位置合わせされるときの、カラーおよびバレルに対する不変の配置に確実に維持される。
【0046】
シャフト14の各アームは切り欠き30を含み、それらの4つの切り欠き30全てがフランジ16のベース面17から均等に離間するようになっている。それらの切り欠きは、カラー突出部20a、20bがフランジ突出部24a、24bに接触するときにカラー6の本体と重なるように構成される。切り欠き30がカラー6の本体と重なるときは、シャフト14は、カラー6から係合解除され、カラー6に対してその長手方向軸を中心に回転することが可能である。
【0047】
長手方向軸を中心に90度回転すると、十字形のシャフト14がカラー6を通る十字形の貫通孔と再度位置合わせされる。さらに、カラー突出部20a、20bは、フランジの隙間26a、26bと軸方向に位置合わせされ、フランジ突出部24a、24bは、カラーの隙間22a、22bと軸方向に位置合わせされる。隙間22a、22b、26a、26bが対応する突出部20a、20b、24a、24bよりも大きいので、突出部20a、20b、24a、24bは、この構成では、軸方向に互いを越えて摺動することができる。
【0048】
使用の際には、バレル4を有するシリンダは、突出部20a、20b、24a、24bが軸方向に位置合わせされているときに、フランジ16を、したがってピストンを後方に引くことによって、流体、例えば液剤の薬剤で満たされる。
【0049】
次いで、押しボタンを押し、フランジ16、シャフト14、およびピストンを前方にバレル4の吐出側端部10に向かって軸方向に摺動させることによって、シリンジをプライミングする。これには、針12およびバレル4のシリンダから全ての空気を追い出す効果がある。
【0050】
フランジ突出部24a、24bがカラー突出部20a、20bに接触するまでプライミングステップを継続する。その接触の時点で切り欠き30がカラー6の本体と重なる。次いで、フランジを90度回転させる。その際、突出部20a、20b、24a、24bは、対応する隙間22a、22b、26a、26bと軸方向に位置合わせされる。次いで、押しボタンをもう一度前方に押しやって、所定の流体の投与量を送達する。この送達ステップを、フランジ突出部24a、24bがカラーベース面7に接触しかつ/またはカラー突出部20a、20bがフランジベース面17に接触するまで継続する。
【0051】
送達ステップ中に送達される投与量の体積は、バレルのシリンダの断面積に突出部20a、20b、24a、24bの最も長い長さを乗ずることで計算される。ここで、突出部の長さは関連の突出部がそれぞれのベース面から延在する距離として定義される。したがって、送達される体積は、バレル4のシリンダの断面積を変更するか、もしくは突出部の長さを変更するか、またはその両方を行うことによって、変更することができる。
【0052】
上記で説明したシリンジの試験を以下の通り実行した。
【0053】
(試験装置)
シリンジプランジャおよびカラーを組み立てて、1mlシリンジバレルのサンプルにした。シリンジバレルの吐出側端部に針を嵌めた。
【0054】
(準備および測定)
シリンジを呼び体積のRO/DI水で満たし、垂直に保持し、気泡を放出するように軽くたたき、第1のストップまでプライミングした。化学てんびん上で清潔なエッペンドルフ型チューブの風袋を差し引いた。プランジャを第1の軸配置から第2の軸配置に回転させて投薬を可能にし、プランジャを第2のストップまで押し込んで、投与量をバイアルに吐出した。
次いで、そのバイアルを閉じ、計量した。
シリンジは再利用するがバイアルは清潔なものを用いて試験を繰り返した。
【0055】
(計算)
バイアルの重量の差から投与した質量を計算した。
質量を密度で除算することで投与量の体積を計算した。
212℃、相対湿度42%の実験室の条件において、密度=998.022kg/mであった。
【0056】
(装置)
SartoriusのME235S−OCE化学てんびん(小数第5位/1g)
300μlエッペンドルフ型チューブ
シリンジデバイス
【0057】
【表1】

【0058】
この試験ではプロトタイプによって送達した投与量は、44.4±3.8μl、すなわち40.8から48.4μlの範囲にある。シリンジは、公差が±3.8μl以内の良好に管理した投与量を送達した。許容可能な限度に関する公差は±7.5μl以内である。
【符号の説明】
【0059】
2 シリンジ
4 バレル
6 カラー
7 カラーベース面
8 連結カラー
10 吐出側端部
12 皮下注射針
14 シャフト
15 プランジャ
16 フランジ
17 フランジベース面
20a 突出部
20b 突出部
22a 隙間
22b 隙間
24a 突出部
24b 突出部
26a 隙間
26b 隙間
30 切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を供給するシリンジであって、前記シリンジが、吐出通路を画定する吐出側端部を含むバレルと、前記バレル内に配設されたプランジャとを含み、前記プランジャが、前記プランジャおよび前記吐出側端部が前記バレル内に変更可能な体積のチャンバを画定し前記プランジャが流体を前記チャンバから前記吐出通路を通して押し出すことができるように、前記バレル内を移動するように適合され、前記シリンジが、前記シリンジの長手方向軸を中心に回転するように適合された回転要素を含み、前記回転要素が前記バレルの前記吐出側端部に対する第1の軸配置を有し、前記プランジャおよび/または前記バレル上に第1のストップが設けられ、前記第1のストップが、前記回転要素の前記第1の配置において前記プランジャの軸方向の移動を制限するように適合されており、前記回転要素が、前記バレルの前記吐出側端部に対して第2の軸配置を有し、前記第2の軸配置においては、前記第1のストップが係合解除され、前記プランジャが第2のストップまで移動できるようになる、シリンジ。
【請求項2】
前記プランジャが、前記回転要素であり、前記第1の軸配置と前記第2の軸配置との間を回転するように適合される、請求項1に記載のシリンジ。
【請求項3】
前記プランジャが配置制御要素を含み、前記配置制御要素が、前記プランジャが前記第1のストップに係合するまで前記プランジャが前記第1の配置から前記第2の配置まで移動するのを防止するように適合されている、請求項1または2に記載のシリンジ。
【請求項4】
前記配置制御要素が、前記プランジャによって担持されたスプラインを含み、前記プランジャが、使用時は前記バレルの少なくとも一部分に画定されたスプラインチャネル内に配置されている、請求項3に記載のシリンジ。
【請求項5】
前記バレルが、前記吐出側端部の反対側の端部にカラーを含み、前記カラーが、前記スプラインチャネルを画定する、請求項4に記載のシリンジ。
【請求項6】
前記スプラインが切り欠きを画定し、前記切り欠きが、長手方向軸を中心とした前記バレルに対する前記プランジャの回転を可能にするように適合される、請求項4または5に記載のシリンジ。
【請求項7】
前記プランジャがスプラインを複数含み、それぞれのスプラインが、前記プランジャの一端部から均等に離間するように切り欠きを画定する、請求項6に記載のシリンジ。
【請求項8】
前記プランジャが、前記バレル内に配置されたピストンと、前記ピストンから延在する細長いシャフトと、前記シャフトのうちの前記ピストンの反対側の端部にある押しボタンとを含み、前記プランジャシャフトの断面が十字形の構成であり、前記十字形のシャフトの各アームが、全ての切り欠きが前記押しボタンから均等に離間するように前記切り欠きを画定する、請求項7に記載のシリンジ。
【請求項9】
前記バレルが、前記吐出側端部の反対側の端部にカラーを含み、前記カラーおよび前記プランジャのうちの一方が、軸方向の突出部を含み、前記カラーおよび前記プランジャのうちの他方が、第1の停止面と、前記突出部を内部に受容するようにサイズ設定および構成された凹所とを含み、前記突出部が、前記プランジャの第1の配置において前記第1の停止面と軸方向に位置合わせするように適合され、前記第2の軸配置において前記凹所と軸方向に位置合わせするように適合され、それにより、前記突出部と前記第1の停止面との相互作用によって前記プランジャの移動が前記第1の配置に制限され、前記突出部が前記凹所に受容されることによって前記第2の配置における前記プランジャのさらなる移動が可能になる、前記請求項のいずれかに記載のシリンジ。
【請求項10】
前記プランジャが、前記バレル内に配置されたピストンと、前記ピストンから延在する細長いシャフトと、前記シャフトのうち前記ピストンの反対側の端部にある押しボタンとを含み、前記押しボタンが前記突出部を担持し、前記カラーが前記第1の停止面および前記凹所を画定する、請求項9に記載のシリンジ。
【請求項11】
前記第1の停止面が、ベース面から延在する第2の突出部によって画定され、前記凹所が、前記ベース面のうちの前記第2の突出部を担持しない部分によって画定される、請求項9または10に記載のシリンジ。
【請求項12】
前記第1の突出部が、対向する1対の第1の突出要素を含み、前記第2の突出部が、対向する1対の第2の突出要素を含み、前記第1の突出要素が、前記第1の配置において前記第2の突出要素と軸方向に位置合わせされ、前記第2の配置において前記第2の突出要素間に画定されたそれぞれの凹所と軸方向に位置合わせされる、請求項11に記載のシリンジ。
【請求項13】
前記プランジャが、前記バレル内に配置されたピストンと、前記ピストンから延在する細長いシャフトと、前記シャフトのうちの前記ピストンの反対側の端部にある押しボタンとを含み、前記押しボタンが、対向する1対の第1の突出要素を担持し、前記第1の突出要素が、第1のベース面から延在し1対の第1の凹所を前記第1の突出要素間に画定し、前記カラーが、対向する1対の第2の突出要素を担持し、前記第2の突出要素が、第2のベース面から延在し1対の第2の凹所を前記第2の突出要素間に画定し、前記第1の配置においては、前記第1の突出要素が前記第2の突出要素と軸方向に位置合わせされ、前記第2の配置においては、前記第1の突出要素が前記第2の凹所と軸方向に位置合わせされ、前記第2の突出要素が前記第1の凹所と軸方向に位置合わせされ、それにより、前記第1の配置における前記第1の突出要素と前記第2の突出要素との相互作用により、前記第1のストップが画定され、前記第1の突出要素と第2のベース面との相互作用および/または前記第2の突出要素と第1のベース面との相互作用により、前記第2のストップが画定される、請求項12に記載のシリンジ。
【請求項14】
前記バレルが、前記吐出側端部の反対側の端部にカラーを含み、前記プランジャが、前記プランジャが前記第1のストップに係合するまで前記プランジャが前記第1の配置から前記第2の配置に移動するのを防止するように適合された配置制御要素を含み、前記配置制御要素が、使用時に前記バレルの少なくとも一部分に画定されたスプラインチャネル内に配置された前記プランジャによって担持される少なくとも1つのスプラインを備え、前記カラーおよび前記プランジャのうちの一方が、軸方向の第1の突出部を含み、前記カラーおよび前記プランジャのうちの他方が、第1の停止面と、前記突出部を内部に受容するようにサイズ設定および構成された凹所とを含み、前記突出部が、前記プランジャの第1の配置において前記第1の停止面と軸方向に位置合わせするように適合され、前記第2の軸配置において前記凹所と軸方向に位置合わせするように適合され、それにより、前記突出部と前記第1の停止面との相互作用によって前記プランジャの移動が前記第1の配置に制限され、前記突出部が前記凹所に受容されることによって前記第2の配置における前記プランジャのさらなる移動が可能になる、請求項1に記載のシリンジ。
【請求項15】
シリンジバレルと共に使用するプランジャアセンブリであって、前記アセンブリがカラーおよびプランジャを含み、前記カラーが、前記バレルの一方の端部に係合するように適合されており、前記プランジャが、前記バレル内に配置されるように適合されたピストンと、前記ピストンから延在する細長いシャフトと、前記シャフトのうちの前記ピストンの反対側の端部にある押しボタンとを含み、前記カラーが、前記細長いシャフトに摺動可能に接続され、前記プランジャが、前記カラーに対する第1の軸配置を有し、前記プランジャおよび/または前記カラーに第1のストップが設けられ、前記第1のストップが、前記第1の配置において前記プランジャの軸方向の移動を制限するように適合されており、前記プランジャが、前記カラーに対する第2の軸配置を有し、前記第2の軸配置では、前記第1のストップが係合解除され、プランジャが第2のストップまで移動できるようになる、プランジャアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−511309(P2013−511309A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539345(P2012−539345)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067869
【国際公開番号】WO2011/061313
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】