説明

シート供給装置及び該シート供給装置を備えた記録装置

【課題】保持した複数のロール体から巻き解かれるシートを均一な条件で搬送に供することができるシート供給装置及び該シート供給装置を備えた記録装置を提供する。
【解決手段】プリンター11は、長尺状のシートSを巻き重ねてなるロール体Rを保持可能なロール体保持部16を周方向の複数位置に有する回転体17と、回転体17におけるロール体保持部16の移動軌跡の一部と対応する位置から延びる通路19とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート供給装置及び該シート供給装置を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録装置の一種であるプリンターには、長尺状のシート(記録紙)を巻き重ねてなるロール体を回転可能に保持し、このロール体から巻き解かれた記録紙に記録(印刷)を行う記録手段(印字ヘッド)を備えたプリンターがあった(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1のプリンターは、複数種類の記録紙に対して印刷を行う場合にロール体をセットし直す手間を省くため、複数(2つ)のロール体を保持することができるようになっていた。そして、何れかのロール体から巻き解かれた記録紙は、各ロール体から印字ヘッド側へと延びる2本の個別搬送路を通じて印字ヘッド側に供給されるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−277632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このように異なる個別搬送路を通じて記録紙を供給する場合には、供給条件に差異が生じる結果、異なるロール体から巻き解かれた記録紙同士で印刷結果にばらつきが生じてしまう虞があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、保持した複数のロール体から巻き解かれるシートを均一な条件で供給することができるシート供給装置及び該シート供給装置を備えた記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のシート供給装置は、長尺状のシートを巻き重ねてなるロール体を保持可能なロール体保持部を周方向の複数位置に有する回転体と、該回転体における前記ロール体保持部の移動軌跡の一部と対応する位置から延びる通路とを備えた。
【0008】
この構成によれば、回転体はロール体を保持可能なロール体保持部を周方向の複数位置に有するので、複数のロール体を同時に保持することができる。また、回転体を回転させて通路に対応する位置に何れかのロール体保持部を移動させることにより、複数のロール体のうち何れか一つのロール体のシートを選択的に供給することができる。そして、どのロール体が選択された場合にも、選択されたロール体から巻き解かれたシートを共通の通路を通じて供給することができるので、保持した複数のロール体から巻き解かれるシートを均一な条件で供給することができる。
【0009】
本発明のシート供給装置は、前記ロール体保持部が保持する前記ロール体と一体回転可能な軸部と、該軸部を回転させるための駆動源と、該駆動源の駆動力を前記軸部に伝達するための動力伝達部とをさらに備え、該動力伝達部は、複数の前記ロール体保持部のうち、前記通路と対応する位置に配置された一のロール体保持部の前記軸部に対して動力伝達可能な接続位置と、前記一のロール体保持部の前記軸部から離間した非接続位置とに変位可能に構成された。
【0010】
この構成によれば、駆動源による軸部の回転に伴って、ロール体を回転させることができるので、ロール体からシートを巻き解いたり、ロール体にシートを巻き取ったりすることができる。また、動力伝達部は接続位置に配置されることにより、複数のロール体保持部のうち、通路と対応する位置に配置された一のロール体保持部の軸部に選択的に動力を伝達することができる。したがって、複数のロール体保持部に対して各1つの駆動源及び動力伝達部を備えればよいので、簡易な構成で装置を実現することができる。
【0011】
本発明のシート供給装置において、前記動力伝達部は、回動軸を中心に回動可能なアーム部材と、前記回動軸を中心に回転可能な第1歯車と、前記アーム部材に支持された回転軸を中心に回転可能であるとともに前記第1歯車と噛合する第2歯車とを有する。
【0012】
この構成によれば、アーム部材が回動することで動力伝達部の変位を実現することができるとともに、第1歯車及び第2歯車によって動力を伝達することができる。
本発明のシート供給装置は、前記アーム部材を前記非接続位置から前記接続位置へ向かう接続方向へ付勢する付勢部材と、前記回転体の回転に伴って前記アーム部材を前記付勢部材の付勢力に抗して前記接続位置から前記非接続位置へ向かう離間方向へ押圧する押圧部とをさらに備えた。
【0013】
この構成によれば、押圧部の押圧によってアーム部材を接続位置から非接続位置へと変位させることができる一方、付勢部材の付勢力によってアーム部材を非接続位置から接続位置へと変位させることができる。したがって、回転体の回転に伴って、動力伝達部が接続されるロール体保持部の軸部を自動的に切り替えることができる。
【0014】
本発明のシート供給装置は、前記駆動源は、正逆両方向に回転駆動可能なモーターである。
この構成によれば、駆動源は正逆両方向に回転駆動可能なモーターであるので、モーターの正転駆動に伴ってロール体からのシートの繰り出しを行ったり、モーターの逆転駆動に伴ってロール体へのシートの巻き取りを行ったりすることができる。またモーターの回転駆動によって、シートの張設状態を調整することができる。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、上記シート供給装置と、前記通路を通じて供給された前記シートに対して記録を行う記録手段とを備えた。
この構成によれば、回転体はロール体を保持可能なロール体保持部を周方向の複数位置に有するので、複数のロール体を同時に保持することができる。また、回転体を回転させて通路に対応する位置に何れかのロール体保持部を移動させることにより、複数のロール体のうち何れか一つのロール体のシートを選択的に供給することができる。そして、どのロール体が選択された場合にも、選択されたロール体から巻き解かれたシートを共通の通路を通じて供給することができるので、保持した複数のロール体から巻き解かれるシートを均一な条件で供給することができる。したがって、異なるロール体から巻き解かれたシート同士においても、均一な記録品質を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態におけるインクジェット式プリンターに備えられたシート供給装置及び記録手段を説明するための概略図。
【図2】実施形態における回転体の構成を説明するための正面図。
【図3】図2におけるA−A線矢視断面図。
【図4】実施形態における動力伝達部の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を記録装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」という)に具体化した一実施形態を図1〜図4を用いて説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、各図中に矢印で示した方向を基準として示すものとする。
【0018】
図1に示すプリンター11は、本体フレーム12と、シート供給装置13と、記録手段14と、開閉可能な蓋部15とを備えている。
シート供給装置13は、長尺状のシートSを巻き重ねてなるロール体Rを保持可能なロール体保持部16を周方向の複数位置(本実施形態では3カ所)に有する回転体17と、回転体17を支持する左右一対の支持壁18と、記録手段14側へ向けて延びる通路19とを備えている。
【0019】
記録手段14には、主走査方向(図1において紙面と直交する左右方向)に往復移動可能に構成されたキャリッジ20と、キャリッジ20に支持された記録ヘッド21とが備えられている。
【0020】
また、通路19と記録手段14との間には、シートSを図1に矢印で示す搬送方向に搬送するための搬送ローラー対22が設けられているとともに、搬送方向における搬送ローラー対22の下流側であってキャリッジ20と対向する位置には、支持台23が配置されている。なお、シートSを搬送するための搬送ローラー対又は搬送ローラーは、通路19上や記録手段14の搬送方向下流側などにも適宜設けることができる。
【0021】
そして、何れかのロール体保持部16に保持されたロール体Rから巻き解かれたシートSは、通路19を通じて搬送に供され、搬送ローラー対22によって記録ヘッド21側に搬送されるようになっている。そして、搬送されて支持台23上に停止されたシートSに対して、記録ヘッド21が主走査方向に移動しつつインクを噴射することで、記録としての印刷処理が行われるようになっている。
【0022】
次に、シート供給装置13について説明する。
図2に示すように、回転体17は、左右方向に延びる主軸24と、主軸24の両端付近に固定された左右一対の円盤25とを備え、軸受24aを介して支持壁18に対して回転自在に支持されている。
【0023】
主軸24において右側の円盤25と支持壁18の間となる位置には歯車26が固定されているとともに、右側の支持壁18において主軸24と近接する位置には、回転体17を回転させる駆動源となるモーター27が支持されている。また、モーター27の駆動軸28には、歯車26と噛合するピニオンギヤ29が固定されている。なお、図2においては、モーター27の駆動軸28等の構成を明示するために、図1において下側に位置する2つのロール体保持部16の図示を省略している。
【0024】
そして、モーター27の回転駆動によって、回転体17は右側から見た場合に反時計回り方向となる切り替え方向に略120度ずつ回転されるようになっている。なお、シート供給装置13には図示しない回転規制機構が備えられており、モーター27が駆動されるとき以外は、この回転規制機構によって回転体17の回転が規制されるようになっている。
【0025】
図3に示すように、両円盤25には、周方向に沿う複数箇所(本実施形態では3カ所)に切り欠き部30と、切り欠き部30と連続形成された軸受部31とが設けられている。なお、図3においては、支持壁18の図示は省略している。
【0026】
図2に示すように、ロール体保持部16は、円盤25と一体回転可能な状態で軸受部31に着脱可能に固定される左右一対のカバー部32,33と、保持されたロール体Rと一体回転可能な軸部34と、軸部34に挿通された一対のフランジ部35とを備えている。
【0027】
ロール体Rは、軸受部31から取り外されたロール体保持部16の軸部34に対して挿通され、フランジ部35で軸方向の位置決めがなされた後、ロール体保持部16とともに切り欠き部30を通じて軸受部31にセットされるようになっている。なお、各ロール体保持部16には、それぞれ異なる種類のシートSが巻き重ねられたロール体Rをセットするようにしてもよいし、同種類のシートSが巻き重ねられたロール体Rをセットするようにしてもよい。
【0028】
カバー部32,33は、略円筒形状の各周面が軸部34の両端を覆う態様となっているとともに、軸受部31に係合する周面部分に平面部32a,33aがそれぞれ形成されている。ロール体保持部16は、平面部32a,33aが切り欠き部30に対向した状態で軸受部31に嵌め込まれることにより、軸受部31からの脱落が抑制されるようになっている。
【0029】
また、押圧部としてのカバー部33に覆われた軸部34の右端には、軸部34と一体回転可能な歯車36が設けられているとともに、カバー部33の周面には、矩形状の開口部37が設けられている。
【0030】
両円盤25には、カバー部33の開口部37が切り欠き部30と対応する位置に配置された状態(図2に示す状態)でカバー部32,33を軸受部31に固定するための固定機構(図示略)が備えられている。そして、ロール体保持部16は固定機構によってカバー部32,33が円盤25に対して固定されることで、回転体17の一部を構成する。なお、固定機構は、例えばカバー部32,33に形成された係止孔に円盤25側に設けられた変位可能な係合突部(図示略)を係合させることで実現することができる。
【0031】
円盤25へのロール体保持部16の着脱は、蓋部15と近接する交換位置C(図1参照)に配置された軸受部31に対して行われる。したがって、ロール体保持部16のロール体Rの交換は、モーター27の回転駆動によって回転体17を回転させて、交換すべきロール体Rを保持したロール体保持部16を交換位置Cに配置させて行う。
【0032】
本実施形態において、回転体17には3つのロール体保持部16をセット可能であるので、回転体17が略120度回転される毎に、図1に示す供給位置Tに配置されるロール体保持部16が切り替わるようになっている。ここで供給位置Tとは、回転体17の回転に伴うロール体保持部16の移動軌跡の一部と対応する位置であって、本実施形態においては、主軸24の軸心から垂直上方向に延びる仮想線K(図1参照)とロール体保持部16の移動軌跡が交差する位置に設定されている。そして、通路19は回転体17における供給位置Tに配置されたロール体保持部16の移動軌跡の一部と対応する位置から記録ヘッド21側に向かって延びるように設けられている。
【0033】
図2に示すように、右側の支持壁18において、供給位置Tに配置された軸部34と近接する位置には、正逆両方向に回転駆動可能な駆動源としてのモーター38と、モーター38の駆動力を軸部34に伝達するための動力伝達部39とが支持されている。
【0034】
図3に示すように、動力伝達部39は、右側の支持壁18側から左方に向けて延びる回動軸40を中心に回動可能なアーム部材41と、アーム部材41とモーター38との間に配置された固定ギヤ42とを備えている。
【0035】
アーム部材41には係止孔43が形成されている一方、右側の支持壁18側にはソレノイド等で左右方向に移動される係合突起44が設けられている。そして、係止孔43に支持壁18側から左方に移動された係合突起44が挿通されることにより、アーム部材41の回動は規制されるようになっている。
【0036】
回動軸40の周囲には、付勢部材としてのねじりコイルばね45が配置されている。ねじりコイルばね45は、一端側がアーム部材41から右方に突設された係止突部46に係止される一方、他端側が右側の支持壁18から左方に突設された係止突部47に係止されている。したがって、アーム部材41は回動軸40を中心に右側から見た場合に時計回り方向となる離間方向に回動されると、ねじりコイルばね45の付勢力によって、右側から見た場合に反時計回り方向となる接続方向に付勢されるようになっている。
【0037】
また、回動軸40の下方となる位置には、右側の支持壁18から左方に向けて規制突部48が突設されている。そして、アーム部材41は、規制突部48に当接することによって、接続方向への回動が一定の範囲で規制されるようになっている。なお、図2においては、回動軸40等を明示するために、係合突起44、ねじりコイルばね45、係止突部46、係止突部47及び規制突部48の図示を省略している。
【0038】
図4に示すように、固定ギヤ42はモーター38の駆動軸49と平行をなすように設けられた回転軸50と、回転軸50を中心に回転する大径歯車51及び小径歯車52を有している。そして、固定ギヤ42の大径歯車51は、モーター38の駆動軸49に固定されたピニオンギヤ53と噛合しているとともに、固定ギヤ42の小径歯車52は回動軸40を中心に回転される第1歯車54と噛合している。
【0039】
アーム部材41内には、第1歯車54と噛合する第2歯車55と、第2歯車55と噛合する第3歯車56とが収容されている。そして、第1歯車54、第2歯車55及び第3歯車56は歯車列を構成しているとともに、第2歯車55の回転軸55a及び第3歯車56の回転軸56aはアーム部材41に支持されている。そのため、アーム部材41が回動軸40を中心に回動すると、第2歯車55及び第3歯車56もアーム部材41とともに回動されるようになっている。
【0040】
そして、アーム部材41に支持された第3歯車56が、供給位置Tに配置されたロール体保持部16の軸部34に設けられた歯車36に対して、カバー部33に設けられた開口部37を通じて噛合した状態が動力伝達部39の接続位置(図3では実線で示す位置)となっている。また、アーム部材41に対する係合突起44による回動規制は、接続位置において行われるようになっている。
【0041】
一方、動力伝達部39は、アーム部材41が接続位置から離間方向に回動することで、供給位置Tに配置されたロール体保持部16の軸部34から第3歯車56が離間した非接続位置(図3において一点鎖線で示す位置)に変位可能となっている。すなわち、動力伝達部39は、複数のロール体保持部16のうち、通路19と対応する位置に配置された一のロール体保持部16の軸部34に対して動力伝達可能な接続位置と非接続位置とに変位可能に構成されている。
【0042】
そして、動力伝達部39が接続位置にある場合には、モーター38の駆動に伴って駆動軸49が回転されると、第1歯車54、第2歯車55及び第3歯車56が互いに噛合しつつ回転して、軸部34に動力が伝達される。これにより、モーター38の正転駆動に伴って、軸部34は右側から見た場合に反時計回り方向となる正回転方向に回転するとともに、モーター38の逆転駆動に伴って、軸部34は右側から見た場合に時計回り方向となる逆回転方向に回転する。
【0043】
次に、以上のように構成されたシート供給装置13の作用について説明する。
供給位置Tにあるロール体Rから巻き解いたシートSへの印刷処理が終了した後に、他のロール体Rを供給位置Tに配置させる場合には、以下のような手順でロール体保持部16の切り替えを行う。
【0044】
まず始めに、モーター38を逆転駆動させる。これにより、供給位置Tに配置されたロール体保持部16の軸部34が逆回転方向に回転するため、通路19上に繰り出されているシートSが供給位置Tにあるロール体R(第1のロール体R)に巻き取られる。
【0045】
続いて、回転規制機構による回転体17の回動規制を解除するとともに、係合突起44によるアーム部材41の回動規制を解除する。そして、モーター27を回転駆動させて回転体17を切り替え方向に回転させる。
【0046】
すると、アーム部材41は円盤25とともに回転するカバー部33に押圧されてねじりコイルばね45の付勢力に抗して接続位置から非接続位置へ向かう離間方向へ回動し、非接続位置に変位される。また、回転体17の回転が進んでカバー部33による押圧が解除されると、アーム部材41はねじりコイルばね45の付勢力によって接続方向に回動し、規制突部48に当接することでそれ以上の回動が規制される。
【0047】
そして、回転体17の回転が略120度に達すると、交換位置Cにあったロール体保持部16に保持されたロール体R(第2のロール体R)が供給位置Tに至り、アーム部材41に支持された第3歯車56がカバー部33に設けられた開口部37を通じて歯車36と噛合する。これにより、動力伝達部39は接続位置に配置される。
【0048】
なお、第1のロール体R及び第2のロール体Rでない第3のロール体Rを供給位置Tに配置させたい場合には、回転体17を切り替え方向にさらに120度回転させる。そして、目的のロール体Rが供給位置Tに配置された段階で、再び回転規制機構によって回転体17の回転を規制するとともに、係合突起44によってアーム部材41の回動を規制することで、ロール体保持部16の切り替えが完了する。
【0049】
以上のようにロール体保持部16の切り替えが行われた後には、印刷処理に先だってモーター38を正転駆動させ、動力伝達部39が接続された軸部34を正回転方向に回転させる。これにより、軸部34の回転に伴ってロール体Rから通路19側に向かってシートSが巻き解かれる。
【0050】
このとき、巻き解かれたシートSが通路19上に導かれる位置に通路19及び回転体17を配置するのが好ましい。なお、巻き解かれたシートSをより確実に通路19上に導くために、通路19を供給位置Tにより近接する位置まで移動可能又は伸縮可能な構成としてもよい。そして、巻き解かれたシートSが通路19上の搬送ローラー対22が設けられた位置まで達すると、シートSは搬送ローラー対22に狭持されて記録ヘッド21側に搬送されるので、シートSのセットを自動で行うことができる。
【0051】
このように、使用するロール体Rの切り替え及びシートSのセットを自動で行うことができるので、例えば異なる種類や異なるサイズのロール体Rを保持しておけば、印刷データの用紙指定等に応じて、自動的に印刷処理に供するシートSを切り換えることができる。したがって、用紙指定等に応じてロール体Rを交換する手間を省くことができる。あるいは、同じ種類のロール体Rを保持しておけば、シートSを補給するためにロール体Rをセットする頻度を低減することができる。
【0052】
そして、シートSを搬送する際には、搬送ローラー対22の回転と同期させつつ軸部34を正回転方向に回転させることで、シートSを適切な張設状態で搬送することができる。また、シートSに弛みが生じた場合には、軸部34を逆回転方向に回転させることで、シートSの張設状態を調整することができる。
【0053】
上記説明した実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)回転体17はロール体Rを保持可能なロール体保持部16を周方向の複数位置に有するので、複数のロール体Rを同時に保持することができる。また、回転体17を回転させて通路19に対応する供給位置Tに何れかのロール体保持部16を移動させることにより、複数のロール体Rのうち何れか一つのロール体RのシートSを選択的に供給することができる。そして、どのロール体Rが選択された場合にも、選択されたロール体Rから巻き解かれたシートSを共通の通路19を通じて供給することができるので、保持した複数のロール体Rから巻き解かれるシートSを均一な条件で供給することができる。
【0054】
(2)モーター38による軸部34の回転に伴って、ロール体Rを回転させることができるので、ロール体RからシートSを巻き解いたり、ロール体RにシートSを巻き取ったりすることができる。また、動力伝達部39は接続位置に配置されることにより、複数のロール体保持部16のうち、通路19と対応する供給位置Tに配置された一のロール体保持部16の軸部34に選択的に動力を伝達することができる。したがって、複数のロール体保持部16に対して各1つのモーター38及び動力伝達部39を備えればよいので、簡易な構成で装置を実現することができる。
【0055】
(3)アーム部材41が回動することで動力伝達部39の変位を実現することができるとともに、第1歯車54及び第2歯車55を含む歯車列によって動力を伝達することができる。
【0056】
(4)カバー部33の押圧によってアーム部材41を接続位置から非接続位置へと変位させることができる一方、ねじりコイルばね45の付勢力によってアーム部材41を非接続位置から接続位置へと変位させることができる。したがって、回転体17の回転に伴って、動力伝達部39が接続されるロール体保持部16の軸部34を自動的に切り替えることができる。
【0057】
(5)モーター38は正逆両方向に回転駆動可能であるので、モーター38の正転駆動に伴ってロール体RからのシートSの繰り出しを行うことができるとともに、モーター38の逆転駆動に伴ってロール体RへのシートSの巻き取りを行うことができる。また、モーター38の回転駆動によって、シートSの張設状態を調整することができる。
【0058】
(6)シート供給装置13により、どのロール体Rが選択された場合にも、選択されたロール体Rから巻き解かれたシートSを共通の通路19を通じて記録ヘッド21側に供給することができるので、保持した複数のロール体Rから巻き解かれるシートSを均一な条件で供給することができる。したがって、異なるロール体Rから巻き解かれたシートS同士においても、記録手段14によって均一な記録品質を実現することができる。
【0059】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・回転体17に保持するロール体保持部16の数は3つに限らず、2以上の任意のロール体保持部16を保持するようにすることができる。
【0060】
・各ロール体保持部16に個別にモーター38及び動力伝達部39を備えるようにしてもよい。この場合には、固定ギヤ42と歯車36とが噛合するようにすればよいので、歯車列を支持するアーム部材41を備える必要はない。
【0061】
・モーター38及び動力伝達部39を備えない構成としてもよい。
・回転体17の回転を規制する回転規制機構やアーム部材41の回動を規制する係合突起44を備えない構成としてもよい。
【0062】
・アーム部材41に支持される歯車列を構成する歯車の数は、任意に設定することができる。
・アーム部材41を付勢するための付勢部材はねじりコイルばね45に限らず、例えば圧縮ばねや引っ張りばね、板ばねなどを用いてもよい。
【0063】
・アーム部材41は必ずしもカバー部33の押圧によって変位させる必要はなく、アーム部材41を回動させるための動力源を別途備えるようにしてもよい。この場合には、ねじりコイルばね45を備える必要はないし、回転体17を正逆両方向に回転させるようにしてもよい。
【0064】
・供給位置Tは、主軸24の軸心から垂直上方向に延びる仮想線Kとロール体保持部16の移動軌跡が交差する位置に限らない。例えば、図1における供給位置Tを第1位置、交換位置Cを第2位置、残る1位置を第3位置とすると、第2位置又は第3位置を供給位置Tとすることもできる。そして、第3位置を供給位置Tとした場合には、ロール体Rの下方に通路19を配置することで、巻き解いたシートSをより容易に通路19側に導くことができるとともに、第1位置及び第2位置を交換位置Cとすることもできる。
【0065】
・上記実施形態では、記録装置をインクジェット式プリンターに具体化したが、この限りではなく、電子写真方式等他の方式のプリンター、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数機能を備えた複合機等に上記実施形態のシート供給装置を備えるようにしてもよい。さらに、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
R…ロール体、S…シート、11…記録装置としてのプリンター、13…シート供給装置、14…記録手段、16…ロール体保持部、17…回転体、19…通路、33…押圧部としてのカバー部、38…駆動源としてのモーター、34…軸部、39…動力伝達部、40…回動軸、41…アーム部材、45…付勢部材としてのねじりコイルばね、54…第1歯車、55…第2歯車、55a…回転軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のシートを巻き重ねてなるロール体を保持可能なロール体保持部を周方向の複数位置に有する回転体と、
該回転体における前記ロール体保持部の移動軌跡の一部と対応する位置から延びる通路とを備えたことを特徴とするシート供給装置。
【請求項2】
前記ロール体保持部が保持する前記ロール体と一体回転可能な軸部と、該軸部を回転させるための駆動源と、該駆動源の駆動力を前記軸部に伝達するための動力伝達部とをさらに備え、
該動力伝達部は、複数の前記ロール体保持部のうち、前記通路と対応する位置に配置された一のロール体保持部の前記軸部に対して動力伝達可能な接続位置と、前記一のロール体保持部の前記軸部から離間した非接続位置とに変位可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載のシート供給装置。
【請求項3】
前記動力伝達部は、回動軸を中心に回動可能なアーム部材と、前記回動軸を中心に回転可能な第1歯車と、前記アーム部材に支持された回転軸を中心に回転可能であるとともに前記第1歯車と噛合する第2歯車とを有することを特徴とする請求項2に記載のシート供給装置。
【請求項4】
前記アーム部材を前記非接続位置から前記接続位置へ向かう接続方向へ付勢する付勢部材と、
前記回転体の回転に伴って前記アーム部材を前記付勢部材の付勢力に抗して前記接続位置から前記非接続位置へ向かう離間方向へ押圧する押圧部とをさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載のシート供給装置。
【請求項5】
前記駆動源は、正逆両方向に回転駆動可能なモーターであることを特徴とする請求項2〜請求項4のうち何れか一項に記載のシート供給装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載のシート供給装置と、前記通路を通じて供給された前記シートに対して記録を行う記録手段とを備えたことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−247953(P2010−247953A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99101(P2009−99101)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】