説明

シート搬送装置、及びこのシート搬送装置を備えた画像記録装置

【課題】所定サイズ以下のシートがトレイに載置された場合に、シートの重送を確実に阻止することが可能なシート搬送装置を提供すること。
【解決手段】給紙トレイ20には、記録用紙を位置決めするサイドガイド80,81が移動可能に設けられている。給紙トレイ20の上面に摩擦パッド100が設けられている。サイドガイド81には、給紙トレイ20の中央側へ突出するプレート136が設けられており、このプレート136の上面に、摩擦パッド104よりも摩擦係数の大きい摩擦パッド131,132が設けられている。サイドガイド81がハガキサイズの位置に移動されると、摩擦パッド104の上に摩擦パッド131が配置され、写真用L判サイズの位置に移動されると、摩擦パッド104の上に摩擦パッド132が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイに載置されたシートを所定の位置に位置決めする位置決め部材を備えたシート搬送装置、及びこのシート搬送装置を備えた画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタやレーザプリンタなどの画像記録装置には、シート搬送装置が備えられている。シート搬送装置は、トレイに積層状に載置された複数枚のシート束から一枚ずつシートを分離して所定方向へ搬送する。シートの分離・搬送は、トレイに載置された最上位置のシートにローラなどの回転体を接触させ、回転体を駆動させた時に接触面に生じる摩擦力によって行われる(特許文献1及び特許文献2参照)。このような方式のシート搬送装置においては、シートを確実に分離させるために、回転体とシートとの間に作用する摩擦力がシート間に作用する摩擦力よりも大きくなるように回転体表面の摩擦係数が設定されている。
【0003】
一方、トレイにおけるシートの積載量(積載枚数)が少なくなると、数枚のシートが重なった状態で搬送される、所謂重送が生じる場合がある。そのため、トレイの載置面には、トレイとシートとの間に作用する摩擦力がシート間に作用する摩擦力よりも大きくなるように、所定の摩擦係数を有する摩擦部材が配置されている。これにより、シートの重送が軽減される。
【0004】
【特許文献1】実開平5−42246号公報
【特許文献2】特開平5−69971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、画像記録装置において、インク吸収性を高めるために表面にアルミナなどのコーティング材がコーティングされた光沢紙が多用されるようになってきた。このような光沢紙は、所謂普通紙(マット紙)やインクジェット紙に比べて表面の摩擦係数が大きい。そのため、光沢紙が積層状態でトレイにセットされた場合は、上記摩擦部材とシートとの間に作用する摩擦力よりもシート間に作用する摩擦力の方が大きくなる場合がある。特に、一方の面が光沢紙で形成され、他方の面が光沢紙以外の普通紙或いはインクジェット紙で形成された両面印刷用のシート(例えば光沢ハガキ等)が、光沢面を上にしてトレイに載置された場合に、上記現象が生じやすい。この場合、シートの搬送時にシートが上手く分離せず、シートの重送が生じやすくなる。一方、上記摩擦部材として従来に比して、より摩擦係数の大きいものを用いると、搬送時にシートにかかる負荷が増大するため、例えば、コシ(剛性)の弱い普通紙などのシートを搬送したときに、シートの表面に皺や擦り傷などが付くという問題が生じ得る。
【0006】
ところで、市場では、例えば、A3サイズ、A4サイズ、B5サイズ、ハガキサイズ、写真用L判サイズ、名刺サイズなどの各サイズの光沢紙が販売されている。このように各種サイズの光沢紙が販売されている中で、とりわけ、写真印刷用としてハガキサイズ以下の光沢紙の需要が極めて多い。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所定サイズ以下のシートが載置された場合にトレイとシートとの間に作用する摩擦力を増大させて、所定サイズ以下で多用される光沢紙などのように摩擦係数の大きいシートがトレイに載置された場合でもシートの重送を確実に防止することが可能なシート搬送装置、及びこのシート搬送装置を備えた画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明は、トレイと、位置決め部材と、回転体と、第1摩擦部材と、第2摩擦部材とを具備するシート搬送装置として構成されている。上記トレイに各種サイズのシートが載置される。位置決め部材は、上記トレイに設けられており、所定サイズより大きいシートを位置決めする第1位置と上記所定サイズ以下のシートを位置決めする第2位置とに移動可能である。上記回転体は、上記トレイに対して接離する方向へ移動可能に構成されている。この回転体が上記トレイ上のシートに接触することにより、該シートがトレイから搬送される。第1摩擦部材は、所定の摩擦係数を有する。この第1摩擦部材は、上記位置決め部材が上記第1位置に移動されたときに、上記回転体の位置に対応する上記トレイ上の所定位置に配置される。第2摩擦部材は、上記第1摩擦部材の上記所定の摩擦係数よりも大きい摩擦係数を有する。この第2摩擦部材は、上記位置決め部材が上記第2位置に移動されたときに上記所定位置に配置される。
【0009】
本発明のシート搬送装置においては、位置決め部材が、第1位置と第2位置との間を移動可能に構成されている。第1位置が所定サイズより大きいシートを位置決めする位置として設定されており、第2位置が上記所定サイズ以下のシートを位置決めする位置として設定されている。そして、位置決め部材の位置に応じて第1摩擦部材若しくは第2摩擦部材がトレイ上に配置される。つまり、上記位置決め部材が上記第1位置に移動されたときに、第1摩擦部材が上記トレイ上の所定位置に配置される。一方、上記位置決め部材が上記第2位置に移動されたときに、第1摩擦部材よりも摩擦係数が大きい第2摩擦部材が上記トレイ上の所定位置に配置される。
【0010】
これにより、例えば、上記所定サイズをハガキサイズとした場合は、ハガキサイズ以下のシートとして多用される光沢紙が載置されたときに、シートと第2摩擦部材とが接触する。したがって、トレイとシートとの間に作用する摩擦力が増す。そのため、当該摩擦力がシート間に作用する摩擦力を下回ることがなくなる。その結果、シートの重送を確実に阻止することができる。
【0011】
(2) 上記第1摩擦部材は、上記トレイ上の上記所定位置に固定されている。上記第2摩擦部材は、上記位置決め部材に設けられている。上記位置決め部材が上記第1位置に移動されたときに上記第1摩擦部材が露出され、そして、上記位置決め部材が上記第2位置に移動されたときに上記第2摩擦部材が上記第1摩擦部材を覆う位置に配置される。
【0012】
これにより、位置決め部材をシートのサイズに合わせるという簡単な作業を行うことで、第2摩擦部材を容易にトレイ上の所定位置に配置させることができる。
【0013】
(3) 上記位置決め部材は、上記トレイに対し平行に構成され、上記トレイに載置されるシートの端部を下面から支持する平行プレートを有する。この場合、上記第2摩擦部材は、上記平行プレートの上面に設けられていることが好ましい。
【0014】
(4) 上記第2摩擦部材は、上記所定サイズ以下の少なくとも2つの規定サイズに対応する少なくとも2つの摩擦部材で構成されていることが好ましい。この場合、上記位置決め部材が上記各規定サイズのいずれかに対応する位置に移動されたときに、当該規定サイズに対応する摩擦部材が上記所定位置に配置される。
【0015】
これにより、シートのサイズに応じた摩擦係数を有する摩擦部材をトレイ上の所定位置に配置させることができる。
【0016】
(5) 上記少なくとも2つの規定サイズは、写真印刷用として多用される光沢紙のサイズ、例えば、ハガキサイズ若しくはこれに相当するサイズ、及び写真用L判サイズ若しくはこれに相当するサイズであることが好ましい。
【0017】
(6) 本シート搬送装置は、上記回転体によって搬送されたシートの表裏面を反転させて上記画像記録装置の画像記録位置へ案内する搬送路を更に備える。この場合、ハガキサイズ若しくはこれに相当するサイズに対応する摩擦部材は、写真用L判サイズ若しくはこれに相当するサイズに対応する摩擦部材の摩擦係数よりも大きい摩擦係数を有することが好ましい。
【0018】
このような搬送路を有するシート搬送装置においては、写真用L判サイズの光沢紙に画像記録を行う場合は、光沢面がトレイ上面に対向するように光沢紙をトレイに載置する。光沢面は他の面に比べて摩擦係数が大きい。一方、光沢面を有するハガキに画像記録を行う場合は、光沢面がトレイ上面に対向するようにハガキを載置する。また、ハガキの宛名面に画像記録を行う場合は、宛名面がトレイ上面に対向するようにハガキを載置する。一般に、宛名面は光沢加工がなされていない。したがって、ハガキを良好に分離させるために、光沢面をトレイ上面に対向させる場合に比べて大きい摩擦力を生じさせる必要がある。本発明は、ハガキサイズ若しくはこれに相当するサイズに対応する摩擦部材は、写真用L判サイズ若しくはこれに相当するサイズに対応する摩擦部材の摩擦係数よりも大きい摩擦係数を有するため、仮にハガキの宛名面をトレイ上面に対向させた場合でも、重送を確実に阻止することができる。
【0019】
(7) 写真印刷用としてハガキサイズ以下の光沢紙が多用されることを考慮して、上記所定サイズは、ハガキ若しくはこれに相当するシートのサイズであることが好ましい。
【0020】
(8) 上記位置決め部材としては、上記トレイ上をシート搬送方向と略直交する幅方向に移動可能に構成され、上記トレイに載置されたシートにおける上記幅方向の端部に当接されるサイドガイドが考えられる。
【0021】
(9) また、上記位置決め部材が、上記トレイ上をシート搬送方向に移動可能に構成され、上記トレイに載置されたシートにおけるシート搬送方向の上流側の端部に当接されるリヤガイドであってもよい。
【0022】
(10) 本発明は、上述のシート搬送装置を備え、このシート搬送装置によって搬送されたシートに対して画像を記録する画像記録装置として捉えることもできる。このような画像記録装置であっても、上述した効果が奏される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、所定サイズ以下のシートが載置された場合にトレイとシート間に作用する摩擦力が増すため、所定サイズ以下で多用される光沢紙などのように摩擦係数の大きいシートがトレイに載置された場合でもシートの重送を確実に阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、適宜図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明する。なお、以下に述べる各実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0025】
[第1実施形態]
まず、本発明のシート搬送装置の一例である給送装置16(図2参照)が適用される複合機10(本発明の画像記録装置の一例)の構成及び動作について説明する。
【0026】
〈複合機10の概略構成〉
図1は、複合機10の外観斜視図である。図2は、複合機10のプリンタ部11の内部構造を示す縦断面図である。図2では、給紙トレイ20(本発明におけるトレイの一例)の一部及び排紙トレイ21が省略されている。
【0027】
図1に示されるように、複合機10は、プリンタ部11とスキャナ部12とを一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能等を有する。なお、本発明にかかる画像記録装置は、複数の機能を有する複合機10として実施されるほか、プリント機能のみを有するプリンタとして実施されてもよい。本第1実施形態においては、プリンタ部11が画像記録にインクを使用するインクジェットプリンタである形態について説明する。なお、プリンタ部11は、画像記録にトナーを使用するレーザプリンタであってもよい。
【0028】
図1に示されるように、複合機10は、高さより横幅及び奥行きが大きい幅広薄型の概ね直方体の外形を呈する。複合機10の上部がスキャナ部12である。スキャナ部12は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。複合機10の天板として原稿カバー8が開閉自在に設けられている。図1には示されていないが、原稿カバー8の下側の本体内部に、プラテンガラス及びイメージセンサが設けられている。プラテンガラスに載置された原稿の画像は、イメージセンサにより読み取られる。なお、本発明を実現するうえで、スキャナ部12は任意の構成であるため、ここでは詳細な説明が省略される。
【0029】
複合機10の下部がプリンタ部11である。プリンタ部11は、スキャナ部12で読み取られた画像データや外部から入力された印刷データに基づいて、記録用紙に画像や文書を記録する。プリンタ部11は、給紙カセット70が着脱可能に構成されている。給紙カセット70に収容された記録用紙は、給送装置16(図2参照)によってプリンタ部11の内部へ給送される。プリンタ部11には、記録部24(図2参照)が設けられている。記録部24によって、給紙カセット70から搬送された記録用紙に所望の画像が記録される。
【0030】
複合機10の正面上部には、操作パネル14が設けられている。操作パネル14は、各種情報を表示する液晶ディスプレイや、ユーザが情報を入力する入力キー等から構成される。複合機10は、この操作パネル14からの操作入力、又は外部情報装置から送信される情報に基づいて動作する。なお、プリンタ部11やスキャナ部12は、操作パネル14から入力された指示信号や、外部装置からプリンタドライバ又はスキャナドライバを用いて送信された指示信号に基づいても動作する。
【0031】
〈プリンタ部11〉
以下、プリンタ部11の構成について詳細に説明する。
【0032】
図2に示されるように、プリンタ部11は、給送装置16と、アーム26と、動力伝達機構27とを備えている。給送装置16は、給紙カセット70と、給紙ローラ25(本発明における回転体の一例)と、第1搬送路22(本発明における搬送路の一例)とからなる。
【0033】
給紙カセット70は、開口13(図1参照)を通じて装置本体35に対して挿抜可能に構成されている。すなわち、給紙カセット70は、装置本体35に対して搬送方向90へ挿し込み可能、且つ装置本体35から引出方向92へ引き出し可能である。給紙カセット70は、給紙トレイ20及び排紙トレイ21を有する(図3参照)。給紙トレイ20には、画像記録に使用される複数の記録用紙が層状に載置される。排紙トレイ21には、画像が記録された記録用紙が排出される。搬送方向90は、給紙トレイ20に載置された記録用紙が第1搬送路22(図2参照)へ供給される方向である。引出方向92は、装置本体35から給紙トレイ20が引き出される方向である。
【0034】
〈給紙ローラ25〉
給紙ローラ25は、給紙トレイ20の上側に配置されている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20上の記録用紙を第1搬送路22へ供給するものである。給紙トレイ20の上方にはアーム26が設けられている。給紙ローラ25は、このアーム26の先端側に回転可能に設けられている。給紙ローラ25は、不図示のモータを駆動源として動力伝達機構27を介して駆動伝達されて回転する。動力伝達機構27は複数のギヤを有し、これらが直列に噛合されることにより構成されている。
【0035】
〈アーム26〉
アーム26は、基軸28に支持されている。アーム26は、その基端部が基軸28に支持されている。これにより、アーム26は、基軸28を中心として給紙トレイ20に対して接離する方向へ回動可能である。これにより、給紙ローラ25は、給紙トレイ20に対して接離する方向へ移動可能に構成されている。アーム26は、アーム26及び給紙ローラ25の重量又はバネ等に付勢されて下側へ回動付勢されている。
【0036】
アーム26が下側へ回動付勢されることにより、給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に圧接される。この状態で給紙ローラ25が回転されると、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間に発生する摩擦力により、給紙トレイ20における最上位置の記録用紙が傾斜板32へ向けて送り出される。記録用紙の先端が傾斜板32に当接すると、傾斜板32によって記録用紙の搬送方向が上方へ変えられる。これにより、記録用紙が上方の第1搬送路22へ一枚ずつ供給される。
【0037】
傾斜板32の内側面に分離部材34(図3及び図4等参照)が設けられている。分離部材34は、内側面において傾斜板32の長手方向の中央に配設されている。分離部材34は、内側面から突出された複数の歯が傾斜板32の傾斜方向に並んで配設されてなる。仮に、複数枚の記録用紙が重ねられた状態で給送(重送)されると、記録用紙の束の先端が傾斜板32の内側面に当接したときに、記録用紙の束の先端が分離部材34によって捌かれる。その際に、分離部材34の歯が記録用紙と記録用紙との間に入り込み、記録用紙間に隙間ができる。これにより、記録用紙が分離されやすくなり、給送の際に給紙ローラ25から記録用紙に付与された力と相俟って、最上層の記録用紙のみが下層の記録用紙から確実に分離される。なお、本実施形態では、分離部材34は必須の構成ではなく、給紙ローラ25による記録用紙の分離を補助するために設けられている。
【0038】
なお、給紙ローラ25は、給紙トレイ20に対して接離する方向へ移動可能であれば、必ずしもアーム26に支持される必要はない。給紙ローラ25は、例えば給紙トレイ20に対して上下動可能なフレームに支持されていてもよい。
【0039】
〈第1搬送路22〉
傾斜板32の上方には、第1搬送路22が設けられている。第1搬送路22は、傾斜板32から上方へ向かった後、正面36側(図2における右側)へ横向きU字形状に曲がっている。第1搬送路22は、複合機10の背面側(図2における左側)から正面36側へと延び、記録部24を経て排紙トレイ21(図3参照)へ通じている。つまり、排紙トレイ21は、第1搬送路22における記録用紙の搬送方向下流側に配置されている。給紙トレイ20から供給された記録用紙は、第1搬送路22に沿って搬送される。記録用紙は、第1搬送路22に沿って下方から上方へUターンするように案内されて記録部24に至り、記録部24によって画像が記録された後、排紙トレイ21に排出される。
【0040】
第1搬送路22は、記録部24等が配設されている箇所以外では、外側ガイド面と内側ガイド面とによって区画形成されている。例えば、複合機10の背面側における第1搬送路22の湾曲部分は、外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とが所定の間隔で対向配置されることにより構成されている。この場合、外側ガイド部材18が湾曲外側のガイド面を構成し、内側ガイド部材19が湾曲内側のガイド面を構成する。
【0041】
〈記録部24〉
図2に示されるように、記録部24は、第1搬送路22が複合機10の背面側から正面36側へ延びる途中に配置されている。記録部24は、第1搬送路22における記録用紙の搬送過程において記録用紙に画像を記録するものである。記録部24は、キャリッジ40、インクジェット記録ヘッド41、及びプラテン42を備えている。インクジェット記録ヘッド41は、キャリッジ40に搭載されている。キャリッジ40は、ガイドレール43,44に沿って記録用紙の幅方向(図2における紙面垂直方向)に往復移動される。図2には示されていないが、ガイドレール44には、モータを駆動源とするベルト駆動機構が設けられている。このようなベルト駆動機構は周知であるが、例えば、ガイドレール44の幅方向両端付近に駆動プーリ及び従動プーリがそれぞれ設けられ、この駆動プーリ及び従動プーリに無端環状の駆動ベルトが巻架されてなる。ベルト駆動機構の駆動ベルトにキャリッジ40が連結されることにより、モータの駆動がベルト駆動機構を介してキャリッジ40へ伝達され、キャリッジ40が往復移動する。
【0042】
第1搬送路22には、インクジェット記録ヘッド41と対向するプラテン42が設けられている。プラテン42は、第1搬送路22を搬送される記録用紙を下から支持する。プラテン42により、記録用紙がインクジェット記録ヘッド41と所定のヘッドギャップを有して支持される。複合機10の内部には、インクジェット記録ヘッド41と独立してインクカートリッジ68が配置されている(図1参照)。インクカートリッジ68に収容された各色インクは、インクチューブを通じてインクジェット記録ヘッド41へ供給される。キャリッジ40が往復移動される間に、インクジェット記録ヘッド41から各色インクが微小なインク滴としてプラテン42へ向けて選択的に吐出される。プラテン42上を搬送される記録用紙は、その搬送過程において記録部24によって画像が記録される。
【0043】
〈第2搬送路23〉
図2に示されるように、第2搬送路23は、第1搬送路22及び給紙トレイ20に連結されている。詳細には、第2搬送路23の一端側が、第1搬送路22における記録部24の下流側(下流側部位45)と接続されている。また、第2搬送路23の他端側が、給紙トレイ20における給紙ローラ25より上流側(図2における右側)と接続されている。給紙トレイ20は、給紙ローラ25よりも下流側(図2における左側)が、傾斜板32を介して第1搬送路22と接続されている。このため、第2搬送路23は、給紙トレイ20を介して、第1搬送路22における記録部24の上流側(上流側部位46)と接続されている。第2搬送路23は、一方の面に画像が記録されてスイッチバック搬送される記録用紙65を給紙トレイ20上へ導くものである。すなわち、第1搬送路22を搬送された記録用紙65がスイッチバック搬送されるものである。
【0044】
第2搬送路23は、所定の間隔で対向配置された一対の上側ガイド部材47と下側ガイド部材48とによって区画形成されている。上側ガイド部材47及び下側ガイド部材48は、第1搬送路22の下流側部位45から給紙ローラ25の上流側へ向かって、斜め下方へ延出されている。
【0045】
〈搬送部15〉
搬送部15は、第1搬送路22及び第2搬送路23に沿って記録用紙を搬送するものである。この搬送部15は、搬送ローラ50、排紙ローラ51、及び経路切換部72を有して構成されている。
【0046】
図2に示されるように、第1搬送路22における記録部24よりも上流側に、搬送ローラ50が設けられている。搬送ローラ50の下側には、搬送ローラ50に圧接するピンチローラ(不図示)が設けられている。搬送ローラ50は、第1搬送路22の幅方向(図2における紙面垂直方向)に渡って設けられている。ピンチローラは、第1搬送路22の幅方向に所定間隔で複数が設けられている。搬送ローラ50とピンチローラによって、第1搬送路22を搬送される記録用紙が挟持されてプラテン42上へ搬送される。
【0047】
第1搬送路22における記録部24よりも下流側に、排紙ローラ51及び拍車52が設けられている。拍車52は、排紙ローラ51の上側に設けられており、排紙ローラ51に圧接されている。排紙ローラ51は、第1搬送路22の幅方向に渡って設けられている。拍車52は、第1搬送路22の幅方向に所定間隔で複数が設けられている。画像が記録された記録用紙は、排紙ローラ51及び拍車52に挟持されて、第1搬送路22の下流側部位45へ搬送される。
【0048】
搬送ローラ50及び排紙ローラ51は、不図示のモータを駆動源として駆動される。搬送ローラ50及び排紙ローラ51の駆動は同期されており、画像記録時において間欠駆動され、画像記録の前後においては連続駆動される。これによって、記録用紙は、記録部24へ到達するまでは第1搬送路22を所定の速度で搬送され、記録部24へ到達すると所定の改行幅で間欠して搬送される。記録用紙の搬送が間欠された間に、キャリッジ40が往復移動されて、インクジェット記録ヘッド41によって記録用紙の所定位置に画像が記録される。
【0049】
〈経路切換部72〉
図2に示されるように、第1搬送路22における下流側部位45には、経路切換部72が設けられている。経路切換部72は、第1搬送路22を搬送された記録用紙を排紙トレイ21又は第2搬送路23へ送るものである。この経路切換部72は、スイッチバックローラ53、拍車54、フレーム55、及び拍車56を有して構成されている。
【0050】
第1搬送路22における下流側部位45の直下流側には、スイッチバックローラ53及び拍車54が設けられている。記録用紙に対して片面記録を行う場合は、第1搬送路22を搬送された記録用紙は、スイッチバックローラ53及び拍車54によって排紙トレイ21へ排出される。そして、記録用紙に対して両面記録を行う場合は、第1搬送路22を搬送された記録用紙は、スイッチバックローラ53及び拍車54によって第2搬送路23をスイッチバック搬送される。その後、給紙ローラ25に先端が到達した記録用紙は、該給紙ローラ25によって再び第1搬送路22を経て記録部24へ向けて搬送される。なお、経路切換部72は、本発明に関係しないので、本第1実施形態ではその詳細な説明を省略する。
【0051】
〈給紙カセット70〉
図3は、給紙カセット70の斜視図である。図4は、給紙トレイ20の構成を示す斜視図である。
【0052】
図3に示されるように、給紙カセット70は、全体として薄肉の直方体形状に形成されており、給紙トレイ20及び排紙トレイ21を備える。給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、排紙トレイ21を給紙トレイ20の上側として上下二段となるように配置されている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、給紙カセット70として一体的に構成されている。給紙カセット70は、開口13を通じて装置本体35に対して挿抜される。
【0053】
給紙カセット70が装置本体35に装着される。これにより、アーム26及び給紙ローラ25の下方に給紙トレイ20が配置される(図3参照)。アーム26の基軸28は、その軸方向が第1方向94となるように装置本体35内のフレーム(不図示)に回動可能に設けられている。ここで、第1方向94は、給紙トレイ20に載置された記録用紙の搬送方向90と略直交する水平な方向である。基軸28は、不図示のモータを駆動源として軸方向周りに回転される。基軸28の回転が動力伝達機構27を介して給紙ローラ25へ伝達され、給紙ローラ25が回転駆動される。基軸28には、径方向及び軸方向に延びる多数のリブが設けられている。これにより、基軸28は、高いねじり剛性及び曲げ剛性が確保されている。図4に示されるように、給紙トレイ20には、幅方向(第1方向94)の中央に後述の摩擦パッド104(本発明の第1摩擦部材の一例)が設けられている。給紙カセット70は、給紙トレイ20に記録用紙が載置されていない状態で装置本体35に装着される。この場合、アーム26が給紙トレイ20側へ回動し、給紙ローラ25が摩擦パッド104に当接される。
【0054】
〈排紙トレイ21〉
排紙トレイ21は、給紙カセット70の幅方向(第1方向94)を軸方向として、給紙トレイ20に対して上側へ回動可能に構成されている。給紙トレイ20に対して排紙トレイ21が起立されることにより、給紙トレイ20の上面が開放される。すなわち、給紙トレイ20への記録用紙の補充が可能となる。給紙トレイ20に対して排紙トレイ21が倒伏されることにより、給紙トレイ20の上面が排紙トレイ21に覆われる。後述されるが、給紙トレイ20には、トレイ本体102に対して搬送方向90及び引出方向92へスライド可能な拡張トレイ114(図4参照)が設けられている。給紙トレイ20に対して排紙トレイ21が倒伏されると、排紙トレイ21の後端部75が拡張トレイ114の後端部78に下方から支持され、排紙トレイ21の側壁106が給紙トレイ20の側壁123に下方から支持される。この状態で、排紙トレイ21は、画像が記録された記録用紙を保持するとともに給紙トレイ20の蓋として機能する。これにより、給紙トレイ20への紙粉やゴミの進入が防止される。なお、図3に示されるように、給紙トレイ20の奥側における上方は、給紙ローラ25やアーム26が配置されるために開放されている。
【0055】
〈給紙トレイ20〉
図4に示されるように、給紙トレイ20は、平面視で搬送方向90及び引出方向92に長い矩形の皿状に概ね形成されている。給紙トレイ20は、トレイ本体102及び拡張トレイ114を有する。給紙トレイ20は、トレイ本体102に対して拡張トレイ114が搬送方向90及び引出方向92へスライド可能に構成されている。図4には、トレイ本体102に対して拡張トレイ114が搬送方向90へ押し込まれた状態が示されている。ここで、搬送方向90は、給紙トレイ20上の記録用紙が第1搬送路22へ供給される方向である。この搬送方向90は、給紙トレイ20が装置本体35の開口13(図1参照)内へ押し込まれる方向と略同じ方向である。引出方向92は、給紙トレイ20が装置本体35から引き出される方向である。
【0056】
拡張トレイ114は、必要に応じてトレイ本体102に対して搬送方向90又は引出方向92へスライドされる。これにより、給紙トレイ20のシート積載面が拡張又は縮小され、給紙トレイ20に各種サイズの記録用紙を収容することができる。本第1実施形態においては、日本工業規格に規定される各種サイズの記録用紙が給紙トレイ20に載置される。各種サイズとしては、A4サイズ、B5サイズ、A5サイズ、はがきサイズ、写真用L判サイズ等が挙げられる。したがって、本第1実施形態においては、給紙トレイ20に載置可能な記録用紙の最大サイズがA4サイズであり、給紙トレイ20に載置可能な記録用紙の最小サイズが写真用L判サイズである。ただし、給紙トレイ20に載置可能な記録用紙の最大サイズ及び最小サイズはこれに限定されるものではない。給紙トレイ20は、例えば、写真用L判サイズからA3サイズまでの各種サイズの記録用紙を載置可能なものであってもよい。
【0057】
図4に示されるように、トレイ本体102は、搬送方向90及び引出方向92に長い矩形状に形成されている。トレイ本体102は、底板84を有する。記録用紙は、この底板84に載置される。上述の傾斜板32は、トレイ本体102の先端74に設けられている。傾斜板32は、トレイ本体102の幅方向(第1方向94)に長い板状部材である。傾斜板32は、装置背面側(搬送方向90側)へ傾倒している。したがって、傾斜板32に記録用紙の先端が当接すると、その先端が傾斜板32の内側面77に沿って斜め上方へ案内される。すなわち、内側面77は、記録用紙を第1搬送路22(図2参照)へ案内するガイド面の役割を担う。
【0058】
図4に示されるように、第1方向94におけるトレイ本体102の中央に、摩擦パッド104が設けられている。摩擦パッド104は、例えば、コルクやゴム等の素材で薄板状に形成されている。本第1実施形態では、摩擦パッド104は、テキスト印刷等に多用される普通紙(マット紙)の表面の摩擦係数より大きい摩擦係数を有する。アーム26が回動されて給紙ローラ25が給紙トレイ20側へ移動されると、給紙ローラ25は、摩擦パッド104の直上に配置される。摩擦パッド104は、給紙ローラ25の軸方向と同方向に長い長方形状に形成されている。この摩擦パッド104の長手方向の長さは、少なくとも給紙ローラ25の軸方向の長さ(図7のH1)以上となっている。なお、摩擦パッド104は、図3に示されるように給紙ローラ25が軸方向に2つ設けられている場合は、これら2つの給紙ローラ25に対応する長さに形成されている。また、言うまでもないが、給紙ローラ25が1つの場合は、摩擦パッド104は、1つの給紙ローラ25に対応する長さに形成されている。
【0059】
記録用紙が載置された状態で給紙トレイ20が装置本体35に装着されると、給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に圧接される。これにより、記録用紙は、摩擦パッド104及び給紙ローラ25で挟まれる。給紙ローラ25が搬送方向へ回転すると、摩擦パッド104及び給紙ローラ25間に挟まれた複数の記録用紙のうち、最上位の記録用紙に、搬送方向90への摩擦力が給紙ローラ25から付与される。これに対し、下位層の記録用紙には、記録用紙間、或いは、摩擦パッド104と記録用紙との間に、引出方向92の摩擦力が作用する。
【0060】
底板84には、底板84の幅方向(第1方向94)に沿って一対のガイド溝86,87が設けられている(図4参照)。ガイド溝86,87は、第1方向94に長い長方形のものであって、底板64を表面から裏面へ貫通した形状に形成されている。給紙トレイ20を搬送方向90の上流側から見て左側にガイド溝86が設けられており、右側にガイド溝87が設けられている。ガイド溝86及びガイド溝87は、第1方向94に隔てられている。
【0061】
図4に示されるように、底板84の幅方向中央位置にピニオンギヤ82が設けられている。ピニオンギヤ82は、ガイド溝86及びガイド溝87の中間位置に設けられている。ピニオンギヤ82は、底板84の裏面において後述のラックギヤ88,89が噛合される。
【0062】
〈サイドガイド80,81〉
トレイ本体102には、図4に示されるように、一対のサイドガイド80,81が設けられている。サイドガイド80は、トレイ本体102を搬送方向90の上流側から見て左側に配置されている。サイドガイド81(本発明における位置決め部材の一例、本発明におけるサイドガイドに相当する)は、トレイ本体102を搬送方向90の上流側から見て右側に配置されている。サイドガイド80,81は、例えばABS樹脂などの合成樹脂からなる。サイドガイド80,81は、第1方向94における縦断面が略L字形状に形成されたものである。サイドガイド80,81は、給紙トレイ20内を移動可能に構成されている。具体的には、サイドガイド80,81は、トレイ本体102の幅方向(第1方向94)へスライド可能に設けられている。サイドガイド80は、ガイド溝86に沿ってスライド可能に底板84に支持されている。サイドガイド81は、ガイド溝87に沿ってスライド可能に底板84に支持されている。
【0063】
サイドガイド80,81は、給紙トレイ20に対して記録用紙を位置決めするものである。サイドガイド80,81は、給紙トレイ20に載置された記録用紙の第1方向94における端部に当接される。これにより、給紙トレイ20に載置された記録用紙の幅方向の位置がサイドガイド80,81によって規制される。サイドガイド80,81は、給紙トレイ20に載置された記録用紙の幅方向(第1方向94)における中央位置を給紙トレイ20の基準位置(本第1実施形態では給紙トレイ20の幅方向の中央)に略一致させる。このように、記録用紙の幅方向の中央位置を基準位置に一致させるように記録用紙を規制することは、一般にセンターレジと呼ばれる。給紙トレイ20に載置された記録用紙は、サイドガイド80,81によって搬送方向90へ案内され、第1搬送路22へ供給される。
【0064】
トレイ本体102には、トレイ本体102の幅方向の両端に側壁122,123が設けられている。側壁122,123は、トレイ本体102の底板84から上方へ垂直に起立している。図4には、サイドガイド80の垂直壁128が側壁122に当接され、サイドガイド81の垂直壁118が側壁123に当接された状態が示されている。この状態において、給紙トレイ20には、A4サイズの記録用紙が載置される。サイドガイド80は、垂直壁128が側壁122から離間する第1方向94へスライドされる。サイドガイド81は、垂直壁118が側壁123から離間する第1方向94へスライドされる。これにより、給紙トレイ20に例えば写真用L判サイズの記録用紙が載置された場合に、その記録用紙は、第1方向94におけるトレイ本体102の略中央に位置決めされる。
【0065】
図4に示されるように、サイドガイド81は、底壁117及び垂直壁118を備えている。底壁117は、トレイ本体102の底板84に平行に配置されるものである。記録用紙は、その幅方向の一端がこの底壁117に載置される。垂直壁118は、底壁117の幅方向外側の端縁から垂直に立設されている。図には表れていないが、記録用紙は、底壁117に載置された状態で、その幅方向の一端が垂直壁118の内側面に当接される。このように、サイドガイド81には、第1方向94における記録用紙の端部が当接される。
【0066】
垂直壁118には、レバー99が設けられている。レバー99は、サイドガイド81と一体に形成されており、同じ樹脂で構成されている。底板84の表面に、複数の被係合部95が形成されている。各被係合部95は、その長手方向が搬送方向90に一致するように形成されている。これらの被係合部95は、第1方向へ並べられている。本第1実施形態では、図4に示されるように、複数の被係合部95からなる2本の被係合部群が形成されている。図には表れていないが、レバー99は、上記2本の被係合部群に対応する位置に2つの爪が設けられている。これらの爪が2本の被係合部群のいずれかの被係合部95に挿入されることで、底板84に対してサイドガイド81が固定される。ユーザがレバー99を操作することにより、爪が持ち上げられる。これにより、爪が被係合部95から抜き出されてサイドガイド81の固定が解除され、サイドガイド81がスライド可能となる。
【0067】
サイドガイド81には、底壁117から幅方向中央側へ延出されたラックギヤ89が設けられている。ラックギヤ89は、ガイド溝87を介して底板84の裏面側に配置され、上述のピニオンギヤ82に噛合されている。
【0068】
サイドガイド80は、レバー99及び後述のプレート136(本発明における平行プレートの一例)を有しない点を除いて、サイドガイド81と略対称な形状に形成されている。サイドガイド80は、サイドガイド81と同様に、底壁127及び垂直壁128を有する。記録用紙は、その幅方向の他端がこの底壁127に載置される。垂直壁128は、底壁127の幅方向外側の端縁から垂直に立設されている。図には表れていないが、記録用紙は、底壁127に載置された状態で、その幅方向の他端が垂直壁128の内側面に当接される。
【0069】
サイドガイド80には、ラックギヤ89と略同様に構成されたラックギヤ88が設けられている。ラックギヤ88は、ガイド溝86を介して底板84の裏面側に配置され、上述のピニオンギヤ82に噛合されている。
【0070】
サイドガイド80,81のうちいずれか一方が第1方向94へスライドされる。これに連動して、サイドガイド80,81のうちの他方が相反する方向へスライドされる。したがって、給紙トレイ20に載置された記録用紙の幅がサイドガイド80,81の離間距離よりも短い場合は、サイドガイド80,81の一方をスライドさせることにより、サイドガイド80,81が同時に移動される。これにより、記録用紙の幅方向の中央位置が上記基準位置に略一致する。
【0071】
なお、サイドガイド80,81は、その一方のみがスライド可能に構成されていてもよい。例えば、図6に示される位置にサイドガイド80を固定させた場合は、サイドガイド81のみがスライドするよう構成することが考えられる。記録用紙の第1方向94における中央が略一致される給紙トレイ20の基準位置が記録用紙のサイズに応じて変化する。
【0072】
〈リヤガイド120〉
トレイ本体102における第1方向94の中央に、リヤガイド120が設けられている。リヤガイド120は、給紙トレイ20に対して記録用紙を位置決めするものである。リヤガイド120は、給紙トレイ20に載置された記録用紙の搬送方向90における上流側の端部に当接される。このため、給紙トレイ20に載置された記録用紙は、給紙トレイ20に対して引出方向92へ移動することがリヤガイド120によって規制される。
【0073】
リヤガイド120は、給紙トレイ20内を移動可能に構成されている。具体的には、リヤガイド120は、給紙トレイ20に対して搬送方向90及び引出方向92へスライド可能に構成されている。底板84には、搬送方向90及び引出方向92に長い溝97が形成されている。この溝97は、トレイ本体102の長手方向の略中央付近から後端まで延設されている。リヤガイド120は、この溝97に沿ってスライド可能にトレイ本体102に設けられている。
【0074】
第1方向94における溝97の両側には、複数の被係合部85が形成されている。各被係合部85は、その長手方向が溝97に直交する方向に一致する。図には示されていないが、リヤガイド120には、溝97を挟んだ両側の被係合部85に挿抜される2つの爪が設けられている。また、リヤガイド120には、リヤガイド120と一体に形成されたレバー79が設けられている。レバー79は、リヤガイド120と一体に形成されており、同じ樹脂で構成されている。リヤガイド120の爪がいずれかの被係合部85に挿入されることで、底板84に対してリヤガイド120が固定される。ユーザがレバー79を操作することにより、リヤガイド120の爪が持ち上げられる。これにより、爪が被係合部85から抜き出されてリヤガイド120の固定が解除され、リヤガイド120がスライド可能となる。
【0075】
給紙トレイ20に記録用紙が載置された状態で、リヤガイド120が溝97に沿って搬送方向90へスライドされる。これにより、リヤガイド120が記録用紙の後端に当接する。その結果、記録用紙の搬送方向90における上流側の端部が揃えられるとともに、当該端部が記録用紙のサイズに応じた位置に規制される。記録用紙は、その搬送方向90における下流側の端部が、記録用紙のサイズに拘わらず給紙トレイ20内の傾斜板32に近接する所定位置に略一致される。
【0076】
図5は、図4におけるV部の拡大図である。図6は、トレイ本体102の平面図であり、給紙トレイ20に載置される最大サイズの記録用紙を位置決めする位置にサイドガイド80,81が配置された状態を示す。図7は、サイドガイド81が第1方向94におけるトレイ本体102の中央へスライドされる様子を示す模式断面図である。なお、図6においては、トレイ本体102における引出方向92側の一部とリヤガイド120が省略されている。
【0077】
〈プレート136〉
図4から図6に示されるように、サイドガイド81は、第1方向94におけるトレイ本体102の中央へ向けて底壁117からプレート136が延出されている。プレート136は、第1方向94を長手方向とする平板部材であり、底壁117と同様に、底板84と平行に設けられている。プレート136は、搬送方向90において摩擦パッド104と略同じ位置に設けられている(図4及び図6参照)。給紙トレイ20に載置された記録用紙は、その側壁123側の端部が底壁117及びプレート136に載置される。すなわち、プレート136は、給紙トレイ20に載置された記録用紙の下面の一部に当接される。記録用紙は、側壁123側の端部が底壁117及びプレート136に下方から支持される。
【0078】
〈摩擦パッド130,131〉
図4から図6に示されるように、サイドガイド81には2つの摩擦パッド131,132(いずれも本発明における第2摩擦部材の一例)が設けられている。詳細には、プレート136の上面に、摩擦パッド131及び摩擦パッド132が配置されている。摩擦パッド131,132は、摩擦パッド104と同様に、記録用紙に摩擦力を付与するものである。詳細については後述するが、第1方向94におけるトレイ本体102の中央へサイドガイド81がスライドされることにより、サイドガイド81の位置に応じて、摩擦パッド131又は摩擦パッド132のいずれかが、摩擦パッド104を覆う位置に配置される(図7(C)及び(D)参照)。
【0079】
摩擦パッド131,132は、摩擦パッド104と同じように、コルクやゴム等の素材で薄板状に形成されている。また、摩擦パッド131,132は、摩擦パッド104と同サイズに形成されている。つまり、摩擦パッド131,132の長手方向の長さ(図7のL1)は、少なくとも給紙ローラ25の軸方向の長さ(図7のH1)以上となっている。摩擦パッド131及び摩擦パッド132は、プレート136の上面において、第1方向94の方向に沿って並べられている。詳細には、摩擦パッド131がプレート136の先端側に配置されており、摩擦パッド132がサイドガイド81側に配置されている。摩擦パッド131,132それぞれは、摩擦パッド104の摩擦係数より大きい摩擦係数を有する。具体的には、摩擦パッド131,132は、写真印刷等に多用される光沢紙に応じた摩擦係数を有する。
【0080】
本第1実施形態では、摩擦パッド131の摩擦係数は、ハガキサイズの光沢紙(光沢ハガキ)に対応しており、摩擦パッド132の摩擦係数は、写真用L判サイズの光沢紙に対応している。摩擦パッド131の摩擦係数と摩擦パッド132の摩擦係数とには差が設けられている。詳細には、摩擦パッド131の摩擦係数が摩擦パッド132の摩擦係数よりも大きい。つまり、ハガキサイズに対応する摩擦パッド131は、写真用L判サイズに対応する摩擦パッド132の摩擦係数よりも大きい摩擦係数を有する。このように、摩擦係数に差を設けたのは、写真用L判サイズの光沢紙を給紙トレイ20に載置した場合に比べて光沢ハガキの宛名面を給紙トレイ20の上面に対向させた載置した場合の方が大きな摩擦力を必要とするからである。なお、上述の如く摩擦係数に差を設けたことによる作用効果については後述する。
【0081】
次に、サイドガイド81のスライドに伴う摩擦パッド131,132の位置について説明する。
【0082】
図8は、トレイ本体102の平面図であり、摩擦パッド104を覆う位置に摩擦パッド131が配置された状態が示されている。図9は、トレイ本体102の平面図であり、摩擦パッド104を覆う位置に摩擦パッド132が配置された状態が示されている。図8及び図9では、トレイ本体102における引出方向92側の一部とリヤガイド120が省略されている。なお、以下においては、説明の便宜上、摩擦パッド131が摩擦パッド104を覆う位置(図8参照)を第1被覆位置と称し、摩擦パッド132が摩擦パッド104を覆う位置(図9参照)を第2被覆位置と称する。これら第1被覆位置及び第2被覆位置が、本発明の第2位置に相当し、摩擦パッド104がいずれの摩擦パッド131,132にも覆われずに露出されている時のサイドガイド80,81の位置が本発明の第1位置に相当する。
【0083】
上述したように、サイドガイド80,81は、給紙トレイ20内を第1方向94へスライド可能に構成されている。サイドガイド81は、第1方向94へスライドされることにより、第1被覆位置及び第2被覆位置に移動可能である。
【0084】
第1被覆位置(図8参照)は、給紙トレイ20に載置されるハガキサイズの記録用紙をサイドガイド81及びサイドガイド80で基準位置に位置決めするための位置である。つまり、ハガキサイズの記録用紙を位置決めするべく第1被覆位置にサイドガイド81及びサイドガイド80を移動させると、摩擦パッド131によって摩擦パッド104が覆われる。一方、第2被覆位置(図9参照)は、給紙トレイ20に載置される写真用L判サイズの記録用紙をサイドガイド81及びサイドガイド80で基準位置に位置決めするための位置である。つまり、写真用L判サイズの記録用紙を位置決めするべく第2被覆位置にサイドガイド81及びサイドガイド80を移動させると、摩擦パッド132によって摩擦パッド104が覆われる。
【0085】
なお、本第1実施形態における第1被覆位置及び第2被覆位置は、ハガキサイズや写真用L判サイズに限られず、例えば、名刺サイズやそれ以外のサイズに対応する位置であってもよい。要するに、光沢紙などのように、写真印刷用として多用される所定サイズに対応する位置であればよい。
【0086】
図6及び図7(A)に示されるように、サイドガイド80,81がトレイ本体102の第1方向94の端部に配置された状態では、摩擦パッド104はトレイ本体102に露出されている。本第1実施形態では、トレイ本体102の第1方向94の端部から上記第1被覆位置までの範囲にサイドガイド80,81が配置されている場合に、摩擦パッド104の露出状態が維持される。この状態で給紙トレイ20に記録用紙が載置されている場合は、摩擦パッド104が最下位の記録用紙に当接する。このとき、記録用紙が摩擦パッド104と給紙ローラ25とによって挟まれる。なお、プレート136の摩擦パッド131,132も最下位の記録用紙に当接するが、これらの摩擦パッド131,132は給紙ローラ25の直下に配置されていない。したがって、記録用紙が摩擦パッド131,132から受ける摩擦力は微小であるため、その摩擦力は記録用紙の給送に影響しない。
【0087】
図7(C)及び図8に示されるように、サイドガイド80,81が第1被覆位置に配置された状態では、摩擦パッド104は摩擦パッド131で覆われる。この状態で給紙トレイ20に記録用紙が載置されている場合は、摩擦パッド104に代わって、摩擦パッド131が最下位の記録用紙に当接する。このとき、記録用紙が摩擦パッド131と給紙ローラ25とによって挟まれる。これにより、搬送の際に、記録用紙は、摩擦パッド104から付与される摩擦力よりも大きい摩擦力を摩擦パッド131から付与される。なお、プレート136の摩擦パッド132も最下位の記録用紙に当接するが、摩擦パッド132は給紙ローラ25の直下に配置されていない。したがって、記録用紙が摩擦パッド,132から受ける摩擦力は微小であるため、その摩擦力は記録用紙の給送に影響しない。
【0088】
図7(D)及び図9に示されるように、サイドガイド80,81が第2被覆位置に配置された状態では、摩擦パッド104は摩擦パッド132で覆われる。この状態で給紙トレイ20に記録用紙が載置されている場合は、摩擦パッド104に代わって、摩擦パッド132が最下位の記録用紙に当接する。このとき、記録用紙が摩擦パッド132と給紙ローラ25とによって挟まれる。これにより、搬送の際に、記録用紙は、摩擦パッド104から付与される摩擦力よりも大きい摩擦力を摩擦パッド132から付与される。なお、プレート136の摩擦パッド131も最下位の記録用紙に当接するが、摩擦パッド131は給紙ローラ25の直下に配置されていない。したがって、記録用紙が摩擦パッド131から受ける摩擦力は微小であるため、その摩擦力は記録用紙の給送に影響しない。
【0089】
〈第1実施形態の作用効果〉
以上説明したように、給紙トレイ20上において、サイドガイド80,81がハガキサイズの記録用紙を位置決めするべく上記第1被覆位置に移動されると、摩擦パッド104が摩擦パッド131で覆われる。つまり、摩擦パッド104上に摩擦パッド131が配置される。この摩擦パッド131は、摩擦パッド104の摩擦係数より大きく、しかもハガキサイズの光沢紙(光沢ハガキ)に対応する摩擦係数を有する。したがって、ハガキサイズの光沢紙が給紙トレイ20に載置された場合に、記録用紙間の摩擦力が大きくなったとしても、摩擦パッド131から最適な摩擦力が付与されるため、ハガキサイズの光沢紙が重送することなく一枚ずつ分離搬送される。特に、積載枚数が少ない場合は、摩擦パッド131からの摩擦力が記録用紙の搬送に大きく作用するため、記録用紙の重送をより確実に阻止することができる。
【0090】
また、給紙トレイ20上において、サイドガイド80,81が写真用L判サイズの記録用紙を位置決めするべく上記第2被覆位置に移動されると、摩擦パッド104が摩擦パッド132で覆われる。つまり、摩擦パッド104上に摩擦パッド132が配置される。この摩擦パッド132は、摩擦パッド104の摩擦係数より大きく、しかも写真用L判サイズの光沢紙に対応する摩擦係数を有する。したがって、写真用L判サイズの光沢紙が給紙トレイ20に載置された場合に、記録用紙間の摩擦力が大きくなったとしても、摩擦パッド132から最適な摩擦力が付与されるため、写真用L判サイズの光沢紙が重送することなく一枚ずつ分離搬送される。特に、積載枚数が少ない場合は、摩擦パッド132からの摩擦力が記録用紙の搬送に大きく作用するため、記録用紙の重送をより確実に阻止することができる。
【0091】
また、本第1実施形態のように、給紙トレイ20からU字形状に曲がった第1搬送路22へ記録用紙が供給される給送装置16においては、写真用L判サイズの光沢紙に画像記録を行う場合は、給紙トレイ20の上面に光沢面が対向するように該光沢紙が載置される。一方、ハガキサイズの光沢紙(光沢ハガキ)に画像記録を行う場合は、光沢面に画像記録を行うべく、給紙トレイ20の上面に光沢面が対向するよう光沢ハガキが載置され、宛名面に画像記録を行うべく、給紙トレイ20の上面に宛名面が対向するよう光沢ハガキが載置される。通常、宛名面には光沢加工がなされていない。そのため、宛名面を給紙トレイ20の上面に対向させた場合は、光沢ハガキを良好に分離させるために、光沢面を給紙トレイ20の上面に対向させる場合に比べて大きい摩擦力を生じさせる必要がある。本第1実施形態では、摩擦パッド131の摩擦係数は、摩擦パッド132の摩擦係数より大きい。そのため、仮に光沢ハガキの宛名面を給紙トレイ20の上面に対向させた場合でも、分離に十分な摩擦力が生じるため、重送を確実に阻止することができる。
【0092】
なお、本第1実施形態においては、プレート136に2つの摩擦パッド131,132を配置することとしたが、もちろん、摩擦パッド131,132に変えて、ハガキサイズ及び写真用L判サイズの双方に適用可能な摩擦係数を有する一つの摩擦パッドを用いてもよい。
【0093】
また、本第1実施形態においては、摩擦パッド131,132が一方のサイドガイド81のみに設けられているが、例えば、摩擦パッド131をサイドガイド81に設け、摩擦パッド132をサイドガイド80に設けてもよい。もちろん、この場合は、サイドガイド80にプレート136に相当するプレートを要することはいうまでもない。
【0094】
また、図3に示されるように、アーム26に2つの給紙ローラ25が軸方向に配設されている場合は、一方の給紙ローラ25に対応する摩擦パッド131,132をサイドガイド80に設け、他方の給紙ローラ25に対応する摩擦パッド131,132をサイドガイド81に設けてもよい。
【0095】
また、本第1実施形態では、サイドガイド81の位置に応じて摩擦パッド131,132が摩擦パッド104上に配置される構成としたが、例えば、周知のリンク機構を用いて、サイドガイド81の位置に応じて摩擦パッド104が摩擦パッド131或いは摩擦パッド132に置き換えられる構成を採用することも可能である。
【0096】
[第2実施形態]
以下に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る複合機10は、トレイ本体102の一部が異なるほかは、上述の第1実施形態と同様の構成である。そのため、トレイ本体102以外の構成の説明は省略される。なお、第1実施形態ではサイドガイド81(図8参照)が本発明の位置決め部材として機能したのに対し、本第2実施形態ではリヤガイド140(本発明におけるリヤガイドに相当する、図10参照)が本発明の位置決め部材として機能する。
【0097】
図10は、リヤガイド140がトレイ本体102に対して搬送方向90へスライドされる様子を示すトレイ本体102の模式図である。
【0098】
第2実施形態におけるトレイ本体102は、以下の点で第1実施形態におけるトレイ本体102と相違する。すなわち、本第2実施形態においては、サイドガイド81にプレート136が設けられていない点と、リヤガイド120(図4参照)に代えてリヤガイド140(図10参照)がトレイ本体102に設けられて入る点において相違する。
【0099】
〈リヤガイド140〉
トレイ本体102には、トレイ本体102における第1方向94(図10における紙面垂直方向)の中央に、リヤガイド140が設けられている。リヤガイド140は、リヤガイド120と同様に、溝97(図4参照)に沿って給紙トレイ20に対して搬送方向90及び引出方向92へスライド可能に構成されている。リヤガイド140は、給紙トレイ20に対して記録用紙を位置決めするものである。リヤガイド140は、リヤガイド120と同様に、給紙トレイ20に載置された記録用紙の搬送方向90における上流側の端部に当接される。これにより、記録用紙は、トレイ本体102の後端側(引出方向92側)への移動がリヤガイド140によって規制される。このリヤガイド140は、摩擦パッド100を支持する後述のプレート146(本発明における平行プレートの一例)を有する点でリヤガイド120と相違する。
【0100】
給紙トレイ20に記録用紙が載置された状態で、溝97に沿ってリヤガイド140が搬送方向90へスライドされる。これにより、リヤガイド140が記録用紙の後端に当接する。その結果、記録用紙の後端が揃えられるとともに、後端が記録用紙のサイズに応じた位置に規制される。記録用紙は、その先端が記録用紙のサイズに拘わらず給紙トレイ20内の傾斜板32に近接する所定位置に位置決めされる。すなわち、リヤガイド140は、給紙トレイ20に載置された記録用紙の搬送方向90における下流側の端部を給紙トレイ20の基準位置に一致させるものである。
【0101】
図10(A)に示されるように、リヤガイド140は、プレート146及び垂直壁134を有する。プレート146は、トレイ本体102の底板84に平行に配置される平板部材である。このプレート146は、第1方向94(図10の紙面垂直方向)におけるトレイ本体102の略中央に配置されている。給紙トレイ20に載置された記録用紙は、引出方向92側の端部がこのプレート146に載置される。これにより、記録用紙の下面の一部にプレート146が当接される。垂直壁134は、プレート146の引出方向92側の端縁から垂直に立設されている。図には表れていないが、記録用紙は、プレート146に載置された状態で、引出方向92側の一端が垂直壁134の内側面に当接される。このように、リヤガイド140には、記録用紙の引出方向92側の端部が当接される。
【0102】
〈摩擦パッド100〉
プレート146の上面に、摩擦パッド100(本発明における第2摩擦部材の一例)が設けられている。摩擦パッド100は、リヤガイド140がトレイ本体102に対して搬送方向90へスライドされることにより、摩擦パッド104の直上に配置される(図10(C)及び(D)参照)。
【0103】
摩擦パッド100は、摩擦パッド104及び摩擦パッド131,132と同様に、記録用紙に摩擦力を付与するものである。摩擦パッド100は、摩擦パッド104と同様に構成及びサイズを有するものであるが、ハガキサイズ及び写真用L判サイズの双方に適用可能な摩擦係数を有する点において、摩擦パッド104とは異なる。なお、摩擦パッド100の他の構成は摩擦パッド104と共通するため、ここでは、共通する構成についての説明を省略する。
【0104】
〈凸部149〉
図10に示されるように、プレート146の裏面には凸部149が設けられている。凸部149は、第1方向94(図10の紙面垂直方向)におけるプレート146の略中央に設けられている。すなわち、凸部149は、第1方向94において溝97(図4参照)と略同じ位置に設けられている。リヤガイド140は、凸部149が溝97内に配置された状態で搬送方向90又は引出方向92へスライドされる。凸部149は、プレート146の裏面から垂直方向下方へ延びる垂直壁130を有する。垂直壁130は、凸部149における搬送方向90の下流側(図10における左側)に設けられている。垂直壁130は、後述のストッパ148(図10参照)に当接される面である。
【0105】
〈ストッパ148〉
図10に示されるように、トレイ本体102は、第1方向94(図10の紙面垂直方向)における底板84の略中央にストッパ148が設けられている。このストッパ148は、底板84に形成された溝97(図4参照)における搬送方向90側の端部を構成するものである。ストッパ148は、搬送方向90及び引出方向92において凸部149と対向する位置に設けられている。
【0106】
次に、リヤガイド140のスライドに伴う摩擦パッド100の位置について説明する。
【0107】
上述したように、リヤガイド140は、給紙トレイ20内を搬送方向90及び引出方向92へスライド可能に構成されている。リヤガイド140は、搬送方向90及び引出方向92へスライドされることにより、摩擦パッド100が摩擦パッド104を覆う第3被覆位置(図10(D)参照)に移動可能である。なお、第3覆位置が、本発明の第2位置に相当し、摩擦パッド104が摩擦パッド100で覆われずに露出されているときのリアガイドの位置が本発明の第1位置に相当する。
【0108】
第3被覆位置(図10(D)参照)は、給紙トレイ20に載置されるハガキサイズ以下の記録用紙の後端をリヤガイド140で基準位置に位置決めするための位置である。つまり、ハガキサイズ以下の記録用紙の後端を位置決めするべくリヤガイド140を第3被覆位置に移動させると、摩擦パッド100によって摩擦パッド104が覆われる。
【0109】
図10(A)に示されるように、リヤガイド140がトレイ本体102の後端に配置された状態では、摩擦パッド104はトレイ本体102に露出されている。本第2実施形態では、トレイ本体102の後端から上記第3被覆位置までの範囲にリヤガイド140が配置されている場合に(図10(B)、(C)参照)、摩擦パッド104の露出状態が維持される。この状態で給紙トレイ20に記録用紙が載置されている場合は、摩擦パッド104が最下位の記録用紙に当接する。このとき、記録用紙が摩擦パッド104と給紙ローラ25とによって挟まれる。なお、プレート146の摩擦パッド100も最下位の記録用紙に当接するが、摩擦パッド100は給紙ローラ25の直下に配置されていない。したがって、記録用紙が摩擦パッド100から受ける摩擦力は微小であるため、その摩擦力は記録用紙の給送に影響しない。
【0110】
図10(D)に示されるように、リヤガイド140が第3被覆位置に配置された状態では、摩擦パッド104は摩擦パッド100で覆われる。この状態で給紙トレイ20に記録用紙が載置されている場合は、摩擦パッド104に代わって、摩擦パッド100が最下位の記録用紙に当接する。このとき、記録用紙が摩擦パッド100と給紙ローラ25とによって挟まれる。これにより、搬送の際に、記録用紙は、摩擦パッド104から付与される摩擦力よりも大きい摩擦力を摩擦パッド100から付与される。
【0111】
〈第2実施形態の作用効果〉
以上説明したように、給紙トレイ20上において、リヤガイド140がハガキサイズ以下の記録用紙を位置決めするべく上記第3被覆位置に移動されると、摩擦パッド104が摩擦パッド100で覆われる。つまり、摩擦パッド104上に摩擦パッド100が配置される。この摩擦パッド100は、摩擦パッド104の摩擦係数より大きく、しかもハガキサイズ以下の光沢紙に対応する摩擦係数を有する。したがって、ハガキサイズ以下の光沢紙が給紙トレイ20に載置された場合に、記録用紙間の摩擦力が大きくなったとしても、摩擦パッド100から最適な摩擦力が付与されるため、ハガキサイズ以下の光沢紙が重送することなく一枚ずつ分離搬送される。特に、積載枚数が少ない場合は、摩擦パッド100からの摩擦力が記録用紙の搬送に大きく作用するため、記録用紙の重送をより確実に阻止することができる。
【0112】
なお、本第2実施形態においては、プレート146に1つの摩擦パッド100を配置することとしたが、もちろん、上述の第1実施形態と同様に、記録用紙のサイズに応じて摩擦係数の異なる2つの摩擦パッドを配置してもかまわない。
【0113】
また、本第2実施形態では、リヤガイド140の位置に応じて摩擦パッド100が摩擦パッド104上に配置される構成としたが、例えば、周知のリンク機構を用いて、リヤガイド140の位置に応じて摩擦パッド104が摩擦パッド100に置き換えられる構成を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る複合機10の外観斜視図である。
【図2】図2は、複合機10のプリンタ部11の内部構造を示す縦断面図である。
【図3】図3は、給紙カセット70の斜視図である。
【図4】図4は、給紙トレイ20の構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、図4におけるVIII部の拡大図である。
【図6】図6は、トレイ本体102の平面図であり、サイドガイド80,81が給紙トレイ20に載置される最大サイズの記録用紙を保持する第1位置に配置された状態を示す。
【図7】図7は、サイドガイド81が第1方向94におけるトレイ本体102の中央へスライドされる様子を示す模式断面図である。
【図8】図8は、トレイ本体102の平面図であり、摩擦パッド104を覆う位置に摩擦パッド131が配置された状態が示されている。
【図9】図9は、トレイ本体102の平面図であり、摩擦パッド104を覆う位置に摩擦パッド132が配置された状態が示されている。
【図10】図10は、リヤガイド140がトレイ本体102に対して搬送方向90へスライドされる様子を示すトレイ本体102の模式図である。
【符号の説明】
【0115】
10・・・複合機
11・・・プリンタ部(本発明の画像記録装置の一例)
16・・・給送装置(本発明のシート搬送装置の一例)
20・・・給紙トレイ(本発明のトレイの一例)
21・・・排紙トレイ
22・・・第1搬送路
23・・・第2搬送路
24・・・記録部
25・・・給紙ローラ(本発明の回転体の一例)
65・・・記録用紙(本発明のシートの一例)
72・・・経路切換部
80・・・サイドガイド
81・・・サイドガイド(本発明の位置決め部材の一例、本発明のサイドガイドに相当)
90・・・搬送方向
94・・・第1方向
100・・・摩擦パッド(本発明の第2摩擦部材の一例)
104・・・摩擦パッド(本発明の第1摩擦部材の一例)
131,132・・・摩擦パッド
136,146・・・プレート
140・・・リヤガイド(本発明の位置決め部材の一例、本発明のリヤガイドに相当)
148・・・ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像記録装置に適用されるシート搬送装置であって、
シートが載置されるトレイと、
上記トレイに設けられ、所定サイズより大きいシートを位置決めする第1位置と上記所定サイズ以下のシートを位置決めする第2位置とに移動可能な位置決め部材と、
上記トレイに対して接離する方向へ移動可能に構成され、上記トレイ上のシートに接触して該シートを搬送する回転体と、
所定の摩擦係数を有し、上記位置決め部材が上記第1位置に移動されたときに、上記回転体の位置に対応する上記トレイ上の所定位置に配置される第1摩擦部材と、
上記所定の摩擦係数よりも大きい摩擦係数を有し、上記位置決め部材が上記第2位置に移動されたときに上記所定位置に配置される第2摩擦部材と、を具備してなるシート搬送装置。
【請求項2】
上記第1摩擦部材は、上記トレイ上の上記所定位置に固定されており、
上記第2摩擦部材は、上記位置決め部材に設けられており、
上記位置決め部材が上記第1位置に移動されたときに上記第1摩擦部材が露出され、上記位置決め部材が上記第2位置に移動されたときに上記第2摩擦部材が上記第1摩擦部材を覆う位置に配置される請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
上記位置決め部材は、上記トレイに対し平行に構成され、上記トレイに載置されるシートの端部を下面から支持する平行プレートを有し、
上記第2摩擦部材は、上記平行プレートの上面に設けられている請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
上記第2摩擦部材は、上記所定サイズ以下の少なくとも2つの規定サイズに対応する少なくとも2つの摩擦部材で構成されており、
上記位置決め部材が上記各規定サイズのいずれかに対応する位置に移動されたときに、当該規定サイズに対応する摩擦部材が上記所定位置に配置される請求項1から3のいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項5】
上記少なくとも2つの規定サイズは、少なくとも、ハガキサイズ若しくはこれに相当するサイズ、及び写真用L判サイズ若しくはこれに相当するサイズである請求項4に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
上記回転体によって搬送されたシートの表裏面を反転させて上記画像記録装置の画像記録位置へ案内する搬送路を更に備え、
ハガキサイズ若しくはこれに相当するサイズに対応する摩擦部材は、写真用L判サイズ若しくはこれに相当するサイズに対応する摩擦部材の摩擦係数よりも大きい摩擦係数を有する請求項5に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
上記所定サイズは、ハガキ若しくはこれに相当するシートのサイズである請求項1から6のいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項8】
上記位置決め部材は、上記トレイ上をシート搬送方向と略直交する幅方向に移動可能に構成され、上記トレイに載置されたシートにおける上記幅方向の端部に当接されるサイドガイドである請求項1から7のいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項9】
上記位置決め部材は、上記トレイ上をシート搬送方向に移動可能に構成され、上記トレイに載置されたシートにおけるシート搬送方向の上流側の端部に当接されるリヤガイドである請求項1から7のいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のシート搬送装置を備え、
上記シート搬送装置によって搬送されたシートに対して画像を記録する画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−7136(P2009−7136A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171448(P2007−171448)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】