説明

シート搬送装置および画像形成装置

【課題】厚紙等の比較的剛性の高いシートでも、シートを保持しつつ安定した線速度で第2の搬送手段におけるシート搬送経路の下流側に問題なく搬送可能なシート搬送装置等を実現し提供する。
【解決手段】第1搬送路の外郭方向に配置され、グリップローラ81に従動してニップ部に向けて用紙を搬送する搬送ベルト82を備えたベルト搬送手段8Aを有し、ベルト搬送手段8Aは、ゴムからなる搬送ベルト82と、搬送ベルト82を走行可能に保持するプーリ83,84と、プーリ83,84を回転可能に軸支するベルト支持部材86とを具備し、プーリ83,84は、その軸間距離を一定に保持するようにベルト支持部材86に支持されており、搬送ベルト82は、該ベルトの厚さが1.5mm以上であって、該ベルトのゴムの硬度(JIS K 6253 A型)が35〜85度であり、かつ、搬送ベルト82の伸張率が10〜5%の条件を満たすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置、そのシート搬送装置を備えた複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、インクジェット記録装置、スキャナ等の画像読取装置等またはそれらのうちの少なくとも二つを組み合わせた複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PPC(プレイン・ペーパ・コピア:普通紙複写機)等を含む複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、インクジェット記録装置等の画像形成装置は、その装置全体の小型化を図るため、その画像が形成される媒体である被画像形成媒体あるいはシート状記録媒体(以下、「シート」という)を、シート収容手段あるいはシートを積載するシート積載手段から画像形成手段本体に搬送して供給するための搬送手段も小型化される傾向がある。以下、シートを収容するシート収容手段を代表して説明する。
【0003】
また、前記画像形成装置では、多様なシートサイズ(以下、例示的に「用紙サイズ」という)やシート種類(以下、例示的に「紙種」という)に対応した機種が一般的である。このような画像形成装置の機種では、例えば、いくつかの用紙サイズおよび紙種からなるシート(以下、例示的に「用紙」という)を、シート収容手段に予め収容しておき、ユーザが適宜選択したシート収容手段から用紙を、または画像形成装置が自動選択した用紙を給送できるようにしている。従って、このような構成の場合には、シート収容手段が画像形成装置内のスペースをより多く占めて消費するので、搬送手段を小型化する要求がより強まる。
【0004】
これらのことから、画像形成装置内におけるシート収容手段と画像形成手段本体との間に形成される搬送路は、両者の位置関係にもよるが、その搬送方向を大きく変更して、搬送路自体の占有スペースを削減するようにしている。その結果、搬送路上には、その搬送方向を連続的かつスムーズに変更するために、湾曲した形状からなる曲率部を設けて、この曲率部の曲率半径を、画像形成装置に通常使用されるシートとしての定型記録紙が搬送できる程度の比較的小さな半径に設定している。
このような画像形成装置におけるシート搬送装置としては、例えば特開2004−338923号公報に記載されている従来技術を挙げることができる(特許文献1参照)。すなわち、同公報の図6および図7に示されているように、画像形成手段本体の下側に、各段にそれぞれ所定のサイズや紙種のシートを所定枚数積載して収容したシート収容手段としての給紙トレイを配置し、給紙トレイと画像形成手段本体との間には、選択された段である給紙トレイの略水平方向に1枚のシートを引き出して上方の画像形成手段本体に向けて給送するシート搬送装置を設けた構成としている。
【0005】
以下、適宜、上記特開2004−338923号公報の各図に示されている符号に括弧を付して説明すると、給紙トレイ(1)内のシート(P)が周知のFRR分離方式で1枚に分離されて送り出され、上側ガイド板(8)および下側ガイド板(7)で形成された曲率部を備えた搬送経路を通過して画像形成手段本体へ搬送される。上記曲率部は、上側ガイド板(8)および下側ガイド板(7)からなる湾曲固定ガイド部材で形成されており、シート(P)は上記曲率部を通過する際に、下側ガイド板(7)に沿って搬送され、搬送が進むにつれて、シート(P)は、上側ガイド板(8)によって押さえ付けられるように経路が矯正され、下側ガイド板(7)の出口に位置する弾性変形可能な案内片(6)に沿って搬送ローラ対(5)に到達する。以下、上側ガイド板(8)および下側ガイド板(7)を、「湾曲固定ガイド部材」という。
けれども、上記のように構成したシート搬送装置では、厚紙等の記録紙や封筒のような剛性が高い特殊紙のシート(P)を搬送させようとすると、搬送経路の曲率部の曲率半径が小さいため、シート(P)がその曲率に従って撓みながら搬送されるときの抵抗が複写用の普通紙のようなシートと比べて格別に大きくなるため、高剛性の記録紙や特殊紙等のシート(P)を進行させることができず、ジャムや搬送不良を生じて安定した給送動作ができないという不具合があった。
【0006】
上記動作をさらに詳しく述ベルト、次のとおりである。シート(P)は、その搬送方向のシート(P)先端部(先端側)が、上側ガイド板(8)および下側ガイド板(7)からなる湾曲固定ガイド部材に至ると、この湾曲固定ガイド部材によって、シート(P)の先端側となる前半部分はその厚さ方向に湾曲される。このため、剛性の高いシート(P)を搬送するときには、この高剛性のシート(P)が湾曲に抗する力が増大して、その搬送を妨げる抵抗力も増大することとなる。従って、高剛性のシート(P)の先端部が下流側の搬送ローラ対(5)に到達せずに、上流側のローラ対(2a,2b)だけで高剛性のシート(P)を搬送して、高剛性のシート(P)が湾曲固定ガイド部材で湾曲されると、この上流側のローラ対(2a,2b)による搬送力だけでは、湾曲された高剛性のシート(P)から生じる抵抗力に対して、搬送方向に進める力として不足をきたすことになる。このため、高剛性のシート(P)の中心線が搬送経路の中心線に一致しなくなる斜行などの搬送不良や、高剛性のシート(P)が湾曲固定ガイド部材に引っ掛かって停止してしまう用紙ジャムが発生しやすくなる。
【0007】
そこで、上記特開2004−338923号公報では、第1の搬送手段から送り出されたシートを、その搬送方向下流側であって略垂直上方に位置する第2の搬送手段まで搬送する給紙装置において、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に一対の直線状ガイド部材を設け、この直線状ガイド部材の案内によってシートを搬送する給紙装置が提案されている。この給紙装置によれば、ガイド部材を湾曲形状ではなく直線形状の直線状ガイド部材としたので、搬送負荷を低く抑えること、つまり負荷の急激な上昇を抑制でき、紙詰まり、斜行等の搬送不良を防止できるとしている。
換言すれば、上記給紙装置によれば、搬送されるシート上の変形箇所を、湾曲ガイド部材による1箇所の湾曲に集中させずに、その搬送方向における直線状ガイド部材の前後端付近である2箇所での湾曲に分散でき、しかも、直線状ガイド部材を略中間角度の斜め姿勢に設置して、これらの2箇所における湾曲の程度を略均等な同程度にしているので、その搬送時には搬送負荷の急激な上昇を抑制できるとしている。すなわち、シートがその進行方向を変えるため、湾曲される箇所は、上流側のローラ対から直線状ガイド部材に受け渡す箇所と、直線状ガイド部材から下流側のローラ対に受け渡す箇所との2箇所になり、少なくとも、それぞれの湾曲の程度が小さくなり、これに伴い各箇所で湾曲させたことによって生じる抵抗力を低く保てるので、搬送負荷が急激に上昇することを回避できるというものである。
【0008】
上記特開2004−338923号公報(特許文献1)と概略同様に構成された第1、第2の搬送手段を有して、第1の搬送手段と第2の搬送手段の間に、第2の搬送手段に至る傾斜面を形成した反転ガイド部材を設け、この反転ガイド部材は、第2の搬送手段に向けて可動するように構成された給紙装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
この給紙装置によれば、反転ガイド部材に用紙後端が接触するときには、用紙後端が接する方向と概略同様な方向に反転ガイド部材が変位して、この変位によって、用紙後端が接触した際のショックを吸収できるので、弾き音を低減できるとしている。
【0009】
また、シートを収容した複数のシート収容手段と、各シート収容手段にそれぞれ個別に設けた搬送路およびシート給送手段とを有し、これらの搬送路の末端を1つの共通搬送路に合流させた構成にするとともに、少なくとも、高剛性のシートを収容したシート収容手段に設けた搬送路は、その末端に設けた前記共通搬送路に合流する際の第1の曲率部の曲率半径を、他の搬送路が合流する際の他の曲率部の曲率半径よりも大きく設定したシート給送装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
このシート給送装置によれば、高剛性のシートは、その搬送時に、搬送路上を進んで曲率半径が大きい第1の曲率部を通過する際には、普通のシートと同程度に湾曲されることなく、普通シートに比べて、十分に緩やかに湾曲されて進み続けるので、その搬送時の抵抗が少なくでき、シートの停滞や遅延を生じることなく共通搬送路に到達させ搬送できるとしている。
【0010】
また、反転ローラ対と、この反転ローラ対により送り込まれたシートを搬送・ガイドするための反転搬送路とを有し、反転搬送路は、シートの搬送方向を変更するための方向変更部位を有し、この方向変更部位における内側に回転可能なローラをシート搬送方向に見て直角方向に配設することにより、反転搬送路に送り込まれたシートを前記ローラに当接させながら送り出すようにした画像形成装置に備えたシート反転手段が知られている(例えば、特許文献4参照)。
このシート反転手段によれば、送り込まれたシートは前記の方向変更部位でその内側の接触部位が、ローラに必ず接することになり、しかもこのローラがシートの搬送方向の進行に伴い従動回転するので、従来のガイド板に比べて、搬送抵抗を軽減でき、つまり固定されたガイド部材と移動するシートとの間に生じる摩擦抵抗を解消して、前記の方向変更部位での搬送方向を変更するガイドができるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1記載のシート搬送装置では、所詮、搬送するシートのガイド用に固定部材を配置した構成であるため、移動体である搬送されるシートと、固定されたガイド部材との間の速度差は解消されず、ガイド部材の形状や設置姿勢に拘わりなく、両者の間には必ずシートの搬送を妨げる方向に作用する抵抗が生じてしまい、搬送負荷となるという問題点がある。
つまり、前記従来の構成では、上記の搬送不良やジャムを回避する効果が不十分であり、直線状のガイド部材では、たとえ搬送負荷の急激な上昇を抑制できても、搬送負荷を生じることには変わりがないといえる。特に、厚紙や封筒等の剛性の高い用紙(シート)を搬送する際には、上記の搬送不良やジャムおよび用紙後端のハネ音が顕著となってしまう。
【0012】
特許文献2記載の反転ガイド部材を設けた構成では、たとえ用紙後端が接する方向に変位可能であるという意味で可動部材であるとしても、該用紙の向きを変更するガイドとしては固定ガイド部材であり、同様に、その向きを変更してガイドする際には、用紙と反転ガイド部材との間での相対速度差が解消されておらず、搬送負荷が生じている。特に、厚紙や封筒等の剛性の高い用紙(シート)を搬送する際には、上記の搬送不良やジャムおよび用紙後端のハネ音が顕著となってしまう。
【0013】
また、特許文献3記載の技術のように、曲率半径を所定に大きく設定した専用の搬送路を設けた構成でも、この専用の搬送路上を進むシートが緩やかに湾曲されて、シートが搬送路から受ける搬送抵抗が少なくなるとしても、同様に搬送負荷が生じることには変わりない。特に、厚紙や封筒等の剛性の高い用紙(シート)を搬送する際には、上記の搬送不良やジャムが顕著となってしまう。
【0014】
また、特許文献4記載の技術のように、ローラなどの可動部材を、搬送路の方向変更部位における内側の搬送路部分の所定箇所に設けた構成では、その搬送過程において、内側のローラによって、シートの前後端の間の中間部分が支持された状態での両者間の摩擦抵抗を特に有効的に低減できても、このような状態になる前後の状態について、つまりその方向変更部位における外側の搬送路部分とシートとが接した場合の、搬送負荷についての配慮が欠けており、またその搬送過程でのシート先端やシート後端の挙動についても、特に言及されていない。特に、厚紙や封筒等の剛性の高い用紙(シート)を搬送する際には、上記の搬送不良やジャムおよび用紙後端のハネ音が顕著となってしまう。
【0015】
そこで、本願出願人は、前記従来技術の有する問題点を解決できる新規なシート搬送装置およびそのシート搬送装置等を有する画像形成装置を提供することを目的とした発明(以下、「先願発明」という)を提案した。この先願発明を適用した例の詳細は、本願発明の実施形態を説明する前に後述することとする。この発明によれば、コンパクトで省スペースでありながら、簡単かつ低コストである構成で、シート種類(紙種)対応性に優れたシート搬送装置、該シート搬送装置を備えた画像読取装置、シート搬送装置および/または画像読取装置を備えた画像形成装置を提供することができる。
【0016】
そこで、本発明は、上記先願発明を実用化する上で、省スペース、簡単な構成かつ低コスト等の利点・効果を残しながら、厚紙等の比較的剛性の高い(腰の強い)シートでも、シートを保持しつつ安定した線速度で第2の搬送手段におけるシート搬送経路の下流側に問題なく搬送可能なシート搬送装置、該シート搬送装置を備えた画像読取装置、シート搬送装置および/または画像読取装置を備えた画像形成装置を実現し提供することを主な目的とする。その他、後述する請求項ごとの効果が得られるシート搬送装置、該シート搬送装置を備えた画像読取装置、シート搬送装置および/または画像読取装置を備えた画像形成装置を実現し提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上述の課題を解決するとともに上述の目的を達成するために、後述の先願発明に係る例や、実施例等に記載の試験評価等を行い鋭意研究を重ねる中で、シート種類を問わず、特には厚紙や封筒等の比較的剛性の高いシートを、搬送不良やジャムを発生することなく搬送できる簡単な構成として、移動案内手段(ムービングガイド)という簡単な構成を着想するに至り、その具体的手段として最も構成が簡単なベルト搬送手段を種々に工夫し、実用化するに至った。本発明は、このような試験で裏付けられた結果を基本にしてなされたものである。
【0018】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、請求項ごとの発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
請求項1記載の発明は、シートを搬送する第1の搬送手段と、第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に挟持搬送する挟持部を形成する第2の搬送手段とを有し、前記挟持部を形成する対向対の一方は、回転することにより駆動力を伝達可能な回転搬送駆動手段であり、前記対向対の他方は、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、前記回転搬送駆動手段に従動して前記挟持部に向けてシートを搬送するベルトを備えたベルト搬送手段であり、前記ベルト搬送手段は、弾性部材からなる前記ベルトと、該ベルトを走行可能に保持する少なくとも一対のベルト保持回転部材と、該各ベルト保持回転部材を回転可能に支持する支持部材とを具備し、前記各ベルト保持回転部材は、その軸間距離を一定に保持するように前記支持部材に支持されており、前記ベルトは、該ベルトの硬度が、40〜80度であり、かつ、前記各ベルト保持回転部材間に前記ベルトを巻き掛けたときにおける前記ベルト単体の周長からの伸張分の百分率割合である伸張率が、10〜5%の条件を満たすことを特徴とするシート搬送装置である。
【0019】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のシート搬送装置において、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向の前記ベルト近傍の初期位置に配置され、該ベルトにシートを案内するガイド部材を有し、前記ベルトの硬度が40〜80度であって、かつ、前記伸張率が4%の特別条件の場合に、シートと接触する前記ベルトの搬送面が、前記ガイド部材と干渉する方向に膨出したとき、前記ガイド部材を前記搬送面と干渉しない程度に該搬送面から離れた位置に配置することにより、前記特別条件を満たす前記ベルトを採用可能としたことを特徴とする。
【0020】
請求項3記載の発明は、シートを搬送する第1の搬送手段と、第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に挟持搬送する挟持部を形成する第2の搬送手段と、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成される第1のシート搬送経路と、第2の搬送手段の上流から第2の搬送手段に至って形成され、第1のシート搬送経路と異なる第2のシート搬送経路と、第1のシート搬送経路と第2のシート搬送経路とが、第2の搬送手段の上流側で合流する合流搬送経路とを有し、前記挟持部を形成する対向対の一方は、回転することにより駆動力を伝達可能な回転搬送駆動手段であり、前記対向対の他方は、前記合流搬送経路の外郭方向に配置され、前記回転搬送駆動手段に従動して前記挟持部に向けてシートを搬送するベルトを備えたベルト搬送手段であり、前記ベルト搬送手段は、弾性部材からなる前記ベルトと、該ベルトを走行可能に保持する少なくとも一対のベルト保持回転部材と、該各ベルト保持回転部材を回転可能に支持する支持部材とを具備し、前記各ベルト保持回転部材は、その軸間距離を一定に保持するように前記支持部材に支持されており、前記ベルトは、該ベルトの硬度が、40〜80度であり、かつ、前記各ベルト保持回転部材間に前記ベルトを巻き掛けたときにおける前記ベルト単体の周長からの伸張分の百分率割合である伸張率が、10〜5%の条件を満たすことを特徴とするシート搬送装置である。
【0021】
請求項4記載の発明は、シートを搬送する第1の搬送手段と、第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に挟持搬送する挟持部を形成する第2の搬送手段とを有し、前記挟持部を形成する対向対の一方は、回転することにより駆動力を伝達可能な回転搬送駆動手段であり、前記対向対の他方は、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、前記回転搬送駆動手段に従動して前記挟持部に向けてシートを搬送するベルトを備えたベルト搬送手段であり、前記ベルト搬送手段は、弾性部材からなる前記ベルトと、該ベルトを走行可能に保持する少なくとも一対のベルト保持回転部材と、該各ベルト保持回転部材を回転可能に支持する支持部材とを具備し、前記各ベルト保持回転部材は、その軸間距離を一定に保持するように前記支持部材に支持されており、前記ベルトは、該ベルトの硬度が、35〜85度であり、かつ、前記各ベルト保持回転部材間に前記ベルトを巻き掛けたときにおける前記ベルト単体の周長からの伸張分の百分率割合である伸張率が、10〜5%の条件を満たすことを特徴とするシート搬送装置である。
【0022】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のシート搬送装置において、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向の前記ベルト近傍に配置され、該ベルトにシートを案内するガイド部材を有し、前記ベルトの硬度が35〜85度であって、かつ、前記伸張率が4%の特別条件の場合に、シートと接触する前記ベルトの搬送面が、前記ガイド部材と干渉する方向に膨出したとき、前記ガイド部材を前記搬送面と干渉しない程度に該搬送面から離れた位置に配置することにより、前記特別条件を満たす前記ベルトを採用可能としたことを特徴とする。
【0023】
請求項6記載の発明は、シートを搬送する第1の搬送手段と、第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に挟持搬送する挟持部を形成する第2の搬送手段と、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成される第1のシート搬送経路と、第2の搬送手段の上流から第2の搬送手段に至って形成され、第1のシート搬送経路と異なる第2のシート搬送経路と、第1のシート搬送経路と第2のシート搬送経路とが、第2の搬送手段の上流側で合流する合流搬送経路とを有し、前記挟持部を形成する対向対の一方は、回転することにより駆動力を伝達可能な回転搬送駆動手段であり、前記対向対の他方は、前記合流搬送経路の外郭方向に配置され、前記回転搬送駆動手段に従動して前記挟持部に向けてシートを搬送するベルトを備えたベルト搬送手段であり、前記ベルト搬送手段は、弾性部材からなる前記ベルトと、該ベルトを走行可能に保持する少なくとも一対のベルト保持回転部材と、該各ベルト保持回転部材を回転可能に支持する支持部材とを具備し、前記各ベルト保持回転部材は、その軸間距離を一定に保持するように前記支持部材に支持されており、前記ベルトは、該ベルトの硬度が、35〜85度であり、かつ、前記各ベルト保持回転部材間に前記ベルトを巻き掛けたときにおける前記ベルト単体の周長からの伸張分の百分率割合である伸張率が、10〜5%の条件を満たすことを特徴とするシート搬送装置である。
【0024】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6の何れか一つに記載のシート搬送装置において、前記ベルトの厚さが、1.5mm以上であることを特徴とする。
【0025】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7の何れか一つに記載のシート搬送装置において、前記ベルトは、エチレン・プロピレンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴムまたはシリコンゴムの何れか一つであることを特徴とする。
【0026】
請求項9記載の発明は、請求項1ないし8の何れか一つに記載のシート搬送装置において、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向の前記ベルト近傍に配置され、該ベルトにシートを案内するガイド部材を有し、前記各ベルト保持回転部材は、前記回転搬送駆動手段に対向して配置された第1のベルト保持回転部材と、第1のベルト保持回転部材に対向して第2の搬送手段のシート搬送方向の上流側に配置された第2のベルト保持回転部材とを備え、第2のベルト保持回転部材は、第1の搬送手段の外郭に設けられる回転部材の軸中心より第2の搬送手段のシート搬送方向の下流側であって、前記ガイド部材の下流端より第2の搬送手段のシート搬送方向の上流側に位置することを特徴とする。
【0027】
請求項10記載の発明は、請求項1ないし9の何れか一つに記載のシート搬送装置において、前記ベルト搬送手段は、シートの先端が、前記各ベルト保持回転部材に保持されている該ベルト部分を除く該ベルトの搬送面に接触するように配置されていることを特徴とする。
【0028】
請求項11記載の発明は、請求項1ないし10の何れか一つに記載のシート搬送装置において、シートは、比較的剛性の高いシートであることを特徴とする。
【0029】
請求項12記載の発明は、請求項1ないし11の何れか一つに記載のシート搬送装置を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、上記課題を解決して新規なシート搬送装置、該シート搬送装置を有する画像形成装置を実現し提供することができる。
すなわち、本発明によれば、省スペース、簡単な構成かつ低コストでありながら、厚紙等の比較的剛性の高いシートを含むシート種類に関わらず、シートをベルトで保持しつつ安定した線速度で第2の搬送手段におけるシート搬送経路の下流側に問題なく給送・搬送することが可能な新規なシート搬送装置、該シート搬送装置を有する画像形成装置を実現し提供することができる。
【0031】
以下、請求項記載の発明ごとに特有の効果を挙げれば、次のとおりである。
請求項1、3、4、6および11記載の発明によれば、省スペース、簡単な構成かつ低コストでありながら、厚紙等の比較的剛性の高いシートを含むシート種類に関わらず、上記構成によるベルトの適度な弾性変位・変形により、シートをベルトで保持しつつ安定した線速度で第2の搬送手段におけるシート搬送方向の下流側に問題なく給送・搬送することができる。
【0032】
請求項2および11記載の発明によれば、ベルトの硬度が40〜80度であって、かつ、伸張率が4%の特別条件の場合に、シートと接触するベルトの搬送面が、ガイド部材と干渉する方向に膨出したとき、ガイド部材をベルトの搬送面と干渉しない程度に該搬送面から離れた位置に配置することにより、特別条件を満たすベルトを採用可能としたので、ベルトの伸張率の選択幅を広げることが可能となることで、設計の自由度を拡充することができる。
【0033】
請求項5および11記載の発明によれば、ベルトの硬度が35〜85度であって、かつ、伸張率が4%の特別条件の場合に、シートと接触するベルトの搬送面が、ガイド部材と干渉する方向に膨出したとき、ガイド部材をベルトの搬送面と干渉しない程度に該搬送面から離れた位置に配置することにより、特別条件を満たすベルトを採用可能としたので、ベルトの伸張率の選択幅を広げることが可能となることで、設計の自由度を拡充することができる。
【0034】
請求項8および11記載の発明によれば、弾性部材としての材質を設定することにより、安定してベルトを回転させることができるとともに、シート種類を問わず安定してシートをグリップすることができる。
【0035】
請求項9および11記載の発明によれば、上記構成により、シートの先端が、ベルト保持回転部材に保持されているベルト部分を除くベルトの搬送面に接触するように配置されるようになるので、請求項1、3、4、6および11記載の発明の効果が顕著となる。
【0036】
請求項10および11記載の発明によれば、上記構成により、請求項1、3、4、6および11記載の発明の効果が顕著となる。
【0037】
請求項12記載の発明によれば、請求項1ないし11の何れか一つに記載のシート搬送装置を有する画像形成装置として、上記各発明の効果を奏する画像形成装置を実現し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を適用する用紙搬送装置を有する画像形成装置の全体構成を示す概略的な正面図である。
【図2】図1の用紙搬送装置およびその周りの給紙トレイ段を示す図であって、用紙の先端がベルト搬送手段に到達した動作状態を示す要部の拡大断面図である。
【図3】図2の用紙搬送装置において、用紙の先端が第2搬送手段のニップ部に到達する直前の動作状態を示す要部の拡大断面図である。
【図4】実施例1を説明するための用紙搬送装置の要部の拡大断面図である。
【図5】実施例1における紙種別搬送時間のばらつきに関する試験結果を説明するためのグラフである。
【図6】本発明を適用する用紙搬送装置の変形例を示す図であって、(a)は、第1搬送手段にベルト搬送手段を設けた例であり、(b)は、第1、第2搬送手段の両手段にそれぞれベルト搬送手段を設けた例であり、(c)は、第1、第2搬送手段とは別体にベルト搬送手段を設けた例である。
【図7】本発明を適用する図2とは別の用紙搬送装置およびその周りの給紙トレイ段を示す要部の断面図である。
【図8】図7の用紙搬送装置において、用紙の先端がベルト搬送手段に到達した動作状態を示す要部の拡大断面図である。
【図9】図7の用紙搬送装置において、用紙の先端が第2搬送手段のニップ部に到達する直前の動作状態を示す要部の拡大断面図である。
【図10】本発明を適用するさらに別の用紙搬送装置を主体に示す概略的な拡大断面図である。
【図11】第1の実施形態の用紙搬送装置における駆動機構を示す簡略的な斜視図である。
【図12】図11の要部の概略的な正面図である。
【図13】第1の実施形態の用紙搬送装置におけるベルト搬送手段および搬送ガイド部材周りをグリップローラ側から見た要部の斜視図である。
【図14】第1の実施形態の用紙搬送装置における第1および第2搬送手段周りの要部の断面図である。
【図15】第1の実施形態の用紙搬送装置におけるベルト搬送手段周りをグリップローラ側から見た斜視図である。
【図16】第1の実施形態の用紙搬送装置におけるベルト搬送手段周りを搬送ガイド部材の裏面側から見た斜視図である。
【図17】第1の実施形態の用紙搬送装置における第2搬送手段周りの要部の断面図である。
【図18】(a)は、第1の実施形態における給紙装置本体側の具体的な開閉構成を示す概略的な斜視図、(b)は、紙詰まり用紙(ジャム用紙)を除去する際に開閉ガイドを開放した状態を示す要部の簡略的な断面図である。
【図19】(a)は、第1の実施形態における搬送ベルトの伸張率が特別条件の際に搬送ベルトの搬送面が外側に膨出する状態を示す簡略的な正面図、(b)は、搬送ベルトの搬送面が外側に膨出して搬送ベルト近傍に配置された搬送ガイド部材と干渉する状態を示す簡略的な正面図である。
【図20】第1の実施形態における搬送ベルトの厚さとして1.5mmを採用する根拠を説明するための搬送ベルトおよびプーリ周りの一部断面図である。
【図21】(a),(b)は、用紙搬送経路の違いに伴う用紙搬送装置の第1および第2搬送手段の配置例を説明する簡略的な正面図である。
【図22】実施例3の試験評価結果を示す図表であって、ゴムの硬度が40°の場合の搬送ベルトの厚さと伸張率との関係を表す図表である。
【図23】実施例3の試験評価結果を示す図表であって、ゴムの硬度が50°の場合の搬送ベルトの厚さと伸張率との関係を表す図表である。
【図24】実施例3の試験評価結果を示す図表であって、ゴムの硬度が60°の場合の搬送ベルトの厚さと伸張率との関係を表す図表である。
【図25】実施例3の試験評価結果を示す図表であって、ゴムの硬度が70°の場合の搬送ベルトの厚さと伸張率との関係を表す図表である。
【図26】実施例3の試験評価結果を示す図表であって、ゴムの硬度が80°の場合の搬送ベルトの厚さと伸張率との関係を表す図表である。
【図27】実施例3における通紙耐久試験において、搬送ベルトの厚さ変化量を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を説明する。上記先願発明を適用した用紙搬送装置およびそれを搭載した画像形成装置の例、実施形態や変形例、実施例等に亘り、同一の機能および形状等を有する部材や構成部品等の構成要素については、同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がないものは適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等の構成要素をそのまま引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
【0040】
図1〜図3等を始めとして後述の図4〜図10には、上記先願発明を適用した用紙搬送装置およびそれを搭載した画像形成装置の例が含まれているので、その部分については詳しく説明する。まず、図1を参照して、画像形成装置の一例としての複写機1の全体構成を説明する。
【0041】
複写機1は、原稿の表面から画像を読み取って各種のシート状記録媒体(以下、「シート」という)としての記録紙、転写紙、用紙、OHPフィルムなどに複写画像を形成するモノクロ複写機である。この複写機1は、読み取った原稿画像に基づいて所定の画像形成処理を行う画像形成部を有する画像形成装置本体2と、この画像形成装置本体2を載置して該装置本体2にシートの一例としての用紙Sを1枚ずつ供給する給紙装置3と、画像形成装置本体2上に取り付けられ原稿画像を読み取ってこの原稿画像情報を画像形成装置本体2に送出する原稿読取装置4とを有する。
画像形成装置本体2の上部であって、原稿読取装置4の下方に空間を形成するようにして、上記画像形成装置本体2を通過した用紙を排出・積載する排紙トレイ9が設置され、給紙装置3から排紙トレイ9に至るまで用紙Sを移動させる用紙搬送経路(シート搬送経路)としての用紙搬送路R1(以下、「搬送路R1」ともいう)が形成されている。この搬送路R1の大部分は、給紙装置3から画像形成装置本体2の上部に渡り、略水平線に対して略垂直上方向、すなわち略鉛直上方向に延在されていて、該搬送路R1上には、最小サイズの用紙Sに応じた所定間隔を確保して搬送ローラ対やコロ対などによって構成された幾つかのシート搬送手段としての用紙搬送手段が設けられている。これらの用紙搬送手段のうちの何れかの用紙搬送手段は、搬送路R1上の用紙Sを、挟持などによって必ず搬送し続けるように構成されている。さらに給紙装置3には、該給紙装置3の各段に収容された用紙Sを搬送路R1に給送・搬送するシート搬送装置としての用紙搬送装置5が設置されている。
【0042】
画像形成装置本体2内には、その搬送路R1の上流側から下流側に向けて、画像を形成する画像形成部としての感光体ユニット10と定着装置11とが順に配置されている。この搬送路R1上を上流側から下流側に向けて搬送されてくる用紙Sに対して、感光体ユニット10がその生成したトナー像を転写した後、定着装置11がその転写されたトナー像を用紙Sに定着して、そのトナー像を定着された用紙Sが、搬送路R1の末端に配置された排紙トレイ9に排出されるようになっている。
【0043】
感光体ユニット10は、像担持体としての単一のドラム状の感光体10Aを有し、略水平に配置された回転軸を中心にして、画像形成装置本体2内の図示しない側板に回転可能に支持されている。感光体10Aは、所定の径で円筒形状に形成された周知の構成をなす。感光体10Aは、感光体ユニット10側か画像形成装置本体2側かの何れか一方に設けられたモータなどの駆動源から回転駆動力が伝達されて、図中矢印で示す回転方向に安定した一定速度で回転駆動されるようになっている。
感光体10Aの周囲には、図中矢印で示す回転方向に順に、現像装置12と、転写装置13と、感光体クリーニング装置18と、除電装置と、帯電装置14とが配置され、感光体10Aの反時計回りの回転方向におけるその1回転の範囲内に、これらの各装置12〜14それぞれによって、その上流から下流に渡って順次、現像位置、転写位置、クリーニング位置、除電位置、帯電位置が設定されている。
さらに、帯電位置と現像位置との間には、潜像形成位置が設定され、この潜像形成位置に所定のレーザ光を照射して、画像情報に応じた不可視の潜像を書き込むための露光装置47が、感光体ユニット10からやや離れた斜め下方に配置されている。そして、感光体10Aが所定の反時計回りに回転駆動されるとともに、この感光体10Aの回転に同期して各装置12〜14、および露光装置47が、それぞれ所定に連係した協働動作を行うことにより、一連の画像形成処理が実行される。
【0044】
すなわち、現像装置12は、その表面からトナー粒子を放射状に起立させたトナーブラシを生成する現像ローラなどの適宜の周知の構成を有し、感光体10A表面上の所定箇所に生成され該感光体10Aの回転に伴い周上を移動して現像位置を通過する潜像に対して、トナーブラシ先端のトナー粒子を付着させ、該不可視の潜像をモノクロトナー像で可視像化する。
転写装置13は、略上下方向に所定に離間させて対向配置された2つの支持ローラ15,16と、これらの支持ローラ15,16間に張架された無端ベルトからなる転写ベルト17とで構成され、感光体10A外周表面上のトナー像を用紙Sに転写し、未定着のトナー像が転写された用紙Sを搬送路R1の下流側に搬送する。すなわち、下方の支持ローラ16は、その転写ベルト17を巻回した部分が、感光体10Aの略右斜め下方箇所に圧接されて、感光体10A表面と転写ベルト17とが接した箇所に、転写位置が設定されている。また、上方の支持ローラ15は、定着装置11の導入口の手前に配置されている。
【0045】
感光体クリーニング装置18は、感光体10A上のクリーニング位置に、その先端のブレードエッジが所定圧を確保して当接するように構成された図示しないブレード材か、または同クリーニング位置に接して感光体10Aの回転に従動回転する回転ブラシかの何れか、あるいは両方の構成を有し、転写後の感光体10A表面に残留したトナーや異物などを除去する。
除電装置は、所定強度の発光が可能なランプを主体に構成されており、このランプから除電位置に除電用の光を照射して、該除電位置を通過する感光体10A表面上の帯電状態を解除し、転写位置を通過した後の感光体10Aの表面電位を、初期状態に復帰させるようにしている。
【0046】
定着装置11は、熱源としての電熱ヒータなどを内蔵した加熱ローラ31と、この加熱ローラ31に略水平方向に対向配置され該加熱ローラ31側に押圧付勢された加圧ローラ32とを有する。図示しないモータなどの駆動源により加熱ローラ31が回転駆動されると、これに接した加圧ローラ32が従動回転されるとともに、両ローラ31,32が接した箇所には、所定の加熱温度と加圧力とが確保されて、トナー像を用紙上に定着させるためのニップ部が形成される。
なお、同図中の20は、新品・新規トナーを収容したトナーボトルなどからなるトナー収納容器であり、このトナー収納容器20から現像装置12まで、図示しないトナー搬送経路が形成されている。現像装置12が自身内のトナーを現像用に消費して不足した場合には、新規トナーがトナー収納容器20から現像装置12に補充されるようになっている。
【0047】
画像形成装置本体2の下方には、読み取る原稿のサイズに応じて、自動的にまたはユーザの手動設定によって用紙サイズ(シートサイズ)を択一的に選択可能にした給紙装置3が設けられている。すなわち、給紙装置3は、シート収容手段としての複数の給紙トレイ51,51を給紙装置3内に多段に収納・配置されているとともに、各給紙トレイ51,51を個別に給紙装置3外に引き出し可能に構成されていて、それぞれの給紙トレイ51にそのトレイ用の用紙をセットおよび適宜の枚数、補充可能にされている。各給紙トレイ51,51には、互いに異なる紙種(シート種類)としてそれぞれ各種用紙サイズおよび用紙搬送方向(シート搬送方向)に対して縦横の向きにした用紙Sが、多数枚積載・収納されている。
【0048】
原稿読取装置4は、その骨組みをなす読取装置本体4Aを有し、この読取装置本体4Aの上面には、所定範囲に亘りコンタクトガラス57が配置されている。読取装置本体4A内には、コンタクトガラス57面上の所定範囲を走査対象にして光学的に原稿画像を読み取る読取手段が収納されており、この読取手段は、少なくとも、第1走行体53、第2走行体54、結像レンズ55および例えばCCDなどからなる読取センサ56から主に構成されている。
また、原稿読取装置4には、コンタクトガラス57を覆う閉止位置と開放した開放位置とに開閉可能に構成された原稿押さえ板58が、読取装置本体4Aの上面に設置されている。すなわち、原稿押さえ板58は、コンタクトガラス57よりも大きな縦横寸法で形成され、その一端が図示しないヒンジで読取装置本体4Aの上面に開閉自在に支持されている。
【0049】
上述の構成に基づき、複写機1の動作を説明する。まず、複写機1で原稿をコピーするとき、原稿読取装置4の原稿押さえ板58を閉止位置から開放位置に、ユーザが手動で開いて、コンタクトガラス57上に原稿を載置・セットし、次いで原稿押さえ板58を閉じる方向に手動操作し、この原稿押さえ板58によって、コンタクトガラス57上にセットした原稿を上方から押える。この操作により、原稿面が正確に読み取り可能となるように、原稿がコンタクトガラス57に密着されて平面状に広げられ、かつ同ガラス57上に原稿が固定される。
【0050】
そして、複写機1に予め備えられている図示しない操作画面部に設置されたスタートスイッチを、ユーザが押下・オン操作すると、直ちに原稿読取装置4の読取動作が開始され、図示しない駆動機構によって第1走行体53および第2走行体54が走行される。そして、第1走行体53の光源からの光が原稿に向けて照射され、この原稿面からの反射光が第2走行体54に向かい、この反射光が第2走行体54のミラーで反射されて結像レンズ55を介して読取センサ56に入力され、この結果、読取センサ56によって、原稿の画像などが光電変換されて読み取られる。
【0051】
また、上記したようにスタートスイッチがオン操作されると、感光体ユニット10の感光体10Aが回転を開始して、その感光体10A上に、読み取った原稿画像に基づき、トナー像を形成する動作が開始される。すなわち、感光体10Aの回転に伴って該感光体10A外周表面の所定箇所が、順次、帯電装置14、露光装置47、現像装置12、転写装置13、感光体クリーニング装置18、除電装置との間でそれぞれ設定された各位置を通過して、順次、所定の帯電状態に帯電され、潜像が生成され、トナー像に可視像化され、用紙Sに転写されてから、残留トナーが除去され、帯電状態が解除されて1サイクルが完了し、形成する画像サイズに応じて、感光体10Aの回転方向における外周表面の所定長さの範囲にトナー像を生成するように、そのサイクルが所定に持続される。
【0052】
上記したスタートスイッチの押下により、給紙装置3内の自動または手動選択された用紙Sが収納された給紙段の給紙トレイ51から、該給紙段に付設された用紙搬送装置5の動作によって、1枚の用紙Sが所定の用紙搬送経路(シート搬送経路)を介して搬送路R1に搬送される。この用紙Sは、搬送コロなどによって画像形成装置本体2内の搬送路R1上を略鉛直上方に向けて搬送され、用紙Sの先端がレジストローラ対21に突き当たって一旦停止する。
他方、手差し給紙の場合には、手差しトレイ67上にセットされた用紙Sが、まず手差しトレイ用の給紙ローラ67Aの回転により繰り出され、用紙Sが複数枚積載・セットされた際には、同手差しトレイ用の分離ローラ67B,67Cによって1枚に分離されて、手差し給紙路R2に搬送され、さらに手差し給紙路R2から搬送路R1に搬送され、用紙Sの先端がレジストローラ対21に突き当たって一旦停止する。
そして、レジストローラ対21は、回転駆動された感光体10A上のトナー像の相対移動に合わせた正確なタイミングで回転を開始し、一旦停止した用紙Sを転写位置に送り込む。この結果として、この用紙S上に転写装置13によりトナー像が転写される。
【0053】
こうして未定着なモノクロトナー画像が転写された用紙Sは、搬送路R1の一部を形成した転写装置13の転写ベルト17によって定着装置11へ搬送され、この定着装置11が形成したニップ部を通過されて、該ニップ部によって所定の熱と加圧力とが加えられることにより、画像が用紙S上に定着される。画像が定着された用紙Sは、切換爪34により排紙トレイ9に至る搬送路R1に向けてガイドされ、各排出ローラ35〜38により排紙トレイ9上に排出されて、排紙トレイ9上にスタックされる。そして、ユーザは、排紙トレイ9上にスタックされた用紙を、排紙トレイ9と原稿読取装置4との間であって装置正面側の開放部から取り出すことができる。
【0054】
また、ユーザの設定入力によって、両面コピーモードが選択されているときには、片面に画像を定着された用紙Sは、切換爪34により用紙反転装置42側に搬送され、この用紙反転装置42内に配置された複数のローラ66対や、図示しないガイド部材によって、反転搬送路R3上を往復移動させて、用紙面の上下向きを反転させてから、感光体ユニット10よりも手前に位置した箇所からレジストローラ対21を介して搬送路R1に復帰させ、この搬送路R1上を搬送されて再び転写位置へ導かれ、今度は用紙Sの裏面に画像を転写し定着した後に、排出ローラ35〜38によって排紙トレイ9上に最終的に排出される。
【0055】
(第1の例)
次に、先願発明に係るシート搬送装置を適用した用紙搬送装置5(以下、「第1の例」ともいう)の特徴的な構成を説明する。
用紙搬送装置5は、図2および図3に示すように、図1に示した給紙装置3における所定段(この例では下段)の給紙トレイ51に積載・収容された多数枚の用紙Sから1枚の用紙Sを引き出し、引き出された用紙Sの用紙搬送方向(シート搬送方向)を変更し、略鉛直上方の画像形成装置本体2へ給送するものである。
【0056】
用紙搬送装置5は、用紙Sを搬送する第1の搬送手段(以下、「第1搬送手段」という)6と、第1搬送手段6の用紙搬送方向(シート搬送方向)の下流側に配置され、第1搬送手段6により搬送されてきた用紙Sを第1搬送手段6の用紙搬送方向と異なる用紙搬送方向に搬送する第2の搬送手段(以下、「第2搬送手段」という)7と、これら第1搬送手段6および第2搬送手段7の何れもが用紙Sを1対の搬送回転部材で挟持して搬送する挟持搬送手段としてそれぞれ構成され、すなわち、第1搬送手段6はフィードローラ61とリバースローラ62との2つの対向配置された搬送回転部材からなる第1搬送回転部材対の構成とされ、第2搬送手段7はグリップローラ81とローラ状のプーリ83およびローラ状のプーリ84の間に張設された搬送ベルト82との2つの対向配置された搬送回転部材からなる第2搬送回転部材対の構成とされ、この第2搬送回転部材対の一方は、用紙Sの先端と接触した状態を保持しつつ第2搬送手段7の後述する挟持部に向けて用紙Sを移動・案内する搬送ベルト82を備えたベルト搬送手段8(移動案内手段)であり、かつ、ベルト搬送手段8における搬送ベルト82上に形成されたベルト走行面である搬送面82aは、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成される用紙搬送経路(シート搬送経路)としての第1搬送路Aの外郭方向に外れた位置に配置されていることを特徴としている。
【0057】
上述したように、フィードローラ61とリバースローラ62とからなる第1搬送回転部材対の用紙搬送方向と、グリップローラ81と搬送ベルト82とからなる第2搬送回転部材対の用紙搬送方向とは、互いに異なり、つまり第1搬送回転部材対の用紙搬送方向は、図2および図3における右斜め上方向である略水平方向に設定されているのに対して、第2搬送回転部材対の用紙搬送方向は、略鉛直上方向に設定されている。これにより、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成される第1搬送路Aは、この第1搬送路Aで用紙搬送方向を急激に変化させる曲率半径の小さな湾曲した曲率部を形成している。
ここで、第1および第2搬送手段6,7の各用紙搬送方向を厳密に表現すると、次のようである。すなわち、図4において、第1搬送手段6の用紙搬送方向は、フィードローラ61の回転中心と、リバースローラ62の回転中心と、フィードローラ61およびリバースローラ62の挟持部(ニップ部)の中心との3点を結ぶ線分におけるニップ部の中心に対して、直交する略水平方向に設定されている。
同様に、第2搬送手段7の用紙搬送方向は、グリップローラ81の回転中心と、プーリ83の回転中心と、グリップローラ81および搬送ベルト82の挟持部(ニップ部)の中心との3点を結ぶ線分におけるニップ部の中心に対して、直交する略鉛直上方向に設定されている。
【0058】
換言すれば、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成されて用紙搬送方向を変更するように構成した用紙搬送経路において、用紙搬送経路を構成し搬送する用紙Sの厚さ方向の向きを規定した1対の対向面のうち、第1搬送手段6から送り出された用紙Sの先端が当接する側の面を、少なくとも、該用紙Sの先端が当接する部位を開始端にして、その用紙搬送方向の長手方向に渡って、第2搬送手段7に至るまでの所定範囲を、連続的かつ常時、第2搬送手段7の挟持部に近づく方向に移動する搬送ガイド面に構成しており、この搬送ガイド面は、ベルト搬送手段8における搬送ベルト82上に形成されたベルト走行面(搬送面82a)によって形成している。また、第1搬送手段6の用紙搬送方向に沿った延長線と、第2搬送手段7の用紙搬送方向に沿った延長線とで囲まれた範囲を内郭とし、これ以外を外郭としており、上記の平坦なベルト走行面によって形成された用紙搬送に供される搬送ベルト82の搬送面82aは、内郭から外郭方向に外れた位置に配置され、かつ、概略、用紙進行方向と交差するように延在されている。
【0059】
ベルト搬送手段8は、図3および図4に示すように、搬送ベルト82と、該搬送ベルト82を走行可能に保持するとともに該搬送ベルト82を巻き掛けるための、グリップローラ81と搬送ベルト82との挟持部(ニップ部)に対向して配置された第1のベルト保持回転部材としての上記したローラ状のプーリ83と、このプーリ83に対向し、かつ、第2搬送手段7の用紙搬送方向の上流側に配置された第2のベルト保持回転部材としての上記したローラ状のプーリ84とから主に構成される。第2のベルト保持回転部材は、本例では単一の例を示すが、これに限らず少なくとも一つ以上配設されていてもよい。
ベルト搬送手段8は、第1搬送手段6により搬送されてきた用紙Sの先端が、プーリ83およびプーリ84に保持されている該搬送ベルト82部分を除く該搬送ベルト82の搬送面82aに当接(接触)するように配置することが肝要である。このように、プーリ84の軸中心(プーリ軸84aの中心)が、リバースローラ62の下端位置よりも上方であって搬送ガイド部材71の下流端の高さよりも下方に位置するようにしてベルト搬送手段8を配置することにより、用紙Sの先端が搬送ベルト82の腹の部分(いわば「有効搬送面」とも呼ぶべき部分である)に衝突することによって、搬送ベルト82の安定した適度な弾性変位・変形状態が得られ、用紙Sの先端の反発を招くことなく、用紙Sの先端が搬送ベルト82の搬送面82aに確実に当接した状態が保持されて、後述の作用効果を得ることができる。
これに対し、用紙Sの先端が、搬送ベルト82のプーリ83およびプーリ84に保持されている該搬送ベルト82部分に当接(接触)してもよいように配置すると、搬送ベルト82がプーリ83およびプーリ84に保持されている該搬送ベルト82部分は、一般的に搬送ベルト82の腹の部分よりも硬く弾性変位・変形状態も小さくなることから、用紙Sの先端が上記部分に当接した際には反発したり安定した適度な弾性変位・変形状態が得られなくなったりする点から好ましくない。これは、後述する先願発明を適用した各例等や、本願発明を適用した実施形態や変形例、実施例等でも同様である(以下、単に「以下、同様」ともいう)。
【0060】
また、ベルト搬送手段8は、図4に示すように、第1搬送手段6により搬送されてきた用紙Sの先端が、搬送ベルト82の搬送面82aに対して鋭角の突入角度θをもって進入するように配置することも肝要である。このようにベルト搬送手段8を配置することにより、用紙Sの先端が上述した搬送ベルト82の腹の部分に安定して当接することによって、用紙Sの先端が搬送ベルト82の搬送面82aに確実に当接した状態が保持されて、後述の作用効果を得ることができる。
用紙Sの先端が、搬送ベルト82の搬送面82aに対して略垂直ないし直角の突入角度θをもって進入するように配置した場合には、用紙Sの先端部の搬送ベルト82の搬送面82aへの当接状態が不安定になる、例えば搬送ベルト82の走行方向と反対の方向に折れ曲がったり、反発を招いたりする点から、好ましくない(以下、同様)。
【0061】
給紙装置3における各段の給紙トレイ51は、複写機1に使用可能として取り扱われる最大サイズの用紙Sを格納可能な平面形状を確保して、上方開口の略平箱状に形成され、その底面にはシート積載手段としての底板50が設けられている。底板50は、図2の左側の基端部が、給紙トレイ51に所定の角度範囲で回動自在、すなわち揺動可能に支持された水平な軸50Aに取り付け固定され、図2の右側の自由端部が、軸50Aを中心にして給紙トレイ51内において揺動可能に構成されている。
また、給紙トレイ51の底部には、所定形状の凹部が形成され、この凹部に、上昇アーム52が格納されている。上昇アーム52は、その基端部が前記凹部内に所定の角度範囲で回動自在、すなわち揺動可能に支持された水平軸52Aに固着されるとともに、この水平軸52Aには、図示しない回転駆動源から任意の回転方向の回転駆動力が伝達されて回動されることにより、上昇アーム52が水平軸52Aを中心として所定に傾斜した位置を占めるように揺動駆動される。これにより、上昇アーム52の自由端部が底板50を押し上げて、底板50上に載置された用紙Sの最上面の片側周縁を、所定の高さ位置に保つようになっている。
【0062】
上述したとおり、給紙トレイ51は、底板50上に用紙Sを積載して格納するとともに、底板50における図において右端側の自由端部を上昇・傾斜させて積載した用紙Sをせり上げ、1枚ずつ用紙Sが給送されてその積載枚数が減少しても、その最上面を所定の高さに維持するように構成されている。
給紙トレイ51は、上述したように、給紙装置3の本体に対して着脱・挿脱自在に構成されている。すなわち、給紙トレイ51は、図1に示すように給紙装置3の本体内に挿入・装着されることで給紙可能となる装着位置と、給紙装置3の本体から図1において紙面の手前側に引き出され・離脱されることで、用紙Sの補充や用紙Sのサイズ交換等が可能となる離脱位置とを選択的に占めることが可能に構成されている。
また、少なくとも第1搬送手段6、第2搬送手段7、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に配置される用紙搬送経路(搬送路)は、給紙トレイ51を引き出したときに本体に残される。よって、本例では胴内排紙型の画像形成装置であるが、移動案内手段を設けることにより、上記搬送路を従来と同様の曲率またはそれ以下の曲率で搬送できるので、装置の幅方向を大きくすることなく、胴内排紙型の利点を減殺することを防ぐことができる。
【0063】
このように所定高さに上昇された用紙Sの最上面に接するように、ピックアップローラ60が、給紙装置3の本体側の機体外形をなすハウジング80に回転可能に軸支されている。ピックアップローラ60による用紙Sの引き出し方向に沿った延長線上に、用紙Sを1枚に分離して給送する給紙分離機構が位置しており、この給紙分離機構は、フィードローラ61とリバースローラ62とが所定圧を確保して接したニップ部を形成するように構成されている。
ピックアップローラ60は、図3に詳しく示すように、図示しない芯金と一体的に形成された軸60aの周りに一体的に固着されていて、軸60aとともに回転自在になされた周知のもの、あるいは軸60aと前記芯金との間にワンウェイクラッチ(図示せず)を設けて、非駆動時には軸60aに対してフリーに回転するように支持されているものである。ピックアップローラ60の外周表面を含む外周部には、用紙Sと接触したときに容易にピックできるように用紙Sに対して摩擦係数の高いゴム等の軟質の高摩擦材料が用いられている。また、ピックアップローラ60の外周表面部は、適宜、摩擦抵抗を増大するために略鋸刃状の突起が全周に形成される場合もある。
【0064】
本例では、例えば積載された用紙Sを重送することなく1枚に分離して送り出す給紙方式(シート給送方式)として、戻し分離方式であるFRR(Feed Reverse Roller)給紙方式を採用している。すなわち、2枚以上の用紙Sをピックアップローラ60が引き出した場合には、フィードローラ61に接した1枚の用紙Sと、リバースローラ62に接したこれ以外の他の用紙Sとに分離させ、フィードローラ61は、1枚の用紙Sをそのまま用紙搬送方向に進めて送り出す一方、リバースローラ62は、他の用紙を用紙搬送方向とは逆の方向に進めて積層された元の位置に戻し、かつ、リバースローラ62は、フィードローラ61による用紙搬送を妨げないように構成されている。
【0065】
より具体的には、シート分離機構としてのFRR給紙方式による給紙分離機構は、用紙搬送方向に進む順方向に回転駆動されるフィードローラ61と、このフィードローラ61の下側に当接して、トルクリミッタを介して逆回転方向の回転駆動力が伝達されて逆転駆動されるリバースローラ62とを設けた構成とされ、フィードローラ61は、底板50上の最上面の用紙Sに接する一方、リバースローラ62は、2枚以上かに拘わりなくフィードローラ61に接している用紙Sの下面に接触している。
フィードローラ61は、図示しない芯金と一体的に形成された軸61aの周りに一体的に固着されていて、軸61aとともに回転自在になされているか、あるいはピックアップローラ60と同様の支持方法を取られる場合もある。フィードローラ61の外周表面を含む外周部には、ピックアップローラ60と同様に用紙Sと接触したときにこれを容易に用紙搬送方向に送り出すことができるように用紙Sに対して摩擦係数の高いゴム等の軟質の高摩擦材料が用いられている。また、フィードローラ61の外周表面部は、適宜、摩擦抵抗を増大するために略鋸刃状の突起が全周に形成される場合もある。
リバースローラ62は、図示しない芯金と一体的に形成されていて、前記トルクリミッタを介して、リバースローラ駆動軸62aとともにハウジング80に回動自在に支持されている。
【0066】
FRR給紙方式では、リバースローラ62には、フィードローラ61とは逆回転方向へ向かう弱いトルクがトルクリミッタ(図示せず)を介して付与されている。従って、リバースローラ62は、フィードローラ61と接触している状態、あるいは1枚の用紙Sが両ローラ61,62間に進入した状態では、リバースローラ62がフィードローラ61に連れ回りする。すなわち、前記トルクリミッタの作用によって、例えば該リバースローラ駆動軸に対してリバースローラ62がスリップして、フィードローラ61と同様に、給紙方向に進む順方向にリバースローラ62が回転する。他方、フィードローラ61と離間した状態、あるいは2枚以上の用紙Sが両ローラ61,62間に進入した状態では、リバースローラ62が逆回転する。このため、重送した用紙Sの進入時には、最上面の用紙Sであるフィードローラ61に接した1枚の用紙S以外の、リバースローラ62に接した他の用紙Sが用紙搬送方向の上流側へ戻され、これによって用紙Sの重送が防止される。
従って、リバースローラ62から該リバースローラ62に接した用紙Sに対して供給される搬送力は、用紙Sを元の積載位置に戻せる程度には十分な逆方向の搬送力を確保しながら、用紙Sを順方向に進めるためのフィードローラ61から用紙Sに供給される搬送力よりも、所定に小さく設定され、フィードローラ61による順方向の用紙搬送を妨げないようにしている。このため、謂わば、フィードローラ61から用紙Sに供給される搬送力は、リバースローラ62からの逆搬送力によって、減殺されている。
【0067】
同図中の65は、給紙装置3の本体側に設けた駆動源からの回転駆動力が出力される駆動軸に結合されたアイドラギヤであり、ギヤ同士の噛合またはベルト伝動によって、給紙装置3から供給される回転駆動力をピックアップローラ60およびフィードローラ61に分配して伝達し、ピックアップローラ60およびフィードローラ61を、それぞれ所定速度で回転駆動するようにしている。
【0068】
フィードローラ61の斜め上方には、第2搬送手段7における第2搬送回転部材対の他方の搬送回転部材であるグリップローラ81が、グリップローラ81と一体的に形成された回転駆動軸81aを介して、ハウジング80に回転自在に支持されて配置されている。グリップローラ81の外周表面を含む外周部にも、フィードローラ61と同様に用紙Sと接触したときにこれを容易に用紙搬送方向に送り出すことができるように、用紙Sに対して摩擦係数の高いゴム等の軟質の高摩擦材料が用いられている。
グリップローラ81の近傍には、このローラ81の外周面に搬送ベルト82を介して接するようにハウジング80に回転自在に軸支され、かつ、グリップローラ81の水平方向に対向して前記したプーリ83が配置されている。
プーリ83は、プーリ軸83aと一体的に形成されていて、プーリ軸83aとともにハウジング80に回転自在に支持されている。プーリ83の左斜め下方には、ハウジング80に回転自在に軸支された前記したプーリ84が配置されている。プーリ84は、プーリ軸84aと一体的に形成されていて、プーリ軸84aとともにハウジング80に回転自在に支持されている。プーリ83,84は、搬送ベルト82を走行・回転自在に支持・保持するベルト保持回転部材としての機能を有する。
【0069】
なお、ベルト搬送手段8の配置は、前記した配置状態に限らず、次のようであってもよい。すなわち、図3において、括弧を付して示す79は、用紙搬送装置5本体の一部としての、ハウジング80に対して開閉自在に構成された開閉ガイドを示す。この開閉ガイド79は、後述する搬送ガイド部材72およびベルト搬送手段8と一体化(ユニット化)されて開閉ユニットとして構成されており、第1搬送路Aや略鉛直上方に延びた縦搬送路等での用紙の詰まり、ジャム等をユーザが処理し易いように、ハウジング80下方のヒンジ支点軸(図示せず)を中心に、グリップローラ81に対して搬送ベルト82が接離自在となるように開閉自在に構成されたものである。
このような開閉ガイド79を有する場合、プーリ83およびプーリ84は、各プーリ軸83a,84aとともに開閉ガイド79側に回転自在に支持される。なお、図3等に示す開閉ガイド79は、後述する実施形態の図18に示されていて複数に分割された搬送ベルト82を備えたベルト搬送手段8Aが配置されている開閉ガイド79Aと比較して、ベルト搬送手段8Aに代えて、少なくとも使用される用紙幅方向の用紙Sの全域あるいは両側端と接触可能に用紙幅方向に沿って延びてあるいは分割されて形成された搬送ベルト82を備えたベルト搬送手段8が配置されていることが主に相違する。
【0070】
搬送ベルト82は、一部上述したが、無端ベルトであり、各プーリ83,84間に張設されている。各プーリ83,84の軸間距離は、予め所定に設定されている。プーリ83,84間に形成された搬送ベルト82の直線状のベルト走行面(搬送面82a)は、第1搬送手段6によって送出される用紙Sの先端が、必ず接する位置に配置されている。このように、グリップローラ81の外周面には、プーリ83の外周面に巻き掛けられた搬送ベルト82の外周面が所定圧をもって直接接しており、この接触部位に挟持部(ニップ部)が形成されている。
搬送ベルト82は、弾性部材である例えばゴム部材で形成されていて、その表面には、該ベルト自体の材質によって、または適宜の表面処理が施されて、使用される用紙S(シート)に対して所定の摩擦係数が設定されている。すなわち、搬送ベルト82は、用紙Sに対面して該用紙面に接する、その搬送面としてのベルト表面が、用紙面とベルト表面との間のすべり接触を回避して、ベルト表面から用紙面に搬送推進力を確実に伝達できる摩擦係数が設定されている。
【0071】
また、搬送ベルト82は、用紙搬送方向と直交する用紙幅方向のベルト幅が、少なくとも、搬送する最大サイズの用紙幅と略同じ幅が確保されている。すなわち、搬送ベルト82のベルト幅としては、少なくとも、搬送する最大サイズの用紙幅以上のベルト幅が設定され確保されている。同様に、搬送ベルト82を張架したプーリ83,84およびベルトに対向接触したグリップローラ81は、それぞれの用紙幅方向(軸長手方向)のプーリ、ローラ長さが、前記ベルト幅以上の長さに形成されている。従って、第1搬送手段6から送出された用紙Sは、必ずその用紙幅全域に渡って搬送ベルト82に接することになり、両者間の接触面積を可能な限り最大限に確保できる。これに伴い、常時、用紙搬送方向に移動される搬送ベルト82から用紙Sに供給される推進力、つまり用紙Sをその搬送方向に進める搬送推進力も、可能な最大限の力を搬送ベルト82から用紙Sに伝達することができる。
【0072】
グリップローラ81の回転駆動軸81aには、該グリップローラ81の回転駆動用に専用に設けられた電動モータなどの回転駆動源がギヤやベルト等の駆動力伝達手段(図示せず)を介して連結されている(例えば、後述の実施形態を示す図11および図12参照)。グリップローラ81は、前記駆動力伝達手段を介して、前記回転駆動源から所定の回転速度の回転駆動力が伝達されて回転駆動される。これにより、グリップローラ81は、駆動ローラとされる一方、該グリップローラ81に接した搬送ベルト82、および該搬送ベルト82の接触部位をそのベルト内側から支持したプーリ83は、駆動ローラとしてのグリップローラ81の回転に従動して、ベルト送り駆動される従動ベルト、および前記従動ベルトを介して回転駆動される従動ローラとされている。もちろん、プーリ84も、前記従動ベルトを介して回転駆動される従動ローラである。
なお、図11および図12を参照して説明する後述の実施形態ほどの効果をそれ程望まなくても良いのであれば、例えば駆動機構22からグリップローラ81を駆動する駆動系を除去してグリップローラ81を従動側とし、かつ、搬送ベルト82側を図示しない駆動機構で駆動するようにしてもよい。
【0073】
図2および図3において、70は、用紙搬送装置5における内郭側の位置に設けられ、略下方に凸状に膨出して用紙Sに接する湾曲し固定したガイド面70aを有した搬送ガイド部材であり、71は、用紙搬送装置5の外郭側の位置に設けられた搬送ガイド部材である。この搬送ガイド部材71は、搬送ガイド部材70に対応して凹状に湾曲し固定したガイド面71aを有し、かつ、搬送ガイド部材70のガイド面70aに対して所定の間隙をもって対面配置されている。このように搬送ガイド部材70と、該搬送ガイド部材70に対面した搬送ガイド部材71および搬送ベルト82によって、第1搬送手段6および第2搬送手段7との間に、第1搬送路Aが形成されている。
図2および図3において、72は、第2搬送手段7を起点として略鉛直上方への縦搬送路における外郭側の位置に設けられた搬送ガイド部材であり、73は、給紙トレイ51からフィードローラ61とリバースローラ62との挟持部(ニップ部)へ到る用紙搬送経路を形成するとともに、同ニップ部に用紙Sを案内・進入させる導入口を形成した搬送ガイド部材である。また、搬送ガイド部材70は、第1搬送手段6および第2搬送手段7のニップ部同士を結ぶ線上を横切って略下方(外郭に設けられている搬送ガイド部材71側)に膨出した湾曲面(ガイド面70a)を備えており、その膨出の程度は、用紙Sの先端を必ずベルト搬送面に到達させるように、用紙Sを緩やかに湾曲させる程度に設定されている。
【0074】
なお、図1において、給紙装置3における上段の装置構成は、従来手段で構成された装置であり、上述した下段の装置構成と比較して、用紙搬送装置5に代えた用紙搬送装置5’を用いる点のみ相違する。用紙搬送装置5’は、用紙搬送装置5と比較して、第2搬送手段7に代えて第2搬送手段7’を用いる点のみ相違する。第2搬送手段7’は、第2搬送手段7と比較して、第2搬送回転部材対としてのグリップローラ81とこれに従動回転するローラ(実質的にプーリ83と同様の大きさ・形状である)とから構成される点のみ相違する。上段の給紙トレイ51および用紙搬送装置5’では、厚紙や封筒等の比較的剛性の高い用紙S(シート)を除き、比較的剛性の低い用紙Sである普通紙等が用いられる。
【0075】
次に、給紙装置3における所定段からの給紙動作および該給紙動作に連係して起動される用紙搬送装置5の搬送動作を説明する。
底板50上に積載された用紙Sは、図2に示すように、上昇アーム52の揺動・上昇動作によりその最上面が所定の高さになるよう持ち上げられ、先ず、ピックアップローラ60の回転によって最上面の用紙Sが引き出され、フィードローラ61とリバースローラ62とからなる給紙分離機構に搬送される。そして、前記給紙分離機構において、フィードローラ61とリバースローラ62とによる協働作用により最上面の1枚のみが分離され、この分離された1枚の用紙Sが用紙搬送経路の下流側へとさらに搬送されて、図2に示すように用紙Sの先端が搬送ベルト82のベルト搬送面に接触しつつ、搬送ベルト82の矢印方向の走行によって案内移動され、グリップローラ81と搬送ベルト82とのニップ部に到ると、グリップローラ81と搬送ベルト82とによって用紙Sが挟持搬送されつつさらに鉛直上方に搬送され、最終的に用紙Sは垂直姿勢にして送り出される。
【0076】
より詳細には、フィードローラ61とリバースローラ62とのニップ部に挟持され、該ニップ部から送り出された用紙Sの先端は、まず図2に示すように、搬送ベルト82のベルト搬送面に到達して接する。そして、図3に示すように、搬送ベルト82の矢印a方向の走行による搬送面82aの用紙搬送方向への移動に伴い、その用紙Sの先端側から徐々に湾曲され、かつこの湾曲の進展に伴い、ベルト搬送面と用紙面との接触面積が拡大される。従って、たとえ用紙Sが高剛性の用紙であったとしても、ベルト搬送面から用紙面に対して該用紙Sを搬送方向に進めるための十分な搬送推進力が付与できる。このようにして、第1搬送手段6から付与される搬送推進力だけでは、高剛性の用紙Sをより深く湾曲させて搬送する際に生じる搬送抵抗により不足する分を、ベルト搬送手段8から該用紙Sに与えて十分に補える。従って、少なくとも、第1、第2搬送手段6,7間での用紙Sの搬送不良が生じることを回避して、未然に防止でき、その用紙Sの先端を第2搬送手段7の挟持部(ニップ部)に到達させることができる。
他方、搬送ベルト81の搬送面82aはそのまま第2搬送手段7の挟持部(ニップ部)に連続して延びているので、ベルト搬送面に接した用紙Sの先端部は、確実かつスムーズに安定して挟持部に到達することになる。換言すれば、まず高剛性の用紙Sでもその先端部が必ずベルト搬送面に接する程度に緩やかに湾曲させながら用紙Sを第1搬送手段6によって搬送し、その用紙Sの先端部がベルト搬送面に接して該ベルト搬送面による能動的な搬送ガイド作用によって、該ベルト搬送面から用紙Sにその用紙搬送方向に進めるいわば第2の搬送推進力を得てから、該用紙Sの先端を第2搬送手段7の挟持部に到達させるように、より深く用紙Sを湾曲させるようにしている。
【0077】
このようにして用紙Sの先端が第2搬送手段7に到達して、第1搬送手段6および第2搬送手段7によって、用紙Sが挟持搬送された以降は、両搬送手段6,7から十分な搬送力が用紙Sに作用するので、高剛性の用紙Sのスムーズな搬送を継続できる。さらに、用紙Sの後端が第1搬送手段6から離脱して第1搬送手段6からの搬送力が得られなくなっても、用紙S上における第2搬送手段7の挟持部から後端側へかけてのベルト搬送面の接触状態によっては、再びベルト搬送面から用紙面に搬送推進力が補充され、しかも徐々に用紙Sの湾曲の程度が緩和されることから、用紙搬送を持続することができる。これらの結果、用紙搬送装置5として、第1搬送手段6が受け取った用紙Sを、その用紙Sの剛性に拘わりなく、第2搬送手段7から下流側の用紙搬送経路に、確実かつ安定して送り出すことができる。
【0078】
上述したとおり、ベルト搬送手段8は、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成される第1搬送路Aの外郭方向に配置され、用紙Sの先端と接触した状態を保持しつつ第2搬送手段7に向けて用紙Sを移動・案内する移動案内手段としての機能を有する。
そして、本例では、移動案内手段としてのベルト搬送手段8は、搬送ベルト82により、第2搬送手段7の挟持部(ニップ部)に向かう方向に用紙Sの搬送方向を変えて移動・案内する機能も有する。
【実施例1】
【0079】
次に、先願発明に係る参考実施例1(以下、単に「実施例1」という)を説明する。図1〜図3に示した用紙搬送装置5を備えた給紙装置3と基本的な構成・仕様が同じで、株式会社リコー製「imagio Neo453」の給紙装置のみを試験用に改造した複写機(表1に「ベルト方式」として示す)と、従来の用紙搬送装置(図1〜図3において、グリップローラ81に対向接触する搬送回転部材がローラ状のプーリ83であり、搬送ベルト82およびローラ状のプーリ84を除去した装置で、図1の給紙装置3に示されている従来の用紙搬送装置5’に相当するもの)を備えた給紙装置を搭載した株式会社リコー製「imagio Neo453」の複写機(表1に「従来方式」として示す)とを使用して、用紙の給送搬送状態(通紙状態)に関する比較試験を実施した。
【0080】
上記ベルト方式において、上記比較試験に用いたベルト搬送手段8およびその周りの主な部材(従来方式を含む)の詳細は、次のとおりである。
搬送ベルト82の材質:エチレン・プロピレンゴム(EPDM)
搬送ベルト82の硬度:JIS K6253 A型 40度
搬送ベルト82の用紙に対する摩擦係数:2.6
搬送ベルト82の厚さ(肉厚):1.5mm
プーリ83の直径:13mm
プーリ84の直径:7mm
プーリ83,84の間隔:13mm(プーリ軸83a,84aの軸間距離)
搬送ベルト82の伸張率:7%
各ローラ60,61,62,81の直径:全て20mm
【0081】
基本的な試験条件として、用紙の腰(剛性:コシ)の強さの代用値として用紙の重さ(メートル坪量)を用い、これを6つの紙種に変えて、常温環境(23℃、相対湿度50%)においてそれぞれ上記複写機における同じ段の給紙トレイから通紙した。そして、図4を参照して以下に説明する試験条件を加味し、紙種別の搬送時間のばらつき(バラツキ)具合を調べる試験を実施した。その搬送時間のばらつき具合の試験結果を図5に、図5の試験結果に基づき通紙状態をまとめたものを表1に示す。
【0082】
図4において、88は、ピックアップローラ60によりピックアップされた用紙Sの先端を検知する給紙センサを、89は、第2搬送手段7(ベルト方式)またはグリップローラ81とローラ状のプーリ83との対(従来方式)により搬送されてきた用紙の先端を検知する縦搬送センサを、それぞれ示す。給紙センサ88および縦搬送センサ89は、それぞれ反射型のフォトセンサからなる。
【0083】
また、給紙センサ88と縦搬送センサ89との取り付け・配置間における搬送パス長:用紙搬送距離(シート搬送距離)は、ベルト方式および従来方式ともに次のとおり57mm一定に設定した。すなわち、給紙センサ88の配置部からフィードローラ61とリバースローラ62とのニップ部までの搬送パス長が10mm、フィードローラ61とリバースローラ62とのニップ部から第2搬送手段7のニップ部(ベルト方式)まで、またはフィードローラ61とリバースローラ62とのニップ部からグリップローラ81とローラ状のプーリ83とのニップ部(従来方式)までの搬送パス長が同じ38mm、第2搬送手段7のニップ部(ベルト方式)から縦搬送センサ89の配置部まで、またはグリップローラ81とローラ状のプーリ83とのニップ部(従来方式)から縦搬送センサ89の配置部までの搬送パス長が9mmで、トータルの搬送パス長は57mmである。
用紙搬送装置5の第1搬送手段6と第2搬送手段7との間の湾曲した用紙搬送経路(第1搬送路A)中心での曲率半径は、従来方式およびベルト方式ともに約20mm一定にして実施した。
【0084】
また、従来方式およびベルト方式ともに、ピックアップローラ60によるピックアップ圧(給紙圧)をパラメータとして、1.1Nと2.2Nとの2種類に変えるとともに、駆動側のフィードローラ61および駆動側のグリップローラ81の線速度がともに同じ154mm/s一定で、給紙センサ88から縦搬送センサ89までの搬送パス長57mmを搬送される用紙の先端の到達時間を、5つの紙種に変えて、それぞれオシロスコープで計測した紙種別搬送時間のばらつき結果を図5のグラフに示す。
【0085】
図5の試験結果より、紙種としてメートル坪量が256g/m以上になると、従来方式では搬送時間が長く、用紙のスリップが大きいのに対し、本発明のベルト方式では、搬送時間がそれほど長くならず、用紙のスリップが小さいことが分かった。また、ピックアップ圧を小さくすると搬送力が低下するが、本発明のベルト方式の場合、ピックアップ圧を小さくしても、さほど搬送時間に影響を及ぼさないことも分かった。よって、本発明のベルト方式を採用した場合、ピックアップ圧を小さくできるので、駆動モータの電力を小さくすることができる。その結果、装置が小型化できる。
【0086】
次に、図5の試験結果に基づき、通紙状態をまとめた表1について説明する。
ここで、「メートル坪量」とは、紙、板紙(用紙)の重量を表示するとき、1平方メートル当たりの用紙1枚の重さをグラムで表したものに相当する。一般的に、坪量の少ない用紙は「軽い紙」あるいは「薄い紙」であり、坪量の多い用紙は「重い紙」あるいは「厚い紙」であるといえる。
表1の試験結果において、○印で示した「通紙良好」とは、給紙センサ88がオンして用紙(シート)の先端が検出されてから所定時間内に縦搬送センサ89に到達したこと、すなわち搬送良好であることを、×印で示した「通紙不可」とは、給紙センサ88がオンして用紙の先端が検出されてから所定時間内に縦搬送センサ89に到達しなかったこと、すなわち搬送不良であることを、それぞれ表している。
【0087】
【表1】

【0088】
表1の試験結果より、紙種としてメートル坪量が256g/m以上になると、従来方式では通紙不可であったのに対し、図1〜図4に示した本発明に係るベルト方式では全て通紙良好となった。これにより、本発明に係るベルト方式の顕著な効果が認められた。
通紙・搬送状況の対比観察により、従来方式ではメートル坪量が256g/m以上になると、用紙の腰が強くなって、前記湾曲した用紙搬送経路に沿って湾曲するのが難しくなり、図1〜図4を借りて説明すると、その用紙の先端がグリップローラ81に対向接触するローラ状のプーリ83に付き当たってしまうことが分かった。
また、紙種として、メートル坪量が256g/m以上の用紙において、その表面部をコート処理したものと、コート未処理のものとを用いて、通紙・搬送状況の対比観察も行ったが、表1の試験結果以外の特筆する有意差は認められなかった。
【0089】
上述の実施例1における用紙搬送過程の観察結果から、以下のことが分かった。すなわち、メートル坪量が256g/m以上の剛性の高い用紙Sを第1搬送手段6から第1搬送路Aを経由してベルト搬送手段8における搬送ベルト82の搬送面82aに搬送する際には、剛性の高い用紙Sの直進搬送性が高いことから、第1搬送路Aを構成している各種ガイド部材を、その搬送負荷抵抗が小さくなるような単純な形状に変更ないしは各種ガイド部材を全く不要とすることも可能であることが分かった。
それ故に、比較的剛性の高い用紙Sだけを用いて搬送する用紙搬送装置の場合、その必須の構成となるのは、上記した第1搬送手段6と、第2搬送手段7と、第1および第2搬送手段6,7の間に形成される第1搬送路A(この場合はガイド部材が不要)の外郭方向に配置され、用紙Sの先端と接触した状態を保持しつつ第2搬送手段7に向けて用紙Sを移動・案内するベルト搬送手段8(移動案内手段)とである。
上述のことから、第1搬送路Aを形成する上記各種ガイド部材は、比較的剛性の低い、例えば普通紙やPPC等の用紙Sを搬送する場合、その剛性の低い用紙Sの直進性の弱さ(厚紙等の比較的剛性の高い用紙Sと比べた場合の直進性である)を補い、搬送ベルト82の搬送面82aに導き・案内するために必要であると言える。別言すれば、用紙Sの剛性が低くなるほどその直進性の低下を補って、用紙Sの先端を搬送ベルト82の搬送面82aの腹の部分に確実に当接させるために、第1搬送路Aを形成する上記各種ガイド部材のガイド面の形状を設定する必要性があると言える。
換言すれば、その剛性が高くなる用紙S(メートル坪量が大きくなる用紙S)を用いる場合ほど、上述した比較的曲率半径の小さい曲率部の用紙搬送経路を構成する際に使用する種々のガイド部材の形状・配置等の設計に、自由度を持たせることが可能となる。
なお、搬送ベルト82の材質は、上記比較試験に用いたものに限らず、例えばクロロプレンゴムや、ウレタンゴム、あるいはシリコンゴムでもよい。また、搬送ベルト82の各ゴム硬度は、JIS K6253 A型 40〜60度でもよい。
【0090】
以上述べたように、図1〜図4に示した用紙搬送装置5およびこれを有する複写機1によれば、コンパクトで省スペースでありながら、簡単かつ低コストな装置構成で、紙種対応性に優れた用紙搬送装置および画像形成装置を提供することができる。すなわち、基本的には、第2搬送手段を構成した既存のローラに搬送ベルトを巻き掛けて、ベルト搬送手段8を新たに設けて追加した構成であり、またベルト搬送手段8の専用の駆動源も不要にしているので、きわめて簡単な構成であり、このため低コストで済む用紙搬送装置および画像形成装置を実現できる。
【0091】
従来の構成では、搬送ガイド部材70に用紙が接触することによる搬送抵抗が大きいこと、または、第1搬送手段6から第2搬送手段7までの第1搬送路Aにおける搬送負荷等により高剛性の紙種に対応できず搬送不良が生じてしまうのに対して、この用紙搬送装置5では、高剛性の紙種にも対応できて、紙種性に優れた用紙搬送装置となる。すなわち、従来の構成では、所詮、用紙のガイド用に固定部材を配置しただけの構成であるため、移動体である搬送される用紙と固定されたガイド部材との間の速度差は根本的に解消されず、必ず搬送抵抗を生じてしまうのに対して、前記用紙搬送装置5および複写機1によれば、搬送抵抗を略皆無にできるだけではなく、用紙を下流に進ませるように積極的に搬送推進力を与えながらガイドすることができる(もしくは、第1搬送手段6による搬送力に、第2搬送手段7による搬送力が加わることにより、第1搬送手段6から第2搬送手段7までの第1搬送路Aにおける搬送負荷に対抗できるので用紙を下流に進ませることができる)。つまり、用紙搬送装置5では、用紙Sと搬送ベルト82との両者間に生じる摩擦抵抗は、用紙Sの搬送を妨げる抵抗ではなく、用紙Sに搬送推進力を付与するためのいわば負の抵抗となる。別言すれば、用紙Sの搬送を妨げるように作用する抵抗としてではなく、用紙Sに搬送推進力を付与するように作用する好ましい負の抵抗に転化される。
【0092】
しかも、用紙Sが搬送されて進む搬送方向において、その用紙Sの先端が搬送ベルト82の走行面(搬送面)に当接してから、該搬送の進展に伴い、紙種による剛性の程度によって差はあるものの、用紙Sの先端部面が搬送ベルト82の走行面に徐々に重なり合うように搬送されることから、ベルト走行面に接する用紙面の面積が漸次増加することになる。このため、このような接触面積の増大に応じて両者間の抵抗力の増加が図れ、用紙Sを搬送方向に進めるより大きな搬送推進力を搬送ベルト82から用紙Sに供給できるとともに、搬送ベルト82によって、グリップローラ81と搬送ベルト82とのニップ部に向かって用紙Sの進行方向が変えられることとなる。つまり、搬送ベルト82の走行面(搬送面)から用紙面に伝達される搬送推進力として作用する力は、着実に増強されることになる。
従って、たとえ用紙Sの剛性が高くても、この剛性に打ち勝って、用紙Sを適宜、その厚さ方向に変形つまり湾曲させながら、用紙Sを下流の第2搬送手段の挟持部に向けて確実かつ安定して搬送できる。このように用紙Sが高剛性であることに起因した主要な搬送不良の要因に対処できるので、用紙Sの先端が第2搬送手段の挟持部に到達した以降の用紙搬送も確実かつ安定して持続できる。この結果、用紙搬送装置として、多種多様な紙種に対応することが可能となり、その搬送対応能力を拡充でき、高い用紙搬送性能が得られる。
【0093】
(第1の例の変形例)
図6に、先願発明を適用した第1の例の変形例を示す。
図6(a)に示すように、上流側に配置された第1搬送手段6の対向接触したローラ対の一方をベルト搬送手段8としてもよく、また図6(b)に示すように、第1搬送手段6および第2搬送手段7での対向接触したそれぞれのローラ対のうち、片側の双方をベルト搬送手段8,8’としてもよく、さらに図6(c)に示すように、上流側に配置された第1搬送手段6のローラ対の一方か、下流側に配置された第2搬送手段7のローラ対の一方か、の何れにも代替した移動案内手段(ムービングガイド)として、これらの2つのローラ対の間に、別体の独立したベルト搬送手段8を設けてもよい。
【0094】
図6(a)および図6(b)の下側に示した変形例におけるベルト搬送手段8では、例えば、リバースローラ62の分離作用(用紙戻しのために反時計回りの回転)に影響を与えないように、リバースローラ62をその軸方向に串刺し状に分割して設けるとともに、分割されたリバースローラ62の間(リバースローラ62が無い部分)の軸の外周側に図示しない転がり軸受等を介して、リバースローラ62の外径よりもやや小さい外径の串刺しローラ状のプーリ(図示せず)を設けることにより、搬送ベルト82を時計回りに走行・回転するように駆動して用紙を搬送経路の下流側の第2搬送手段7やベルト搬送手段8’に搬送すればよい。フィードローラ61とリバースローラ62とのニップ部においては、搬送ベルト82がそのニップ部を形成しないようにリバースローラ62の外周面よりも一段低く設けられることとなる。これにより、フィードローラ61とリバースローラ62とのニップ部の部位において用紙を1枚に分離しつつ送り出した後、搬送ベルト82の上述した作用を発揮するようにすればよい。
従って、上記変形例の何れによっても、少なくとも、上記した第1の例と同等の作用効果が得られる。
【0095】
(第2の例)
図7〜図9を参照して、先願発明を適用した第2の例を説明する。なお、図1〜図4に示した用紙搬送装置5と同一の構成要素・部材には、同一の符号を付して、その説明を省略または簡略化することにする。特に記載しないが、本例で説明しない構成、つまり用紙搬送装置や他の構成およびその動作などは、図1〜図4に示した第1の例および実施例1の用紙搬送装置5と同様である。
【0096】
図7〜図9に示す用紙搬送装置5は、図1〜図4に示した用紙搬送装置5と比較して、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成される第1のシート搬送経路としての第1搬送路Aの他に、第2搬送手段7の上流から第2搬送手段7に至って形成され、第1搬送路Aと異なる別の独立した第2のシート搬送経路としての第2搬送路Bを有する点、第1搬送路Aと第2搬送路Bとが、第2搬送手段7の上流で合流する合流搬送経路(以下、「合流搬送路」または「合流部」ともいう)を有する点、および第2搬送回転部材対の一方のベルト搬送手段8が、第1、第2搬送路A,Bの合流搬送路の外郭方向に外れて配置されている点が主に相違する。図7〜図9に示す用紙搬送装置5は、前記相違点以外は図1〜図4に示した用紙搬送装置5と同様である。
【0097】
すなわち、ベルト搬送手段8は、その搬送ベルト82を張架した1対のローラ状のプーリ83,84のうちの片方のプーリ84が、プーリ83の直下に所定に離間させてハウジング80に回転自在に軸支され、これによって、そのベルト搬送面が、第2搬送路Bの外郭方向の面として形成されている。従って、搬送ベルト82の搬送面82aには、第1搬送手段6によって第1搬送路A上を搬送されてくる用紙Sの先端が必ず接するとともに、図示しない搬送手段によって第2搬送路B上を搬送されてくる用紙Sが、第2搬送手段7に到達することを妨げないようにしている。
【0098】
次に、図7〜図9に示した用紙搬送装置5の搬送動作を説明する。用紙Sは給紙トレイ51内に水平に積載された状態から繰り出され搬送されるため、第1搬送手段6の給紙分離機構における用紙搬送方向は略水平方向となるが、その後は上方に位置した画像形成装置本体2の作像部へと搬送するために略水平方向に直交する略鉛直上方向に用紙Sを搬送する必要がある。
そこで、図8に示すように、給紙分離機構による用紙Sの1枚ずつの分離後、1枚の用紙Sは、搬送抵抗が少なくて済むよう緩やかな屈曲で搬送され、その先端が搬送ベルト82に当接する。
搬送ベルト82は、図8中の矢印a方向で示される略鉛直上(略真上)方向に向けて進むように走行しているため、搬送ベルト82に当接した用紙Sの先端は、図9に示すように、グリップローラ81と搬送ベルト82との挟持部(ニップ部)へと搬送され、グリップローラ81と搬送ベルト82との対により略鉛直上方向の下流側へと挟持搬送される。この際、上記したように用紙Sに対しては、搬送ベルト82からその搬送方向に進める搬送推進力が伝達され作用するとともに、搬送ベルト82によりグリップローラ81と搬送ベルト82とのニップ部に向かって方向が変えられるので、高剛性の用紙Sでも搬送不良を生じることなく、安定して搬送できる。
【0099】
以上説明したように、図7〜図9に示した用紙搬送装置5によれば、合流搬送路を有する用紙搬送装置においても、図1〜図4を参照して説明した用紙搬送装置5と同様な作用効果、すなわち厚紙などの高剛性の用紙を安定して搬送でき、紙種対応性に優れるとともに、少なくとも第1、第2搬送路A,Bなどの2つ以上の複数の搬送路を有した用紙搬送装置に対応して適用でき、その応用範囲を広げること、つまり機種対応性にも優れた用紙搬送装置とすることができる。
【0100】
なお、第2の例は、図7〜図9に示したように既存の第2搬送ローラ対81,83を用いてベルト搬送手段8を構成した例に限らず、図6(c)に示した第1の実施形態の変形例と同様に、第2搬送ローラ対81,83とは別体の独立したベルト搬送手段8を設けて構成してもよい。
【0101】
(第3の例)
図10を参照して、先願発明を適用した第3の例を説明する。なお、第2の例と同一の構成要素・部材には、同一の符号を付して、説明を省略または簡略化することにする。特に記載しないが、第3の例で説明しない構成、つまり用紙搬送装置やその他の構成およびその動作などは、図7〜図9に示した第2の例の用紙搬送装置5と同様である。
【0102】
図10に示すように、その搬送時に湾曲された用紙Sの後端Seが、ガイド部材71などによる支持から外れる際には、湾曲した用紙Sの反力により、同図中に示した矢印b方向に用紙Sの後端Seが移動するハネ現象が発生する。特に厚紙のような腰の強い、つまり高剛性の用紙Sにおいてはその反力も大きくなるので、このハネによる突発音が問題となる。
すなわち、その搬送過程においては、少なくとも2つの支持点によって支持され強制的に用紙Sが湾曲され、その用紙Sの後端Se側が、一方の支持点としての第1搬送手段6の挟持部やガイド部材71などから外れると、先端側だけで支持され、その湾曲した用紙Sの弾性的な復帰力によって、用紙Sの後端Seが搬送ベルト82の搬送面82aに瞬時に衝突する。その際の衝撃は、用紙Sの剛性強度が高いほど大きくなる。このため、上記ハネ現象によって用紙Sの後端Seが搬送ベルト82に衝突して生じる突発音は、ユーザに不快感を生起させるだけでなく、故障が生じたとの誤認を招くおそれがある。すなわち、通常の用紙Sであるか高剛性の用紙Sであるかに拘わりなく用紙搬送が正常に行われていても、上記の突発音が生じることから、ユーザに、装置が不調であるかのような余計な疑念を与えるおそれがある。
【0103】
そこで、同図に示すように、この第3の例の用紙搬送装置5において、そのベルト搬送手段8が、該搬送ベルト82を張架した1対のローラ型のプーリ83,84およびグリップローラ81以外の搬送ベルト82に接触する部材としてのテンション・ローラ85などの当接部材を、搬送ベルト82の搬送面82a側に配置しないようにした。これにより、搬送ベルト82の搬送面82a側の部位・箇所に適度の弾性を持たせ、上記した用紙Sの後端Seハネによる衝撃を、搬送ベルト82の弾性作用により吸収して、厚紙などの高剛性の用紙Sの搬送時にも、静音性を確保できる用紙搬送装置5を実現して提供するようにしている。
【0104】
テンション・ローラ85は、プーリ対83,84に張架されて搬送ベルト82上に形成される2本の直線状部位において、その一方の搬送面82a側ではない、他方の反対面側部位の内周面に接する位置で、かつ、該位置から搬送ベルト82を横切って外方に変位可能に軸支され、該ローラ85が図示しない付勢部材によって図において右方の外方向に押圧され付勢されている。これにより、テンション・ローラ85は、搬送ベルト82の走行に伴い従動回転する一方、常時、所定の付勢力を受けて外方向に変位するように搬送ベルト82の内周面に接して、搬送ベルト82をその周長さ方向で緩むことなく一定の張力を維持できるようにしている。
【0105】
従って、本例の用紙搬送装置5によれば、用紙搬送方向における該用紙Sの先端側が第2搬送手段7によって挟持・搬送されて、用紙Sの後端Seが、ガイド部材71による支持から外れ、搬送ベルト82の搬送面82aに衝突した場合にも、図中二点鎖線で示すようにその衝突方向に搬送ベルト82の搬送面82aが変位するように十分に弾性変形でき、これにより用紙Sの後端Seハネによる衝撃を吸収できるので、その衝突による発生音の大きさを低減させて、用紙搬送装置の動作音として異音が発生することを抑制し緩和できる。
【0106】
以上述べたように、第3の例の用紙搬送装置5によれば、搬送した用紙Sの後端Seが搬送ベルト82の搬送面82aに接する箇所と別の箇所に、該ベルト82に接触してこれを支持する当接部材としてのテンション・ローラ85を配置しているので、用紙Sが所定に湾曲されて搬送されたときに、該用紙Sの後端Seが、第1搬送手段6のニップ部か、ガイド部材71かの何れかから外れて、搬送面82aに衝突した場合には、この衝突された部分の搬送ベルト82を十分に弾性的に撓ませて、衝撃を吸収させることができ、該衝突で生じる突発音(ハネ音)を抑制することができる。すなわち、用紙Sの後端Seが搬送ベルト82の搬送面82aに接する場合には、用紙Sの後端Seが接した搬送ベルト82箇所の変形を当接部材が妨げることなく、用紙Sの後端Seの接触方向に搬送ベルト82を十分に撓ませることができる。
特に、厚紙などのように高剛性の用紙Sを搬送した場合に、その用紙搬送方向における用紙Sの後端Seが搬送ベルト82に強く衝突するように接しても、該衝突による衝撃を搬送ベルト82の弾性的な変形によって吸収し緩和でき、その発生する衝撃音を十分に抑制できる。
従って、上記したように用紙搬送時の突発的な発生音を抑制できるので、ユーザの不快感を解消し、また故障が生じたとの誤認も回避した静粛性が得られ、装置の使用感を向上させることができる。
【0107】
他方、上記した用紙搬送過程のように、用紙Sの先端が始めて搬送ベルト82の搬送面82a側に接した際には、この用紙Sの先端の接触によって、たとえ突発音が生じないとしても、ある程度の搬送ベルト82の弾性的な変形が期待できるので、用紙Sの先端が搬送面82aからハネ返ることなく、つまり反発させることなく、ソフトに当接させて、そのまま接した状態に移行させることが可能となる。すなわち、用紙搬送方向に進むように走行する搬送ベルト82の搬送面82aに対して、第1搬送手段6によって搬送された用紙Sの先端が、始めて搬送面82aに対して斜めに突入角度θ(図8参照)をもって突き当たっても、用紙Sの先端を搬送面82aから反発させずに、用紙Sの先端が進む向きを搬送面82aに追従させて搬送ベルト82が進む向きに移行させることができる。
【0108】
第3の例は、図10に示したものに限らず、例えば十分な静音性が得られる程度の搬送ベルトの変形が可能であれば、図10に示した構成のように、所定に対向配置された1対のプーリ83,84に張架されて搬送ベルト82上に形成された略直線状の2つのベルト走行面のうち、第1搬送手段6に対面しない非搬送面側だけにテンション・ローラ85を配置することに限定されることなく、対面した搬送面側を含めて2つのベルト走行面のうちの一方を選択し、この選択したベルト走行面上での何れかの箇所に該ローラを配置してもよい。すなわち、用紙の厚さ方向の剛性強度に拘わりなく、上記したハネ現象によって用紙の後端がベルトの搬送面上に接する箇所はほぼ一定なので、この接する箇所から上記のベルト変形を許容する程度の距離を確保して離れた搬送面上の適宜箇所に、テンション・ローラを当接させるように該ローラを配置してよい。
【0109】
また、第3の例では、上記の所定位置を確保したうえで、張架されたベルトの内側から外方に押圧付勢して張力を確保するためのテンション・ローラを設けた構成としたが、これとは逆に、ベルトの外側から内方に押圧付勢して張力を確保するためのテンション・ローラを設けた構成としてもよい。
この構成の場合には、張力付与の機能に加えて、さらに、ベルト外周面をクリーニングする機能を兼用させた構成としてもよい。このようなベルトに対する張力付与機能とベルトの搬送面に対するクリーニング機能とを兼用させたテンション・ローラの構成によれば、そのベルトの搬送面を清浄に保つことができるので、ひいては画像品質の向上に寄与することが期待できる。すなわち、ベルト搬送面を清浄に保って、ベルトの搬送面に接する用紙の面を、同様に清浄に保つことができる。また、上記の所定位置を確保したうえで、テンション・ローラと、クリーニング・ローラとを別々に設けてもよく、さらに張力付与機能を主要な機能としないクリーニング機能を主体にしたクリーニング・ローラだけを設けてもよい。
【0110】
上述したとおり、図1〜図4、図7〜図10に示した各用紙搬送装置5の第2搬送手段7は、用紙Sを挟持して搬送する挟持搬送手段としてそれぞれ構成されていた。すなわち、第2搬送手段7はグリップローラ81とローラ状のプーリ83およびローラ状のプーリ84の間に張設された搬送ベルト82との2つの対向配置された搬送回転部材からなる第2搬送回転部材対の構成とされ、グリップローラ81側を駆動側とし、搬送ベルト82側をグリップローラ81に対向接触して従動する従動側として説明されていたが、必ずしも駆動・従動側を明定したものではなく、搬送ベルト82側を駆動としてもよいことを含む技術内容であった。
これに対し、本発明の第1の実施形態等では、以下の内容により、グリップローラ81側を駆動側とし、搬送ベルト82側をグリップローラ81に対向接触して従動する従動側として明定した。
【0111】
また、上述したとおり、図1〜図4、図7〜図10に示した各用紙搬送装置5の搬送ベルト82は、用紙幅方向Yにおける搬送ベルト82の幅が、少なくとも、搬送する最大サイズの用紙幅とほぼ同じ幅、すなわち、搬送ベルト82のベルト幅としては、少なくとも、搬送する最大サイズの用紙幅以上のベルト幅が連続的に設定・確保されている。同様に、搬送ベルト82を張架しているプーリ83,84および搬送ベルト82に対向接触したグリップローラ81は、それぞれの用紙幅方向Y(軸長手方向)のプーリ、ローラ長さが、ベルト幅の長さと同一以上の長さに連続的に形成されている。これにより、第1搬送手段6から送出された用紙Sは、搬送ベルト82に対して、必ずその用紙幅全域に渡って接することになり、両者間の接触面積を可能な限り最大限に確保できる。これに伴い、常時、搬送方向に移動される搬送ベルト82から用紙Sに供給可能な用紙Sをその搬送方向に進める搬送推進力も、可能な限り最大限の力を伝達することが可能となることを特徴に挙げている。これに対し、第1の実施形態等では、以下のように構成している。
【0112】
(第1の実施形態)
図11〜図20を参照して、第1の実施形態の用紙搬送装置5Aを説明する。図11および図12は、第1の実施形態の用紙搬送装置5Aにおける第1搬送手段6および第2搬送手段7の給送駆動手段(給紙駆動系)としての駆動機構22を簡略的に示している。図13〜図18は、第1の実施形態の用紙搬送装置5Aにおける第2搬送手段7のベルト搬送手段8A周りを詳細に示している。
図11〜図18等に示す第1の実施形態の用紙搬送装置5Aは、図1〜図4および図7〜図10に示した用紙搬送装置5と比較して、挟持搬送手段である第2搬送手段7の駆動・従動の関係を明定した点、およびベルト搬送手段8に代えて、ベルト搬送手段8Aを用い、その搬送ベルト82等が用紙幅方向Yの用紙Sの一部と接触するように用紙幅方向Yに断続的に構成されている点、搬送ベルト82の材質、後述する物性値等を特定した点が主に相違する。本実施形態の用紙搬送装置5Aは、上述した相違点以外は、図1〜図4および図7〜図10に示した用紙搬送装置5と同様である。
【0113】
すなわち、用紙搬送装置5Aの第2搬送手段7は、その挟持部としてのニップ部を形成する対向対の一方が、回転することにより駆動力を伝達可能な回転搬送駆動手段・回転搬送駆動部材としてのグリップローラ81からなり、前記対向対の他方が、第1搬送手段6と第2搬送手段7との間に形成された用紙搬送経路(第1搬送路A)の外郭方向に配置され、グリップローラ81と直接接触して連れ回り、用紙Sの先端と接触した状態を保持しつつ第2搬送手段7の挟持部(ニップ部)に向けて用紙Sを搬送(移動・案内)する搬送ベルト82を備えたベルト搬送手段8A(移動案内手段)からなることを特徴としている。
【0114】
また、第1の実施形態の用紙搬送装置5Aは、図1〜図4および図7〜図10に示した用紙搬送装置5と比較して、搬送ベルト82の幅が搬送する最大サイズの用紙幅以上の長さであって、かつ、プーリ83,84、グリップローラ81の各長さが搬送ベルト82の幅の長さ以上にそれぞれ用紙幅方向Yに連続的に形成されている構成に代えて、ベルト搬送手段8Aにおける搬送ベルト82の用紙幅方向Yが、用紙幅方向Yの用紙Sの一部の先端部(先端、先端面、先端の角部・エッジを含む)と接触するように用紙幅方向Yに断続的に構成されている点を特徴としている。
【0115】
グリップローラ81は、串刺し団子状に用紙幅方向Yの回転駆動軸81a上に断続的に複数個固着・配設されている。一方、ベルト搬送手段8Aの搬送ベルト82およびプーリ83,84は、複数のグリップローラ81の少なくとも1つに対応して少なくとも1つ(すなわち、対向対の少なくとも1つ)配設・配置されている。具体的には、図11、図16および図18に示すように、グリップローラ81が回転駆動軸81a上に3個配置されており、さらに3個のグリップローラ81に対応・対向して3本の搬送ベルト82が各グリップローラ81と略等しい幅で配置されている。この詳細な構成は、後述する。
なお、図11では、駆動機構22を明確に示すため、グリップローラ81の配置間隔等を回転駆動軸81a方向に故意にずらせて不揃いに図示しているが、実際は搬送ベルト82に対向して等間隔に配置されていることは無論である。
【0116】
駆動機構22は、図11および図12に示すように、単一の駆動源・駆動手段としてのステッピングモータからなる給紙モータ23と、給紙モータ23の出力軸に固設されたモータギヤ24と、このモータギヤ24と噛み合うアイドラギヤ25と、このアイドラギヤ25と噛み合い、フィードローラ61の軸61aの一端部に固定されたフィードローラ駆動ギヤ61Bと、このフィードローラ駆動ギヤ61Bと噛み合うアイドラギヤ26と、このアイドラギヤ26と噛み合い、グリップローラ81の回転駆動軸81aの一端部に固設されたグリップローラ駆動ギヤ81Aと、フィードローラ61寄りの軸61aの他端部に固定されたフィードローラギヤ61Aと、このフィードローラギヤ61Aと噛み合う上記したアイドラギヤ65と、このアイドラギヤ65と噛み合い、ピックアップローラ60寄りの軸60aの他端部に固定されたピックアップローラギヤ60Aとから主に構成されている。
給紙モータ23は、ハウジング80に固定されている。アイドラギヤ25,26,65は、それぞれハウジング80に回転自在に支持されている。
上述したとおり、本例においては、コンパクトで省スペースである用紙搬送装置5として構成、すなわち上記実施例1に例示したように第1搬送路Aが曲率半径の比較的小さな曲率部で構成されている関係上、給紙モータ23は、単一であり、第1搬送手段6および第2搬送手段7の駆動手段を兼用していて、装置のコンパクト化に寄与している。
なお、リバースローラ62の駆動は、例えばフィードローラ61に対する圧解除等を行うソレノイド等を備えていて別系統である。図11において、62bは、図1〜図4に示した例において、図示しないトルクリミッタと説明したものを表している。
【0117】
図1〜図4に示した例では、ピックアップローラ60およびフィードローラ61の回転駆動関係を簡略的に説明したが、実際には、図12に拡大して示すように、両ローラ60,61はピックアップアーム部材64によって各軸60a,61aが連結されており、ピックアップローラ60がフィードローラ61側の軸61aを中心としてピックアップアーム部材64を介してピックアップ揺動・変位するように、図示しないソレノイドおよびバネの組み合わせによって駆動されるようになっている。
実際の駆動機構22では、給紙モータ23ないしフィードローラ61間にはより多くのギヤおよびタイミングベルト等の駆動力伝達部材が適宜配設されているが、ここではグリップローラ81が回転搬送駆動部材であることを明示するためその一例を両図に簡略的に示した。
【0118】
ここで、ベルト搬送手段8の搬送ベルト82は、駆動機構22により回転駆動されるグリップローラ81(回転搬送駆動手段・回転搬送駆動部材)と直接接触して連れ回る構成であるので、搬送ベルト82側を駆動する場合よりもグリップローラ81側を駆動した方が、搬送ベルト82の線速度のばらつきを小さくできる。これにより、第1搬送路A(用紙搬送経路)のターンの外側(外郭方向)に第2搬送手段7の挟持部に向けて回転する搬送ベルト82を配置することで、第1搬送路Aのターン部での厚紙等の比較的剛性の高い用紙搬送性の向上を可能とし、搬送ベルト82と対向し直接接触するグリップローラ81を駆動し、搬送ベルト82を連れ回りさせることで、安定した線速度で用紙を第2搬送手段7以降に搬送させることが可能となる。
【0119】
次に、図13〜図20を参照して、グリップローラ81に対向して配設されている主としてベルト搬送手段8A側の細部構成を説明する。
用紙搬送装置5Aのベルト搬送手段8Aは、図1〜図4および図7〜図10に示した用紙搬送装置5のベルト搬送手段8と比較して、搬送ベルト82の材質、物性値(弾性部材としてのゴム硬度(硬さ)、伸張率)および厚さを下記のように特定した範囲のものを用いる点、プーリ軸83a上に固着された3個のプーリ83に代えて、3個のプーリ83がプーリ軸83b上に回転自在に支持されている点、プーリ軸84a上に固着されたプーリ84に代えて、3個のプーリ84がプーリ軸84b上に回転自在に支持されている点、各プーリ83,84がポリアセタール樹脂等の樹脂で形成されている点、各プーリ83,84を回転可能に軸支・支持する支持部材としてのベルト支持部材86を用いている点、その軸方向に長く連続したプーリ軸84aに代えて、その軸方向に長さの短い金属製の3本のプーリ軸84bを用いている点および後述する特徴が主に相違する。
【0120】
グリップローラ81と搬送ベルト82とは、図4に示したと同様に、図14に示すように、グリップローラ81の回転駆動軸81aの中心とプーリ軸83bの中心とを結ぶ線分上にて接する構成となっており、その接点を含む部分に挟持部(ニップ部)が形成される。プーリ83、84は、例えば潤滑性能および耐摩耗性・耐久性が良好なポリアセタール樹脂等の樹脂で形成されていて、軽量化が図られている。
【0121】
3箇所に配置された搬送ベルト82は、後述するバネ荷重の設定等を除き、その構成は同様であるため、そのうちの1箇所を代表して説明する。搬送ベルト82の材質としては、弾性部材としての例えばエチレン・プロピレンゴム(EPDM)を用いていて、基材(通常、ベルトは、繊維を編み込んだ布等の基材にゴムを付ける使い方が多い)の無いゴムそのものからできている。
搬送ベルト82の材質としては、上記のものに限らず、例えばクロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム(U)またはシリコンゴムもしくはシリコーンゴム(Q)の何れか一つから形成されているものを使用してもよい。
【0122】
搬送ベルト82は、各プーリ軸83b,84bを介してのプーリ83、84のベルト支持部材86への組み付けの関係により、プーリ軸83bに回転自在に支持されたプーリ83と、プーリ軸84bに回転自在に支持されたプーリ84との間に所定のテンションをもって掛け渡されている。
すなわち、各プーリ軸83b,84bは、その軸間距離を一定に保持するように、ベルト支持部材86に固定・支持されている。このとき、各プーリ83,84間に搬送ベルト82を巻き掛けるときの搬送ベルト82の周長が、搬送ベルト82単体の周長よりも大きくなるように各プーリ軸83b,84bをベルト支持部材86に配設・支持したことも特徴点となっている。上記構成により、搬送ベルト82は、ベルト搬送手段8Aとしてベルト支持部材86に組んだ場合、搬送ベルト82単品の周長より組み付けた後の周長の方が大きくなるよう、搬送ベルト82をその弾性により伸ばして使用していることとなる。
【0123】
3個のベルト支持部材86の間のプーリ軸83b上には、2個の軸受87が装着されている。そして、付勢手段・弾性部材としてのバネ91が、軸受87を介してプーリ軸83bを加圧し、用紙を搬送する搬送力を生み出す構成となっている。上述したように、プーリ軸83bとプーリ軸84bとはベルト支持部材86によって一定の軸間距離を保持するように固定されており、プーリ軸84bがプーリ軸83bを中心に揺動可能に構成されている。
【0124】
ベルト支持部材86は、ポリアセタール樹脂等の樹脂で一体的に形成されていて、軽量化が図られている。ベルト支持部材86の背面壁には、バネ92の一端を係止するバネ台座86aが一体的に形成されている。ベルト支持部材86から突出したプーリ軸83b,84b近傍には、プーリ軸83b,84b抜け止め用の止め輪が装着されている。
図14に示すように、ベルト支持部材86のバネ台座86aと開閉ガイド79に固設されたバネ受け部材93との間には、ベルト支持部材86の背面を付勢することにより、搬送ベルト82を図14に示すグリップローラ81に常に圧接する向きに付勢する付勢手段としてのバネ(圧縮バネ)92が装着されている。
【0125】
図15にハッチングを施して示すように、ベルト支持部材86の下部には、搬送ベルト82を所定の位置に位置決めするための位置決め部86bが一体的に形成されており、この位置決め部86bが搬送ガイド部材72と接することにより、搬送ベルト82自体の位置が位置決めされる。また、図14および図17に示すように、付勢手段・弾性部材としてのバネ92の付勢力により、位置決め部86bと搬送ガイド部材72とが当接することによって、搬送ベルト82が所定の位置に位置決めされ、搬送ガイド部材72から内側に突出して形成された搬送ガイドリブ72bからのベルト突き出し量hを確保できるよう構成されている。
【0126】
図17に詳しく示すように、軸受87には、U字溝87aが形成されており、プーリ軸83bがU字溝87aと緩く嵌合していることにより、バネ91の付勢力によってプーリ軸83bを介して搬送ベルト82をグリップローラ81に圧接する向きに付勢・加圧している。プーリ軸83bは、搬送ベルト82がグリップローラ81に圧接することによりその位置が固定されるが、プーリ軸84bはプーリ軸83bを中心に図15に示す矢印方向に揺動可能に構成されている。
図14および図17を参照して、バネ92の一端がベルト支持部材86を加圧していることは上述したが、その他端はバネ加圧台94に支持・係止されている。バネ加圧台94は、バネ92の付勢力の向きに沿ってバネ受け部材93に形成されたスリット93aに対し、移動かつ任意の位置にて固定できるよう構成されている。同図では、ネジで締結・固定されている例を示す。この構成により、それぞれ3箇所において、バネ92の圧縮長さを任意に変えられることで、バネ92の付勢力としてのバネ荷重、すなわちその加圧力を変更可能に構成されている。本実施形態の例では、2個のバネ91のバネ荷重、バネ長さ、形状等のバネ仕様は、同一のものを使用している。同様に、3個のバネ92のバネ荷重、バネ長さ、形状等のバネ仕様は、同一のものを使用している。
【0127】
説明が前後するが、図18(a),(b)に示すように、一般的な従来の給紙装置と同様に、給紙装置3の本体側の構成は、第1搬送路Aを分割して、図3、図4および図7〜図10等に示したハウジング80等を備えた装置本体78に対して、装置本体78の下部に設けられたヒンジ支点軸76を揺動支点として、開閉ユニットとしての開閉ガイド79が図18中矢印C,D方向に開閉自在となる構成を採用している。このような開閉構成により、紙詰まり用紙(ジャム用紙)を除去するようになっている。
【0128】
上述したとおり、本実施形態におけるベルト搬送手段8Aの搬送ベルト82は、各プーリ軸83b,84bを介してのプーリ83、84のベルト支持部材86への組み付けの関係により、一対のローラ状のプーリ83,84の間に所定のテンションをもって掛け渡されている。そして、搬送ベルト82は、バネ92の付勢力によってフリーに回転可能に設けられたプーリ83が駆動されるグリップローラ81に押し付けられており、グリップローラ81の回転に連れ回ることで従動回転する。
このような本実施形態におけるベルト搬送手段8A周りの基本的な構成において、搬送ベルト82には適正な条件が存在し、その適正条件を決める際に考慮するべき項目としては、次の点が挙げられる。すなわち、
(1)伸張率を高くして、搬送ベルト82を従動回転させた際の回転負荷
(2)伸張率を低くして、搬送ベルト82を使用した際の搬送ベルト82の弛みが挙げられる。
【0129】
搬送ベルト82のゴム硬度と伸張率との関係に関して、一般的には次の現象が予想される。すなわち、搬送ベルト82として、低硬度のものを低い伸張率で使用すると搬送ベルト82が緩んで、搬送ベルト82が上述した移動案内手段として機能しなくなる虞がある。例えば、搬送ベルト82の伸張率が低い場合には、ゴム硬度に関わりなく、搬送ベルト82を各プーリ83,84にならわせて張ろうとすると、図19(a)に破線で示すように、各プーリ83,84間のストレート部分の搬送ベルト82が外側に膨らんでしまう。
また、搬送ベルト82として、高硬度のものを高い伸張率で使用すると、搬送ベルト82のテンションが大きくなるとともに搬送ベルト82を介して各プーリ83,84に掛かる回転負荷(荷重負荷)が増大することにより、搬送ベルト82を回転させるトルクが必要以上に大きくなってしまい、グリップローラ81に追従して連れ回ることが難しくなり、すなわちグリップローラ81に対して搬送ベルト82がスリップし、グリップローラ81の線速度(以下、「線速」ともいう)と比べて搬送ベルト82の線速が遅くなることで、狙い通りの搬送ベルト82の線速が出ず、本発明の効果が発揮できない。
【実施例2】
【0130】
そこで、上記の搬送ベルト82の緩みおよび必要以上の回転負荷を回避して、搬送ベルト82の必要機能を得るため、搬送ベルト82の厚さを一定にした条件で搬送ベルト82の伸張率およびゴムの硬度に関して必要な閾値を設定した。すなわち、必要な閾値・評価基準としては、搬送ベルト82の線速がグリップローラ81の線速と略同一であること、別言すれば搬送ベルト82の狙い通りの線速が得られることを意味する。
上記閾値を基準として、搬送ベルト82の伸張率と硬度との各パラメータの組み合わせが、どのような範囲において用紙(シート)の保持・安定搬送に適しているか否かの試験評価を行った。その評価結果を下表2に示す。
【0131】
実施例2の基本的な試験条件としては、以下に特記する条件を除き図5および表1に示した実施例1の試験と同じ試験条件の下で試験を行い、搬送ベルト82の線速がグリップローラ81の線速と略同一であるか否か等について、エチレン・プロピレンゴム製の搬送ベルト82のゴム硬度と伸張率との関係として、下表2の試験結果が得られた。表2に示すとおり、搬送ベルト82の伸張率(%)を10〜4%の7段階に変化させるとともに、搬送ベルト82のゴムの硬度(JIS K 6253 A型)を40°、60°、80°の3段階に変化させて行った。
実施例2に特別の試験条件としては、搬送ベルト82の厚さを、1.5mm一定とした。この他の実施例2の試験条件は、プーリ軸83b,84bの軸間距離13mm一定で、かつ、グリップローラ81の線速一定であり、常温環境等および用紙種類としてメートル坪量が6種類の用紙を搬送可能とすることを含め、実施例1の試験条件と同一である。
【0132】
ここで、本実施形態における搬送ベルト82の伸張率とは、軸間距離が一定のプーリ83,84(各ベルト保持回転部材)間に搬送ベルト82を巻き掛けたときにおける搬送ベルト82単体の周長からの搬送ベルト82の伸張分の百分率(%)割合で表したものである。例えば、軸間距離が一定のプーリ83,84間に巻き掛ける前の搬送ベルト82単体の周長が100mmであった場合、同一の軸間距離が一定のプーリ83,84間に巻き掛けた後の搬送ベルト82の周長が110mmに伸張されたときの伸張率は、110/100×100(%)−100(%)=10(%)で表される。これは、上述した実施例1でも同様である。
ベルトの伸張率という考え方は、ベルト保持回転部材としてのプーリ間の軸間距離が固定されていて一定のものに適用され、ベルトテンショナーなどと呼ばれていて部品点数が多く複雑で高価な周知の専用の手段により、ベルトにテンションを付与するものには適用されない。これに対し、本発明の移動案内手段としてのベルト搬送手段は、軸間距離が一定のプーリ83,84間に搬送ベルト82を単に巻き掛け伸張させる、という部品点数が少なく簡単な構成でかつ安価なものであり、従来のシート搬送装置および画像形成装置等には無い新規なものである。
【0133】
【表2】

【0134】
表2において、表1に示したと同様の6種類の用紙の搬送性能についての試験評価結果を示す記号○、△、×の詳細は、次のとおりである。
○:搬送ベルト82の線速がグリップローラ81の線速と略同一であること(搬送ベルト82の狙い通りの線速が得られたこと)を表しており、実用上問題なく使用可能なオーケーレベルの組み合わせ範囲である。
△:外観観察の結果、図19(a)に破線で示すように、搬送ベルト82の伸張率が4%の場合に、各プーリ83,84間のストレート部分の搬送ベルト82が外側に膨らんでしまった(膨出した)ことを表している。それ故に、例えば図1における給紙装置3において、下段の給紙トレイ51の下方にさらに下段給紙トレイが配置されていて、搬送ガイド部材71が第2搬送路Bとガイドとを兼ねている本実施形態の構成の場合、図19(b)に破線で示すように、搬送ベルト82が搬送ガイド部材71に干渉してしまう。
しかしながら、下段給紙トレイからの用紙搬送路が無い場合(図1〜図4参照)には、図19(b)において実線で示されている搬送ガイド部材71を、破線で示す搬送ベルト82と干渉しない程度に図において左側にずらして配置すれば実用上問題がなくなるため、使用可能である。何故ならば、搬送ガイド部材71の下流端71cと搬送ベルト82までの用紙搬送方向の距離が離れていても、シート先端の移動案内に関しては問題はないからである。
【0135】
上述したことを言い換えると、搬送ベルト82の硬度が40〜80°であって、かつ、その伸張率が4%の特別条件の場合に、用紙と接触する搬送ベルト82の搬送面82aが、搬送ガイド部材71の下流端71c等と干渉する方向に膨出したとき、搬送ガイド部材71を搬送面82aと干渉しない程度に該搬送面82aから離れた位置(図19(b)では左側に少しずれた位置)に配置することにより、前記特別条件を満たす搬送ベルト82が採用可能となることを意味する。
【0136】
×:搬送ベルト82の伸張率および硬度が大きいため、各プーリ83,84にかかる荷重が大きくベルト回転負荷が増大することにより、グリップローラ81に対して搬送ベルト82がスリップし、グリップローラ81の線速と比べて搬送ベルト82の線速が遅くなることで、狙い通りの搬送ベルト82の線速が出ず、本発明のベルト方式の効果が発揮できないことを表す。
【0137】
表2の試験評価結果から、
硬度40° ⇒ 伸張率5〜10%
硬度60° ⇒ 伸張率5〜7%
硬度80° ⇒ 伸張率5%
の条件で搬送ベルト82の硬度と伸張率とを設定すれば良いことが分かった。また、ゴム硬度が小さい場合、伸張率を大きくとっても搬送ベルト82の連れ回りに与える影響は小さいことが分かった。
但し、硬度40〜80°の何れにおいても、伸張率4%は評価結果△であり、上述した特別条件付きで採用可能である。
【実施例3】
【0138】
図22〜図26を参照して、実施例3を説明する。この実施例3は、上述の実施例2と比較して、搬送ベルト82の厚さを一定にした条件に代えて、搬送ベルト82の厚さもパラメータとして捉え、その厚さ、伸張率およびゴムの硬度に関して必要な閾値を設定した点、およびゴム硬度の試験範囲を40°〜80°まで10°刻みで高精度に行った点が主に相違する。
上記相違点以外は、実施例2と同様である。すなわち、本実施例における搬送ベルト82の厚さ、伸張率およびゴムの硬度に関して、必要な閾値・評価基準としては、搬送ベルト82の線速がグリップローラ81の線速と略同一であること(搬送ベルト82の狙い通りの線速が得られること)を意味する。上記閾値を基準として、搬送ベルト82の厚さと伸張率とゴムの硬度との各パラメータの組み合わせが、どのような範囲において用紙(シート)の保持・安定搬送に適しているか否かの試験評価を行った。その評価結果を図22〜図26に示す。なお、図22、図24および図26においては、一部、実施例2と同一の試験・評価結果が含まれていることを付記しておく。すなわち、搬送ベルト82の厚さが1.5mmであって、搬送ベルト82のゴムの硬度が40°、60°、80°、搬送ベルト82の伸張率10〜4%の各パラメータの組み合わせた場合の評価結果は、実施例2と同一である。
【0139】
実施例3の基本的な試験条件は、以下に特記する条件を除き実施例2の試験と同じ試験条件の下で試験を行い、搬送ベルト82の線速がグリップローラ81の線速と略同一であるか否か等について、エチレン・プロピレンゴム製の搬送ベルト82の厚さとゴムの硬度と伸張率との関係として、図22〜図26の試験結果が得られた。図22〜図26に示すとおり、搬送ベルト82のゴムの厚さを1.5mmから0.1mm刻みで4.0mmまで(ゴムの硬度40°の場合)、同じく3.5mmまで(ゴムの硬度50°の場合)、同じく3.2mmまで(ゴムの硬度60°、70°、80°の場合)変化させるとともに、搬送ベルト82の伸張率(%)を10〜4%の7段階に変化させ、かつ、搬送ベルト82のゴムの硬度(JIS K 6253 A型)を40°、50°、60°、70°、80°の5段階に細かく変化させて行った。
上記以外の実施例3の試験条件は、実施例2と同様である(プーリ軸83b,84bの軸間距離13mm一定で、かつ、グリップローラ81の線速一定であり、常温環境等および用紙種類としてメートル坪量が6種類の用紙を搬送可能とすることを含め、実施例1および2の試験条件と同一である)。
【0140】
図22〜図26において、表1に示したと同様の6種類の用紙の搬送性能についての試験評価結果を示す記号○、△、×の詳細および△の場合の技術内容は、実施例2と同様であるため、その細部の説明を省略する。但し、試験評価結果△の場合においては、実施例2と同様に、搬送ベルト82の硬度が40〜80°であって、その伸張率が4%の特別条件の場合、かつ、搬送ベルト82のゴムの厚さが1.5mm以上の場合に、用紙と接触する搬送ベルト82の搬送面82aが、搬送ガイド部材71の下流端71c等と干渉する方向に膨出したとき、搬送ガイド部材71を搬送面82aと干渉しない程度に該搬送面82aから離れた位置(図19(b)では左側に少しずれた位置)に配置することにより、前記特別条件を満たす搬送ベルト82が採用可能となることを意味する。
【0141】
図22〜図26に示されている試験評価結果のとおり、すなわち、搬送ベルト82の厚さとゴムの硬度と伸張率との3つのパラメータの組み合わせ関係が、評価結果○となる条件で搬送ベルト82の厚さとゴムの硬度と伸張率とを設定すれば良いことが分かった。また、実施例2と同様にゴムの硬度が小さい場合、伸張率を大きくとっても搬送ベルト82の連れ回りに与える影響は小さいことが分かった。但し、上述したように硬度40〜80°の何れにおいても、伸張率4%は評価結果△であり、上述した特別条件付きで採用可能である。
搬送ベルト82の厚さは、ゴムの硬度と伸張率との関係で異なるが、図22〜図26に示されている試験評価結果からは1.5mm以上あれば良いことが分かる。しかしながら、搬送ベルト82の材料の節減・省資源化、これに伴うコストおよび手動による搬送ベルト82のプーリ83、84への組み付け・装着作業性等を総合的に勘案した場合、自ずとその上限値が制約され得ることは言うまでもない。
【0142】
ここで、搬送ベルト82のゴムの硬度の設定に関して付言すると、通常あるいは一般的な設計上からのゴムの硬度設定は、設計上の公差あるいは誤差として±5°の範囲を設けている。このような観点から、図22〜図26に示されている試験評価結果が得られる搬送ベルト82のゴムの硬度として、その上限値として図において80°と記載されているゴムの硬度を85°とし、その下限値として図において40°と記載されているゴムの硬度を35°とするのが具体的妥当性のある設定と言える。
【0143】
図20および図27を参照して、搬送ベルト82の厚さh2の下限値を1.5mm以上とした根拠について補足する。プーリ83の両端部には、搬送ベルト82がプーリ83から外れないようにするため、プーリ83から遠心方向に突出したフランジ形状101が一体的に形成されている。このフランジ形状101の高さh1は、通常1.0mmに設定されている。一方、搬送ベルト82の厚さh2は、その経年変化を考慮し搬送ベルト82が磨耗してもフランジ形状101の外周面が搬送ベルト82の外周表面より突出しないように、すなわちh1>h2とならないように設定する必要がある。そこで、搬送ベルト82の厚さh2が通紙枚数によってどれくらい変化するかを確認すべく通紙耐久試験を行った。その結果を図27に示す。
【0144】
図27には、横軸に通紙枚数(×1000枚)が、縦軸に搬送ベルト82の厚さ変化量(磨耗量)(mm)がそれぞれ取られている。同図に示すように、搬送ベルト82の通紙耐久試験によって搬送ベルト82の厚さ変化量(mm)の最大値を求めた。この通紙耐久試験において、搬送ベルト82としては、耐摩耗性樹脂処理が施され、その材質がエチレン・プロピレンゴム(EPDM:図27ではEPゴムと表記している)で、硬度的に最も磨耗しやすいと考えられる硬度40°のもの(以下、「YA品」という)を用いた。そして、このYA品を実施例2や3と同様に組み込んで通紙耐久試験結果を行った。その結果、同図に示すように普通紙(PPC紙)で370万枚通紙したときに搬送ベルト82の厚さ変化量の最大値は−0.42mm程度(目標値としては、例えば370万枚通紙時で−0.5mm以下に設定)となった。
そこで、上述したフランジ形状101の高さh1が通常1.0mm程度である点、および上記耐久試験結果により判明した、搬送ベルト82の厚さh2の変化量の最大値が−0.42mm程度である点を考慮して、搬送ベルト82の外周表面がフランジ形状101の外周面より0.5mm(h2−h1=0.5)の厚さの分だけ突出するように搬送ベルト82の厚さh2を決定した。つまり、搬送ベルト82の厚さh2の実用上の下限値を1.5mmに設定することにした。
なお、フランジ形状101の高さh1を例えば0.5mmに設定したような場合、搬送ベルト82がフランジ形状101に乗り上げて外れやすくなるため、1.0mmに設定した。フランジ形状101の高さh1の設定は、フランジ形状101自身および搬送ベルト82の厚さ設定に伴う材料の節減等を考慮しなくてもよいのであれば、1.0mmの設定に限定されないことは言うまでもない。
なお、一般的にゴムの硬度が高くなると、通紙耐久試験結果から搬送ベルト82の磨耗量は低下する傾向にあることが分かっている。また、比較的剛性の高い用紙、例えばメートル坪量が256g/m(表1参照)以上の用紙を通紙した場合の搬送ベルト82の厚さ変化量の最大値については、上記通紙耐久試験で使用した硬度40°の搬送ベルトでは普通紙等の場合より若干大きくなる可能性はある(普通紙等と同線速の場合)。しかし、上記比較的剛性の高い用紙の場合は、定着時の熱容量を確保するためにその線速を普通紙等の線速よりもかなり遅くするため(普通紙等の線速の約3分の1の線速)、機械寿命内の通紙枚数であれば普通紙を通紙した場合の搬送ベルト厚み変化量の最大値と実用上同程度になるものと考えられる。または、比較的剛性の高い用紙に併せて搬送ベルト82の硬度を高めに設定しておくことでも対応することが可能であると考えられる。
【0145】
図20に示した例では、グリップローラ81のローラ幅は、プーリ83のそれより幅広く設定されている。プーリ83に一体的に設けられたフランジ形状101の高さh1は、搬送ベルト82の厚さ・高さh2より小さく設定されている。このため、グリップローラ81とフランジ形状101との間には、間隙寸法であるギャップd1が保持され、h2>h1>d1の関係より搬送ベルト82の脱輪が発生することはなく、また用紙とフランジ形状101との干渉も発生しないことから、用紙へのダメージを与えることなく良好な用紙搬送性能が確保できる。
【0146】
次に、搬送ベルト82の表裏面の性状、表面処理状態について述べる。本実施例のプーリ83,84の搬送ベルト82の裏面と接触する外周表面は平滑であり、つるつるの状態である。これに対し、従来、駆動側で用いられるベルトの場合、線速・スピードを一定に保つ安定性のために、歯付き(歯車の歯状)にしてベルトとプーリとが確実に噛み合うようにしている。本実施例の搬送ベルト82は、例えば図20に示すグリップローラ81との摩擦接触により従動回転・走行し、その結果、搬送ベルト82が掛け渡されているプーリ83,84も従動回転する。それ故に、搬送ベルト82とプーリ83,84とがスリップすることは実用上問題がなく、グリップローラ81と搬送ベルト82とが連れ回るのかが重要となる。
搬送ベルト82の外周表面には、通常、金型の凹凸形状模様にて、シボ(絞)加工を施すのが一般的である。なお、ベルトの厚さの精度向上のための研磨目を付けるベルト研磨は、用紙の紙粉付着対応のために行っている。搬送ベルト82の外周表面が平滑でつるつるの状態であると、グリップローラ81の駆動回転に対し連れ回りせず、スリップの可能性がある。シボ加工とベルト研磨とでは、表面処理方法が異なり、またシボ加工がベルト研磨より安価に済むという違いもある。
【0147】
さらに、プーリ83の外周表面と接触する搬送ベルト82の裏面に対するプーリ83の外周表面の摩擦係数と、搬送ベルト82のゴム硬度とプーリ83の外周表面の摩擦係数とをパラメータにとって、追加試験を行ったところ、次のような結果が得られた。すなわち、硬度40°→摩擦係数2.6、硬度60°→摩擦係数1.8、硬度80°→摩擦係数1.2という対応結果が得られた。なお、従来においてプーリ83の外周面の摩擦係数としては0.8までが実用可能な範囲であることが確認されている。また、同じ硬度のベルトでも配合される成分によって材質が異なり、そのためプーリ外周面の摩擦係数にもある程度の幅が許容される。この点を考慮すると、ベルト硬度が80°のときの摩擦係数1.2という値も許容される下限値は0.8程度になるものと考えられる。従って、搬送ベルト82の裏面に対するプーリ83の外周表面の摩擦係数は、0.8〜2.6の範囲であれば実用上問題ないレベルであると考えられる。
【0148】
従って、第1の実施形態によれば、以下の利点・効果を奏する。第1に、搬送ベルト82の厚さとゴムの硬度(JIS K6253 Aスケール)と伸張率との組み合わせ範囲として、厚さが1.5mm以上であって、ゴムの硬度が40〜80度(公差を考慮すると、35〜85度)であり、かつ、伸張率が10〜5%である条件を満たすことにより、搬送ベルト82の適度な弾性変位・変形により、用紙(シート)の先端を含め用紙を保持しつつ用紙を安定して搬送することができる。
第2に、ベルト搬送手段8Aの搬送ベルト82は、駆動機構22により回転駆動されるグリップローラ81(回転搬送駆動手段・回転搬送駆動部材)と直接接触して連れ回る構成であるので、搬送ベルト82側を駆動する場合よりもグリップローラ81側を駆動した方が、搬送ベルト82の線速度のばらつきを小さくできる。これにより、第1搬送路A(用紙搬送経路)のターンの外側(外郭方向)に第2搬送手段7の挟持部に向けて回転する搬送ベルト82を配置することで、第1搬送路Aのターン部での厚紙等の比較的剛性の高い用紙搬送性の向上を可能とし、搬送ベルト82と対向し直接接触するグリップローラ81を駆動し、搬送ベルト82を連れ回りさせることで、安定した線速度で用紙を第2搬送手段7以降に搬送させることが可能となる。
【0149】
この利点・効果は、次のような技術内容を考察すれば容易に理解できる。すなわち、グリップローラ81を駆動する場合、グリップローラ81の線速度はグリップローラ81自身の外径と回転数とによってのみ決まる。これに対して、搬送ベルト82側を駆動する場合を考えると、搬送ベルト82を駆動する場合、搬送ベルト82の内側に設けたローラ状のプーリ83(ベルト駆動ローラ、主プーリ)によって搬送ベルト82を駆動するのが一般的である。
この場合、搬送ベルト82の線速度は、搬送ベルト82の内側に設けたプーリ83の外径および回転数以外に、構成部品バラツキによる搬送ベルト82の厚さのばらつき、搬送ベルト82の磨耗による厚さの影響、あるいは搬送ベルト82とプーリ83との間のスリップの影響を受ける。このため、搬送ベルト82側を駆動するよりグリップローラ81側を駆動した方が、搬送ベルト82の線速度のばらつきを小さくできる。
【0150】
第3に、各プーリ83,84(第1、第2のベルト保持回転部材)は、その軸間距離を一定に保持するようにベルト支持部材86(支持部材)に軸支されており、各プーリ83,84間に弾性部材からなる搬送ベルト82を巻き掛けるときの搬送ベルト82の周長が、搬送ベルト82単体の周長よりも大きくなるように各プーリ83,84のプーリ軸83b,84bをベルト支持部材86に配設したことにより、本実施形態ではベルトのテンションをかける手段として、通常よく用いられるテンショナーもしくはタイトナーと呼ばれるベルトにテンションをかける機構を設けず、搬送ベルト82を2軸のプーリ間83,84に弾性的に伸ばしてテンションをかける構成としているため、従来のテンショナー等の機構を設ける構成に比べてシンプルで、省スペース、低コスト化を実現できる。
これにより、第1搬送路Aのターン部での厚紙等の比較的剛性の高い用紙搬送性の向上を可能とした用紙搬送装置において、機構がシンプルで、省スペース、低コスト化を実現できる。その他、上述した発明の効果の欄に記載した効果も奏する。
第4に、搬送ベルト82の裏面に対するプーリ83の外周表面の摩擦係数を0.8〜2.6の範囲に設定したので、搬送ベルト82を安定して回転させることができるとともに、安定して用紙をグリップすることができる。
【0151】
以上説明したとおり、各用紙搬送装置5,5Aのベルト搬送手段8は、第2搬送手段7(挟持搬送手段)の対向対の一方が、用紙(シート)の先端ないし先端部(先端、先端面、先端の角部・エッジを含む広い意味合いの用語である)と接触・当接した状態を保持しつつ、用紙の剛性程度によってはその接触面積を徐々に広げながらグリップローラ81とのニップ部(挟持部)に向けて用紙Sを移動・案内する移動案内手段の一例であるといえる。それ故に、移動案内手段としては、ベルト搬送手段8,8Aに限らず、前記構成・機能を有し、上記作用効果を奏するものならば何でもよい。
【0152】
上記の実施形態や、実施例、変形例等では、図1に示したように、この発明を複写機である画像形成装置におけるシート収容手段(給紙トレイ51)から画像形成手段本体に搬送して給送する用紙給紙装置に適用した例を説明したが、これに限られることなく、上記の画像形成装置においてその装置本体内で、定着装置11の上部からその先端が略上方に向けて排出される用紙Sを、装置本体から排紙トレイ9に略水平方向に向けて用紙Sを排出する構成の用紙搬送装置(例えば、図21(b)参照)や、装置本体外に設けられた略水平な手差しトレイ67上にユーザが載置した用紙を、その水平な姿勢のまま装置本体内に引き込んで、該姿勢を上向きに変更して、装置本体内の画像形成部に至る上下方向の搬送経路に搬入する構成の用紙搬送装置に適用してもよい。
すなわち、上記の実施形態や変形例等では、その互いに異なる用紙(シート)搬送方向として、略水平方向からこれに対する垂直方向の上向き(略鉛直上方向)に変更する例を説明したが、これに限られることなく、略水平方向から垂直方向の下向き(略鉛直下方向)に変更したり、垂直方向の下向きか、上向きの何れかから略水平方向に変更したり(例えば、図21(a)参照)、あるいは両方が斜め方向等であったりしてもよい。
【0153】
上記した各実施形態や実施例、変形例等では、第1搬送手段および第2搬送手段を、ともに挟持搬送手段としたが、それぞれの搬送手段単体の搬送方向に応じて、搬送対象の下面を支持して搬送するだけで済むならば、対向部材による挟持部を形成した挟持搬送手段としなくてよい。
【0154】
第1搬送手段や、第2搬送手段、ピックアップローラを構成した部材としては、上述したものに限らず、それぞれの回転軸の軸長手方向に所定長さを確保した略長円筒状のローラ部材であっても、適宜、短円筒状のコロ部材であっても、何れでもよく、また、適宜、1つの回転軸上に所定の間隔を設けて、間欠的に複数のローラ部材やコロ部材が配置されていてもよい。
また、ローラ部材やコロ部材を配置していない前記のいくつかの間隔に、それぞれ上記した各実施形態における外郭方向および内郭方向のいくつかのガイド部材が形成したガイド面を位置させた構成としてよい。これらのガイド面としては、搬送方向の搬送中心線に対して適宜の規則的な対称に配置されていれば、用紙(シート)搬送方向に帯状のガイド面を形成したり、略線状のガイド面を形成したり、適宜、これらを混在させてもよい。
【0155】
また、上記した各実施形態や実施例、変形例等では、給紙分離機構として、FRR給紙方式を採用したが、これに限られることなく、摩擦により所定に重送された用紙を分離して1枚の用紙だけを搬送方向に進み続けさせる分離機構であれば、適宜の摩擦分離方式を採用してよく、例えば上記したフィードローラに対して、上記のリバースローラの替わりに、分離爪を用いたり、固定部材であるフリクション・パッドを圧接した構成のフリクション・パッド方式を採用したりしてもよい。すなわち、このフリクション・パッド方式では、フィードローラに摩擦部材としてのフリクション・パッドを適宜の分離角度、分離圧で押し当て、これによって形成されるフィードローラとフリクション・パッドとの間のニップに用紙を通過させるようにしている。従って、フリクション・パッド方式を採用した給紙分離機構によれば、用紙が2枚重なった状態で引き出されても、下側の用紙は、フリクション・パッドから受ける抵抗の方が、重なった用紙間摩擦による抵抗よりも大きいので、それ以上の用紙搬送方向への移動が阻止される。他方、上側の用紙は、フィードローラから受ける搬送力の方が、重なった用紙間摩擦による抵抗よりも大きく、かつ、フリクション・パッドから受ける抵抗よりも大きく設定されているので、結局、上側の用紙だけが搬送方向に進み続けることになる。
【0156】
本発明は、例えば、モノクロの複写機1に限らず、カラー複写機や、モノクロのレーザプリンタやインクジェットプリンタ、インク転写リボンを用いるプリンタ等を含むプリンタに係る画像形成装置に関して、本発明に係るシート搬送装置を応用・適用可能である。
カラー複写機では、転写体で用紙(シート)を搬送しながら順次転写して重ね合わせる直接転写方式のタンデム型カラー画像形成装置や、中間転写体としての無端状の中間転写ベルトに転写した後、用紙に一括転写するタンデム型の画像形成装置においても同様に適用し実施することができる。無論、無端ベルト状の感光体が単一の画像形成装置においても同様に適用し実施することができる。
【0157】
本発明は、例えば、画像形成部とスキャナとの間に用紙を排出する胴内排紙型の画像形成装置に限らず、画像形成装置本体の側部に備える排紙トレイに用紙を排出する画像形成装置にも適用してもよい。また、給紙装置3から繰り出された用紙を画像形成装置本体2の上部へ向かって略垂直方向(略鉛直上方向)の搬送路を形成しているがこの限りではなく、給紙装置から用紙が排紙トレイへ排出されるまでの搬送路が略垂直方向(略鉛直方向)でない画像形成装置にも適用可能である。
本発明は、孔版印刷機等を含む印刷装置において、シート収容手段(給紙トレイ)やシート積載手段(給紙台)からシート(用紙)を印刷部本体に搬送して供給するシート搬送装置にも適用してもよい。
【0158】
また、上述した画像形成装置としての複写機1では、読み取る原稿を手動操作でセットする構成としているが、複数の原稿(シート)を自動的に読み取り動作するためのADF(自動原稿送り装置)を装備した複写機や印刷装置等において、該ADFに本発明のシート搬送装置を適用してもよい。
さらには、画像形成装置として、複写機に限られることなく、ファクシミリ、プリンタ、インクジェット記録装置、印刷装置、原稿から画像を読み取るスキャナを有し画像読取機能を主体にした画像読取装置等またはそれらのうちの少なくとも二つを組み合わせた複合機等に適用してもよい。何れにしても、多種多様な紙種としてのシート種類を搬送対象にして、このシートの搬送経路上で省スペース化を図りながら、そのシート搬送方向を変更する必要がある機器や装置において、最適なシート搬送装置とすることができる。
【0159】
本発明は、複数の給紙段に配設されたシート搬送装置に限らず、例えば図1に示した給紙装置3において、上段の給紙トレイ51および用紙搬送装置5’を除去して、単一の給紙トレイ51および用紙搬送装置5のみで構成したシート搬送装置にも適用できる。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するための手段の欄に記載した請求項1ないし11の何れか一つに記載のシート搬送装置を有することを特徴とする画像読取装置であってもよいし、また請求項1ないし11の何れか一つに記載のシート搬送装置および/または上記画像読取装置を有することを特徴とする画像形成装置であってもよい。さらに、本発明は、前記画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機およびインクジェット記録装置の何れか一つ、またはそれらの少なくとも二つを組み合わせた複合機であってもよい。
【0160】
以上述べたとおり、本発明を特定の実施形態や変形例等について説明したが、本発明が開示する技術的範囲は、上述した各実施形態や変形例あるいは実施例等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよく、(例えば、本発明の上記各実施形態や変形例あるいは実施例等を適宜組み合わせて構成したり、本発明の上記実施形態等が先願発明に係る第1ないし第3の例等に適用可能であることなど)本発明の範囲内において、その必要性および用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【符号の説明】
【0161】
1 複写機(画像形成装置)
2 画像形成装置本体
3 給紙装置
4 原稿読取装置
5,5A 用紙搬送装置(シート搬送装置)
6 第1搬送手段(第1の搬送手段)
7 第2搬送手段(第2の搬送手段)
8,8A ベルト搬送手段(移動案内手段)
9 排紙トレイ
10 感光体ユニット
10A 感光体
11 定着装置
12 現像装置
13 転写装置
21 レジストローラ対
22 駆動機構
23 給紙モータ
50 底板(シート積載手段)
51 給紙トレイ(シート収容手段)
60 ピックアップローラ
61 フィードローラ(第1の搬送手段の対向対の一方)
62 リバースローラ(第1の搬送手段の対向対の他方)
67 手差しトレイ
70 搬送ガイド部材(内郭側、ガイド部材)
71 搬送ガイド部材(外郭側、ガイド部材)
72 搬送ガイド部材(縦方向搬送路の外郭側、ガイド部材)
72a ガイド面
72b 搬送ガイドリブ
73 搬送ガイド部材(給紙トレイから搬送経路への導入口形成用)
79 開閉ガイド(シート搬送装置本体)
80 ハウジング(シート搬送装置本体)
81 グリップローラ(第2の搬送手段の対向対の一方、回転搬送駆動手段、回転搬送駆動部材)
81a グリップローラの回転駆動軸
82 搬送ベルト(第2の搬送手段の対向対の他方としてのベルト)
82a 搬送ベルトの搬送面
83 プーリ(ベルト搬送手段の構成部材、第1のベルト保持回転部材)
83a,83b プーリ軸(ベルト保持回転部材の下流側の軸)
84 プーリ(ベルト搬送手段の構成部材、第2のベルト保持回転部材)
84a,84b プーリ軸
86 ベルト支持部材(支持部材)
91,92 バネ(付勢手段)
A 第1搬送路(搬送経路)
B 第2搬送路(搬送経路)
R1 搬送路
R2 手差給紙路
R3 反転搬送路
S 用紙(シート・シート状記録媒体、被画像形成媒体)
Y 用紙幅方向(シート幅方向)
θ 突入角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0162】
【特許文献1】特開2004−338923号公報(第1〜3頁、図1〜図7)
【特許文献2】特開2005−89008号公報(第2〜3頁、図4,5)
【特許文献3】特開平10−129883号公報(第1〜2頁、図1)
【特許文献4】特開2005−1771号公報(第1〜2頁、図1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する第1の搬送手段と、
第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に挟持搬送する挟持部を形成する第2の搬送手段とを有し、
前記挟持部を形成する対向対の一方は、回転することにより駆動力を伝達可能な回転搬送駆動手段であり、
前記対向対の他方は、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、前記回転搬送駆動手段に従動して前記挟持部に向けてシートを搬送するベルトを備えたベルト搬送手段であり、
前記ベルト搬送手段は、弾性部材からなる前記ベルトと、該ベルトを走行可能に保持する少なくとも一対のベルト保持回転部材と、該各ベルト保持回転部材を回転可能に支持する支持部材とを具備し、
前記各ベルト保持回転部材は、その軸間距離を一定に保持するように前記支持部材に支持されており、
前記ベルトは、該ベルトの硬度が、40〜80度であり、かつ、前記各ベルト保持回転部材間に前記ベルトを巻き掛けたときにおける前記ベルト単体の周長からの伸張分の百分率割合である伸張率が、10〜5%の条件を満たすことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向の前記ベルト近傍に配置され、該ベルトにシートを案内するガイド部材を有し、
前記ベルトの硬度が40〜80度であって、かつ、前記伸張率が4%の特別条件の場合に、シートと接触する前記ベルトの搬送面が、前記ガイド部材と干渉する方向に膨出したとき、前記ガイド部材を前記搬送面と干渉しない程度に該搬送面から離れた位置に配置することにより、前記特別条件を満たす前記ベルトを採用可能としたことを特徴とする請求項1記載のシート搬送装置。
【請求項3】
シートを搬送する第1の搬送手段と、
第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に挟持搬送する挟持部を形成する第2の搬送手段と、
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成される第1のシート搬送経路と、
第2の搬送手段の上流から第2の搬送手段に至って形成され、第1のシート搬送経路と異なる第2のシート搬送経路と、
第1のシート搬送経路と第2のシート搬送経路とが、第2の搬送手段の上流側で合流する合流搬送経路とを有し、
前記挟持部を形成する対向対の一方は、回転することにより駆動力を伝達可能な回転搬送駆動手段であり、
前記対向対の他方は、前記合流搬送経路の外郭方向に配置され、前記回転搬送駆動手段に従動して前記挟持部に向けてシートを搬送するベルトを備えたベルト搬送手段であり、
前記ベルト搬送手段は、弾性部材からなる前記ベルトと、該ベルトを走行可能に保持する少なくとも一対のベルト保持回転部材と、該各ベルト保持回転部材を回転可能に支持する支持部材とを具備し、
前記各ベルト保持回転部材は、その軸間距離を一定に保持するように前記支持部材に支持されており、
前記ベルトは、該ベルトの硬度が、40〜80度であり、かつ、前記各ベルト保持回転部材間に前記ベルトを巻き掛けたときにおける前記ベルト単体の周長からの伸張分の百分率割合である伸張率が、10〜5%の条件を満たすことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項4】
シートを搬送する第1の搬送手段と、
第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に挟持搬送する挟持部を形成する第2の搬送手段とを有し、
前記挟持部を形成する対向対の一方は、回転することにより駆動力を伝達可能な回転搬送駆動手段であり、
前記対向対の他方は、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向に配置され、前記回転搬送駆動手段に従動して前記挟持部に向けてシートを搬送するベルトを備えたベルト搬送手段であり、
前記ベルト搬送手段は、弾性部材からなる前記ベルトと、該ベルトを走行可能に保持する少なくとも一対のベルト保持回転部材と、該各ベルト保持回転部材を回転可能に支持する支持部材とを具備し、
前記各ベルト保持回転部材は、その軸間距離を一定に保持するように前記支持部材に支持されており、
前記ベルトは、該ベルトの硬度が、35〜85度であり、かつ、前記各ベルト保持回転部材間に前記ベルトを巻き掛けたときにおける前記ベルト単体の周長からの伸張分の百分率割合である伸張率が、10〜5%の条件を満たすことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項5】
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向の前記ベルト近傍に配置され、該ベルトにシートを案内するガイド部材を有し、
前記ベルトの硬度が35〜85度であって、かつ、前記伸張率が4%の特別条件の場合に、シートと接触する前記ベルトの搬送面が、前記ガイド部材と干渉する方向に膨出したとき、前記ガイド部材を前記搬送面と干渉しない程度に該搬送面から離れた位置に配置することにより、前記特別条件を満たす前記ベルトを採用可能としたことを特徴とする請求項4記載のシート搬送装置。
【請求項6】
シートを搬送する第1の搬送手段と、
第1の搬送手段のシート搬送方向の下流側に配置され、第1の搬送手段により搬送されてきたシートを前記第1の搬送手段のシート搬送方向と異なるシート搬送方向に挟持搬送する挟持部を形成する第2の搬送手段と、
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成される第1のシート搬送経路と、
第2の搬送手段の上流から第2の搬送手段に至って形成され、第1のシート搬送経路と異なる第2のシート搬送経路と、
第1のシート搬送経路と第2のシート搬送経路とが、第2の搬送手段の上流側で合流する合流搬送経路とを有し、
前記挟持部を形成する対向対の一方は、回転することにより駆動力を伝達可能な回転搬送駆動手段であり、
前記対向対の他方は、前記合流搬送経路の外郭方向に配置され、前記回転搬送駆動手段に従動して前記挟持部に向けてシートを搬送するベルトを備えたベルト搬送手段であり、
前記ベルト搬送手段は、弾性部材からなる前記ベルトと、該ベルトを走行可能に保持する少なくとも一対のベルト保持回転部材と、該各ベルト保持回転部材を回転可能に支持する支持部材とを具備し、
前記各ベルト保持回転部材は、その軸間距離を一定に保持するように前記支持部材に支持されており、
前記ベルトは、該ベルトの硬度が、35〜85度であり、かつ、前記各ベルト保持回転部材間に前記ベルトを巻き掛けたときにおける前記ベルト単体の周長からの伸張分の百分率割合である伸張率が、10〜5%の条件を満たすことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項7】
前記ベルトの厚さが、1.5mm以上であることを特徴とする請求項1ないし6の何れか一つに記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記ベルトは、エチレン・プロピレンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴムまたはシリコンゴムの何れか一つであることを特徴とする請求項1ないし7の何れか一つに記載のシート搬送装置。
【請求項9】
第1の搬送手段と第2の搬送手段との間に形成されるシート搬送経路の外郭方向の前記ベルト近傍に配置され、該ベルトにシートを案内するガイド部材を有し、
前記各ベルト保持回転部材は、前記回転搬送駆動手段に対向して配置された第1のベルト保持回転部材と、第1のベルト保持回転部材に対向して第2の搬送手段のシート搬送方向の上流側に配置された第2のベルト保持回転部材とを備え、
第2のベルト保持回転部材は、第1の搬送手段の外郭に設けられる回転部材の軸中心より第2の搬送手段のシート搬送方向の下流側であって、前記ガイド部材の下流端より第2の搬送手段のシート搬送方向の上流側に位置することを特徴とする請求項1ないし8の何れか一つに記載のシート搬送装置。
【請求項10】
前記ベルト搬送手段は、シートの先端が、前記各ベルト保持回転部材に保持されている該ベルト部分を除く該ベルトの搬送面に接触するように配置されていることを特徴とする請求項1ないし9の何れか一つに記載のシート搬送装置。
【請求項11】
シートは、比較的剛性の高いシートであることを特徴とする請求項1ないし10の何れか一つに記載のシート搬送装置。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか一つに記載のシート搬送装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2013−49579(P2013−49579A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−273656(P2012−273656)
【出願日】平成24年12月14日(2012.12.14)
【分割の表示】特願2007−261079(P2007−261079)の分割
【原出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】