説明

シート曲がり判定装置およびこれを備える切断装置並びにシート曲がり判定方法

【課題】シート材の幅方向の曲がりを簡易な構成で精度よく判定する。
【解決手段】ロール状に巻かれてなる金属製のコイル材Cを送る際に、ガイドA,Dのガイド72,84とがコイル材Cの側面に二箇所で当接し、該二箇所を結ぶ基準ラインと略直交する方向に移動可能に配置されてコイル材Cの側面に当接すると共にコイル材Cの曲がりに追従するガイドローラ82bの位置をリニアエンコーダ88からのポジション信号Pにより検出し、ポジション信号Pとガイドローラ82bが基準ラインに位置するときの基準位置P0との差分(P−P0)をズレ量ΔPとして算出し、算出されたズレ量ΔPの絶対値に基づいてコイル材Cの幅方向の曲がりを判定する。この結果、コイル材Cの幅方向の曲がりを簡易な構成で精度よく判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート曲がり判定装置およびこれを備える切断装置並びにシート曲がり判定方法に関し、詳しくは、ロール状に巻かれてなる金属製のシート材の幅方向の曲がりを判定するシート曲がり判定装置およびこれを備える切断装置並びにこうしたシート材の幅方向のシート曲がり判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロール状に巻かれてなる鋼帯をその上下面を挟持する二組のピンチロールなどによって搬送し、所定長さの矩形状の鋼帯シートに剪断する剪断機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この剪断機では、剪断直前に検出した鋼帯先端の端面と剪断機の刃面との平行度がズレているときや剪断された鋼帯シートから検出した剪断面と側面との直角度が許容範囲から外れているときには、二組のピンチロールのうち上流側のピンチロールの軸方向の押し込み力分布を変更し、ピンチロール間で鋼帯に生じる張力を幅方向(軸方向)で変化させることで鋼帯の搬送量が幅方向で異なるよう微調整する。これにより、鋼帯の蛇行を抑え、鋼帯先端の端面を剪断機の刃面と平行として、剪断された鋼帯シートの剪断面と側面との直角度を許容範囲内とすることができるとしている。
【特許文献1】特開平5−116021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このようなロール状の鋼帯は、製造される際に素材としての鋼片を所定厚みまで圧延し巻き取ってロール状とされるが、圧延したときに幅方向の弓なりの曲がりを伴う場合がある。こうしたロール状の鋼帯を送り出して剪断する場合、鋼帯が曲がった状態で送り出されるので、上述した剪断機では、鋼帯先端の端面を剪断機の刃面に対して平行にして送ることはできるが、曲がりによる鋼帯側面の湾曲により鋼帯の側面を剪断機の刃面に対して直角にすることはできない。このため、曲がりの度合いによっては、剪断面と側面との直角度が許容範囲から外れ、側面が曲がりの方向に大きくズレた略平行四辺形状に剪断されることになる。そうなると、剪断後の工程で使用することができず、剪断された鋼帯シートが一枚丸ごと廃却されることになり、歩留りが大幅に悪化してしまう。そこで、このような鋼帯の曲がりを起因とした歩留りの悪化を抑制するために、鋼帯の曲がりを精度よく判定することが求められていた。
【0004】
本発明のシート曲がり判定装置およびシート曲がり判定方法は、シート材の幅方向の曲がりを簡易な構成で精度よく判定することを主目的とする。また、シート曲がり判定装置を備える切断装置は、判定された曲がりが大きいときでも切断されたシート材が形状不良とならずに切断することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のシート曲がり判定装置およびこれを備える切断装置並びにシート曲がり判定方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明のシート曲がり判定装置は、
ロール状に巻かれてなる金属製のシート材を送る送り手段と、該送り手段により所定長さ毎に送られたシート材を切断する切断手段と、該切断手段に対して上流側と下流側とに所定間隔をもって定められた二箇所のガイドポイントで該シート材の一方の側面に当接すると共に該シート材の側面を両側から挟んで送り方向にガイドするガイド手段とを備える切断装置に搭載され、該シート材の幅方向の曲がりを判定するシート曲がり判定装置であって、
前記二箇所のガイドポイントの間の位置に該ガイドポイント同士を結ぶ基準線と略直交する方向に移動可能に配置され、該位置における前記シート材の側面に当接すると共に該シート材の幅方向の変位に追従する追従手段と、
前記追従手段の前記基準線に対する相対位置を検出する相対位置検出手段と、
前記検出された前記追従手段の相対位置に基づいて前記シート材の幅方向の曲がりを判定する曲がり判定手段と
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明のシート曲がり判定装置では、シート材の側面を両側から挟んで送り方向にガイドする切断装置のガイド手段が切断手段に対して上流側と下流側とに所定間隔をもって定められた二箇所のガイドポイントでシート材の一方の側面に当接し該二箇所のガイドポイントの間の位置にガイドポイント同士を結ぶ基準線と略直交する方向に移動可能に配置され該位置におけるシート材の側面に当接すると共にシート材の幅方向の変位に追従する追従手段の基準線に対する相対位置を検出し、検出された追従手段の相対位置に基づいてシート材の幅方向の曲がりを判定する。この結果、シート材の幅方向の曲がりを簡易な構成で精度よく判定することができる。
【0008】
こうした本発明のシート曲がり判定装置において、前記追従手段は、前記二箇所のガイドポイントの間の略中央の位置に配置される手段であるものとすることもできる。こうすれば、基準線に対してシート材の幅方向の曲がりが大きくなる位置での追従手段の相対位置に基づいて曲がりを判定するので、判定精度を上げることができる。
【0009】
また、本発明のシート曲がり判定装置において、前記追従手段は、前記シート材の側面に当接する当接部と、該当接部を該シート材の側面に向かって付勢する付勢手段とを備え、前記送り手段により前記シート材が送られる前の初期状態において前記当接部が前記基準線より内側に突出するよう前記付勢手段により付勢する手段であるものとすることもできる。こうすれば、簡易な構成でシート材の側面に追従させることができる。
【0010】
さらに、本発明のシート曲がり判定装置において、前記ガイド手段は、前記シート材の側面に当接する当接部と、該当接部を該シート材の送り方向に略直交する方向に押圧する押圧手段と、該押圧手段により押圧される前記当接部が前記ガイドポイントで停止するよう位置決めするストッパとを備える手段であるものとすることもできる。こうすれば、二箇所のガイドポイントを結ぶ基準線が一定のものとなるので、追従手段の相対位置の検出が容易となる。ここで、前記追従手段および前記ガイド手段の当接部は、回転可能なローラであるものとすることもできる。こうすれば、接触によりシート材の側面に発生する疵を防止することができる。
【0011】
また、本発明のシート曲がり判定装置において、前記シート材は、ベルトがエレメントとリングとによって構成されるベルト式のCVTの該リングの製造に用いられるものとすることもできる。ベルト式のCVTに用いられるリングの製造においては、切断後に筒状に曲げ加工して切断面同士を溶接することから、切断されたシート材の切断面同士の平行度や切断面と側面との直角度が厳しく要求されるから、本発明を適用する意義が大きい。
【0012】
本発明の切断装置は、
ロール状に巻かれてなる金属製のシート材を切断する切断装置であって、
前記シート材を送る送り手段と、
該送り手段により所定長さ毎に送られたシート材を切断する切断手段と、
該切断手段より上流側に配置され該シート材の一方の側面に所定の上流側ガイドポイントで当接すると共に該シート材の側面を両側から挟んでガイドする上流側ガイドと、該切断手段より下流側に配置され該シート材の一方の側面に前記上流側ガイドポイントと所定間隔をもって定められた下流側ガイドポイントで当接すると共に該シート材の側面を両側から挟んでガイドする下流側ガイドとからなるガイド手段と、
前記切断手段より下流側に配置され下流側における前記シート材の側面の向きが送り方向に近付くよう該シート材の姿勢を矯正する下流側姿勢矯正手段と、
上述した各態様のいずれかのシート曲がり判定装置と、
前記シート曲がり判定装置により前記シート材の幅方向の曲がりが許容範囲内と判定されたときには、前記ガイド手段によるガイドを伴って前記所定長さに相当する送り量をもって該シート材が送られるよう前記送り手段を制御すると共に該送られたシート材が切断されるよう前記切断手段を制御する通常切断制御を実行し、前記シート曲がり判定装置により前記シート材の幅方向の曲がりが許容範囲を超えると判定されたときには、前記ガイド手段のうち下流側ガイドによるガイドを伴うと共に前記下流側姿勢矯正手段による姿勢の矯正を伴って前記所定長さに相当する送り量をもって該シート材が送られるよう前記送り手段を制御すると共に該送られたシート材が切断されるよう前記切断手段を制御する矯正切断制御を実行する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0013】
この本発明の切断装置では、シート曲がり判定装置によりシート材の幅方向の曲がりが許容範囲内と判定されたときには、ガイド手段によるガイドを伴って所定長さに相当する送り量をもってシート材が送られるよう送り手段を制御すると共に送られたシート材が切断されるよう切断手段を制御する通常切断制御を実行し、シート曲がり判定装置によりシート材の幅方向の曲がりが許容範囲を超えると判定されたときには、ガイド手段のうち下流側ガイドによるガイドを伴うと共に下流側におけるシート材の側面の向きが送り方向に近付くよう下流側姿勢矯正手段による姿勢の矯正を伴って所定長さに相当する送り量をもってシート材が送られるよう姿勢矯正手段と送り手段とを制御すると共に送られたシート材が切断されるよう切断手段を制御する矯正切断制御を実行する。これにより、シート材の幅方向の曲がりが許容範囲を超えるときには、シート材の側面の向きが送り方向に近付くようシート材の姿勢を矯正し側面を基準として切断するので、切断されたシート材の側面と切断面との直角度が大きく損なわれることがない。この結果、判定された曲がりが大きいときでも切断されたシート材が形状不良とならずに切断することができる。
【0014】
こうした本発明の切断装置において、前記下流側姿勢矯正手段は、前記切断手段と前記下流側ガイドとの間に前記シート材の側面を両側から挟んで姿勢を矯正するよう対となって配置され、該対となって配置されるうちの一方が前記追従手段を兼ねてなるものとすることもできる。こうすれば、姿勢矯正手段と追従手段とをコンパクトに配置することができる。
【0015】
また、本発明の切断装置において、前記切断手段より上流側に配置され上流側における前記シート材の側面の向きが送り方向に近付くよう該シート材の姿勢を矯正する上流側姿勢矯正手段を備え、前記制御手段は、前記矯正切断制御を実行した後に、前記ガイド手段のうち上流側ガイドによるガイドを伴うと共に前記上流側姿勢矯正手段による姿勢の矯正を伴って該シート材の端部を切り捨てる切り捨て長さに相当する送り量をもって該シート材が送られるよう前記送り手段を制御すると共に該送られたシート材が切断されるよう前記切断手段を制御する捨て切り制御を実行する手段であるものとすることもできる。こうすれば、シート材の端面と側面との直角度を修正するので、切断されたシート材の先に切断された切断面(捨て切りされたシート材の端面)と後に切断された切断面との平行度が悪化するのを防止することができる。
【0016】
本発明のシート曲がり判定方法は、
ロール状に巻かれてなる金属製のシート材を送る送り手段と、該送り手段により所定長さ毎に送られたシート材を切断する切断手段と、該切断手段に対して上流側と下流側とに所定間隔をもって定められた二箇所のガイドポイントで該シート材の一方の側面に当接すると共に該シート材の側面を両側から挟んで送り方向にガイドするガイド手段とを備える切断装置における該シート材の幅方向の曲がりを判定するシート曲がり判定方法であって、
(a)前記二箇所のガイドポイントの間の位置に該ガイドポイント同士を結ぶ基準線と略直交する方向に移動可能に配置され、該位置における前記シート材の側面に当接すると共に該シート材の幅方向の変位に追従する追従手段を用いて、該追従手段の前記基準線に対する相対的な位置を検出するステップと、
(b)前記ステップ(a)で検出された位置に基づいて前記シート材の幅方向の曲がりを判定するステップと
を含むシート曲がり判定方法。
【0017】
この本発明のシート曲がり判定方法では、シート材の側面を両側から挟んで送り方向にガイドする切断装置のガイド手段が切断手段に対して上流側と下流側とに所定間隔をもって定められた二箇所のガイドポイントでシート材の一方の側面に当接し該二箇所のガイドポイントの間の位置にガイドポイント同士を結ぶ基準線と略直交する方向に移動可能に配置され該位置におけるシート材の側面に当接すると共にシート材の幅方向の変位に追従する追従手段を用いて、追従手段の基準線に対する相対位置を検出し、検出された追従手段の相対位置に基づいてシート材の幅方向の曲がりを判定する。この結果、シート材の幅方向の曲がりを簡易な構成で精度よく判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明の一実施例としての曲がり判定装置を搭載する切断装置20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、図1の切断装置20の上面図であり、図3は、図1のロールフィーダ40のA−A断面を示す断面図であり、図4は、ガイド82の構成の概略を示す構成図である。実施例の切断装置20は、例えばエレメントとリングとによって構成されるベルト式のCVTのリングの製造に用いる金属製のシート材がロール状に巻かれてなるコイル材Cを送り出して所定長さ毎に切断する装置として構成されている。切断装置20は、図1に示すように、コイル材Cを送り出すアンコイラ30と、送り出されたコイル材Cを上下に配置されたロール43,53により挟持して送るロールフィーダ40と、ロールフィーダ40により送られるコイル材Cを上下に配置された切断刃62によりダウンカット方式で切断するシャー60と、シャー60の切断刃62よりも上流側に配置されるガイド72〜75により送られるコイル材Cをガイドする上流側ガイド70と、シャー60の切断刃62よりも下流側に配置されるガイド82〜85により送られるコイル材Cをガイドする下流側ガイド80と、電源をオンオフする電源ボタンスイッチ91などの各種ボタンスイッチからなる操作パネル90と、装置全体のコントロールを司るメインコントローラ100とを備える。なお、曲がり判定装置は、ガイド82と、このガイド82の構成要素としてコイル材Cに当接するローラ82bの位置を検出するリニアエンコーダ88と、メインコントローラ100とが該当する。
【0020】
アンコイラ30は、図1に示すように、図示しないステッピングモータの回転軸に接続されると共に図示しない油圧シリンダによりコイル材Cの内周面に当接するよう拡開してコイル材Cを回転させるマンドレル32と、コイル材Cを送り出すうちに徐々に小さくなる外径に追従してコイル材Cの外周面に当接するよう図示しないエアシリンダによりコイル材Cの径方向に向かって押圧されコイル材Cの回転に伴って回転する複数の押えロール34と、略円弧状に形成され送り出されるコイル材Cを下側からガイドするループガイド36とを備える。
【0021】
ロールフィーダ40は、図1および図3に示すように、フレーム40aの上方に取り付けられたエアシリンダ41の駆動により支持軸42aを中心として弧を描くように上下に昇降するロールフレーム42と、ロールフレーム42にベアリングを介して回転自在に取り付けられロールフレーム42に連動する上ロール43と、本体フレーム40aにベアリングを介して回転自在に取り付けられる下ロール53と、下ロール53とカップリング59aを介して接続され下ロール53を回転駆動するステッピングモータ59とを備え、エアシリンダ41の駆動により、上ロール43が下端に位置するときにはエアシリンダ41の押圧力により上ロール43と下ロール53とでコイル材Cを挟持して送り、上ロール43が上端に位置するときにはコイル材Cの挟持を解除する。上ロール43は、略中央部に軸方向にスプライン溝が形成されたシャフト44と、シャフト44にフローティング機構46を介して軸方向にスライド可能に取り付けられるロール本体45と、シャフト44の図3中の右端に取り付けられるスプロケット48とを備える。下ロール53は、上ロール43と同一の構成であるため、説明を省略する。なお、フローティング機構46,56の説明については後述する。スプロケット48とスプロケット58とは、エアシリンダ41の駆動により上ロール43が下端に位置するときに噛み合ってステッピングモータ59の駆動力を上ロール43に伝達し、上ロール43を下ロール53の回転方向と逆方向に回転させることができる。このため、上ロール43が下端に位置するときに、コイル材Cを挟持してシャー60側に送ることができる。なお、上ロール43が上端に位置するときには、スプロケット48とスプロケット58との噛み合いが解除され上ロール43に駆動力は伝達されなくなる。また、ステッピングモータ59の回転量とその回転に伴うロールフィーダ40によるコイル材Cの送り量との関係が予め把握されてROM104に記憶されており、コイル材Cを送る際には、送り量に応じた必要な回転量がメインコントローラ100から駆動信号としてステッピングモータ59に出力される。
【0022】
ここで、フローティング機構46,56について説明する。なお、フローティング機構46,56は同一の構成であるため、フローティング機構46について説明し、フローティング機構56については説明を省略する。フローティング機構46は、シャフト44に形成されたスプライン溝内に配置される複数のボール46aと、ボール46aを保持すると共に外周にロール本体45が固定された円筒部材46bと、ロール本体45を挟むようにシャフト44に取り付けられるスプリング受け46cと、ロール本体45とスプリング受け46cとの間に設けられロール本体45をシャフト44の中央側に向かって付勢するスプリング46dとを備え、ボールスプライン嵌合により、ロール本体45をシャフト44と一体となって回転させると共にロール本体45をシャフト44に対して軸方向にスライドさせることができる。これにより、コイル材Cはロールフィーダ40によって挟持され送られているときでも幅方向(ロール本体45の軸方向)にスライドすることができる。また、ロールフィーダ40によるコイル材Cの挟持が解除されたときには、スプリング46dの付勢力により、ロール本体45は初期位置(図中中央位置)に戻る。
【0023】
シャー60は、図1に示すように、ダウンカット方式で切断するクランク型シャーとして構成されており、上刃62aが取り付けられ初期状態で上端位置で待機するシャー本体64と、上刃62aと向かい合って設置される下刃62bとを備え、図示しないモータおよびクランク機構の駆動によりシャー本体64をフレーム60aに沿って下降させることにより上刃62aと下刃62bとでコイル材Cを剪断する。このモータは、メインコントローラ100からの駆動信号によりシャー本体64が一往復の昇降動作を行うよう回転駆動する。また、切断済みのシートSは、シャー60の下流側に設けられ図示しないモータにより駆動する搬出ロール25により搬出されると共に搬出台24に取り付けられたフリーローラ26上を自重により移動し搬出台24の先端に設けられた搬出ストッパ27に当接して停止する。
【0024】
上流側ガイド70は、図2に示すように、クランクシャー60の切断刃62(図中は下刃62bを図示)の上流側のガイドフレーム22上に配置され、コイル材Cを両側面から対向して挟むよう対となって配置される一組のガイド72,73(以下、「ガイドA」とする)と一組のガイド74,75(以下、「ガイドB」とする)の計二組のガイドを備える。ここで、ガイドAとガイドBの間隔は、コイル材Cが幅方向に曲がっているときでもコイル材Cの側面を切断刃62に対して略垂直に保ってガイドできるような間隔とされている。ガイドA,Bのガイド72〜75は、それぞれアクチュエータとしてのエアシリンダ72a〜75aと、エアシリンダ72a〜75aのロッドの先端に図示しないローラフレームを介して回転可能に取り付けられたローラ72b〜75bとを備えており、コイル材Cの送り方向に対して右側(図中下側)に配置されるガイド72,74は、位置決め用ストッパ72c,74cと、エアシリンダ72a,74aのロッドから位置決め用ストッパ72c,74cが設置された方向に突出した突出部72d,74dとを更に備えている。なお、ガイドの構成要素については、ガイド72についてのみ図中に符号を付した。このようにして構成されたガイドA,Bは、メインコントローラ100からのエアシリンダ72a〜75aに対する駆動信号により、コイル材Cに当接する方向にスライドしてコイル材Cをガイドしたり、コイル材Cから離間する方向にスライドしてコイル材Cのガイドを解除したりする。コイル材Cをガイドするときには、ガイド72,74は、突出部72d,74dが位置決め用ストッパ72c,74cに当接する位置で停止し、ガイド73,75は、ローラ73b,75bがコイル材Cに当接する位置で停止する。このとき、前述したようにロールフィーダ40はフローティング機構46,56を備えコイル材Cは送られているときでも幅方向にスライド可能となっているから、コイル材Cの側面が送り方向に近付くようにガイドすることができる。
【0025】
下流側ガイド80は、図2に示すように、クランクシャー60の切断刃62の下流側のガイドフレーム22上に配置され、コイル材Cを両側面から対向して挟むよう対となって配置される一組のガイド82,83(以下、「ガイドC」とする)と一組のガイド84,85(以下、「ガイドD」とする)の計二組のガイドを備える。ガイドC,Dの構成や動作はガイドA,Bと略同一であるため説明を省略し、ガイドの構成要素についてはガイド84についてのみ図中に符号を付した。ここで、図4に示すように、ガイドCのガイド82は、リニアエンコーダ88を備え、ガイド82のローラ82bの位置を検出できるようになっているので、以下、この点について説明する。ガイド82は、上述した構成に加え、ローラ82bが回転可能に取り付けられるローラフレーム82eと、一端がローラフレーム82eの突起82gに固定されると共に他端が突出部82dの突起82hに固定されるスプリング82fとを備えている。ここで、図示するように、ガイド72がストッパ72cにより停止してローラ72bがコイル材Cに当接するガイドポイントと、ガイド84がストッパ84cにより停止してローラ84bがコイル材Cに当接するガイドポイントとを結ぶ送り方向と平行な直線を基準ラインとする。そして、ローラフレーム82eは、この基準ラインと略直交する方向(図中上下方向)にスムーズに移動できるよう図示しないリニアガイド上に配置されている。また、スプリング82fは、初期状態(図4の状態)において、ローラ82bの先端が基準ラインよりも内側(図中上側)となるような自然長Lsが設定されている。ローラフレーム82eには、その移動方向に沿ってガイドフレーム22上に張設されたリニアスケール88bの目盛りを光学的に読み取るフォトディテクタ88aが取り付けられている。このフォトディテクタ88aとリニアスケール88bとがリニアエンコーダ88を構成し、フォトディテクタ88aは、リニアスケール88bの目盛りを光学的に読み取って得たポジション信号Pをメインコントローラ100へ出力する。そして、メインコントローラ100は、このポジション信号Pに基づいてローラ82bが移動方向のどこに位置しているかを検出する。なお、ローラ82bの先端が基準ライン上にあるときのポジション信号Pを基準位置P0として予めROM104に記憶しておくものとする。また、ガイド82でコイル材Cをガイドする場合について説明する。図5は、ガイドC,Dでコイル材Cをガイドする様子を示す説明図である。図示するように、ガイド82は、突出部82dがストッパ82cに当接する位置で停止して基準ライン上でコイル材Cに当接している。このとき、スプリング82fは、コイル材Cに曲がりが生じていてもローラ82bが外側に押し込まれることがないよう最大限収縮した最小長さLsminとなるよう設定されている。また、最大限収縮しているので最大の付勢力を発生することになるが、コイル材Cを押すほどの付勢力は発生しないようにバネ定数が設定されている。このため、ガイド82は、基準ラインより内側(図中上方)にコイル材Cを押し込むことがなく、且つコイル材Cによって基準ラインより外側(図中下方)に押し込まれることもないので、ガイドとして機能することができる。
【0026】
操作パネル90は、図1に示すように、電源をオンオフするための電源ボタンスイッチ91や切断装置20を自動運転させる自動モード中に切断開始を指示するスタートボタンスイッチ92,自動モード中に切断終了を指示するストップボタンスイッチ93,切断についての各種設定を行う各種設定スイッチ94,切断装置20を自動モードにするか操作者による手動操作が可能な手動モードにするかを切り替えるモードセレクトスイッチ95,図示しない手動モード用の各種操作ボタンスイッチなどがあり、内部通信インターフェース108を介してメインコントローラ100に操作者の指示を入力できるようになっている。
【0027】
メインコントローラ100は、CPU102を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラムやローラ82bの基準位置P0などを記憶したROM104と、一時的に各種データを記憶するRAM106と、操作パネル90との通信を可能とする内部通信インタフェース108とを備え、これらは互いに信号のやり取りが可能なように接続されている。メインコントローラ100は、操作パネル90の操作に応じて発生する操作信号やフォトディテクタ88bからのポジション信号Pを入力する。また、コイル材Cの送り量に応じた駆動信号をロールフィーダ40のステッピングモータ59に出力したり、シャー60に駆動信号を出力したり、搬出ロール25に駆動信号を出力したりする。また、ロールフィーダ40のエアシリンダ41に駆動信号を出力して上ロール43を昇降させたり、ガイドA〜Dのエアシリンダ72a〜75a,エアシリンダ82a〜85aに駆動信号を出力して各ガイドによるコイル材Cのガイドとガイドの解除とを行う。なお、ロールフィーダ40のステッピングモータ59に駆動信号を出力したときには、アンコイラ30のステッピングモータに対してもコイル材Cの送りに伴う必要な回転を行うよう駆動信号が出力されているものとする。
【0028】
次に、こうして構成された本実施形態の切断装置20の動作について説明する。図6は、メインコントローラ100により実行される自動切断処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。この処理は、コイル材Cがセットされモードセレクトスイッチ95により自動モードにされてスタートボタンスイッチ92が押下されたときに実行される。なお、通常は、コイル材Cをセットする際に手動モードでの段取り作業(例えば、巻き癖がきつく使用できないコイル材Cの先端部の切り捨てなど)がなされるので、スタートボタンスイッチ92が押下されたときにコイル材Cの先端が下刃62b上の位置にある。
【0029】
自動切断処理ルーチンが実行されると、メインコントローラ100のCPU102は、まず、ロールフィーダ40の上ロール43が下降するようエアシリンダ41を駆動制御して、ロールフィーダ40でコイル材Cを挟持する(ステップS100)。次に、ガイドA〜Dのエアシリンダ72a〜75a,エアシリンダ82a〜85aを駆動制御して、ガイドB,Cのガイドを解除すると共にガイドA,Dでコイル材Cをガイドし(ステップS110)、ロールフィーダ40を駆動制御して、コイル材Cを送り量L1だけ送る(ステップS120)。ここで、送り量L1は、コイル材Cを所定長さ(例えば、300mm)で切断する際の送り量として定められたものである。コイル材Cが送られると、フォトディテクタ88bからのポジション信号Pを入力し(ステップS130)、入力したポジション信号PとROM104に記憶されている基準位置P0との差分(P−P0)をズレ量ΔPとして算出する(ステップS140)。ここで、このズレ量ΔPについて説明する。
【0030】
このズレ量ΔPは、コイル材Cの幅方向の曲がりと関連するので、まず、この曲がりについて説明する。コイル材Cは,製造される際に素材としての鋼片を所定の厚みまで圧延し巻き取ってロール状とされるが、圧延したときに幅方向に弓なりの曲がりを伴う場合がある。その場合、一旦生じた曲がりは完全に解消されないので、コイル材Cは幅方向の曲がりを伴って送られることになる。そのような曲がりのあるコイル材Cを送る様子を図7,図8に示す。図7は、コイル材Cが送り方向に対して右に曲がっている様子、図8は、コイル材Cが送り方向に対して左に曲がっている様子を示す。いずれの場合も、コイル材Cの側面の位置は、その曲がりの分基準ラインからズレており、ガイド82のローラ82bは、そのズレたコイル材Cの側面に当接している。このため、ローラ82bの位置であるポジション信号Pは、コイル材Cの側面の位置となる。また、ローラ82bの基準ラインに対する相対位置、即ちポジション信号Pと基準位置P0との差分であるズレ量ΔPは、コイル材Cの基準ラインに対する曲がりとなるので、ズレ量ΔPを算出することによりコイル材Cの幅方向の曲がりを判定することができる。このとき、ガイドポイント間の略中央の位置に配置されたガイド82の位置では基準ラインに対してシート材の幅方向の曲がりが大きくなるので、曲がりを精度よく判定することができる。いま、ローラ82bのポジション信号Pの値がローラ82bが図中上方に行くほど小さくなるものとすると、図7においては、コイル材Cの曲がりが大きくなるほどズレ量ΔPの値は負側に小さくなり、図8においては、コイル材Cの曲がりが大きくなるほどズレ量ΔPの値は正側に大きくなる。即ち、ズレ量ΔPの絶対値が大きくなるにつれ、コイル材Cの幅方向の曲がりが大きくなると判定できるのである。
【0031】
そして、このズレ量ΔPの絶対値が閾値ΔPref以下であるか否かを判定する(ステップS150)。この閾値ΔPrefについて説明するため、コイル材Cの幅方向の曲がりによって生じる問題について説明する。ここで、ベルト式のCVTのリングの製造は、所定長さのシートSに切断した後に、筒状に曲げ加工し両切断面を溶接により接合してから更に輪切りにしてリング状にしたものをいわゆるリング圧延機で圧延してリングの径を拡大することにより行われる。そのため、切断されたシートSの形状が不良のときには、溶接時の作業性が悪化したり輪切りした際の径が一定とならず圧延時の寸法精度が低下したりするなどのトラブルが発生する。そのようなトラブルを防止すべく切断されたシートSの切断面同士の平行度や切断面と側面との直角度が厳しく要求されており、切断されたシートSの形状が曲がりにより形状不良となっているときには、切断されたシートSが一枚丸ごと廃却され歩留りが大幅に悪化するという問題が生じる。そこで、本実施例の切断装置20では、このような問題を未然に防ぐため、切断されたシートSが形状不良とならないようなコイル材Cの幅方向の曲がりの許容範囲、即ちズレ量ΔPの絶対値の大きさを予め実験などにより求めて閾値ΔPrefとしてROM104に記憶しておき、閾値ΔPref以下のときには曲がりが許容範囲内にあると判断して通常の切断処理を行い、閾値ΔPrefを超えるときには曲がりが許容範囲を超えると判断して曲がりの影響を回避できるような切断処理を行うのである。ステップS150で、ズレ量ΔPが閾値ΔPref以下であると判定されると、通常切断処理を行って(ステップS200)、再びステップS100以降の処理を繰り返す。この処理は、操作者によりストップボタンスイッチ93が押下されるまで繰り返し行われる。ここで、自動切断処理ルーチンの説明を中断して、通常切断処理について説明する。
【0032】
通常切断処理は、図9に例示する通常切断処理ルーチンにより行われる。通常切断処理ルーチンでは、まず、シャー60を駆動制御して、コイル材Cを切断する(ステップS210)。続いて、ロールフィーダ40のエアシリンダ41を駆動制御して、コイル材Cの挟持を解除する(ステップS220)。コイル材Cの挟持を解除するのは、コイル材Cの幅方向の曲がりなどによりロールフィーダ40のロール本体45,55の軸方向へのスライドが限界位置に達しているとそれ以上同じ方向にスライドできないので、一旦初期位置に戻すためである。そして、ガイドDのガイドを解除して(ステップS230)、搬出ロール25を駆動制御して切断されたシートSを搬出台24に搬出して(ステップS240)、本ルーチンを終了する。この通常切断処理でコイル材Cが切断される様子を図10に示す。図10(a)が切断前の様子、図10(b)がコイル材Cが切断されシートSが切り出された様子、図10(c)がシートSが搬出台24に搬出された様子を示す。
【0033】
図6の自動切断処理ルーチンに戻って、ステップS150でズレ量ΔPが閾値ΔPref以下でないと判定されたときには、矯正切断処理を行ってから(ステップS300)、捨て切り処理を行う(ステップS400)。ここで、自動切断処理ルーチンの説明を中断して、矯正切断処理と捨て切り処理について順に説明する。
【0034】
まず、矯正切断処理について説明する。この処理は、図11に例示する矯正切断処理ルーチンにより行われる。矯正切断処理ルーチンでは、まず、ガイドAのガイドを解除すると共にガイドC,Dでコイル材Cをガイドして(ステップS310)、コイル材Cの側面の向きが送り方向に近付くようコイル材Cの姿勢を矯正する。なお、ロールフィーダ40のロール本体45,55が軸方向へスライドするので、コイル材Cの姿勢の矯正をスムーズに行うことができる。次に、コイル材Cを切断し(ステップS320)、ロールフィーダ40のコイル材Cの挟持を解除する(ステップS330)。コイル材Cの挟持を解除するのは、前述と同様の理由である。そして、ガイドC,Dのガイドを解除して(ステップS340)、切断されたシートSを搬出台24に搬出して(ステップS350)、本ルーチンを終了する。この矯正切断処理でコイル材Cが切断される様子を図12に示す。図12(a)がコイル材Cの姿勢が矯正される前の様子、図12(b)がコイル材Cの姿勢が矯正された後の様子を示す。図12(a)では、コイル材Cの曲がりにより、コイル材Cの端面が切断刃62と大きくズレており、この状態で切断したとすると、切断されたシートSの両切断面の平行度が大きく悪化し形状不良となる。しかし、本実施例では、この状態でガイドAを解除しガイドCでコイル材Cをガイドするので、図12(b)に示すように、コイル材Cの側面の向きが送り方向に近付けられると共に端面のズレも減少し端面と切断刃62との平行度が良化する。そして、図中点線で示す切断ラインで切断するので、切断されたシートSの切断面と側面とは完全には直角とならないもののある程度の直角度となり、また、両切断面も完全には平行とならないもののある程度平行となるので、切断されたシートSが形状不良となることが少なくなる。
【0035】
次に、捨て切り処理について説明する。この処理は、図13に例示する捨て切り処理ルーチンにより行われる。捨て切り処理ルーチンでは、まず、ロールフィーダ40でコイル材Cを挟持し(ステップS410)、ガイドA,Bでコイル材Cをガイドして(ステップS420)、コイル材Cの側面の向きが送り方向に近付くようコイル材Cの姿勢を矯正する。なお、ロールフィーダ40のロール本体45,55が軸方向へスライドするので、コイル材Cの姿勢の矯正をスムーズに行うことができる。次に、ロールフィーダ40を駆動制御して、コイル材Cを送り量L2だけ送る(ステップS430)。ここで、送り量L2は、コイル材Cの端部を所定の切り捨て長さで切り捨てる「捨て切り」に必要な送り量として定められたものであり、具体的には所定長さ(例えば、300mm)で切断する際の送り量L1の100分の1程度に定められている。続いて、シャー60を駆動制御して、捨て切りを行い(ステップS440)、ロールフィーダ40のコイル材Cの挟持を解除して(ステップS450)、本ルーチンを終了する。この捨て切り処理でコイル材Cの端部が捨て切りされる様子を図14に示す。図14(a)が矯正切断処理で切断されたシートSが搬出された後の様子、図14(b)がコイル材CがガイドA,Bでガイドされながら送り量L2で送られた様子を示す。図14(a)に示すように、コイル材Cの端面は、切断刃62に対して平行であるが、曲がりにより側面の向きが送り方向から大きくズレて端面と側面とがなす角度A0は直角度が損なわれたものとなっている。この状態で、単に送り量L1で送って切断すると略平行四辺形状に切断され形状不良となるが、本実施例では、ガイドA,Bでガイドしながらコイル材Cを送り量L2だけ送るので(図12(b)参照)、コイル材Cの姿勢を矯正し側面の向きを送り方向に近付けることができる。一方で、コイル材Cの端面は切断刃62に対してズレが生じ平行ではなくなるが、この状態で捨て切りするので、端部(図中斜線部)が切り捨てられ、捨て切り後の新たな端面は、切断刃62と平行となり、また、側面とのなす角度A1も修正され、完全な直角ではないものの直角度が損なわれたものとはならない。ここで、捨て切りの送り量L2は、送り量L1の100分の1程度の小さなものであるが、説明の便宜上大きく図示した。なお、捨て切りされた捨て切り材は切断と同時に下刃62b近傍に設けられた図示しないクロップシューターを介して機外へ放出される。
【0036】
図6の自動切断処理ルーチンに戻って、再びステップS100以降の処理を繰り返す。この処理は、操作者によりストップボタンスイッチ93が押下されるまで繰り返し行われる。このとき、捨て切りによりコイル材Cの端面と側面とがある程度の直角度を保つことができており、再び送り量L1だけ送って切断したときに切断されたシートSの先に切断された切断面(捨て切りされたコイル材Cの端面)と後に切断された切断面とが略平行となるので、形状不良となることが少なくなる。なお、捨て切り長さは、前述したように切断処理時の100分の1程度とわずかであるから、一つのコイル材Cから取り出せるシートSの枚数が大きく減少することはない。このように、コイル材Cの幅方向の曲がりとしてガイド82のローラ82bから基準ラインとコイル材Cの側面とのズレ量ΔPを算出し、ズレ量ΔPが閾値ΔPref以下のときには矯正切断処理や捨て切り処理などの不必要な処理を行うことなく通常切断処理でシートSを良好な形状に切断することができ、ズレ量ΔPが閾値ΔPrefを超えるときには矯正切断処理と捨て切り処理を行うことにより切断されたシートSが形状不良となるのを防止することができる。
【0037】
以上説明した実施例の切断装置20によれば、ガイドA,Dのガイド72,84とがコイル材Cの側面に二箇所のガイドポイントで当接し、該二箇所のガイドポイントを結ぶ基準ラインと略直交する方向に移動可能に配置されてコイル材Cの側面に当接すると共にコイル材Cの曲がりに追従するガイドローラ82bの位置をリニアエンコーダ88からのポジション信号Pにより検出し、ポジション信号Pとガイドローラ82bが基準ラインに位置するときの基準位置P0との差分(P−P0)をズレ量ΔPとして算出し、算出されたズレ量ΔPの絶対値に基づいてコイル材Cの幅方向の曲がりを判定する。この結果、コイル材Cの幅方向の曲がりを簡易な構成で精度よく判定することができる。また、検出したズレ量ΔPが所定の閾値ΔPrefを超えるときには、矯正切断処理や捨て切り処理により、切断されたシートSの切断面と側面とをある程度の直角度を保って切断する。この結果、判定された曲がりが大きくても切断されたシートSが形状不良となることなくコイル材Cを切断することができる。
【0038】
実施例の切断装置20では、ガイドポイント間の略中央の位置でズレ量ΔPを検出するものとしたが、これに限られず、ズレ量ΔPを検出できる位置であればどこで検出してもよい。また、ガイドと兼ねることなくズレ量ΔPを検出するものを別個に設けるものとしてもよい。
【0039】
実施例の切断装置20では、コイル材Cのガイドにローラーを用いるものとしたが、ローラに限られず平板などでガイドするものとしてもよい。
【0040】
実施例の切断装置20では、ステップS150でズレ量ΔPが閾値ΔPrefを超えたときに矯正切断処理と捨て切り処理とを行った後に再びステップS100の処理に戻るものとしたが、これに限られず、一旦閾値ΔPrefを超えたとき以後は矯正切断処理と捨て切り処理とを繰り返し行うものとしてもよいし、複数回の矯正切断処理と捨て切り処理とを行った後にステップS100の処理に戻るものとしてもよい。
【0041】
実施例の切断装置20では、ズレ量ΔPが閾値ΔPrefを超えたときに矯正切断処理と捨て切り処理とを行うものとしたが、これに限られず、矯正切断処理のみ行うものとしてもよい。また、このような処理を行わず、操作者に異常を知らせるための警報を発するものとしてもよい。
【0042】
実施例の切断装置20では、ベルト式CVTのベルトに用いられる金属材料を切断するものとしたが、これに限られずロール状に巻かれてなる如何なる金属材料を切断するものとしてもよい。
【0043】
実施例では、切断装置20の形態として説明したが、これに限られず、シート曲がり判定装置の形態とするものとしてもよい。
【0044】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との関係を明らかにする。本実施形態のガイド82のガイドローラ82bが本発明の「追従手段」に相当し、ガイドローラ82bの位置を検出するリニアエンコーダ88と図6の自動切断処理ルーチンのステップS130〜140の処理を実行するメインコントローラ100が「相対位置検出手段」に相当し、図6の自動切断処理ルーチンのステップS150の処理を実行するメインコントローラ100が「曲がり判定手段」に相当する。また、ロールフィーダ40が「送り手段」に相当し、シャー60が「切断手段」に相当し、上流側ガイド70と下流側ガイド80とのうちガイドAとガイドDとが「ガイド手段」に相当し、下流側ガイド80のガイドCが「下流側姿勢矯正手段」に相当し、図6の自動切断処理ルーチンのステップS100〜120,S200〜S400の処理を実行するメインコントローラ100が「制御手段」に相当する。さらに、上流側ガイド70のガイドBが上流側姿勢矯正手段に相当する。なお、本実施形態では、切断装置20の動作を説明することにより、本発明のシート曲がり判定装置およびシート曲がり判定方法の一例も明らかにしている。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0045】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ベルト式CVTの製造産業やコイル状の金属材料の加工産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施例としての曲がり判定装置を搭載する切断装置20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】切断装置20の上面図である。
【図3】図1のロールフィーダ40のA−A断面を示す断面図である。
【図4】ガイド82の構成の概略を示す構成図である。
【図5】ガイドC,Dでコイル材Cをガイドする様子を示す説明図である。
【図6】自動切断処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図7】コイル材Cが送り方向に対して右に曲がっている様子を示す説明図である。
【図8】コイル材Cが送り方向に対して左に曲がっている様子を示す説明図である。
【図9】通常切断処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図10】通常切断処理でコイル材Cが切断される様子を示す説明図である。
【図11】矯正切断処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図12】矯正切断処理でコイル材Cが切断される様子を示す説明図である。
【図13】捨て切り処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図14】捨て切り処理でコイル材Cが捨て切りされる様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
20 切断装置、22 ガイドフレーム、24 搬出台、25 搬出ロール、26 フリーローラ、27 搬出ストッパ、30 アンコイラ、32 マンドレル、34 押えロール、36 ループガイド、40 ロールフィーダ、40a フレーム、41 エアシリンダ、42 ロールフレーム、42a 支持軸、43 上ロール、44 シャフト、45 ロール本体、46 フローティング機構、46a ボール、46b 円筒部材、46c スプリング受け、46d スプリング、48 スプロケット、53 下ロール、54 シャフト、55 ロール本体、56 フローティング機構、56a ボール、56b 円筒部材、56c スプリング受け、56d スプリング、58 スプロケット、59 ステッピングモータ、59a カップリング、60 シャー、60a フレーム、62 切断刃、62a 上刃、62b 下刃、64 シャー本体、70 上流側ガイド、72,73,74,75 ガイド、72a,73a,74a,75a エアシリンダ、72b,73b,74b,75b ローラ、72c,74c ストッパ、72d,74d 突出部、80 下流側ガイド、82,83,84,85 ガイド、82a,83a,84a,85a エアシリンダ、82b,83b,84b,85b ローラ、82c,84c ストッパ、82d,84d 突出部、82e ローラフレーム、82f スプリング、82g ,82h 突起、88 リニアエンコーダ、88a フォトディテクタ、88b リニアスケール、90 操作パネル、91 電源ボタンスイッチ、92 スタートボタンスイッチ、93 ストップボタンスイッチ、94 各種設定スイッチ、95 モードセレクトスイッチ、100 メインコントローラ、102 CPU、104 ROM、106 RAM、108 インタフェース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻かれてなる金属製のシート材を送る送り手段と、該送り手段により所定長さ毎に送られたシート材を切断する切断手段と、該切断手段に対して上流側と下流側とに所定間隔をもって定められた二箇所のガイドポイントで該シート材の一方の側面に当接すると共に該シート材の側面を両側から挟んで送り方向にガイドするガイド手段とを備える切断装置に搭載され、該シート材の幅方向の曲がりを判定するシート曲がり判定装置であって、
前記二箇所のガイドポイントの間の位置に該ガイドポイント同士を結ぶ基準線と略直交する方向に移動可能に配置され、該位置における前記シート材の側面に当接すると共に該シート材の幅方向の変位に追従する追従手段と、
前記追従手段の前記基準線に対する相対位置を検出する相対位置検出手段と、
前記検出された前記追従手段の相対位置に基づいて前記シート材の幅方向の曲がりを判定する曲がり判定手段と
を備えるシート曲がり判定装置。
【請求項2】
前記追従手段は、前記二箇所のガイドポイントの間の略中央の位置に配置される手段である請求項1記載のシート曲がり判定装置。
【請求項3】
前記追従手段は、前記シート材の側面に当接する当接部と、該当接部を該シート材の側面に向かって付勢する付勢手段とを備え、前記送り手段により前記シート材が送られる前の初期状態において前記当接部が前記基準線より内側に突出するよう前記付勢手段により付勢する手段である請求項1または2記載のシート曲がり判定装置。
【請求項4】
前記ガイド手段は、前記シート材の側面に当接する当接部と、該当接部を該シート材の送り方向に略直交する方向に押圧する押圧手段と、該押圧手段により押圧される前記当接部が前記ガイドポイントで停止するよう位置決めするストッパとを備える手段である請求項1ないし3いずれか1項に記載のシート曲がり判定装置。
【請求項5】
前記追従手段および前記ガイド手段の当接部は、回転可能なローラである請求項3または4記載のシート曲がり判定装置。
【請求項6】
前記シート材は、ベルトがエレメントとリングとによって構成されるベルト式のCVTの該リングの製造に用いられる請求項1ないし5いずれか1項に記載のシート曲がり判定装置。
【請求項7】
ロール状に巻かれてなる金属製のシート材を切断する切断装置であって、
前記シート材を送る送り手段と、
該送り手段により所定長さ毎に送られたシート材を切断する切断手段と、
該切断手段より上流側に配置され該シート材の一方の側面に所定の上流側ガイドポイントで当接すると共に該シート材の側面を両側から挟んでガイドする上流側ガイドと、該切断手段より下流側に配置され該シート材の一方の側面に前記上流側ガイドポイントと所定間隔をもって定められた下流側ガイドポイントで当接すると共に該シート材の側面を両側から挟んでガイドする下流側ガイドとからなるガイド手段と、
前記切断手段より下流側に配置され下流側における前記シート材の側面の向きが送り方向に近付くよう該シート材の姿勢を矯正する下流側姿勢矯正手段と、
請求項1ないし6いずれか1項に記載のシート曲がり判定装置と、
前記シート曲がり判定装置により前記シート材の幅方向の曲がりが許容範囲内と判定されたときには、前記ガイド手段によるガイドを伴って前記所定長さに相当する送り量をもって該シート材が送られるよう前記送り手段を制御すると共に該送られたシート材が切断されるよう前記切断手段を制御する通常切断制御を実行し、前記シート曲がり判定装置により前記シート材の幅方向の曲がりが許容範囲を超えると判定されたときには、前記ガイド手段のうち下流側ガイドによるガイドを伴うと共に前記下流側姿勢矯正手段による姿勢の矯正を伴って前記所定長さに相当する送り量をもって該シート材が送られるよう前記送り手段を制御すると共に該送られたシート材が切断されるよう前記切断手段を制御する矯正切断制御を実行する制御手段と、
を備える切断装置。
【請求項8】
前記下流側姿勢矯正手段は、前記切断手段と前記下流側ガイドとの間に前記シート材の側面を両側から挟んで姿勢を矯正するよう対となって配置され、該対となって配置されるうちの一方が前記追従手段を兼ねてなる請求項7記載の切断装置。
【請求項9】
請求項7または8記載の切断装置であって、
前記切断手段より上流側に配置され上流側における前記シート材の側面の向きが送り方向に近付くよう該シート材の姿勢を矯正する上流側姿勢矯正手段を備え、
前記制御手段は、前記矯正切断制御を実行した後に、前記ガイド手段のうち上流側ガイドによるガイドを伴うと共に前記上流側姿勢矯正手段による姿勢の矯正を伴って該シート材の端部を切り捨てる切り捨て長さに相当する送り量をもって該シート材が送られるよう前記送り手段を制御すると共に該送られたシート材が切断されるよう前記切断手段を制御する捨て切り制御を実行する手段である
切断装置。
【請求項10】
ロール状に巻かれてなる金属製のシート材を送る送り手段と、該送り手段により所定長さ毎に送られたシート材を切断する切断手段と、該切断手段に対して上流側と下流側とに所定間隔をもって定められた二箇所のガイドポイントで該シート材の一方の側面に当接すると共に該シート材の側面を両側から挟んで送り方向にガイドするガイド手段とを備える切断装置における該シート材の幅方向の曲がりを判定するシート曲がり判定方法であって、
(a)前記二箇所のガイドポイントの間の位置に該ガイドポイント同士を結ぶ基準線と略直交する方向に移動可能に配置され該位置における前記シート材の側面に当接すると共に該シート材の幅方向の変位に追従する追従手段を用いて、該追従手段の前記基準線に対する相対的な位置を検出するステップと、
(b)前記ステップ(a)で検出された位置に基づいて前記シート材の幅方向の曲がりを判定するステップと
を含むシート曲がり判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−279686(P2009−279686A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132338(P2008−132338)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(503158017)株式会社シーヴイテック (11)
【Fターム(参考)】