説明

シロアリ防除構造

【課題】 施工が容易であり、安定性に優れ、有害な薬剤を用いることなく、シロアリが特に侵入しやすい配管周りおよび/または水抜き穴周りからのシロアリの侵入を阻止することができ、なおかつ床下湿度の制御が可能なシロアリ防除構造を提供する。
【解決手段】 本発明は、建築物における床下の土間構造に通した配管および/または水抜き穴の周りに囲いを設置し、囲いの中にシリカゲルを所要の厚さに堆積させシロアリ防除層を形成することを特徴とするシロアリ防除構造である。前記囲いは、内径が14cm以上、高さが3cm以上の円筒を用いることが好ましく、囲いの接地面の縁をシーリングすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物床下の土間構造に通した配管周りおよび/または水抜き穴周りのシロアリ防除構造に関し、さらに詳しくは、住宅などの建築物の床下において、地盤から土間構造や基礎に通した配管周りおよび/または水抜き穴周りの隙間からシロアリが侵入することを防ぐためのシロアリ防除構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物床下等におけるシロアリ対策として、合成薬剤や天然薬剤等を床下や基礎コンクリートおよびその周辺の土壌等に散布または塗布する方法が採用されている(例えば特許文献1)。
【0003】
しかし、従来使用されている薬剤を散布または塗布する方法では、薬剤が揮発性のものであるため、シロアリ防除効果が持続せず、所定期間(約10年)ごとに何度も薬剤を散布または塗布する必要があり、手間やコストが多大であるという問題があった。また、薬剤には、生物に対し有害で使用する際に注意が必要な有機化合物が含まれていることがあり、土壌等を汚染するおそれなどがあった。さらに、前記有機化合物が揮発することにより、シックハウス症候群を引き起こす危険もあった。また、これらの薬剤はシロアリ防除効果を有するのみであり、薬剤を散布または塗布するのみでは、シロアリが好む高湿度条件を解決することは不可能であった。
【0004】
そこで、新たなシロアリ対策方法として、床下等にシートや無機物粒子を敷き詰める方法が提案された。
例えば特許文献2には、防蟻シートを敷設した上に防蟻粒材を配設させた防蟻構造が開示されている。
また、特許文献3には、調湿作用を有する鉱物粒子と、細孔部にヒノキチオールを含有する液体またはヒバ油を保持させてなるセラミック粒子との混合物を、建築物の床下や建築物周囲の土壌に散布することによりシロアリ防除を行う方法が開示されている。
また、特許文献4には、シリカゲルを用いた害虫防除法が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示されるような、シートを用いたシロアリ防除方法の場合には、シロアリの侵入経路になりやすい配管周り等の開口部をシートのみで隙間無く施工するのは難しいという問題があるため、無機物粒子等と併用する必要があるなど、施工方法が煩雑となる問題があった。さらに、調湿性のないシートを使用した場合は、シロアリが好む高湿度条件を解決することはできないという問題もあった。
また、特許文献3および4に開示されるような、無機物粒子等を用いたシロアリ防除方法では、施工者によって施工状態が異なり、シロアリ防除効果にばらつきが発生するおそれがある。また、無機物粒子を散布した場合、建築物の建設過程で施工者が踏むなどすることにより、分散してしまうおそれがあった。
また、無機物粒子やシートを用いたシロアリ防除方法においても、無機物粒子やシートに薬剤を表面に塗布したり素材に含ませたりしたものを使用することが多く、上述した薬剤使用による問題も残る。
【0006】
【特許文献1】特開2001−158009号公報
【特許文献2】特許第4116963号公報
【特許文献3】特許第3531927号公報
【特許文献4】特公平6−99134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、施工が容易であり、安定性に優れ、有害な薬剤を用いることなく、シロアリが特に侵入しやすい配管周りおよび/または水抜き穴周りからのシロアリの侵入を阻止することができ、なおかつ床下湿度の制御が可能なシロアリ防除構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、シロアリの侵入に対し、物理的バリアとして、シリカゲルを特定の構造にて床下に施工することによって、床下湿度の制御およびシロアリ侵入阻止の両性能を発揮させることができることを見出し、これに基づいて本発明のシロアリ防除構造を完成させるに到った。
【0009】
すなわち、本発明は、建築物における床下の土間構造に通した配管および/または水抜き穴の周りに囲いを設置し、囲いの中にシリカゲルを所要の厚さに堆積させシロアリ防除層を形成することを特徴とするシロアリ防除構造である。
【0010】
前記囲いとして、内径が14cm以上、高さが3cm以上の円筒を用い、囲いの接地面の縁をシーリングすることが好ましい。
【0011】
また、前記囲いの内周と、配管および/または水抜き穴の外周との間隔が、2cm以上であることが好ましい。
【0012】
前記シロアリ防除層の厚さが、3cm以上であることが好ましい。
【0013】
また、前記シリカゲルが、JIS Z−0701のB形1種のシリカゲルであることが好ましい。
【0014】
さらに、前記シリカゲルの粒径が、1.2〜2.6mmであることが好ましい。
【0015】
さらに、前記シリカゲルの形状が、球状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、施工が容易であり、安定性に優れ、有害な薬剤を用いることなく、シロアリが特に侵入しやすい配管周りおよび/または水抜き穴周りからのシロアリの侵入を阻止することができ、なおかつ床下湿度の制御が可能なシロアリ防除構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明のシロアリ防除構造における好適な実施の形態の一例を示す模式図である。
本発明のシロアリ防除構造は、建築物床下の土間構造に通した配管1の周りに、囲い2を配置し、囲い2の接地面の縁をシーリング材3でシーリングし、さらに囲い2の中にシリカゲル4を堆積させてなる。
【0019】
本発明のシロアリ防除構造は、シリカゲル4を使用することで、シリカゲルが有するシロアリ防除効果を利用してシロアリの侵入を阻止するものである。
ここで、シリカゲルの有するシロアリ防除効果について説明する。
すでに周知されているように、シリカゲルは高い吸湿性を有している。そのため、シリカゲルにシロアリの体表面が接触すると、シリカゲルの吸湿効果により、接触面よりシロアリの体液を吸収する。その結果、シロアリの体組織が破壊され、接触部位の変形や壊死、脱落等が生じ、最終的に死に至る。
また、入手可能なシリカゲルの多くは、粒径が2mm程度のシリカゲルの表面に、粒径が20μm程度の微粉末状のシリカゲルが存在しており、この微粉末状のシリカゲルがシロアリの体表面に付着することで、シロアリの体表面に存在する気門(空気が出入りする開口部)を閉塞させる。このため、シロアリは呼吸ができなくなり結果的に死に至る。
このように、シリカゲルと接触する状況下においては、シロアリが長期間生存することは不可能であるため、シリカゲルをシロアリ防除の手段として用いることが好適であるといえる。
なお、上記したシロアリ防除効果は、乾燥状態のシリカゲルのみならず、含水状態のシリカゲルであっても同様の効果を発揮する。
【0020】
さらに、上記効果に加え、シリカゲルの有する調湿性によって、高湿度の場合にはシリカゲルが湿度を吸収し、逆に乾燥状態の場合にはシリカゲルが吸収した水分を放出し、床下の湿度を常に適切な状態に保つことができる。
【0021】
本発明に使用するシリカゲルは、公知のものが使用できるが、なかでもJIS Z−0701のB形1種のシリカゲルが好ましく用いられる。
ここで、JIS Z−0701のB形1種のシリカゲルとは、相対湿度20%における吸湿率が3.0%以上、相対湿度50%における吸湿率が10.0%以上、相対湿度90%における吸湿率が50.0%以上、含水率が2.0%以上、pH値が4〜8、比抵抗(電気抵抗の変化係数:電気抵抗は断面積に反比例し長さに比例する)が3000Ω・cm以上であり、成分の98%以上が無水ケイ酸により構成されているシリカゲルのことである。
JIS Z−0701のB形1種のシリカゲルは、比表面積(物質の単位質量あたりの表面積)が大きく、比較的湿度の高い環境でも著しい吸湿性能を発揮することができる。
【0022】
また、前記シリカゲルは、シリカゲルの粒径が1.2〜2.6mm、さらに好ましくは1.6〜2.2mmであることが好ましい。
ここで、粒径とは、一般にはふるいわけ試験で用いるふるいの目の寸法を表すものであって、対象物がふるいの目を通過するかどうかによって、対象物の大きさを測定することができる。また、ふるいを何枚も使用し、ふるいの目の寸法を小刻みに変えていくことによって、より精度よく対象物の大きさを測定することができる。
なお、本発明においては、粒径によって対象物(シリカゲル)の大きさを記載している。
粒径が1.2mm未満であると、シリカゲルの大きさが、シロアリが持ち運ぶことが可能な大きさであるために、侵入経路ができやすく、シロアリの侵入を許してしまうおそれがある。
また、粒径が2.6mmより大きいと、シリカゲル間の隙間が大きくなり、シリカゲル間の隙間を通ってシロアリが侵入しやすくなるおそれがある。
【0023】
前記シリカゲルの形状としては、破砕形状、立方体形状、円柱形状、円錐形状、三角錐形、状雲形形状、星型形状、球状などが挙げられるが、なかでも、球状のものが好ましく用いられる。
球状のシリカゲルを用いることで、シロアリの侵入経路となるシリカゲル間の隙間を少なくすることができる。また、球状のシリカゲルを用いることにより、囲いの中に均一に充填することができるため、形成したシロアリ防除層が、防除効果を均一に発揮することができる。
なお、本明細書における球状とは、完全な球体状のほか、楕円や多少の変形があるもの、角がないものという意味である。
【0024】
本発明は、前記シリカゲル4を堆積させることによってシロアリ防除層を形成する。
このとき、形成するシロアリ防除層は3cm以上の厚みを有していることが好ましく、さらに好ましくは5cm以上である。
シロアリ防除層の厚みが3cm未満であると、前述したシリカゲルによるシロアリ防除効果が十分発揮されないおそれがあり、シロアリ防除層を貫通してシロアリが侵入するおそれがある。
【0025】
囲い2は、床下の土間構造に通した配管および/または水抜き穴を囲うように設置し、囲いの中にシリカゲル4を堆積させてシロアリ防除効果のあるシロアリ防除層を形成するために用いられる。
ここで、本明細書における地面および土間構造は、主にコンクリート等で形成された基礎の状態のものを意味し、土壌が露出しているものは含まない。
【0026】
ここで使用される囲いの素材としては、塩化ビニル系、フェノール系、アラミド系、ポリエチレン系、アクリル系の樹脂が挙げられ、特に限定するものではないが、なかでも、塩化ビニル系、フェノール系の樹脂が、安価である点、シーリング材との接着性がよい点、および汎用性の点で好ましい。
【0027】
前記囲いの形状は、筒状であれば、三角形、四角形、多角形など様々な形状のものが使用可能であり、特に限定するものではない。また、シリカゲルの飛散等が生じないものであれば、前記囲いが例えばメッシュ状などのものであってもかまわない。
なかでも、後述するように、囲い2の接地面の縁に対してシーリングを行う場合、施工の容易性という点と、シロアリ防除層を配管周りに均一に形成させることができる点、および囲いを作製する際に加工が容易である点において、筒状のなかでも特に円筒形のものが好ましく用いられる。
【0028】
前記囲いの具体例としては、例えば塩化ビニル系、フェノール系などのプラスチックパイプを所望の長さにカットしたものなどが挙げられる。
【0029】
前記囲いは、囲いの内径が14cm以上であることが好ましく、さらに好ましくは20cm以上である。囲いの内径が14cm未満であると、床下の土間構造に通した配管および/または水抜き穴の周り、およびその周囲に生じている隙間を囲むように配置することが困難となるおそれがあり、結果、囲いの中にシリカゲルを堆積させた際に所望の箇所をシリカゲルで覆うことができないおそれがある。
【0030】
また、囲いの内周と、配管および/または水抜き穴の外周との間隔が、2cm以上であることが好ましく、さらに好ましくは4cm以上である。囲いの内周と、配管および/または水抜き穴の外周との間隔が、2cm未満であると、コンクリートの歪みや収縮などにより配管および/または水抜き穴周りの隙間が開いた場合や、配管および/または水抜き穴周りにクラックが発生した場合などに、囲いの外側にシロアリの侵入経路ができるおそれがある。
【0031】
なお、前記囲い2は、リフォーム時における設置などのように、配管および/または水抜き穴の周りに筒状で設置することが困難な場合には、一度囲いを切断し、その状態で配管および/または水抜き穴の周りに配置し、その後、接着剤等で切断面を接合して再び筒状にすることで、本発明のシロアリ防除構造を形成することが可能となる。
【0032】
前記囲いは、図1に示すように、囲いが地面(主に床下の基礎面)に接している部分(これを以下、接地面と称す)の縁をシーリング材3によってシーリングすることが好ましい。これにより、囲いがしっかりと固定され、より高いシロアリ防除効果を発揮することができる。
また、シーリングを施すことで、囲いの下部分に生じた隙間からシロアリが侵入することも防止でき、シロアリ防除効果がさらに向上する。
【0033】
前記シーリング材3としては、シリコーン系、ウレタン系、塩化ビニル系、エポキシ系の樹脂が挙げられるが、なかでも環境性、汎用性の点で、シリコーン系の樹脂が好ましく用いられる。
【0034】
前記シーリング材3を用いて囲い2をシーリングする方法としては、例えば下記のような方法が挙げられる。
まず、シーリング材が充填されたシーリング容器を、シーリング専用の容器であるシーリングガンに装着したものを用い、囲いの接地面の縁に対し、必要量(充分に接着され容易に隙間が出来ない量)のシーリング材を配置する。その後、ヘラや指等を使ってシーリング材をなぞり、囲いと地面との間に隙間がないように仕上げる。
【0035】
次に、本発明のシロアリ防除構造の形成方法について、具体的に説明する。
ただし、ここで示す形成方法は、本発明のシロアリ防除構造を説明するための一例にすぎず、最終的な構造が、本発明のシロアリ防除構造となる方法であれば、ここに示す形成方法以外であっても何ら問題ない。
【0036】
まず、床下基礎構造にある配管および/または水抜き穴の回りに、囲いとして、筒状パイプを所望の長さにカットしたものを配置する。
次いで、前記囲いの接地面の縁を、シーリング材で接着させる。
次いで、シーリング材が充分に乾燥したことを確認した後、囲い内に、十分に乾燥させたシリカゲルを、囲い内に充填できる限界まで、隙間無く敷き詰めることにより、本発明のシリカゲル防除構造を形成することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明のシロアリ防除構造をさらに詳しく説明するが、本発明は必ずしもこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
1)シリカゲルのシロアリ防除効果評価試験
まず、シリカゲルのシロアリ防除効果に関する評価試験を行った。
なお、上記試験における各測定および評価試験は、下記の方法で行った。
【0039】
[シロアリ生存性試験]
内径60mmのガラスシャーレに、シリカゲル(またはその代替物)を300g入れて表面を平らにした後、イエシロアリ(職蟻)50頭をガラスシャーレ内のシリカゲル(またはその代替物)上に放して、その挙動を肉眼およびデジタル顕微鏡を用いて観察した。
【0040】
[シロアリ防除効果試験1]
内径が8cm、高さが5cmのアクリル製円筒を2つ用意した。
次いで、一方の円筒の一端と、他方の円筒の一端を接合し、連結させた。このとき、連結部分に、濾紙6およびプラスチックメッシュ7を重ねたものをプラスチックメッシュが上面にくるように配置し、これらを挟むようにして円筒を接合した。
次いで、連結したアルカリ製円筒5の上側にあたる円筒部分にシリカゲル4(またはその代替物)を堆積させて層を形成し、表面を平らにした後、その上に縦3cm×横3cm×高さ3cmの餌木8を配置した。
次いで、連結した円筒のうち、下側にあたる円筒部分に、含水率を20%に調湿した砂壌土を充填させた後、砂壌土を充填させた円筒部分を、室内飼育イエシロアリのコロニー9(容器内に形成された、シロアリの巣が形成され、シロアリが生息している土壌のこと)の中に埋めた。
完成した上記実験装置の模式図を図2に示す。
【0041】
その後、上記の状態で6週間放置し、シロアリがシリカゲル4(またはその代替物)の層を貫通したか、もしくはどこまで進んだか(層の厚み方向にみて、cm単位で測定)を観察した。
なお、本明細書においては、形成するシリカゲル4(またはその代替物)の層の厚みを1cm、2cm、3cmに設定し、これら3種類の層厚みそれぞれに対して試験を行った。
【0042】
[シロアリ防除効果試験2]
H型容器11(内径が5cm、高さが12cmのガラス容器2つを、内径が2cm、長さが3cmのガラス管によって、下部で連結してなる容器)を用い、左右のガラス容器の高さ3cmまでと、連結部分のガラス管内に含水率を20%に調湿した砂壌土13を詰めた。
次いで、一方のガラス容器の砂壌土上に、シリカゲル4(またはその代替物)を3cmの厚さで堆積させて層を形成し、表面を平らにした後、その上に縦3cm×横3cm×高さ3cmの餌木8を配置した。
次いで、もう一方のガラス容器内に、イエシロアリ10(職蟻+兵蟻)300頭を投入した。
次いで、両方のガラス容器の上部それぞれに、アルミホイル12で蓋をした。
完成した実験装置の模式図を図3に示す。
【0043】
その後、6週間放置し、シロアリが餌木を食べているかどうか、また餌木をどの程度食べているかを観察した。
【0044】
[実施例1]
粒径が1.2〜2.6mmである、球状のJIS Z−0701のB形1種シリカゲル(富士シリシア株式会社製)を、全乾状態(含水率がほぼ0%の状態)で用いて、上記の各試験を行った。
結果を表1に示す。
【0045】
[実施例2]
粒径が1.2〜2.6mmである、球状のJIS Z−0701のB形1種シリカゲル(富士シリシア株式会社製)を、含水率90%以上に調湿した状態で用いて、上記の各試験を行った。
結果を表1に示す。
【0046】
[実施例3]
粒径1.2〜2.6cmである、破砕形状のJIS Z−0701のB形1種シリカゲル(富士シリシア株式会社製)を、全乾状態(含水率がほぼ0%の状態)で用いて、上記の各試験を行った。
結果を表1に示す。
【0047】
[実施例4]
粒径が1.2〜2.6cmである、破砕形状のJIS Z−0701のB形1種シリカゲル(富士シリシア株式会社製)を、含水率90%以上に調湿した状態で用いて、上記の各試験を行った。
結果を表1に示す。
【0048】
[比較例1]
全乾状態(含水率がほぼ0%の状態)の砂壌土を用い、上記の各試験を行った。
結果を表1に示す。
【0049】
[比較例2]
含水率90%以上に調湿した砂壌土を用い、上記の各試験を行った。
結果を表1に示す。
【0050】
[評価1:シロアリ生存性試験についての評価]
実施例1〜4については、いずれも約1時間でシロアリの活動が停止した。
さらに、活動停止したシロアリをデジタル顕微鏡で観察したところ、実施例1〜4のシロアリは、いずれもシロアリ体表面に微粉末状のシリカゲルが付着していることが確認でき、微粉末状のシリカゲルによって気門が閉塞することによる効果が発揮されたものと判断した。また、シリカゲルによって体液を吸収されたことにより、足部の脱落や、部分的変形が見られた個体も確認できた。
なお、含水させたシリカゲルを用いた実施例2および4が、乾燥状態のシリカゲルを用いた実施例1および3と同等の結果を得ていることから、シリカゲルの吸湿状態に関係なく、上記効果を得ることができるといえる。
よって、実際の施工においても、施工後にシリカゲルが吸湿によって含水した場合であってもシロアリ防除効果が低下することはなく、シリカゲルの吸湿状態に関係なく所望の効果を維持することが可能であるといえる。
さらに、上記結果より、シリカゲルによるシロアリ防除効果と、シリカゲルによる床下の湿度制御効果を同時に発揮することが可能であるといえる。
【0051】
一方、比較例1および2については、シロアリが活動停止することはなく、デジタル顕微鏡による観察においても、シロアリの体表面に目立った異常は確認できなかった。
【0052】
[評価2:シロアリ防除効果試験1における評価]
実施例1および2については、シリカゲル層の厚みが1cmの場合はシロアリが層を貫通したものの、シリカゲル層の厚みが2cmおよび3cmの場合には、いずれもシロアリがシリカゲル層の下面から約1cmのところまで進んだあたりで死滅し、層を貫通することはなかった。
【0053】
また、実施例3および4については、シリカゲル層の厚みが1cmおよび2cmの場合はシロアリが層を貫通したものの、シリカゲル層の厚みが3cmの場合には、シロアリがシリカゲル層の下面から約1cmのところまで進んだあたりで死滅し、層を貫通することはなかった。
【0054】
一方、比較例1および2については、砂壌土の厚みに関わらず、シロアリが層を貫通し、シロアリ防除効果は見られなかった。
【0055】
[評価3:シロアリ防除効果試験2における評価]
実施例1および2については、シロアリがシリカゲル層を貫通して餌木に到達することはなく、餌木はシロアリの被害を全く受けていなかった。
なお、シリカゲル層に接触していたシロアリは、シリカゲル層の下面より1cmのところまで進んだところで死滅していた。
【0056】
実施例3および4については、シロアリがシリカゲルの層を貫通していることが確認され、餌木は全体の約1/3がシロアリによって食べられていた状態であった。
【0057】
また、比較例1および2については、シロアリが砂壌土を貫通して餌木に到達し、餌木も完全に食べられていた状態であった。
【0058】
上記結果より、実施例1〜4のなかでも、特に実施例1および2がより高いシロアリ防除効果を発揮することが確認できた。すなわち、形状が球状であるシリカゲルを用いることで、さらに高いシロアリ防除効果が期待できることが確認された。
【0059】
2)施工時のシロアリ防除効果試験
次いで、実際に基礎を形成した床下のパイプ周りに施工した状態の、シロアリ防除効果に対する試験を行った。
【0060】
まず、試験装置を作製した。
厚み24mmの構造用合板で形成された、大きさが縦2m×横3m×高さ1mの容器内にコロニーを形成したものを用意し、容器内に外径7cmのパイプを通した。
パイプを通した状態の前記容器内のコロニー上面にコンクリートを打設し、厚さ6cmのコンクリート層を形成して実施工を想定した試験用の基礎を作製し、試験装置とした。
上記試験装置を用い、以下の実施例5、比較例3および4に基づいて、実施工状態における、パイプ周りのシロアリ防除効果に対する試験を行った。
【0061】
[実施例5]
前記試験装置のパイプの周りに、内径が14cm、高さが3cmの円筒形の囲いを置き、囲いの接地面の縁をシーリング材でシーリングして乾燥させた後、囲い内に、粒径が1.2〜2.6mmである、JIS Z−0701のB形1種の球状シリカゲルを乾燥状態で充填した。
その後、パイプ周りからのシロアリ侵入の有無を観察した。
【0062】
[比較例3]
前記試験装置のパイプの周りに、囲いを設置しない状態で、実施例5と同様のシリカゲルを、実施例5と同量分だけ、パイプの周りに堆積させた。
その後、パイプ周りからのシロアリ侵入の有無を観察した。
【0063】
[比較例4]
前記試験装置のパイプの周りに、市販されているシロアリ防除シートを敷設した。
その後、パイプ周りからのシロアリ侵入の有無を観察した。
【0064】
[施工時のおける評価]
実施例5のように施工した場合、パイプ周りからのシロアリ侵入は見られなかった。
一方、比較例3のように施工した場合は、シリカゲルが分散してしまい、シロアリの侵入が見られた。
また、比較例4のシートを使用した施工では、パイプ周りの隙間を完全に塞ぐことができず、隙間からシロアリが侵入することを阻止することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のシロアリ防除構造における好適な実施の形態の一例を示す模式図。
【図2】本明細書におけるシロアリ防除効果試験1に使用した実験装置の模式図。
【図3】本明細書におけるシロアリ防除効果試験2に使用した実験装置の模式図。
【符号の説明】
【0066】
1 配管
2 囲い
3 シーリング材
4 シリカゲル
5 連結したアクリル製円筒
6 濾紙
7 プラスチックメッシュ
8 餌木
9 コロニー
10 シロアリ
11 H型容器
12 アルミホイル
13 砂壌土
【0067】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物における床下の土間構造に通した配管および/または水抜き穴の周りに囲いを設置し、囲いの中にシリカゲルを所要の厚さに堆積させシロアリ防除層を形成することを特徴とする、シロアリ防除構造。
【請求項2】
前記囲いに内径が14cm以上、高さが3cm以上の円筒を用い、囲いの接地面の縁をシーリングすることを特徴とする、請求項1記載のシロアリ防除構造。
【請求項3】
前記囲いの内周と、配管および/または水抜き穴の外周との間隔が、2cm以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のシロアリ防除構造。
【請求項4】
前記シロアリ防除層の厚さが3cm以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のシロアリ防除構造。
【請求項5】
前記シリカゲルがJIS Z−0701のB形1種のシリカゲルである、請求項1〜4のいずれかに記載のシロアリ防除構造。
【請求項6】
前記シリカゲルの粒径が1.2〜2.6mmである、請求項1〜5のいずれかに記載のシロアリ防除構造。
【請求項7】
前記シリカゲルの形状が球状である、請求項1〜6のいずれかに記載のシロアリ防除構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−115135(P2010−115135A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289877(P2008−289877)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】