説明

シート材反転装置及び画像形成装置

【課題】 シート材の反転処理効率がよく、シート材の印刷成果物としての品質劣化を防ぐことが可能なシート材反転装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】 反転ユニット30(シート材反転装置)の搬送開始位置であるベルト駆動ローラ35と搬送終了位置であるベルト駆動ローラ36との間で180度ねじりながら吸着ベルト33を掛け合わせ、この吸着ベルト33に交流電源41によって静電気力を付加することでシート材を吸着ベルト33に吸着させてシート材を搬送させるので、シート材の反転に要する時間を短縮し、両面印刷処理の際の生産性を向上させることができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に係り、特に画像を両面形成する際のシート材の反転をおこなうものに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置の中には、1枚のシート材の表裏の両面に画像形成をおこなうモード(以下、両面画像形成モードという)を備えているものがある。この両面画像形成モードにより、シート材の両面に画像形成をおこなう場合、画像形成装置内に設けられるシート材反転装置がシート材を反転することによって、シート材の両面それぞれに画像形成がおこなわれる。
【0003】
図10は、両面画像形成モードを備える従来のスイッチバック方式のシート材反転装置の構成を示す側断面図である。
【0004】
シート材反転装置100bには、画像形成装置100aからシート材を受ける搬送ガイド101と、画像形成後のシート材を機外に排出する搬送ガイド103と、受けたシート材を反転する搬送ガイド104,107,110とが設けられた構成となっている。
【0005】
画像形成装置100aからシート材を受ける搬送ガイド101は、搬送ガイド103又は搬送ガイド104へと分岐しており、その分岐点ではフラッパ108によりシート材の進行方向が制御されて搬送ローラ102によりシート材が送出される。
【0006】
搬送ガイド104は、搬送ガイド107と搬送ガイド110との分岐点を有しており、その分岐点ではフラッパ109によりシート材の進行方向が制御され、反転ローラ105によってシート材が送出される。そして、搬送ガイド110には搬送ローラ106が設けられており、これによって反転されたシート材は画像形成装置100aに対して送出される。
【0007】
つぎに、シート材反転装置100bによる従来のシート材の反転処理の動作を説明する。シート材は、画像形成装置100aにおいて片面の画像形成及び定着処理がおこなわれると、搬送ガイド101を介してシート材反転装置100bへと搬送される。このとき、搬送ローラ102の分岐部に設けられたフラッパ108は、搬送ガイド104を開き、搬送ガイド103を閉じている。これにより、シート材は搬送ローラ102の回転によって搬送ガイド104へと搬送される。
【0008】
シート材が搬送ガイド104へ搬送された際、反転ローラ105の分岐部に設けられたフラッパ109は、搬送ガイド110を閉じているため、シート材は搬送ガイド104を通過し、反転ローラ105によって搬送ガイド107へ送出される。このとき、シート材の後端がフラッパ109を通過した時点で反転ローラ105は停止する。
【0009】
反転ローラ105が停止すると、フラッパ109は搬送ガイド104を閉じ、搬送ガイド110を開く。そして、反転ローラ105は前述とは逆回転することでシート材を搬送ガイド110へと送出し、そのまま搬送ローラ106により画像形成装置100aへと給紙する。以後、両面画像形成モードによりシート材の裏面に画像形成する場合には、上記の動作を繰り返しおこなう。
【0010】
また、上述したようなスイッチバック方式以外にも、くわえ爪を有する枚葉紙運搬装置でシート材を挟持し、この枚葉紙運搬装置をメビウスの帯の形式で形成された運搬経路に沿って案内することによってシート材の反転をおこなうものも提案されている(特許文献1参照)。
【0011】
【特許文献1】特開平11−207927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来のスイッチバック方式のシート材反転装置においては、シート材を反転させる際に、シート材をスイッチバックさせるローラを停止及び逆回転させる必要があり、時間的な無駄が生じるという問題があった。
【0013】
また、シート材をスイッチバックさせる際に、一時的にシート材を取り込むガイドは、シート材全体がガイドを通過するまで占有されてしまうため、長さのある紙ほど取り込む際の時間が掛かり、両面印刷処理の際の生産性を向上させることが困難であった。
【0014】
また、シート材をメビウスの帯の形式で形成された運搬経路に沿って案内するシート材反転装置においては、くわえ爪によってシート材を挟持させるため、シート材の表面にくわえ爪の跡が残ったり、搬送時にくわえ爪にて挟持した以外の箇所でばたつきが生じ易い等の印刷成果物の品位を損なうという問題があった。
【0015】
そこで本発明は、シート材の反転処理効率を向上し、シート材の印刷成果物としての品質劣化を防ぐことが可能なシート材反転装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、シート材を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトを駆動する駆動手段と、前記搬送ベルトにシート材を吸着させる吸着手段と、を備え、前記搬送ベルトにおけるシート材を吸着する面が、搬送開始位置と搬送終了位置との間でねじれを有することにより、搬送されるシート材が所定の角度反転されることを特徴とするものである。
【0017】
好ましくは、前記所定の角度は、少なくとも搬送開始位置のシート材を表裏反転させるのに要する角度であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかるシート材反転装置及び画像形成装置によれば、シート材を搬送する搬送ベルトの面は搬送開始位置と搬送終了位置とで所定の角度ねじられており、この搬送ベルトにシート材を吸着させて搬送するので、シート材を反転させるのに要する時間を短縮して両面印刷処理の際の生産性を向上させることができる。
【0019】
また、メビウスの帯の形式で形成された運搬経路に沿ってシート材を反転させるものと比して、シート材が局所的に挟持されず、シート材全体が吸着されて搬送されるので、挟持した際の跡が残るなどの印刷の品質劣化を防ぐことができ、さらに、シート材搬送時のばたつき等が防止されるので搬送安定性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態にかかるシート材反転装置及び画像形成装置を図1乃至図 8に沿って説明する。
【0021】
図1は本実施の形態にかかる画像形成装置の側断面図、図2は本発明におけるシート材反転装置としての反転ユニットの斜視図、図3は本実施の形態にかかる反転ユニットの上面図、図4は本実施の形態にかかる反転ユニットの側面図、図5は本実施の形態にかかる反転ユニットの搬送開始位置の側面図、図6は本実施の形態にかかる反転ユニットの搬送終了位置の側面図、図7は本実施の形態にかかる吸着ベルトからシート材を分離する他の方法の側面図、図8は本実施の形態にかかるシート材を搬送している際の反転ユニットの斜視図である。
【0022】
画像形成装置1は、書籍や資料等の原稿を文字データや画像データ等として読み取る原稿読取部2と、原稿読取部2によって読み取った画像データをシート材(コピー用紙や光沢紙等)に転写形成する画像形成部3と、画像形成部3で用いるシート材を供給する給送部5と、画像形成部3にてシート材に転写されたトナー像を定着させる定着部6と、両面印刷する際のシート材の反転をおこなう両面部7とから構成される。
【0023】
原稿読取部2には、光源を有する走査光学部10が配置され、この走査光学部10は原稿台ガラス8に載置される原稿に対して光照射をおこなう。この際に生じる反射光は、走査光学部10の有する反射ミラーによって順に反射され、縮小レンズ11を介してCCD12等のイメージセンサにて読み取られる。このCCD12によって読み取られる光は光電変換され、ここで得られた画像データはさらにA/D変換等、画像処理されて不図示のメモリーやハードディスク等へと出力される。
【0024】
画像形成部3には、レーザ発光部13が配置されており、このレーザ発光部13は上述した原稿読取部2によって読み取られる画像データに基づいて、レーザドライバの制御を受けてレーザ光を発光する。このレーザ光は、不図示のポリゴンミラー面に照射され、ポリゴンミラーが回転することによって感光ドラム15の母線方向に走査される。そして、予め帯電器16によって帯電された感光ドラム15のドラム面に走査露光されることによって静電潜像が形成される。
【0025】
この静電潜像は、現像機17によって感光ドラム15に現像され、シート材には転写帯電器19によってトナー像が転写される。静電潜像の転写後に感光ドラム15の表面に残留するトナーはクリーニング器20によって除去される。上述した帯電器16、現像機17、転写帯電器19、クリーニング器20は、感光ドラム15に近接して設けられ、この順番で感光ドラム15の回転方向に配置される。
【0026】
なお、画像形成装置1では、画像形成部3において、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4つの色を連続的に配置し、各々読み込まれた画像データを各色に色分解して多重転写することでカラー画像の形成をおこなう。
【0027】
給送部5には、シート材を積載収納する給紙カセット21が設けられており、この給紙カセット21は着脱自在であり、画像形成装置1の下部に装着されている。そして、給紙カセット21の近接する位置にはピックアップローラ22が設置され、このピックアップローラ22に連結された不図示のソレノイドは、給紙の待機時にはON状態となり、ピックアップローラ22がシート材の表面から離間する。
【0028】
シート材を給送する際には、ソレノイドはOFF状態となり、ピックアップローラ22 は一番上のシート材の表面に接する。このピックアップローラ22が表面に接したシート材は、ピックアップローラ22が駆動することにより給送される。このときのピックアップローラ22は、タイミングベルトを介して搬送ローラ23から駆動力が伝達されることによって回転駆動する。
【0029】
このピックアップローラ22からの駆動を受けたシート材は、搬送ローラ23及びリタードローラ25によって挟持されて搬送される。搬送ローラ23はシート材の搬送方向に回転駆動され、リタードローラ25は不図示のトルクリミッタを介して搬送方向とは逆方向に回転駆動される。
【0030】
これにより、シート材が1枚送られる際には、シート材が両ローラ間に1枚しか挟持されないので、用紙とローラ間の摩擦力がリタードローラ25のトルクリミッタの駆動力に勝り、リタードローラ25は搬送方向に回転する。
【0031】
また、シート材が2枚以上重なって送られる際には、シート材が搬送ローラ23及びリタードローラ25に挟持される位置に達すると、用紙間の摩擦力はトルクリミッタに負けてリタードローラ25は搬送方向とは逆方向に回転するため、複数のシート材の最上位面の1枚のみが分離され、先行して給送される。
【0032】
すなわち、上述した機能により、ピックアップローラ22が複数のシート材を同時に搬送しようとする際には、複数のシート材の最上位面の1枚のみが先行して分離給送されることにより、給紙カセット21に積載収納されたシート材を1枚ずつ搬送することが可能となる。そして、1枚ずつ分離されたシート材は、この後、用紙位置合わせ部9に搬送される。
【0033】
定着部6には、トナー像をシート材に定着させる定着ローラ26と加圧ローラ27とが設けられており、これら定着ローラ26と加圧ローラ27とは、トナー像が転写されたシート材が搬送ベルト32を介して画像形成部3から搬送されてくると、熱及び圧力を印加することによってそのトナー像をシート材に定着する。
【0034】
そして、定着部6にて定着処理をおこなった後、通常用いられる画像形成モード(片面画像形成モード)の場合、シート材は外排出ローラ対4により画像形成装置1の機外に排出される。
【0035】
一方、両面画像形成モードの場合、シート材は定着ローラ26及び加圧ローラ27を通過した後、両面部7へと搬送される。
【0036】
この両面部7へと搬送されたシート材は、両面搬送パス29を通過して反転ユニット30(シート材反転装置)に導入される。さらに、再給送ローラ31により再び画像形成のために用紙位置合わせ部9に搬送され、以後、片面複写モードの場合と同様にして画像形成装置1の機外へと排出される。
【0037】
つぎに、本実施の形態における反転ユニット30について説明する。
【0038】
反転ユニット30には、シート材を吸着搬送させるための本発明の搬送ベルトとしての吸着ベルト33が、搬送開始位置にあるベルト駆動ローラ35と搬送終了位置にあるベルト駆動ローラ36との間に掛け合わされている。そして、このベルト駆動ローラ35の位置の吸着ベルト33の面と、ベルト駆動ローラ36の位置の吸着ベルト33の面とは、180度ねじれる形となっている。
【0039】
また、シート材の搬送開始位置では、吸着ベルト33を挟んでベルト駆動ローラ35に対向して押圧ローラ39が配置される。すなわち、この押圧ローラ39がベルト駆動ローラ35に対して所定の付勢力をかけることで、反転ユニット30に搬送されてくるシート材が吸着ベルト33に吸着される。なお、ベルト駆動ローラ35に対してかける付勢力は、ソレノイドやモータ等によってシート材の種類ごとにその大きさやかけ方等を制御させてもよい。
【0040】
そして、このベルト駆動ローラ35とベルト駆動ローラ36との中程であって、掛け合わされた吸着ベルト33の間には、ベルト同士が擦れ合わないようにするためのバックアップローラ37が配置される。
【0041】
なお、本実施の形態では省略しているが、本発明の駆動手段としてのベルト駆動ローラ35、36は、モータ等の駆動手段により駆動されて、適正な速度で吸着ベルト33を回転させる。また、吸着ベルト33の端部にリブを形成したり、ベルト駆動ローラ35,36のいずれか一方に吸着ベルト33のアラインメントを調整するステアリング機構を入れることでベルトの搬送性を向上させるようにしてもよい。
【0042】
一方、吸着ベルト33にシート材を吸着させる際の吸着力は、例えば静電気力を用いる。この静電気力を得るために吸着ベルト33を帯電させるには、図2に示すような本発明の制御手段としての帯電制御部40によって交流電源41を制御させ、ベルト駆動ローラ35,36及びバックアップローラ37に電流を供給することによって吸着ベルト33に静電気力を与えることができる。
【0043】
なお、静電気力を得るために、上述したようなベルト駆動ローラ35,36及びバックアップローラ37に電流を供給するとしてもよいが、吸着ベルト33に必要な吸着力が備わる程度の静電気力が得られるようにできれば、それら全てに電流を供給する必要はない。
【0044】
また、シート材を吸着する際に必要とする吸着力は、シート材の種類(例えば、坪量(単位面積あたりの重さ)、剛度、厚み等)によって異なる。これにより、利用するシート材の種類に応じた吸着力を帯電制御部40によって制御することで消費電力を削減することができるようになる。さらに、搬送されるシート材を不図示のセンサ等で識別することにより、シート材ごとに吸着力を制御させることで消費電力を削減することもできる。
【0045】
つぎに、本実施の形態における反転ユニット30の動作について説明する。
【0046】
シート材は、進入搬送ガイド42a,42bの間から搬送され、ベルト駆動ローラ35の帯電作用により吸着ベルト33の下部に吸着される。吸着ベルト33に吸着されたシート材は吸着ベルト33のねじれに沿って搬送終了位置へと導かれる。
【0047】
図6に示される反転ユニット30の搬送終了位置には排出搬送ガイド43a,43bが対抗して設けられている。排出搬送ガイド43aは、シート材が吸着ベルト33から離間するときに端部が跳ね上がってシート材の受け渡し不良が発生しないように、Lの長さ分だけオーバラップした状態で配置される。
【0048】
そして、吸着ベルト33からシート材を分離させる手段としては、ベルト駆動ローラ36の外径によって決まる吸着ベルト33の搬送終了位置における曲率と、シート材の持つ曲げに対する抵抗力とによって、吸着ベルト33に吸着させたシート材がその剛性のみで分離(曲率分離)する。すなわち、吸着ベルト33により吸着されて搬送されているシート材の剛性が吸着ベルトの吸着力よりも大きいため搬送終了位置においてシート材が回り込むことができずに吸着ベルト33の吸着面から分離することになる。
【0049】
ここで、吸着ベルト33からシート材を分離する手段の他の例を図7に示す。
【0050】
除電針45は、吸着ベルト33の吸着力を低減させて分離し、一方の分離爪46は強制的に吸着ベルト33とシート材とを爪分離させるものである。この分離爪46は、爪の回動中心46aを中心に回動可能に設置されており、不図示のねじりコイルばねにより吸着ベルト33に当接させる。
【0051】
すなわち、このような除電針45や分離爪46、或いは、前述した曲率分離等の分離方法は、吸着ベルト33及びシート材の搬送速度を変化させることなくシート材の反転をおこなうことができるものである。
【0052】
なお、図7においては、除電針45と分離爪46とを同時に実施した場合について説明しているが、これらは同時に実施する必要は無く、除電針45と分離爪46とを単体で使用してもよい。また、除電針45と分離爪46は、前述した曲率分離の補助的に用いてもよい。
【0053】
図8は、上述した図2乃至図7にて説明した反転ユニット30が実際にシート材を搬送している際の斜視図である。図8に示すように、シート材Sは進入搬送ガイド42aの側から表面(シート材の最初に画像形成された面)を上にして反転ユニット30に搬送される。
【0054】
搬送されたシート材Sは、ベルト駆動ローラ35が図2に示した矢印A方向に、ベルト駆動ローラ36が図2に示した矢印B方向に回転することで駆動される吸着ベルト33によって搬送される。このとき、バックアップローラ37は図2に示した矢印C方向に、押圧ローラ39は図2に示した矢印D方向に回転する。シート材Sは吸着ベルト33にその表面が吸着され、そのまま吸着ベルト33のねじれに沿って搬送終了位置へと導かれる。
【0055】
そして、シート材Sは、上述した吸着ベルト33とシート材との分離方法にて分離され、排出搬送ガイド43a,43bから次の搬送路へと受け渡される。このように、反転ユニット30を構成する吸着ベルト33の搬送開始位置と搬送終了位置では吸着ベルト33の面が180度反転しており、この吸着ベルト33によって搬送されることによって、シート材の反転がおこなわれる。なお、吸着ベルト33のねじれ方向と搬送方向とは、シート材Sが装置前方に来るように設定されるとよい。
【0056】
つぎに、本実施の形態における反転ユニットの他の例について説明する。図9は本実施の形態にかかる反転ユニットの他の例を示す斜視図である。他の図1と共通する構成については、図1と同じ符号を付し、図1の説明を援用する。
【0057】
前述した図1乃至図8においては、1本の吸着ベルト33を用いてシート材を反転させる方法について示した。しかし、1本の吸着ベルト33のみでシート材を180度反転させる必要はなく、図9に示すように2回に分割して反転させることで同様の効果を得ることができる。
【0058】
図9に示す反転ユニット47では、シート材Sは矢印Eの方向から搬送され、第1反転ユニット47aの吸着ベルト49により90度の反転処理がおこなわれる。このシート材Sは、第1反転ユニット47aを通過した後には、中間パス52を搬送ローラ51により支持されつつ搬送される。そして、第2反転ユニット47bへと搬送されると、さらに吸着ベルト50により90度の反転処理がおこなわれる。そして、合計180度の反転がおこなわれた後には、シート材Sは矢印Fの方向へと排出され、再度用紙位置合わせ部9へと搬送される。
【0059】
すなわち、以上のように反転処理を2回に分割することにより、反転させるために要する距離を短くすることができるので、装置の小型化を図ることが可能となる。なお、上述した反転ユニット47では吸着ベルトを2分割する例を示したが、分割する数は2回に限ることはなく、必要に応じて3回以上に分割してもよい。つまり、このように反転ユニットを分割した構成をとることで、大型のベルトを用いなくとも本発明の効果を享受できる。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態にかかる反転ユニット30によれば、シート材を搬送する吸着ベルト33は、ベルト駆動ローラ35とベルト駆動ローラ36との間に180度ねじれる形で掛け合わされており、この吸着ベルト33にシート材を吸着させて搬送するので、シート材の反転に要する時間を短縮して両面印刷処理の際の生産性を向上させることができるようになる。
【0061】
また、本実施の形態にかかる反転ユニット30によれば、吸着ベルト33にシート材を吸着させ、吸着ベルト33の面が搬送開始位置と搬送終了位置とで所定の角度ねじりながらシート材が搬送されることで反転に要する時間が短縮されるので、増速してシート材を搬送する必要がなくなるため、ローラなどによる汚損が軽減し、印刷成果物としての品質劣化を防ぐことができるようになる。
【0062】
また、本実施の形態にかかる反転ユニット30によれば、吸着ベルト33にシート材を吸着させて搬送させるので、シート材が局所的に挟持されず、挟持した際の跡が残るなどの印刷の品質劣化を防ぐことができ、さらに、搬送時のばたつき等を防ぐことで搬送安定性の向上を図ることができるようになる。
【0063】
また、本実施の形態にかかる反転ユニット30によれば、吸着ベルト33にシート材を吸着させて搬送させることによってシート材を反転させる時間を短縮することができるため、両面部7において増速して搬送させる必要がないので、駆動力の小さなモータを用いることができ、これにより、機内昇温や可動音の低減を図ることができるようになる。
【0064】
また、本実施の形態にかかる反転ユニット30によれば、吸着ベルト33にシート材を吸着させる際の吸着力である静電気力を、シート材の種類に応じて帯電制御部40によって制御することにより、消費電力の削減を図ることができるようになる。
【0065】
また、本実施の形態にかかる反転ユニット30によれば、シート材を搬送する吸着ベルト33の面は搬送開始位置と搬送終了位置とで所定の角度ねじられており、この吸着ベルト33にシート材を吸着させて搬送するので、スイッチバック方式のシート材反転装置等と比較して、シート材を反転させるのに要する空間を節約でき、シート材反転装置及びそれを用いる画像形成装置の小型化を図ることができるようになる。
【0066】
なお、以上で説明した、実施の形態においては、1本の吸着ベルト33でシート材を反転させる場合、及び、吸着ベルト49と吸着ベルト50との2本を用いてシート材を反転させる場合において、それぞれ反転させる角度は180度として説明をおこなったが、180度に限ることはなく、反転させた後のシート材の処理内容や搬送路の形状などによって所望の角度にさせることができる。また、このことは、吸着ベルトを3本以上用いる場合においても同様である。
【0067】
また、以上で説明した、実施の形態においては、反転ユニット30(シート材反転装置)を有する画像形成装置1を、カラー画像形成装置として説明をおこなったが、シート材の両面印刷をおこなうことができるものであれば白黒専用の画像形成装置であってもよい。
【0068】
また、本実施の形態においては、反転ユニット30を有する画像形成装置1が原稿読取部2で読み取った画像データの画像形成をおこなうとして説明をおこなったが、ネットワーク接続に対応する画像形成装置であれば、他の画像形成装置やパーソナルコンピュータ等の情報端末からインターネット、LAN、無線LAN等のネットワークを介して送られる画像データの画像形成をおこなうものであってもよい。
【0069】
また、本実施の形態においては、吸着ベルト33が擦れ合わないように設けるバックアップローラ37を1つだけ用いる構成として説明したが、複数用いることで吸着ベルト33のシート材搬送時の形状や搬送動作をさらに安定化させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明にかかるシート材反転装置及び画像形成装置は、シート材の両面印刷をおこなう際に有用であり、特に、両面印刷時の画像形成処理の高速化が要求されるものに適している。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施の形態にかかる画像形成装置の側断面図。
【図2】本発明におけるシート材反転装置としての反転ユニットの斜視図。
【図3】本実施の形態にかかる反転ユニットの上面図。
【図4】本実施の形態にかかる反転ユニットの側面図。
【図5】本実施の形態にかかる反転ユニットの搬送開始位置の側面図。
【図6】本実施の形態にかかる反転ユニットの搬送終了位置の側面図。
【図7】本実施の形態にかかる吸着ベルト33からシート材を分離する他の方法の側面図。
【図8】本実施の形態にかかるシート材を搬送している際の反転ユニットの斜視図。
【図9】本実施の形態にかかる反転ユニットの他の例を示す斜視図。
【図10】両面画像形成モードを備える従来のスイッチバック方式のシート材反転装置の構成を示す側断面図。
【符号の説明】
【0072】
1 画像形成装置
3 画像形成部
30 反転ユニット(シート材反転装置)
33,49,50 吸着ベルト(搬送ベルト)
35,36 ベルト駆動ローラ(駆動手段)
40 帯電制御部(制御手段)
41 交流電源(吸着手段)
45 除電針(分離手段)
46 分離爪(分離手段)
S シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトを駆動する駆動手段と、
前記搬送ベルトにシート材を吸着させる吸着手段と、を備え、
前記搬送ベルトにおけるシート材を吸着する面が、搬送開始位置と搬送終了位置との間でねじれを有することにより、搬送されるシート材が所定の角度反転されることを特徴とするシート材反転装置。
【請求項2】
前記所定の角度は、搬送開始位置のシート材を表裏反転させるのに要する角度であることを特徴とする請求項1に記載のシート材反転装置。
【請求項3】
前記搬送ベルトは、シート材の搬送方向に沿ってシート材を搬送する少なくとも2つの前記搬送ベルトを備え、
これら複数の搬送ベルトのねじれの角度を全て足し合わせると搬送開始位置のシート材を表裏反転させるのに要する角度となることを特徴とする請求項1に記載のシート材反転装置。
【請求項4】
前記吸着手段は、静電吸着により前記搬送ベルトにシート材を吸着させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシート材反転装置。
【請求項5】
前記吸着手段は、シート材の種類により吸着力を制御する制御手段を有することを特徴とする請求項4に記載のシート材反転装置。
【請求項6】
前記搬送ベルトに吸着したシート材を前記搬送終了位置で前記搬送ベルトから分離する分離補助手段を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のシート材反転装置。
【請求項7】
画像形成部と、
前記画像形成部により一面目に画像が形成されたシート材を再度前記画像形成部に搬送するための両面搬送パスと、を備え、
前記両面搬送パスに、請求項1乃至6のいずれかに記載のシート材反転装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−103855(P2006−103855A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291404(P2004−291404)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】