説明

シート位置合わせ機構、シート位置合わせ装置、シート収納装置、画像形成装置、及び画像読取装置

【課題】手差しトレイ60上に載置した後、第1サイドフェンス611や第2サイドフェンス612の中心線L1に向けてのスライド移動によって中心線L1に位置合わせする際の記録シートにおける裏面の傷付きを抑える。
【解決手段】手差しトレイ60からのシート送り出し方向(矢印C方向)に直交する搬送直交方向(矢印B方向)にスライド移動する第1サイドフェンス611や第2サイドフェンス612によって中心線L1に位置合わせされる際の記録シートの裏面を受けながら、記録シートの動きに追従して自在に回転する回転コロ625を、搬送直交方向に並べて複数配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、載置面の上に載置されたシート部材を所定の位置に位置合わせするシート位置合わせ機構、並びに、これを備えるシート位置合わせ装置、シート収納装置、画像形成装置、及び画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やスキャナ等の画像読取装置、原稿自動搬送装置(以下、ADFという)など、シート状のシート部材を用いるものにおいて、シート位置合わせ機構を搭載したものが知られている。このシート位置合わせ機構は、OHPフィルム等の記録シートや、原稿シートなどのシート部材を、載置面上におけるシート搬送方向と直交する搬送直交方向の所定位置に位置合わせするものである。例えば、画像形成装置では、記録シートを収納する給紙カセットや手差し給紙トレイなどにシート位置合わせ機構を搭載したものが知られている。また、スキャナやADFでは、原稿シートを載置する原稿載置台にシート位置合わせ機構を搭載したものが知られている。この種のシート位置合わせ機構は、シート部材を載置する載置面上で搬送直交方向に並ぶ2枚のサイドフェンスを有している。一方のサイドフェンスは、載置面上に載置されたシート部材の搬送直交方向における一端部の位置を規制するためのものである。また、他方のサイドフェンスは、シート部材の搬送直交方向における他端部の位置を規制するためのものである。それらサイドフェンスのうち、少なくとも一方は、搬送直交方向にスライド移動するようになっている。載置面上にシート部材を載置する操作者は、まず、サイドフェンスを手動でスライド移動させて、フェンス間距離をシート部材の大きさよりも広げる。これにより、シート載置用のスペースをフェンス間に確保する。そして、フェンス間にシート部材をセットしたら、サイドフェンスを手動でシート部材に向けてスライド移動させて、フェンス間にシート部材を挟み込ませる。このとき、載置面上で位置合わせ基準からずれた位置にあるシート部材を、サイドフェンスによって位置合わせ基準に向けて押していくことで、シート部材の位置を位置合わせ基準に合わせることができる。
【0003】
このような構成のシート位置合わせ機構と、サイドフェンスを駆動するための駆動源や駆動伝達機構とを組み合わせて、サイドフェンスのスライド移動を自動で行うようにしたシート位置合わせ装置も知られている。例えば、特許文献1に記載の画像形成装置は、かかる構成のシート位置合わせ装置により、手差しトレイ上に載置された記録シートをトレイの搬送直交方向の中心位置に自動で位置合わせするようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシート位置合わせ機構やシート位置合わせ装置は、シート部材を容易に位置合わせすることができる反面、シート部材に傷や破損を発生させ易いという問題があった。具体的には、載置面上のシート部材をサイドフェンスのスライド移動によって位置合わせ基準まで押していく過程で、シート部材を載置面で擦って傷付けてしまうことがある。特に、複数のシート部材を積み重ねて束の状態で載置した場合、それらシート部材の全重量で最下位のシート部材を載置面に押さえ付けることから、最下位のシート部材の載置面との接触面を傷付け易くなる。また、写真印刷用のフォト光沢紙など、表面処理を施したシート部材では、1枚だけの状態であっても、載置面との摺擦によって細かい擦れ傷を発生させてしまうことがある。また、次のような理由により、シート部材に折れや破れを発生させてしまうこともある。即ち、シート部材をサイドフェンスによって正規の位置に向けて移動させる際に、シート先端位置を規制するためのエンドフェンスに対してシート先端を引っ掛けてしまうことがある。この状態でサイドフェンスを無理にスライド移動させると、シート部材に折れや破れを発生させてしまうのである。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シート部材の裏面の傷付きを抑えるか、あるいは、シート部材の折れや破れの発生を抑えることができるシート位置合わせ機構等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、シート状のシート部材を載置するための載置面と、前記載置面に沿った方向であり且つ前記載置面上でのシート搬送方向と直交する方向である搬送直交方向に移動するように前記載置面上に配設され、前記載置面上に載置されたシート部材の前記搬送直交方向の一端に当接することで前記一端の位置を規制する第1規制部材と、前記シート部材の前記搬送直交方向の他端に当接することで前記他端の位置を規制する第2規制部材とを有し、前記第1規制部材によって前記一端の位置を規制しつつ、前記第2規制部材によって前記他端の位置を規制することで、前記載置面上に載置された前記シート部材の前記搬送直交方向における位置を所定位置に合わせるシート位置合わせ機構において、前記搬送直交方向に移動する前記第1規制部材によって押される前記シート部材の裏面に対して付与される摩擦力を抑制する摩擦抑制手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、シート状のシート部材を載置するための載置面と、前記載置面に載置されたシート部材の先端に突き当たる突き当て面と、前記載置面に沿った方向であり且つ前記載置面上でのシート搬送方向と直交する方向である搬送直交方向に移動するように前記載置面上に配設され、前記載置面上に載置されたシート部材の前記搬送直交方向の一端に当接することで前記一端の位置を規制する第1規制部材と、前記シート部材の前記搬送直交方向の他端に当接することで前記他端の位置を規制する第2規制部材とを有し、前記第1規制部材によって前記一端の位置を規制しつつ、前記第2規制部材によって前記他端の位置を規制することで、前記載置面上に載置された前記シート部材の前記搬送直交方向における位置を所定位置に合わせるシート位置合わせ機構において、前記突き当て面と、前記搬送直交方向に移動する前記第1規制部材によって押される前記シート部材の先端との摩擦力を抑制する摩擦抑制手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2のシート位置合わせ機構において、前記摩擦抑制手段を第1摩擦抑制手段として設けるとともに、前記搬送直交方向に移動する前記第1規制部材によって押される前記シート部材の裏面に対して付与される摩擦力を抑制する第2摩擦抑制手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2又は3のシート位置合わせ機構において、前記載置面を前記突き当て面に向かって下がる下り勾配面としたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1のシート位置合わせ機構において、シート部材の裏面を受けた状態で、前記サイドフェンスによって前記搬送直交方向に押される前記シート部材に追従して従動回転することで、前記シート部材の前記搬送直交方向への移動を促しながら、前記移動に伴って前記シート部材の裏面に対して付与される摩擦力を抑制する回転部材を、前記摩擦抑制手段として前記搬送直交方向に複数並べて配設したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5のシート位置合わせ機構において、複数の前記回転部材としてそれぞれ、回転可能に支持される回転軸部、及びこの回転軸部よりも大径で且つシート部材に接触する大径部を具備するものを用いるとともに、それぞれの前記回転部材の前記回転軸部を、前記載置面よりも突出させない位置に配設したことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6のシート位置合わせ機構において、前記回転部材の前記搬送方向における全域のうち、少なくとも搬送方向上流側の端部箇所を、下流側から上流側に向けて徐々に小径になる裁頭円錐状の形状にしたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項2乃至4の何れかのシート位置合わせ機構において、シート部材の先端を受けた状態で、前記サイドフェンスによって前記搬送直交方向に押される前記シート部材に追従して従動回転することで、前記シート部材の前記搬送直交方向への移動を促しながら、前記突き当て面と前記シート部材の先端との摩擦力を抑制する回転部材を、前記摩擦抑制手段として前記搬送直交方向に複数並べて配設したことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8のシート位置合わせ機構において、複数の前記回転部材としてそれぞれ、回転可能に支持される回転軸部、及びこの回転軸部よりも大径で且つシート部材に接触する大径部を具備するものを用いるとともに、それぞれの前記回転部材の前記回転軸部を、前記突き当て面よりも突出させない位置に配設したことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項9のシート位置合わせ機構において、前記回転部材の全域のうち、少なくとも前記載置面とは反対側の端部箇所を、前記反対側に向けて徐々に小径になる裁頭円錐状の形状にしたことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項1乃至4の何れかのシート位置合わせ機構において、前記摩擦抑制手段として、前記載置面から突出してシート部材の裏面を受ける突出部、又は、前記突き当て面から突出してシート部材の先端を受ける突出部、を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項11のシート位置合わせ機構において、前記突出部として、前記搬送直交方向に沿って延在するレール状のものを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項1乃至4の何れかのシート位置合わせ機構において、前記摩擦抑制手段として、フッ素樹脂及びシリコーン樹脂のうち、少なくとも何れか一方を含む材料からなる樹脂面を、シート部材の裏面又は先端に接触させるもの、を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、請求項1乃至4の何れかのシート位置合わせ機構において、前記摩擦抑制手段として、前記載置面とシート部材の裏面との間、あるいは、前記突き当て面とシート部材の先端との間、に空気を送り込むもの、を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、請求項1乃至14の何れかのシート位置合わせ機構において、前記載置面又は前記突き当て面に振動を加える加振手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、シート状のシート部材を載置するための載置面、前記載置面に沿った方向であり且つ前記載置面上でのシート搬送方向と直交する方向である搬送直交方向に移動するように前記載置面上に配設され、前記載置面上に載置されたシート部材の前記搬送直交方向の一端に当接することで前記一端の位置を規制する第1規制部材、及び、前記シート部材の前記搬送直交方向の他端に当接することで前記他端の位置を規制する第2規制部材を具備し、前記第1規制部材によって前記一端の位置を規制しつつ、前記第2規制部材によって前記他端の位置を規制することで、前記載置面上に載置された前記シート部材の前記搬送直交方向における位置を所定位置に合わせるシート位置合わせ機構と、前記第1規制部材を駆動するための駆動力を発揮する駆動源と、前記駆動力を、前記第1規制部材及び前記第2規制部材のうち、少なくとも前記第1規制部材に伝達する駆動伝達手段とを有するシート位置合わせ装置において、前記シート位置合わせ機構として、請求項1乃至15の何れかのシート位置合わせ機構を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項17の発明は、請求項16のシート位置合わせ装置において、従動側駆動伝達回転体にかかるトルクが所定の閾値を超えた場合に、原動側駆動伝達回転体ら前記従動側駆動伝達回転体への回転駆動力の伝達を断つことで、移動中の前記第1規制部材を停止させるトルク制限機構を、前記駆動伝達手段に設けたことを特徴とするものである。
また、請求項18の発明は、請求項17のシート位置合わせ装置において、前記第2規制部材を前記載置面上でスライド移動可能に配設するとともに、前記第1規制部材と前記第2規制部材とに対して、前記搬送直交方向に沿って互いに逆方向の力を伝達し、且つ、前記第1規制部材と前記第2規制部材とを前記トルク制限機構によって互いに同じタイミングで停止させるように、前記駆動伝達手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項19の発明は、請求項17又は18のシート位置合わせ装置であって、前記載置面の全域のうち、シート部材の搬送方向の後端側を載置するための後端側載置面が、シート部材の先端側を載置するための先端側載置面に対して所定の屈折角をもって屈折する姿勢をとるように設けられたものであり、且つ、前記第1規制部材及び第2規制部材が、前記載置面上に載置されているシート部材の全域のうち、少なくとも前記屈折角に沿って屈折している屈折部に当接し得る位置で、前記搬送直交方向に沿って移動可能に配設されたものであることを特徴とする、ものである。
また、請求項20の発明は、請求項17乃至19の何れかのシート位置合わせ装置において、前記従動側駆動伝達回転体の回転を検知する回転検知手段を設けるとともに、前記第1規制部材を前記載置面上のシート部材に向けて移動させるために前記駆動源の駆動を開始した後、前記回転検知手段が前記従動側駆動伝達回転体の回転を検知しなくなったことに基づいて前記駆動源の駆動を停止させる駆動制御手段を設けた
ことを特徴とするものである。
また、請求項21の発明は、請求項17乃至20の何れかのシート位置合わせ装置において、前記載置面にシート部材が載置される際の前記第1規制部材の前記搬送直交方向における待避位置であるホームポジションに、前記第1規制部材が位置しているか否かを検知するホームポジションセンサを設けるとともに、操作者からの命令に基づいて、前記第1規制部材を前記ホームポジションに移動させるまで前記駆動源を逆駆動する駆動制御手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項22の発明は、請求項21のシート位置合わせ装置において、前記第1規制部材を前記ホームポジションに位置させている状態で前記駆動源の駆動を開始してから、前記駆動源を停止するまでの駆動量に基づいて、前記載置面上に載置されたシート部材のサイズを特定するシートサイズ特定手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項23の発明は、載置面上に載置されたシート部材を所定位置に位置合わせするシート位置合わせ手段を有するシート収納装置において、前記シート位置合わせ手段として、請求項1乃至15の何れかのシート位置合わせ機構、あるいは、請求項16乃至22の何れかのシート位置合わせ装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項24の発明は、シート部材としての記録シートの表面に画像を記録する画像記録手段と、前記画像記録手段に向けて送り出すための記録シート、あるいは、前記画像記録手段を経由した後の記録シート、を載置する載置面上における記録シートの位置を所定の位置に合わせるシート位置合わせ手段とを備える画像形成装置において、前記シート位置合わせ手段として、請求項1乃至15の何れかのシート位置合わせ機構、あるいは、請求項16乃至22の何れかのシート位置合わせ装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項25の発明は、原稿シートに記録されている画像を読み取る読取手段と、前記読取手段に向けて送り出すための記録シート、あるいは、前記読取手段を経由した後の記録シート、を載置する載置面上における記録シートの位置を所定の位置に合わせるシート位置合わせ手段とを備える画像読取装置において、前記シート位置合わせ手段として、請求項1乃至15の何れかのシート位置合わせ機構、あるいは、請求項16乃至22の何れかのシート位置合わせ装置を用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
これらの発明のうち、請求項1の発明特定事項の全てを備えるものにおいては、載置面上で第1規制部材に押されながら搬送直交方向に移動するシート部材の裏面に対して付与される摩擦力を摩擦抑制手段によって抑制することで、シート部材の裏面を擦ってしまうことによるシート部材の裏面の傷付きを抑えることができる。
また、請求項2の発明特定事項の全てを備えるものにおいては、載置面上で第1規制部材に押されながら搬送直交方向に移動するシート部材の先端と、これに突き当たる突き当て面との摩擦力を摩擦抑制手段によって抑制することで、突き当て面に対してシート部材の先端を引っ掛かり難くする。これにより、シート部材の先端を突き当て面に引っ掛けた状態で、第1規制部材を移動させてしまうことによるシート部材の折れや破れの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態に係る複写機を示す概略構成図。
【図2】同複写機のスキャナ及びADFを示す拡大斜視図。
【図3】同ADF及びスキャナを示す拡大構成図。
【図4】同複写機の手差しトレイを示す拡大斜視図。
【図5】複数の記録シートをシート束の状態で載置している同手差しトレイを示す斜視図。
【図6】同手差しトレイの第1載置部を示す分解斜視図。
【図7】同第1載置部の駆動伝達機構を2つのサイドフェンスとともに示す分解斜視図。
【図8】同第1載置部のトルク制限機構を拡大して示す拡大構成図。
【図9】同第1載置部の回転検知センサから出力されるパルス信号の波形を示す波形図。
【図10】同手差しトレイを横から示す側面図。
【図11】同複写機の電気回路の一部を示すブロック図。
【図12】複写機の制御部によって実施されるシート位置合わせ処理の各処理工程を示すフローチャート。
【図13】位置合わせ及びパルスカウント処理における各処理工程を示すフローチャート。
【図14】回転コロの一例を示す拡大斜視図。
【図15】同複写機の手差しトレイに搭載されている回転コロを示す拡大斜視図。
【図16】第2実施形態に係る複写機の手差しトレイを示す側面図。
【図17】同手差しトレイを示す斜視図。
【図18】第4実施形態に係る複写機の手差しトレイを示す斜視図。
【図19】同手差しトレイを示す側面図。
【図20】第4実施形態に係る複写機の第1変形例における手差しトレイを示す斜視図。
【図21】第4実施形態に係る複写機の第2変形例における手差しトレイを示す斜視図。
【図22】第5実施形態に係る複写機の手差しトレイを示す斜視図。
【図23】同手差しトレイの一部を示す断面図。
【図24】振動子が設けられた手差しトレイを示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した画像形成装置や画像読取装置を具備する複写機の第1実施形態について説明する。なお、第1実施形態に係る複写機は、あくまでも本発明を適用した形態の一例であって、本発明の適用範囲がこの複写機に限られるものではない。
【0010】
まず、第1実施形態に係る複写機の特徴的な構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る複写機1を示す概略構成図である。この複写機1は、画像形成部4や給紙部5を具備する画像形成装置と、原稿自動搬送装置(ADF)2やスキャナ3を具備する画像読取装置とを備えている。
【0011】
画像形成装置の給紙部5は、画像が形成されるシート部材としての記録シート6を収納する給紙カセット41を具備している。また、画像形成装置の画像形成部4は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を作像する4つのプロセスカートリッジ20Y,20M,20C,20Kや、転写装置30を具備する画像形成装置としての画像形成部4を備えている。また、画像読取装置は、原稿シートの画像を読み取るスキャナ3と、原稿シートをスキャナ3の原稿読取位置に自動的に搬送するADF2とを備えている。なお、同図においては、第1実施形態に係る複写機をその正面側から示しており、図紙面に直交する方向の手前側が複写機の前方、奥側が複写機の後方に相当する。また、複写機を主体にすると、図中左方向は、複写機の右方向に相当し、図中右方向は複写機の左方向に相当する。
【0012】
画像形成部4は、鉛直方向におけるほぼ中央部に、転写装置30を備えている。この転写装置30は、中間転写体としての無端状の中間転写ベルト32と、これのループ内側に配設された複数のローラとを具備しており、それらローラによって中間転写ベルト32を逆三角形の形状で張架している。逆三角形の形状における3つの頂点位置では、それぞれ支持ローラが中間転写ベルト32をローラ周面に大きな巻き付き角で巻き掛けている。そして、それら3つの支持ローラの何れか1つが、自らの回転駆動によって中間転写ベルト32を図中時計回り方向に無端移動せしめる。
【0013】
3つの支持ローラのうち、図中で最も左側に配設されている支持ローラに対するベルト掛け回し箇所には、ベルトクリーニング装置がループ外側から当接している。このベルトクリーニング装置は、後述する2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト32表面に付着している転写残トナーを、ベルト表面から除去するものである。
【0014】
図中で最も左側に配設された支持ローラとの接触位置を通過してから、図中で最も右側に配設された支持ローラとの接触位置に進入する前のベルト領域は、ほぼ水平方向に沿って真っ直ぐに進む水平進行領域になっている。この水平進行領域の上方には、Y,M,C,K用の4つのプロセスカートリッジ20Y,20M,20C,20Kがベルト移動方向に沿って順に並ぶように配設されている。プロセスカートリッジ20Y,20M,20C,20Kは、中間転写ベルト32に重ね合わせて転写するためのY,M,C,Kトナー像を作像するためのものである。第1実施形態に係る複写機は、プロセスカートリッジ20Y,20M,20C,20Kにより、Y,M,C,Kトナー像をそれぞれ並行して作像するいわゆるタンデム型の構成になっている。なお、第1実施形態に係る複写機では、Y,M,C,Kという色の並び順を採用しているが、色の並び順はこの順序に限定されるものではない。
【0015】
画像形成部4において、プロセスカートリッジ20Y,20M,20C,20Kはそれぞれ、像担持体としてのドラム状の感光体21Y,21M,21C,21Kを具備している。感光体の周りには、帯電ローラ(22Y,22M,22C,22K)を具備する帯電装置、現像装置(24Y,24M,24C,24K)、感光体クリーニング装置(23Y,23M,23C,23K)、図示しない除電装置などが配設されている。感光体21Y,21M,21C,21Kに対向配置された帯電部材である帯電ローラ22Y,22M,22C,22Kには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加される。これにより、帯電ローラ22Y,22M,22C,22Kと、感光体21Y,21M,21C,21Kとの間で放電が発生することにより、感光体21Y,21M,21C,21Kの表面が一様に帯電せしめられる。第1実施形態に係る複写機では、帯電ローラ22Y,22M,22C,22Kにより、感光体21Y,21M,21C,21Kの表面をトナーの正規帯電極性と同極性であるマイナス極性に一様帯電させるようになっている。
【0016】
なお、Y,M,C,K用の帯電装置として、帯電ローラを用いる方式のものに代えて、タングステン等のワイヤを用いるコロナ帯電方式や、導電性ブラシを用いるブラシ帯電方式のものを採用してもよい。また、帯電ローラなどの帯電部材については、感光体21Y,21M,21C,21Kに対して、接触させる接触方式で配設してもよいし、非接触の状態とする非接触方式で配設してもよい。非接触方式は、帯電ローラ等の帯電部材と感光体との間における空隙が感光体の偏心等によって変動することによって帯電ムラを引き起こし易いというデメリットがある反面、接触方式に比べて、帯電部材へのトナー付着による帯電ムラが発生し難いという利点がある帯電ローラ等の帯電部材に印加する1次転写バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳した重畳バイアスを採用することが好ましい。これにより、直流電圧のみを印加する場合に比べて、感光体の表面を均一に帯電させることが可能となる。
【0017】
4つのプロセスカートリッジ20Y,20M,20C,20Kの上方には、露光装置10が配設されている。この露光装置10と、Y,M,C,K用の帯電装置とにより、感光体21Y,21M,21C,21Kに静電潜像を形成する潜像形成手段が構成されている。露光装置10は、スキャナ3による画像読み取りで得られた画像情報、あるいは、外部のパーソナルコンピュータ等から送られてくる画像情報に基づいて生成したY,M,C,K用の書込光により、図中反時計回り方向に回転駆動される感光体21Y,21M,21C,21Kにおける一様帯電後の表面を光走査するものである。感光体21Y,21M,21C,21Kの表面全域のうち、光走査を受けた露光部は、光走査を受けていない地肌部に比べて電位を減衰させる。これにより、露光部には静電潜像が担持されることになる。露光装置10としては、レーザーダイオードによって書込光を生成するものや、LEDアレイによって書込光を生成するものを例示することができる。
【0018】
感光体21Y,21M,21C,21Kの表面に担持されたY,M,C,K用の静電潜像は、現像装置24Y,24M,24C,24KによってY,M,C,Kトナーが付着せしめられることで、Y,M,C,Kトナー像になって可視化する。感光体21Y,21M,21C,21Kは、中間転写ベルト32に当接して1次転写ニップを形成している。そして、Y,M,C,K用の1次転写ニップの裏側では、中間転写ベルト32のループ内側に配設されたY,M,C,K用の1次転写ローラが、感光体21Y,21M,21C,21Kとの間に中間転写ベルト32を挟み込んでいる。それらY,M,C,K用の1次転写ローラには、それぞれトナーの正規帯電極性とは逆極性であるプラス極性の1次転写バイアスが印加されている。そして、Y用の1次転写ニップにおいては、感光体21Y上に形成されたYトナー像が中間転写ベルト32のおもて面に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写されたベルト表面は、その後、M,C,K用の1次転写ニップを順に通過していく。そして、その過程で、感光体21M,21C,21K上のM,C,Kトナー像が順次重ね合わせて1次転写されることで、ベルト表面にはカラートナー像が形成される。
【0019】
Y,M,C,K用の1次転写ニップを通過した後の感光体21Y,21M,21C,21Kの表面は、感光体クリーニング装置23Y,23M,23C,23Kにより、転写残トナーがクリーニングされる。その後、図示しない除電装置によって除電されて再度の画像形成に備える。
【0020】
中間転写ベルト32のループ内に配設された3つの支持ローラのうち、最も下方に配設された支持ローラに対するベルト巻き付き箇所には、2次転写手段としての2次転写ローラ33がループ外側から当接して2次転写ニップを形成している。この2次転写ローラ33、あるいは、前記支持ローラには、図示しない電源によって2次転写バイアスが印加される。これにより、前記支持ローラと2次転写ローラ33との間には、中間転写ベルト32上のカラートナー像を2次転写ローラ33に向けて静電移動させる2次転写電界が形成される。
【0021】
2次転写ニップの図中右側方には、互いに当接してレジストニップを形成しながら互いに順方向に回転するローラ対からなるレジストローラ対45が配設されている。後述する給紙部5から送り出された記録シート6は、レジストローラ対45のレジストニップに挟み込まれる。そして、レジストローラ対45により、中間転写ベルト32上のカラートナー像に同期するタイミングで2次転写ニップに向けて送り出される。2次転写ニップに挟み込まれた記録シート6には、2次転写電界やニップ圧の作用によって中間転写ベルト32上のカラートナー像が2次転写される。このようにしてカラートナー像が2次転写された記録シート6は、2次転写ニップから、無端移動する搬送ベルト34を経由した後、定着装置50内に送られる。定着装置50は、定着部材としての定着ローラ51と、加圧ローラ52との当接によって形成している定着ニップ内に挟み込んだ記録シート6に対し、加熱や加圧によるトナー像の定着処理を施す。
【0022】
定着装置50から送り出された記録シート6は、搬送路繰り替え爪47が配設された搬送路分岐点にさしかかる。この搬送路切換爪47は、自らよりも下流側におけるシート搬送路を、排出路と反転搬送路87とで切り替えるものである。プリント動作モードとして片面プリントモードが選択されている場合には、搬送路切換爪47がシート搬送路として排出路を選択する。また、両面プリントモードが選択され、且つ、2次転写ニップから送り出された記録シート6が両面にそれぞれトナー像を担持している場合にも、搬送路切換爪47がシート搬送路として排出路を選択する。排出路に進入した記録シート6は、排出ローラ対46の排出ニップを経由した後、機外に排出される。そして、筺体外側面に固定された排紙トレイ80上にスタックされる。
【0023】
一方、両面プリントモードが選択され、且つ2次転写ニップから送り出された記録シート6が両面のうちの第1面だけにトナー像を担持している場合には、搬送路切換爪47がシート搬送路として反転搬送路87を選択する。このため、両面プリントモードにおいて、第1面だけにトナー像を担持している記録シート6は、定着装置50から送り出された後、反転搬送路87に進入する。反転搬送路87には、反転搬送装置89が配設されている。この反転搬送装置89は、定着装置50から送られてくる記録シート6の上下を反転させながら、中継トレイ88内に一時的にスタックしたり、上述したレジストローラ対45のレジストニップに再搬送したりするものである。反転搬送装置89によって給紙路46に戻された記録シート6は、レジストローラ対45から2次転写ニップを再び経由することで、第2面にもトナー像が2次転写される。そして、定着装置50、搬送路切換爪47、排紙路、排紙ローラ対46を順次経た後、排紙トレイ80上にスタックされる。
【0024】
なお、両面プリントモードであって且つ連続プリントモードである場合には、複数の記録シート6に対してそれぞれ両面プリントを行うことになる。本複写機では、記録シート6の第1面に対するプリントと、第2面に対するプリントとをそれぞれまとめて行うようになっている。例えば、12枚の記録シート6に対してそれぞれ両面プリントを行う場合、まず、第1面にトナー像を定着させた1枚目の記録シート6を上下反転させて中継トレイ88内にスタックする。次に、第1面にトナー像を定着させた2枚目の記録シート6を上下反転させて中継トレイ88内の1枚目の記録シート6の上にスタックする。同様の動作を12枚目の記録シート6まで繰り返す。これにより、それぞれ第1面だけにトナー像を定着させた1、2、3・・・・12枚目の記録シート6の束を中継トレイ88内に収納する。次いで、12枚目の記録シート6を中継トレイ88内から給紙路46に送り出した後、その記録シート6の第2面にもトナー像を形成する。そして、その記録シート6を排紙トレイ80上に排紙する。同様にして、11、10、9・・・1枚目の記録シート6に対しても、第2面に対するトナー像のプリントと、排紙処理とを順次施していく。
【0025】
画像形成部4の真下に配設された給紙部5は、上下に多段配設された2つの給紙カセット41、給紙路48、複数の搬送ローラ対44などを有している。シート収納装置としての給紙カセット41は、給紙部4の筺体に対して前後方向(図紙面に直交する方向)へのスライド移動によって着脱されるようになっている。給紙部4の筺体にセットされた給紙カセット41内の記録シート束には、筺体内の支持手段によって支持される給紙ローラ42が押し当てられる。この状態で給紙ローラ42が回転駆動すると、記録シート束の最上部の記録シート6が給紙路48に向けて送り出される。送り出された記録シート6は、給紙路48に至る前に、搬送ローラと分離ローラ43との当接による搬送分離ニップに進入する。それら2つのローラのうち、搬送ローラは、記録シート6を給紙カセット41側から給紙路48側に向けて送る方向に回転駆動される。これに対し、分離ローラ43は、記録シート6を給紙路48側から給紙カセット41側に送る方向に回転駆動される。但し、分離ローラ43に対して回転駆動力を伝達する駆動伝達系には、トルクリミッターが設けられており、分離ローラ43が搬送ローラに直接当接している状態ではトルクリミッターに上限を超えるトルクが働く。これにより、回転駆動力が分離ローラ43に繋がれずに、分離ローラ43は搬送ローラに連れ回る。これに対し、複数の記録シート6が重なった状態で搬送分離ニップに進入すると、シート間でスリップが発生することにより、トルクリミッターに働くトルクが上限を下回る。これにより、分離ローラ43が回転駆動して複数の記録シート6のうち、自らに直接接触している記録シート6を給紙カセット41に向けて逆搬送する。この逆搬送は、搬送分離ニップ内の記録シート6が1枚になってシート間のスリップが発生しなくなるまで続く。これにより、記録シート6が最終的に1枚に分離された状態で給紙路48に送られる。そして、給複数の搬送ローラ対44それぞれにおける搬送ニップを経由した後、画像形成部4のレジストローラ対45のレジストニップに至る。
【0026】
画像形成部4の筺体の図中右側側面は、シート収納装置としての手差しトレイ60を支持している。手差しトレイ60は、そのシート載置面上に載置された記録シート6の束における最上位の記録シート6に手差し給紙ローラ601を押し当てている。そして、手差し給紙ローラ601の回転駆動により、最上位の記録シート6をレジストローラ対45に向けて送り出す。送り出された記録シート6は、レジストローラ対45に至る前に、搬送ローラ603と分離ローラ602との当接による搬送分離ニップを通過する。このとき、給紙トレイ41の側方に配設された搬送分離ニップと同じ原理により、記録シートPが1枚だけに分離される。
【0027】
図2は、第1実施形態に係る複写機のスキャナ3及びADF2を示す拡大斜視図である。図示のように、スキャナ3とこれの上に搭載されるADF2とは、ヒンジ399によって接続されており、ADF2はこのヒンジ399によって図中矢印方向に揺動可能するようにスキャナ3に支持されている。その揺動により、ADF2は、スキャナ3の上面を形成している第1コンタクトガラス300や第2コンタクトガラス301を露出させる位置まで移動したり(開いた状態)、それらコンタクトガラスの真上に乗る位置まで移動したり(閉じた状態)する。第1実施形態に係る複写機において、厚紙原稿や片綴じ原稿など、後述するADF2にセットすることが困難な原稿のコピーをとるときは、図示のように、ADF2を開いてスキャナ3の上面を露出させる。そして、第1コンタクトガラス300の上に原稿をセットした後、ADF2を閉じて、原稿をADF2によって押さえる。そして、スキャナ3に固定されている操作表示部9のコピースタートボタン900を押すことで、複写機にコピー動作を開始させる。
【0028】
図3は、ADF2及びスキャナ3を示す拡大構成図である。ADF2による自動搬送が可能な原稿シートPのコピーをとる場合には、図示のように、ADF2をスキャナ3に対して閉じた状態で、1枚の原稿シートP、あるいは、原稿シート束、をADF2の原稿トレイ200の上にセットする。そして、上述したコピースタートボタン900を押してコピー動作を開始させる。なお、コピー動作は、スキャナ3による原稿読み取り動作と、画像形成部(4)による画像形成動作とから主に構成され、コピースタートボタンが押された直後は、まず、原稿読み取り動作が開始される。
【0029】
スキャナ3は、第1コンタクトガラス300や第2コンタクトガラス301の下に、走行体302、結像レンズ310、画像読取センサ320などを有している。また、第2走行体302は、走査ランプ303や複数の反射ミラーを具備しており、図示しない駆動機構によって図中左右方向に走行することが可能である。走査ランプ303から発せられた光は、第1コンタクトガラス300上にセットされた原稿、あるいは、第2コンタクトガラス301上で搬送されている最中の原稿、の画像面で反射して、画像読取光となる。この画像読取光は、走行体302に搭載された複数の反射ミラーでそれぞれ反射した後、スキャナ本体に固定された結像レンズ310を介してCCD等からなる画像読取センサ320に至ってセンサ内の焦点位置で像を結ぶ。これにより、原稿の画像が読み取られる。
【0030】
スキャナ3は、第1コンタクトガラス300上にセットされた原稿の画像を読み取る場合には、走行体302を図示の位置から図中右方向に向けて走行させながら、原稿を走査する。これにより、原稿の画像を図中の左側領域から右側領域に向けて順次読み取っていく。一方、ADF2にセットされた原稿シートPの画像を読み取る場合には、走行体302を図示の位置で停止させたまま、走査ランプ303を点灯させて、走査ランプ303からの光を第2コンタクトガラス301に向けて照射する。このとき、ADF2は、原稿トレイ200上にセットされた原稿シートPの搬送を開始して、原稿シートPをスキャナ3の第2コンタクトガラス301の真上に通す。これにより、走行体302が停止したままの状態で、原稿シートPの画像が搬送方向の先端側から後端側に向けて順次読み取られていく。
【0031】
ADF2の原稿トレイ200上には、原稿シートPが原稿読み取り面を上方に向けた姿勢でセットされる。原稿トレイ200の上にセットされた原稿シート束の上方には、図示しないカム機構によって上下方向に移動可能に支持される給紙ローラ202が配設されている。給紙ローラ202が下降移動によって原稿シート束の最上位の原稿シートPに当接した状態で回転駆動することにより、原稿シートPが原稿トレイ200上から送り出される。送り出された原稿シートPは、無端状の搬送ベルト203aとリバースローラ203bとの当接による搬送分離ニップに進入する。搬送ベルト203aは、従動ローラと、回転駆動する駆動ローラとによって張架された状態で、図示しない給紙モータの正転に伴う駆動ローラの正転によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。この搬送ベルト203aの張架面には、前記給紙モータの正転に伴って図中時計回りに回転駆動されるリバースローラ203bが当接して搬送分離ニップを形成している。搬送分離ニップにおいては、搬送ベルト203aの表面が給紙方向に移動する。リバースローラ203bが搬送ベルト203aに直接当接しているときや、搬送分離ニップに原稿シートPが1枚だけ挟み込まれているときには、前記給紙モータからリバースローラ203bに至るまでの駆動伝達経路に配設されたトルクリミッターが働いて、給紙モータからの駆動力をリバースローラ203bに対して断ち切る。これにより、リバースローラ203bは搬送ベルト203aに連れ回って、原稿シートPを給紙方向に搬送する。これに対し、搬送分離ニップに複数の原稿シートPが重なった状態で進入したときには、シート間でスリップが発生することで、前述のトルクリミッターに働くトルクが閾値を下回るようになる。これにより、前記給紙モータからの駆動力がリバースローラ203bに繋がれて、リバースローラ203bが図中時計回り方向に回転駆動する。そして、複数の原稿シートPのうち、自らに直接接触している原稿シートPを原稿トレイ200に向けて搬送する。この逆搬送は、搬送分離ニップ内の記録シートPが1枚だけになるまで続く。これにより、最終的に記録シートPが1枚だけに分離された状態で、搬送分離ニップを通過する。
【0032】
搬送分離ニップよりもシート搬送方向の下流側には、アルファベットのU字状に大きく湾曲している湾曲搬送路が配設されている。搬送分離ニップを通過した原稿シートPは、この湾曲搬送路内に配設されている搬送ローラ対204の搬送ニップに挟み込まれた状態で、湾曲搬送路に沿って大きく湾曲しながら搬送される。これにより、その上下を反転させて、それまで鉛直方向の上方に向けていた原稿読み取り面を下方に向けるようになる。そして、その原稿読み取り面をスキャナ3の第2コンタクトガラス301に押し付けながら、第2コンタクトガラス301の真上を通過することで原稿が読み取られる。第2コンタクトガラス301の真上を通過した原稿シートPは、読取後第1搬送ローラ対205と、読取後第2搬送ローラ対206とを順次通過する。
【0033】
読取動作モードとして、片面読取モードが選択されているときには、揺動軸を中心にして揺動可能な切替爪207が図示のような姿勢で揺動を停止させている。この姿勢では、読取後第2搬送ローラ対206を通過した原稿シートPが切替爪207に接触することなく、排紙トレイ209a上に移動してそこにスタックされる。これに対し、両面読取モードが選択され、且つ読取後第2搬送ローラ対206から送り出される原稿シートPが両面のうちの片面しか画像の読み取りがなされていないものであるときには、切替爪207が図示の状態よりも自由端を下方に向ける姿勢をとる。すると、読取後搬送ローラ対206を通過した原稿シートPが、切替爪207を乗り越えて、中継ローラ対210のローラ間に挟み込まれる。このとき、中継ローラ対210の2つのローラは、それぞれ原稿シートPを自らの図中右側方に存在している中継トレイ209bに向けて搬送する方向に回転駆動している。このため、原稿シートPは中継トレイ209b上に移動するが、シート後端部が中継ローラ対210を抜ける直前で、中継ローラ対210の回転駆動が停止する。そして、中継ローラ対210の2つのローラがそれまでとは逆方向に回転駆動し始める。これとほぼ同時に、切替爪207が図示の姿勢の位置まで再び移動する。このようにして、原稿シートPのスイッチバックが行われて、原稿シートPが中継ローラ対210から、読取後搬送ローラ対206のほぼ真上に配設されている再送ローラ対208に向けて搬送される。
【0034】
再送ローラ対208のローラ間に挟み込まれた原稿シートPは、両面のうち、まだ画像の読み取りがなされていない方の面を鉛直方向の上方に向けた状態になっている。この状態で、再送ローラ対208の回転駆動によって上述した湾曲搬送路に送り込まれることで、まだ画像の読み取りがなされていない方の面を下方に向けながら、第2コンタクトガラス301の真上を通過して、その面の画像が読み取られる。このようにしてもう一方の面の画像も読み取られた原稿シートPが読取後第2搬送ローラ対206を通過するときには、切替爪207が図示の姿勢をとっている。これにより、原稿シートPは、排紙トレイ209a上にスタックされる。
【0035】
図4は、第1実施形態に係る複写機の手差しトレイ60を示す拡大斜視図である。同図において、手差しトレイ60は、第1載置部61と第2載置部62とを有している。図中の矢印Cは、手差しトレイ60上に載置された図示しない記録シートが手差しトレイ60上から送り出される方向、即ちシート送り出し方向を示している。第1載置部61は、手差しトレイ60上に載置される記録シートにおける送り出し方向の全領域のうち、先端側の領域を受けるものである。また、第2載置部62は、記録シートにおけるシート送り出し方向の全領域のうち、後端側の領域を受けるものであり、揺動軸を中心にして所定の範囲内で揺動するよううに第1載置部61に支持されている。手差しトレイ60においては、第1載置部61の底板610によるシート受け面と、厚板状の第2載置部62によるシート受け面621とにより、記録シートを載置するための載置面が構成されている。底板63によって構成されている前者のシート受け面は、載置面の全領域のうち、記録シートの先端側を載置する先端側載置面として機能している。また、第2載置部62のシート受け面621は、載置面の全領域のうち、記録シートの後端側を載置する後端側載置面として機能している。
【0036】
同図において、矢印Bは、手差しトレイ60の載置面上における搬送直交方向を示している。また、一点鎖線L1は、手差しトレイ60の搬送方向における中心線を示している。第1載置部61の底板610には、矢印Bで示される搬送直交方向に延在するスリットが設けられている。そして、底板610上には、スリットに沿ってスライド移動可能な第1サイドフェンス611及び第2サイドフェンス612が配設されている。それらサイドフェンスは、何れも底板610のスリットを通じて底板610の下まで延びる足部を具備しており、この足部が駆動伝達機構に支持されている。
【0037】
第1規制部材としての第1サイドフェンス611は、載置面上に載置された図示しない記録シートの搬送直交方向における一端の位置を規制するためのものである。また、第2規制部材としての第2サイドフェンス612は、載置面上に載置された図示しない記録シートの搬送直交方向における他端の位置を規制するためのものである。これら2枚のサイドフェンスは、矢印Cで示される送り出し方向に延在する姿勢を保ったまま、搬送直交方向(矢印B方向)において互いに中心線L1に近づくようにスライド移動したり、互いに中心線L1から遠ざかるようにスライド移動したりする。図示の状態では、2つのサイドフェンスは何れも搬送直交方向の移動可能範囲において中心線L1から最も遠ざかった位置で停止している。その位置が、それぞれのサイドフェンスにおけるホームポジションである。
【0038】
第2載置部62の後端部には、延長ガイド63を出し入れ可能に収容するためのガイド収容部が形成されている。同図では、延長ガイド63が第2載置部62の中に収容されている状態が示されているが、この状態から、延長ガイド63を図中矢印A方向に引き出すことで、延長ガイド63を第2載置部62の後方に向けて延伸させることができる。長さの大きな記録シートを載置するときには、このようにして延長ガイド63を延伸させる。
【0039】
図5は、複数の記録シート6を厚み方向に重ねたシート束の状態で載置している手差しトレイ60を示す斜視図である。手差しトレイ60の第1載置部61は、搬送直交方向(図中矢印B方向)に延在するフロントフェンス615を有しており、このフロントフェンス615は、手差しトレイ60上に載置された記録シート6の先端に突き当たる突き当て面615aを具備している。作業者は、次のようにしてシート束を手差しトレイ60にセットする。即ち、まず、手に持っているシート束を手差しトレイ60の真上の位置に持っていき、そこから第1載置部61に向けて下ろしていく。そして、シート束における一番下の記録シート6を載置面に接触させたら、シート束を図中矢印Fで示されるように、フロントフェンス615に向けてスライド移動させる。これにより、シート束の先端を突き当て面615aに突き当てたら、把持していたシート束を離す。
【0040】
図6は、手差しトレイ60の第1載置部61を示す分解斜視図である。同図においては、図4に示した底板63を撤去した状態の第1載置部61を示している。第1載置部61は、底板の下に、第1ラックギヤ613、第2ラックギヤ614、連結ピニオンギヤ615、トルク制限機構616などを具備する駆動伝達機構が配設されており、図示しない駆動モータの回転駆動力がこの駆動伝達機構を介して第1サイドフェンス611や第2サイドフェンス612に伝えられることにより、それらサイドフェンスが底板上で搬送直交方向に沿ってスライド移動する。
【0041】
図7は、第1載置部61の駆動伝達機構を2つのサイドフェンスとともに示す分解斜視図である。同図において、第1ラックギヤ613は、第1サイドフェンス611の足部と一体形成されており、その足部から、図示しない底板(図4の63)の搬送直交方向(矢印B方向)における中心線L1に向けて搬送直交方向に沿って真っ直ぐに延在するように、その足部によって片持ち支持されている。また、第2ラックギヤ614は、第2サイドフェンス612の足部と一体形成されており、その足部から中心線L1に向けて搬送直交方向に沿って真っ直ぐに延在するように、その足部に片持ち支持されている。
【0042】
円盤状の連結ピニオンギヤ615は、中心線L1の位置で鉛直方向に沿って延在している回動軸に支持されながら、その回動軸を中心にして回動する。この連結ピニオンギヤ615に対しては、板状の第1ラックギヤ613が噛み合っている。また、連結ピニオンギヤ615の全周のうち、第1ラックギヤ613に噛み合っている領域とは180[°]の点対称の位置にある領域に対しては、板状の第2ラックギヤ614が噛み合っている。
【0043】
板状の第1ラックギヤ613における2つの長辺のうち、一方には、連結ピニオンギヤ615に噛み合わせるための歯部が形成されている。また、他方の長辺には、後述するトルク制限機構616の従動側ギヤに噛み合わせるための歯部が形成されている。第1ラックギヤ613においては、後者の歯部が原動側の歯部に成っているのに対し、前者の歯部が従動側の歯部になっている。
【0044】
トルク制限機構616の側方には、駆動モータ617が配設されており、この駆動モータ617のモータギヤには、無端状のタイミングベルト618が巻き掛けられている。このタイミングベルト618は、トルク制限機構616の後述するタイミングプーリー741にも巻き掛けられることで、所定のテンションで張架されている。駆動モータ617が正転方向に回転駆動すると、その回転駆動力が、タイミングベルト618とトルク制限機構616とに伝達された後、トルク制限機構616の従動側ギヤと第1ラックギヤ613との噛み合い部で回転方向の力が搬送直交方向の力に変換される。そして、第1ラックギヤ613に一体形成されている第1サイドフェンス611が図示の位置から搬送直交方向(矢印B方向)において中心線L1に向けてスライド移動する。同時に、第1サイドフェンス611の搬送直交方向の力が、第1サイドフェンス611と連結ピニオンギヤ615との噛み合い部で回転方向に力に変換されて、連結ピニオンギヤ615が正回転方向に回転する。この回転力は、連結ピニオンギヤ615と第2ラックギヤ614との噛み合い部で搬送直交方向の力に変換されて、第2ラックギヤ614に一体形成されている第2サイドフェンス612が図示の位置から搬送直交方向(矢印B方向)において中心線L1に向けてスライド移動する。
【0045】
一方、駆動モータ617が逆転方向に回転駆動すると、その回転駆動力が、タイミングベルト618とトルク制限機構616とに順次伝わった後、第1サイドフェンス611を中心線L1側から搬送直交方向の一端側(第1サイドフェンス611が同図で位置している側)に向けてスライド移動する。同時に、第1サイドフェンス611に一体形成された第1ラックギヤ613が連結ピニオンギヤ615を逆転させながらスライド移動する。そして、連結ピニオンギヤ615の逆転方向の回転力が、第2ラックギヤ614に伝わって、第2サイドフェンス612を中心線L1側から搬送直交方向の他端側(第2サイドフェンス612が同図で位置している側)に向けてスライド移動する。
【0046】
このように、駆動モータ617が正転方向に回転駆動すると、2つのサイドフェンスが搬送直交方向の端側から中心線L1側に向けて互いに近づくようにスライド移動する。これにより、2つのサイドフェンス間の距離が徐々に短くなっていく。一方、駆動モータ617が逆転方向に回転駆動すると、2つのサイドフェンスが搬送直交方向(矢印B方向)の中心線L1側から端側に向けて互いに遠ざかるようにスライド移動する。これにより、2つのサイドフェンス間の距離が徐々に遠ざかっている。なお、2つのサイドフェンスの移動位置にかかわらず、中心線L1から第1サイドフェンス611までの距離と、第2サイドフェンス612から中心線L1までの距離とは互いに等しくなる。よって、2つのサイドフェンスの移動位置にかかわらず、フェンス間の中心は、中心線L1の位置になる。
【0047】
駆動モータ617の側方には、透過型フォトセンサからなるホームポジションセンサ650が配設されている。同図では、第1サイドフェンス611、第2サイドフェンス612がそれぞれホームポジションに位置している状態を示している。この状態では、図示のように、第1サイドフェンス611が、自らの足部から下方に向けて突出させている被検部を、ホームポジションセンサ650の発光素子と受光素子との間に介在させる。これにより、ホームポジションセンサ650は、第1サイドフェンス611がホームポジションに位置していることを検知する。なお、このホームポジションセンサ650のように、第1サイドフェンス611がホームポジションに位置したことを光学的に検知する方式のものに代えて、磁気的な検知など、他の方式による検知を行うものを採用してもよい。
【0048】
作業者は、先に図4に示した手差しトレイ60に記録シートを1枚だけ、あるいはシート束の状態で載置する際には、まず、シートの載置に先立って複写機の操作表示部に設けられた図示しない手差し実行ボタンを押す。すると、画像形成部(4)に設けられたCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などからなる駆動制御手段としての制御部は、ホームポジションセンサ650によって第1サイドフェンス611のホームポジションへの移動が検知されるまで、駆動モータ617を逆転方向に駆動する。これにより、第1サイドフェンス611、第2サイドフェンス612がそれぞれ、ホームポジションの位置で停止する。なお、第1載置部61は、底板610に設けられた図示しない開口部の下に、図示しない紙検知センサを具備している。この紙検知センサは、反射型フォトセンサ等からなり、底板610の上に記録シートが載置されると、その開口部を通してその記録シートを検知する。
【0049】
図8は、第1載置部(61)のトルク制限機構616を拡大して示す拡大構成図である。トルク制限機構616は、原動側駆動伝達回転体616aと、従動側駆動伝達回転体616dとを有している。従動側駆動伝達回転体616dは、自らよりも従動側に存在している第1ラックギヤ(図6の613)と噛み合うギヤ部616eと、回転方向に所定のピッチで並ぶ複数の図示しないスリットを具備するスリット円盤616fとが一体に形成されたものである。また、原動側駆動伝達回転体616aは、自らよりも原動側に存在しているタイミングベルト(図6の618)が掛け回されたタイミングプーリ616bを具備している。これら原動側駆動伝達回転体616a及び従動側駆動伝達回転体616dは、何れもそれらに貫通している支持軸616hによって回動自在に支持されている。また、原動側駆動伝達回転体616aは、図示しない付勢手段によって従動側駆動伝達回転体616dに向けて付勢されている。これにより、原動側駆動伝達回転体616aが従動側駆動伝達回転体616dに圧接している。
【0050】
タイミングベルト(図6の618)の無端移動によって原動側駆動伝達回転体616aが回転すると、従動側駆動伝達回転体616dが原動側駆動伝達回転体616aに連れ回る。そして、従動側駆動伝達回転体616dのギヤ部616eが、図示しない第1ラックギヤ(図6の613)をスライド移動させる。但し、従動側駆動伝達回転体616dに所定の閾値を超える負荷がかかると、その負荷によって従動側駆動伝達回転体616dの回転を妨げようとする力が、従動側駆動伝達回転体616dと原動側駆動伝達回転体616aとの圧接部における両者間の摩擦力を上回る。すると、圧接部において、原動側駆動伝達回転体616aが従動側駆動伝達回転体616aの表面上でスリップするようになることから、原動側駆動伝達回転体616aの回転駆動力が従動側駆動伝達回転体616dに伝わらなくなる。これにより、それまでスライド移動していた図示しない第1サイドフェンス(図6の611)や第2サイドフェンス(図6の612)のスライド移動が停止する。このように、トルク制限機構616は、従動側駆動伝達回転体616dにかかる負荷が所定の閾値を超えた場合に、原動側駆動伝達回転体616aから従動側駆動伝達回転体616dへの駆動力の伝達を断つことで、移動中の第1サイドフェンスを停止させる停止手段として機能している。
【0051】
先に示した図5のように手差しトレイ60上にシート束をセットした作業者は、操作表示部(図2の9)の位置合わせボタンを押す。すると、制御部が駆動モータ(図6の617)の正転方向の駆動を開始する。これにより、ホームポジションに位置していた第1サイドフェンス611及び第2サイドフェンス612がそれぞれ中心線L1(図4参照)に向けてスライド移動し始める。このとき、第1サイドフェンス611と第2サイドフェンス612との距離は、両者間に載置された図示しない記録シート6の搬送直交方向(矢印B方向)の寸法よりも大きくなっている。この状態では、図示しない記録シートが、搬送直交方向において2つのサイドフェンスの間を自由に移動することが可能である。このため、スライド移動を開始した第1サイドフェンス611や第2サイドフェンス612が記録シートに当接したとしても、その記録シート6の幅方向の端を中心線L1に向けて押しながらスムーズにスライド移動する。その後、第1サイドフェンス611及び第2サイドフェンス612は、両者間に記録シートを挟み込む位置、即ち、両者間の距離を記録シート6の搬送直交方向の寸法と等しくする位置、まで移動する。このとき、それらサイドフェンスが互いに記録シートを介して押し合うようになることから、それらサイドフェンスに加わる圧力が急激に上昇して所定の閾値を超えるようになる。同時に、上述したトルク制限機構(616)の従動側駆動伝達回転体(616d)に対して所定の閾値を超える負荷がかかるようになって、原動側駆動伝達回転体(616a)が従動側駆動伝達回転体(616d)の表面上でスリップする。これにより、第1サイドフェンス611及び第2サイドフェンス612の搬送直交方向(矢印B方向)における中心線L1に向けてのスライド移動を停止させる。そして、手差しトレイ60の上に無造作におかれた記録シートの幅方向の中心が、中心線L1の位置に位置合わせされるとともに、搬送方向(矢印C方向)に真っ直ぐに沿った姿勢に矯正される。
【0052】
かかる構成においては、第1サイドフェンス611や第2サイドフェンス612などにより、手差しトレイ60のシート載置面上で記録シートの搬送直交方向の位置を所定位置である中心線L1の位置に合わせるシート位置合わせ機構が構成されている。また、かかるシート位置合わせ機構、駆動モータ617、及び駆動伝達機構などにより、手差しトレイ60のシート載置面上で記録シートの搬送直交方向の位置を所定位置である中心線L1の位置に合わせるシート位置合わせ装置が構成されている。そして、第1サイドフェンス611と第2サイドフェンス612との距離を両者間にセットされた記録シートの搬送直交方向の寸法とほぼ同じにした位置でそれらサイドフェンスのスライド移動を停止させる。これにより、記録シートを載置面上の搬送方向(矢印C方向)に沿った真っ直ぐな姿勢に確実に矯正することができる。しかも、前記距離を記録シート寸法よりも狭くしてしまうことによる記録シートの撓みも殆ど発生させ無くなる。よって、記録シートのジャムやスキューの発生を従来よりも抑えることができる。また、不定型サイズの記録シートを用いても、その記録シートの寸法を操作表示部に入力することなく、中心線L1の位置にその記録シートを自動で位置合わせすることができる。
【0053】
なお、第1サイドフェンス611と第2サイドフェンス612との間に記録シートが挟み込まれた瞬間に従動側駆動伝達回転体616dにかかる負荷を閾値として、原動側駆動伝達回転体616aを従動側駆動伝達回転体616d上でスリップさせるには、次のようにすればよい。即ち、従動側駆動伝達回転体616dに前述の負荷がかかったときに発揮される従動側駆動伝達回転体616dの回転を止めようとする力よりも、僅かに弱い摩擦力を原動側駆動伝達回転体616aと従動側駆動伝達回転体616dとの圧接部で発生させるようにすればよい。また、前記摩擦力については、原動側駆動伝達回転体616aの圧接領域の表面摩擦抵抗や、従動側駆動伝達部616dの圧接領域の表面摩擦抵抗を調整により、任意の値に調整することが可能である。
【0054】
本複写機においては、センター基準方式で各色の感光体(21Y,M,C,K)にトナー像を形成するようになっている。センター基準方式は、使用される記録シートのサイズにかかわらず、感光体の回転軸線方向の中心を基準にして画像を形成する方式である。かかるセンター基準方式では、記録シートのサイズにかかわらず、画像形成部4内において感光体の軸線方向中心の位置で記録シートを搬送する必要がある。このため、図4において、手差しトレイ60上で中心線L1の位置に記録シートを位置合わせするようになっている。そして、記録シートのサイズにかかわらず、記録シートを中心線L1の位置に位置合わせすることを可能にするために、次のような構成を採用している。即ち、第1サイドフェンス611だけでなく、第2サイドフェンス612も載置面上でスライド移動可能に配設し、第1サイドフェンス611と第2サイドフェンス612とに対して、搬送直交方向に沿って互いに逆方向の力を伝達するように駆動伝達機構を構成している。更に、第1サイドフェンス611と第2サイドフェンス612とを互いに同じタイミングで停止させるように、トルク制限機構616等を具備する停止手段たる駆動伝達機構を構成している。
【0055】
画像の基準位置を定める方式としては、センター基準方式の他に、サイド基準方式がある。サイド基準方式は、使用される記録シートのサイズにかかわらず、感光体の回転軸線方向の一端位置を基準にして画像を形成する方式である。かかるサイド基準方式では、記録シートのサイズにかかわらず、画像形成部4内において感光体の軸線方向の一端位置で記録シートを搬送する必要がある。このため、サイド基準方式を採用する場合には、2枚のサイドフェンスをスライド移動させる構成の代わりに、次のような構成を採用することが望ましい。即ち、搬送直交方向において、第2サイドフェンス612を感光体の回転軸線方向の一端位置の延長線上に固定配置する。そして、第1サイドフェンス611だけをスライド移動させて、載置面上にセットされた記録シートを第2サイドフェンス612の位置に位置合わせするのである。
【0056】
第1実施形態に係る複写機のように、原動側からの駆動力の従動側への伝達を断つことで第1サイドフェンス611や第2サイドフェンス612のスライド移動を停止させるものにおいては、駆動モータ617を駆動させたままの状態で、それらサイドフェンスを停止させることができる。このため、サイドフェンスを停止させるときに駆動モータ617の駆動を停止させることは必須ではないが、いつもまでも駆動モータ617を駆動し続けることは、無駄なエネルギー消費や、機器消耗による低寿命化などを招くため好ましくない。よって、サイドフェンス停止後、それほど時間をおかずに、駆動モータ617を停止させることが望ましい。そこで、第1実施形態に係る複写機においては、従動側駆動伝達回転体616dについて、動作しているか否かを検知する動作検知手段を設けている。そして、その動作検知手段によって従動側駆動伝達回転体616dの動作を検知しなくなったことに基づいて駆動モータ617の正回転方向の駆動を停止させる処理を実施するように、駆動制御手段たる制御部を構成している。動作検知手段としては、従動側駆動伝達回転体616dのスリット円盤616fの回転を検知する回転検知センサ619を用いている。図7に示したように、この回転検知センサ619は、スリット円盤616fの上面に対向するように配設された発光素子と、スリット円盤616fの下面に対向するように配設された受光素子との間に、スリット円盤616fを挟み込んでいる。回転方向に所定のピッチで並ぶようにスリット円盤616fに設けられた複数のスリットが、スリット円盤616fの回転に伴って前記発光素子との対向位置を通過する度に、前記受光素子が前記発光素子からの光を受光する。これにより、従動側駆動伝達回転体616dが一定の角速度で回転しているときには、回転検知センサ619から、図9に示すようなパルス信号が一定の周期(△t)で繰り返し出力される。これに対し、従動側駆動伝達回転体616dの回転が停止すると、回転検知センサ619からパルス信号が一定の周期(△t)で出力されなくなる。このときの出力は、スリット円盤616fの回転停止姿勢によって異なってくる。具体的には、スリット円盤616fがそのスリット間箇所を回転検知センサ619の発光素子との対向領域に位置させる姿勢で回転を停止させている場合には、回転検知センサ619の受光素子に対して発光素子からの光が入射しなくなる。このため、回転検知センサ619の出力はOFFの状態が続く。一方、スリット円盤616fがそのスリットを回転検知センサ619の発光素子との対向領域に位置させる姿勢で回転を停止させている場合には、回転検知センサ619の受光素子に対して発光素子からの光が入射し続ける。このため、回転検知センサ619の出力はONの状態が続く。何れの場合であっても、OFFあるいはONの状態が、パルス信号の発生周期(△t)を超えて継続することになる。そこで、制御部は、回転検知センサ619からのパルス信号が一定の周期で出力されている状態から、出力のOFF状態やON状態が「周期△t+定数α」を超えて継続する状態に変化したときに、従動側駆動伝達回転体616dについて回転が停止したと判断する。そして、この判断を行うと直ちに、駆動モータ617の正転方向への駆動を停止させる。
【0057】
2枚のサイドフェンスの駆動開始から駆動停止までの駆動量は、それらサイドフェンスにおけるホームポジションから停止位置までの移動量の合計と相関する。また、前記合計は、フェンス間にセットされた記録シートの搬送直交方向の寸法(以下、シート幅寸法という)と相関する。このため、前記駆動量に基づいてシート幅寸法を求めるための関数式又はデータテーブルを構築することが可能である。そこで、本複写機の制御部は、図9に示したように、前記駆動量として、駆動開始から駆動停止までのパルス数積算値を計数する処理を実施する。また、データ記憶手段たるROMに、パルス数積算値に基づいてシート幅寸法を求めるための関数式又はデータテーブルを記憶している。そして、パルス数積算値の計数結果を関数式に代入してシート幅寸法を求める処理、あるいは、計数結果に対応するシート幅寸法をデータテーブルから特定する処理を実施する。これにより、手差しトレイ60の載置面上にセットされた記録シートのシート幅寸法を特定する。かかる構成では、手差しトレイ60の載置面上にセットした記録シートのシート幅寸法を、操作表示部に入力することなく、制御部に自動で特定させることができる。
【0058】
なお、2枚のサイドフェンスの位置にかかわらず、駆動モータ617を一定の駆動速度で駆動してそれらフェンスをスライド移動させる場合には、駆動開始から駆動停止までの駆動量として、パルス数積算値に代えて、駆動開始から駆動停止までに要した時間である駆動時間を採用してもよい。この場合、シート幅寸法Lは、「L=L−t×2V」という関数式で求められる。この関数式において、Lは、2枚のサイドフェンスがそれぞれホームポジションにあるときの初期フェンス間距離[cm]を表している。また、tは、フェンス移動時間[s]を表している。また、Vは、それぞれのサイドフェンスにおける移動速度[cm/s]を表しており、搬送直交方向に沿って一端側に向かうのか、あるいは他端側に向かうのかという移動方向を示すための正負の符号をもたない値をとるものである。
【0059】
既に説明したように、図8において、停止手段としてのトルク制限機構616は、従動側駆動伝達回転体616dにかかる負荷が所定の閾値を超えた場合に、原動側駆動伝達回転体616aから従動側駆動伝達回転体616dへの駆動力の伝達を断つことで、移動中の第1サイドフェンスを停止させる。本複写機では、負荷が所定の閾値を超えた場合に原動側駆動伝達回転体616aから従動側駆動伝達回転体616dへの駆動力の伝達を断つことを実現するための方式として、回転する原動側駆動伝達回転体616aとの圧接によって従動側駆動伝達回転体616dを回転させる方式を採用している。かかる方式に代えて、直線的に移動する原動側駆動伝達回転体との圧接によって従動側駆動伝達回転体を同じ方向に直線的に移動させる方式を採用してもよい。
【0060】
従動側駆動伝達回転体616dにかかる負荷の閾値として、スライド移動している2枚のサイドフェンスの間に1枚の厚紙が挟み込まれたときに発生する負荷と同じ値を採用したとする。すると、手差しトレイ60の上に厚紙を1枚だけセットした場合、複数枚重ねてセットした場合、の何れであっても、スライド移動中の2枚のサイドフェンスの間に厚紙が挟み込まれるのとほぼ同じタイミングで、原動側駆動伝達回転体616aのスリップを発生させて、サイドフェンスのスライド移動を停止させることができる。しかし、手差しトレイ60の上に厚紙よりも薄い普通紙を1枚だけセットした場合には、スライド移動中の2枚のサイドフェンスの間に1枚の普通紙が挟み込まれたときに従動側駆動伝達回転体616dにかかる負荷が閾値よりも小さくなる。そして、2枚のサイドフェンスのスライド移動を適切なタイミングで停止させることができず、フェンス間距離をシート幅寸法よりも狭くしてしまう。このため、閾値については、スライド移動している2枚のサイドフェンスの間に1枚の普通紙が挟み込まれたときに発生する負荷と同じ値に設定することが望ましい。ところが、そのような閾値はかなり小さな値であることから、サイドフェンスの足部と底板610のスリットとの間に埃が介在するなど、ほんの僅かにフェンスのスライド移動を妨げる突発的な力が働いただけで、原動側駆動伝達回転体616aにかかる負荷が閾値を超えてしまう。これにより、1枚の普通紙を挟み込む位置まで2枚のサイドフェンスをスライド移動させる前に、それらサイドフェンスのスライド移動が停止させてしまうという現象が発生し易くなってしまう。
【0061】
このような現象の発生を抑えるために、第1実施形態に係る複写機においては、次のような構成を採用している。即ち、先に図4に示したように、手差しトレイ60において、後端側載置面として機能しているシート受け面621は、先端側載置面として機能している底板610に対して、屈折角θ1をもって屈折した姿勢をとるように設けられている。屈折角θ1は、先端側載置面のシート搬送方向(矢印C方向)の延長線と、後端側載置面のシート搬送方向の延長線とのなす角であり、図示の例では180[°]未満の値になっている。このように、先端側載置面(底板610)と、後端側載置面(シート受け面621)とが互いに屈折していると、載置面の上におかれた記録シートが、屈折角θ1に沿って屈折した姿勢をとる。そして、第2サイドフェンス612は、図10に示すように、記録シート6の屈折部に当接し得る位置でスライド移動するように配設されている。また、第1サイドフェンス611も同様に、記録シート6の屈折部に当接し得る位置でスライド移動するように配設されている。この屈折部は、2枚のサイドフェンスに挟み込まれたときに、屈折していないシート箇所に比べて大きな負荷を従動側駆動伝達回転体616dにかける。第1実施形態に係る複写機においては、その負荷とほぼ同じ値を、従動側駆動伝達回転体616dにかかる負荷の閾値として設定している。より詳しくは、そのような閾値が実現されるように、従動側駆動伝達回転体616dの圧接部の表面摩擦抵抗や、原動側駆動伝達回転体616aの圧接部の表面摩擦抵抗を調整している。このようにすることで、手差しトレイ60の載置面の上に普通紙を1枚だけセットした場合であっても、スライド移動中のサイドフェンスを途中で停止させてしまうことなく、その普通紙を中心線L1の位置に良好に位置合わせすることができる。また、1枚の普通紙がフェンス間に挟み込まれた瞬間に、閾値を超える負荷を確実に従動側駆動伝達回転体616dにかける。これにより、フェンス間距離をシート幅寸法よりも狭くしない適切なタイミングで、サイドフェンスのスライド移動を停止させることができる。
【0062】
なお、第1実施形態に係る複写機においては、手差しトレイ60の上にセットされた記録シートを確実に屈折角θ1に沿って屈折させるように、記録シートの屈折を助長するための押さえコロを設けている。図1に示したように、この押さえコロ605は、画像形成部4の筺体側面に揺動可能に支持される揺動アーム604の先端に、回動可能に取り付けられている。そして、手差しトレイ60の上にセットされた記録シート6における底板610とシート受け面612との間の領域に対して、押さえコロ605をソフトタッチさせることで、記録シート6を確実に屈折角θ1に沿って屈折させる。
【0063】
図11は、第1実施形態に係る複写機の電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、駆動制御手段としての制御部400は、複写機に搭載されている各種機器の駆動を制御するものである。この制御部400には、様々な機器が接続されているが、同図においては、手差しトレイ(60)上での記録シートの位置合わせに関連する機器だけを示している。制御部400には、既に説明した、駆動モータ617、ホームポジションセンサ650、回転検知センサ619、紙検知センサ66、操作表示部900などが接続されている。また、給紙昇降モータ67やコロ揺動モータ68も接続されている。紙検知センサ66は、図4に示した底板610の図示しない開口部を通して、底板610上の記録シートを検知するものである。また、給紙昇降モータ67は、図1に示した給紙ローラ601を手差しトレイ60に対して昇降させるためのモータである。また、コロ揺動モータ68は、押さえコロ605を揺動アーム604とともに揺動させるためのモータである。
【0064】
図12は、制御部400によって実施されるシート位置合わせ処理の各処理工程を示すフローチャートである。制御部(400)は、作業者によって操作表示部(900)の手差し実行ボタンが押下されると(ステップ1でY:以下、ステップをSと記す)、コロ離間処理(S2)、給紙ローラ上昇処理(S3)、及び、フェンスホーム合わせ処理(S4)を順に実行する。コロ離間処理(S2)は、コロ揺動モータ68を所定のタイミングになるまで逆転駆動することで、押さえコロ(605)を手差しトレイ(60)の載置面から大きく離間させる位置まで上昇させる処理である。また、給紙ローラ上昇処理(S3)は、給紙昇降モータ(68)を所定のタイミングになるまで逆転駆動することで、給紙ローラ(601)を載置面上のシート束に接触させない位置まで上昇させる処理である。また、フェンスホーム合わせ処理(S4)は、ホームポジションセンサ(610)によって第1サイドフェンス(611)が検知されるようになるまで、駆動モータ(617)を逆転駆動する処理である。これにより、第1サイドフェンス(611)及び第2サイドフェンス(612)がそれぞれ、ホームポジションまでスライド移動する。
【0065】
制御部(400)は、フェンスホーム合わせ処理(S4)を終えると、次に、操作表示部(900)の位置合わせボタンが作業者によって押下されるまで待機する。そして、位置合わせボタンが押下されると(S5でY)、紙検知センサ(66)によって載置面上の記録シートが検知されているか否かを判断する(S6)。そして、検知されていない場合には(S6でN)、操作表示部(900)の液晶画面に記録シートがセットされていない旨のエラーメッセージを表示させた後(S7)、処理フローをS5にループさせる。これにより、位置合わせボタンの押下がなされるまで再び待機する。一方、載置面上の記録シートが紙検知センサによって検知されている場合には(S6でY)、コロ押さえ処理(S8)、位置合わせ及びパルスカウント処理(S9)、及びサイズ特定処理(S10)を順に実行する。コロ押さえ処理(S8)は、コロ揺動モータ(68)を所定のタイミングになるまで正転駆動することで、押さえコロ(605)を手差しトレイ(60)上の記録シートに非常に弱い接触圧で接触させて、記録シートの屈折を助長する処理である。また、位置合わせ及びパルスカウント処理(S9)は、2枚のサイドフェンスのスライド移動によって記録シートを中止線L1の位置に位置合わせしたり、回転検知センサ(619)から出力されるパルス信号の数を計数したりする処理である。また、サイズ特定処理(S10)は、計数によって得られたパルス数積算値に基づいて、手差しトレイ(60)上に載置された記録シートのシート幅寸法を特定する処理である。その詳細は既に説明した通りである。
【0066】
サイズ特定処理(S10)によって記録シートのシート幅寸法を特定した制御部(400)は、その値をRAM(400b)に記憶した後(S11)、給紙ローラ下降処理(S12)を実行して、一連の処理フローを終了する。給紙ローラ下降処理(S12)は、給紙昇降モータ(68)を所定のタイミングになるまで正転駆動することで、給紙ローラ(601)を載置面上のシート束の最上位の記録シートに接触させる位置まで下降させる処理である。
【0067】
図13は、位置合わせ及びパルスカウント処理(S9)における各処理工程を示すフローチャートである。制御部(400)は、位置合わせ及びパルスカウント処理(S9)を開始すると、まず、駆動モータ(617)の正転駆動を開始して(S9a)、2枚のサイドフェンスをそれぞれ搬送直交方向(矢印B方向)においてホームポジションから中心線L1に向けてスライド移動させ始める。これとほぼ同時に、回転検知センサ(619)から出力されるパルス信号の計数を開始する(S9b)。その後、回転検知センサ(619)の出力について、出力ONの持続時間が「パルス周期△t+定数α」を上回ったか否かを判定したり(S9c)、出力OFFの持続時間が「パルス周期△t+定数α」を上回ったか否かを判定したり(S9d)する。そして、何れか一方の持続時間が「パルス周期△t+定数α」を上回ったときに(S9cでY、あるいはS9dでY)、駆動モータ(617)の駆動を停止させる(S9e)。これにより、フェンス間距離をシート幅寸法とほぼ同じ値にする位置で2枚のサイドフェンスをそれぞれ停止させる。その後、パルス数積算値をRAM(400b)に記憶して、位置合わせ及びパルスカウント処理を終了する。
【0068】
先に示した図4において、手差しトレイ60の第2載置部62は、搬送直交方向(矢印B方向)に移動する第1サイドフェンス611や第2サイドフェンス612によってシート幅方向の端を中心線L1に向けて押される記録シートに対して付与される摩擦力を抑制する摩擦抑制手段たる回転コロ625を複数具備している。複数の回転コロ625はそれぞれ、シート受け面621上に載置された図示しない記録シートの裏面を受けた状態で、第1サイドフェンス611又は第2サイドフェンス612のスライド移動に伴って搬送直交方向に沿って自らのシート幅方向の中心を中心線L1に近づけるように移動している記録シートに追従して従動回転するように、回動自在に支持されている。そして、前述のようにして従動回転することで、記録シートの搬送直交方向への移動を促しながら、その移動に伴って記録シートの裏面に付与される摩擦力を抑制する。このような回転コロ625が搬送直交方向に沿って複数並ぶように配設されている。また、シート搬送方向に沿って複数並ぶようにも配設されている。
【0069】
なお、本発明において、摩擦抑制手段により、記録シートの裏面に対して付与される摩擦力を抑制することは、具体的には、次のようなことを意味している。即ち、摩擦抑制手段を存在させることで、存在させない場合に比べて、移動に伴って記録シートに付与される摩擦力を低減することを意味している。ある手段の存在により、記録シートの裏面と載置面との摩擦力を低減したとしても、その手段と記録シートの裏面との摩擦力が比較的大きいことにより、総合的にシート裏面に作用する摩擦力をその手段の存在によって却って増加させている場合には、その手段は摩擦抑制手段に該当しない。図4に示される回転コロ625は、次のようにして摩擦力を低減している。即ち、自らの周面の一部を、シート受け面621よりも重力方向の上側に突出させる姿勢で配設されている複数の回転コロ625はそれぞれ、その周面によって記録シートを受けることで、自らが存在しない場合に比べて、シート受け面621と記録シートの裏面との摩擦力を低減している。そして、自らは記録シートの搬送直交方向の移動に追従して従動回転することで、自らの周面を記録シートの裏面に擦ることが殆どないため、自らと記録シートの裏面との間には摩擦力を殆ど発生させない。この結果、回転コロ625は、自らが存在しない場合に比べて、スライド移動する第1サイドフェンス611や第2サイドフェンス612に押されながら搬送直交方向に移動する記録シートに対して付与される摩擦力を低減しているのである。
【0070】
かかる構成においては、シート受け面621上でスライド移動する第1サイドフェンス611や第2サイドフェンス612に押されながら搬送直交方向に沿って自らの幅方向の中心を中心線L1に近づけるように移動している記録シートの裏面に対して付与される摩擦力を、複数の回転コロ625によって抑制している。そして、このようにして摩擦力を抑制することで、記録シートの裏面を擦ってしまうことによるシート裏面の傷付きを抑えることができる。
【0071】
また、第1実施形態に係る複写機においては、回転コロ625によって記録シートの裏面の傷付きを抑えるだけでなく、次に説明するような優れた効果を奏することができる。即ち、本複写機では、既に述べたように、駆動制限機構616による駆動伝達の接断を行うための閾値として、1枚の普通紙(薄紙を含む)を2枚のサイドフェンス(611、612)で挟み込んだときのトルクよりも少し小さな値を採用している。より詳しくは、先端側載置面たる底板610表面と、後端側載置面たるシート受け面621との間で記録シートたる1枚の普通紙を屈折させた状態で、その屈折部を2枚のサイドフェンス(611、612)で挟み込んだときに従動側駆動回転体616dにかかる負荷よりも少し小さな値である。このようにして閾値を設定した場合には、手差しトレイ60に回転コロ625を設けていないと、10枚以上の記録シートからなるシート束を位置合わせすることができなかった。シート束の重さにより、底板610の表面やシート受け面621の表面に大きな摩擦力を発生させることから、シート束にサイドフェンスを当接させた瞬間に、従動側駆動回転体616dにかかる負荷が閾値を超えてしまう。これにより、シート束の幅方向の端をサイドフェンスによって中心線L1に向けて押すことができないため、シート束の位置合わせを行うことができないのである。これに対し、複数の回転コロ625を設けた試験機を本発明者が試作したところ、この試験機では、数十枚の記録シートからなるシート束であっても、複数の回転コロ625が最下位の記録シートの裏面と、載置面(610、621)との接触面積を大幅に低減した状態で、シート束の移動に伴ってスムーズに従動回転することで、駆動回転体616dにかかる負荷を閾値未満に抑えた。これにより、シート束の幅方向の中心を搬送直交方向における中心線L1の位置まで良好に移動させて、シート束の位置合わせを容易に行うことができた。
【0072】
このように、第1実施形態に複写機においては、手差しトレイ60に普通紙を1枚だけセットした場合であっても、数十枚の普通紙からなるシート束の状態でセットした場合であっても、2枚のサイドフェンスを途中で止めてしまうことなく、フェンス間距離をシート幅寸法と同じ大きさにする適切な位置までそれらサイドフェンスをスライド移動させる。そして、その適切な位置までスライド移動させた時点で、それらサイドフェンスに対する駆動伝達を確実に切る。これにより、記録シートを撓ませたり、サイドフェンスと記録シートとの間に間隙を設けたりすることなく、記録シートを精度良く位置合わせすることができる。
【0073】
図14は、回転コロ625の一例を示す拡大斜視図である。回転コロ625としては、図示のように、回転軸線上に延在する回転軸部615f−1と、これよりも大径に形成され、且つ記録シートに接触する円柱状の大径部615f−2とを具備するものを例示することができる。搬送ローラなどのローラ部材に採用されている形状のものである。回転コロ625については、回転軸部615f−1を、載置面たるシート受け面(図4の621)よりもシート側に突出させない位置に配設することが望ましい。同図では、一点鎖線がシート受け面の位置を示している。この一点鎖線よりも手前側がシート側である。図示のように、シート受け面の位置を示す一点鎖線よりも、回転軸部615f−1を奥側に位置させるのである。このようにすることで、シート受け面の上には、回転軸部615f−1や、それを受ける軸受けを存在させないようになるので、記録シートを回転軸部615f−1や軸受けに引っ掛けてしまうことを回避することができる。
【0074】
図15は、第1実施形態に係る複写機の手差しトレイに搭載されている回転コロ625を示す拡大斜視図である。この回転コロ625は、自らの回転軸線を、図示しないシート受け面(621)上におけるシート搬送方向に沿わせる姿勢で配設される。回転コロ625のシート搬送方向における全域のうち、搬送方向上流側の端部箇所は、下流側から上流側に向けて徐々に小径になる裁頭円錐状の形状になっている。回転軸部615f−1については、シート受け面(一点鎖線)よりもシート側に突出させないように配設している。かかる構成では、記録シートを回転軸部615f−1や軸受けに引っ掛けてしまうことを回避し得ることに加えて、次のような効果を得ることができる。即ち、先に示した図14の構成では、シート受け面よりもシート側に、円柱状の大径部615f−1の側面を位置させている。この側面は、シート受け面からほぼ垂直に突出する面である。しかも、記録シートが手差しトレイ上にセットされる際に、手差しトレイの突き当て面(図5の615a)よりもシートセット方向(図5の矢印F方向)の上流側で、記録シートの先端を向いている面である。このような面は、作業者がシート受け面上においた記録シートをシートセット方向に向けてスライド移動させて手差しトレイ上にセットする際に、記録シートの先端に容易に引っ掛かってしまう。これにより、シートセット性を低下させてしまう。これに対し、図15に示した第1実施形態に係る複写機の回転コロ625は、一点鎖線で示されるシート受け面の位置よりもシート側において、シート受け面上におかれた記録シートの先端に対して、テーパー面を向ける。手差しトレイ上にセットされる過程で、このテーパー面に先端を接触させた記録シートは、その先端をテーパー面に擦りながらテーパー面を登っていく。これにより、回転コロ625に引っ掛かることなく、回転コロ625を乗り上げることができる。
【0075】
先に示した図1において、第1実施形態に係る複写機は、手差しトレイ60だけでなく、画像形成部4の給紙トレイ41、画像形成部4の排紙トレイ80、スキャナ3の原稿トレイ200、スキャナ3の中継トレイ209bにもそれぞれ、本発明に係るシート位置合わせ装置を搭載している。それらシート位置合わせ装置の構成は、手差しトレイ60に搭載されているシート位置合わせ装置と同様である。
【0076】
シート収納装置としての給紙カセット41は、手差しトレイ60のシート位置合わせ装置と同様の、図示しない第1サイドフェンス、第2サイドフェンス、トルク制限機構、第1ラックギヤ、第2ラックギヤ、連結ピニオンギヤ、駆動モータ、タイミングベルト、中継ギヤ、中継ユニット、ホームポジションセンサ、回転検知センサ、紙検知センサなどを有している。そして、第1サイドフェンス及び第2サイドフェンスは、手差しトレイ60のシート位置合わせ装置と同様の原理で、フェンス間に載置された記録シートの位置を中心線の位置に合わせるようにスライド移動する。なお、給紙カセット41に搭載された駆動モータや各種センサは、給紙カセット41が画像形成部の所定の位置にセットされたときに、画像形成部の筺体内の制御部との電気接点が繋がるようになっている。
【0077】
給紙カセット41内に収納された記録シートの束には、給紙ローラ42が当接している。この給紙ローラ42は、給紙カセット41ではなく、画像形成部4の筺体内に支持されている。給紙カセット41が画像形成部4の筺体内にセットされている状態で、作業者が操作表示部の紙補充ボタンを押すと、制御部(400)が筺体内の給紙ローラ昇降モータを所定のタイミングまで逆転駆動する。これにより、2つの給紙カセット41においてそれぞれ、給紙ローラ42をカセットから大きく離間させる。また、制御部は、2つの給紙カセット41にそれぞれ個別に搭載されている駆動モータの逆転駆動して、給紙カセット41におけるサイドフェンスをそれぞれホームポジションまで移動させる。この状態の給紙カセット41を画像形成部4の筺体から引き抜いた作業者は、給紙カセット41の底板の上に記録シートの束をセットした後、給紙カセット41を筺体内に戻す。そして、操作表示部のカセット内シート位置合わせボタンを押下する。すると、制御部(400)が、給紙カセット41の駆動モータの正転駆動を開始して、手差しトレイ(60)における位置合わせ及びカウント処理と同様の処理を行う。これにより、給紙カセット41にセットされた記録シートの束を、中心線の位置に位置合わせする。
【0078】
先に示した図3において、ADF2のシート収納装置としての原稿トレイ200には、手差しトレイ(60)と同様の構成のシート位置合わせ装置を備えている。そして、このシート位置合わせ装置は、シート載置面としてのトレイ上面200aの上で、搬送直交方向(図紙面に直交する方向)にスライド移動可能な第1サイドフェンス211及び第2サイドフェンス212を有している。また、手差しトレイ(60)と同様に、それらサイドフェンスをスライド移動させるための、第1ラックギヤ213、第2ラックギヤ214、連結ピニオンギヤ215、トルク制限機構216、駆動モータ217なども有している。そして、手差しトレイ(60)のシート位置合わせ装置と同様の原理により、第1サイドフェンス211及び第2サイドフェンス212を搬送直交方向の中心線に向けてスライド移動させて、トレイ上面200aの上に載置された原稿シートPを中心線の位置に位置合わせする。
【0079】
AFD2は、原稿シートPをトレイ上面200a上から送り出すための給紙ローラ202をトレイ上面200aから大きく離間させ、且つ、トレイ上面200a上の2枚のサイドフェンスをそれぞれホームポジションに位置させた状態で、作業者からの命令を待機している。そして、トレイ上面200aに原稿シートPをセットした作業者によってコピースタートボタンが押下されると、まず、2枚のサイドフェンスをスライド移動させて原稿シートPを中心線の位置に位置合わせする。そして、給紙ローラ202を下降させて原稿シートPに接触させてから、原稿シートPの送り出しを開始する。
【0080】
第1実施形態に係る複写機においては、ADF2におけるシート収納装置としての中継トレイ209bにも、手差しトレイ(60)と同様のシート位置合わせ装置を搭載している。ADF2は、通常時には、中継トレイ209b上で搬送直交方向にスライド移動可能に配設された図示しない中継第1サイドフェンス、中継第2サイドフェンスをそれぞれ、ホームポジションに待避させている。そして、第2コンタクトガラス301上を通過して片面の画像が読み取られた原稿シートPを上下反転させて再び第2コンタクトガラス301の上に通す際には、次のような処理を行う。即ち、まず、切替爪の自由端側を図示の状態よりも下降させるように切替爪の姿勢を変化させた後、中継ローラ対210の2つのローラを所定時間だけ正回転させる。これにより、読取後第2搬送ローラ対206の搬送ニップを通過した後の原稿シートPを、中継トレイ209b上に送り込む。次に、中継ローラ対210の回転駆動を停止させた状態で、中継ローラ対210の2つのローラのうち、上側のローラを上昇移動させて下側のローラから離間させる。これにより、それまで中継ローラ対210の搬送ニップに挟み込んでいた原稿シートPをフリーな状態にする。この状態で、中継トレイ209b上の図示しない中継第1サイドフェンスや中継第2サイドフェンスの中心線に向けてのスライド移動を開始して、中継トレイ209b上の原稿シートPを中心線の位置に位置合わせする。その後、搬送ニップを形成する位置まで中継ローラ対210における上側のローラを下降移動させた後、中継ローラ対210の逆転を開始して、原稿シートPの再送を開始する。
【0081】
また、第1実施形態に係る複写機においては、反転搬送装置89のシート収納装置としての中継トレイ88にも、手差しトレイ60と同様のシート位置合わせ装置を搭載している。中継トレイ88は、通常時には、自らのシート載置面上で搬送直交方向にスライド移動可能に配設された図示しない中継第1サイドフェンス、中継第2サイドフェンスをそれぞれ、ホームポジションに待避させている。また、給紙ローラ42を、中継トレイ88のシート載置面から大きく離間させる位置に待避させている。両面プリントモードにおいて、片面プリント済みの全ての記録シート6が中継トレイ88内に収納されると、中継トレイ88は、中継第1サイドフェンス及び中継第2サイドフェンスを搬送直交方向の中心線に向けてスライド移動させて、中継トレイ88内に収納された記録シート6を中心線の位置に位置合わせする。その後、給紙ローラ42を下降移動させて中継トレイ88内の記録シート6に当接させてから、給紙ローラ42を回転駆動させて、中継トレイ88からレジストローラ対45に向けての記録シート6の再送を開始する中継トレイ88内の記録シート6を位置合わせしてから再送することで、ジャムやスキュー搬送の発生を抑えることができる。
【0082】
また、第1実施形態に係る複写機においては、画像形成部4におけるシート収納装置としての排紙トレイ80にも、手差しトレイ60と同様のシート位置合わせ装置を搭載している。排紙トレイ80は、通常時には、自らのシート載置面上で搬送直交方向にスライド移動可能に配設された図示しない排紙第1サイドフェンス、排紙第2サイドフェンスをそれぞれ、ホームポジションに待避させている。画像形成部4による連続プリントジョブが終了して連続プリントにおける全ての記録シート6が排紙トレイ80上にスタックされると、排紙第1サイドフェンス及び排紙第2サイドフェンスを搬送直交方向の中心線に向けてスライド移動させて、排紙トレイ80上にスタックされた記録シート6を中心線の位置に位置合わせする。
【0083】
なお、排紙トレイ80には、後処理装置を接続することが可能である。後処理装置は、次に列記する処理の少なくとも何れか1つを実施するものである。即ち、画像形成部4によって画像が形成された記録シートPを綴じるステイプル処理、画像が形成された記録シートPを仕向け先毎に仕分けする仕分け処理、シート先端を揃えたりシートのスキューを矯正したりする整合処理、複数の原稿シートPをページ順に並べ替えるソート処理などである。かかる処理を実施する後処理装置にも、本発明に係るシート位置合わせ装置を搭載することが可能である。ステイプル処理では、綴じる前の複数の記録シート6の位置合わせを行うようにしてもよいし、複数の記録シート6の綴じた後の綴じ束を複数重ねた後に、それら綴じた場の位置合わせを行うようにしてもよい。前者の場合には、複数の記録シート6を位置合わせによってずれのない状態にしてから綴じるので、シートずれのない綴じ束を得ることができる。また、後者の場合には、複数の綴じ束をずれなく積み重ねることができる。
【0084】
次に、本発明を適用した第2実施形態に係る複写機について説明する。なお、以下に特筆しない限り、第2実施形態に係る複写機の構成は、第1実施形態と同様である。
図16は、第2実施形態に係る複写機の手差しトレイ60を示す側面図である。同図において、L3という符号が付された一点鎖線は、水平方向を示している。先端側載置面として機能している底板610の表面は、水平方向に対して傾斜角θ2で傾斜しており、その傾斜は底板610上に載置された記録シートを突き当て面615aに向けて滑り落とす下り勾配になっている。かかる構成では、記録シートを底板610上においた後における次の操作を省略することができる。即ち、記録シートを底板610表面上で突き当て面615aに向けて押すという操作である。かかる操作を実行しなくても、記録シートを底板610表面上で突き当て面615aに向けて自重で滑らせて、記録シートの先端を突き当て面615aに自動で突き当てることができる。
【0085】
図17は、第2実施形態に係る複写機の手差しトレイ60を示す斜視図である。図示のように、手差しトレイ60は、第2載置部62に回転コロを具備していない。その代わりに、第1載置部61に複数の回転コロ615fを具備している。それらの回転コロ615fは、突き当て面(図16の615a)と、搬送直交方向にスライド移動するサイドフェンス(611、612)によって押される図示しない記録シートの先端との摩擦力を抑制する摩擦抑制手段として機能している。
【0086】
底板610を突き当て面615aに向かう下り勾配となるように傾けた姿勢で配設した第2実施形態では、載置面となる底板610表面やシート受け面621に対してだけではなく、突き当て面615aに対しても、記録シートの重量をかけることになる。このため、記録シートの幅方向の端を2枚のサイドフェンスによって中心線L1に向けて押していく過程で、記録シートの先端を突き当て面615aに引っ掛けて、シートの折れや破れを発生させ易くなる。そこで、第2実施形態に係る複写機では、突き当て面615aと、搬送直交方向に移動するサイドフェンス(611、612)によって押される記録シートの先端との摩擦力を抑制する摩擦抑制手段たる回転コロ615fを設けているのである。かかる構成では、載置面たる底板610表面上でサイドフェンスに押されながら搬送直交方向に移動する記録シートの先端と、これに突き当たる突き当て面615aとの摩擦力を回転コロ615fによって抑制することで、突き当て面615aに対して記録シートの先端を引っ掛かり難くする。これにより、記録シートの先端を突き当て面615aに引っ掛けた状態で、サイドフェンスをスライド移動させてしまうことによる記録シートの折れや破れの発生を抑えることができる。
【0087】
複数の回転コロ615fは、第1実施形態に係る複写機の回転コロと同様に、搬送直交方向に沿って並んでいる。そして、回転軸部と、これよりも大径に形成されて記録シートの先端に接触する大径部とを具備しており、その大径部の一端部は、裁頭円錐状の形状をしている。回転軸部を底板610上の記録シートの厚み方向に延在させつつ、その裁頭円錐状の一端部を、載置面となっている底板610側とは反対側に向ける姿勢で配設されている。回転軸部については、突き当て面よりも記録シート側に突出させない位置に配設している。かかる構成では、作業者が底板610の真上で手に持っている記録シートを底板610に載置する際に、回転コロ615fは裁頭円錐状の端部におけるテーパー面を記録シートの先端部に対向させている。記録シートが底板610上に載置されるとき、シート先端部は、そのテーパー面に擦られながらテーパー面を登っていく。これにより、回転コロ615fに引っ掛かることなく、回転コロ615fを乗り上げることができる。
【0088】
次に、第3実施形態に係る複写機について説明する。なお、以下に特筆しない限り、第3実施形態に係る複写機の構成は、第1実施形態と同様である。
第3実施形態に係る複写機の手差しトレイ60は、第2載置部62に複数の回転コロ625を具備しているとともに、第2実施形態に係る複写機と同様の回転コロ615fを第1載置部61に具備している。かかる構成においては、記録シートの裏面の傷付きを抑えるとともに、記録シートの折れや破れの発生を抑えることができる。
【0089】
次に、第4実施形態に係る複写機について説明する。なお、以下に特筆しない限り、第4実施形態に係る複写機の構成は、第1実施形態と同様である。
図18は、第4実施形態に係る複写機の手差しトレイ60を示す斜視図である。手差しトレイ60は、サイドフェンス(611、612)によって自らのシート幅方向の端が中心線L1に向けて押される図示しない記録シートの裏面に付与される摩擦力を抑える摩擦抑制手段を、第1載置部61と第2載置部62とにそれぞれ具備している。第1載置部61においては、切り起こしや一体形成などにより、底板610の表面よりもシート側に突出するように設けられた複数の第1突出部610bが、それぞれ摩擦抑制手段として機能している。これらの第1突出部610bは、搬送直交方向(矢印B方向)に延在するレール状の形状になっており、シート搬送方向に沿って並んでいる。搬送直交方向に沿って延在しているエッジを記録シートの裏面に突き当てることで、記録シートの搬送直交方向への移動を案内する役割も担っている。自らが底板610よりも突出して記録シートの裏面に接触することで、記録シートの裏面において、自ら及び底板610の両方に接触しない空中に浮いた領域をつくり出している。これにより、シート裏面の摺擦面積を減らすことで、記録シートの裏面に供給される摩擦力を低減している。更には、自らの表面が、摩擦抵抗の非常に小さなフッ素樹脂あるいはシリコーン樹脂から成っていることによっても、記録シートの裏面に供給される摩擦力を低減している。
【0090】
第2載置部62においては、切り起こしや一体形成などにより、シート受け面621の表面よりもシート側に突出するように設けられた複数の第2突出部622が、それぞれ摩擦抑制手段として機能している。これらの第2突出部622も、第1突出部610bと同様に、搬送直交方向に延在するレール状の形状になっており、シート搬送方向に沿って並んでいる。搬送直交方向に沿って延在しているエッジを記録シートの裏面に突き当てることで、記録シートの搬送直交方向への移動を引っ掛かりなく案内する役割も担っている。自らがシート受け面621よりも突出して記録シートの裏面に接触することで、記録シートの裏面において、自ら及び底板610の両方に接触しない空中に浮いた領域をつくり出している。これにより、シート裏面の摺擦面積を減らして、記録シートの裏面に供給される摩擦力を低減している。更には、自らの表面が、摩擦抵抗の非常に小さなフッ素樹脂あるいはシリコーン樹脂から成っていることによっても、記録シートの裏面に供給される摩擦力を低減している。
【0091】
第1突出部610bや第2突出部622の表面をフッ素樹脂やシリコーン樹脂で構成する方法としては、それら突出部の表面にフッ素樹脂やシリコーン樹脂からなる樹脂シートを固着させる方法を挙げることができる。シリコーン樹脂又はフッ素樹脂等の表面張力の小さい樹脂をCVD、真空蒸着等の方式で表面に被覆してもよい。また、これらの樹脂を有機溶媒に溶解させて、塗布してもよい。溶媒塗布方式として、浸漬方法、ディップ方法等の方法で処理することもできる。
【0092】
第1突出部610bは、図19に示されるように、シート搬送方向の上流側の端部面が、底板610表面から垂直に突出する側面ではなく、垂直よりも搬送方向下流側に傾いているテーパー面になっている。記録シートは、操作者によって手差しトレイ60にセットされる際に、底板610上で突き当て面615aに向けて押し込まれる。この際、記録シートの先端は、第1突出部610bに引っ掛からずに、テーパー面に沿ってスムーズに移動して、第1突出部610bを乗り越えることができる。第2突出部622も、第1突出部610bと同様のテーパー面を備えている。よって、操作者が、記録シートの先端部を第2載置部62上から第1載置部61上に移動させるようなセットのやり方をした場合に、記録シートの先端に対して第2突出部622を容易に乗り越えさせることができる。
【0093】
図20は、第4実施形態に係る複写機の第1変形例における手差しトレイ60を示す斜視図である。この手差しトレイ60は、第1突出部610bや第2突出部622だけでなく、底板610の一部領域についても、フッ素樹脂やシリコーン樹脂で表面を構成している。かかる構成では、第1突出部610bや第2突出部622だけでなく、底板610における樹脂表面領域も、摩擦抑制手段として機能している。
【0094】
図21は、第4実施形態に係る複写機の第2変形例における手差しトレイ60を示す斜視図である。この手差しトレイ60は、第1突出部610bや第2突出部622だけでなく、第2載置部62のシート受け面621についても、フッ素樹脂やシリコーン樹脂で表面を構成している。かかる構成では、第1突出部610bや第2突出部622だけでなく、シート受け面621も、摩擦抑制手段として機能している。
【0095】
次に、第5実施形態に係る複写機について説明する。なお、以下に特筆しない限り、第5実施形態に係る複写機の構成は、第1実施形態と同様である。
図22は、第5実施形態に係る複写機の手差しトレイ60を示す斜視図である。この手差しトレイ60は、摩擦抑制手段として、載置面たる底板610と、記録シートの裏面との間に空気を送り込む送気ファン70からなるものを具備している。
【0096】
送気ファン70は、吸気口711から空気を吸い込む。この吸引力は、図23に示されるように、ローター712の回転駆動によって発生するものである。送気ファン70の内部に吸い込まれた空気は、吸引路713とローター712とを経た後、吹き出し口715から吹き出される。吸引路713には、空気を暖めるためのヒーター714が配設されている。
【0097】
記録シート6を載置するための底板610は、互いに所定の間隙を介して対向する上板610cと下板610dとを有する2重構造になっている。上板610cは、記録シート6に直接接触する側に設けられるものであり、厚み方向に貫通する複数の排気孔610eを具備している。送気ファン70の吹き出し口715は、上板610cと下板610dとの間の間隙に連通している。吹き出し口715から吹き出された空気は、その間隙内に進入した後、複数の排気孔610eを通じて、記録シート6の裏面と、載置面たる上板610c表面との間に送られる。このように、記録シート6と上板610c表面との間に空気を送り込むことで、両者間の摩擦力を低減している。
【0098】
先に示した図22において、第1載置部61の側板には、紙分離促進ファン71が固定されている。この紙分離促進ファン71は、手差しトレイ60上にセットされたシート束における各シートの間に空気を送り込むことで、シート間の密着力を低減して記録シートの分離を促進する。これにより、複数枚の記録シート6を重ねた状態で送り出してしまういわゆる重送の発生を抑えることができる。
【0099】
図22に示したように、ローター712を搬送直交方向(矢印B方向)に複数並べて配設することで、空気の吹き出し強さを搬送直交方向で均一化させることができる。また、図23に示したように、吸引した空気をヒーター714によって暖めてから吹き出すことで、湿度の高い環境下でも記録シート6の上板610cへの密着を湿気によって助長してしまうという事態を防止することができる。なお、図22に示したように、ローター712などの送風機を複数設けている場合には、吹き出し口715を複数に区切ってそれぞれのローター712に個別に対応させるとともに、それぞれの吹き出し口区画からの吹き出し量を個別に調整する吹き出し量個別調整手段を設けるとよい。こうすることで、手差しトレイ60の上に載置される記録シートの幅寸法に応じて、搬送直交方向の全域のうち、記録シートが存在する領域に対して集中的に送風することが可能になるからである。それぞれの吹き出し口区画からの吹き出し量を個別に調整する方法としては、それぞれの吹き出し口区画の開口率を個別に変化させる方法を例示することができる。また、それぞれのローター712について、回転速度を個別に調整したり、駆動のON/OFFを個別に制御したりする方法でもよい。
【0100】
上述した第4実施形態に係る複写機や、第5実施形態に係る複写機においては、手差しトレイ60に対して振動を加える加振手段を設けることが望ましい。加振手段のとしては、図24に示すように、手差しトレイ60に固定された振動子72を例示することができる。
【0101】
第4実施形態に係る複写機においては、第1突出部610bや第2突出部622の表面上で記録シートを搬送直交方向に摺動させることになる。加振手段によって第1突出部610bや第2突出部622の表面を振動させることで、それら突出部と記録シートの裏面との密着力を弱めて、記録シートの搬送直交方向への摺動を良好に促すことができる。
【0102】
また、第5実施形態に係る複写機においては、加振手段によって底板610やシート受け面621を振動させることで、底板610やシート受け面621と、記録シートの裏面との密着力を弱めて、両者間への空気の送り込みを良好に促すことができる。
【0103】
振動子72に供給する交流電流の周波数を変化させたり、振幅を変化させたりすることで、振動周波数を調整したり、振動の強さを調整したりする振動制御手段を設けることが望ましい。振動子72としては、圧電素子を用いることができる。圧電素子の圧電体の材質は、圧電性を有する物質であれば特に限定されるものではないが、例えば、ペロブスカイト構造(ABO:但し、A、Bはそれぞれ特定の元素を示す)の複合酸化物を主成分とする材料が挙げられる。ペロブスカイト構造における元素Aとしては、Ba、Bi、Ca、Pb、La、Li、Srの中から選択される少なくとも1種の元素が挙げられる。また、元素Bとしては、Co、Fe、Mg、Nb、Ni、Sb、Ta、Ti、W、Zn、Zrの中から選択される少なくとも1種の元素が挙げられる。このようなペロブスカイト複合酸化物としては、例えば、BaTiO、LiNbO、(Pb,La)(Zr,Ti)O、PbTiO、Pb(Zr,Ti)O、SrTiO、TaNbOが挙げられる。圧電体を挟み込む電極の材料としては、Ag、Al、Au、Cu、Ni、Ptなどの金属やこれらの合金の導電材料、又は金属酸化物や金属窒化物の導電材料を用いることができる。電極の形成方法は特に限定されるものではなく、真空蒸着法、スパッタリング法、塗布処理、又はメッキ法などの物理蒸着法を用いることができる。
【0104】
上述した第2実施形態に係る複写機においては、第1載置部61の回転コロ615fを第1摩擦抑制手段として設けるとともに、第2載置部62の回転コロ625を第2摩擦抑制手段として設けている。かかる構成では、記録シートの裏面の傷付きを回転コロ615fによって抑えつつ、記録シートの折れや破れの発生を回転コロ625によって抑えることができる。
【0105】
また、第2実施形態に係る複写機においては、載置面たる底板610の表面を突き当て面615aに向かって下がる下り勾配面としているので、記録シートを底板610表面上で突き当て面615aに向けて押すという操作を実行しなくても、記録シートを底板610表面上で突き当て面615aに向けて自重で滑らせて、記録シートの先端を突き当て面615aに自動で突き当てることができる。
【0106】
また、第1実施形態に係る複写機においては、記録シートの裏面を受けた状態で、サイドフェンス(611、612)によって搬送直交方向に押される記録シートに追従して従動回転することで、記録シートの搬送直交方向への移動を促しながら、その移動に伴って記録シートの裏面に対して付与される摩擦力を抑制する回転部材たる回転コロ615fを、摩擦抑制手段として搬送直交方向に複数並べて配設している。かかる構成では、数十枚の記録シートからなるシート束が載置された場合であっても、そのシート束の搬送直交方向への移動を回転コロ615fの従動回転によって促すことで、非常に小さな力でシート束を搬送直交方向に移動させる。これにより、記録シートが1枚だけ載置された場合であっても、シート束が載置された場合であっても、フェンス間距離をシート幅寸法とほぼ同じにするタイミングまでは、サイドフェンス(611、612)に対する駆動伝達を切らずにサイドフェンスを移動させて、適切なシート位置合わせを行うことができる。
【0107】
また、第1実施形態に係る複写機においては、複数の回転コロ615fとしてそれぞれ、回転可能に支持される回転軸部615f−1、及びこの回転軸部615f−1よりも大径で且つシート部材に接触する大径部615f−2を具備するものを用いるとともに、回転コロ615fの回転軸部615f−1を、載置面たるシート受け面621よりも突出させない位置に配設している。かかる構成では、シート受け面621の上には、回転軸部615f−1や、それを受ける軸受けを存在させないようになるので、記録シートを回転軸部615f−1や軸受けに引っ掛けてしまうことを回避することができる。
【0108】
また、第1実施形態に係る複写機においては、シート受け面621上での搬送方向における回転コロ615fの全域のうち、少なくとも搬送方向上流側の端部箇所を、下流側から上流側に向けて徐々に小径になる裁頭円錐状の形状にしている。かかる構成では、記録シートをシート受け面621上にセットする際に、記録シートの先端を回転コロ625に引っ掛かることなく、記録シートに回転コロ625を乗り上げさせることができる。
【0109】
また、第2実施形態に係る複写機においては、記録シートの先端を受けた状態で、サイドフェンス(611、612)によって搬送直交方向に押される記録シートに追従して従動回転することで、記録シートの搬送直交方向への移動を促しながら、突き当て面615aと記録シートの先端との摩擦力を抑制する回転コロ625を、摩擦抑制手段として搬送直交方向に複数並べて配設している。かかる構成では、数十枚の記録シートからなるシート束が載置された場合であっても、そのシート束の搬送直交方向への移動を回転コロ625の従動回転によって促すことで、記録シートの先端の突き当て面615aへの引っ掛かりを良好に抑えることができる。
【0110】
また、第2実施形態に係る複写機においては、複数の回転コロ625としてそれぞれ、回転可能に支持される回転軸部、及びこの回転軸部よりも大径で且つ記録シートに接触する大径部を具備するものを用いるとともに、それぞれの回転コロ625の回転軸部を、突き当て面615aよりも突出させない位置に配設している。かかる構成では、突き当て面615aの上には、回転コロ625回転軸部やそれを受ける軸受けを存在させないようになるので、記録シートを回転軸部や軸受けに引っ掛けてしまうことを回避することができる。
【0111】
また、第2実施形態に係る複写機においては、回転コロ625のシート厚み方向の全域のうち、少なくとも底板610表面とは反対側の端部箇所を、同反対側に向けて徐々に小径になる裁頭円錐状の形状にしている。かかる構成では、記録シートを底板610の表面上に載置するために底板610の真上から底板610表面に向けて降下させていく過程で、記録シートの先端部を回転コロに引っ掛かることなく、記録シートの先端部に回転コロを乗り上げさせることができる。
【0112】
また、第4実施形態に係る複写機においては、摩擦抑制手段として、シート受け面621から突出して記録シートの裏面を受ける第2突出部622や、底板610表面から突出して記録シートの裏面を受ける第1突出部610bを設けている。かかる構成では、一体形成や切り起こしなどといった大量生産に適した突出部を摩擦抑制手段として機能させることで、低コスト化を図ることができる。なお、突き当て面615aに向かう下り勾配を設けた場合には、突き当て面615aから突出する突出部を摩擦抑制手段として設けてもよい。
【0113】
また、第4実施形態に係る複写機においては、第1突出部610bや第2突出部622として、搬送直交方向に沿って延在するレール状のものを設けている。かかる構成では、それら突出部における搬送直交方向に延在するエッジにより、記録シートを搬送直交方向に向けて案内することができる。
【0114】
また、第4実施形態に係る複写機の第1変形例や第2変形例においては、フッ素樹脂及びシリコーン樹脂のうち、少なくとも何れか一方を含む材料からなる樹脂面を、シート部材の裏面に当接させる底板610やシート受け面621を、摩擦抑制手段として機能させている。かかる構成では、底板610やシート受け面621を樹脂材料からなる層やシートという大量生産に適したものを、摩擦抑制手段として機能させて、低コスト化を図ることができる。なお、突き当て面615aに向かう下り勾配を設けた場合には、突き当て面615aの表面を前述の樹脂材料で構成して摩擦抑制手段として機能させてもよい。
【0115】
また、第5実施形態に係る複写機においては、摩擦抑制手段として、載置面たる底板610表面と、記録シートの裏面との間、に空気を送り込む送気ファン70を設けている。かかる構成では、底板610の表面上に特別な部材や突起を配設することなく、記録シートの裏面に対する摩擦力を抑制することができる。
【符号の説明】
【0116】
2:ADF(画像読取装置の一部)
3:スキャナ(画像読取装置の一部)
4:画像形成部(画像形成装置の一部)
5:給紙部(画像形成装置の一部)
6:記録シート(シート部材)
60:手差しトレイ(シート収納装置)
80:排紙トレイ(シート収納装置)
88:中継トレイ(シート収納装置)
200:原稿トレイ(シート収納装置)
209b:中継トレイ(シート収納装置)
400:制御部
610:底板(載置面、先端側載置面)
611:第1サイドフェンス(第1規制部材)
612:第2サイドフェンス(第2規制部材)
613:第1ラックギヤ(駆動伝達手段の一部)
614:第2ラックギヤ(駆動伝達手段の一部)
615:連結ピニオンギヤ(駆動伝達手段の一部)
615a:突き当て面
615f:回転コロ(摩擦力抑制手段、回転部材)
616:トルク制限機構(駆動伝達手段の一部)
617:駆動モータ(駆動源)
618:タイミングベルト(駆動伝達手段の一部)
619:回転検知センサ(回転検知手段)
621:シート受け面(載置面、後端側載置面)
625:回転コロ(摩擦力抑制手段、回転部材)
651:中継ギヤ(駆動伝達手段の一部)
652:中継ユニット(駆動伝達手段の一部)
B:搬送直交方向
C:搬送方向
θ:屈折角
P:原稿シート(シート部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0117】
【特許文献1】特開平07−267474

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のシート部材を載置するための載置面と、
前記載置面に沿った方向であり且つ前記載置面上でのシート搬送方向と直交する方向である搬送直交方向に移動するように前記載置面上に配設され、前記載置面上に載置されたシート部材の前記搬送直交方向の一端に当接することで前記一端の位置を規制する第1規制部材と、
前記シート部材の前記搬送直交方向の他端に当接することで前記他端の位置を規制する第2規制部材とを有し、
前記第1規制部材によって前記一端の位置を規制しつつ、前記第2規制部材によって前記他端の位置を規制することで、前記載置面上に載置された前記シート部材の前記搬送直交方向における位置を所定位置に合わせるシート位置合わせ機構において、
前記搬送直交方向に移動する前記第1規制部材によって押される前記シート部材の裏面に対して付与される摩擦力を抑制する摩擦抑制手段を設けた
ことを特徴とするシート位置合わせ機構。
【請求項2】
シート状のシート部材を載置するための載置面と、
前記載置面に載置されたシート部材の先端に突き当たる突き当て面と、
前記載置面に沿った方向であり且つ前記載置面上でのシート搬送方向と直交する方向である搬送直交方向に移動するように前記載置面上に配設され、前記載置面上に載置されたシート部材の前記搬送直交方向の一端に当接することで前記一端の位置を規制する第1規制部材と、
前記シート部材の前記搬送直交方向の他端に当接することで前記他端の位置を規制する第2規制部材とを有し、
前記第1規制部材によって前記一端の位置を規制しつつ、前記第2規制部材によって前記他端の位置を規制することで、前記載置面上に載置された前記シート部材の前記搬送直交方向における位置を所定位置に合わせるシート位置合わせ機構において、
前記突き当て面と、前記搬送直交方向に移動する前記第1規制部材によって押される前記シート部材の先端との摩擦力を抑制する摩擦抑制手段を設けた
ことを特徴とするシート位置合わせ機構。
【請求項3】
請求項2のシート位置合わせ機構において、
前記摩擦抑制手段を第1摩擦抑制手段として設けるとともに、
前記搬送直交方向に移動する前記第1規制部材によって押される前記シート部材の裏面に対して付与される摩擦力を抑制する第2摩擦抑制手段を設けた
ことを特徴とするシート位置合わせ機構。
【請求項4】
請求項2又は3のシート位置合わせ機構において、
前記載置面を前記突き当て面に向かって下がる下り勾配面としたことを特徴とするシート位置合わせ機構。
【請求項5】
請求項1のシート位置合わせ機構において、
シート部材の裏面を受けた状態で、前記サイドフェンスによって前記搬送直交方向に押される前記シート部材に追従して従動回転することで、前記シート部材の前記搬送直交方向への移動を促しながら、前記移動に伴って前記シート部材の裏面に対して付与される摩擦力を抑制する回転部材を、前記摩擦抑制手段として前記搬送直交方向に複数並べて配設した
ことを特徴とするシート位置合わせ機構。
【請求項6】
請求項5のシート位置合わせ機構において、
複数の前記回転部材としてそれぞれ、回転可能に支持される回転軸部、及びこの回転軸部よりも大径で且つシート部材に接触する大径部を具備するものを用いるとともに、
それぞれの前記回転部材の前記回転軸部を、前記載置面よりも突出させない位置に配設した
ことを特徴とするシート位置合わせ機構。
【請求項7】
請求項6のシート位置合わせ機構において、
前記回転部材の前記搬送方向における全域のうち、少なくとも搬送方向上流側の端部箇所を、下流側から上流側に向けて徐々に小径になる裁頭円錐状の形状にした
ことを特徴とするシート位置合わせ機構。
【請求項8】
請求項2乃至4の何れかのシート位置合わせ機構において、
シート部材の先端を受けた状態で、前記サイドフェンスによって前記搬送直交方向に押される前記シート部材に追従して従動回転することで、前記シート部材の前記搬送直交方向への移動を促しながら、前記突き当て面と前記シート部材の先端との摩擦力を抑制する回転部材を、前記摩擦抑制手段として前記搬送直交方向に複数並べて配設した
ことを特徴とするシート位置合わせ機構。
【請求項9】
請求項8のシート位置合わせ機構において、
複数の前記回転部材としてそれぞれ、回転可能に支持される回転軸部、及びこの回転軸部よりも大径で且つシート部材に接触する大径部を具備するものを用いるとともに、
それぞれの前記回転部材の前記回転軸部を、前記突き当て面よりも突出させない位置に配設した
ことを特徴とするシート位置合わせ機構。
【請求項10】
請求項9のシート位置合わせ機構において、
前記回転部材の全域のうち、少なくとも前記載置面とは反対側の端部箇所を、前記反対側に向けて徐々に小径になる裁頭円錐状の形状にした
ことを特徴とするシート位置合わせ機構。
【請求項11】
請求項1乃至4の何れかのシート位置合わせ機構において、
前記摩擦抑制手段として、前記載置面から突出してシート部材の裏面を受ける突出部、又は、前記突き当て面から突出してシート部材の先端を受ける突出部、を設けた
ことを特徴とするシート位置合わせ機構。
【請求項12】
請求項11のシート位置合わせ機構において、
前記突出部として、前記搬送直交方向に沿って延在するレール状のものを設けた
ことを特徴とするシート位置合わせ機構。
【請求項13】
請求項1乃至4の何れかのシート位置合わせ機構において、
前記摩擦抑制手段として、フッ素樹脂及びシリコーン樹脂のうち、少なくとも何れか一方を含む材料からなる樹脂面を、シート部材の裏面又は先端に接触させるもの、を設けた
ことを特徴とするシート位置合わせ機構。
【請求項14】
請求項1乃至4の何れかのシート位置合わせ機構において、
前記摩擦抑制手段として、前記載置面とシート部材の裏面との間、あるいは、前記突き当て面とシート部材の先端との間、に空気を送り込むもの、を設けた
ことを特徴とするシート位置合わせ機構。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れかのシート位置合わせ機構において、
前記載置面又は前記突き当て面に振動を加える加振手段を設けた
ことを特徴とするシート位置合わせ機構。
【請求項16】
シート状のシート部材を載置するための載置面、前記載置面に沿った方向であり且つ前記載置面上でのシート搬送方向と直交する方向である搬送直交方向に移動するように前記載置面上に配設され、前記載置面上に載置されたシート部材の前記搬送直交方向の一端に当接することで前記一端の位置を規制する第1規制部材、及び、前記シート部材の前記搬送直交方向の他端に当接することで前記他端の位置を規制する第2規制部材を具備し、前記第1規制部材によって前記一端の位置を規制しつつ、前記第2規制部材によって前記他端の位置を規制することで、前記載置面上に載置された前記シート部材の前記搬送直交方向における位置を所定位置に合わせるシート位置合わせ機構と、
前記第1規制部材を駆動するための駆動力を発揮する駆動源と、
前記駆動力を、前記第1規制部材及び前記第2規制部材のうち、少なくとも前記第1規制部材に伝達する駆動伝達手段とを有するシート位置合わせ装置において、
前記シート位置合わせ機構として、請求項1乃至15の何れかのシート位置合わせ機構を用いた
ことを特徴とするシート位置合わせ装置。
【請求項17】
請求項16のシート位置合わせ装置において、
従動側駆動伝達回転体にかかるトルクが所定の閾値を超えた場合に、原動側駆動伝達回転体ら前記従動側駆動伝達回転体への回転駆動力の伝達を断つことで、移動中の前記第1規制部材を停止させるトルク制限機構を、前記駆動伝達手段に設けた
ことを特徴とするシート位置合わせ装置。
【請求項18】
請求項17のシート位置合わせ装置において、
前記第2規制部材を前記載置面上でスライド移動可能に配設するとともに、
前記第1規制部材と前記第2規制部材とに対して、前記搬送直交方向に沿って互いに逆方向の力を伝達し、且つ、前記第1規制部材と前記第2規制部材とを前記トルク制限機構によって互いに同じタイミングで停止させるように、前記駆動伝達手段を構成した
ことを特徴とするシート位置合わせ装置。
【請求項19】
請求項17又は18のシート位置合わせ装置であって、
前記載置面の全域のうち、シート部材の搬送方向の後端側を載置するための後端側載置面が、シート部材の先端側を載置するための先端側載置面に対して所定の屈折角をもって屈折する姿勢をとるように設けられたものであり、
且つ、前記第1規制部材及び第2規制部材が、前記載置面上に載置されているシート部材の全域のうち、少なくとも前記屈折角に沿って屈折している屈折部に当接し得る位置で、前記搬送直交方向に沿って移動可能に配設されたものである
ことを特徴とするシート位置合わせ装置。
【請求項20】
請求項17乃至19の何れかのシート位置合わせ装置において、
前記従動側駆動伝達回転体の回転を検知する回転検知手段を設けるとともに、
前記第1規制部材を前記載置面上のシート部材に向けて移動させるために前記駆動源の駆動を開始した後、前記回転検知手段が前記従動側駆動伝達回転体の回転を検知しなくなったことに基づいて前記駆動源の駆動を停止させる駆動制御手段を設けた
ことを特徴とするシート位置合わせ装置。
【請求項21】
請求項17乃至20の何れかのシート位置合わせ装置において、
前記載置面にシート部材が載置される際の前記第1規制部材の前記搬送直交方向における待避位置であるホームポジションに、前記第1規制部材が位置しているか否かを検知するホームポジションセンサを設けるとともに、
操作者からの命令に基づいて、前記第1規制部材を前記ホームポジションに移動させるまで前記駆動源を逆駆動する駆動制御手段を設けた
ことを特徴とするシート位置合わせ装置。
【請求項22】
請求項21のシート位置合わせ装置において、
前記第1規制部材を前記ホームポジションに位置させている状態で前記駆動源の駆動を開始してから、前記駆動源を停止するまでの駆動量に基づいて、前記載置面上に載置されたシート部材のサイズを特定するシートサイズ特定手段を設けた
ことを特徴とするシート位置合わせ装置。
【請求項23】
載置面上に載置されたシート部材を所定位置に位置合わせするシート位置合わせ手段を有するシート収納装置において、
前記シート位置合わせ手段として、請求項1乃至15の何れかのシート位置合わせ機構、あるいは、請求項16乃至22の何れかのシート位置合わせ装置を用いた
ことを特徴とするシート収納装置。
【請求項24】
シート部材としての記録シートの表面に画像を記録する画像記録手段と、
前記画像記録手段に向けて送り出すための記録シート、あるいは、前記画像記録手段を経由した後の記録シート、を載置する載置面上における記録シートの位置を所定の位置に合わせるシート位置合わせ手段とを備える画像形成装置において、
前記シート位置合わせ手段として、請求項1乃至15の何れかのシート位置合わせ機構、あるいは、請求項16乃至22の何れかのシート位置合わせ装置を用いた
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項25】
原稿シートに記録されている画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段に向けて送り出すための記録シート、あるいは、前記読取手段を経由した後の記録シート、を載置する載置面上における記録シートの位置を所定の位置に合わせるシート位置合わせ手段とを備える画像読取装置において、
前記シート位置合わせ手段として、請求項1乃至15の何れかのシート位置合わせ機構、あるいは、請求項16乃至22の何れかのシート位置合わせ装置を用いた
ことを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−157213(P2011−157213A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237046(P2010−237046)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】