説明

シート冊子類送給装置

【課題】搬送対象物の厚さに応じた調整可能な範囲が従来より広いシート冊子類送給装置を提供する。
【解決手段】本発明のシート冊子類送給装置100は、搬送ベルト63とその上方に配置された重送規制部材30とによって、それらの間を通過する書類S,Bを1つに絞った構造になっている。その重送規制部材30を支持する可動ベース29は、固定ベース11によって上下動可能に支持され、可動ベース29には、任意の数の荷重付与部材25が取り付け可能になっている。また、可動ベース29と固定ベース11との間には、荷重付与部材25による押圧荷重に抗した押し戻し弾発力を可動ベース29に付与可能な圧縮コイルバネ26が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下に積み重ねられたシート、冊子、その他、薄形状の複数の搬送対象物を下側の搬送対象物から1つずつ抜き出して送給するシート冊子類送給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図14に示した従来のシート冊子類送給装置は、複数の搬送対象物(例えば、印刷用紙)を上下に重ねて載置した積層載置部1の前方に重送規制機構2を備えると共に、それら積層載置部1及び重送規制機構2の下方に送給ベルト3を備えている。そして、送給ベルト3を回転させて積層載置部1の下面から抜き出した搬送対象物を、重送規制機構2の下端に備えた重送規制部材4と送給ベルト3との間に通して送給する。このとき、搬送対象物が1つずつ送給されるように(即ち、搬送対象物が重なった状態で送給されないように)、重送規制機構2の調整が行われる。そのために重送規制機構2は、固定ベース5を上下方向に貫通したシャフト挿通孔5Aの内部に可動シャフト6を挿入して備え、その可動シャフト6の下端部に重送規制部材4が螺合結合され、可動シャフト6の上端部に操作ノブ7が螺合結合されている。また、可動シャフト6のうちシャフト挿通孔5Aの下方に露出した部分の外側には圧縮コイルバネ8が挿入され、その圧縮コイルバネ8が重送規制部材4とシャフト挿通孔5Aの上端側開口縁との間で圧縮されている。そして、例えば、搬送対象物の厚さが比較的大きな場合には、操作ノブ7にて螺合促進操作を行って重送規制部材4と送給ベルト3との隙間(以下、「ニップ隙間」という)を大きくし、搬送対象物の厚さが比較的小さい場合には、操作ノブ7にて螺合後退操作を行ってニップ隙間を小さくして、厚さの大小にかかわらず搬送対象物が1つずつ送給されるように調整を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表11−504308号公報(第12〜13頁、FIG.4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のシート冊子類送給装置の構成では、搬送対象物が重送規制部材4を所定量、押し上げて重送規制部材4と送給ベルト3との間に入り込む際のその重送規制部材4の押し上げ量の一部を、ニップ隙間の大小によって変更しているに過ぎない。このため、搬送対象物が重送規制部材4を押し上げて圧縮コイルバネ8を弾性変形させたときの、その圧縮コイルバネ8の最大の変形量は、操作ノブ7による調整によっては変わらず、搬送対象物の厚さのみによって変わる。具体的には、比較的厚い搬送対象物では、その搬送対象物が重送規制部材4を押し上げて、重送規制部材4と送給ベルト3との間に入り込むための進入抵抗は一様に大きくなり、比較的薄い搬送対象物では、その搬送対象物が重送規制部材4を押し上げて、重送規制部材4と送給ベルト3との間に入り込むための進入抵抗は一様に小さくなる。よって、搬送対象物が比較的厚い場合には、その搬送対象物の厚さのばらつきの許容範囲が小さくなって、搬送対象物が1つであっても重送規制部材4と送給ベルト3との間を通過できない場合が生じ、搬送対象物が比較的薄い場合には、その搬送対象物の厚さのばらつきの許容範囲が大きくなって、搬送対象物が2つ重なった状態で重送規制部材4と送給ベルト3との間を通過する場合が生じ得た。つまり、従来のシート冊子類送給装置では、搬送対象物の厚さに応じた調整可能な範囲が狭かった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、搬送対象物の厚さに応じた調整可能な範囲が従来より広いシート冊子類送給装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るシート冊子類送給装置は、シート、冊子、その他、薄形状の搬送対象物を複数上下に重ねて載置可能な積層載置部と、積層載置部の下端側から搬送対象物を、順次、摩擦接触して前方に抜き出し、スライド送給する駆動回転体と、積層載置部の前方に配置されて、搬送対象物群から抜き出された搬送対象物を駆動回転体との間で挟む重送規制部材とを備えて、駆動回転体と重送規制部材との間を通過可能な搬送対象物を1つに絞るシート冊子類送給装置において、重送規制部材を支持する可動ベースと、可動ベースを上下動可能に支持する固定ベースと、可動ベースに任意の数又は任意の種類が取り付けられて、その数又は種類に応じた押圧荷重を可動ベースに付与可能な同種類複数個又は異種類複数個の荷重付与部材と、可動ベースと固定ベースとに両端部が当接又は係合し、可動ベースが下方に移動するに従って弾性変形して、押圧荷重と逆向きの押し戻し弾発力を可動ベースに付与する押し戻し弾性体とを備えたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のシート冊子類送給装置において、固定ベースに設けられて可動ベースの一部が上方から当接し、重送規制部材を駆動回転体から上方に離間した下端位置に位置決めする下端ストッパ部を備えたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載のシート冊子類送給装置において、下端ストッパ部によって重送規制部材が位置決めされる位置を調整するための下端位置調整機構を備えたところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載のシート冊子類送給装置において、固定ベースに設けられて可動ベースの一部が下方から当接し、重送規制部材を駆動回転体から上方に離間した上端位置に位置決めする上端ストッパ部を備えたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載のシート冊子類送給装置において、上端ストッパ部によって重送規制部材が位置決めされる位置を調整するための上端位置調整機構を備えたところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載のシート冊子類送給装置において、固定ベースを上下に貫通したシャフト挿通孔と、可動ベースに設けられて上下方向に延び、シャフト挿通孔に挿通されて、上下両端部がシャフト挿通孔の外側に突出した可動シャフトと、可動シャフトの上端部に設けられて、可動シャフトと一体に上下動しかつ固定ベースに上方から対向した上端加圧部材とを備え、押し戻し弾性体は、圧縮コイルバネでありかつ可動シャフトに挿通されると共に、上端加圧部材と固定ベースとの間に配置され、複数の荷重付与部材は、取付用貫通孔を備えて可動シャフトに挿通されると共に、上端加圧部材の上に複数積み上げ可能であるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1の発明]
請求項1のシート冊子類送給装置では、駆動回転体を回転すると、積層載置部の下端側から搬送対象物が順次前方に抜き出されて、駆動回転体と重送規制部材との間に送られる。そして、駆動回転体と重送規制部材との間を搬送対象物が1つずつ通過し、複数重なった状態で搬送対象物が通過することが規制される。
【0013】
ここで、本発明のシート冊子類送給装置には、可動ベースに取り付け可能な複数の荷重付与部材と、荷重付与部材による押圧荷重と逆向きの押し戻し弾発力を可動ベースに付与する押し戻し弾性体とが備えられている。これにより、搬送対象物が重送規制部材を押し上げた場合には、可動ベースの自重と荷重付与部材の押圧荷重から押し戻し弾発力を差し引いた差分の力(以下、差分荷重)が搬送対象物にかかることになり、その差分荷重に応じた力が、重送規制部材と駆動回転体との間に搬送対象物が入り込むための進入抵抗として作用して、搬送対象物が重なった状態での通過を規制する。
【0014】
ここで、可動ベースに取り付ける荷重付与部材の数又は種類を変更して押圧荷重を徐々に増やしていくと、その押圧荷重を受けて押し戻し弾性体の弾性変形量が徐々に増えて、可動ベースの自重及び押圧荷重と押し戻し弾発力とが釣り合う位置(以下、「重送規制部材の弾発力均衡位置」という)が徐々に下方に下がる。これにより、比較的薄い搬送対象物用に重送規制部材の弾発力均衡位置を比較的低い位置に移動した場合も、比較的厚い搬送対象物用に重送規制部材の弾発力均衡位置を比較的高い位置に移動した場合も、搬送対象物を重送規制部材と駆動回転体との間に入り込むませるための進入抵抗が変わらないように調整することが可能になる。
【0015】
また、搬送対象物によって重送規制部材と共に可動ベースが上方に押し上げられるほど、押し戻し弾発力が小さくなって差分荷重が大きくなるので、同じ厚さの搬送対象物に対し、可動ベースに取り付ける荷重付与部材の数又は種類を変更することで、その搬送対象物を重送規制部材と駆動回転体との間に入り込むませるための進入抵抗を適宜変更することもできる。つまり、本発明のシート冊子類送給装置によれば、搬送対象物の厚さに応じてその搬送対象物を1つずつ送給させるための調整可能な範囲が従来より広くなる。
【0016】
[請求項2及び3の発明]
請求項2の構成よれば、押圧荷重と押し戻し弾発力とが釣り合う位置まで重送規制部材が下がる前に、下端ストッパ部により重送規制部材が駆動回転体から上方に離間した下端位置に位置決めされる。これにより、荷重付与部材の数又は種類を変更することで、搬送対象物が重送規制部材を押し上げる際の初期抵抗を変更することができる。また、請求項3の構成によれば、下端ストッパ部によって重送規制部材が位置決めされる位置を下端位置調整機構によって変更することができる。
【0017】
[請求項4及び5の発明]
請求項4の構成によれば、重送規制部材の上方への移動は上端ストッパ部によって制限されているので、重送規制部材と駆動回転体との間に最大の隙間が限定される。これにより、最大の隙間より大きい厚さの搬送対象物の通過を確実に禁止することができる。また、請求項5の構成によれば、上端位置調整機構によって重送規制部材と駆動回転体との間に最大の隙間を変更することができる。
【0018】
[請求項6の発明]
請求項6のシート冊子類送給装置では、押し戻し弾性体が圧縮コイルバネであって可動シャフトに挿通されているので、その圧縮コイルバネが直線状に延ばした状態に容易に保持され、構造が簡素化される。また、複数の荷重付与部材に取付用貫通孔を設けることで、荷重付与部材を可動シャフトに挿通して複数積み上げ可能としたので、荷重付与部材の可動シャフトに対する着脱を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発送書類区分けシステム及びシート冊子類送給装置の側断面図
【図2】シート冊子類送給装置の側断面図
【図3】直動支持機構の側断面図
【図4】重送規制部材の斜視図
【図5】発送書類区分けシステム及びシート冊子類送給装置の概念図
【図6】オンラインインサータの概念図
【図7】冊子の概念図
【図8】圧縮コイルバネの弾発力と弾性変形量との関係を示すグラフ
【図9】本発明の第2実施形態に係る直動支持機構の側断面図
【図10】本発明の第3実施形態に係る直動支持機構の側断面図
【図11】本発明の第4実施形態に係る直動支持機構の側断面図
【図12】本発明の第5実施形態に係る直動支持機構の側断面図
【図13】本発明の第6実施形態に係る直動支持機構の側断面図
【図14】従来のシート冊子類送給装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明のシート冊子類送給装置100の一実施形態を、図1〜図8に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態のシート冊子類送給装置100は、ベースフレーム90に対して種々の部品を組み付けてなる。ベースフレーム90は装置台(図示せず)の上面に固定されたベースプレート91と、ベースプレート91の両側部に備えられて水平方向(図1の紙面と直交する方向)で対向したサイドプレート92,92と、サイドプレート92の後端部を連結したカバープレート93とを備える。カバープレート93はベースフレーム90の前方(図1の右側)に向かって下るように水平面に対して傾斜して取り付けられている。なお、図1には一方のサイドプレート92のみが示されている。
【0021】
ベースフレーム90の上面には、本発明に係る積層載置部70が起立している。積層載置部70は、ベースフレーム90の上面両側部から直立して互いに対向した1対の側面壁70S,70S(図1には一方の側面壁70Sのみが示されている)と、それらと側面壁70S,70Sの前端縁同士の間を連絡した前面壁71とを有している。また、前面壁71は、ベースフレーム90の上面に対して直立し、その前面壁71の下端部は前方に向かって斜め下方に屈曲しており、さらに、その前面壁71の屈曲部分の下端縁とベースフレーム90の上面との間には、書類排出口72(図2参照)が形成されている。そして、積層載置部70の内部には、紙製のシートS又は複数枚のシートSを重ねてブッキングした冊子B(以下、これらを纏めて「書類S,B」という)が、本発明に係る「搬送対象物」として複数上下に重ねた状態にして載置され、書類排出口72から書類S,Bが前方に引き出される。
【0022】
カバープレート93の上面のうち積層載置部70の後方には、端ずらし部材73が備えられている。端ずらし部材73は、ベースフレーム90の幅方向(サイドプレート92,92の対向方向)に並んだ複数の三角板74と、それら三角板74をカバープレート93に対して固定するための取付ブラケット75と一体に備えてなる。そして、三角板74は前下がりの斜面が積層載置部70に載置された書類S,B群の下端部に後方から押し付けられている。これにより、積層載置部70の下端部における書類S,B群が、下側に向かって徐々に前側にずれるようにばらされている。なお、端ずらし部材73は、取付ブラケット75を貫通したボルト(図示せず)をカバープレート93の螺旋孔93Aに螺合することで固定されており、カバープレート93には、前後方向に複数の螺旋孔93Aが並んで設けられている。これにより、書類S,Bの寸法に応じて、端ずらし部材73の位置を前後方向で選択的に調節することが可能となっている。
【0023】
図2に示すように、ベースフレーム90の上面のうち、積層載置部70の下方位置からその前方位置に亘る範囲は、搬送ベルト63(本発明の「駆動回転体」に相当する)によって構成されている。具体的には、ベースフレーム90におけるサイドプレート92,92の間には、積層載置部70の真下位置に、後側プーリ支持シャフト64が差し渡されて両端部を回転可能に支持され、その前方には前側プーリ支持シャフト65が差し渡されて両端部を回転可能に支持され、さらに、その前方には補助プーリ支持シャフト50が差し渡されて両端部を回転可能に支持されている。後側プーリ支持シャフト64には複数の後側プーリ61が一体回転可能に支持されると共に、それら後側プーリ61に対応して前側プーリ支持シャフト65には複数の前側プーリ62が一体回転可能に支持されている。そして、対応した後側プーリ61と前側プーリ62との間には、それぞれエラストマー製の搬送ベルト63が架け渡されている。また、前側プーリ支持シャフト65には、図示しない複数の後側補助プーリも一体回転可能に支持されている。それら複数の後側補助プーリは、前側プーリ62と交互に並べて配置され、それら後側補助プーリに対応して補助プーリ支持シャフト50に複数の前側補助プーリ50Pが一体回転可能に支持されている。そして、対応した後側補助プーリと前側補助プーリ50Pとの間に、それぞれエラストマー製の案内ベルト51が架け渡されている。
【0024】
搬送ベルト63及び案内ベルト51は、カバープレート93の下方に配置された第1のサーボモータ66を駆動源としている。即ち、第1のサーボモータ66の回転出力部(図示せず)には、出力プーリ66Pが固定されており、後側プーリ支持シャフト64のうち、一方のサイドプレート92を貫通した一端部には駆動プーリ(図示せず)が固定されている。そして、これら出力プーリ66Pと各駆動プーリとの間にタイミングベルト67が架け渡されている。なお、タイミングベルト67には、テンションローラ68によって適正なテンションが付与されている。
【0025】
搬送ベルト63及び案内ベルト51は、上側を向いた搬送面が、カバープレート93の上面の傾斜とほぼ同じ角度で水平面に対して傾斜している。そして、搬送ベルト63は、積層載置部70に載置された書類S,Bのうち最下部の書類S,Bの下面に摩擦接触し、積層載置部70の書類排出口72から前側に抜き出してスライド送給し、その抜き出された前方にスライド送給された書類S,Bの下面に案内ベルト51が摩擦接触して更に前方にスライド送給する。
【0026】
積層載置部70の書類排出口72から前方に離れた位置には、重送規制部材30が備えられている。その重送規制部材30は、搬送ベルト63の前端部上方に配置され、図3に示した直動支持機構10によって上下動可能に支持されている。そして、搬送ベルト63の回転によって積層載置部70から抜き出された書類S,Bが、重送規制部材30と搬送ベルト63との間を通過する。
【0027】
重送規制部材30は、後側及び前側のプーリ支持シャフト64,65(図2参照)と平行な中心軸を有する円柱部31を備えている。図4に示すように、円柱部31の外周面には複数の環状溝32が形成され、それら各環状溝32に、摺接リング33が装着されている。なお、円柱部31は、例えば、約0.15〜0.35の摩擦係数を有する樹脂又は金属により構成され、摺接リング33は、例えば、約0.5〜0.7の摩擦係数を有するエラストマーで構成されていることが好ましい。
【0028】
重送規制部材30のうち軸方向の中間部で搬送ベルト63の搬送面との対向部分には、図3に示すように円柱部31をその外周面から中心軸の近傍まで、所謂、蒲鉾状に切除した下面陥没部34が形成されている。さらに、円柱部31の中心軸を挟んで下面陥没部34とは反対側にも、円柱部31の外周面を部分的に平坦に切除して連結平坦部35が形成されている。なお、摺接リング33は、円柱部31の外周面のうち下面陥没部34でのみ円柱部31の外周面から露出外側に僅かに突出し、それ以外の部分では環状溝32に没して円柱部31の外周面から突出しないようになっている。
【0029】
重送規制部材30の両端面からは、側方に円柱ボス36,36が突出している。そして、後述する部品取付部80に備えた1対の脱落防止フック81,81が、円柱ボス36,36に下方から対向していて、これにより、メンテナンス時等に重送規制部材30がベースフレーム90から落下することが防止されている。
【0030】
図3に示すように、直動支持機構10は、重送規制部材30を支持した可動ベース29を、固定ベース11が上下動可能に支持した構造になっている。固定ベース11は、円筒状の固定ベース本体11Hと、その上端部に接合したヘッドキャップ14と、その下端部に螺合したボトムキャップ13とからなる。図2に示すように、固定ベース本体11Hは、部品取付部80を介して積層載置部70の前面に固定されて、カバープレート93の上面と直交する方向に延びている。
【0031】
図3に示すように、ヘッドキャップ14は、固定ベース本体11Hとほぼ同径の円筒形をなしており、ヘッドキャップ14の天井壁の中央には、円筒壁の内径よりも小径な上端貫通孔14Aが形成されている。ボトムキャップ13の円筒壁内面には雌螺旋部が形成されており、底壁の中央には円筒壁の内径よりも小径な下端貫通孔13Aが形成されている。そして、ボトムキャップ13は、固定ベース本体11Hの下端部外周面に形成された雄螺旋部11Bに螺合している。また、本実施形態では、ボトムキャップ13の内面における下端貫通孔13Aの開口縁が、本発明に係る下端ストッパ部12になっている。さらに、上記した上端貫通孔14Aと上端貫通孔14Aと固定ベース本体11Hの内部空間が連通して、本発明に係るシャフト挿通孔11Aが形成されている。
【0032】
可動ベース29は、上下方向に延びた可動シャフト20の下端部に連結ブロック40を備えた構造になっている。可動シャフト20は、大径軸部21とその大径軸部21より下方に延びた下側小径軸部22と、上方に延びた上側雄螺子部23とからなる。また、大径軸部21と下側小径軸部22との段差部分は、下端ストッパ当接部21Aになっていて、前記した固定ベース11のボトムキャップ13における下端ストッパ部12に当接することで、可動シャフト20がその可動範囲の下端位置に位置決めされるようになっている。また、ボトムキャップ13の螺合操作によって、可動シャフト20の可動範囲の上端位置を変更することができる。即ち、本実施形態では、ボトムキャップ13と固定ベース本体11Hとの螺合機構が、本発明に係る「下端位置調整機構」になっている。
【0033】
可動シャフト20の大径軸部21の外周面と、固定ベース本体11Hの内周面との間には、図示しないボールスプライン機構が備えられている。これにより、可動シャフト20上端部が固定ベース11に対して回転が禁止された状態で上下動可能に結合されている。また、可動シャフト20の下側小径軸部22は、ボトムキャップ13の下端貫通孔13Aを通ってボトムキャップ13の下方に突出していて、その下側小径軸部22の下端部に連結ブロック40が固定されている。
【0034】
連結ブロック40は、例えば、前後方向の延びた略角柱状をなし、その先端部上面にはザグリ孔40Zが形成されると共に、ザグリ孔40Zの底面中央にボルト挿通孔40Xが貫通形成されている。そして、ザグリ孔40Zに可動シャフト20(詳細には、下側小径軸部22)の下端部が嵌合され、連結ブロック40の下方からボルト挿通孔40Xに通した固定ボルト42を下側小径軸部22の軸心部に備えた図示しない雌螺子孔に螺合して、連結ブロック40が可動シャフト20の下端部に固定されている。また、連結ブロック40のうち可動シャフト20との固定部より後側部分は、重送規制部材30の円柱部31における連結平坦部35に接合され、下面陥没部34側から円柱部31を上下に貫通した固定ボルト44にて円柱部31に固定されている。さらに、連結ブロック40のうち可動シャフト20との固定部より前側部分には、上下方向に雌螺子孔40Yが貫通係止されていて、そこに螺合した上端位置調整ボルト41の先端が、連結ブロック40の上面から突出してボトムキャップ13の下面に突き合わされている。
【0035】
そして、上端位置調整ボルト41の先端面とボトムキャップ13の下面との当接によって、可動シャフト20がその可動範囲の上端位置に位置決めされるようになっている。即ち、本実施形態では、ボトムキャップ13の下面は、本発明に係る「上端ストッパ部」になっている。また、ボトムキャップ13の螺合操作によって、上端位置調整ボルト41の先端面とボトムキャップ13の下面との間隔を変更することで、可動シャフト20の可動範囲の上端位置を変更することができる。即ち、本実施形態では、ボトムキャップ13と固定ベース本体11Hとの間の螺合機構が、本発明に係る「上端位置調整機構」になっている。なお、可動シャフト20の可動範囲の上端位置を変更するためにボトムキャップ13の螺合操作した場合、それに伴い可動シャフト20の可動範囲の下端位置も変更されるが、ボトムキャップ13が上下動した分だけ上端位置調整ボルト41を上下動して、可動シャフト20の可動範囲の下端位置を一定に保つことができる。
【0036】
可動シャフト20の上側雄螺子部23は、ヘッドキャップ14の上端貫通孔14Aを通って上方に突出している。また、上側雄螺子部23におけるヘッドキャップ14からの突出部分の中間には、本発明に係る上端加圧部材24が螺合している。上端加圧部材24は、例えば、円板状をなしてその中心に雌螺子孔24Aを備え、その雌螺子孔24Aが上側雄螺子部23と螺合している。また、上端加圧部材24の外周面には、例えば、滑り止め用のローレット加工が施されている。
【0037】
上側雄螺子部23のうち上端加圧部材24とヘッドキャップ14との間に挟まれた部分には、圧縮コイルバネ26(本発明に係る「押し戻し弾性体」に相当する)が挿通されている。そして、上端加圧部材24を含む可動ベース29の自重と次述する荷重付与部材25の自重を圧縮コイルバネ26が受けて圧縮変形されている。
【0038】
上側雄螺子部23のうち上端加圧部材24より上側部分には、本発明に係る荷重付与部材25が挿通されている。荷重付与部材25は、例えば、上端加圧部材24より径が小さい円板状をなしてその中心に貫通孔25Aを備え、その貫通孔25Aを上側雄螺子部23に挿通させて上端加圧部材24の上面に複数積み上げ可能となっている。また、複数の荷重付与部材25は、全て同じ形状、同じ重さになっている。
【0039】
なお、図2に示すように、重送規制部材30を挟んで積層載置部70と反対側には、クランプローラ39,39が設けられている。クランプローラ39,39は、重送規制部材30の円柱ボス36,36に連結された1対のレバーアーム37,37の先端に回動可能に軸支され、案内ベルト51の搬送面に自重で載って、案内ベルト51に対して連動回転する。
【0040】
さて、上記構成により、荷重付与部材25は、重送規制部材30を搬送ベルト63の搬送面に近づける方向(下方)を向いた押圧荷重を可動シャフト20に付与している。一方、圧縮コイルバネ26は、重送規制部材30を搬送ベルト63の搬送面から離す方向(上方)を向いた押し戻し弾発力を可動シャフト20に付与している。また、書類S,Bが重送規制部材30と搬送ベルト63との間に狭持されていない未挟持状態では、下端ストッパ当接部21Aが下端ストッパ部12に当接して、可動シャフト20が可動範囲の下端位置に位置決めされた状態になる。これにより、押し戻し弾発力が常に押圧荷重以下となるように構成されている。
【0041】
可動シャフト20が可動範囲の下端位置に位置決めされた状態で、重送規制部材30(摺接リング33)と搬送ベルト63の搬送面との間には、所定のニップ隙間GP2が形成されている。このニップ隙間GP2は、例えば、書類S,Bのうち、最も薄い書類(シートS)の1枚分の厚さよりも小さくなっている。また、ニップ隙間GP2を設けておくことで、摺接リング33と搬送ベルト63との摩擦による摩耗を防止することができる。なお、未挟持状態でニップ隙間GP2を設けない場合には、重送規制部材30を搬送ベルト63と連動して回転する回転体にしたり、空送りを検出したときに搬送ベルト63が直ちに自動停止する構成にしてもよい。
【0042】
また、可動シャフト20が可動範囲の下端位置に位置決めされた状態で、ボトムキャップ13の下面と上端位置調整ボルト41の上端面との間には、上昇許容隙間GP1が形成されるようになっている。そして、その上昇許容隙間GP1の範囲で重送規制部材30が上方に移動可能となっている。
【0043】
例えば、積層載置部70に載置された複数の書類S,Bが、全てシートSである場合には、上端位置調整ボルト41を螺合操作して、連結ブロック40がボトムキャップ13の下面と当接した当接位置における、重送規制部材30と搬送ベルト63との間のニップ隙間GP2が、シートSの1枚分の厚さ以上でかつ2枚分の厚さ未満になるように、上昇許容隙間GP1を設定しておく。これにより、シートSが2枚以上重なった状態で重送規制部材30と搬送ベルト63との間を通過することを確実に禁止することができる。
【0044】
同様に、積層載置部70に載置された複数の書類S,Bが、全て冊子Bである場合には、上端位置調整ボルト41を螺合操作して、前記当接位置における前記ニップ隙間GP2が、冊子Bの1冊分の厚さ以上でかつ2冊分の厚さ未満になるように、上昇許容隙間GP1を設定しておく。これにより、冊子Bが2冊以上重なった状態で重送規制部材30と搬送ベルト63との間を通過することを確実に禁止することができる。
【0045】
さらに、積層載置部70に載置された複数の書類S,BにシートSと冊子Bとが混在している場合には、上端位置調整ボルト41を螺合操作して、前記当接位置におけるニップ隙間GP2が、冊子Bの1冊分以上でかつ1冊の冊子Bと1枚のシートSとを重ねた厚さ未満となるようにしておく。これにより、2冊以上の冊子B、又は、1冊の冊子Bと1枚のシートSが重なった状態で重送規制部材30と搬送ベルト63との間を通過することを確実に禁止することができる。
【0046】
さて、本実施形態のシート冊子類送給装置100では、上端加圧部材24上に積み上げる荷重付与部材25の個数を変更することで、書類S,BにシートSが重送規制部材30の下方を通過する際の抗力を変更することができる。具体的には、例えば、荷重付与部材25を上端加圧部材24上に積み上げていな状態では、可動シャフト20の下端ストッパ当接部21Aが下端ストッパ部12の上方に離間する。
【0047】
ここで、可動ベース29の自重と荷重付与部材25の押圧荷重とから押し戻し弾発力を差し引いた差分の力を、以下「差分荷重」といい、差分荷重が0となるときの重送規制部材30の位置を、以下「重送規制部材30の弾発力均衡位置」というとすると、図8(A)及び図8(B)には、横軸を重送規制部材30の位置P、縦軸を重送規制部材30の各位置Pに対する差分荷重fとして、上端加圧部材24に積み上げる荷重付与部材25の数を0から1つずつ増やしていったときのグラフg0,g1,g2,g3・・・として示されている。また、図8(A)及び図8(B)において、「P100」の位置は、重送規制部材30が搬送ベルト63に接触する位置、即ち、ニップ隙間GP2が「0」になるときの重送規制部材30の位置を示している。また、図8(A)には、例えば、重送規制部材30が搬送ベルト63と当接する前に可動シャフト20の下端ストッパ当接部21Aがボトムキャップ13の下端ストッパ部12に当接しない設定でのグラフが示されているのに対し、図8(B)には、例えば、荷重付与部材25を2つ上端加圧部材24上に積み上げた時点で、可動シャフト20の下端ストッパ当接部21Aがボトムキャップ13の下端ストッパ部12に当接する設定でのグラフが示されている。その可動シャフト20の下端ストッパ当接部21Aがボトムキャップ13の下端ストッパ部12に当接したときの重送規制部材30の位置は、図8(B)における下端位置pkとして示されている。
【0048】
図8(A)に示すように、上端加圧部材24に積み上げる荷重付与部材25を0から1つずつ増やしていった場合には、重送規制部材30の弾発力均衡位置が同図のP0,P1,P2,P3・・・に示すように、徐々に下方に移動する。即ち、ニップ隙間GP2(図3参照)が徐々に狭くなる。
【0049】
また、書類S,Bが重送規制部材30を押し上げた場合には、上記した差分荷重に応じた力が、重送規制部材30と搬送ベルト63との間に書類S,Bが入り込むための進入抵抗として作用し、書類S,Bが重なった状態での通過を規制する。このとき、書類S,Bによる重送規制部材30の押し上げ量に対する差分荷重の増加率は、図8(A)のグラフg1,g2,g3・・・の傾きが同じであることからも明らかなように、荷重付与部材25の数によって相違することはない。これにより、重送規制部材30を、書類S,Bが何れかの弾発力均衡位置P1,P2,P3・・・から持ち上げた場合も、同じ進入抵抗が書類S,Bに付与される。つまり、比較的薄い書類S,B用に重送規制部材30の弾発力均衡位置を比較的低い位置に移動した場合も、比較的厚い書類S,B用に重送規制部材30の弾発力均衡位置を比較的高い位置に移動した場合も、書類S,Bを重送規制部材30と搬送ベルト63との間に入り込むませるための進入抵抗が変わらないように調整することが可能になる。
【0050】
また、図8(B)に示すように、例えば、荷重付与部材25を2つ上端加圧部材24上に積み上げた時点で、可動シャフト20の下端ストッパ当接部21Aがボトムキャップ13の下端ストッパ部12に当接する設定とした場合には、以下のようである。この場合、荷重付与部材25が0である状態から荷重付与部材25を1つ上端加圧部材24上への積みると、圧縮コイルバネ26の弾性変形量が増加して、重送規制部材30が弾発力均衡位置P1まで下がり、可動シャフト20の下端ストッパ当接部21Aが下端ストッパ部12に接近する。また、上端加圧部材24上に積み上げる荷重付与部材25を2つに増やすと、可動シャフト20はさらに下がり、可動シャフト20の下端ストッパ当接部21Aが下端ストッパ部12に当接する。それ以降、上端加圧部材24上に積み上げる荷重付与部材25を順次増やしても、圧縮コイルバネ26の弾性変形量及び可動シャフト20の下方への移動はないが、可動シャフト20が荷重付与部材25群によって受ける押圧荷重は増加していく。このように、ニップ隙間GP2を一定に保持して、荷重付与部材25の数を変更することで、書類S,Bが重送規制部材30を押し上げる際の初期抵抗を変更することができる。これらにより、本実施形態のシート冊子類送給装置100によれば、書類S,Bの厚さに応じてその書類S,Bを1つずつ送給させるための調整可能な範囲が従来より広くなる。
【0051】
次に、書類S,Bを1つずつ送給可能な状態に設定にされたシート冊子類送給装置100の動作を説明する。即ち、このシート冊子類送給装置100では、積層載置部70に書類S,Bを載置した状態で搬送ベルト63を回転駆動させると、その搬送ベルト63の搬送面と積層載置部70の最下部の書類S,Bの下面とが摩擦接触して、最下部の書類S,Bが書類排出口72を介して積層載置部70から前方に引き抜かれる。積層載置部70から引き抜かれた書類は、重送規制部材30と搬送ベルト63との間のニップ隙間GP2に入り込む。
【0052】
このとき、書類S,B同士の摩擦力や静電気等で、最下部の書類S,Bの直上の書類S,Bが引き摺られ、それらが重なったまま、重送規制部材30と搬送ベルト63との間(ニップ隙間GP2)に向かって前進することがある。しかしながら、書類S,B同士の摩擦力や静電気等は、搬送ベルト63と書類S,Bとの間の摩擦力に比べて非常に小さいので、最下部の書類S,Bは、重送規制部材30を持ち上げつつ搬送ベルト63との間を通過するが、最下部の直上の書類S,Bは、重送規制部材30の外周面と当接すると、それ以上の前進が規制される。つまり、書類S,Bが2つ以上重なった状態で送給されること、即ち、重送されることを禁止することができる。
【0053】
次に、上述したシート冊子類送給装置100を備えた発送書類区分けシステム200について説明する。発送書類区分けシステム200は、シート冊子類送給装置100から1つずつスライド送給された書類S,Bを、書類S,Bに印刷された文字・模様等の識別子に基づいて一組の発送書類セットに纏め、その発送書類セット毎区別して、公知なオンラインインサータ210(図6参照)に順次に送給する。
【0054】
オンラインインサータ210は、ベルトコンベア211によって発送書類セットを一組ずつ区別して搬送し、その搬送経路の途中で適宜必要な添付書類を発送書類セットに追加する。さらにオンラインインサータ210を通過した発送書類セットは、封入装置220において一組ずつ個別に封筒に挿入され封緘される。
【0055】
発送書類区分けシステム200は、シート冊子類送給装置100とオンラインインサータ210のベルトコンベア211との間に、中継搬送装置120を備えている。図5は、図1に示した発送書類区分けシステム200を簡略化して示したものであり、同図に示すように、中継搬送装置120は、シート冊子類送給装置100によるスライド送給方向の延長線上に配置されている。中継搬送装置120は、シート冊子類送給装置100に近い側から、第1の中継搬送部121、第2の中継搬送部122、第3の中継搬送部123の順に並べられており、それら隣り合った中継搬送部の間で書類S,Bを1つずつ受け渡して搬送する。
【0056】
第1及び第3の中継搬送部121,123は、「ベルト挟持搬送機構」となっている。即ち、1対のプーリ120P,120P間に架け渡されて回転走行する挟持ベルト120B,120Bを上下対にして備え、それら挟持ベルト120B,120Bの間で書類S,Bを挟んで搬送する。これに対し、第2の中継搬送部122は、「ローラ挟持搬送機構」となっている。即ち、上下方向で対向配置された1対の挟持ローラ120R,120Rの間で書類S,Bを挟んで第1の中継搬送部121から引き込むと共に、第3の中継搬送部123に向けて送り出す。第1と第2の中継搬送部121,122は、同一の第2のサーボモータ124(図1参照)を駆動源としており、第1のサーボモータ66を駆動源とするシート冊子類送給装置100よりも速い速度で書類S,Bを送給する。また、第3の中継搬送部123は、第1及び第2のサーボモータ66,124とは異なる第3のサーボモータ125(図1参照)を駆動源としており、第1及び第2の中継搬送部121,122よりもさらに速い速度で書類S,Bを送給する。
【0057】
図5に示すように、第1の中継搬送部121と第2の中継搬送部122との間には、書類S,Bに印刷された識別子としてのバーコードBC及びファーストページマークFMを読み取るためのバーコードリーダ130及びマークリーダ131が備えられている。
【0058】
次に、積層載置部70に1冊の冊子Bと任意数のシートSとを一組にした発送書類セットが複数セット重ねて載置され、図7に示すように冊子Bだけに、バーコードBC及びファーストページマークFMが印刷されている場合を例にして、発送書類区分けシステム200の動作を説明する。なお、冊子Bの所定位置には、バーコードBCに変換された情報のうち、複数の発送書類セット毎に割り振られた通し番号を、英数字と記号の組み合わせで表した可読文字NBが設けられている。
【0059】
マークリーダ131は、書類S,Bが第1の中継搬送部121から第2の中継搬送部122に受け渡される間に、ファーストページマークFMの有無を判別する。ファーストページマークFMを検出しない場合は、その書類S,Bが発送書類セットの先頭書類、即ち、冊子Bではない(シートSである)と判断して、第2及び第3の中継搬送部122,123の順にシートSを送り、第3の中継搬送部123の前方に待機したコレクタ部126に送給する。そして、ファーストページマークFMを検出するまで、シートSを連続的にコレクタ部126に送給し続ける。
【0060】
ファーストページマークFMを検出した場合には、その書類S,Bが次の発送書類セットの先頭書類、即ち、冊子Bであると判断して、第2の中継搬送部122の挟持ローラ120R,120R間に、ファーストページマークFMが印刷された冊子Bの前端部を挟んだ状態で、シート冊子類送給装置100、第1及び第2の中継搬送部121,122を停止する。その停止状態でバーコードリーダ130が冊子Bに印刷されたバーコードBCを読み取る。バーコードBCから読み取られた情報は制御用コンピュータ140に出力され、制御用コンピュータ140は通し番号に基づいて連番検査を行う。即ち、発送書類セットが、1組ずつ順番にコレクタ部126に送られているか否かを検査する。
【0061】
また、シート冊子類送給装置100、第1及び第2の中継搬送部121,122が停止している間に、第3の中継搬送部123が第2の中継搬送部122で挟持された冊子Bの直前のシートS(前の発送書類セットにおける最後のシートS)をコレクタ部126に搬送する。
【0062】
これにより、コレクタ部126には、一組分の発送書類セットが集約される。即ち、冊子Bが一番下で、その上に任意数のシートSが重なった状態で纏められる。この一組分の発送書類セットは、厚さ計測を行った後で、コレクタ部126からオンラインインサータ210のベルトコンベア211に移送される。
【0063】
ベルトコンベア211によって搬送される過程で、発送書類セットには、インサータ装置212,212によって適宜、必要な添付書類が追加される。各インサータ装置212は、互いに異なる添付書類を追加するようになっており、各発送書類セットに対し、どの添付書類を追加するかは、バーコードBCから読み取った情報に基づき制御用コンピュータ140が各インサータ装置212,212に指示する。
【0064】
一組分の発送書類セットがオンラインインサータ210に移送されると、シート冊子類送給装置100及び中継搬送装置120が再始動して、コレクタ部126には次の一組分の発送書類セットが集約される。
【0065】
オンラインインサータ210のベルトコンベア211の終端部には、封入装置220が備えられており、一組分の発送書類セットと添付書類とを纏めて封筒に挿入し、封緘する。その後、カメラ230によって冊子Bに付された可読文字NBの読み取りを行う。カメラ230で読み取った可読文字NBに基づいて制御用コンピュータ140は連番検査を行うと共に、現在時刻及びその他情報と共に記録する(所謂、ログ管理を行う)。
【0066】
また、可読文字NBに基づいて封筒に封入されているべき発送書類セット及び添付書類の数及び種類を判別し、これから得られる理論上の厚さと、実際に計測した厚さとを対比する。そして、これらが所定の誤差範囲内で一致したか否かにより、各封筒における誤封入の有無を判定する。
【0067】
[第2実施形態]
本実施形態及び以下の第3〜第6の実施形態は、前記第1実施形態における直動支持機構10の構成のみを変更したものである。図9に示すように、本実施形態の直動支持機構10Bの固定ベース11Sには、前方(部品取付部80(図2参照)から離れる側)に向かって突出した上端弾性体受け部153が備えられ、その上端弾性体受け部153には、上下方向に貫通孔153Aが貫通形成されている。また、固定ベース11Sの上面にはボルト支持プレート156が固定されており、そのボルト支持プレート156には、貫通孔153Aの同軸上に上端弾性体受け部153より小径の貫通孔156Aが形成されている。そのボルト支持プレート156に第1調整螺旋158の回転可能かつ上下動不能に支持されている。具体的には、第1調整螺旋158は上端部に摘み操作部158Sを備えると共に、上端寄り位置に係合溝を備えている。また、摘み操作部158Sをボルト支持プレート156の上面における貫通孔156Aの縁部に当接させた状態で係合溝にEリング158Rを係合してボルト支持プレート156の下面における貫通孔156Aの縁部に宛がうことで、第1調整螺旋158がボルト支持プレート156に回転可能かつ上下動不能に支持されている。
【0068】
貫通孔153Aには、固定シャフト154の上端部が挿入され、その固定シャフト154の上端部中心に備えた雌螺旋孔157に第1調整螺旋158が螺合している。また、固定シャフト154は貫通孔153Aに直動可能かつ回転不能に挿入されている。そして、第1調整螺旋158の螺合操作によって固定シャフト154が固定ベース11Sに対して上下動する。
【0069】
固定シャフト154は、上端弾性体受け部153から下方に延び、その固定シャフト154の中間部が、可動ベース29Sに備えた挿通孔154Hに挿通されている。また、固定シャフト154のうち可動ベース29Sより下方には、ストッパスリーブ159Tが挿通され、さらに、そのストッパスリーブ159Tの外側に本発明の「押し戻し弾性体」に相当する圧縮コイルバネ26Sが挿通されている。そして、それら圧縮コイルバネ26Sとストッパスリーブ159Tの下端部が、固定シャフト154の下端部に第2調整螺旋159にて固定された下端ワッシャ155に当接している。その第2調整螺旋159は、固定シャフト154の下端軸深部に形成された図示しない螺子孔に螺合していて、第2調整螺旋159を螺合操作することで、固定シャフト154の下端面に対する下端ワッシャ155及びストッパスリーブ159Tの上下方向の位置を変更することができる。また、圧縮コイルバネ26Sは自然長がストッパスリーブ159Tより長くなっていて、可動ベース29Sから受ける荷重によって所定量だけ弾性変形することで、可動ベース29Sがストッパスリーブ159Tの上端部に当接するようになっている。
【0070】
可動ベース29Sは、固定シャフト154が貫通した挿通孔154Hより後方側に、下方に向かって突出した連結部161Bを備え、その連結部161Bの下端部に第1実施形態で説明した重送規制部材30が固定されている。また、可動ベース29Sの上面からは、支持シャフト25Sが突出していて、そこの前記第1実施形態で説明した荷重付与部材25が複数取り付け可能になっている。以上が本実施形態の直動支持機構10Bの構成に関する説明であって、この直動支持機構10Bによっても第1実施形態の直動支持機構10と同様の効果を奏する。
【0071】
[第3実施形態]
図10に示すように、本実施形態の直動支持機構10Cの固定ベース165には、前方に向かって突出した前端突部165Aが備えられ、その前端突部165Aには、上下方向にシャフト挿通孔165Bが上下方向に貫通形成されている。そして、シャフト挿通孔165Bに挿通した可動シャフト169の下端部に、連結部161Bが備えられ、その下端面に重送規制部材30に固定されている。
【0072】
可動シャフト169の上下方向における中間部より上側部分は雄螺子部169Nになっている。そして、その雄螺子部169Nの中間位置には、前記第1実施形態で説明した上端加圧部材24が螺合し、その上端加圧部材24の上側に荷重付与部材25が積み上げ可能になっている。可動シャフト169の下端寄り位置には、可動当接部材171Vが溶接固定され、その可動当接部材171Vのフランジ部171Fと固定ベース165との間に本発明の「押し戻し弾性体」としての複数の引張コイルバネ174が引張状態に取り付けられている。なお、本実施形態の直動支持機構10Cでは、上端加圧部材24が固定ベース165の上面に当接することで可動ベース29Eが可動範囲の下端位置に位置決めされるようになっている。本実施形態の直動支持機構10Cの構成によっても、第1実施形態の直動支持機構10と同様の効果を奏する。
【0073】
[第4実施形態]
図11に示すように、本実施形態の直動支持機構10Dに備えた可動ベース29Fは、固定ベース11Pに回動可能に支持され、その回動支点から略水平方向に延びた回動レバー部178Aと、その回動レバー部178Aの先端部から下方の延びた先端下方突部161Bとからなる。そして、先端下方突部161Bの下端部に重送規制部材30が固定されている。固定ベース11Pのうち可動ベース29Fを回動可能に支持した部分より下側部分からは下部突壁180が水平に突出していて、可動ベース29Fの回動レバー部178Aに対して下方から対向している。そして、下部突壁180と回動レバー部178Aとの間に圧縮コイルバネ26Tが取り付けられている。また、回動レバー部178Aには、雌螺子孔160Nが貫通形成され、そこに螺合した160の下端部を下部突壁180に当接させることで重送規制部材30が下端位置に位置決めされるようになっている。また、回動レバー部178Aの上面からは、支持シャフト25Sが起立していて、そこに任意に数の荷重付与部材25が取り付け可能になっている。本実施形態の直動支持機構10Dの構成によっても、第1実施形態の直動支持機構10と同様の効果を奏する。
【0074】
[第5実施形態]
図12に示すように、本実施形態の直動支持機構10Eは、第4実施形態の圧縮コイルバネ26Tの代わりに、引張コイルバネ26Vを備えた構造になっている。具体的には、固定ベース11Pから水平に突出して可動ベース29Fの回動レバー部178Aに上方から対向する上部突壁184が備えられている。上側支持壁184には、雌螺旋孔184Nが上下方向に貫通していて、そこに調整ナット181が螺合されている。調整ナット181は、中心部に貫通孔181Hを有し、そこに芯部材182が回転可能に収容されている。そして、引張コイルバネ26Vは、芯部材182及び回動レバー部178Aに両端部を係止された状態で引張状態に取り付けられている。本実施形態の直動支持機構10Eの構成によっても、第1実施形態の直動支持機構10と同様の効果を奏する。
【0075】
[第6実施形態]
図13に示すように、本実施形態の直動支持機構10Fは、第4実施形態の圧縮コイルバネ26Tの代わりに、トーションコイルバネ26Hを備えた構造になっている。具体的には、トーションコイルバネ26Hは、中間部が巻回されてコイル部26Wになっている。また、可動ベース29Fを固定ベース11Pに回動可能に支持する回動支柱187Aに、トーションコイルバネ26Hのコイル部26Wが挿通された状態で、トーションコイルバネ26Hの一端部が固定ベース11Pに備えた係止ピン192に係止する一方、トーションコイルバネ26Hの他端部が可動ベース29Fの回動レバー部178Aに備えた係止ピン188に係止している。そして、このトーションコイルバネ26Hによって可動ベース29Fの回動レバー部178Aが上方に付勢されている。本実施形態の直動支持機構10Fの構成によっても、第1実施形態の直動支持機構10と同様の効果を奏する。
【0076】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0077】
(1)前記第1〜第6の実施形態では、本発明に係る荷重付与部材25が同じ形状・同じ重さになっていたが、複数の荷重付与部材を異なる形状、異なる重さにしてもよい。
【0078】
(2)前記第1〜第6の実施形態では、本発明に係る「駆動回転体」として搬送ベルト63を備えていたが、「駆動回転体」は摩擦ローラであってもよい。
【0079】
(3)本発明に係る「押し戻し弾性体」は、上記した第1〜第6の実施形態の圧縮コイルバネ26、トーションコイルバネ26H等以外の、板バネ、皿バネ、ゴム等であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
10,10B〜10F 直動支持機構
11,11P,11S 固定ベース
12 下端ストッパ部
13 ボトムキャップ
14 ヘッドキャップ
20 可動シャフト
21A 下端ストッパ当接部
22 下側小径軸部
23 上側雄螺子部
24 上端加圧部材
24A 雌螺子孔
25 荷重付与部材
25A 貫通孔
25S 支持シャフト
26,26S,26T 圧縮コイルバネ(押し戻し弾性体)
26H トーションコイルバネ(押し戻し弾性体)
26V 引張コイルバネ(押し戻し弾性体)
29,29E,29F,29S 可動ベース
30 重送規制部材
41 上端位置調整ボルト
63 搬送ベルト(駆動回転体)
70 積層載置部
100 シート冊子類送給装置
S,B 書類(搬送対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート、冊子、その他、薄形状の搬送対象物を複数上下に重ねて載置可能な積層載置部と、
前記積層載置部の下端側から前記搬送対象物を、順次、摩擦接触して前方に抜き出し、スライド送給する駆動回転体と、
前記積層載置部の前方に配置されて、前記搬送対象物群から抜き出された搬送対象物を前記駆動回転体との間で挟む重送規制部材とを備えて、前記駆動回転体と前記重送規制部材との間を通過可能な前記搬送対象物を1つに絞るシート冊子類送給装置において、
前記重送規制部材を支持する可動ベースと、
前記可動ベースを上下動可能に支持する固定ベースと、
前記可動ベースに任意の数又は任意の種類が取り付けられて、その数又は種類に応じた押圧荷重を前記可動ベースに付与可能な同種類複数個又は異種類複数個の荷重付与部材と、
前記可動ベースと前記固定ベースとに両端部が当接又は係合し、前記可動ベースが下方に移動するに従って弾性変形して、前記押圧荷重と逆向きの押し戻し弾発力を前記可動ベースに付与する押し戻し弾性体とを備えたことを特徴とするシート冊子類送給装置。
【請求項2】
前記固定ベースに設けられて前記可動ベースの一部が上方から当接し、前記重送規制部材を前記駆動回転体から上方に離間した下端位置に位置決めする下端ストッパ部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のシート冊子類送給装置。
【請求項3】
前記下端ストッパ部によって前記重送規制部材が位置決めされる位置を調整するための下端位置調整機構を備えたことを特徴とする請求項2に記載のシート冊子類送給装置。
【請求項4】
前記固定ベースに設けられて前記可動ベースの一部が下方から当接し、前記重送規制部材を前記駆動回転体から上方に離間した上端位置に位置決めする上端ストッパ部を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載のシート冊子類送給装置。
【請求項5】
前記上端ストッパ部によって前記重送規制部材が位置決めされる位置を調整するための上端位置調整機構を備えたことを特徴とする請求項4に記載のシート冊子類送給装置。
【請求項6】
前記固定ベースを上下に貫通したシャフト挿通孔と、
前記可動ベースに設けられて上下方向に延び、前記シャフト挿通孔に挿通されて、上下両端部が前記シャフト挿通孔の外側に突出した可動シャフトと、
前記可動シャフトの上端部に設けられて、前記可動シャフトと一体に上下動しかつ前記固定ベースに上方から対向した上端加圧部材とを備え、
前記押し戻し弾性体は、圧縮コイルバネでありかつ、前記可動シャフトに挿通されると共に、前記上端加圧部材と前記固定ベースとの間に配置され、
前記複数の荷重付与部材は、取付用貫通孔を備えて前記可動シャフトに挿通されると共に、前記上端加圧部材の上に複数積み上げ可能であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載のシート冊子類送給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−158419(P2012−158419A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18160(P2011−18160)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(509068448)江沢事務器株式会社 (5)
【Fターム(参考)】