説明

シート搬送方法、シート搬送装置及びシート処理装置

【課題】シートを高速に搬送しつつ、シートの摺擦音を低減する。
【解決手段】円弧状に曲がったカーブを含む搬送路に沿ってシートを搬送するために設けられた複数の搬送部のそれぞれでのシート搬送力の差によって前記複数の搬送部の間でシートを弛ませながら搬送することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、スキャナ、ファクシミリ等のシート処理装置、シート処理装置に搭載されるシート搬送装置、及びシート搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタやスキャナ、ファクシミリ等の複合機、複写機等、給紙部に載置したシートを順序通りに給紙、搬送し排紙部に排出するシート搬送装置が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に開示の給送装置は、複数枚のシートを給紙部から順に1枚ずつ分離給送した後、Uターン形状となっているシート搬送路を下から上に搬送し、排紙部に排出する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−120742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の給送装置においては、円弧状に曲がったカーブ搬送路に沿ってシートを搬送する。そして、このようなシートのカーブ搬送時は、ストレート搬送と比べて、搬送中のシートがカーブ搬送路の内壁に接触する、或いは擦れる頻度が高い。即ち、カーブ搬送時には、シートの接触音や擦れた音等(以下、摺擦音という)がストレート搬送時よりも大きくなる。なお、このような摺擦音の問題は、シートの高速搬送化に伴ってより顕著に現れる他、シート搬送動作の静音化の妨げにもなっている。
【0005】
従って、本発明は上述した事情に鑑み、シートを高速に搬送しつつ、シートの摺擦音を低減するシート搬送方法、シート搬送装置及びシート処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るシート搬送方法は、円弧状に曲がったカーブを含む搬送路に沿ってシートを搬送するために設けられた複数の搬送部のそれぞれでのシート搬送力の差によって前記複数の搬送部の間でシートを弛ませながら搬送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シートを高速に搬送しつつ、シートの摺擦音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像読取装置の概略構成図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る画像読取装置の概略構成図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る画像読取装置の概略構成図。
【図4】本発明の各実施形態におけるUターンパス周辺の詳細構成図。
【図5】従来の画像読取装置におけるシートの搬送状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像読取装置の全体構成を概略的に示す側面図である。図1に示すように、シート処理装置を適用した装置例としての画像読取装置50は、シート(原稿)Sを載置する給紙トレイ1とシートSを搬送路に送り出すピックアップローラ2と、ピックアップローラ2によりピックアップされたシートSを装置内に供給する送りローラ3と、ピックアップローラ2により複数枚のシートSが給紙された場合に複数枚のシートSを1枚ずつ分離するための分離ローラ4とを備える。
【0010】
また、画像読取装置50は、シートSの画像を読み取るタイミングを調整するためのレジストセンサ11、シートSを搬送するためのレジストローラ対5を備える。レジストセンサ11は、シートSの到達及び通過を検知するためのセンサである。また、レジストローラ対5は、一定速度で画像を読み取るためにシートを一定速度で搬送するように制御される。
【0011】
さらに、シートの表面を読み取る表面画像読取部34は、シートSの画像情報をコンタクトガラス81を介して読み取るラインイメージセンサ71を備える。シートの裏面を読み取る裏面画像読取部35は、シートSの画像情報をコンタクトガラス82を介して読み取るラインイメージセンサ72を備える。
【0012】
そして、画像読取装置50は、画像読取部の下流側に設けられた読取後搬送ローラ6と、W1の押圧力で読取後搬送ローラ6に押圧される読取後従動ローラ23とを備える。また、画像読取装置50は、搬送路の中央にシートSを保持しつつ搬送するUターン搬送ローラ7と、W2の押圧力でUターン搬送ローラ7に押圧されるUターン従動ローラ33とを備える。
【0013】
21は円弧状に曲がったカーブで形成される第1のシート搬送路であるUターンパス、12はUターンパス21を通過したシートSが排紙される第1の排紙トレイである上排紙トレイ、8はUターンパス21を通過したシートSを上排紙トレイ12に排出するための排紙ローラ、44はW3の押圧力で排紙ローラ8に押圧される排紙従動ローラ44である。なお、上述した読取後搬送ローラ6と、Uターン搬送ローラ7と、排紙ローラ8とは、Uターンパス21で搬送可能なシートの最小サイズに対応した等間隔のローラピッチで配置されている。
【0014】
22は第2のシート搬送路であるストレートパス、13は画像読取装置50に回動可能に取り付けられ、ストレートパス22を通過したシートSが排紙される第2の排紙トレイである下排紙トレイである。
【0015】
14はUターンパス21とストレートパス22との分岐点に設けられたフラッパであり、このフラッパ14は下排紙トレイ13が閉じられているときはUターンパス21にシートSを導くようになっている。また、このフラッパ14は、下排紙トレイ13が開かれるときに、下排紙トレイ13の回動に連動して不図示の連動機構を介して回動し、ストレートパス22側に搬送路を切り替えるようになっている。なお、このフラッパ14による搬送路の切り替えは、手動で個別に行えるようにしてもよい。
【0016】
前述した各種搬送ローラ及びそれらを回転駆動するモータが搬送部を構成する。また、画像読取装置50は、モータの回転数を制御するコントロールユニット30を備える。前述した構成のうち、処理手段としての表面画像読取部34及び裏面画像読取部35を除く搬送系の構成により、シート搬送装置が構成される。
【0017】
次に、画像読取装置50におけるシート搬送動作について説明する。まず、シートSが給紙トレイ1に載置され、画像読取装置50に接続された不図示のコンピュータから画像の読み取り指示が出されると、ピックアップローラ2が降下する。そして、ピックアップローラ2が下降すると、シートS上に接触し、これによりシートSが給紙され、給紙されたシートSは送りローラ3によって搬送路内に送り出される。なお、ピックアップローラ2により複数枚のシートSが給紙されてしまった場合、複数枚のシートSは、送りローラ3と、この送りローラ3と逆方向に回転する分離ローラ4とにより、搬送路20内に1枚だけ送り出されるよう分離される。
【0018】
次に、搬送路20に送り出されたシートSはレジストローラ対5によって表面画像読取部34又は裏面画像読取部35の読取解像度に合わせた読取速度で搬送され、シートSの先端がレジストセンサ11に到達すると、その通過した際の検知信号から読み取りのタイミングを計って表面画像読取部34又は裏面画像読取部35による画像の読み取りを開始する。
【0019】
ここで、シートSが厚紙等の屈曲しにくいものでない通常のシートの場合は、下排紙トレイ13は閉じており、この場合、予めフラッパ14は搬送路をUターンパス21側とするように切り替えられているため、画像読取部を通過したシートSは搬送ローラ対6、23によりUターンパス21側に搬送される。
【0020】
そして、このようにUターンパス21に搬送された後、シートSがUターンパス21に設けられた搬送ローラ対7、33を通過し、固有の速度でシートSを排紙する。
【0021】
一方、厚紙等の屈曲しにくいシートを読み取る場合は、下排紙トレイ13は下方回動して開かれており、このように下排紙トレイ13が回動されると、これに伴いフラッパ14の先端が上に持ち上げられ、これにより搬送ローラ対6、23よりも下流側の搬送路がストレートパス22に切り替えられる。なお、このようにストレートパス22に搬送路が切り替えられた場合、画像読取装置50の消費電力を抑えるために、上部排紙ローラ対8、44を回転させる不図示の排紙ローラ駆動モータを停止させる。
【0022】
そして、このように予めストレートパス22に搬送路が切り替えられた後、既述したようにレジストローラ対5によって読取解像度に合わせた読取速度で搬送されたシートSは表面画像読取部34又は裏面画像読取部35により画像読み取りが行われ、この後、搬送ローラ対6、23によりストレートパス22に搬送され、下排紙トレイ13に排出される。
【0023】
シートSがUターンパス21を搬送される際の詳細な動作について説明する。前述したように、読取後従動ローラ23はW1の押圧力で読取後搬送ローラ6に押圧され、Uターン従動ローラ33はW2の押圧力でUターン搬送ローラ7に押圧され、排紙従動ローラ44はW3の押圧力で排紙ローラ8に押圧されている。
【0024】
ここで、本実施形態では、Uターンパス21に対応する複数のローラ対のそれぞれでシート搬送力の差をつけ、これによって各ローラ対の間でシートを適度に弛ませて(緩ませて)搬送するようになっている。例えば、搬送方向の下流側でのシート搬送力を、搬送方向上流側でのシート搬送力よりも小さくした搬送条件でシートを搬送する。これにより、Uターンパス21のような円弧状に曲がったカーブ内でシートを適度に弛ませて搬送することができ、その結果、シートの摺擦音を効果的に低減することができる。また、このようなシートの摺擦音低減効果は、シートを高速搬送する装置において非常に有効である。例えば、シートを高速搬送する際において、シートの摺擦音を低減できる他、搬送性能に非常に優れたシート搬送装置を有する画像読取装置を低コストで実現することができる。
【0025】
ところで、上述したように「シート搬送力に差をつける」とは、例えば、各ローラ対での搬送条件に違いをつけて搬送方向上流側及び下流側との各ローラ対の搬送能力に差を設けることを意味する。搬送条件としては、各ローラ対でのニップ力、搬送速度等が挙げられる。例えば、Uターンパス21のようなカーブにおいて、その搬送方向にローラ対を3つ以上配置する場合には、搬送方向上流側から下流側に向けて搬送条件に段階的な差を設けることが好ましい。また、このようなシートの搬送条件としては、詳細は後述するが機械的な構成によって各ローラ対での搬送条件に差をつけるようにしてもよいし、プログラム等のソフトウェアによる各ローラ対の搬送制御(ローラの回転数、スピード等)によって各ローラ対での搬送条件に差をつけるようにしてもよい。
【0026】
ここで、例えば、本実施形態では、各ローラ対による各押圧力の大小関係はW1>W2>W3としている。画像読取部を通過した後、シートSの先端(下流側)がUターン搬送ローラ7とUターン従動ローラ33にニップされて搬送され、シートSの後端(上流側)が読取後搬送ローラ6と読取後従動ローラ23にニップされて搬送される。
【0027】
なお、厳密には、ローラとシートSとの間では微少な滑りが発生しており、搬送されてない時間が存在する。この搬送されていない時間は、従動ローラの押圧力が大きいほど短く、押圧力が小さいほど長くなる。
【0028】
本実施形態では、W1>W2としているので、読取後搬送ローラ対6、23の搬送されていない時間よりもUターンローラ対7、33の搬送されていない時間が実質的に長くなる。よって、シートSの先端側の搬送量が後端側の搬送量よりも少なくなるので、図5のようにシートSはローラ同士に不必要に張られることなく、図4のようにカーブ内で適度に弛む(緩む)ことになる。つまり、カーブ搬送されるシートSは、搬送方向におけるローラ対の間で適度に引っ張られながら且つ弛むことにより、ローラ同士で不必要に引っ張られた場合と比べて、Uターンパス21の搬送路壁に擦れる程度・頻度が小さく抑えられる。これにより、Uターンパス21の内側で発生する摺擦音を低減できる。また、シートSがUターンパス21の搬送路壁に擦れることで紙粉等の発生も効果的に低減でき、メンテナンス作業負担を軽減できる。さらに、シートSへの負担が低減されるため、薄紙等の搬送においても有利である。
【0029】
また、Uターンローラ対7、33と排紙ローラ対8、44でも同様のことが言え、W2>W3としているので、シートSはローラ同士に不必要に張られることなく、先端側が弛むことになる。シートSの先端が弛むことで、Uターンパスの内側に摺擦が低減され、シートSに対する搬送負荷を低減できる。
【0030】
ここで、画像形成装置本体とUターン従動ローラ33との間には、図4のように、Uターン従動ローラ33をUターン搬送ローラ7に対して押圧する押圧部としての弾性部材36(例えば、コイルスプリング等)が設けられている。本実施形態では、弾性係数kの異なる弾性部材36を用いることにより、上記のような押圧力の差を生じさせることとする。つまり、W1>W2>W3に対応して、k1>k2>k3の関係が成り立つように、弾性係数の異なる弾性部材を適宜選定している。
【0031】
なお、弾性係数kが同じ弾性部材を用いる場合であっても、弾性部材36の画像形成装置本体側の取付座面の位置に差、即ち、弾性部材36の取付面に高低差を設けるようにしてもよい。これにより、取付座面が搬送ローラ6、7、8側に近接するように設定するほど、スプリングの押圧力が高まるため、弾性係数kに差を設けた場合と同様の効果を得ることができる。また、同じ弾性部材を共通で用いることができるため、部品点数を減らしてコスト削減を図ることができる。搬送ローラ6、7、8と取付座面との距離をLとした場合には、W1>W2>W3に対応して、L1<L2<L3の関係が成り立つ。
【0032】
<第2の実施形態>
次に、図2を用いて、第2の実施形態について説明する。図2に示すように、シート処理装置としての画像読取装置50は、シートSを載置する給紙トレイ1と、シートSを搬送路に送り出すピックアップローラ2と、ピックアップローラ2によりピックアップされたシートSを装置内に供給する送りローラ3と、ピックアップローラ2により複数枚のシートSが給紙された場合に複数枚のシートSを1枚ずつ分離するための分離ローラ4とを備える。
【0033】
また、画像読取装置50は、シートSの画像を読み取るタイミングを調整するためのレジストセンサ11、シートSを搬送するためのレジストローラ対5を備える。
【0034】
さらに、シートの表面を読み取る表面画像読取部34は、シートSの画像情報をコンタクトガラス81を介して読み取るラインイメージセンサ71を備える。シートの裏面を読み取る裏面画像読取部35は、シートSの画像情報をコンタクトガラス82を介して読み取るラインイメージセンサ72を備える。
【0035】
そして、画像読取装置50は、画像読取部の下流に直径ΦD1の読取後搬送ローラ6と、読取後搬送ローラ6に押圧される読取後従動ローラ23とを備える。また、搬送路の中央にシートSを保持しつつ搬送する直径ΦD2のUターン搬送ローラ7と、Uターン搬送ローラ7に押圧されるUターン従動ローラ33とを備える。
【0036】
21は第1のシート搬送路であるUターンパス、12はUターンパス21を通過したシートSが排紙される第1の排紙トレイである上排紙トレイ、8はUターンパス21を通過したシートSを上排紙トレイ12に排出するための直径ΦD3の排紙ローラ、44は排紙ローラ8に押圧される排紙従動ローラである。読取後搬送ローラ6、Uターン搬送ローラ23、排紙ローラ8は図示しない駆動源によって駆動されているローラである。
【0037】
22は第2のシート搬送路であるストレートパス、13は画像読取装置50に回動可能に取り付けられ、ストレートパス22を通過したシートSが排紙される第2の排紙トレイである下排紙トレイである。
【0038】
14はUターンパス21とストレートパス22との分岐点に設けられたフラッパであり、このフラッパ14は下排紙トレイ13が閉じられているときはUターンパス21にシートSを導くようになっている。また、このフラッパ14は、下排紙トレイ13が開かれるときに、下排紙トレイ13の回動に連動して不図示の連動機構を介して回動し、ストレートパス22側に搬送路を切り替えるようになっている。
【0039】
前述した各種搬送ローラ及びそれらを回転駆動するモータ(駆動手段)が搬送部を構成する。また、画像読取装置50は、モータの回転数を制御するコントロールユニット30を備える。前述した構成のうち、処理手段としての表面画像読取部34及び裏面画像読取部35を除く搬送系の構成により、シート搬送装置が構成される。
【0040】
次に、本発明の第2の実施形態に係る画像読取装置50におけるシート搬送動作について説明する。まず、シートSが給紙トレイ1に載置され、画像読取装置50に接続された不図示のコンピュータから画像の読み取り指示が出されると、ピックアップローラ2が降下する。そして、ピックアップローラ2が下降すると、シートS上に接触し、これによりシートSが給紙され、給紙されたシートSは送りローラ3によって搬送路内に送り出される。なお、ピックアップローラ2により複数枚のシートSが給紙されてしまった場合、複数枚のシートSは、送りローラ3と、この送りローラ3と逆方向に回転する分離ローラ4とにより、搬送路20内に1枚だけ送り出されるよう分離される。
【0041】
次に、搬送路20に送り出されたシートSはレジストローラ対5によって表面画像読取部34又は裏面画像読取部35の読取解像度に合わせた読取速度で搬送され、シートSがレジストセンサ11を通過すると、その通過した際の検知信号から読み取りのタイミングを計って表面画像読取部34又は裏面画像読取部35による画像の読み取りを開始する。
【0042】
ここで、シートSが厚紙等の屈曲しにくいものでない通常のシートの場合は、下排紙トレイ13は閉じており、この場合、予めフラッパ14は搬送路をUターンパス21側とするように切り替えられているため、画像読取部を通過したシートSは搬送ローラ対6によりUターンパス21側に搬送される。
【0043】
そして、このようにUターンパス21に搬送された後、シートSがUターンパス21に設けられた搬送ローラ対7を通過し、固有の速度でシートSを排紙する。
【0044】
一方、厚紙等の屈曲しにくいシートを読み取る場合は、下排紙トレイ13は下方回動して開かれており、このように下排紙トレイ13が回動されると、これに伴いフラッパ14の先端が上に持ち上げられ、これにより搬送ローラ対6よりも下流側の搬送路がストレートパス22に切り替えられる。なお、このようにストレートパス22に搬送路が切り替えられた場合、画像読取装置50の消費電力を抑えるために、上部排紙ローラ対8を回転させる不図示の排紙ローラ駆動モータを停止させる。
【0045】
そして、このように予めストレートパス22に搬送路が切り替えられた後、既述したようにレジストローラ対5によって読取解像度に合わせた読取速度で搬送されたシートSは表面画像読取部34又は裏面画像読取部35により画像読み取りが行われ、この後、搬送ローラ対6によりストレートパス22に搬送され、下排紙トレイ13に排出される。
【0046】
ここで、シートSがUターンパス21を搬送される際の詳細な動作について説明する。前述したようにシートSは画像読取部を通過した後、直径ΦD1の読取後搬送ローラ6、直径ΦD2のUターン搬送ローラ7、直径ΦD3の排紙ローラによって搬送される。
【0047】
ここで、各ローラの直径の関係はΦD1>ΦD2>ΦD3となっている。画像読取部を通過した後、シートSの先端(下流側)がUターン搬送ローラ7とUターン従動ローラ33にニップされて搬送され、シートSの後端(上流側)が読取後搬送ローラ6と読取後従動ローラ23にニップされ、搬送される。各ローラの回転速度が同様であれば、ローラ直径が大きいほどシートSの搬送量は多くなるので、読取後ローラ対の搬送量はUターンローラ対の搬送量よりも多くなる。図5のようにシートSはローラ同士に張られることなく、図4のように弛むことになる。
【0048】
Uターンローラ対と排紙ローラ対でも同様のことが言え、ΦD2>ΦD3になっているので、シートSはローラ同士に張られることなく、弛むことになる。シートSの先端が弛むことで、Uターンパスの内側に摺擦することがないので、搬送負荷が発生しない。
【0049】
<第3の実施形態>
次に、図3を用いて、第3の実施形態について説明する。図3に示すように、シート処理装置としての画像読取装置50は、シートSを載置する給紙トレイ1とシートSを搬送路に送り出すピックアップローラ2と、ピックアップローラ2によりピックアップされたシートSを装置内に供給する送りローラ3と、ピックアップローラ2により複数枚のシートSが給紙された場合に複数枚のシートSを1枚ずつ分離するための分離ローラ4とを備える。
【0050】
また、画像読取装置50は、シートSの画像を読み取るタイミングを調整するためのレジストセンサ11、シートSを搬送するために配設されるレジストローラ対5を備える。
【0051】
さらに、シートの表面を読み取る表面画像読取部34は、シートSの画像情報をコンタクトガラス81を介して読み取るラインイメージセンサ71を備える。シートの裏面を読み取る裏面画像読取部35は、シートSの画像情報をコンタクトガラス82を介して読み取るラインイメージセンサ72を備える。
【0052】
そして、画像読取装置50は、画像読取部の下流に速度V1で回転する読取後搬送ローラ6と、読取後搬送ローラ6に押圧される読取後従動ローラ23とを備える。また、画像読取装置50は、搬送路の中央にシートSを保持しつつ搬送するための速度V2で回転するUターン搬送ローラ7と、Uターン搬送ローラ7に押圧されるUターン従動ローラ33とを備える。
【0053】
21は第1のシート搬送路であるUターンパス、12はUターンパス21を通過したシートSが排紙される第1の排紙トレイである上排紙トレイ、8はUターンパス21を通過したシートSを上排紙トレイ12に排出するための速度V3で回転する排紙ローラ、44は排紙ローラ8に押圧される排紙従動ローラである。
【0054】
22は第2のシート搬送路であるストレートパス、13は画像読取装置50に回動可能に取り付けられ、ストレートパス22を通過したシートSが排紙される第2の排紙トレイである下排紙トレイである。
【0055】
14はUターンパス21とストレートパス22との分岐点に設けられたフラッパであり、このフラッパ14は下排紙トレイ13が閉じられているときはUターンパス21にシートSを導くようになっている。また、このフラッパ14は、下排紙トレイ13が開かれるときに、下排紙トレイ13の回動に連動して不図示の連動機構を介して回動し、ストレートパス22側に搬送路を切り替えるようになっている。
【0056】
前述した各種搬送ローラ及びそれらを回転駆動するモータが搬送部を構成する。また、画像読取装置50は、モータの回転数を制御するコントロールユニット30を備える。前述した構成のうち、処理手段としての表面画像読取部34及び裏面画像読取部35を除く搬送系の構成により、シート搬送装置が構成される。コントロールユニット30は、複数の搬送部のそれぞれでシート搬送力の差(すなわち、ニップ力の差)を生じさせるべく、後述するように、モータの回転数を制御する。
【0057】
次に、本発明の第3の実施形態に係る画像読取装置50におけるシート搬送動作について説明する。まず、シートSが給紙トレイ1に載置され、画像読取装置50に接続された不図示のコンピュータから画像の読み取り指示が出されると、ピックアップローラ2が降下する。そして、ピックアップローラ2が下降すると、シートS上に接触し、これによりシートSが給紙され、給紙されたシートSは送りローラ3によって搬送路内に送り出される。なお、ピックアップローラ2により複数枚のシートSが給紙されてしまった場合、複数枚のシートSは、送りローラ3と、この送りローラ3と逆方向に回転する分離ローラ4とにより、搬送路20内に1枚だけ送り出されるよう分離される。
【0058】
次に、搬送路20に送り出されたシートSはレジストローラ対5によって表面画像読取部34又は裏面画像読取部35の読取解像度に合わせた読取速度で搬送され、シートSがレジストセンサ11を通過すると、その通過した際の検知信号から読み取りのタイミングを計って表面画像読取部34又は裏面画像読取部35による画像の読み取りを開始する。
【0059】
ここで、シートSが厚紙等の屈曲しにくいものでない通常のシートの場合は、下排紙トレイ13は閉じており、この場合、予めフラッパ14は搬送路をUターンパス21側とするように切り替えられているため、画像読取部を通過したシートSは搬送ローラ対6によりUターンパス21側に搬送される。
【0060】
そして、このようにUターンパス21に搬送された後、シートSがUターンパス21に設けられた搬送ローラ対7を通過し、固有の速度でシートSを排紙する。
【0061】
一方、厚紙等の屈曲しにくいシートを読み取る場合は、下排紙トレイ13は下方回動して開かれており、このように下排紙トレイ13が回動されると、これに伴いフラッパ14の先端が上に持ち上げられ、これにより搬送ローラ対6よりも下流側の搬送路がストレートパス22に切り替えられる。なお、このようにストレートパス22に搬送路が切り替えられた場合、画像読取装置50の消費電力を抑えるために、上部排紙ローラ対8を回転させる不図示の排紙ローラ駆動モータを停止させる。
【0062】
そして、このように予めストレートパス22に搬送路が切り替えられた後、既述したようにレジストローラ対5によって読取解像度に合わせた読取速度で搬送されたシートSは表面画像読取部34又は裏面画像読取部35により画像読み取りが行われ、この後、搬送ローラ対6によりストレートパス22に搬送され、下排紙トレイ13に排出される。
【0063】
ここで、シートSがUターンパス21を搬送される際の詳細な動作について説明する。前述したようにシートSは画像読取部を通過した後、速度V1で回転する読取後搬送ローラ6、速度V2で回転するUターン搬送ローラ7、速度V3で回転する排紙ローラによって搬送される。
【0064】
ここで、各ローラの速度の関係はV1>V2>V3となっている。なお、各ローラは、一定の速度で回転駆動される。画像読取部を通過した後、シートSの先端(下流側)がUターン搬送ローラ7とUターン従動ローラ33にニップされて搬送され、シートSの後端(上流側)が読取後搬送ローラ6と読取後従動ローラ23にニップされて、搬送される。各ローラの直径が同様であれば、回転速度が大きいほどシートSの搬送量は多くなるので、読取後ローラ対の搬送量はUターンローラ対の搬送量よりも多くなる。図5のようにシートSはローラ同士に張られることなく、図4のように弛むことになる。
【0065】
Uターンローラ対と排紙ローラ対でも同様のことが言え、V2>V3になっているので、シートSはローラ同士に張られることなく、先端が弛むことになる。シートSの先端が弛むことで、Uターンパスの内側に摺擦することがないので、搬送負荷が発生しない。
【0066】
<他の実施形態>
なお、上記実施形態は、本発明を実現するための一例であり、上記実施形態で説明した装置の構成や各種条件を適宜修正又は変更されたものであっても、本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、上記実施形態では、シート処理装置として画像読取装置(スキャナ)を一例として挙げたが、これに限定されるものではなく、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ等のシートを搬送して所定の処理を行う装置であれば、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
6・・・読取後搬送ローラ
7・・・Uターン搬送ローラ
8・・・排紙ローラ
13・・下排紙トレイ
14・・フラッパー
21・・Uターンパス
23・・読取後従動ローラ
33・・Uターン従動ローラ
44・・排紙従動ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状に曲がったカーブを含む搬送路に沿ってシートを搬送するために設けられた複数の搬送部のそれぞれでのシート搬送力の差によって前記複数の搬送部の間でシートを弛ませながら搬送することを特徴とするシート搬送方法。
【請求項2】
前記搬送路の下流側に設けられた搬送部でのシート搬送力を、前記搬送路の上流側に設けられた搬送部でのシート搬送力よりも小さくした条件でシートを搬送することを特徴とする請求項1に記載のシート搬送方法。
【請求項3】
前記複数の搬送部の間に対応する前記搬送路のカーブ内でシートを弛ませて搬送することを特徴とする請求項1に記載のシート搬送方法。
【請求項4】
前記複数の搬送部として設けられた複数のローラ対によってシートをニップして搬送すると共に、前記複数のローラ対による各ニップ力の差によって前記シート搬送力の差を生じさせることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のシート搬送方法。
【請求項5】
前記ローラ対は、駆動手段によって回転駆動する搬送ローラと、前記搬送ローラの回転に伴って従動する従動ローラとからなり、
前記複数のローラ対による各ニップ力の差を、前記従動ローラを前記搬送ローラに押圧する押圧部の押圧力の差によって生じさせることを特徴とする請求項4に記載のシート搬送方法。
【請求項6】
前記ローラ対は、駆動手段によって回転駆動する搬送ローラと、前記搬送ローラの回転に伴って従動する従動ローラとからなり、
前記複数のローラ対による各ニップ力の差を、前記搬送ローラ又は前記従動ローラの径の差によって生じさせることを特徴とする請求項4又は5に記載のシート搬送方法。
【請求項7】
前記ローラ対は、駆動手段によって回転駆動する搬送ローラと、前記搬送ローラの回転に伴って従動する従動ローラとからなり、
前記複数のローラ対によるシート搬送力の差を、前記搬送ローラの回転速度の差によって生じさせることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のシート搬送方法。
【請求項8】
前記駆動手段によって前記搬送ローラを一定の速度で回転駆動させながらシートを搬送することを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項に記載のシート搬送方法。
【請求項9】
円弧状に曲がったカーブを含む搬送路と、
前記搬送路に沿って設けられてシートを搬送する複数の搬送部とを備え、
前記複数の搬送部のそれぞれでシート搬送力の差を生じさせて前記複数の搬送部の間でシートを弛ませながら搬送することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項10】
円弧状に曲がったカーブを含む搬送路と、
前記搬送路に沿って設けられてシートを搬送する複数の搬送部と、
前記搬送路のカーブより上流側又は下流側に設けられてシートに所定の処理を施す処理手段とを備え、
前記複数の搬送部のそれぞれでシート搬送力の差を生じさせて前記複数の搬送部の間でシートを弛ませながら搬送することを特徴とするシート処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−116608(P2012−116608A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267440(P2010−267440)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】