説明

シート接合方法ならびに接合装置

【課題】長尺シートロールの切替えにあたり、簡単な機構で先行シートと新シートの接合時間を短縮すると共に、粘着テープ等を使用することなくスクラップ再使用を可能とする。
【解決手段】長尺巻ロールよりシートを巻き出し、シートの残りが少なくなった時に新長尺巻ロールに切り替えるにあたり、残少シートの後端部を連設された上下2台のシート吸着盤1,2に吸着保持して下部の吸着盤2の中央部溝7上で下端部を一部はみ出させてシートを切断した後、下部のシート吸着盤2を開放し、上部の吸着盤1を上昇させて、残少シートの残りを撤去し、次いで新長尺巻ロールのシート先端を下部吸着盤2に吸着させて吸着盤の上部溝6上を切断すると共に、上部吸着盤1を下降させ、上部吸着盤に吸着された残少シートの後端のはみ出し部と下部吸着盤に吸着された新長尺巻ロールのシート先端部を重ね合わせ、該重合部中央部に溶着器8の先端を接触させ溶着接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエチレン,ポリエステル等の溶着可能なシート接合方法ならひびに接合装置に係り、詳しくは長尺巻ロールよりシートを巻き出し、シートの残りが少なくなったとき、新長尺巻ロールに巻き替える際の両ロール端部の貼り合わせ接合方法ならびに装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、帯状シートを巻き戻し、送給していたシートロールが尽きると、新しいシートロールに代え、先行シート後尾に新しいシート先端部を夫々、横断切断し、両切断端を台上で突き合わせて粘着テープで接続していたが、接続作業が面倒で細心の注意を必要とするため、シートロールから巻戻した先行シートの後尾に新しいシートロールから巻戻した新シート先端部をシート走行路上で接続するシート接合方法及び装置が提案されてきた。例えば特許文献1では先行シートの後端部を第一横枠で保持し、第二横枠沿いに外方の待機位置よりテープリールを走らせて第二横枠のテープ吸着面にシート幅長さの粘着テープを敷いて吸着保持し、この粘着テープの粘着面の一部が上流側にはみ出た状態になるように先行シートの後端部を押付け接着した後、新シートを第三横枠で粘着テープの粘着面の一部が上流側にはみ出た部分に押し付け接着して接着位置よりも下流側で横切断し先行シートと新シートの粘着テープを接着していない面に別の接着テープを押し付け接着するものである。
【0003】
しかし、上記の如く粘着テープを用いてシートを接着すると屑になったシートを再製するときに粘着テープの基材や粘着材が原料に混入し再製シートの品質低下を招来する難があるためシートの接合に粘着テープを使用することを止め、超音波ホーンの使用が行われ、本体先端を二つのシートの重ね合わせた部分上に設定した第1接合開始点にその上方から進出させた後、前記重ね合わせ部分の第1接合開始点から第1接合終了点までの部分を接合し、次いで前記ホーン本体の先端を前記重ね合わせ部分の表面から後退させた後、超音波ホーンを、その移動方向を反転させて前記第1接合開始点と同一位置又は第1接合開始点の近くに設定した第2接合開始点の上方まで移動し、ホーン本体先端を第2接合開始点に進出させ、重ね合わせ部分の第2接合開始点からもう片方の縁又は縁付近に設定された第2接合終了点までの部分を接合する方法が提案されて来た。(特許文献2参照)
この方法は前記接合方法に比しシートの溶着に要するエネルギーが少なくて済み、シートが幅の広いものであっても比較的短時間で確実に接合できると共に、粘着テープ,粘着剤や基材が原料中に混入する恐れがない利点を有しているが、第1接合点と第2接合点を分け超音波ホーンを移動させて2度にわたって接合しなければならない難点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭63−13818号公報
【特許文献2】特開2006−306595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の如き実状に対処し、更に接合の簡易化を図り、特に2台の吸着盤を上下方向,左右方向に夫々移動可能として重ね合わせ部分を一度に接合可能とすることを見出すことにより長尺シートロール切替時における接合時間を短縮し、作業性を向上せしめることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、上記目的に適合する本発明接合方法は、長尺巻ロールよりウエブを巻出し、シートの残りが少なくなった時に新長尺巻ロールに切り替えるにあたり、残少シートの後端部を連設された上下2台のシート吸着盤に吸着保持して下部の吸着盤の中央部溝上でカッターによりシートを切断した後、下部のシート吸着盤を開放し、上部の吸着盤を上昇させて残少シートの残りを撤去し、次いで新長尺巻ロールのシート先端を下部吸着盤に吸着させて吸着盤の上部溝上でカッターによりシートを切断すると共に、上部吸着盤を下降させ、上部吸着盤に吸着された残少シートの後端部と下部吸着盤に吸着された新長尺巻ロールのシート先端を重ね合わせ、該重合部中央部に溶着器の先端を接触させ、重合された貼り合わせ部のシートを押さえながら溶着器を走行させて溶着接合することを特徴とする。
【0007】
請求項2は上記方法を達成する装置であり、長尺巻ロールよりシートを巻き出し、シートの残りが少なくなった時、新長尺巻ロールに切り替え、残少巻ロールの後端部と、新長尺巻ロールの前端部を重ね合わせ接合する装置であって、シート巻出し近傍に配設された上下2台の吸着盤よりなり、上部吸着盤は上下方向に移動可能、下部吸着盤は前後方向に移動可能であって、かつ下部吸着盤のシート接触面上部及び中央部にはシート切断用の溝が設けられていると共に、接合するシート重ね合わせ部を挟み前記上下の吸着盤に対向して溶着器が走行可能に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上記の如く上下2台の吸着盤を使用し、それに上下動,前後動をさせて先行シートの後端と新シートの前端を重ね合わせたシート重ね合わせ部分を超音波ウエルダーを使用して貼り合わせる方法,装置であり、従来の如く両面テープ,粘着テープ,ホットメルト等を使用せず、樹脂シート材料で融着することができるため、スクラップ部の再使用も可能であり、かつ、装置もシンプルで吸着盤の上下動,前後動の簡単な作動で短縮された接合時間で確実な貼り合わせができる効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明接合に用いる接合装置の要部構成を示す概要図である。
【図2】本発明接合方法を示し、(イ)〜(チ)は該接合の順序工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、更に添付図面を参照し、本発明の具体的態様について説明する。図1は本発明接合方法を実施する接合装置の1例であり、図において1,2は長尺巻ロールRよりガイドロール3を介して巻出されてくるシートSの巻出し部途中に配設された上下2台の吸着盤であり、夫々シート接触面に吸着穴1a,2aを有するバキューム室によって構成され、図示の如く上部吸着盤1は昇降シリンダー4により上下昇降動可能、また下部吸着盤2は前後動シリンダー5により前後に移動可能となっていると共に、下部吸着盤2にはシート接触面に前記吸着穴2aと共にシートを切断するための溝6,7が上部位置と中央部に形成されている。
【0011】
8は上記巻出されてくるシートSが残り少なくなったとき、新長尺巻ロールに切り替えるにあたり上部吸着盤1に吸着され切断されたシート後端部と下部吸着盤2に吸着された新長尺巻ロールの先端部を重ね合わせ、接合するための超音波ウエルダー等よりなる溶着器で、巻き出された走行するシートに対し接近,離反が可能となる如く移動駆動機構9を具備した台10上に保持されている。
【0012】
次に上記装置を用いて長尺巻ロールRより巻出されたシートが残り少なくなったとき、その後端部を新長尺巻ロールより巻出されたシートの前端部と接合する方法を説明する。この接合方法は基本的に上下2台の吸着盤1,2を使用し、上部吸着盤1を上下動,下部吸着盤2を前後動させてシートの切断端部を重ね、その重ねた部分を超音波ウエルダー等の溶着器8を使用して貼り合わせることであり、図2(イ)〜(チ)にその接合工程順序を示している。
【0013】
即ち、(イ)は長尺巻ロールを巻き出し、シートの残りが少なくなったときであり、巻き出されてくるシートSの途中に上下吸着盤1,2が連続配置されて(ロ)図の如くシートSを両吸着盤1,2で保持する。そして、下部吸着盤2上の中央部の溝7上でカッター11により上部吸着盤1より下端部を一部はみ出させて切断して(ハ)図の如く下部のシート吸着盤を開放し、残りのシートを除去して上部吸着盤1を上昇させると共に、(ニ),(ホ)図の如く揺動可能なガイドロール12を介して別送されてきた新長尺巻ロールのシートS先端部を下部吸着盤2を前進させて吸着し、(ホ)図の如く下部吸着盤2の上部溝上でカッター11により切断して(へ)図に示す如く切断された新巻ロールのシートS1前端部を除去すると共に、各吸着盤を夫々、移動させて、(ト)図に示す如く先行した巻ロールのシートSが上部吸着盤下部よりはみ出した部分と、新巻ロールのシートS1前端部を重ね合わせ、その重ね合わせの略中央部に溶着器8の先端を接触させ幅方向に走行させることにより溶着し、貼り合わせる。
【0014】
なお、重ね合わせの溶着に際しては貼り合わせ部のシート2枚を回転コロ13を付設して、これで押さえながら溶着器8を走行させるようにすることが好ましい。かくして残り少なくなった巻ロールのシートS後端部と新しい巻ロールのシートS1先端部が貼り合わされて接合されると(チ)図に示す如く再び正常な巻き出しが続けられる。
【0015】
以上の接合順序工程においてシートの切断はカッターによる手切りでもよく、また自動による切断も可能である。また溶着器8には市販の超音波ウエルダーが最も一般的に使用されシート重ね合わせ部に対し前後に走行し、かつ所定の位置においてシート幅方向に走行してシートに接触し、溶着する。以上のようにして残り少なくなった先行巻ロールの後端部と、新巻ロールの前端部とを両面テープ,粘着テープ,ホットメルト等を使用することなく確実に貼り合わせ接合することができる。
【符号の説明】
【0016】
R:長尺巻ロール
S:シート
1:上部吸着盤
2:下部吸着盤
1a,2a:吸着穴
3:ガイドロール
4:昇降シリンダー
5:前後動シリンダー
6:上部の溝
7:中央部の溝
8:溶着器
9:移動駆動機構
10:溶着器保持台
11:カッター
12:シートのガイドロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺巻ロールよりシートを巻出し、シートの残りが少なくなった時に新長尺巻ロールに切り替えるにあたり、残少シートの後端部を連設された上下2台のシート吸着盤に吸着保持して下部の吸着盤の中央部溝上でカッターにより上部吸着盤より下端部を一部はみ出させてシートを切断した後、下部のシート吸着盤を開放し、上部の吸着盤を上昇させて、残少シートの残りを撤去し、次いで新長尺巻ロールのシート先端を下部吸着盤に吸着させて吸着盤の上部溝上でカッターによりシートを切断すると共に、上部吸着盤を下降させ、上部吸着盤に吸着された残少シートの後端はみ出し部と下部吸着盤に吸着された新長尺巻ロールのシート先端部を重ね合わせ、該重合部中央部に溶着器の先端を接触させ、重合された貼り合わせ部のシートを押さえながら溶着器を走行させて溶着接合することを特徴とするシート接合方法。
【請求項2】
長尺巻ロールのシートを巻き出し、シートの残りが少なくなった時、新長尺巻ロールに切り替え、残少巻ロールの後端部と、新長尺巻ロールの前端部を重ね合わせ接合する装置であって、シート巻出し近傍に配設された上下2台の吸着盤よりなり、上部吸着盤は上下方向に移動可能、下部吸着盤は前後方向に移動可能であって、かつ下部吸着盤の上部及び中央部にはシート切断用の溝が設けられていると共に接合するシート重ね合わせ部を挟み前記上下の吸着盤に対向して溶着器が走行可能に設けられていることを特徴とするシート接合装置。

【図1】
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【図2】
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