説明

シングルイベントアップセットエラー蓄積防止回路

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はメモリを有し、宇宙等の重粒子被爆下で使用されるデータ処理装置に関し、特にシングルイベントアップセット現象によるエラーがメモリに蓄積されるのを防止するシングルイベントアップセットエラー蓄積防止回路に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、宇宙等の重粒子被爆下で使用されるデータ処理装置に於いては、メモリに誤り訂正機能を設けると共に、CPUに定期的にメモリの全領域をリードアクセスさせることにより、シングルイベントアップセットエラーがメモリに蓄積されるのを防止している。即ち、従来は、一定周期毎に、メモリの全領域について、メモリデータの読み出し,誤り訂正コードの読み出し,エラー検出,訂正済みデータの書込み等が行なわれ、これにより、シングルイベントアップセットエラーの蓄積が防止されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来は、CPUが定期的にメモリの全領域をリードアクセスしているため、CPUの負荷が大きくなるという問題があると共に、シングルイベントアップセットエラーの蓄積防止のために多くの時間が費やされてしまうという問題点があった。
【0004】本発明の目的はCPU等のデータ処理部の負荷を少なくすると共に、シングルイベントアップセットエラー蓄積防止のための処理に要する時間を短くすることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するため、メモリと、該メモリをアクセスするデータ処理部と、該データ処理部がアクセスした前記メモリのアドレスに格納されているデータの誤りを訂正する誤り訂正回路とを備え、前記データ処理部が一定周期でエラー蓄積防止アクセスを行なうデータ処理装置に於いて、記データ処理部に対して前記一定周期でエラー蓄積防止アクセスの開始を指示するエラー蓄積防止アクセストリガを出力すると共に、エラー蓄積防止アクセストリガを出力してから一定時間後にリセット信号を出力するタイマと、該タイマからリセット信号が出力された時点に於いて、保持している前記メモリの各アドレスに対応するアクセスタグを全てアクセス実績無しを示すものに変更し、前記データ処理部がエラー蓄積防止アクセスを終了した後、前記タイマから出力されるエラー蓄積防止アクセストリガに応答して次のエラー蓄積防止アクセスを開始するまでの期間に於いては、前記データ処理部から出力されたアドレスに対応するアクセスタグをアクセス実績有りを示すものに変更し、前記データ処理部が前記タイマから出力されるエラー蓄積防止アクセストリガに応答してエラー蓄積防止アクセスを開始した後、エラー蓄積防止アクセスを終了するまでの期間に於いては、前記データ処理部から出力されたアドレスに対応するアクセスタグを出力するアクセスログ部を備え、前記データ処理部はエラー蓄積防止アクセス時に出力したリードアドレスに応答して前記アクセスログ部からアクセス実績無しを示すアクセスタグが出力された場合、そのアクセスサイクルをキャンセルし、次のアドレスをリードアクセスする構成を備えたものである。
【0006】
【作用】データ処理部がアクセスしたアドレスのデータに誤りがあると、誤り訂正回路によりその誤りが訂正される。アクセスログ部は、データ処理部がエラー蓄積防止アクセスを終了した後、タイマから出力されるエラー蓄積防止アクセストリガに応答して次のエラー蓄積防止アクセスを開始するまでの期間に於いて、データ処理部から出力されたアドレスに対応するアクセスタグをアクセス実績有りを示すものに変更する
【0007】そして、エラー蓄積防止アクセス時、データ処理部は、出力したリードアドレスに応答してアクセスログ部からアクセス実績無しを示すアクセスタグが出力された場合は、そのアクセスサイクルをキャンセルし、次のアドレスをリードアクセスする。
【0008】
【実施例】次に本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0009】図1は本発明の実施例のブロック図であり、データ処理部1と、スタティックメモリ等のメモリ2と、誤り訂正回路3と、メモリ制御部4と、タイマ5と、高速メモリによって構成されたアクセスログレジスタ6とから構成されている。
【0010】誤り訂正回路3はライト時に誤り訂正符号dを生成する機能と、リード時に誤り検出を行ない、誤りを検出した場合はエラー検出フラグjを出力すると共に訂正データを生成する機能を有している。
【0011】データ処理部1はメモリ2をアクセスする機能を有すると共に、エラー検出フラグjが加えられた場合、修正後書き込みを行なう機能を有している。また、データ処理部1はエラー蓄積防止アクセス時には切替信号kを“1”にし、それ以外の時は切替信号kを“0”にする。
【0012】タイマ5はクロック信号fに基づいて周期的にエラー蓄積防止アクセストリガgを出力する機能を有すると共に、エラー蓄積防止アクセストリガgを出力してから一定時間後にリセット信号mを出力する機能を備えている。
【0013】メモリ制御部4はメモリ2に対するリード,ライトアクセスを制御する機能を有すると共に、切替信号kが“0”の場合、メモリ2がアクセスされる毎にメモリアクセスフラグiを“1”にする機能を有している。
【0014】アクセスログレジスタ6はメモリ2の各アドレス対応の領域を有し、メモリアクセスフラグiが“1”の場合はアドレスバスb上のアドレスと対応する領域にアクセスタグ“1”をセットし、メモリアクセスフラグiが“0”の場合はアドレスバスb上のアドレスと対応する領域に格納されているアクセスタグを出力する。また、アクセスログレジスタ6はリセット信号mが加えられることにより、その内容が全て“0”にされる。
【0015】次に本実施例の動作を説明する。
【0016】先ず、データ処理部1がメモリ2に対してライトアクセスを行なう場合の動作を説明する。
【0017】ライトアクセス時、データ処理部1はデータバスa,アドレスバスbにそれぞれデータ,アドレスを出力する。データ処理部1から出力されたデータはメモリ制御部4を介して誤り訂正回路3に加えられ、誤り訂正回路3はそのデータに基づいて誤り訂正符号dを生成し、出力する。これにより、メモリ2のメモリアドレスバスeによって示されるアドレスにデータと誤り訂正符号dとが書込まれる。
【0018】また、ライトアクセス時には切替信号kが“0”になっているので、メモリ制御部4はデータ処理部1がメモリ2をライトアクセスする毎にメモリアクセスフラグiを“1”にする。これにより、アクセスログレジスタ6はアドレスバスb上のアドレスに対応した領域にアクセスタグ“1”を設定する。
【0019】次に、データ処理部1がメモリ2に対してリードアクセスを行なう場合の動作を説明する。
【0020】リードアクセス時、データ処理部1はアドレスバスbにアドレスを出力する。データ処理部1から出力されたアドレスはメモリ制御部4,メモリアドレスバスeを介してメモリ2に加えられ、データ及び誤り訂正符号dが読み出される。
【0021】誤り訂正回路3はメモリ2から読み出したデータ,誤り訂正符号dに基づいてデータの誤りを検出すると、エラー検出フラグjを出力すると共に、エラー訂正を行なう。このエラー訂正されたデータはメモリデータバスc,メモリ制御部4,データバスaを介してデータ処理部1に加えられる。即ち、データ処理部1には常に正しいデータが加えられることになる。
【0022】データ処理部1は誤り訂正回路3からエラー検出フラグjが加えられると、先に読み込んだ訂正済みのデータをデータバスaに出力すると共に、今回のリードアクセス時に出力したアドレスと同一のアドレスをアドレスバスbに出力する。これにより、メモリ2には訂正済みの正しいデータが書込まれる。
【0023】また、リードアクセス時には切替信号kが“0”になっているので、メモリ制御部4はメモリ2がアクセスされる毎にメモリアクセスフラグiを“1”にする。これにより、ライトアクセスと同様に、アクセスログレジスタ6の今回アクセスされたアドレスと対応する領域にアクセスタグ“1”がセットされる。
【0024】次にデータ処理部1がメモリ2に対してエラー蓄積防止アクセスを行なう場合の動作を説明する。
【0025】エラー蓄積防止アクセスはタイマ5から一定周期で出力されるエラー蓄積防止アクセストリガgに応答して開始される。
【0026】データ処理部1はタイマ5からエラー蓄積防止アクセストリガgが出力されると、エラー蓄積防止アクセスを開始し、先ず、切替信号kを“1”にし、その後、メモリ2の先頭アドレスをアドレスバスbに出力し、そのアドレスをリードアクセスする。
【0027】この時、切替信号kは“1”になっているので、メモリ制御部4から出力されるメモリアクセスフラグiは“1”になることはない。従って、アドレスバスbにアドレスが出力されることにより、アクセスログレジスタ6の上記アドレスに対応する領域の内容がアクセス中断トリガhとしてデータ処理部1に加えられることになる。
【0028】データ処理部1はアクセス中断トリガhとして“1”が加えられた場合、即ち、今回アクセスしたアドレスが過去一定期間の間にアクセス実績のあるアドレスである場合は、そのアクセスサイクルをキャンセルし、次のアドレスをアクセスする。また、アクセス中断トリガhとして“0”が加えられた場合は前述したリードアクセス時と同様の処理を行なう。
【0029】そして、メモリ2の最終アドレスまで、前述したと同様の処理を行なうと、データ処理部1は切替信号kを“0”にし、エラー蓄積防止アクセスを終了する。
【0030】そして、エラー蓄積防止アクセスが終了後すると、タイマ5からリセット信号mが出力され、アクセスログレジスタ6の内容が全て“0”にされる。尚、タイマ5は前述したように、エラー蓄積防止アクセストリガgを出力した後、一定時間後にリセット信号mを出力するものであるが、上記一定時間は、エラー蓄積防止アクセスが終了した後にリセット信号mが出力されるのもであれば良く、例えば、メモリ2の全アドレスをリードアクセスするのに要する時間とすることができる。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、エラー蓄積防止アクセスが行われていない期間に於いてアクセスされたメモリのアドレスに対応するアクセスタグをアクセス実績有りを示すものに変更するアクセスログ部を設け、エラー蓄積防止アクセス時には、出力したリードアドレスに応答してアクセスログ部からアクセス実績無しを示すアクセスタグが出力された場合、そのアクセスサイクルをキャンセルし、次のアドレスをリードアクセするようにしたものであるので、ハードウェアを複雑にすることなく、データ処理部1等のCPUの負荷低減,処理時間短縮を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例のブロック図である。
【符号の説明】
1…データ処理部
2…メモリ
3…誤り訂正回路
4…メモリ制御部
5…タイマ
6…アクセスログレジスタ
a…データバス
b…アドレスバス
c…メモリデータバス
d…誤り訂正符号
e…メモリアドレスバス
f…クロック信号
g…エラー蓄積防止アクセストリガ
h…アクセス中断トリガ
i…メモリアクセスフラグ
j…エラー検出フラグ
k…切替信号
m…リセット信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】 メモリと、該メモリをアクセスするデータ処理部と、該データ処理部がアクセスした前記メモリのアドレスに格納されているデータの誤りを訂正する誤り訂正回路とを備え、前記データ処理部が一定周期でエラー蓄積防止アクセスを行なうデータ処理装置に於いて、前記データ処理部に対して前記一定周期でエラー蓄積防止アクセスの開始を指示するエラー蓄積防止アクセストリガを出力すると共に、エラー蓄積防止アクセストリガを出力してから一定時間後にリセット信号を出力するタイマと、該タイマからリセット信号が出力された時点に於いて、保持している前記メモリの各アドレスに対応するアクセスタグを全てアクセス実績無しを示すものに変更し、前記データ処理部がエラー蓄積防止アクセスを終了した後、前記タイマから出力されるエラー蓄積防止アクセストリガに応答して次のエラー蓄積防止アクセスを開始するまでの期間に於いては、前記データ処理部から出力されたアドレスに対応するアクセスタグをアクセス実績有りを示すものに変更し、前記データ処理部が前記タイマから出力されるエラー蓄積防止アクセストリガに応答してエラー蓄積防止アクセスを開始した後、エラー蓄積防止アクセスを終了するまでの期間に於いては、前記データ処理部から出力されたアドレスに対応するアクセスタグを出力するアクセスログ部を備え、前記データ処理部はエラー蓄積防止アクセス時に出力したリードアドレスに応答して前記アクセスログ部からアクセス実績無しを示すアクセスタグが出力された場合、そのアクセスサイクルをキャンセルし、次のアドレスをリードアクセスする構成を備えたことを特徴とするシングルイベントアップセットエラー蓄積防止回路。

【図1】
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【特許番号】第2682271号
【登録日】平成9年(1997)8月8日
【発行日】平成9年(1997)11月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−155358
【出願日】平成3年(1991)5月31日
【公開番号】特開平4−354040
【公開日】平成4年(1992)12月8日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【参考文献】
【文献】特開 平3−103951(JP,A)
【文献】特開 平2−252190(JP,A)