説明

シート巻上装置

【課題】より安価で、かつ操作性がより良好なシート巻上装置を提供する。
【解決手段】ビニルハウスを形成する骨組材に沿って張設されるシート材を巻き上げ、あるいは巻き戻すためのシート巻上装置であって、前記シート材の一端縁に取り付けた巻上げパイプの一端を挿入して接続する開口部と、この開口部の反対側に突設された略U字状の第1の連結金具とを有する第1のカップ体と、前記巻上げパイプをパイプ軸回りに回動させるためのハンドルと、前記第1のカップ体と対をなし、前記ハンドルの一端を挿入して接続する開口部と、この開口部の反対側に突設され、前記第1連結金具と交叉状態に連結した略U字状の第2の連結金具とを有する第2のカップ体とを備え、前記第1の連結金具の突出長さを、前記第2の連結金具の突出長さよりも長くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビニルハウスを形成する骨組材に沿って張設されるシート材を巻き取るためのシート巻上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用のビニルハウスは、アルミや鉄鋼製のパイプ材などからなる骨組材を組上げ、骨組材に沿って合成樹脂フィルムからなるシート材を張設して構成されている。従来、かかるビニルハウスの中には、農作物や、その他の生育させる植物に応じてハウス内の温度や湿度を適切に調整するため、ビニルハウスの側面に張設されたシート材を巻取機で巻き取ることにより換気用開口を形成して換気を行えるようにしたものがあった(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
また、例えば、連棟タイプのビニルハウスでは、ハウスの屋根部間に形成される谷部にハウス換気装置を設けたものがあり、このハウス換気装置の場合であってもやはり巻取機を用いることが多く、この巻取機で谷部を被覆しているシート材を巻き取ることにより換気用開口を形成して換気を行っている。
【0004】
開閉されるシート材の上縁部は、換気用開口部近傍のパイプに固定具(図示せず)を用いて固定しており、開閉用のシート材の下縁部は、ビニルハウスの長手方向へ配した巻上げパイプに固定具(図示せず)を用いて固定している。巻上げパイプの一端側はビニルハウスの正面(妻面)から適宜長だけ延出させてあり、この巻上げパイプの一端に、開閉用のシート材を巻き取る巻取機を連結している。
【0005】
図22に、ビニルハウスの正面と長手方向の両側面にそれぞれ巻取機を配設した場合の一例を示す。図中、100はビニルハウス、200はビニルハウスの正面のシート材の下端部を連結した妻面(正面)パイプ、300は妻面用巻取機、310はその操作ロッド、400はビニルハウスの側面のシート材の下端部を連結した側面パイプ、500は妻面用巻取機、510はその操作ロッドである。
【特許文献1】特開2006−321655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、特許文献1に記載の巻取機であれば、その直下に障害物などがあっても操作ロッドを傾動させた状態で回転操作可能な構成としているものの、その構成が複雑でコスト高となる要因となっている。
【0007】
また、図22に示したように、ビニルハウスの妻面(正面)と長手方向の側面にそれぞれ巻取機300,500を配設した場合、妻面用巻取機300を取り付けた妻面パイプ200と側面用巻取機500を取り付けた側面パイプ400とが、その軸線方向で上下に交差してしまう。そのため、下側に位置する妻面パイプ200に連結固定したシート材を正面用巻取機300で巻上げるには、先ず、上側に位置する側面パイプ400を、側面用巻取機500を操作して上昇させなければならず、妻面のみに換気用開口600を形成する場合であっても2台の巻取機300,500を操作しなければならなかった。このようなことは、風向きなどによって換気用開口600を設ける位置が変わるためにしばしば起こりがちであった。
【0008】
したがって、市場からは、より安価で、かつ操作性がより良好なシート巻上装置の提供が望まれており、本発明は、上述した課題を解決することのできるシート巻上装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本願発明は、ビニルハウスを形成する骨組材に沿って張設されるシート材を巻き上げ、あるいは巻き戻すためのシート巻上装置であって、前記シート材の一端縁に取り付けた巻上げパイプの一端を挿入して接続する開口部と、この開口部の反対側に突設された略U字状の第1の連結金具とを有する第1のカップ体と、前記巻上げパイプをパイプ軸回りに回動させるためのハンドルと、前記第1のカップ体と対をなし、前記ハンドルの一端を挿入して接続する開口部と、この開口部の反対側に突設され、前記第1連結金具と交叉状態に連結した略U字状の第2の連結金具とを有する第2のカップ体とを備え、前記第1の連結金具の突出長さを、前記第2の連結金具の突出長さよりも長くしたことを特徴とする。
【0010】
(2)本願発明は、上記(1)において、前記第1の連結金具及び前記第2の連結金具を、それぞれ同一形状に形成した前記第1のカップ体及び前記第2のカップ体の各カップ本体に着脱自在に取付けたことを特徴とする。
【0011】
(3)本願発明は、上記(1)又は(2)において、前記ハンドルは、前記第2のカップ体の開口部に一端を挿入連結する延長回動部材と、この延長回動部材の他端を挿入する開口部を形成したアダプタ部と、このアダプタ部の前記開口部の反対側に形成したボス部に一端を連結し、他端にグリップ部を形成したクランク部材とからなり、前記アダプタ部に形成したボス部の外形を、六角ボルトの頭部形状として、電動式あるいはエア式回転工具の回転軸に取付けるソケットを嵌装可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、きわめて簡単な構成でありながら、シート材の巻上操作、巻戻操作が極めて良好となり、しかも、装置自体の材料原価を低減して安価に提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本実施形態に係るシート巻上装置は、ビニルハウスを形成する骨組材に沿って張設されるシート材を巻き上げ、あるいは巻き戻すためのものであって、シート材の一端縁に取り付けた巻上げパイプの一端を挿入して接続する開口部と、この開口部の反対側に突設された略U字状の第1の連結金具とを有する第1のカップ体と、巻上げパイプをパイプ軸回りに回動させるためのハンドルと、第1のカップ体と対をなし、前記ハンドルの一端を挿入して接続する開口部と、この開口部の反対側に突設され、第1の連結金具と交叉状態に連結した略U字状の第2の連結金具とを有する第2のカップ体とを備え、前記第1の連結金具の突出長さを、前記第2の連結金具の突出長さよりも長くした構成としている。
【0014】
すなわち、シート材の一端縁に取り付けた巻上げパイプの一端若しくは前記巻上げパイプをパイプ軸回りに回動させるためのハンドルの一端を挿入して接続する開口部と、この開口部の反対側に突設された略U字状の連結金具とをそれぞれ有する1対のカップ体とからなり、前記連結金具同士を互いに交叉状に連結するとともに、巻上パイプ側に連結されるカップ体に設けた連結金具の長さを、ハンドルに連結されるカップ体に設けた連結金具よりも長くした構成したシート巻上装置としている。
【0015】
このシート巻上装置では、第1の連結金具と第2の連結金具とを交叉状態に連結し、第1の連結金具の突出長さを、第2の連結金具の突出長さよりも長くしたので、シート巻上装置と巻上げパイプ間においては、連結金具を介して左右角度及び上下角度を自由に変更することが可能となるとともに、ハンドルの回転停止する場合には、第1の連結金具と第2の連結金具とを略直角の角度に折り曲げることにより容易に回転を止めることができ、シート材を任意の高さ位置で保持固定することが可能となる。
【0016】
したがって、使い勝手の極めて良好なシート巻上装置となり、巻上げパイプの軸線上に障害があってハンドル回転操作が難しい場合であっても、軸線上から離間した位置にハンドルを移動させて回転操作することができ、回転力を巻上げパイプに伝達してシート材の巻上操作を簡便に行うことができ、所望する高さ位置で巻上パイプを保持することも簡単に行えるようになる。
【0017】
このように、本実施形態によれば、きわめて簡単な構成で、安価に製造可能でありながら、操作性が著しく向上したシート巻上装置が提供可能である。
【0018】
また、これら第1の連結金具及び前記第2の連結金具は、各カップ本体に着脱自在に取付けている。例えば、棒材を湾曲状に折曲して略U字状に形成した連結金具の左右の端部近傍それぞれに係合溝を形成しておき、かかる連結金具に対して、カップ体の基部(開口部と反対側をなす部位)に2つの挿入孔部を形成するとともに、この挿入孔部の深さ方向を横断する横断孔を設けておく。そして、各挿入孔部に、連結金具の左右の端部を挿通して、連結金具の2つの係合溝と係合するように前記横断孔からピン体を挿入してこれを止着するのである。したがって、ピン体を抜き取れば、連結金具は挿入孔部から容易に抜き取ることができる。
【0019】
これら第1のカップ体と第2のカップ体とはそれぞれ同一形状に形成するとよく、同一形状であれば同一の金型を用いることができ製造コストをより低減することができる。
【0020】
さらに、このハンドルは、第2のカップ体の開口部に一端を挿入連結する延長回動部材と、この延長回動部材の他端を挿入する開口部を形成したアダプタ部と、このアダプタ部の開口部の反対側に形成したボス部に一端を連結し、他端にグリップ部を形成したクランク部材とからなり、アダプタ部に形成したボス部の外形を、六角ボルトの頭部や六角ナットと同様な外形形状として、電動式あるいはエア式回転工具の回転軸に取付けるソケットを嵌装可能とした構成とすることができる。
【0021】
このように、ボス部に回転工具のソケットを嵌装可能としたことにより、電動式あるいはエア式回転工具を適用することができ、いわゆる手動式のシート巻上装置から、電動式(好ましくは充電式)、エア式の自動シート巻上装置へ容易に変更することが可能となる。
【0022】
本実施形態に係るシート巻上装置について、添付図面を参照しながらより具体的に説明する。図1は本実施形態に係るシート巻上装置の使用様態を示す説明図、図2は同シート巻上装置の説明図、図3は同巻上装置の連結部を示す斜視図、図4は同正面図、図5は同平面図、図6は図4のA−A断面図、図7は同B−B断面図、図8は同C−C断面図、図9は本実施形態に係るシート巻上装置が備えるハンドルの説明図。図10及び図11はハンドル操作の一例を示す説明図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態におけるビニルハウスAは、所定の骨組材によって正面視蒲鉾状の形状に組上げられ、骨組材に沿って合成樹脂フィルムからなるシート材1を張設して構築している。すなわち、図示しない複数のアーチ形状の屋根用パイプを、構築するビニルハウスAの長手方向へ適宜間隔を隔てて立設するとともに、各屋根用パイプ間に長手状の連結パイプ(図示せず)を複数条連結固定し、これら各パイプからなる骨組材に沿ってシート材1で覆っている。
【0024】
図1において、10はハウス妻面部、11はハウス側面部であり、各面を実質的に形成するシート材1の下端縁部は、それぞれ上下昇降自在に配設された妻面パイプ2と側面パイプ3とに連結されており、各パイプ2,3の一端に本実施形態に係るシート巻上装置4がそれぞれ取付けられている。
【0025】
そして、このシート巻上装置4を操作することにより、シート材1を妻面パイプ2と側面パイプ3とに巻き取りながら巻き上げて、ハウス妻面部10及びハウス側面部11にそれぞれ換気用開口12,13を形成可能としている。本実施形態では、前記妻面パイプ2と側面パイプ3とが巻上げパイプに相当する。なお、シート材1の上端縁部は、ハウス妻面部10やハウス側面部11を形成するために横架した複数の連結パイプのうちの一つに適宜固定具により連結固定している。また、妻面パイプ2と側面パイプ3のシート巻上装置4がそれぞれ取付けられた一端側は、ビニルハウスAのハウス妻面部10やハウス側面部11から僅かに延出していても、シート巻上装置4は極めてコンパクトなため、シート材1の巻き上げ、巻き戻し操作に支障はない。
【0026】
図1において、5は側面パイプ3,3同士を連結するパイプジョイントであり、詳しくは後述するが、このパイプジョイント5を用いることにより、側面パイプ3,3を所望する長さに形成することができる。
【0027】
本実施形態の要部をなすシート巻上装置4は、図2及び図3に示すように、シート材1の一端縁に取り付けた妻面パイプ2又は側面パイプ3の一端と連結する連結部6と、この連結部6に回動自在に連結したハンドル7とから構成されている。
【0028】
より具体的に説明すると、シート材1の一端縁に取り付けた妻面パイプ2又は側面パイプ3の一端を挿入して接続する開口部61aと、この開口部61aの反対側に突設された略U字状の第1の連結金具63とを有する第1のカップ体61と、妻面パイプ2又は側面パイプ3をパイプ軸回りに回動させるためのハンドル7と、第1のカップ体61と対をなし、前記ハンドル7の一端を挿入して接続する開口部62aと、この開口部62aの反対側に突設され、前記第1の連結金具63と交叉状態に連結した略U字状の第2の連結金具64とを有する第2のカップ体62とを備えている。
【0029】
すなわち、連結部6は、第1、第2のカップ体61,62と各カップ体61(62)に取付けた第1、第2の連結金具63,64とから構成されており、この連結部6の構成に特徴がある。なお、ハンドル7と接続される第2のカップ体62はハンドル7側から回転力が入力されることから入力カップと呼び、ハンドル7側からからの回転力を妻面パイプ2又は側面パイプ3に伝達する第1のカップ体61は出力カップと呼ぶこともできる。
【0030】
また、ハンドル7は、図2及び図9に示すように、一端にグリップ部71aを設けてクランク状に形成したハンドル本体71と、このハンドル本体71の他端を連結したアダプタ部72と、このアダプタ部72に連結したパイプ状の延長回動部材73とから構成されている。したがって、本実施形態では、第2のカップ体62に接続されるハンドル7の始端は延長回動部材73の始端となっている。なお、ハンドル7の構成については、後にさらに詳述する。
【0031】
先ず、第1、第2のカップ体61,62と、各カップ体61(62)に取付けた第1、第2の連結金具63,64から構成される連結部6について説明する。
【0032】
図6に示すように、連結部6の第1のカップ体61は、妻面パイプ2又は側面パイプ3を挿通するための開口部61aが形成され、第2のカップ体62にはハンドル7を挿通するための開口部62aが所定深さで円筒状に形成されている。なお、図3〜図8に示すように、本実施形態においては、第1、第2のカップ体61,62は、前記開口部61a,62aの深さを含めて、それぞれ同じカップ形状に形成している。
【0033】
なお、このように第1、第2のカップ体61,62は実質的に同一形状なので、その具体的な部位の説明として、以下では、適宜、第1のカップ体61又は第2のカップ体62のいずれかを例にとって説明する場合がある。
【0034】
図4〜図6に示すように、第1のカップ体61(第2のカップ体62)は、その周面に所定間隔をあけて肉厚部61b,61b(62b,62b)を形成しており、その肉厚部61b(62b)同士に跨ってビス座面61c(62c)を形成するとともに、このビス座面61c(62c)の前記肉厚部61b(62b)に位置する箇所に、貫通孔61d(62d)を形成している。
【0035】
この貫通孔61d(62d)は、第1のカップ体61(第2のカップ体62)の外周面から開口部61a(62a)の内周面に貫通しており、かかる貫通孔61d(62d)に、開口部61a(62a)に挿入した妻面パイプ2又は側面パイプ3(ハンドル7の延長回動部材73)を押圧固定するためのビス材(図示せず)を螺合することによって、延長回動部材73(妻面パイプ2又は側面パイプ3)が離脱抜去しない構成としている。なお、ビス材は、頭部がビス座面61c(62c)と面一状態となるように貫通孔61d(62d)内に螺着されてカップ体(61,62)の周面からは突出しないため、シート材1に当接してこれを破断させたりするおそれがない。
【0036】
また、第1のカップ体61及び第2のカップ体62の各基部62eについても肉厚状に形成している。第1のカップ体61と同形の第2のカップ体62を例にとって説明すると、図6に示すように、開口部62aの底面から第2のカップ体62の端面にわたって厚肉にして、この肉厚部分とした基部62eに棒材をU字状に形成した第2の連結金具64を突設している。
【0037】
すなわち、第1のカップ体61、第2のカップ体62の基部61e,62eに取り付けられる第1の連結金具63、第2の連結金具64は、2本の真っ直ぐな直線部630と、かかる直線部630,630が連結された湾曲部631,631とからなる略U字状に形成されており、湾曲部631同士がクロスして係合することになるため、第1の連結金具63と第2の連結金具64とは交叉状態に連結されることになる。
【0038】
そして、直線部630,630に、後述するピン体61hを係合する切欠部からなる係合溝632,632を形成する一方、第1のカップ体61(第2のカップ体62)の基部61e(62e)の端面に、第1の連結金具63(第2の連結金具64)の2つの直線部630,630に対応する挿通孔61f、61fを穿設し、さらに、図8に示すように、これら挿通孔61f,61fの深さ方向を横断する固定孔61gを設けておく。
【0039】
かかる構成により、各挿入孔61fに、第2の連結金具64の左右の直線部630を挿通し、2つの係合溝632,632と係合するように前記固定孔61gからピン体61hを挿入すれば、第2の連結金具64をしっかりと止着することができる。また、ピン体61hを抜き取れば、第1の連結金具63(第2の連結金具64)は挿通孔61f,61fから容易に抜き取ることもできる。したがって、第1の連結金具63や第2の連結金具64が損傷した場合に、それだけの交換などを含めてメンテナンスも容易である。
【0040】
図6において、61i,62iは第1、第2のカップ体61,62の開口部61a,62aの底面に、周面から中心方向に向けて伸延形成した回転防止用リブであり、この回転防止用リブ61i,62iを、妻面パイプ2又は側面パイプ3やハンドル7の先端に形成した図示しない係合溝に嵌合させることにより、妻面パイプ2又は側面パイプ3やハンドル7と第1、第2のカップ体61,62との間での回転の伝達が確実に行われるようにしている。
【0041】
次に、図2及び図9を参照してハンドル7について説明する。
【0042】
前述したように、ハンドル7は、一端にグリップ部71aを設けてクランク状に形成したハンドル本体71と、このハンドル本体71の他端を連結するアダプタ部72と、このアダプタ部72に連結したパイプ状の延長回動部材73とから構成されている。
【0043】
アダプタ部72は、一端を前述した第2のカップ体62に連結する延長回動部材73の他端部が挿通される第1開口部72aを前面部に形成した大径部72bの背部に、ハンドル本体71を連結するボス部72cを背面に突設した小径部72dが一体的に形成されている。
【0044】
そして、大径部72bには、第1開口部72aに貫通するパイプ固定用貫通孔72eが形成され、このパイプ固定用貫通孔72eに固定ネジ72fを螺合挿通し、固定ネジ72fで延長回動部材73を側部から押圧して連結固定する構成としている。なお、固定ネジfの頭部は、大径部72bの周面と面一状態となるようにパイプ固定用貫通孔72e内に螺着されている。したがって、アダプタ部72として、最外側に鋭利な部材が突出することはないため安全性は損なわれない。
【0045】
一方、前記ボス部72cには、ハンドル本体71の先端部を嵌入する第2開口部72gが形成されるとともに、当該第2開口部72gに挿入されるハンドル本体71の先端部を固定するための貫通孔(図示せず)が設けられている。そして、この貫通孔に固定ボルト72hを挿通し、ナット72iで固定することにより、ハンドル本体71を確実に連結固定する構成としている。
【0046】
かかる構成により、グリップ部71aを把持してハンドル7を回転すると、その回転が第2のカップ体62に伝達され、第2のカップ体62の回転が湾曲部631同士で交叉状に係合した第1、第2の連結金具63,64とから構成される連結部6を介して第1のカプ体61に伝達されて、この第1のカプ体61に連結された妻面パイプ2又は側面パイプ3がパイプ軸回りに回転し、シート材1を当該妻面パイプ2又は側面パイプ3に巻き取りながら巻き上げることができる。
【0047】
上記構成において、本実施形態に係るシート巻上装置4の特徴となるのは、図4〜図6(特に図5を参照)に示すように、すなわち、巻き上げられる妻面パイプ2又は側面パイプ3を連結する第1のカップ体61に設けた第1の連結金具63の突出長さH1の方を、巻上操作するハンドル7を連結する第2のカップ体62に設けた第2の連結金具64の突出長さH2よりも長くした点にある。
【0048】
かかる構成としたことで、ハンドル7の回転操作で円滑に妻面パイプ2又は側面パイプ3の巻き上げや巻き戻しが行えるとともに、その巻き上げや巻き戻しを、所望位置で簡単にロックすることが可能となる。
【0049】
ここで、図5及び図6を用いて、本実施形態における第1の連結金具63と第2の連結金具64の寸法的な特徴点を説明する。
【0050】
第1の連結金具63及び第2の連結金具64の軸径Dについては、強度計算に基づいて決定すればよいが、本実施形態では、D=6mmとしている(図6)。
【0051】
また、第1の連結金具63の突出長さH1=32mm、第2の連結金具64の突出長さH2=13mmとし、両連結金具63,64の内寸幅W=8mmとしている。
【0052】
さらに、第1の連結金具63の内寸高さL1=25mm、第2の連結金具64の内寸高さL2=7mmとしている。この内寸幅Wと、特に内寸高さL1,L2については、シート巻上装置4の操作性や安全性の確保のためには重要であり、略U字状とした両連結金具63,64の内寸高さL1,L2と、両連結金具63,64の軸径Dとの関係について、本実施形態では、
D<L2≦2D<L1
の条件が成立するようにしている。
【0053】
すなわち、連結部6を構成する上で、第1の連結金具63の内寸高さL1と第2の連結金具64の内寸高さL2との関係については、以下のことが分かった。
【0054】
本実施形態のように、
(1)D<L2≦2D<L1とした場合は、例えば、妻面パイプ2又は側面パイプ3を巻き上げあるいは巻き戻しする際に、所望する高さ位置で保持しようとした場合、図10に示すように、第2のカップ体62に接続されたハンドル7側を鉛直下方へ垂下させるだけでよい。すなわち、この状態では、図示するように、ハンドル7側の第2のカップ体62に取付けられた突出長さH2(内寸高さL2)が短い第2の連結金具64は、突出長さH1(内寸高さL1)が長い第1の連結金具63の直線部630の基端部側に吊下した状態となる。この場合、妻面パイプ2又は側面パイプ3が自重で下方へ降下しようとしても、第1の連結金具63の直線部630が第2の連結金具64や第2のカップ体62に係止状態となってロックされる。ハンドル7側の重量が著しく軽い場合は、ハンドル7を跳ね上げ回転させながらでも下降するおそれはあるが、本実施形態では、そのようなことのないように延長回動部材73を含むハンドル7の重量を設定している。なお、図10において、9はビニルハウスAの骨組材の一である柱材である。
【0055】
(2)D<L1=L2≦2Dの条件の場合、
つまり、第1の連結金具63と第2の連結金具64の内寸高さが等しく、かつ軸径Dとさほど差がない場合で、具体的には、第1のカップ体61にも第2の連結金具64を取付た場合である。
【0056】
第1の連結金具63と第2の連結金具64との係合は、互いの湾曲部631同士が係合する。したがって、この条件では、ハンドル7側を鉛直下方へ垂下させても、第1の連結金具63には必要なだけの直線部630の長さがないため、第2の連結金具64は第1の連結金具63の湾曲部631の位置で垂下することになる。したがって、第1の連結金具63は第2の連結金具64や第2のカップ体62に対して係止状態とはならず、湾曲部631同士の位置でハンドル7側を軸回りに回転させながら妻面パイプ2又は側面パイプ3は自重で下方へ降下してしまう。
【0057】
(3)2D<L1=L2の条件の場合、
この場合は、ロック状態にはなったとしても、ハンドル7の回転操作で妻面パイプ2又は側面パイプ3の巻き上げや巻き戻しを円滑に行うことができなくなる。すなわち、両連結金具63,64ともに十分な長さの直線部630を有するため、直線部630同士が絡み合うおそれがあり、その状態ではハンドル7を回転させると妻面パイプ2又は側面パイプ3が波打つように回転して異常な負荷が使用者側にかかり、操作性が著しく損なわれてしまう。
【0058】
(4)D<L1≦2D<L2の条件の場合、
この場合も、(2)の条件の場合で説明したように、第1の連結金具63には必要なだけの直線部630の長さがないため、第2の連結金具64は第1の連結金具63の湾曲部631の位置で垂下することになる。したがって、第1の連結金具63は第2の連結金具64や第2のカップ体62に対して係止状態とはならない。しかも、妻面パイプ2又は側面パイプ3の巻き上げや巻き戻しの際に、ハンドル7を引張り勝手で操作すればよいが、すこしでも弛むと、第2の連結金具64の直線部630が第1の連結金具63の湾曲部631と係合した状態となりやすく、(3)の条件の場合と同じように操作性が損なわれてしまう。
【0059】
このように、ハンドル7を連結する第2のカップ体62に設けた第2の連結金具64の突出長さH2(内寸高さL2)よりも、巻き上げられる妻面パイプ2又は側面パイプ3を連結する第1のカップ体61に設けた第1の連結金具63の突出長さH1(内寸高さL1)を長くしたため、ハンドル7の操作による回転力が円滑に妻面パイプ2又は側面パイプ3に伝達され、図1に示すように、ビニルハウスAのハウス妻面部10及びハウス側面部11に容易に換気用開口12,13を形成することができる。
【0060】
また、所定の巻き上げ位置で停止させたい場合、使用者は、ハンドル7の延長回動部材73の軸線と妻面パイプ2又は側面パイプ3の軸線とが略直交状態となるように連結部6を介して折曲させれば、妻面パイプ2又は側面パイプ3はその位置でロック状態となる。なお、このときの略直交状態というのは、水平方向でも鉛直方向(例えば、図10を参照)でもいかなる方向でもよいが、鉛直方向にした場合、ハンドル7の延長回動部材73の長さによっては地面に干渉するため、ビニルハウスA側に折り曲げて、所定の固定具などでハンドル7を保持すればよい。
【0061】
図11にハンドル7の操作可能領域αとパイプロック可能領域βとを示している。図示するように、本実施形態によれば、妻面パイプ2又は側面パイプ3の軸線を中心として略90度の範囲が操作可能領域αであり、この領域α内であれば円滑なハンドル操作が可能であり、その外方の略45度の範囲がパイプロック領域βとなり、この領域β内であれば、妻面パイプ2又は側面パイプ3の上下移動をロックすることが容易に行える。
【0062】
以上説明してきたように、本実施形態に係るシート巻上装置4によれば、きわめて簡単な構成で、安価に製造可能でありながら、操作性が著しく向上する。また、第1のカップ体61と第2のカップ体62とを同形としたため同一金型で効率よく製造することができるので、よりコストダウンが図れる。
【0063】
なお、第1のカップ体61と第2のカップ体62とは、出力カップ、入力カップとしての機能的な違いはあるものの構成的に違いがないため、外見上は両者の区別がつけ難い。妻面パイプ2又は側面パイプ3、あるいはハンドル7をいずれのカップ体61(62)に取付ければよいか判断する場合、各カップ体61(62)に取付けられた第1の接続金具63と第2の接続金具64との突出長さH1,H2の違いによって判断することもできるが、より確実な誤認防止のために、本実施形態では、第1のカップ体61と第2のカップ体62とを色分けしている。ここでは、第1のカップ体61を緑色に、第2のカップ体62を赤色にしている。なお、用いる色は区別がつけば何でもよい。
【0064】
また、本実施形態に係るシート巻上装置4は、図9に示したように、ハンドル7におけるアダプタ部72の大径部72bの背部にはハンドル本体71を連結するボス部72cが形成されているが、ここでは、このボス部72c外形を六角ボルトの頭部や六角ナットの規格に対応した形状としている。したがって、ハンドル本体71に代えて、図12に示すように、所定のソケット81を備えた電動式あるいはエア式の回転工具8を用いることができる。
【0065】
このように、ボス部72c外形を回転工具8のソケット81を装着可能にしたことにより、シート材1の巻上操作などにかかる肉体的な負担を大きく軽減することができる。なお、上記回転工具8を用いる場合は、特に、連棟式のビニルハウスの谷部に形成された換気用開口部におけるシート材1の巻き上げ、巻き戻しに好適である。なお、回転工具8としては、充電式のものを用いることが望ましい。
【0066】
ところで、本実施形態におけるビニルハウスAでは、側面パイプ3,3同士をパイプジョイント5で連結して所望長さにしている(図1参照)。
【0067】
このパイプジョイント5は、図13〜図18に示すように、上述してきたシート巻上装置4の連結部6と基本的に同一構造である。なお、シート巻上装置4の連結部6と異なるのは、第1、第2の連結金具63,64の突出長さが同じである点のみあるため、ここでの説明は図示をもって省略する。
【0068】
かかるパイプジョイント5により、例えば複数の側面パイプ3がパイプジョイント5を境にして所定の角度で折り曲げられた状態で連結されていても、シート巻上装置4が操作されれば、全体が巻き上げられることになる。なお、このパイプジョイント5は、側面パイプ3のみならず、妻面パイプ2にも適用可能である。
【0069】
すなわち、図19に示したビニルハウスBのように、ハウス妻面部10やハウス側面部11が平面視で直線状ではなく折れ曲がっていても、複数の妻面パイプ2又は側面パイプ3間をパイプジョイント5で連結すれば、シート巻上装置4を操作することにより、シート材1を巻上げ又は巻戻して換気用開口部12,13を開閉することが可能となる。
【0070】
このように、パイプジョイント5を用いることで、変形したタイプのビニルハウスBであっても換気用開口部12,13を形成することが可能なため、例えば、土地の境界部分が直線的でない場合においても、図20に示すように、境界部近傍には変形タイプのビニルハウスBを構築することで、ビニルハウスの棟数を確保することができ、土地の有効利用が図れる。
【0071】
なお、パイプジョイント5を用いることにより、図示したビニルハウスBのような形状のみならず、さまざまな変形タイプのビニルハウスの形に対してもフレキシブルに対応できるため、様々なタイプのビニルハウスの側面に、換気用開口部12,13を簡易に形成することが可能となる。
【0072】
たとえば、図21に示すように、起伏がある土地に構築されたビニルハウスCは、ハウスC自体も起伏した形状となってしまう。そのような場合でも、本実施形態のパイプジョイント5を用いて側面パイプ3同士を連結すれば、図示するように、ハウス妻面10側に位置する側面パイプ3の一端に前述してきたシート巻上装置4や従来の巻上装置などを装着すれば、その操作によって、上下に起伏状態に連結された複数の側面パイプ3であっても、同時に巻き上げ、あるいは巻き戻しが行える。
【0073】
また、パイプジョイント5の用途として、単にパイプ同士を連結するだけではなく、例えば従来のシート材巻取装置と、これに連結するハンドルとの間にパイプジョイント5を介設することもできる。パイプジョイント5によって、ハンドルの軸をシート材巻取装置の入力軸や巻上パイプの軸に対して折曲した状態にすることができるため、シート材巻取装置をハウス内部に設置した場合や、従来、ハンドルの回転操作を行い難いとされていた場所であっても、シート材の巻き上げ、巻き戻し操作が容易に行えるようになる。
【0074】
以上、本発明を、好ましい実施の形態に基づいて説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0075】
なお、本実施形態では、シート巻上装置4の用途を換気用開口部12,13を形成するためとしたが、本発明はこれに限らず、シート材1を巻き上げ、巻き戻すものであれば全て含まれる。また、シート材1としても、例えば、ハウス外張用、ハウス内張用のいずれでもよいし、ハウスの内張りカーテンの開閉、遮光シート、または防虫用シートなどであってもよい。
【0076】
また、本実施形態では、シート巻上装置4を用いてビニルハウスの妻面(正面)及び側面に換気用開口12,13を形成するようにしたが、シート巻上装置4は、連棟式のビニルハウスなどにおける屋根部下部の谷部に設けた換気用開口を開閉する開閉用のシート材の巻取りにも好適に用いられる。さらには、ビニルハウスの屋根部に設けた換気用開口部を開閉するシート材の巻取りにも適用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施形態に係るシート巻上装置の使用様態を示す説明図である。
【図2】同シート巻上装置の説明図である。
【図3】同巻上装置の連結部を示す斜視図である。
【図4】同正面図である。
【図5】同平面図である。
【図6】図4のA−A断面図である。
【図7】同B−B断面図である。
【図8】同C−C断面図である。
【図9】本実施形態に係るシート巻上装置が備えるハンドルの説明図である。
【図10】ハンドル操作の一例を示す説明図である。
【図11】ハンドル操作の一例を示す説明図である。
【図12】回転工具を用いた例を示す説明図である。
【図13】パイプジョイントの連結部を示す斜視図である。
【図14】同正面図である。
【図15】同平面図である。
【図16】図14のA−A断面図である。
【図17】同B−B断面図である。
【図18】同C−C断面図である。
【図19】パイプジョイントを用いた変形ビニルハウスの説明図である。
【図20】パイプジョイントを用いた変形ビニルハウスの説明図である。
【図21】パイプジョイントを用いた他の変形ビニルハウスの説明図である。
【図22】従来のシート巻上装置の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0078】
A,B,C ビニルハウス
1 シート材
2 妻面パイプ
3 側面パイプ
4 シート巻上装置
5 パイプジョイント
6 連結部
7 ハンドル
8 回転工具
10 妻面部
11 側面部
61 第1のカップ体
62 第2のカップ体
61a,62a 開口部
63 第1の連結具
64 第2の連結具
H1 第1の連結具の突出長さ
H2 第2の連結具の突出長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルハウスを形成する骨組材に沿って張設されるシート材を巻き上げ、あるいは巻き戻すためのシート巻上装置であって、
前記シート材の一端縁に取り付けた巻上げパイプの一端を挿入して接続する開口部と、この開口部の反対側に突設された略U字状の第1の連結金具とを有する第1のカップ体と、
前記巻上げパイプをパイプ軸回りに回動させるためのハンドルと、
前記第1のカップ体と対をなし、前記ハンドルの一端を挿入して接続する開口部と、この開口部の反対側に突設され、前記第1連結金具と交叉状態に連結した略U字状の第2の連結金具とを有する第2のカップ体と、
を備え、
前記第1の連結金具の突出長さを、前記第2の連結金具の突出長さよりも長くした
ことを特徴とするシート巻上装置。
【請求項2】
前記第1の連結金具及び前記第2の連結金具を、それぞれ同一形状に形成した前記第1のカップ体及び前記第2のカップ体の各カップ本体に着脱自在に取付けた
ことを特徴とする請求項1記載のシート巻上装置。
【請求項3】
前記ハンドルは、
前記第2のカップ体の開口部に一端を挿入連結する延長回動部材と、
この延長回動部材の他端を挿入する開口部を形成したアダプタ部と、
このアダプタ部の前記開口部の反対側に形成したボス部に一端を連結し、他端にグリップ部を形成したクランク部材と、
からなり、
前記アダプタ部に形成したボス部の外形を、六角ボルトの頭部形状として、電動式あるいはエア式回転工具の回転軸に取付けるソケットを嵌装可能とした
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート巻上装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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