説明

シート搬送装置およびこれを備えた画像形成装置

【課題】トレイからシートの先端がシート搬送路に送り出された状態で、トレイが引き出された場合であっても、該シートがトレイと装置本体との間で挟まり、装置本体内に残留することを抑制する。
【解決手段】シートPの先端部が、給紙コロ320が形成する給紙ニップ部Aで停止した状態で、シートトレイ500が第1方向に引き出されると、シートPはガイド部材520に押し出されると共に、給紙ニップ部Aを中心にR1方向に回転する力を受ける。ここで、給紙ニップ部Aから第1方向に延びる仮想線Qの近傍において、シート搬送路に突出部材が突出することで、シートPの先端部の回転移動が規制され、シートPはシートトレイ500とともに第1方向に引き出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンター等の画像形成装置への適用が好適な、シートを搬送するシート搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数枚のシートが収容されるトレイを有し、該トレイからシートを搬送するシート搬送装置は、例えば、コピー機、プリンター、ファクシミリ或いはこれらの機能を備える複合機といった画像形成装置に好適に使用される。画像形成装置では、シート搬送装置はシート貯留部からシートを1枚ずつ取り出して搬送し、搬送された該シートは画像形成装置本体内で画像が形成される。
【0003】
このようなシート搬送装置において、シートを収容するシート貯留部は、使用されるシートの補給のために、シートトレイが画像形成装置本体から引き出し可能なカセット構造を備えている(例えば、特許文献1)。該シートトレイは、シートの搬送を安定させるため、シートの幅方向の変位を規制するガイド部材を備える。このガイド部材は、多くの場合、シートの幅方向に移動可能に形成される。これにより、複数種のシートに対して、ガイド部材の位置が調整されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−210468
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるようなシート搬送装置では、図19に平面図として示すように、シートP1は、シートトレイ500内において、ガイド部材520によって位置が規制されて配置される。シートP1の右端部には、該シートP1をシート搬送路に送り出すためのピックアップコロ310が当接する。更に、ピックアップコロ310よりも右側(シート搬送方向下流)には、シートP1を1枚ずつ分離する給紙コロ320と、給紙コロ320から分離されたシートP1を更に搬送するための搬送ローラー330とが配置される。画像形成装置の動作条件に伴い、シートトレイ500から送り出されたシートP1は、給紙コロ320が形成する給紙ニップ部A付近で先端部が挟持された状態で、停止することがある。この状態で、使用者によってシートトレイ500が矢印1a方向に引き出された場合、シートP1は、ガイド部材520によって矢印1a方向に押し出されるとともに、給紙ニップ部A付近で挟持されているため、矢印R1方向の回転力を受ける。この回転力によって、シートP1はシートP2の位置にずれる結果、装置本体の支柱フレーム231に衝突する。この結果、シートP2は、シートトレイ500とともに引き出されることなく、しわを生じたまま、装置本体に残留する。したがって、該シートが破損してしまう。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、シートトレイからシートの先端がシート搬送路に送り出された状態で、シートトレイが引き出された場合であっても、該シートがシートトレイと装置本体との間で挟まり、装置本体内に残留し破損することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係るシート搬送装置は、筐体と、複数のシートが積載され、前記筐体に装着されるとともに、前記筐体から第1方向に引出可能なシートトレイと、前記筐体内に配置され、前記シートトレイから前記第1方向と交差する第2方向に延設されるシート搬送路と、前記シートトレイに積載された前記シートに対向して配置され、前記シート搬送路の入口でシートに当接し、前記シート搬送路に前記シートを送り出す送出手段と、前記送出手段によって送り出された前記シートに当接して回転し、該シートをシート搬送路下流側に給紙する給紙手段と、前記給紙手段に対向配置され、前記給紙されるシートとその他のシートとを分離する分離手段と、前記給紙手段と前記分離手段とによってシートが挟持されるニップ部から前記第1方向に延びる仮想線の近傍において、前記シート搬送路に出没可能な突出部材と、を有することを特徴とする。
【0008】
本構成によれば、送出手段によって第2方向に送り出されたシートの先端部が、ニップ部近傍で停止した状態で、シートトレイが第1方向に引き出された場合であっても、ニップ部から第1方向に延びる仮想線の近傍において、シート搬送路に突出部材が突出する。このため、シートトレイによって第1方向に押され、ニップ部を中心に回転しようとするシートの前縁部を突出部材が規制し、シートが第1方向に移動するように誘導される。したがって、シートがトレイと装置本体との間で挟まり、装置本体内に残留し、破損することが抑制される。
【0009】
上記の構成において、前記送出手段を、前記シートに当接する第1の位置と、前記シートから離間した第2の位置との間で移動させる移動手段を備え、前記突出部材は、前記移動手段が前記送出手段を前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させることに連動して、前記シート搬送路に突出することが望ましい。
【0010】
本構成によれば、突出部材がシート搬送路に出没する動作が、移動手段による送出手段の第1の位置と第2の位置との間の移動に連動して行われる。したがって、突出部材の出没に専用の駆動手段を設けることなく、出没動作が実行される。また、送出手段が第1の位置から第2の位置へ移動することに連動して、突出部材がシート搬送路に突出する。このため、送出手段によってシートが送り出されている際に、誤って突出部材がシート搬送路に突出することが防止される。
【0011】
上記の構成において、前記移動手段は、前記送出手段を移動させる駆動力を出力する電気的なアクチュエーターと、前記アクチュエーターに対する通電制御を行う制御手段とを有し、前記送出手段は、前記制御手段による前記アクチュエーターへの通電に伴って、前記送出手段を前記第1の位置から前記第2の位置に移動することが望ましい。
【0012】
本構成によれば、アクチュエーターへの通電によって、送出手段が、第1の位置から第2の位置に移動し、該移動に連動して、突出部材がシート搬送路に突出する。したがって、突出部材を出没させる専用の駆動手段を設けることなく、突出動作が実行される。
【0013】
上記の構成において、前記制御手段は、前記給紙手段による給紙動作終了後、所定時間だけ前記アクチュエーターへの通電を継続したのち、通電を切断することが望ましい。
【0014】
本構成によれば、給紙動作終了後に、使用者がシートトレイを引き出すことが多い時間帯に対応して、アクチュエーターに通電が継続され、シート搬送路に突出部材が突出する。その後、所定時間経過後に、アクチュエーターへの通電が切断され、突出部材がシート搬送路から退避する。したがって、アクチュエーターへの連続的な通電による電力消費や温度上昇を抑制することが可能となる。
【0015】
上記の構成において、前記移動手段による前記送出手段の移動に連動して、前記突出部材を出没させる第1連動機構を更に備え、前記第1連動機構は、第1回動支点部と、前記第1回動支点部から互いに反対方向に延びる第1片および第2片と、前記第1片の先端側に配設され、前記送出手段が前記第2の位置から前記第1の位置へ移動する際に、前記送出手段によって押圧される第1受圧部と、を有し、前記第2片の先端側に、前記突出部材が配設されていることが望ましい。
【0016】
本構成によれば、送出手段が第2の位置から第1の位置に移動する際に、送出手段によって第1受圧部が押圧され、第1回動支点部を中心に第1連動機構が回動する。この際、第2片の先端側に配設されている突出部材は、シート搬送路から退避した位置に移動する。したがって、突出部材に専用の駆動手段を設けることなく、突出部材がシート搬送路から没することが可能となる。
【0017】
上記の構成において、前記突出部材は、前記シートトレイが前記第1方向に引き出されることに連動して、前記シート搬送路に突出することが望ましい。
【0018】
本構成によれば、使用者がシートトレイを引き出す動作に対応して、突出部材がシート搬送路に突出する。したがって、使用者がシートトレイを引き出す動作に対応して突出部材が突出しない場合に比べて、効率的に突出部材を動作させることが可能となる。
【0019】
上記の構成において、第1の回転方向に回転して、前記給紙手段から給紙されたシートをシート搬送方向下流側に搬送する搬送ローラーと、前記搬送ローラーを前記第1の回転方向および、前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に回転させる回転駆動手段と、を更に備え、前記突出部材は、前記搬送ローラーの回転停止または、前記搬送ローラーが前記第2の回転方向に回転することに連動して、前記シート搬送路に突出することが望ましい。
【0020】
本構成によれば、突出部材は、搬送ローラーの回転停止、または逆回転動作に連動して、シート搬送路に突出する。したがって、突出部材を出没させる専用の駆動手段を設けることなく、突出動作が実行される。また、搬送ローラーによってシートが搬送されている際に、誤って突出部材がシート搬送路に突出することが防止される。
【0021】
上記の構成において、前記搬送ローラーの回転に連動して、前記突出部材を出没させる第2連動機構を更に備え、前記第2連動機構は、第2回動支点部と、前記第2回動支点部から、互いに反対方向に延びる第3片および第4片と、前記第3片の先端側に配設され、前記搬送ローラーの回転方向に応じて、異なる方向から押圧力が付与される第2受圧部と、を有し、前記第4片の先端側に、前記突出部材が配設されていることが望ましい。
【0022】
本構成によれば、搬送ローラーの回転方向に応じて、第3片の先端に配設された第2受圧部に、異なる方向から押圧力が付与される。これにともない、第2連動機構は、第2回動支点部を中心に、異なる方向に回転される。したがって、第4片の先端側に配設された突出部材が、搬送ローラーの回転方向に応じて、シート搬送路に出没することが可能となる。
【0023】
本発明の他の局面に係る画像形成装置では、上記の何れかに記載のシート搬送装置と、前記シートに画像を形成する画像形成部と、を有することを特徴とする。
【0024】
本構成によれば、シートがトレイと画像形成装置本体との間で挟まり、画像形成装置本体内に残留し、破損することが抑制される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、シートトレイからシートの先端がシート搬送路に送り出された状態で、シートトレイが引き出された場合であっても、該シートがシートトレイと装置本体との間で挟まり、装置本体内に残留することが抑制される。したがって、シートの損傷が防止され、シートトレイの引き出し動作がスムーズに実行される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の斜視図である。
【図2】図1に示される画像形成装置の内部構成を示す図である。
【図3】画像形成装置に挿入される或いは画像形成装置から引き出されるシートトレイの斜視図である。
【図4】シートトレイを上方から見た斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る搬送ユニットの平面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る搬送ユニットの斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る搬送ユニットの斜視図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る搬送ユニットの断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る搬送ユニットの斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る搬送ユニットの斜視図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る搬送ユニットの断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る搬送ユニットの斜視図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る搬送ユニットの斜視図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る搬送ユニットの断面図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る搬送ユニットの斜視図である。
【図16】本発明の第2の実施形態に係る搬送ユニットの斜視図である。
【図17】本発明の第2の実施形態に係る搬送ユニットの断面図である。
【図18】本発明の第2の実施形態に係る搬送ユニットの第2支持ホルダの断面図である。
【図19】従来の搬送ユニットにおける紙詰まりの様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。尚、以下の説明において、「シート」との用語は、コピー用紙、コート紙、OHPシート、厚紙、葉書、トレーシングペーパや画像形成処理を受ける他のシート材料或いは画像形成処理以外の任意の処理を受けるシート材料を意味する。また、「第1方向下流側」とは、各図で矢印によって示される第1方向の矢先側を意味し、「第1方向上流側」とは、同様に矢の基端側を意味するものとする。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態にしたがう画像形成装置の斜視図である。図2は、図1に示される画像形成装置の内部構造を概略的に示す図である。図1及び図2に示される画像形成装置は、いわゆる胴内排紙型の複写機であるが、他の実施形態において、プリンター、ファクシミリ装置、これらの機能を備える複合機やトナー画像をシートに形成するための他の装置であってもよい。
【0029】
画像形成装置1は、略直方体形状の主筐体2を含む。主筐体2は、略直方体形状の下部筐体21と、下部筐体21の上方に配設される略直方体形状の上部筐体22と、下部筐体21と上部筐体22とを連結する連結筐体23とを含む。連結筐体23は、主筐体2の右縁及び背面縁に沿って延びる。下部筐体21、上部筐体22及び連結筐体23で囲まれる排出空間24に印刷処理が施与されたシートが排出される。
【0030】
上部筐体22の正面方向に突出する操作部221は、例えば、LCDタッチパネル222を含む。操作部221は、画像形成処理に関する情報を入力可能に形成される。使用者は、例えば、LCDタッチパネル222を通じて、印刷されるシートの枚数等を入力したり、印刷濃度等を入力したりすることができる。上部筐体22内には、主に原稿の画像を読み取るための機器や画像形成装置1の全体の制御を司る電子回路が収容される。
【0031】
上部筐体22の上に配設される押さえカバー223は、原稿を押さえるために用いられる。押さえカバー223は、上部筐体22に上下に回動可能に取り付けられる。使用者は、押さえカバー223を上方に回動させ、上部筐体22上に原稿を載置する。その後、使用者は操作部221を操作して、原稿の画像を上部筐体22内に配設された機器に読み取らせることができる。
【0032】
下部筐体21(筐体)には、複数のシートを積載するシートトレイ500が配設される。シートトレイ500は、下部筐体21から正面方向(第1方向)に引出可能である。シートトレイ500内に収容されたシートPは、下部筐体21内で上方に送り出され、操作部221を通じて使用者によって入力された指示に基づき、下部筐体21内で画像形成処理を施与され、排出空間24へ排出される。
【0033】
下部筐体21の右面には、トレイ212が回動可能に取り付けられる。図1に示されるように、トレイ212が下部筐体21の右方に突出する位置にあるとき、使用者はトレイ212上にシートを載置可能である。トレイ212上のシートは、操作部221を通じて使用者によって入力された指示に基づき、下部筐体21内に引き込まれた後、画像形成処理を施与され、排出空間24へ排出される。トレイ212が上方に回動されると、下部筐体21の右面に凹設された収容空間203内にトレイ212が収容され、シートを下部筐体21内に引き込むための供給口を塞ぐ。
【0034】
下部筐体21は、シートに画像を形成するための様々な機器を収容する。また、連結筐体23は、画像形成処理が施与されたシートを排出空間24へ排出するための様々な機器を収容する。
【0035】
図2は、図1に示される画像形成装置1の内部構造を概略的に示す。上部筐体22は、走査機構224を収容する。使用者は、走査機構224を通じて、所望の原稿の画像を画像形成装置1に読み取らせることができる。走査機構224上には、上部筐体22の上面に取り付けられるコンタクトガラス225が配設される。押さえカバー223(図1)は、コンタクトガラス225上に載置された原稿を押さえるために用いられる。使用者が、操作部221を通じて、画像形成装置1を作動させると、走査機構224は、コンタクトガラス225上の原稿の画像を走査して読み取る。走査機構224によって読み取られた画像のアナログ情報は、デジタル信号に変換される。画像形成装置1は、デジタル信号に基づき、シートに画像を形成する。
【0036】
下部筐体21には、トナーコンテナ900Y、900M、900C、900Bk、中間転写ユニット902、画像形成部903、露光ユニット904、定着ユニット97及び排紙ユニット96、搬送ユニット3が収容される。
【0037】
画像形成部903は、イエロー用トナーコンテナ900Y、マゼンタ用トナーコンテナ900M、シアン用トナーコンテナ900C、ブラック用トナーコンテナ900Bkを含む。これらコンテナの下方には、YMCBk各色に対応する現像装置10Y、10M、10C、10Bkがそれぞれ配設される。
【0038】
画像形成部903は、各色のトナー像を担持する感光体ドラム17を含む。感光体ドラム17として、アモルファスシリコン(a−Si)系材料を用いた感光体ドラムを用いることができる。各感光体ドラム17には、トナーコンテナ900Y、900M、900C、900Bkからそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーが供給される。
【0039】
感光体ドラム17の周囲には、帯電器16、現像装置10(10Y、10M、10C、10Bk)、転写器19及びクリーニング装置18が配置される。帯電器16は、感光体ドラム17の表面を均一に帯電する。帯電後の感光体ドラム17の表面は、露光ユニット904によって露光され、静電潜像が形成される。露光ユニット904は、上述の走査機構224によって生成されたデジタル信号に基づき、レーザ光を照射する。現像装置10Y、10M、10C、10Bkは、それぞれトナーコンテナ900Y、900M、900C、900Bkから供給される各色のトナーを用いて、各々の感光体ドラム17上に形成された静電潜像を現像(可視像化)する。転写ローラー19は、中間転写ベルト921を挟んで感光体ドラム17とニップ部を形成し、感光体ドラム17上のトナー像を中間転写ベルト921上に一次転写する。クリーニング装置18は、トナー像転写後の感光体ドラム17の周面を清掃する。
【0040】
各現像装置10Y、10M、10C、10Bkは、現像筐体20を備える。現像筐体20の内部には、磁性キャリアとトナーとを有する2成分現像剤が収納される。また、現像筐体20内には、現像筐体20の底部近傍に長手方向を軸方向として並列に2本の攪拌ローラー11、12が回転可能に配置される。
【0041】
現像筐体20の内部底面には、現像剤の循環経路が設定されており、攪拌ローラー11、12は循環経路内に配設される。攪拌ローラー11、12の間の軸方向には、現像筐体20の底部から立設された仕切り壁201が設けられる。仕切り壁201は、循環経路を区画する。仕切り壁201の周囲を周回するように、循環経路が形成される。2成分現像剤は、循環経路を攪拌ローラー11及び12によって攪拌、搬送されながら帯電される。
【0042】
2成分現像剤は、攪拌ローラー11及び12によって攪拌されつつ現像筐体20内を循環し、トナーが帯電される。攪拌ローラー11上の2成分現像剤は、上側に位置する磁気ローラー14に吸引されて搬送される。吸引された2成分現像剤は、磁気ローラー14上に磁気ブラシ(図示せず)を形成する。磁気ブラシは、ドクターブレード13によって層厚規制され、更に上方の現像ローラー15にトナーを供給する。現像ローラー15上のトナー層は、磁気ローラー14と現像ローラー15との間の電位差によって形成される。トナー層によって感光体ドラム17上の静電潜像が現像される。
【0043】
露光ユニット904は、光源やポリゴンミラー、反射ミラー、偏向ミラーなどの各種の光学系機器を有し、画像形成部903の各々に設けられた感光体ドラム17の周面に、画像データに基づく光を照射して、静電潜像を形成する。
【0044】
中間転写ユニット902は、中間転写ベルト921、駆動ローラー922及び従動ローラー923を備える。中間転写ベルト921上には、複数の感光体ドラム17からトナー像が重ね塗りされる(一次転写)。重ね塗りされたトナー像は、シートトレイ500又はトレイ212(図1参照)から供給されるシートに二次転写部98において二次転写される。中間転写ベルト921を周回駆動させる駆動ローラー922及び従動ローラー923は、下部筐体21によって回転自在に支持される。
【0045】
定着ユニット97は、中間転写ユニット902から二次転写されたシート上のトナー像に対し、定着処理を施す。定着処理されたカラー画像付のシートは、定着ユニット97の上部(連結筐体23内)に形成された排紙ユニット96へ向けて排出される。
【0046】
排紙ユニット96は、定着ユニット97から搬送されたシートを、排紙トレイとして用いられる下部筐体21の上面213上に排出する。
【0047】
搬送ユニット3は、シートトレイ500に対向して、下部筐体21に配設されている。搬送ユニット3は、ピックアップコロ310(送出手段)、給紙コロ320(給紙手段)、搬送ローラー330を有する。搬送ユニット3に設けられたピックアップコロ310および給紙コロ320が回転駆動されることにより、シートトレイ500内のシート束の最上層のシートが1枚ずつ取り出される。更に、搬送ローラー330によって、シート搬送路133の下流側へと繰り出され、画像形成部903へ導入される。ピックアップコロ310、給紙コロ320、搬送ローラー330は、画像形成部903にシートが搬送されるシート搬送路133の一部を形成する。
【0048】
<シートトレイの構造>
図3は、下部筐体21内に配置された収容空間600に挿入されるシートトレイ500、或いは該収容空間600から引き出されるシートトレイ500を示す斜視図である。
【0049】
シートトレイ500は、収容空間600に収容可能に形成される。使用者は、シートトレイ500内にシートを補充するとき、或いは、シートトレイ500内のシートを他のシートに交換するとき、シートトレイ500を収容空間600から引き出す。また、使用者は、シートトレイ500内に新たなシートを補充したとき、或いは、シートトレイ500内のシートを新たなシートに交換した後、シートトレイ500を収容空間600内に押し込む。シートトレイ500が収容空間600内に収容されたとき、シートトレイ500は、下部筐体21内でシートを保持する。収容空間600の内外へ向かうシートトレイの移動は、レール613に案内される。以下の説明において、収容空間600からシートトレイ500が引き出される方向(背面側から正面側に向かう方向)は、便宜的に、第1方向(各図で矢印1a方向)と称され、第1方向とは反対に、シートトレイ500が収容空間600内に押し入れられる方向(正面側から背面側に向かう方向)は、便宜的に、逆第1方向(各図で矢印1b方向)と称される。
【0050】
図4は、シートトレイ500の斜視図である。シートトレイ500は、シートを収容可能に形成されたシートトレイ筐体510を含む。シートトレイ筐体510は、略矩形状の底壁511と、該底壁511に敷設されたリフト板530と、底壁511の周縁から上方に立設される一対の側壁512と、正面壁513及び背面壁514とを含む。一対の側壁512の正面側縁部の間で延びる正面壁513は、シートトレイ筐体510が収容空間600内に完全に収容されたとき、主筐体2の外面に現れる。背面壁514は、正面壁513に対向して配設される。一対の側壁512のうち、右方に位置する側壁は、シートの搬送方向において下流に位置する下流壁515であり、左方に位置する側壁は、シートの搬送方向において上流に位置する上流壁516である。一対の側壁512それぞれが、レール613に噛み合うことによって、シートトレイ500の第1方向及び逆第1方向への移動が案内されることとなる。正面壁513は、略U字型の把持部518を備える。使用者は、把持部518を握持し、シートトレイ500を第1方向及び逆第1方向に移動することができる。一対の側壁512、正面壁513及び背面壁514の上縁は、シートトレイ500内にシートを収容するための開口部517を形成する。使用者は開口部517を通じて、シートトレイ筐体510内にシートを収容することができる。
【0051】
シートトレイ500は、正面壁513及び背面壁514それぞれに隣接する一対のガイド部材520を更に含む。ガイド部材520は、リフト板530上に配設されたシートの幅方向の変位を規制する。底壁511には、ガイド部材520の移動を案内するための案内溝521が形成される。案内溝521は、正面壁513から背面壁514に向けて延びる。したがって、ガイド部材520は、シートの幅方向に移動可能である。かくして、使用者は、任意の大きさのシートの側縁にガイド部材520を当接させることが可能となる。
【0052】
リフト板530は、底壁511上に配置され、上面にシートが積載される。リフト板530は、図4において、上面にシートを積載した状態で、シートの搬送方向下流側(下流壁515側)が上方に持ち上げられ、積載するシートを搬送ユニット3に向けて送り出す姿勢をとることができる。
【0053】
<搬送ユニットの構造>
次に、図5から図11を参照して、本発明の第1の実施形態にかかる搬送ユニット3について説明する。図5は、本実施形態にかかる搬送ユニット3の平面図である。また、図6および図7は搬送ユニット3の斜視図であり、図8は搬送ユニット3の断面図である。図6〜図8は、いずれも後述のストッパー401がシート搬送路133から退避している状態を表している。同様に、図9および図10は搬送ユニット3の斜視図であり、図11は搬送ユニット3の断面図である。図9〜図11は、いずれも後述のストッパー401がシート搬送路133に突出している状態を表している。
【0054】
搬送ユニット3は、図2の下部筐体21において、シートトレイ500の上方に配置されている。搬送ユニット3は、シートトレイ500内でリフト板530(図4)によって持ち上げられたシートPの束を1枚ずつ捌き、捌かれたシートPを前述の第1方向と交差する第2方向に延伸されたシート搬送路133の下流側に搬送する。このように、搬送ユニット3は下部筐体21に固定的に配置されているため、使用者がシートトレイ500を第1方向、逆第1方向において抜き差ししても、搬送ユニット3は下部筐体21から引き出されることはない。
【0055】
搬送ユニット3は、図6および図7に示すように、断面視でL字型の形状を有する箱型のユニットである。搬送ユニット3は、側面を形成する略L字型の一対の側壁301、302と、側壁301、302を連接し搬送ユニット3の第2方向前面を形成する前壁303と、搬送ユニット3の第2方向後面を形成する第1後壁304aと、L字型の屈曲部における後面を形成する第2後壁304bと、第1後壁304aから第2後壁304b側に向かって延設された略水平面からなる上面部312とによって、その外形が形成される。シートトレイ500に収容されるシートPは、上面部312と第2後壁304bとによって形成されるL字の屈曲部K(図8)に向かって搬送される。
【0056】
搬送ユニット3には、ピックアップコロ310(送出手段)と、給紙コロ320(給紙手段)と、支持シャフト314と、分離コロ321(分離手段)と、搬送ローラー330と、電気的なアクチュエーター451および揺動プレート309(いずれも移動手段)とが配設されている。更に、搬送ユニット3は、各ローラーに駆動を入力するための第1モーター91と、第2モーター92と、第1モーター91、第2モーター92およびアクチュエーター451を制御する制御部93(制御手段)と、アクチュエーター451に電流を供給する電源94と、駆動を伝達するための第1カップリング313と、第2カップリング333と、を備える。
【0057】
ピックアップコロ310は、上面部312のシート幅方向(第1方向)中央部において、後記の揺動プレート309から突出された回転軸310aに回転可能に支持されている。ピックアップコロ310は、シートトレイ500にシートPが収容された状態で(図5のシート位置P0参照)、該シートPの前縁上方に位置する。ピックアップコロ310は、シート搬送路133の入口で、回転駆動されることで、シートトレイ500内のシートPをシート搬送路133に送り出す。ピックアップコロ310は、シートトレイ500に収容されたシート束の最上面に当接する給紙位置(第1の位置:図8参照)と、該最上面から上方に離間した非給紙位置(第2の位置:図11参照)との間を移動する。
【0058】
給紙コロ320は、上面部312のシート幅方向中央部において、回転軸である支持シャフト314に回転可能に支持されている。給紙コロ320は、ピックアップコロ310よりもシート搬送方向下流側に所定の間隔をおいて配置されている。給紙コロ320は、ピックアップコロ310によって送り出されたシートのうち、最上面に位置するシートPのみをシート搬送方向下流側に向かって給送する。
【0059】
支持シャフト314は、給紙コロ320を回転可能に支持する回転軸である。支持シャフト314の基端は、後記の揺動プレート309の側面部309cに対向して配設された不図示のフレームに支持されるとともに、給紙コロ320を貫通し、給紙コロ320に隣接する支持ローラー334を支持する。また、支持シャフト314の先端側は、側壁302によって支持されている。該支持シャフト314の先端には、第1カップリング313が配設されている。支持シャフト314は、上記の基端と先端との間で、揺動プレート309の一部を貫通するように延設されている。
【0060】
分離コロ321は、給紙コロ320の下方において、給紙コロ320との間でシート搬送路133を挟むように、不図示の支持部によって回転可能に支持されている(図6)。給紙コロ320と分離コロ321との間で、シートPがニップされる給紙ニップ部Aが形成される。分離コロ321は、第2後壁304bに形成された開口304dから上方に突出して配設されている。分離コロ321は、図8の矢印r3に示すように給紙ニップ部Aにおいて、給紙コロ320の回転方向(矢印r2)と逆方向に回転される。ピックアップコロ310によって複数のシートが送り出された場合であっても、分離コロ321が給紙コロ320と逆方向に回転することによって、最上面に位置するシートP以外のシートがシート搬送方向下流側に搬送されることが抑制される。
【0061】
分離コロ321のシート搬送方向直上流位置には、フィルム450が配設されている。フィルム450は、逆方向に回転する分離コロ321によって、シートPの先端に折れが発生しないよう、シートPをガイドする。フィルム450の下端は、第2後壁304bに固定され、フィルム450の上方は、自由端として、給紙ニップ部Aに向かって傾斜して延設されている(図6)。複数枚のシートが給紙ニップ部Aに向かって送り出された場合であっても、フィルム450が、分離コロ321とシートとの間に介在する。このため、シートと分離コロ321とが接触しにくく、シート先端の折れが抑制される。
【0062】
搬送ローラー330は、上面部312において、前壁303に沿って配置されている。搬送ローラー330は、回転駆動され、給紙コロ320によって給紙されたシートPをシート搬送路133の下流側に向けて更に搬送する。搬送ローラー330は、ローラー軸332と、該ローラー軸332上に、所定の間隔をおいて配設された複数のローラー部331とを有する。ローラー軸332は、搬送ユニット3の一対の側壁301、302に回転可能に軸支されている。また、ローラー軸332の一端は、側壁302を貫通し、先端には、回転駆動を伝達する第2カップリング333が配設されている。
【0063】
アクチュエーター451は、上面部312の第1後壁304aと側壁302とで形成される角部に配設される。アクチュエーター451は、内部から突出する伝達軸451aを有する。電源94から所定の電流が、側壁302の外側に配設されたコネクタ452から通電されることで、アクチュエーター451は、伝達軸451aの吸引動作を実行する。伝達軸451aの吸引動作は、揺動プレート309に伝達され、ピックアップコロ310の移動動作に変換される。
【0064】
第1モーター91は、第1カップリング313に接続され、制御部93からの制御信号を受けて、ピックアップコロ310および給紙コロ320を回転させる回転駆動力を出力する。また、第2モーター92は、第2カップリング333に接続され、制御部93からの制御信号を受けて、搬送ローラー330を回転させる回転駆動力を出力する。
【0065】
制御部93は、第1モーター91、第2モーター92、電源94に対して制御信号を入力する。該制御信号によって、第1モーター91、第2モーター92の回転動作と、アクチュエーター451の吸引動作がそれぞれ実行される。
【0066】
電源94は、コネクタ452を介してアクチュエーター451に接続されている。電源94は、制御部93からの制御信号を受けて、アクチュエーター451に駆動電流を供給する。
【0067】
揺動プレート309は、側壁302と、ピックアップコロ310および給紙コロ320との間に配設される。揺動プレート309は、アクチュエーター451から入力される駆動力に応じて、ピックアップコロ310を上下に移動させる。
【0068】
揺動プレート309は、第1方向に長辺、第2方向に短辺を有する略矩形板形状のプレート本体309Hと、伝達部311と、ピックアップコロ310と、回転軸310aと、アイドラギア306と、第2ギア307とを有する。
【0069】
プレート本体309Hは、前縁部309dと、側面部309cと、後端部309eと、後側面部309fと、側面部を有する。前縁部309dは、矩形形状の長辺に相当する。前縁部309dは、プレート本体309Hの第2方向の下流側で第1方向に延設される。側面部309cは、矩形形状の短辺に相当する。側面部309cは、第2方向に延設され、前縁部309dに連接する側端面である。後端部309eは、プレート本体309Hの第2方向の上流側で、前縁部309dと平行に、前縁部309dよりも短い長さで延設される。後端部309eは、側面部309cに連接される。一方、プレート本体309Hにおいて、後端部309eよりも側壁302側は、前記矩形形状の一角部が欠損した形状を有する。後側面部309fは、該欠損した領域に対応した側面であり、側面部309cと平行に配設され、後端部309eに連接される。
【0070】
伝達部311は、クランク機構を有し、前記アクチュエーター451の伝達軸451aの出没動作をプレート本体309Hの上下移動に変換する。伝達部311は、後側面部309fに当接する。
【0071】
第1ギア305は、プレート本体309Hの側面部309cの第2方向下流側に配置される。第1ギア305は、側壁302から第1方向にプレート本体309H内を貫通し、側面部309cから突出した支持シャフト314に回転可能に支持される。第1ギア305は、該支持シャフト314と共に回転され、アイドラギア306に回転駆動力を伝達する。
【0072】
アイドラギア306は、側面部309cの第2方向中央部から第1方向に突出した不図示の軸部に自由回転可能に支持される。アイドラギア306は、第1ギア305から第2ギア307に回転駆動力を伝達する。
【0073】
第2ギア307は、側面部309cの第2方向上流側から第1方向に突出した回転軸310aに回転可能に支持される。第2ギア307は、アイドラギア306から回転駆動力を受け、回転軸310a上に支持されたピックアップコロ310に回転駆動力を伝達する。
【0074】
<搬送ユニット内の駆動伝達について>
次に、図7に基づいて、搬送ユニット3における駆動伝達の構造について詳述する。下部筐体21側に配設された第1モーター91および第2モーター92は、制御部93によって制御され、それぞれ、搬送ユニット3の側壁302側に配設された第1カップリング313および第2カップリング333に回転駆動力を入力する。
【0075】
第1カップリング313に入力された回転駆動力は、揺動プレート309のプレート本体309H内に延設された支持シャフト314に伝達される。これにより、支持シャフト314の基端側に固定支持された給紙コロ320が回転駆動される。また、該支持シャフト314に伝達された回転駆動力は、第1ギア305から、アイドラギア306を介し、ピックアップコロ310に隣接配置された第2ギア307に伝達される。該第2ギア307からピックアップコロ310に回転駆動力が伝達され、ピックアップコロ310が回転駆動される。
【0076】
第2カップリング333に入力された回転力は、搬送ローラー330のローラー軸332に直接入力され、ローラー部331を回転させる。
【0077】
また、アクチュエーター451は、制御部93からの制御信号を受けた電源94からコネクタ452を介して電流が供給されることで、吸引動作を実行する。アクチュエーター451への通電が行われると、吸引動作が実行され、伝達軸451aはアクチュエーター451の内部に没するように移動する。アクチュエーター451への通電が行われていない場合は、吸引動作が解除され、伝達軸451aはアクチュエーター451本体から外部に突出する。
【0078】
揺動プレート309は、図7において、支持シャフト314と直交する断面において、支持シャフト314を支点として回転(揺動)する。
【0079】
アクチュエーター451に通電が行われていない場合、伝達軸451aはアクチュエーター451本体から突出する。この際、伝達部311のクランク動作によって、プレート本体309Hには、上下移動のための外力が付与されない。また、揺動プレート309の重心が後端部309e側にあるため、揺動プレート309は、支持シャフト314を回転軸として、後端部309e側が下方に回転した位置で停止する。この場合、回転軸310aによって、側面部309cの後端部309e側に支持されているピックアップコロ310も、上下移動範囲内の下方の位置で停止する。この結果、ピックアップコロ310は、シートトレイ500に収容されたシート束の最上面に当接する給紙位置(第1の位置:図8参照)に配置される。
【0080】
これに対して、アクチュエーター451に通電が行われ、アクチュエーター451の吸引動作が実行されると、伝達軸451aがアクチュエーター451本体内に没入する。これに伴い、伝達軸451aに連接される伝達部311のクランク動作によって、プレート本体309Hの後端部309eが、支持シャフト314を回転軸として上方に引き上げられる。この結果、側面部309cの後端部309e側に支持されているピックアップコロ310は上方に移動する。従って、ピックアップコロ310は、シートトレイ500に収容されたシート束の最上面から上方に離間した非給紙位置(第2の位置:図11参照)に配置される。
【0081】
このように、アクチュエーター451の吸引動作は、揺動プレート309に伝達された結果、ピックアップコロ310の上下の移動動作に変換される。
【0082】
<シートPの搬送動作について>
次に、本実施形態にかかる搬送ユニット3において、シートトレイ500に収容されたシートPがシート搬送路133を搬送される動作について説明する。
【0083】
図5において、シートトレイ500に収容されたシート束は、P0の位置に配置される。この際、シート束は、ガイド部材520によって、幅方向の位置が規制されている。シート束は、リフト板530によって前縁側(第2方向下流側)が上方に持ち上げられる。この結果、シート束の最上面に位置するシートPには、図8に示すように、その前縁部に給紙位置となったピックアップコロ310が当接する。画像形成装置1の画像形成処理に応じて、制御部93が第1モーター91を回転駆動させ、ピックアップコロ310は、シートPを給紙ニップ部Aに向かって送り出す。この際、数枚のシートがつられて送り出されることがあるが、ピックアップコロ310と同時に回転する給紙コロ320と、該給紙コロ320とは給紙ニップ部Aで逆方向に回転する分離コロ321とによって、最上面に位置するシートPのみが、給紙ニップ部Aを通過し搬送される。更に、制御部93によって、第2モーター92が回転駆動され、搬送ローラー330が回転する。これにより、給紙ニップ部Aを通過したシートPは、更にシート搬送路133の下流側に搬送された後、画像形成処理が施される。
【0084】
<シートPの詰まりについて>
ここで、画像形成処理が完了した状態の搬送ユニット3では、ピックアップコロ310によって送り出されたシートPの先端が、給紙ニップ部A付近に位置する状態で停止していることがある(図19のP1)。特に、本実施形態では、分離コロ321のシート搬送方向直上流にフィルム450が配設されているため、シートPは、該フィルム450の先端と給紙コロ320との間で挟持された状態で停止する場合がある。この状態で、使用者がシートトレイ500を第1方向に引き出した場合、シートPはガイド部材520によって第1方向に押し出されるとともに、給紙ニップ部A付近を中心として、矢印R1方向の回転力を受けることとなる。この回転力によって、シートPはシートP2の位置にずれ、シートトレイ500の引き出しに伴い、装置本体の支柱フレーム231に衝突する(図3、図19参照)。この結果、シートPは、シートトレイ500とともに引き出されることなく、しわを生じたまま、画像形成装置1に残留することとなる。
【0085】
<ストッパーとその作用について>
この課題を解決するために、本実施形態では、図9〜図11に示すように、給紙ニップ部Aから第1方向に延びる仮想線Q(図5)の近傍において、ストッパー401がシート搬送路133に出没可能に配設されている。ストッパー401は、給紙コロ320による給紙動作が行われていない場合に、シートPがシート搬送路133へ進入することを防止するように、シート搬送路133に突出する。本実施形態において、ストッパー401は、図9に示すように、給紙ニップ部Aよりも第1方向側の位置において、上面部312に形成された開口312aから下方に突出し、第2後壁304bに形成された開口304cに進入する。
【0086】
シートPの先端が給紙ニップ部A付近に位置する状態でシートが停止した場合、ストッパー401が上記の位置に突出すると、ストッパー401はシートの前縁部に対向する(図5の領域B)。この状態で使用者によってシートトレイ500が第1方向に引き出されると、シートPはガイド部材520によって第1方向に押し出される。この際、給紙ニップ部A付近での挟持力によって、給紙ニップ部Aを支点とする矢印R1方向の回転力がシートPにもたらされる。しかしながら、ストッパー401が領域Bにおいて、シートPの前縁部を規制するため、シートPは、回転することなく、第1方向にシートトレイ500と共に引き出される(P2)。この結果、シートPが画像形成装置1内でしわを生じたまま残留することが抑制される。
【0087】
また、本実施形態では、ストッパー401の出没動作は、前述のピックアップコロ310の上下動に連動して実行される。これにより、ストッパー401は、出没動作専用の駆動手段を有することなく、シート搬送路に出没可能とされる。以下に、本実施形態におけるストッパー401の出没動作について詳述する。
【0088】
ストッパー401は、図7に示すように、ピックアップコロ310に対して、揺動プレート309の反対側に配設された第1支持ホルダ402(第1連動機構)に配設されている。第1支持ホルダ402は、ホルダ本体402aと、第1軸部404(第1回動支点部)と、第1アーム402b(第1片)および第2アーム402c(第2片)とを有する。
【0089】
ホルダ本体402aは箱型形状を有し、該ホルダ本体402aの端部には、ピックアップコロ310の回転軸310aと平行な第1軸部404が配設されている。第1軸部404は、搬送ユニット3の上面部312に配設された軸支部405に挿通される。該軸支部405に支持されることにより、第1支持ホルダ402は、第1軸部404を中心に回転可能とされる。
【0090】
第1アーム402bおよび第2アーム402cは、第1軸部404と交差する断面において、ホルダ本体402aから互いに反対方向に延びる突出片である。第1アーム402bの先端には、U字形状からなる係合溝403(第1受圧部)が配置されている。係合溝403は、ピックアップコロ310の端面から第1方向に突出した回転軸310aに対向して配置されている。また、第2アーム402cの先端には、板状のストッパー401が下方に向かって延設されている。
【0091】
前述のとおり、アクチュエーター451に通電が行われていない場合、揺動プレート309の重心が、後端部309e側にあるため、ピックアップコロ310は下方の給紙位置に配置される。この際、ピックアップコロ310の回転軸310aは、第1支持ホルダ402の係合溝403のU字底を下方に押し下げる。この結果、第1支持ホルダ402は、軸支部405を中心に、係合溝403を有する第1アーム402b側が下方に、ストッパー401を有する第2アーム402c側が上方に移動するように回転する。従って、ストッパー401は、シート搬送路133に突出することなく、搬送ユニット3の上面部312よりも上方に没入する(没入位置)。
【0092】
これに対して、アクチュエーター451に通電が行われると、ピックアップコロ310は、第1の位置よりも上方の第2の位置に移動する。この際、ピックアップコロ310の回転軸310aが、第1支持ホルダ402の係合溝403から離間するため、第1支持ホルダ402には、外力が作用しない。ここで、第1支持ホルダ402は、外力が作用せず、軸支部405のみによって支持されている場合、係合溝403を有する第1アーム402側が上方に、ストッパー401を有する第2アーム402c側が下方に位置するように、予めその支点が設定されている。この結果、ストッパー401は、搬送ユニット3の上面部312から下方に移動し、シート搬送路133の一部に突出する(突出位置)。
【0093】
このように、本実施形態では、ストッパー401のシート搬送路133への出没動作は、アクチュエーター451および揺動プレート309によるピックアップコロ310の上下動に連動して実行される。この結果、ストッパー401は、出没動作専用の駆動手段を有することなく、シート搬送路に出没可能とされる。また、ピックアップコロ310が、非給紙位置から給紙位置に移動することに連動して、ストッパー401がシート搬送路133から上面部132に没入するため、ピックアップコロ310がシートPを送り出した際に、誤ってストッパー401がシート搬送路に突出することがない。
【0094】
なお、上記のアクチュエーター451への通電が長時間継続されると、アクチュエーター451の温度上昇を生じる場合がある。このため、制御部93は、画像形成装置1の動作が終了後、所定時間だけアクチュエーター451に通電を継続した後、通電を切断することが望ましい。これによって、使用者がシートトレイ500を引き出す可能性が高い時間帯に対応して、アクチュエーター451に通電が継続され、ストッパー401がシート搬送路133に突出することができる。また、アクチュエーター451への通電が長時間継続されることによるアクチュエーター451の温度上昇が抑制される。
【0095】
次に、図12から図18を参照して、本発明の第2の実施形態にかかる搬送ユニット8について説明する。図12および図13は搬送ユニット8の斜視図であり、図14は搬送ユニット8の断面図である。図12〜14は、いずれも後述のストッパー801がシート搬送路133から退避している状態を表している。同様に、図15および図16は搬送ユニット8の斜視図であり、図17は搬送ユニット8の断面図である。図15〜17は、いずれも後述のストッパー801がシート搬送路133に突出している状態を表している。
【0096】
第2の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、シート搬送路133に出没するストッパー801の配置およびその出没動作に係る駆動機構において相違し、その他の構成を同じにするため、相違する点について説明し、その他を省略する。
【0097】
本実施形態において、シート搬送路に突出するストッパー801は、図12に示すように、搬送ユニット8の上面部812に、搬送ローラー330と平行に配設された第2支持ホルダ800(第2連動機構)に配置されている。第2支持ホルダ800は、第1プレート800A(第4片)と、第2プレート800B(第3片)と、中央部800Cと、を有する。
【0098】
中央部800Cは、断面視でコの字形状を有し、第1プレート800Aおよび第2プレート800Bを第1方向中央部で連通させる。該中央部800Cには、支持軸802(第2回動支点部)が配設され、該支持軸802が、上面部812から突設された支持部680に、回動可能に挿通されている。
【0099】
第1プレート800Aは、中央部800Cから逆第1方向に延伸する板状部材である。第1プレート800Aの先端には、下方に向かって板状のストッパー801(突出部材)が配設されている。
【0100】
第2プレート800Bは、中央部800Cから第1方向に延伸する板状部材である。第2プレート800Bの先端には、力点部803(第2受圧部)が配設されている。力点部803には、第2支持ホルダ800が支持軸802を支点として回動するための駆動が伝達される。
【0101】
力点部803は、第2プレート800Bの先端から、T字型に突出した形状を有し、その突出方向は上面部812に配設された搬送ローラー330のローラー軸332に向かうように設定されている(図18)。
【0102】
搬送ローラー330は、ローラー軸332の力点部803が対向する位置に、パイプ形状を有するスリーブ335を有する。更に、スリーブ335の周面には、トーションばね70のコイル部が挿通されている。トーションばね70から突出する2本の軸端部70A、70Bは、第2支持ホルダ800の力点部803を上下方向から挟むように、力点部803に当接している。
【0103】
本実施形態では、ストッパー801の出没動作は、搬送ローラー330の回転駆動に連動して実行される。第2モーター92は、制御部93によって、正逆方向に回転制御される。
【0104】
図18の矢印RAに示すように、搬送ローラー330がシートを搬送するために正転駆動された場合、トーションばね70の軸端部70Aが力点部803を上方から下方に向かって押圧する。この結果、第2支持ホルダ800は、支持軸802を支点として回動し、第1プレート800A側のストッパー801は上方に移動する。すなわち、搬送ローラーが正方向に回転駆動された場合、ストッパー801はシート搬送路133に突出せず、退避位置に配置される(図12〜14)。
【0105】
これに対して、搬送ローラー330が矢印RBに示すように、逆転駆動された場合、トーションばね70の軸端部70Bが力点部803を下方から上方に向かって押し上げる。この結果、第2支持ホルダ800は、支持軸802を支点として回動し、第1プレート800A側のストッパー801は下方に移動する。すなわち、搬送ローラー330が逆方向に回転駆動された場合、ストッパー801はシート搬送路133に突出し、前述のように、シートPの前縁を規制する効果を奏する(図15〜17)。
【0106】
なお、トーションばね70の軸端部70A、70Bが有する弾性力と、第2支持ホルダ800の自重によって力点部803にもたらされる下方への押圧力とを予め調整することで、搬送ローラー330が回転停止状態にあるときでも、ストッパー801をシート搬送路133に突出させることが可能となる。
【0107】
このように、本実施形態では、搬送ローラー330の回転駆動に連動して、ストッパー801のシート搬送路133に対する出没動作が切り替えられる。このため、ストッパー801の出没動作に専用の駆動手段を備える必要がなく、他の駆動手段の兼用が可能となる。更に、搬送ローラー330の回転方向に応じて、力点部803には異なる方向から押圧力が与えられる。この際、搬送ローラー330の正転動作に対応して、ストッパー801がシート搬送路133から上面部132に没入するため、搬送ローラー330がシートを搬送している際に、誤ってストッパー801がシート搬送路133に突出することがない。
【0108】
以上の実施形態では、シートトレイ500からシートPの先端が、第2方向に延設されるシート搬送路133に送り出された状態で、シートトレイ500が第1方向に引き出された場合であっても、該シートPがシートトレイ500と下部筐体21との間で挟まり、下部筐体21内に残留することが抑制される。したがって、シートPの損傷が防止され、シートトレイ500の第1方向への引き出し動作がスムーズに実行される。
【0109】
なお、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0110】
(1)上記の実施形態では、ピックアップコロ310の上下動および搬送ローラー330の回転駆動に連動させて、ストッパー401、801を出没させる態様で説明した。しかし、ストッパーの出没動作の駆動機構はこれに限定されるものではない。たとえば、ストッパーの出没動作のために、専用のアクチュエーターやモーターなどが備えられるものでもよい。
【0111】
(2)また、シートトレイ500を使用者が引き出す動作に合わせて、ストッパーがシート搬送路133に出没するようにしても良い。具体的には、シートトレイ500から装置本体の下部筐体21に、予めワイヤーが引き回されている構成があげられる。この場合、使用者がシートトレイ500を引き出し始めることによって、ワイヤーに張力が生じ、該張力をもって所定の駆動機構を介して、ストッパーがシート搬送路133に突出する。
【0112】
(3)また、上記の本実施形態において、シート搬送路133は、シートを画像形成部903に送出する搬送路として用いられるが、他のシート搬送装置において、シート搬送路は、例えば、シートを切断する切断要素、シートを折り曲げる折り曲げ要素、シートを穿孔する穿孔要素やシートに所望の処理を施与する処理要素にシートを搬送する搬送路であってもよい。
【符号の説明】
【0113】
133 シート搬送路
3 搬送ユニット(シート搬送装置)
309 揺動プレート
310 ピックアップコロ(送出手段)
320 給紙コロ(給紙手段)
321 分離コロ
330 搬送ローラー
401 ストッパー(突出部材)
402 第1支持ホルダ(第1連動機構)
450 フィルム
451 アクチュエーター(移動手段)
500 シートトレイ
800 第2支持ホルダ(第2連動機構)
801 ストッパー(突出部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
複数のシートが積載され、前記筐体に装着されるとともに、前記筐体から第1方向に引出可能なシートトレイと、
前記筐体内に配置され、前記シートトレイから前記第1方向と交差する第2方向に延設されるシート搬送路と、
前記シートトレイに積載された前記シートに対向して配置され、前記シート搬送路に前記シートを送り出す送出手段と、
前記送出手段によって送り出された前記シートに当接して回転し、該シートをシート搬送路下流側に給紙する給紙手段と、
前記給紙手段に対向配置され、前記給紙されるシートとその他のシートとを分離する分離手段と、
前記給紙手段と前記分離手段とによってシートが挟持されるニップ部から前記第1方向に延びる仮想線の近傍において、前記シート搬送路に出没可能な突出部材と、
を有することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記送出手段を、前記シートに当接する第1の位置と、前記シートから離間した第2の位置との間で移動させる移動手段を備え、
前記突出部材は、前記移動手段が前記送出手段を前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させることに連動して、前記シート搬送路に突出することを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記移動手段は、前記送出手段を移動させる駆動力を出力する電気的なアクチュエーターと、前記アクチュエーターに対する通電制御を行う制御手段とを有し、前記送出手段は、前記制御手段による前記アクチュエーターへの通電に伴って、前記第1の位置から前記第2の位置に移動することを特徴とする請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記給紙手段による給紙動作終了後、所定時間だけ前記アクチュエーターへの通電を継続したのち、通電を切断することを特徴とする請求項3に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記移動手段による前記送出手段の移動に連動して、前記突出部材を出没させる第1連動機構を更に備え、
前記第1連動機構は、
第1回動支点部と、
前記第1回動支点部から互いに反対方向に延びる第1片および第2片と、
前記第1片の先端側に配設され、前記送出手段が前記第2の位置から前記第1の位置へ移動する際に、前記送出手段によって押圧される第1受圧部と、を有し、
前記第2片の先端側に、前記突出部材が配設されていることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記突出部材は、前記シートトレイが前記第1方向に引き出されることに連動して、前記シート搬送路に突出することを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
第1の回転方向に回転して、前記給紙手段から給紙されたシートをシート搬送方向下流側に搬送する搬送ローラーと、
前記搬送ローラーを前記第1の回転方向および、前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に回転させる回転駆動手段と、を更に備え、
前記突出部材は、前記搬送ローラーの回転停止または、前記搬送ローラーが前記第2の回転方向に回転することに連動して、前記シート搬送路に突出することを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記搬送ローラーの回転に連動して、前記突出部材を前記シート搬送路に出没させる第2連動機構を更に備え、
前記第2連動機構は、
第2回動支点部と、
前記第2回動支点部から、互いに反対方向に延びる第3片および第4片と、
前記第3片の先端側に配設され、前記搬送ローラーの回転方向に応じて、異なる方向から押圧力が付与される第2受圧部と、を有し、
前記第4片の先端側に、前記突出部材が配設されていることを特徴とする請求項7に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載のシート搬送装置と、
前記シートに画像を形成する画像形成部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−86903(P2013−86903A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227866(P2011−227866)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】