説明

シート材及びそれを用いた陳列棚

【課題】 傾斜陳列棚の商品の載置面において、良好な滑り性が確保できるとともに、汚れがつき難く、シール等の容易な剥離が可能となり、しかも、薄厚に形成できるシート材を得る。
【解決手段】 オレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂層11の上面に、エンボス加工等によって略半球状の凸部13を千鳥状に配置形成し、凸部13の形成された上面をシリコーン硬化樹脂層15によって覆うとともに、熱可塑性樹脂層11の下面には粘着剤が塗布されて粘着層17を形成され、この粘着層17の下面に剥離シート19を貼着し、この剥離シート19を剥離して、粘着層17にて陳列棚の載置面31aに貼着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棚板等の表面に貼着されて商品との摩擦力を低くするとともに、汚れ等をつき難くするシート材及びそれを用いた陳列棚に関する。
【背景技術】
【0002】
店舗の陳列棚や、冷蔵ショーケース内の棚板には、特許文献1に示すように、手前にやや傾斜し、前面にストッパーが設けられ、その載置面に缶やペットボトル等の容器が整列収納されるものがある。この種の陳列棚では、手前の容器を取り出すと、その背後の容器が重力で手前に滑り出して移動し、常に最前列に容器が整列するようになっている。したがって棚は容器の搬送装置を兼ねている。棚としては例えば、アセタール樹脂とフッ素樹脂のブレンドのような滑りやすいものを材質とし、容器の底との摩擦抵抗が小さくなるように、容器の滑り方向に平行にスリットを設けたものが用いられる。この他、フッ素樹脂塗料を焼付塗装するとともに微小な凹凸(エンボス)を載置面に形成し、商品との接触面を小さくしたものもある。
【0003】
また、特許文献2には、少ない傾斜角度での移動を目的に、多数のローラーと、ローラー支持部材とからなるロールコンベア部材2つが対向して配設された1対以上のロールコンベアよりなる容器の搬送装置が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、物品を常に棚の手前側に位置させ、物品を棚から容易に取り出すことができるようにすることを目的に、物品載置棚の載置面に対して傾斜して延びる底板上に、複数のフッ素系樹脂棒をリテーナにより取り付け、フッ素系樹脂棒上に載置した物品を低摩擦のフッ素系樹脂棒上を滑り落として陳列ケースの前壁に当接して停止させ、最も手前側にある物品を取り出すことで、奥側にある物品を手前側に移動させる物品載置棚用補助具が開示されている。
【特許文献1】特開2004−105526号公報
【特許文献2】特開2000−128327号公報
【特許文献3】特開平8−10108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単に滑りやすい材質で載置面を形成した構成では、汚れがつき易く、例えば値札シール等が貼り付いた場合には粘着材が残るなど剥離が困難となり、良好な滑り性が確保できなくなる問題があった。その結果、商品を自重で滑るように棚板の傾斜角度を大きくしなければならず、陳列棚全体が大型化する問題があった。
また、フッ素樹脂塗料等の焼付塗装によって微小な凹凸(エンボス)を載置面に形成した構成は、そのエンボス形状により、紙パック製品の底面を削るように損傷させ、その損傷物がエンボスの凹部に堆積して目詰まりを生じさせることもあった。そして、エンボスを載置面に形成した場合には凹部に損傷物が詰まり、清掃性を著しく低下させる欠点があった。
さらに、ロールコンベア部材やフッ素系樹脂棒を設ける構成は、棚板の構造が複雑になり、しかも、棚板を薄厚にできず、これによっても陳列棚全体が大型化する問題があった。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、汚れがつき難く、シール等の容易な剥離が可能となるとともに、良好な滑り性が確保でき、しかも、薄厚に形成できるシート材を得ることにある。また、その第2の目的は、簡単な構造で緩やかな傾斜によって陳列商品を下り傾斜方向手前側へ自走させることができ、しかも、紙パック製品であっても底面を損傷せずに、目詰まりを生じさせない陳列棚を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のシート材100は、傾斜陳列棚の商品の載置面31aを構成するシート材であって、熱可塑性樹脂層11の上面に略半球状の凸部13が千鳥状に配置形成され、該凸部13の形成された前記上面がシリコーン硬化樹脂層15によって覆われることを特徴とする。
【0008】
このシート材100では、熱可塑性樹脂層11の上面のシリコーン硬化樹脂層15に、略半球状の凸部13が千鳥状に配置形成されることにより、その表面は、良好な滑り性を備えることとなる。また、上面のシリコーン硬化樹脂層15によって、上面の粘着性が低下するとともに、剥離性が高まり、汚れがつき難くなる。したがって、シール、粘着テープ、貼り紙等が貼り付き難くなり、仮に貼り付いてしまった場合であっても容易な剥離が可能となり、これに加えて、剥離が容易となり、汚れも落ちやすくなることから清掃も容易となる。また、このシート材100では、所望の貼着手段、例えば接着剤などを熱可塑性樹脂層11の下面に塗布することで、載置面31aに貼着される。
【0009】
請求項2記載のシート材100は、傾斜陳列棚の商品の載置面31aを構成するシート材であって、熱可塑性樹脂層11の上面に略半球状の凸部13が千鳥状に配置形成され、該凸部13の形成された前記上面がシリコーン硬化樹脂層15によって覆われるとともに、前記熱可塑性樹脂層11の下面に粘着層17が設けられ、該粘着層17の下面に剥離シート19が貼られたことを特徴とする。
【0010】
このシート材100では、熱可塑性樹脂層11の上面のシリコーン硬化樹脂層15に、略半球状の凸部13が千鳥状に配置形成されることにより、その表面は、良好な滑り性を備えることとなる。また、上面のシリコーン硬化樹脂層15によって、上面の粘着性が低下するとともに、剥離性が高まり、汚れがつき難くなる。したがって、シール、粘着テープ、貼り紙等が貼り付き難くなり、仮に貼り付いてしまった場合であっても容易な剥離が可能となり、これに加えて、剥離が容易となり、汚れも落ちやすくなることから清掃も容易となる。また、このシート材100では、剥離シート19を剥離した後に、粘着層17にて、載置面31aに貼着される。
【0011】
請求項3記載のシート材100は、前記凸部13の直径Dが0.3〜0.5mmの範囲で形成され、
前記凸部13の高さHが0.09〜0.13mmの範囲で形成され、
前記千鳥に配列された複数の凸部13の第1の仮想線21上に位置する隣接凸部13同士の間隔P1が1.5〜1.9mmの範囲にあり、
前記第1の仮想線21に直交する第2の仮想線23上に位置する隣接凸部13同士の間隔P2が1.0〜1.4mmの範囲にあることを特徴とする。
【0012】
このシート材100では、凸部13の直径Dが0.3mm以上となることで、紙パック製品に対しても、製品底面とシート材表面との離間作用が得られ、凸部13の直径Dが0.5mm以上となった場合の接触摩擦の増大が抑止される。また、凸部13の高さHが0.09mm以上となることで、紙パック製品に対しても、製品底面とシート材表面との離間作用が得られ、凸部13の高さHが0.13mm以上となった場合の製品の衝突抵抗が抑止される。さらに、千鳥に配列された複数の凸部13の間隔P1,P2が1.5〜1.9mmと1.0〜1.4mmとの範囲となることで、商品底面との接触面積を必要以上に増大させず、かつ連続的に商品底面と接触して円滑な滑り性が確保される。さらに、凸部13が略半球状であるので、商品底面に対する接触面積が小さくなり略点状となって支持し、かつ、軟質製品素材に対する底面の損傷が抑止可能となる。
【0013】
請求項4記載の陳列棚200は、商品33の載置面31aを手前が低くなるように傾斜させた陳列棚200であって、
前記載置面31aに、請求項1又は2又は3記載のシート材100が貼着されていることを特徴とする。
【0014】
この陳列棚200では、シート材100が棚板31と商品底面との間に介在することで、陳列商品と棚板31との摩擦が小さくなり、緩やかな傾斜によって陳列商品33が下り傾斜方向手前側へ自走可能となる。また、汚れの着きにくいシート材100が貼着されることで、値札シール等が着きにくくなる。さらに、陳列商品33の自走が緩やかな傾斜で可能となるので、棚板31同士の高さ方向の間隔寸法が低くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る請求項1記載のシート材によれば、熱可塑性樹脂層の上面に略半球状の凸部が千鳥状に形成され、凸部の形成された上面がシリコーン硬化樹脂層によって覆われるので、そのシート材の表面を備えた載置面として、良好な滑り性を備えることとなる。また、シリコーン硬化樹脂層によって覆われる上面を、汚れがつき難くすることができる。すなわち、シール、粘着テープ、貼り紙等を貼着し難くでき、しかも、貼り付いてしまっても粘着剤等が残ることなく容易に剥がすことができる。これにより、清掃もし易くすることができる。
【0016】
請求項2記載のシート材によれば、熱可塑性樹脂層の上面に略半球状の凸部が千鳥状に形成され、凸部の形成された上面がシリコーン硬化樹脂層によって覆われるとともに、熱可塑性樹脂層の下面に粘着層が設けられ、粘着層の下面に剥離シートが貼られたので、そのシート材の表面を備えた載置面として、良好な滑り性を備えることとなる。また、シリコーン硬化樹脂層によって覆われる上面を、汚れがつき難くすることができる。すなわち、シール、粘着テープ、貼り紙等を貼着し難くでき、しかも、貼り付いてしまっても粘着材等が残ることなく容易に剥がすことができる。これにより、清掃もし易くすることができる。また、粘着層により、載置面に対して容易に貼着が可能となる。
【0017】
請求項3記載のシート材によれば、凸部の直径が0.3〜0.5mmの範囲で形成され、凸部の高さが0.09〜0.13mmの範囲で形成され、千鳥に配列された複数の凸部の第1の仮想線上に位置する隣接凸部同士の間隔が1.5〜1.9mmの範囲にあり、第1の仮想線に直交する第2の仮想線上に位置する隣接凸部同士の間隔が1.0〜1.4mmの範囲にあるので、凸部の直径、高さ、間隔をそれぞれ上記の範囲内に設定したので、商品との接触面積を小さくし、良好な滑り性を確保することができる。また、凸部の高さを含め、シート材全体を薄厚に形成できるので、シート材を貼着した棚板を薄厚に構成することが可能となる。さらに、凸部が半球状であるので、比較的擦れ性に強いペットボトル以外の紙パック製品であっても、製品素材の底面を損傷させることがなく、損傷物による目詰まりを生じさせずに、長期に渡り良好な滑り性を維持することができる。
【0018】
請求項4記載の陳列棚によれば、商品の載置面を手前が低くなるように傾斜させた陳列棚であって、長期に渡り良好な滑り性を維持できる請求項1又は2又は3記載のシート材を載置面に貼着したので、載置面に載置される陳列商品と棚板との摩擦を小さくし、その結果、シート材を貼着した簡単な構造で、緩やかな傾斜によって陳列商品を下り傾斜方向手前側へ自走させることが可能となる。また、載置面に、汚れの着きにくいシート材を貼着することで、値札シール等が着きにくくなり、これによっても、良好な商品自走性を維持し続けることができる。さらに、陳列商品の自走が緩やかな傾斜で可能となるので、棚板同士の高さ方向の間隔寸法を低く抑えることができ、陳列棚全体の小型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るシート材及びそれを用いた陳列棚の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るシート材の断面図、図2は図1に示したシート材の上面斜視図である。
本実施の形態によるシート材100は、後述する陳列棚の棚板載置面に貼着して好適なものである。
図1に示すように、シート材100は、基材シートである熱可塑性樹脂層11の上面に、略半球状の凸部13が、一平面上(上面)で任意の角度で交わる座標軸線で行列状に配置して、好ましくは、図2に示す千鳥状に配置形成され、この凸部13の形成された上面がシリコーン硬化樹脂層15によって覆われている。また、熱可塑性樹脂層11の下面には、粘着剤又は接着剤より形成される粘着層17が設けられ、この粘着層17の下面には剥離シート19が貼られている。なお、熱可塑性樹脂層11は、押出成形等の公知の方法によりシート状に形成される。熱可塑性樹脂層11を構成する熱可塑性樹脂は、凸部13が形成可能な樹脂であればよく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフイン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0020】
図3は図2に示したシート材の上面平面視を(a)、要部拡大断面視を(b)に示した説明図である。
ここで、凸部13は、例えばエンボスロールを用いて熱可塑性樹脂層11の上面に形成され、直径Dが0.3〜0.5mmの範囲で形成され、高さHが0.09〜0.13mmの範囲で形成されることが好ましく、さらに、直径Dが0.4mmで形成され、高さHが0.11mmで形成されることがより好ましい。また、凸部13を除くシート部は、厚みTが0.15〜0.19mmの範囲で形成されることが好ましく、さらに、厚みTが0.17mmで形成されることがより好ましい。
【0021】
また、千鳥に配列された複数の凸部13は、第1の仮想線21上に位置する隣接凸部同士の間隔P1が1.5〜1.9mmの範囲にあり、第1の仮想線21に直交する第2の仮想線23上に位置する隣接凸部同士の間隔P2が1.0〜1.4mmの範囲にあることが好ましく、さらに、凸部13は、第1の仮想線21上に位置する隣接凸部同士の間隔P1が1.7mmであり、第2の仮想線23上に位置する隣接凸部同士の間隔P2が1.2mmであることがより好ましい。したがって、凸部13の密度は、96個/cm2 であることが好ましい。
【0022】
シート材100は、コロナ放電表面処理を施し、表面の濡れ張力を45〜55mN/mとする。そして、コンマコーターを用いて、表面にシリコーン樹脂をコーティングした後、加熱処理してシリコーン硬化樹脂層15を積層形成する。下面にはアクリル系粘着剤などの粘着剤を塗布して粘着層17を積層形成する。さらに、この粘着層17の下面には剥離シート19が貼られる。なお、この粘着層17と剥離シート19との成形は、熱可塑性樹脂層11の下面に粘着剤を塗布して粘着層17を形成した後に剥離シート19を貼着し構成することとしてもよく、或いは、剥離シート19の一方の面に粘着層17を予め積層形成して熱可塑性樹脂層11の下面へ、ラミネート貼着させて構成することとしてもよい。
【0023】
凸部13は、直径Dが0.3mm以上となることで、紙パック製品に対しても、製品底面とシート材表面との離間作用が得られ、凸部13の直径Dが0.5mm以上となった場合の接触摩擦の増大が抑止される。また、凸部13の高さHが0.09mm以上となることで、紙パック製品に対しても、製品底面とシート材表面との離間作用が得られ、凸部13の高さHが0.13mm以上となった場合の製品の衝突抵抗が抑止される。さらに、千鳥に配列された複数の凸部13の間隔P1、P2が1.5〜1.9mmと1.0〜1.4mmとの範囲となることで、商品底面との接触面積を必要以上に増大させず、かつ連続的に商品底面と接触して円滑な滑り性が確保される。さらに、凸部13が略半球状であるので、軟質製品素材に対する底面の損傷が抑止可能となる。
【0024】
本実施の形態で使用されるシリコーン硬化樹脂層15としては、付加反応型、縮重合反応型、紫外線硬化型、または電子線硬化型のシリコーン樹脂等を素材として使用することが出来る。
【0025】
付加反応型シリコーン樹脂としては、末端ビニル基を含有するポリジメチルシロキサンとハイドロジェンシロキサンを白金触媒のもとに、加熱硬化させたものが挙げられる。具体例としては、信越化学工業(株)製のKS−774、KS843、KS847、KS847HおよびKS838(いずれも商品名)、東レダウコーニング(株)製SD7226、SD7223、SRX211、SRX345、SD7236およびSRX370(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0026】
縮重合反応型シリコーン樹脂としては、末端に水酸基を含有するポリジメチルシロキサンとハイドロジェンシロキサンを有機錫触媒を用いて加熱硬化させたものが好ましく用いられる。具体例としては東レダウコーニング(株)製SRX290やSYLOFF23(いずれも商品名)が挙げられる。
【0027】
紫外線硬化型シリコーン樹脂としては、ビニルシロキサンを白金触媒の存在下でヒドロシリル化させる付加反応タイプ具体例としては、信越化学工業(株)製X62−5039やX62−5040(いずれも商品名)などが挙げられる。アルケニル基を含むシロキサンとメルカプト基を含むシロキサンを光重合触媒を用いて硬化させるラジカル付加タイプ(具体例としては、東レダウコーニング(株)製BY24−510HやBY24−544(いずれも商品名)などが挙げられる。)およびエポキシ基をオニウム塩開始剤にて光開環させて硬化させるカチオン重合タイプ(具体例としては、GE東芝シリコーン(株)製TPR6501、UV9300およびXS56−A2775(いずれも商品名)など)、(メタ)アクリル基含有シリコーンをラジカル重合させるタイプ(具体例としては、東洋インキ(株)製フルシェードU−311)などが挙げられる。
【0028】
これらのシリコーン樹脂を、熱可塑性樹脂層11となるオレフィン系樹脂層、例えばポリエチレンフィルムに塗布する方法としては、一般的なコーティング方式を利用することができる。例えば、グラビアコート、グラビアリバースコート、リップコート、ダイコート、マイクログラビアコート、マイヤーバーコートおよび多段リバースコートなどの塗布方式を使用することができる。
【0029】
このような構成を有するシート材100では、熱可塑性樹脂層11の上面がシリコーン硬化樹脂層15によって覆われることで、上面の粘着性が低下するとともに、剥離性が高まり、汚れがつき難くなる。したがって、シール、粘着テープ、貼り紙等が貼り付き難くなり、仮に貼り付いてしまった場合であっても容易な剥離が可能となり、これに加えて、剥離が容易となり、汚れも落ちやすくなることから清掃も容易となる。また、上記したシリコーン樹脂が、滑り剤の素材となって、シリコーン硬化樹脂層15が形成されることから、滑り性の良好な低摩擦性の表面を形成することが可能となる。
【0030】
したがって、このシート材100によれば、熱可塑性樹脂層11の上面に略半球状の凸部13が千鳥状に配置形成され、凸部13の形成された上面がシリコーン硬化樹脂層15によって覆われるとともに、熱可塑性樹脂層11の下面に粘着層17が設けられ、粘着層17の下面に剥離シート19が貼られたので、シリコーン硬化樹脂層15によって覆われる上面を、汚れがつき難くすることができる。すなわち、シール、粘着テープ、貼り紙等を貼着し難くでき、しかも、貼り付いてしまっても容易に剥がすことができる。これにより、清掃もし易くすることができる。
【0031】
また、凸部13の直径が0.3〜0.5mmの範囲で形成され、凸部13の高さが0.09〜0.13mmの範囲で形成され、千鳥に配列された複数の凸部13の第1の仮想線21上に位置する隣接凸部同士の間隔P1が1.5〜1.9mmの範囲にあり、第1の仮想線21に直交する第2の仮想線23上に位置する隣接凸部同士の間隔P2が1.0〜1.4mmの範囲にあるので、商品との接触面積を小さくし、良好な滑り性を確保することができる。また、凸部13の高さHを含め、シート材全体を薄厚に形成できるので、シート材100を貼着した棚板を薄厚に構成することが可能となる。さらに、凸部13が略半球状であるので、比較的擦れ性に強いペットボトル以外の紙パック製品であっも、製品素材の底面を損傷させることがなく、損傷物による目詰まりを生じさせずに、長期に渡り良好な滑り性を維持することができる。
【0032】
次に、上記のシート材100を載置面に貼着した陳列棚を説明する。
図4は図1に示したシート材が貼られる陳列棚の側面図である。
上記したシート材100は、例えば図4に示す陳列棚200に好適に用いることができる。陳列棚200は、多段状に支持された棚板31を備える。棚板31は、商品33の載置面31aを手前が低くなるように傾斜して支持される。棚板31は、図示しないブラケットや両側部に立設される支柱等によって所定の傾斜角度、例えば8〜12°、好ましくは8°で支持される。
【0033】
図5は図4に示した陳列棚の変形例の側面図である。
陳列棚200は、非冷の日雑商品や、清涼飲料等の冷蔵商品のいずれが載置されるものであってもよい。また、図5に示すように、陳列棚200Aは、ガラスドアで前面開口部が開閉可能となった冷蔵庫35の内部35aに、支柱によって棚板31が支持され、商品33の先入れ先出しや後入れ先出しを可能に商品33を陳列する所謂リーチインタイプやウォークインタイプの冷蔵庫35に設けられるものであってもよい。
【0034】
図6は棚板へのシート材の貼着状況を表す説明図である。
棚板31には、シート材100の剥離シート19が剥がされ、表出した粘着層17の粘着面が載置面31aに貼着される。つまり、シート材100は、粘着層17を介して棚板31に容易に貼着される。
【0035】
図7は図1に示したシート材が貼着された陳列棚の概略斜視図である。
陳列棚200は、棚板31が水平仮想面37に対し手前に8°の傾斜角度αで傾斜し、前面にストッパー39(図4,5参照)が設けられる。したがって、その載置面31aに缶やペットボトル等の容器商品33が整列収納され、手前の商品33を取り出すと、その背後の商品33が重力で手前に滑り出して移動し、常に最前列に商品33が整列するようになっている。
【0036】
この陳列棚では、シート材100が棚板31と商品底面との間に介在することで、陳列商品と棚板31との摩擦が小さくなり、緩やかな傾斜によって陳列商品が下り傾斜方向手前側へ自走可能となる。また、上述したように汚れの着きにくいシート材100が貼着されることで、値札等が着きにくくなる。さらに、陳列商品の自走が緩やかな傾斜で可能となるので、棚板31同士の高さ方向の間隔寸法が低くなる。
【0037】
したがって、この陳列棚200によれば、商品33の載置面31aを手前が低くなるように傾斜させた陳列棚200において、長期に渡り良好な滑り性を維持できるシート材100を載置面31aに貼着したので、シート材100を貼着した簡単な構造で、緩やかな傾斜によって陳列商品を下り傾斜方向手前側へ自走させることが可能となる。また、載置面31aに、汚れの着きにくいシート材100を貼着することで、値札シール等が着きにくくなり、これによっても、良好な商品自走性を維持し続けることができる。さらに、陳列商品の自走が緩やかな傾斜で可能となるので、棚板31同士の高さ方向の間隔寸法を低く抑えることができ、陳列棚200全体の小型化が可能となる。
【0038】
なお、シート材100は、棚板31の載置面31aに対して、陳列される商品の幅長に合せて奥行き方向に立設される仕切板間に位置するように帯状となって貼着され構成されてもよく、或いは、棚板31の載置面31a全体に貼着される構成としてもよい。
【0039】
また、上述した実施の形態では、図1等に示すように、シート材100の熱可塑性樹脂層11の下面に粘着層17を設け、粘着層17の下面に剥離シート19が貼られた構成について述べたが、熱可塑性樹脂層11の下面に粘着層などを予め設けずに、シート材として構成してもよい。このシート材の場合では、例えば、所望の接着剤等を熱可塑性樹脂層11の下面に塗布し接着層を形成することとされ、或いは両面粘着テープなど用い粘着層を構成することとしてもよく、さらには、このシート材が貼着される対象物側に粘着手段が構成される場合などもあり、このシート材を貼着させる対象である陳列棚の載置面に対して最適な貼着手段を選択し、構成することができる。
【実施例】
【0040】
次に、上記の実施の形態と同様の構成によって製作したシート材を棚板に貼着した陳列棚に、商品を陳列し、従来棚との滑り性を比較した結果を説明する。
[シート材の製造]
まず、シート材の基材となる熱可塑性樹脂層11としては、オレフィン系樹脂を素材とし、この例においてはポリエチレンを用いる。MFR(メルトフローレイト)10、密度0. 92の低密度ポリエチレン75重量部、MFR(メルトフローレイト)11、密度0. 95の高密度ポリエチレン25重量部に熱安定剤としてフェノール基リン系0.03〜0.04重量部(オレフィン樹脂よりなるマスターパッチを用いても良い)、光安定剤としてハルス系(ヒンダードアミン系安定剤;HALS)0. 11〜0.12重量部(オレフィン樹脂よりなるマスターパッチを用いても良い)を添加し、ブレンダーで混合した後、175〜210℃に加熱したTダイ押出機を用いて0. 18〜0. 19mmの厚さのシート状基材を得る。このシート状基材は、上記した熱可塑性樹脂層11となるシート材であり、このポリエチレンシートの成形直後、すなわち熱を持った状態で、その片面に、凹部が形成されているエンボスロールを用いてエンボス加工を施し、実施の形態と同形同配列の略半球状凸部13を密度96個/cm2 で形成した。
【0041】
このポリエチレンシートの両面にコロナ放電処理をし、濡れ張力が45〜55mN/mになるようにした。シリコーン硬化樹脂層15となる素材である滑り剤としては、反応性シリコーン樹脂5重量%と、反応触媒として金属カルボン酸0. 2重量%を含むトルエン溶液とを調製した。上記調製した塗布液を上記ポリエチレンシートの上面に、コンマコーターを用いて、固形分10g/m2の塗布量で塗布した。その後100℃で加熱処理し、反応させシリコーン硬化樹脂層15を形成した。次に、上記のポリエチレンシート(熱可塑性樹脂層11)のシリコーン硬化樹脂層15の反対面にアクリル系粘着剤を固形分50/m2の塗布量で塗布し、粘着層17を形成して、その上に剥離シートとして市販の剥離紙を貼着して、表面の滑り性が良好なシート材100を得た。
【0042】
[滑り性試験法]
シート材を1mmのプラスチック板に貼着した奥行き長さ335mm、幅長105mmの棚板を、予め斜面が8°にセットされた金属板に両面粘着テープで貼り合わせる。
容量350ml、容量1lのペットボトル飲料、を長さ335mmの斜面上を滑らした。各種ボトルが底面まで滑り落ちると、自動ロボットが掴み、ボトルを元の位置にリセットできるようにした。
また、フッ素エポキシ樹脂塗料を金属板に焼付け塗装した樹脂金属板を、比較例として評価した。
【0043】
[評価]
比較例(フッ素/エポキシ樹脂)
350mlペットボトル:20,000回で滑り性低下
1l ペットボトル:15,000回で滑り性低下
実施例
350mlペットボトル:35,000回後も問題なし
1l ペットボトル:同上
【0044】
比較例では、350mlペットボトルの場合20,000回で滑り性が低下し、1lペットボトルの場合15,000回で滑り性が低下した。実施例では、何れの商品において35,000回の試験を行った後でも滑り性の低下が認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るシート材の断面図である。
【図2】図1に示したシート材の上面斜視図である。
【図3】図2に示したシート材の上面平面視を(a)、要部拡大断面視を(b)に示した説明図である。
【図4】図1に示したシート材が貼られる陳列棚の側面図である。
【図5】図4に示した陳列棚の変形例の側面図である。
【図6】棚板へのシート材の貼着状況を表す説明図である。
【図7】図1に示したシート材が貼着された陳列棚の斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
11…熱可塑性樹脂層
13…凸部
15…シリコーン硬化樹脂層
17…粘着層
19…剥離シート
21…第1の仮想線
23…第2の仮想線
31a…載置面
33…商品
200…陳列棚
D…直径
H…高さ
P1,P2…間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜陳列棚の商品の載置面を構成するシート材であって、熱可塑性樹脂層の上面に略半球状の凸部が千鳥状に配置形成され、該凸部の形成された前記上面がシリコーン硬化樹脂層によって覆われることを特徴とするシート材。
【請求項2】
傾斜陳列棚の商品の載置面を構成するシート材であって、熱可塑性樹脂層の上面に略半球状の凸部が千鳥状に配置形成され、該凸部の形成された前記上面がシリコーン硬化樹脂層によって覆われるとともに、前記熱可塑性樹脂層の下面に粘着層が設けられ、該粘着層の下面に剥離シートが貼られたことを特徴とするシート材。
【請求項3】
前記凸部の直径が0.3〜0.5mmの範囲で形成され、
前記凸部の高さが0.09〜0.13mmの範囲で形成され、
前記千鳥に配列された複数の凸部の第1の仮想線上に位置する隣接凸部同士の間隔が1.5〜1.9mmの範囲にあり、
前記第1の仮想線に直交する第2の仮想線上に位置する隣接凸部同士の間隔が1.0〜1.4mmの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2記載のシート材。
【請求項4】
商品の載置面を手前が低くなるように傾斜させた陳列棚であって、
前記載置面に、請求項1又は2又は3記載のシート材が貼着されていることを特徴とする陳列棚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−14689(P2007−14689A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201817(P2005−201817)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(504266784)シーアイマテックス株式会社 (2)
【出願人】(597075823)住化プラステック株式会社 (37)
【出願人】(593140255)サンビック株式会社 (12)