説明

シート材移載装置及びシート材移載方法

【課題】生地裁断装置等において、可及的にサイクルタイムの短縮化が図れるようにする。
【解決手段】シート材Wを広げた状態で支持する移載前台部2と、移載前台部2から移載方向に離れて設けられた移載後台部3と、これら両台部2,3の上方間を移動自在に設けられたスライドテーブル4と、スライドテーブル4が移載前台部2から移載後台部3へ向けて移動するときに当該スライドテーブル4上を一体的に随伴するシート押下部材7と、スライドテーブル4を両台部2,3の上方間で往復移動させる送り駆動手段6とを有し、スライドテーブル4には移載後台部3から移載前台部2へ向けて移動するときに移載前台部2上に支持されたシート材Wと移載前台部2との上下間へ挿入可能なすくい部15が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材移載装置及びシート材移載方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生地を定尺切りしたり所定形状に切り出したりするための生地裁断装置では、フェルト製ベルト等を備えた広幅のベルトコンベアにより、生地(以下、「シート材」と言う)を広げた状態のまま裁断位置へ搬入し、裁断後にはそのままベルトコンベアで搬出させるようになっている。
このような生地裁断装置の下流位置には、上面が滑りやすいテーブル面とされた移載台をベルト上面と面一に設けると共に、上記ベルトコンベアの搬出部上方から移載台の上方にわたりオーバーラップする状態で移送コンベアを設けておき、この移送コンベアでベルトコンベア上のシート材を移載台へ乗り移らせてから移載台を後方へ引き抜いて、移載台の下方へシート材を落として積層させる、といったシステムが採用されていることがある(例えば特許文献1等参照)。
【0003】
ところで、裁断後のシート材の大きさ(ベルトコンベア上を占有する面積)は、裁断パターンにより異なり、搬送方向に長いものもあれば短いものもある。ベルトコンベアによる搬送速度は一定であり、裁断位置から搬出位置(移載台への乗り移り位置)までの距離も固定であるから、この裁断位置から搬出位置までの距離は、種々の裁断パターンのうちで最大長さとなるものを基準として決められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−68599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来の生地裁断装置において、そのサイクルタイムは、搬入時間、裁断時間、搬出及び移載時間、積層時間の総合計となる。このサイクルタイムを可及的に短縮したいという要請がある。ところがこの要請に応えるのは、以下の事情により困難とされていた。
すなわち、ベルトコンベアから移載台上へシート材を乗り移らせるに際しては、ベルトコンベアと移送コンベアとを略同期させるように駆動させ、それら上下間で裁断された各シート材の先端を挟持させることになる。従って当然に、裁断後の全てのシート材が移載台に乗り移るまでベルトコンベアは駆動させておく必要があり、この間、裁断位置において次の裁断を行うことはできない。ここに、裁断時間に無駄(待ち時間)が含まれていると言うことができる。
【0006】
また、前記したように裁断位置から搬出位置までの距離は固定であるから、裁断後のシート材の大きさが搬送方向で短いもの(以下、「短いシート材」と言う)は、長いものに比して搬送距離が無用に長いことになり、その分、搬送時間に無駄が含まれていると言うことができる。なお、短いシート材は一般に裁断に係る処理時間も短いから、全体のサイクルタイムに占める搬送時間は相対的に大きく、それだけ無駄時間の占める割合も大きいと言うことができる。
【0007】
更に言えば、積層時間はシート材の大きさに関係なく一定であるが、裁断時間は、短いシート材やカット距離が短い場合などには相応に短くなるから、裁断が終了しても積層時間に合わせた待ち時間が発生することがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、例えば生地裁断装置など、シート材を対象とした処理と搬送とを行う装置において、可及的にサイクルタイムの短縮化が図れるようにしたシート材移載装置及びシート材移載方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係るシート材移載装置は、シート材を広げた状態で支持する移載前台部
と、この移載前台部から移載方向に離れて設けられた移載後台部と、これら移載前台部と移載後台部との上方間を移動自在に設けられたスライドテーブルと、このスライドテーブルが少なくとも移載前台部から移載後台部へ向けて移動するときに当該スライドテーブル上を一体的に随伴してスライドテーブルの上面との間でシート材を挟持可能にするシート押下部材と、スライドテーブルを移載前台部と移載後台部との上方間で往復移動させる送り駆動手段と、を有し、上記スライドテーブルには移載後台部から移載前台部へ向けて移動するときに移載前台部上に支持されたシート材と移載前台部との上下間へ挿入可能なすくい部が設けられている。
【0009】
なお、移載前台部は、シート材を前工程から搬入するベルトコンベアの上向きベルト面により形成することができる。
また、シート押下部材は、移載前台部の上方と移載後台部の上方との間にわたって設けられたベルトコンベアの下向きベルト面により形成することができる。
この場合、シート押下部材の形成に用いられるベルトコンベアには方向規制手段が設けられており、この方向規制手段によってシート押下部材は、移載前台部の上方から移載後台部の上方へ向かう一方向でしか移動しないように規制されるものとするのが好適である。
【0010】
この方向規制手段は、例えば、ベルトコンベアを架け渡すローラーに対して回転方向を一方向に規制するワンウエイクラッチとすればよい。
また、移載後台部は、シート材の受け入れに合わせて昇降可能な昇降台を有したシート材積層装置とすることができる。
このような構成であると、移載前台部上のシート材をスライドテーブルによってすくい上げ、その後、このスライドテーブルが移動して、シート材を移載後台部へと搬送するようになっているので、この間、移載前台部は静止状態とすることができる。従って、この移載前台部に対し、その上流位置に予め、次位シート材を支持させておき、この次位シート材に対してその他の処理を並行して施すことが可能となる。そのため、時間の有効活用ができることになる。
【0011】
シート押下部材は、送り駆動手段の駆動力でスライドテーブルと随伴移動が可能なものとしてもよいし、或いは、独自の駆動手段を有したものとしてもよい。
シート押下部材が独自の駆動手段を有するものである場合には、スライドテーブルが移載後台部の上方で停止しているときにスライドテーブル上からシート材の掻き出し駆動が可能となる。
【0012】
一方、本発明に係るシート材移載方法は、シート材を広げた状態で移載前台部上に支持させ、移載前台部上に支持されたシート材と移載前台部との上下間へ挿入可能なすくい部を有するスライドテーブルを上記移載前台部上方へ移動させ、スライドテーブルの上面にシート材がすくい上げられた状態でシート材の上部をシート押下部材で押下してスライドテーブルの上面との間でシート材を挟持させる。
【0013】
そして、これらスライドテーブルとシート押下部材とを一体的に随伴させて移載後台部上方へ移動させ、移載後台部上方でスライドテーブル及びシート押下部材を停止させ、移載後台部上方からスライドテーブルのみを移載前台部上方へ移動させることによりスライドテーブル上のシート材を移載後台部へ送り渡すようにする。
なお、移載前台部上のシート材をスライドテーブルの上面にすくい上げた段階から、その後に移載後台部上方へ移動させたスライドテーブルを再び移載前台部上方へ移動させ始める段階までの間に、移載前台部上へ次位シート材を支持させておき、移載後台部上方のスライドテーブルを移載前台部上方へ移動させる動作により、当該スライドテーブル上のシート材を移載後台部へ送り渡すと共に、移載前台部上の次位シート材をスライドテーブル上へすくい上げるようにすればよい。
【0014】
また、シート押下部材は、スライドテーブルが移載後台部上方から移載前台部上方へ移動する前に移載前台部上方で待機させておき、スライドテーブルの上面にシート材がすくい上げられるときにシート押下部材でシート材をスライドテーブルの上面へ押し付けるようにすればよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るシート材移載装置及びシート材移載方法では、例えば生地裁断装置など、シート材を対象とした処理と搬送とを行う装置において、可及的にサイクルタイムの短縮化が図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るシート材移載装置の第1実施形態を示した側面図である。
【図2】ニップ手段を拡大して示した側面図である。
【図3】ピンチローラーを拡大して示した側面図である。
【図4】本発明に係るシート材移載方法の最初の動作状況を説明した側面図である。
【図5】図4に続く動作状況を説明した側面図である。
【図6】図5に続く動作状況を説明した側面図である。
【図7】図6に続く動作状況を説明した側面図である。
【図8】本発明に係るシート材移載装置の第2実施形態を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至図7は、本発明に係るシート材移載装置1の第1実施形態を示している。図1に示すように、このシート材移載装置1は、シート材Wを広げた状態で支持する移載前台部2と、この移載前台部2から移載方向に離れて設けられた移載後台部3と、これら両台部2,3の上方間を移動自在に設けられたスライドテーブル4とを有している。
【0018】
また、このスライドテーブル4に対しては、移載前台部2と移載後台部3との上方間を往復移動させるための送り駆動手段6が設けられており、また少なくとも移載前台部2から移載後台部3へ向けて移動するときに、スライドテーブル4の上面との間でシート材Wを挟持可能にするシート押下部材7が設けられている。
本第1実施形態において移載前台部2は、シート材Wを前工程11から搬入するベルトコンベア10の上向きベルト面10aにより形成されている。前工程11は、例えばシート材Wを定尺切りしたり所定形状に切り出したりする裁断装置12を具備したもの等とすればよい。すなわち、移載前台部2はベルトコンベア10の搬出端位置に相当する。
【0019】
また移載後台部3は、シート材Wを広げた状態のまま支持可能な昇降台13を有し、この昇降台13をシート材Wの受け入れに合わせて昇降可能にしたシート材積層装置を構成している。昇降台13を昇降駆動させるモータ14には例えばステッピングモータ等が用いられており、昇降台13上にシート材Wが積層される量(高さ)が変わっても、最上部に積層されたシート材Wの上面からその上方のスライドテーブル4までの高さを略一定に保持させることができるように、高精度の昇降制御が可能となっている。
【0020】
スライドテーブル4は、例えばアルミ板やステンレス板、プラスチック板など、摩擦係数の小さな素材で形成されたものであって、その上面が平滑で滑りやすく、且つシート材Wを広げた状態で支持することができる大きさを有している。このスライドテーブル4は、例えば移載前台部2と移載後台部3との上方間にわたり、所定高さで水平に設けられたガイドレール(図示略)に対し、テーブル両脇を預けるようにしつつ水平移動自在な状態で保持されている。
【0021】
このスライドテーブル4には、移載後台部3から移載前台部2へ向けて移動するときに、その移動方向の先端となる部分にすくい部15が設けられている。このすくい部15は、スライドテーブル4のテーブル上面から上記移動方向の先方へ向けて徐々に下り傾斜になっており、先端位置では移載前台部2の上面にごく近接するか又は軽く接触した状態となっている。
【0022】
そのため、移載前台部2上にシート材Wが支持されている状態で、このスライドテーブル4が移載後台部3から移載前台部2へ向けて移動すると、このすくい部15がシート材Wと移載前台部2との上下間へ挿入され、シート材Wをスライドテーブル4のテーブル面上へすくい上げるようになる。
スライドテーブル4を移動させる送り駆動手段6は、例えば、移載前台部2と移載後台部3との間に掛け渡されたエンドレスベルト17をモータ18により駆動させるもので、
エンドレスベルト17の一部とスライドテーブル4とが連結されている。モータ18の正転と逆転を切り換えることにより、移載後台部3の上方部と移載前台部2の上方部との間でスライドテーブル4を往復移動させることができる。
【0023】
図例では、スライドテーブル4の上方にエンドレスベルト17が水平状態に架け渡され、このエンドレスベルト17の下張り部から支持枠20が吊り下げられ、この支持枠20に対してスライドテーブル4が設けられたものとしてある。
なお、この支持枠20には、スライドテーブル4のすくい部15に対応する配置で、移載前台部2を形成しているベルト部分を下から抱えるように支持するピンチローラー21が設けられている。このピンチローラー21を設けることでベルトの撓みが防止され、移載前台部2(ベルトコンベア10の上向きベルト面10a)とすくい部15との上下位置関係が不変に保持されるようになっている。
【0024】
図3に示すように、このピンチローラー21は、支持枠20に対して接離自在に保持された移動ブラケット36に設けられている。移動ブラケット36は、リニアガイドなどのガイドレール機構37によって直線的に接離動作するようになっている。また、支持枠20と移動ブラケット36との間にはリターンバネ38が設けられており、このリターンバネ38によって、移動ブラケット36は戻り方向(支持枠20へ近接する方向)へ向けて引張付勢されている。
【0025】
また、スライドテーブル4が移載後台部3へ向けて移動するとき、移載前台部2を形成しているベルトコンベア10の搬出端側の架設プーリー40にピンチローラー21が接触する前に、適所に設けたストッパ(図示略)等に移動ブラケット36が当て止めされるようになっているものとする。
従って、移動ブラケット36が当て止めされることで、その後もスライドテーブル4が移動を続ければ支持枠20から移動ブラケット36がリターンバネ38のバネ力に抗しながら離反し、ピンチローラー21と搬出端側の架設プーリー40との衝突が避けられるようになっている。
【0026】
なお、ガイドレール機構37としてロッドレスシリンダ等の駆動機構を採用し、支持枠20に対する移動ブラケット36の接離動作を、位置センサ等からの検出信号に基づいて積極的に駆動させるようにしてもよい。
シート押下部材7は、スライドテーブル4の上面との間にシート材Wを挟持できるようにしたもので、下向きに平面であり、且つスライドテーブル4の上面よりも摩擦係数が若干、大きくなっている。
【0027】
本第1実施形態では、移載前台部2の上方と移載後台部3の上方、及びそれらの相互間を含めた領域にわたるように、複数のローラー25によってベルトコンベア23を架け渡し、このベルトコンベア23の下向きベルト面23bでシート押下部材7を形成させるものとしてある。
ベルトコンベア23には方向規制手段39が設けられたものとしてある。この方向規制手段39は、ベルトコンベア23を架け渡すローラー25のうち、いずれか一つ又は全部に対して、その回転方向を一方向に規制するワンウエイクラッチとされている。
【0028】
このような方向規制手段39が設けられることで、ベルトコンベア23は、下向きベルト面23b(即ち、シート押下部材7)が、移載前台部2の上方から移載後台部3の上方へ向かう一方向でしか移動しないように規制されている。
すなわち、移載前台部2上のシート材Wをスライドテーブル4上へすくい上げるに際してスライドテーブル4を移載後台部3側から移載前台部2側へ移動させても、シート押下部材7はこの移動に随伴することなく、停止状態を保持する。
【0029】
従ってシート材Wは、スライドテーブル4の移動で当該スライドテーブル4上にすくい上げられた箇所から順次、シート押下部材7側に張り付いてせき止められる状態となり、スライドテーブル4の上面との間では、より確実で円滑な滑りを生じるようになる。このようにして、シート材Wのすくい上げは確実に行えるものとなる。
方向規制手段39は、ローラー25の回転方向を一方向に規制するワンウエイクラッチとする上記構造の他、例えば、ベルトコンベア23におけるベルトの一部をクランプ等で
挟持して、一方向への移動時にのみブレーキをかける(他方向への移動時はクランプ等の挟持を開放させる)ような構造として構成することもできる。
【0030】
なお、ベルトコンベア23の架け渡しに用いるローラー25の一つとして、スライドテーブル4のすくい部15に寄り添う配置で先端ガイドローラー25aを設けてある。これによりベルトコンベア23には、すくい部15の下り傾斜に沿うように下方への曲がりを生じたベルト部分が生じている。
この先端ガイドローラー25aは、スライドテーブル4を保持する支持枠20に対して回転自在に設けられており、スライドテーブル4との相対的な位置関係は変化しない。すなわち、スライドテーブル4がどのように移動しようと、この先端ガイドローラー25aは常にスライドテーブル4と随伴してすくい部15に対するベルトの沿接状態を保持するようになっている。
【0031】
このようなことから、ベルトコンベア23が先端ガイドローラー25aに巻き付いた状態としての下端位置と、移載前台部2の上面(ベルトコンベア10の上向きベルト面10aに同じ)との上下隙間を、シート材Wが接触干渉しない寸法に確保できる。またそのうえで、すくい部15に対するベルトコンベア23の沿接状態を確実に維持できるものである。
【0032】
このシート押下部材7は、一方で、スライドテーブル4がシート材Wをすくい上げた後に、移載前台部2の上方から移載後台部3の上方まで移動する際には、当該スライドテーブル4の上面との間でシート材Wを不動の状態に挟持しておく必要がある。
そのためこのシート押下部材7は、スライドテーブル4が移載前台部2の上方から移載後台部3の上方まで移動する際には、このスライドテーブル4と随伴移動するもの(スライドテーブル4とシート押下部材7とは相対移動しない状態)となっている。
【0033】
シート押下部材7とスライドテーブル4との随伴移動を可能にするため、本第1実施形態では、スライドテーブル4を保持する支持枠20に対してニップ手段45を設けてある。図2に示すように、このニップ手段45は、シート押下部材7の上部に配置した枢軸部46を支点として、その下方で押圧部材47を揺動可能に設けたものとしてある。
押圧部材47の揺動は、例えばモータやソレノイド、或いはエアアクチュエータ等によって直接又は歯車機構等を介して間接的に駆動すればよい。
【0034】
この押圧部材47は、シート押下部材7を下方へ撓ませてシート材Wをスライドテーブル4の上面へ押し付ける押下位置と、シート押下部材7の下方への撓みを回復させる(二点鎖線で示すようにシート材Wから浮き上がらせる)待機位置との間を揺動駆動される。
すなわち、送り駆動手段6がスライドテーブル4を移載前台部2の上方から移載後台部3の上方まで移動させる際にこのニップ手段45を作動させ、押圧部材47を押下位置へ揺動させると、シート押下部材7がシート材Wを介してスライドテーブル4を押圧するようになる。
【0035】
そのため、スライドテーブル4の移動推進力(送り駆動手段6の駆動力)がシート押下部材7にまで伝わるようになり、シート押下部材7とスライドテーブル4とが随伴移動するようになる。
なお、本実施形態において押圧部材47の押下位置は、スライドテーブル4上にすくい上げられたシート材Wに対してその先端位置(移載後台部3へ向く端部)に対応するように位置決めしてあるが、これに限定されず、スライドテーブル4の上面内であればどこでもよい。
【0036】
また、図例では押圧部材47が側面視円形を呈するものとしてあるが、これは枢軸部46を支点とした揺動でスライドテーブル4の上面に対する接離が円滑に行われるようにするための措置であって、この押圧部材47がフリーローラの如き自在回転をするということではない。
次に、上記シート材移載装置1の動作状況に基づき、本発明に係るシート材移載方法を説明する。
【0037】
図4に示すように、移載前台部2の上流位置となる前工程11で、例えば裁断装置12などによってシート材Wに処理が施され、これが完了すると、ベルトコンベア10の駆動
によって処理後のシート材Wが移載前台部2へ搬入される。シート材Wが移載前台部2上に到達した時点でこのベルトコンベア10は停止する。
このときのベルトコンベア10の駆動で、二点鎖線で示すように、次位シート材W2(ここでは未処理のもの)が前工程11へ同時並行して搬入される。
【0038】
なお、このときスライドテーブル4は移載後台部3の上方にて待機しているものとする。図4では、このスライドテーブル4の上面に前サイクルですくい上げ、移載後台部3の上方まで移載したシート材W0が支持されている様子を示してある。
図5に示すように、ベルトコンベア10の停止後、移載後台部3の上方で待機していたスライドテーブル4が送り駆動手段6の作動により、移載前台部2の上方へ向けて移動する。スライドテーブル4のすくい部15が移載前台部2上のシート材Wに遭遇する位置まで移動すると、このすくい部15がシート材Wと移載前台部2との上下間へ挿入される。
【0039】
このときシート押下部材7は停止状態を保持している。スライドテーブル4が移載前台部2の上方へ更に進出してゆくと、すくい部15に沿ってすくい上げられるシート材Wがシート押下部材7と接触し始める。
スライドテーブル4の上面に比してシート押下部材7の下面の方が摩擦係数が大きいため、シート押下部材7に接触したシート材Wはせき止め作用を受け、位置ズレを起こすことはなく、当該シート材Wの下方へスライドテーブル4が差し込まれてゆくようになる。
【0040】
なお、このようにスライドテーブル4が移載前台部2の上方へ進出してゆくとき、スライドテーブル4上に前サイクルですくい上げられていたシート材W0は、同じく、スライドテーブル4の上面に比してシート押下部材7の下面の方が摩擦係数が大きいことが要因となり、シート押下部材7に接触したまませき止め作用を受けるので、スライドテーブル4上から抜け出してその下方の移載後台部3上(昇降台13上)へと積層されることになる。
【0041】
かくして、図6に示すように、前サイクルのシート材W0はスライドテーブル4上から移載後台部3へと完全に送り渡され、代わりに、移載前台部2上のシート材Wがスライドテーブル4上に完全にすくい上げられることとなる。そしてこのスライドテーブル4上にすくい上げられたシート材Wは、スライドテーブル4とシート押下部材7との上下間で挟持される。
【0042】
この間、前工程11では、裁断装置12等による次位シート材W2への処理が進められる。
次に、スライドテーブル4は送り駆動手段6の駆動によって、移載前台部2の上方から移載後台部3へ向けて移動を開始するが、このときニップ手段45(図2参照)が作動し、スライドテーブル4とシート押下部材7とがそれらの両者間にシート材Wを挟持したまま、三者一体となって移載後台部3へ向けて移動する。
【0043】
図7に示すように、移載後台部3の上方にスライドテーブル4及びシート押下部材7が到達した時点で、送り駆動手段6はスライドテーブル4を停止させる。また、ニップ手段45もシート押下部材7の押下を解放する動作を行う。
この段階で、移載前台部2上にはシート材Wが存在していないので、ベルトコンベア10を駆動させ、前工程11において裁断装置12などにより処理が完了している次位シート材W2を移載前台部2上に搬入させておく。
【0044】
そして次に、送り駆動手段6の駆動により、スライドテーブル4を移載後台部3の上方から移載前台部2へ向けて移動させる。スライドテーブル4上のシート材Wは、シート押下部材7による摩擦を受けて停止状態を維持しようとするから、結果として、スライドテーブル4のみが移載前台部2へ移動するようにする。
そのため、スライドテーブル4上のシート材Wは、その下方の移載後台部3上(昇降台13上)へと積層されることになる。以降は、次のサイクル動作が繰り返されることになる。
【0045】
このように、移載前台部2上のシート材Wをスライドテーブル4によってすくい上げ、その後、このスライドテーブル4が移動して、シート材Wを移載後台部3へと搬送するようになっているので、この間、移載前台部2は静止状態とすることができる。従って、こ
の移載前台部2に対し、その上流位置に予め、次位シート材W2を支持させておき、この次位シート材W2に対してその他の処理を並行して施すことが可能となる。そのため、時間の有効活用ができることになる。
【0046】
なお、本発明に係るシート材移載装置1及びシート材移載方法では、シート材Wを移載前台部2からスライドテーブル4へ乗り移らせる場合に、シート材Wを吸引する方法を採用したものではないので、吸引失敗による作業の停滞や復旧作業は不要となり、労力及び時間のロスを解消できるという副次的効果が得られる。また、吸引装置を必須不可欠とするものではないことから、設備的な大型化の抑制、消費電力の抑制などが図れる利点もある。
【0047】
また、スライドテーブル4をベルトコンベア10の搬送方向に対して平面視直交方向へ移動させる必要がないので、装置全体としての占有面積をコンパクトにできるという副次的効果もある。
図8は、本発明に係るシート材移載装置1の第2実施形態を示している。本第2実施形態のシート材移載装置1が第1実施形態と最も異なるところは、シート押下部材7が独自の駆動手段50を有している点にある。なお、この駆動手段50が設けられる代わりに、ニップ手段45は省略されている。
【0048】
シート押下部材7に対してこのような駆動手段50が設けられていると、スライドテーブル4の動作と別個独立してシート押下部材7を駆動させることができることから、スライドテーブル4が移載後台部3の上方で停止しているときに(図7に示したような状況下)、この駆動手段50を駆動させれば、スライドテーブル4上からシート材Wの掻き出し駆動が可能となる。
【0049】
そのため、スライドテーブル4上のシート材Wが不良品であったような場合に、誤って移載後台部3へ移載し、他の良品のシート材Wと混同させてしまうことを防止できる。
〔その他〕
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
【0050】
例えば、スライドテーブル4において、すくい部15が傾斜する角度は特に限定されるものではない。場合によっては、板厚を薄く形成させるなどとして、傾斜させないものとしてもよい。また、移載前台部2の下方からシート材Wへエアを吹き付けたり、反対に移載前台部2の上方でシート材Wを吸引したりすることで、スライドテーブル4上へシート材Wがすくい上げられるきっかけを与えるようにしてもよい。
【0051】
前工程11は、裁断装置12を具備するものに限らず、例えば印刷装置や糊付け装置などを具備する工程や検査工程などの他、単に、シート材Wを移載前台部2に対して供給するための工程として存在させるものでもよい。
シート材Wは生地であることが限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
1 シート材移載装置
2 移載前台部
3 移載後台部
4 スライドテーブル
6 送り駆動手段
7 シート押下部材
10 ベルトコンベア
10a 上向きベルト面
11 前工程
13 昇降台
15 すくい部
23 ベルトコンベア
23b 下向きベルト面
39 方向規制手段
50 駆動手段
W シート材
W2 次位シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材(W)を広げた状態で支持する移載前台部(2)と、
この移載前台部(2)から移載方向に離れて設けられた移載後台部(3)と、
これら移載前台部(2)と移載後台部(3)との上方間を移動自在に設けられたスライドテーブル(4)と、
このスライドテーブル(4)が少なくとも移載前台部(2)から移載後台部(3)へ向けて移動するときに当該スライドテーブル(4)上を一体的に随伴してスライドテーブル(4)の上面との間でシート材(W)を挟持可能にするシート押下部材(7)と、
スライドテーブル(4)を移載前台部(2)と移載後台部(3)との上方間で往復移動させる送り駆動手段(6)と、を有し、
上記スライドテーブル(4)には移載後台部(3)から移載前台部(2)へ向けて移動するときに移載前台部(2)上に支持されたシート材(W)と移載前台部(2)との上下間へ挿入可能なすくい部(15)が設けられている
ことを特徴とするシート材移載装置。
【請求項2】
前記移載前台部(2)は、シート材(W)を前工程(11)から搬入するベルトコンベア(10)の上向きベルト面(10a)により形成されていることを特徴とする請求項1記載のシート材移載装置。
【請求項3】
前記シート押下部材(7)は、移載前台部(2)の上方と移載後台部(3)の上方との間にわたって設けられたベルトコンベア(23)の下向きベルト面(23a)により形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のシート材移載装置。
【請求項4】
前記シート押下部材(7)の形成に用いられるベルトコンベア(23)には方向規制手段(39)が設けられており、この方向規制手段(39)によってシート押下部材(7)は、移載前台部(2)の上方から移載後台部(3)の上方へ向かう一方向でしか移動しないように規制されることを特徴とする請求項3記載のシート材移載装置。
【請求項5】
前記方向規制手段(39)は、ベルトコンベア(23)を架け渡すローラー(25)に対して回転方向を一方向に規制するワンウエイクラッチであることを特徴とする請求項4記載のシート材移載装置。
【請求項6】
前記移載後台部(3)は、シート材(W)の受け入れに合わせて昇降可能な昇降台(13)を有したシート材積層装置であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のシート材移載装置。
【請求項7】
前記シート押下部材(7)は、送り駆動手段(6)の駆動力でスライドテーブル(4)と随伴移動が可能とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のシート材移載装置。
【請求項8】
前記シート押下部材(7)は独自の駆動手段(50)を有しており、スライドテーブル(4)が移載後台部(3)の上方で停止しているときにスライドテーブル(4)上からシート材(W)の掻き出し駆動が可能となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のシート材移載装置。
【請求項9】
シート材(W)を広げた状態で移載前台部(2)上に支持させ、
移載前台部(2)上に支持されたシート材(W)と移載前台部(2)との上下間へ挿入可能なすくい部(15)を有するスライドテーブル(4)を上記移載前台部(2)上方へ移動させ、
スライドテーブル(4)の上面にシート材(W)がすくい上げられた状態でシート材(W)の上部をシート押下部材(7)で押下してスライドテーブル(4)の上面との間でシート材(W)を挟持させ、
これらスライドテーブル(4)とシート押下部材(7)とを一体的に随伴させて移載後台部(3)上方へ移動させ、
移載後台部(3)上方でスライドテーブル(4)及びシート押下部材(7)を停止させ、
前記移載後台部(3)上方からスライドテーブル(4)のみを移載前台部(2)上方へ移動させることによりスライドテーブル(4)上のシート材(W)を移載後台部(3)へ送り渡す
ことを特徴とするシート材移載方法。
【請求項10】
移載前台部(2)上のシート材(W)をスライドテーブル(4)の上面にすくい上げた段階から、その後に移載後台部(3)上方へ移動させたスライドテーブル(4)を再び移載前台部(2)上方へ移動させ始める段階までの間に、移載前台部(2)上へ次位シート材(W2)を支持させておき、
移載後台部(3)上方のスライドテーブル(4)を移載前台部(2)上方へ移動させる動作により、当該スライドテーブル(4)上のシート材(W)を移載後台部(3)へ送り渡すと共に、移載前台部(2)上の次位シート材(W2)をスライドテーブル(4)上へすくい上げる
ことを特徴とする請求項9記載のシート材移載方法。
【請求項11】
前記シート押下部材(7)は、スライドテーブル(4)が移載後台部(3)上方から移載前台部(2)上方へ移動する前に移載前台部(2)上方で待機させておき、
スライドテーブル(4)の上面にシート材(W)がすくい上げられるときにシート押下部材(7)でシート材(W)をスライドテーブル(4)の上面へ押し付ける
ことを特徴とする請求項9又は請求項10記載のシート材移載方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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