説明

シート搬送ガイド

【課題】プリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置で用いられるシート搬送ガイドにおいて、シートが加熱されることによってガイド部材に付着する水滴を抑制するともに効率よく排除して、記録シートに水滴が接触することによる障害を抑止する。
【解決手段】加熱されたシートPが搬送される搬送経路でシートの面と対向し、搬送方向に沿って配列された複数のガイド部材51〜58を備える。これらは、下流側に配置されたガイド部材が、上流側に配置されたガイド部材の背後に一部が位置し、これらは間隙をおいて配置される。ガイド部材のそれぞれは、シートとの対向面に生じた水滴を搬送方向の上流側に流下させる勾配を有し、下流側に配置されたガイド部材の一部と上流側に配置されたガイド部材の背面とが対向する位置に、水滴を吸収する吸水部材61が取り付けられる。また、ガイド部材は、搬送経路に対する傾斜角が変動するものでも良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置で用いられるシート搬送ガイドに係り、特に加熱されたシートを案内するシート搬送ガイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉状のトナーを用いる画像形成装置においては、形成されたトナー像を記録シート上に転写した後、加熱部材と加圧部材との間に記録シートを挟み込み、加熱及び加圧してトナー像を定着する。また、インクジェット方式による画像形成装置においても、インクの付着によって画像が形成された記録シートを加熱して早期に乾燥させるもの等が提案されている。
【0003】
このような記録シートの加熱を行う画像形成装置では、加熱された記録シートの搬送路に、いわゆる結露の問題が生じる場合がある。すなわち、加熱により記録シートに含有されている水分が水蒸気になり、搬送される記録シートを案内するガイド部材等に水滴となって付着することがある。特に、ガイド部材の温度が低い状態では発生した水蒸気が接触したときに水滴となりやすい。ガイド部材等に付着した水滴は、搬送される記録シートと接触して転移する。水滴によって記録シートが濡れると、画像が乱されたり、水滴を介して記録シートがガイド部材等に密着し、円滑な搬送が妨げられて紙詰まりの原因ともなりかねない。
【0004】
特許文献1には、上記のようにガイド部材に水滴が付着することを考慮した画像形成装置が記載されている。
この画像形成装置では、ガイド部材に段差部、窪み、隆起部等を設けて、ガイド部材上の水滴を排除し、記録シートが水滴で濡れるのを防止しようとするものである。また、ガイド部材は記録シートの搬送方向における幅を分割して小さくし、これらの間に水滴が流れ落ちる開口を設けることが記載されている。この開口に流れ落ちる水滴は、開口の下側に設けられた捕集皿に収容され、さらにパイプ等の手段によって回収容器に回収されるものとなっている。
【特許文献1】特開2003−215967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガイド部材に多くの水滴が付着すると、これらが記録シートに転移しないように排除することは難しくなる。特許文献1に記載の画像形成装置のように、段差部や隆起部を設けても、多くの水滴が付着すると記録シートと接触してしまう。また、水滴を回収する開口を設けても、ガイド部材で囲まれた領域に水蒸気が滞留しているとガイド部材に水滴が生じ易く、記録シートと接触する前に開口へ排出することは難しい。
【0006】
本願発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シートが加熱されることによってガイド部材に付着する水滴を抑制するともに効率よく排除して、記録シートに水滴が接触することによる障害を抑止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 加熱されたシートが搬送される搬送経路で該シートの面と対向し、該シートの搬送方向に沿って配列された複数のガイド部材を備え、 下流側に配置されたガイド部材は、前記搬送経路に面して上流側に配置されたガイド部材の背後に一部が位置し、 前記下流側に配置された前記ガイド部材と前記上流側に配置された前記ガイド部材との間には通気を可能とする間隙が設けられているシート搬送ガイドを提供する。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のシート搬送ガイドにおいて、 前記ガイド部材のそれぞれは、該ガイド部材のシートと対向する面に生じた水滴を搬送方向の上流側に流下させる勾配を有するように配置されているものとする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のシート搬送ガイドにおいて、 下流側に配置されたガイド部材の一部と上流側に配置されたガイド部材の背面とが対向する位置には、前記下流側のガイド部材と前記上流側のガイド部材との内の下方にあるものの他方と対向する面に水滴を吸収する吸水部材が取り付けられているものとする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項2又は請求項3に記載のシート搬送ガイドにおいて、 前記ガイド部材の前記シートと対向する面には、水接触角を大きくするための表面処理又は表面層が施されているものとする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4までのいずれかに記載のシート搬送ガイドにおいて、 前記ガイド部材の前記シートと対向する表面に、前記シートの搬送方向の下流側から空気流を吹き付ける送風装置を有するものとする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5までのいずれかに記載のシート搬送ガイドにおいて、 前記ガイド部材の少なくとも一部は、前記搬送経路に対する傾斜角を変動させる駆動手段を備えるものとする。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載のシート搬送ガイドにおいて、 前記駆動手段は、前記シートが通過するときに、前記搬送経路に対する傾斜角を小さくし、前記シートが通過しないときに前記搬送経路に対する傾斜角を大きくして前記下流側のガイド部材と前記上流側のガイド部材との間の前記間隙を拡大するように制御されるものとする。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項6に記載のシート搬送ガイドにおいて、 前記駆動手段は、通過するシートの種類、厚さ及び坪量の少なくとも一つの情報に基づいて、前記ガイド部材の角度の変更が制御されるものとする。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項6に記載のシート搬送ガイドにおいて、 温度又は相対湿度の少なくとも一方の情報に基づいて、前記ガイド部材の角度の変更が制御されるものとする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明のシート搬送ガイドでは、シートの搬送方向に沿って配列された複数のガイド部材の間から、搬送経路内の水蒸気が排出され、ガイド部材と接する領域に水蒸気が滞留するのが低減される。これによって、ガイド部材に水滴が付着するのが抑制され、シートに付着して画像の乱れ等の障害の発生を少なくすることができる。
【0017】
請求項2に係る発明のシート搬送ガイドでは、ガイド部材のシートと対向する面に水滴が生じたときには、勾配によって水滴が搬送方向の上流側に流下し、上流側のガイド部材の背後に移動する。これによって、搬送されるシートに接触するのが回避される。
【0018】
請求項3に係る発明のシート搬送ガイドでは、ガイド部材上を流下した水滴が吸水部材に吸収され、これらのガイド部材を使用する装置内に滴下するのを防止することができる。
【0019】
請求項4に係る発明のシート搬送ガイドでは、ガイド部材に付着した水滴は容易にガイド部材の表面上を流下し、上流側のガイド部材の背後に流れ込む。これにより、記録シートと接触する機会を低減することができる。
【0020】
請求項5に係る発明のシート搬送ガイドでは、ガイド部材と隣接する領域の水蒸気を強制的に排除することができるともに、ガイド部材の表面に生じた水滴を下流側に押し流して上流側のガイド部材の背後に流し込むことができる。
【0021】
請求項6に係る発明のシート搬送ガイドでは、上流側のガイド部材と下流側のガイド部材との間隙を大きくして水蒸気の排出が迅速に行われる状態と、搬送される記録シートがガイド部材に突き当たる角度を小さくして搬送が円滑に行われる状態とを切り換えることが可能となる。
【0022】
請求項7に係る発明のシート搬送ガイドでは、シートの通過時にはシートが円滑に搬送できる状態とし、一枚のシートが通過して次のシートが搬送されてくるまでの間には、シートの搬送領域の通気をよくして水蒸気を排除し、水滴の付着を低減することができる。
【0023】
請求項8に係る発明のシート搬送ガイドでは、使用されるシートの種類、厚さ又は坪量によって水蒸気の発生量が変動することに対応し、水蒸気の発生量が増大するときには、下流側のガイド部材と上流側のガイド部材との間隙を大きくして水蒸気が排除され易くすることができる。また、水蒸気の発生量が少ないシートを用いるときには、シートの搬送経路に対するガイド部材の角度を小さくして、シートの搬送が円滑に行われる状態とすることができる。
【0024】
請求項9に係る発明のシート搬送ガイドでは、水蒸気が水滴となってガイド部材に付着し易い状態と付着し難い状態とに対応し、水蒸気がガイド部材に付着し易いときには、下流側のガイド部材と上流側のガイド部材との間隙を大きくして水蒸気が排除され易くすることができる。また、水蒸気がガイド部材に付着し難いときには、シートの搬送経路に対するガイド部材の角度を小さくして、シートの搬送が円滑に行われる状態とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本願に係る発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願発明のシート搬送ガイドを用いることができる画像形成装置の一例を示す概略構成図である。また、図2は、この画像形成装置で用いられているシート搬送ガイドであって、本願発明の一実施形態を示す概略構成図である。
この画像形成装置は、デジタル画像信号に基づき、電子写真方式により画像を形成するものであり、静電電位の差による潜像に粉状のトナーを転移してトナー像を形成する画像形成部1と、収容している記録シートを画像形成部1に一枚ずつ供給するシート供給部2と、シート供給部2から供給された記録シート上に転移されたトナー像を定着画像とする定着部3とを有している。
【0026】
上記画像形成部1は、一様帯電後に像光が照射されて表面に静電電位の差による潜像が形成される円筒状の感光体ドラム11を備えており、この感光体ドラム11の周囲に、感光体ドラム11の表面を一様に帯電させる帯電装置12と、感光体ドラム11に像光を照射して表面に潜像を形成する露光装置13と、感光体ドラム上の潜像にトナーを選択的に転移させてトナー像を形成する現像装置14と、感光体ドラム11上に形成されたトナー像を記録シートに転写する転写装置15と、トナー像を転写した後の感光体ドラム11に残留するトナーを除去するクリーニング装置16とを備えている。
【0027】
上記感光体ドラム11は、金属製の円筒体の表面に無機感光材料、有機感光材料、アモルファスセレン系感光材料、アモルファスシリコン系感光材料等からなる感光体層を形成したものを用いることができる。この感光体ドラム11は、中心軸線回りに回転駆動され、移動する周面上で一様帯電、露光、現像等の工程が順次に行われる。
【0028】
上記帯電装置12は、ステンレススチール、アルミニウム等の導電性を有する金属のローラ状部材に高抵抗材料のコーティングを施したものであり、感光体ドラム11に当接され、従動回転するようになっている。そして、所定の電圧が印加されることにより、該ローラと感光体ドラム11との接触部近傍における微小間隙内で継続的な放電を生じ、感光体ドラム11の表面をほぼ一様に帯電するものである。
【0029】
露光装置13は、画像信号に基づいて画素毎に点滅するLEDが配列されたものであり、感光体ドラム11の周面が周回移動するのにともなって点滅し、感光体ドラム11の周面を画像信号に基づいて露光するものとなっている。これにより感光体ドラム11の周面上で露光部の電位が減衰し、静電電位の差による潜像が形成される。
【0030】
上記現像装置14は、感光体ドラム11と近接・対向する位置に現像剤の薄層が付着された現像部材14aを有し、この現像部材と感光体ドラム11との間に形成された電界内で、潜像にトナーを転移して可視像を形成するものである。
【0031】
上記転写装置15は、感光体ドラム11と対向するように配置されたローラ状の部材であって、感光体ドラムとの間に転写バイアス電圧が印加されている。これによって形成される電界内でトナー像が記録シート上に静電的に転写されるものとなっている。
【0032】
上記シート供給部2は、記録シートPを積層して収容する複数のシートトレイ21を備えている。そして、それぞれのシートトレイ21について、収容された記録シートPを最上層のものから一枚ずつ順次に取り出すピックアップローラ22と、ピックアップローラ22で引き出された記録シートを重送を防止しながら搬送路24に送り出す給送ローラ23と、この記録シートPを画像形成部1におけるトナー像の転写位置へ搬送する搬送路24とを備えている。
【0033】
また、定着部3は、加熱源を内蔵した定着ローラ31aと、この定着ローラ31aと平行に圧接される加圧ローラ31bとを備えた定着装置31と、定着ローラ31aと加圧ローラbとの間を通過して搬送される記録シートを案内するシート搬送ガイド32とを備えている。上記定着ローラ31aは軸線回りに回転駆動され、圧接される加圧ローラ31bは従動回転するものとなっている。そして、これらの間に挟み込まれた記録シートは加熱及び加圧され、付着しているトナー像が記録シート上に圧着されるとともに、定着ローラ31a及び加圧ローラ31bの回転によって搬送されるものとなっている。
【0034】
上記シート搬送ガイド32は、図2に示すように搬送される記録シートPの上面と下面と対向するように上側ガイド41及び下側ガイド42が設けられたものであり、これらのガイドによって所定の搬送経路に記録シートPを案内するものである。これらの上側ガイド41及び下側ガイド42のそれぞれが、記録シートPの搬送経路に沿って配列された複数のガイド部材51〜54,55〜58を備えている。これらのガイド部材51〜58は、下流側に設けられたガイド部材が上流側に設けられたガイド部材の背面に一部が対向するように配列される。つまり、例えば上側ガイドの第3のガイド部材53と第4のガイド部材54とでは、上流側のガイド部材53の搬送経路に対する背面と、下流側のガイド部材54の搬送経路と対向する面の一部とが対向し、下流側のガイド部材54は、このガイド部材54の下流側部分が搬送経路と対向するものとなっている。そして、下流側のガイド部材と上流側のガイド部材とは間隙をおいて対向しており、これらの間隙によって搬送経路内から搬送経路外への通気が可能となっている。
【0035】
これらのガイド部材51〜58によって形成される記録シートPの搬送経路は下流側に向かって上昇するように設定されており、各ガイド部材51〜58も、下流側が上流側より高い位置となって傾斜している。そして、下流側のガイド部材と上流側のガイド部材とが対向する領域で、下側にあるガイド部材に、吸水部材61が貼り付けられている。つまり、下側ガイド42を構成するガイド部材では、下流側のガイド部材の上流側端部であって、搬送経路と対向する側の面に、上側ガイド41を構成するガイド部材では上流側のガイド部材の下流側端部であって、搬送経路に対する背面に吸水部材が接着されている。
【0036】
例えば、下側ガイド42の第7のガイド部材57と第8のガイド部材58とが対向する領域では、下流側にある第8のガイド部材58の上流側端部であって、搬送経路と対向する上側の面に吸水部材61が接着されている。また、上側ガイド41を構成する第3のガイド部材53と第4のガイド部材54とが対向する領域では、上流側にある第3のガイド部材の下流側端部であって、搬送経路に対する背面つまり上面に吸水部材61が接着されている。
【0037】
上記吸水部材61は、フェルト、不織布、織布、合成樹脂の発泡材等の吸水性及び保水性を有する材料を用いることができる。また、各ガイド部材の搬送経路と対向する面は、水接触角を大きくする処理が施されているのが望ましい。例えば、フッ素樹脂の皮膜等が形成されているものを採用することができる。
【0038】
上記のような画像形成装置は、次のように動作する。
画像形成動作を開始する信号が入力されると、感光体ドラム11が回転駆動され、帯電装置12によって感光体ドラム11の周面が一様に帯電される。そして、露光装置13によって像光が照射され、静電電位の差による潜像が感光体ドラム11の周面上に形成される。この潜像は現像装置14と対向する位置でトナーの転移によって可視像とされ、形成されたトナー像は、感光体ドラム11の回転によって転写装置が設けられた転写位置に移動する。
【0039】
一方、シート供給部2では、操作者が入力した信号又は他の装置から入力された画像情報に基づき、複数のシートトレイ21に収容された記録シートの内の一つが選択される。選択された記録シートを収容するシートトレイ21からは、ピックアップローラ22及び給送ローラ23によって一枚ずつ搬送路24に記録シートが送り出され、搬送路24を画像形成部1へと搬送される。そして、感光体ドラム11上のトナー像に当接されるようにタイミングを調整して、感光体ドラム11と転送装置15とが対向する転写部に送り込まれる。転写部ではトナー像が記録シート上に転写され、この記録シートは定着部に搬送される。
【0040】
定着部3では、定着ローラ31aと加圧ローラ31bとの間にトナー像が転写された記録シートが挟み込まれ、加熱及び加圧されてトナー像は記録シートに圧着される。そして、定着ローラ31aと加圧ローラ31bとの回転駆動によって記録シートは定着装置31から送り出され、シート搬送ガイド32に案内されて排紙トレイ4へと搬送される。このとき、記録シートPは高温に加熱されており、含まれている水分が水蒸気となって発散する。この水蒸気は上側ガイド41と下側ガイド42との間の搬送経路内で生じるが、複数のガイド部材51〜58が間隙をおいて配置されていることにより、これらの間隙から水蒸気を多く含む空気が搬送経路外に速やかに排出される。これにより、ガイド部材51〜58の搬送経路内と対向する面に付着する水滴が低減される。
【0041】
また、ガイド部材51〜58に付着した水滴Wは、傾斜するガイド部材51〜58の表面を流下し、上流側のガイド部材の背面側に流れ込む。定着ローラ等をモータによって駆動することによる微振動は、上記水滴Wの流下を促進する。そして、下側ガイド42では、ガイド部材56,57,58の搬送経路と対向する面を流下した水滴Wが吸水部材61に吸収され、保持される。一方、上側ガイド41では、搬送経路と対向する面を流下した水滴Wは上流側のガイド部材の背面側で、上流側のガイド部材上に滴下され、上流側のガイド部材の背面側に接着された吸水部材61に吸収され、保持される。したがって、記録シートから発生した水蒸気が水滴となってガイド部材に付着しても、記録シートと接触する機会は少なく、記録シートの画像を乱したり、汚したりすることが低減される。
また、ガイド部材の表面に水接触角を大きくする処理が施されている場合には、ガイド部材の表面に生じた水滴Wが流下し易くなり、より一層記録シートとの接触するる機会が少なくなる。
【0042】
上記実施の形態では、ガイド部材51〜58の表面に付着した水滴Wはガイド部材の傾斜によって流下するものとなっているが、上記のようなガイド部材の傾斜による流下を補助するために、又は傾斜によって流下させることに代えて、図3に示すように水滴Wを移動させるための送風装置を設けることができる。
【0043】
この送風装置は、ファン62によって発生させた空気流を、送風管63を経て搬送経路内に導き、ガイド部材52,53,54の搬送経路と対向する面に吹き付けるものである。空気流を吹き出すノズル64は、例えばガイド部材56,57,58の一部を切り欠いた部分に設けるものとし、この部分から対向するガイド部材52,53,54の上流側から下流側に向けて吹き付けるものとなっている。このように空気流が吹き付けられることによってガイド部材上に付着した水滴Wが強制的に移動され、上流側のガイド部材の背後に設けられた吸水部材61に速やかに吸収させることができる。また、搬送経路内で発生した水蒸気の排出も促進される。
なお、上記送風装置による空気流の吹きつけは、記録シートの搬送を阻害するおそれがあり、少なくとも記録シートPの先端部分が通過するときには吹きつけを停止するのが望ましい。
【0044】
図4は、図1に示す画像形成装置で用いることができるシート搬送ガイドの他の例であって、本願発明の他の実施形態を示す概略構成図である。
このシート搬送ガイド33は、図2に示すシート搬送ガイドと同様に、複数のガイド部材71〜78を有するものであり、上流側のガイド部材の背後に下流側のガイド部材の上流側部分が対向するように配置されている。そして、上流側のガイド部材の背面と下流側のガイド部材とが対向する領域には、吸水部材81が接着されている点も、図2に示すシート搬送ガイドと同じである。
【0045】
一方、このシート搬送ガイドでは、複数のガイド部材の内、上側ガイドを構成する第2から第4のガイド部材72,73,74、及び下側ガイドを構成する第6から第8のガイド部材76,77,78が、搬送される記録シートの面とほぼ平行でこの記録シートの搬送方向とほぼ直角な支持軸82の回りに回動が可能となっている。つまり、ガイド部材の搬送経路と対向する面と記録シートPの面とがなす角度を変えることができるものとなっている。これにより、上流側のガイド部材と下流側のガイド部材との間隙は、図4に示すように大きく開放された状態と、図5に示すように接触又は近接する状態とに変化させることが可能となっている。
【0046】
上記ガイド部材72〜74,76〜78の角度を変更する機構は、上記ガイド部材の支持軸82とは離れた位置で、上側ガイド又は下側ガイドに含まれるガイド部材のそれぞれと回動が可能に連結される連結部材83と、この連結部材83を移動させるソレノイド84と、このソレノイド84の駆動力を連結部材83に伝達する駆動伝達部材85とを有するものである。
なお、図4には上側ガイドのガイド部材72〜74を駆動するためのソレノイド及び駆動伝達部材は示されていないが、下側ガイドと同様にソレノイド及び駆動伝達部材を備えるものとなっている。また、上側ガイドの連結部材83を下側ガイドの連結部材83に連動させる連動機構を備えるものでも良い。
【0047】
上記ソレノイド84が駆動されることにより、連結部材83の位置が移動し、複数のガイド部材72〜74,76〜78は互い平行な状態を維持しながら、角度が変更されるように移動するものとなっている。したがって、図4に示すように上流側のガイド部材と下流側のガイド部材と間に間隙が生じるようにして、ガイド部材に水滴Wが付着するのを低減するとともに、記録シートPが水滴に接触し難くする状態と、図5に示すように記録シートPとガイド部材とのなす角度が小さくなって、記録シートPが搬送され易い状態とを、状況に応じて変更することができる。
【0048】
例えば、画像形成装置の電源をON状態として使用を開始し、時間が経過していないときには、ガイド部材71〜78の温度が低い状態となっており、記録シートPから発生した水蒸気がガイド部材と接触して結露し易い。その後、定着装置の動作を継続することによってガイド部材71〜78の温度が上昇し、結露は生じにくくなる。このため、画像形成装置の使用を開始した後の所定の時間内は、上記ガイド部材72〜74,76〜78と搬送される記録シートPとのなす角度を大きく設定して結露を防止する。そして、所定の時間が経過した後は、ガイド部材72〜74,76〜78と搬送される記録シートPとのなす角度を小さく設定して良好な搬送性を確保することができる。
【0049】
また、画像形成装置の使用を開始した後の所定時間内は、上記ガイド部材72〜74,76〜78と搬送される記録シートPとのなす角度を大きくした状態で、記録シートを通過させるものであっても良いし、記録シートが通過するときだけ、ガイド部材72〜74,76〜78と搬送される記録シートPとのなす角度を小さくするように制御することもできる。記録シートPの通過時にガイド部材72〜74,76〜78と搬送される記録シートPとのなす角度を変化させる制御は、図6に示すように、記録シートの搬送方向における上流部にシート検知センサ86を設け、このシート検知センサ86の検知信号に基づいて行うことができる。つまり、シート検知センサ86が記録シートPの先端部が通過したことを検知すると信号を出力し、制御装置87がこの信号に基づいてソレノイド84を作動するように制御するものである。
なお、上記シート検知センサ86は、例えば、記録シートと接触して変位する接触子86aを搬送経路に突き出すように設けておき、この接触子86aの変位を検出するものや、発光素子と受光素子とを備えて発光素子から出力される光が記録シートで遮られるのを検出するもの等を採用することができる。
【0050】
一方、使用される記録シートの種類、厚さ、坪量等の情報に基づいてガイド部材72〜74,76〜78の動作を制御することもできる。
一般に、厚さが大きい用紙は水蒸気の発生量が多くなり、ガイド部材72〜74,76〜78の表面で結露も生じ易くなる。したがって、使用される記録シートPに関して操作者が入力した情報又はセンサによって検出された情報等に基づいて、水蒸気を発生し易い記録シートが使用されるときには、ガイド部材72〜74,76〜78と搬送される記録シートPとのなす角度を大きくして、通気による結露の防止と、生じた水滴に接触する機会の低減とを図る。このとき、水蒸気を発生しやすい厚い紙は一般に剛性が高く(いわゆる「腰が強い」といわれる状態)、ガイド部材72〜74,76〜78と搬送される記録シートPとのなす角度が大きくなっていても、記録シートは円滑に搬送される。また、薄い紙等水蒸気の発生量が少ない記録シートを用いるときには、ガイド部材72〜74,76〜78と搬送される記録シートPとのなす角度を小さくして搬送性が良好な状態とし、紙詰まりの防止を図ることができる。
【0051】
その他、ガイド部材の角度を制御する情報としては、別途設けられたセンサ(図示せず)から得られる温度・湿度の情報を用いても良い。例えば、高温多湿の場合は、記録シートPが多くの水分を含んでいる場合が多く、ガイド部材72〜74,76〜78と搬送される記録シートPとのなす角度を大きく設定して、ガイド部71〜78材の間隙から水蒸気の排出を行うのが望ましい。したがって、温度及び湿度の値が所定の範囲となるときにはガイド部材72〜74,76〜78と搬送される記録シートPとのなす角度を大きく設定し、温度と湿度との値がこの範囲外となるときには、ガイド部材71〜78と搬送される記録シートPとのなす角度を小さくして搬送性を良好とするように制御することができる。
【0052】
なお、以上に説明した実施の形態では、シート搬送ガイドを構成する上側ガイド及び下側ガイドの双方がそれぞれ複数のガイド部材を配列したものとなっているが、上側ガイド又は下側ガイドの片方は連続した一つのガイド部材で構成することもできる。つまり、図7に示すように上側ガイド又は下側ガイドのいずれか一方のみを、複数のガイド部材91〜94が記録シートPの搬送方向に沿って配列されたものとし、他方は、上記複数のガイド部材91〜94と連続して対向する一つのガイド部材95を設けるものでも良い。
【0053】
また、以上に説明した実施の形態は、トナーの付着によって可視像を形成する画像形成装置に関するものであるが、この他にもインクジェット方式の画像形成装置において本発明のシート搬送ガイドを有効に使用することができる。
インクジェット方式によってフルカラー画像を形成するときには、記録シートの広い範囲に多量のインクを転移させる場合が多い。このようなインクが乾燥して記録シートに定着される前に他の記録シート等と接触すると、インクの転移や画像の乱れ等が生じる。このような事態を回避するために、加熱されたローラに接触させて短時間で乾燥した状態とする場合がある。このような加熱ローラと接触することによって水蒸気が発生し、この水蒸気が下流側のガイド部材に結露を生じさせる。ガイド部材に結露が生じると、記録シートに付着して搬送を阻害したり、水性のインクを使用しているときには画像に乱れを生じることもある。
本件発明は、上記のような状況に対しても、ガイド部材に水滴が付着するのを有効に低減し、上記のような障害を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本願発明のシート搬送ガイドを用いることができる画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本願発明の一実施形態であるシート搬送ガイドを示す概略構成図である。
【図3】図2に示すシート搬送ガイドに、一部構成を付加した実施形態を示す概略構成図である。
【図4】本願発明の他の実施形態であるシート搬送ガイドを示す概略構成図である。
【図5】図4に示すシート搬送ガイドにおけるガイド部材の動作を示す概略図である。
【図6】図4に示すシート搬送ガイドに、一部構成を付加した実施形態を示す概略構成図である。
【図7】本願発明の他の実施形態であるシート搬送ガイドを示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0055】
1:画像形成部、 2:シート供給部、 3:定着部、 4:排紙トレイ、
11:感光体ドラム、 12:帯電装置、 13:露光装置、 14:現像装置、15:転写装置、 16:クリーニング装置、
21:シートトレイ、 22:ピックアップローラ、 23:給送ローラ、 24:搬送路、
31:定着装置、 31a:定着ローラ、 31b:加圧ローラ、 32,33:シート搬送ガイド、
41:上側ガイド、 42:下側ガイド、
51,52,53,54,55,56,57,58:ガイド部材、 61:吸水部材、 62:ファン、 63:送風管、 64:ノズル、
71,72,73,74,75,76,77,78:ガイド部材、 81:吸水部材、 82:支持軸、 83:連結部材、 84:ソレノイド、 85:駆動伝達部材、 86:シート検知センサ、 86a:接触子、 87:制御装置、
91,92,93,94:ガイド部材、 95:ガイド部材、 96:吸水部材、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されたシートが搬送される搬送経路で該シートの面と対向し、該シートの搬送方向に沿って配列された複数のガイド部材を備え、
下流側に配置されたガイド部材は、前記搬送経路に面して上流側に配置されたガイド部材の背後に一部が位置し、
前記下流側に配置された前記ガイド部材と前記上流側に配置された前記ガイド部材との間には通気を可能とする間隙が設けられていることを特徴とするシート搬送ガイド。
【請求項2】
前記ガイド部材のそれぞれは、該ガイド部材のシートと対向する面に生じた水滴を搬送方向の上流側に流下させる勾配を有するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送ガイド。
【請求項3】
下流側に配置されたガイド部材の一部と上流側に配置されたガイド部材の背面とが対向する位置には、前記下流側のガイド部材と前記上流側のガイド部材との内の下方にあるものの他方と対向する面に水滴を吸収する吸水部材が取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載のシート搬送ガイド。
【請求項4】
前記ガイド部材の前記シートと対向する面には、水接触角を大きくするための表面処理又は表面層が施されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のシート搬送ガイド。
【請求項5】
前記ガイド部材の前記シートと対向する表面に、前記シートの搬送方向の下流側から空気流を吹き付ける送風装置を有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のシート搬送ガイド。
【請求項6】
前記ガイド部材の少なくとも一部は、前記搬送経路に対する傾斜角を変動させる駆動手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載のシート搬送ガイド。
【請求項7】
前記駆動手段は、前記シートが通過するときに、前記搬送経路に対する傾斜角を小さくし、前記シートが通過しないときに前記搬送経路に対する傾斜角を大きくして前記下流側のガイド部材と前記上流側のガイド部材との間の前記間隙を拡大するように制御されるものであることを特徴とする請求項6に記載のシート搬送ガイド。
【請求項8】
前記駆動手段は、通過するシートの種類、厚さ及び坪量の少なくとも一つの情報に基づいて、前記ガイド部材の角度の変更が制御されるものであることを特徴とする請求項6に記載のシート搬送ガイド。
【請求項9】
温度又は相対湿度の少なくとも一方の情報に基づいて、前記ガイド部材の角度の変更が制御されるものであることを特徴とする請求項6に記載のシート搬送ガイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−303016(P2008−303016A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150515(P2007−150515)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】