説明

シート材給送装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】めくり動作を伴う静電搬送方式で、めくり角度を大きくすることが容易で、かつ、めくり角度を大きくした場合に必要な長さのベルト平坦部分を得ることが容易な構成を提供する。
【解決手段】ベルト押出ローラ36を、下側ベルト張架部分Bを内周側から押し出して屈曲させることにより下側ベルト張架部分の吸着部分B1をシート束Sの上面と平行な状態にする吸着位置に移動させた状態で、その吸着部分に最上位シートS1の先端部分を吸着させた後、ベルト押出ローラを、下側ベルト張架部分を押し出さずに下側ベルト張架部分全体を平坦な状態に維持する送出位置へ移動させ、誘電体ベルトの表面移動により最上位シートを送り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体ベルト表面上に形成される電位パターンによる電界の作用によって誘電体ベルト表面にシート束の最上位シート材を吸着させ、その誘電体ベルトの表面移動により当該最上位シート材を送り出すシート材給送装置、及び、これを備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式、インクジェット方式等の各種画像形成装置において、画像を記録する記録材(シート材)を給送する給紙装置としては、そのシート材に対して高い最大静止摩擦係数(以下、単に「摩擦係数」という。)が得られるゴム等の材料で作られたローラやベルト等のピックアップ部材をシート束の最上位シート材に当接させ、シート束から最上位シート材をピックアップする摩擦給送方式が広く採用されている。摩擦給送方式は、構成が簡素であるが、ピックアップ部材とシート材との間で大きな摩擦力を得るために、バネ等の付勢手段によりピックアップ部材をシート面に対して強く圧接させることを必要とする。このようなバネ等の付勢手段は、通常、経時劣化によりその付勢力が経時的に減少するので、経時的にも安定した給送性能を得ることが難しい。また、ゴム等からなるピックアップ部材は、経時的に又は環境に応じて劣化し、シート材に対する摩擦係数が低下するので、この点でも安定した給送性能を得ることが難しい。
【0003】
また、ユーザーの多様化により、画像を記録する記録材としては、普通紙だけでなく、コート紙やラベル紙など、様々な機能・用途をもつシート材が用いられることが多くなってきている。記録材として用いられるシート材の種類は、今後も増加することが予想される。特殊な機能や用途をもつシート材は、ピックアップ部材に対する摩擦係数が極端に小さいものがあり、このようなシート材は、摩擦給送方式により安定してピックアップすることが難しい。また、粘着ラベル等のようにシート材表面部がシート材本体から剥離しやすいシート材は、ピックアップ部材とシート材との間の摩擦力によりシート材表面部がシート材本体から剥離してしまい、摩擦給送方式により安定してピックアップすることが難しい。
【0004】
このような特殊な機能や用途をもつシート材であっても安定したピックアップが可能なものとして、静電給送方式がある。静電給送方式では、誘電体ベルト表面上に形成される電位パターンにより誘電体ベルト表面とシート束上面との界面に不平等電界を生じさせることで発生する、マクスウェルの応力に基づく当該界面の法線方向における吸着力によって誘電体ベルト表面にシート束の最上位シート材を吸着させ、その誘電体ベルトの表面移動により当該最上位シート材を送り出す。このような静電給送方式を採用した画像形成装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
静電給送方式の場合、誘電体ベルトをシート束の上面に接触させてからすぐにシート束から離間させてピックアップしようとすると、最上位シート材だけでなく、上から2枚目のシート材(第二位シート材)にも誘電体ベルト表面上の電位パターンによる電界が作用して、第二位シート材も一緒にピックアップされてしまうという問題がある。この問題は、誘電体ベルトをシート束の上面に接触させてから一定時間待った後にシート束から離間させることで解決できることが判明している。すなわち、誘電体ベルトをシート束の上面に接触させてから一定時間(分離完了時間)待った後にシート束から離間させれば、第二位シート材への電界の作用が小さくなり、最上位シート材だけをシート束から分離して誘電体ベルトに吸着させることが可能である。しかしながら、誘電体ベルトをシート束の上面に接触させてから一定時間待っても、最上位シート材と第二位シート材との接触面間で種々の原因により吸着力が発生し、最上位シート材とともに第二位シート材もピックアップされてしまう場合がある。
【0006】
このような場合、上記特許文献1に記載のシート材給送装置のように、シート束の上面に接触させた誘電体ベルトの表面部分に最上位シート材を吸着させた後、その表面部分がシート束の上面に対して傾斜するようにその表面部分をシート束の上面から離間させる構成とするのが有効である。この構成においては、誘電体ベルトの表面部分に吸着している最上位シート材部分が誘電体ベルトの離間動作に伴ってシート束上面からめくられ、離間する。このとき、これに第二位シート材も追従しようとするが、第二位シート材には、そのコシによって最上位シート材から剥がれようとする剥離力が働く。この剥離力は、通常、最上位シート材と第二位シート材との密着部分に何らかの原因により発生する吸着力よりも、大きい力である。したがって、第二位シート材は、そのような吸着力が発生していても、シート束上面からめくられる最上位シート材部分に追従できず、その最上位シート材部分から剥離される。この剥離によって、その最上位シート材部分と第二位シート材との接触面間には隙間ができる。一旦このような隙間ができれば、最上位シート材と第二位シート材との密着部分を引き剥がすことが容易となるので、最上位シート材と第二位シート材との密着部分に何らかの原因により吸着力が発生していても、最上位シート材を第二位シート材から良好に分離させることができる。以下、誘電体ベルトに吸着している最上位シート材部分をめくって、その最上位シート材部分と第二位シート材との接触面間に隙間を作る動作を、めくり動作という。
【0007】
ところが、めくり動作を伴う従来のシート材給送装置では、上記特許文献1に記載されたものを含め、誘電体ベルトに吸着している最上位シート材を誘電体ベルトの表面移動に伴って送り出す際に最上位シート材が吸着している誘電体ベルトのベルト平坦部分とシート束上面とのなす角度(以下「めくり角度」という。)を、十分に大きくとることができなかった。めくり角度が大きいほど、第二位シート材がそのコシによって真っ直ぐな状態へ復元しようとする復元力が大きくなるので、めくり動作によって生じる最上位シート材から第二位シート材を剥離させる剥離力も大きくなる。よって、めくり角度が小さい従来のシート材給送装置では、剥離力が不十分で、第二位シート材を最上位シート材から安定して剥離させることができず、送り出し不良を引き起こす場合があった。
【0008】
従来のシート材給送装置においてめくり角度を十分に大きくとることができなかった理由は、次のとおりである。
すなわち、従来のシート材給送装置では、誘電体ベルトを表面移動させて最上位シート材を送り出すとき、上記ベルト平坦部分に最上位シート材を吸着させることで、最上位シート材を誘電体ベルトの表面移動に追従させ、最上位シート材の送り出しを実現する。よって、最上位シート材を送り出すときのベルト平坦部分の誘電体ベルト表面移動方向長さ(以下、単に「長さ」という。)が長ければ長いほど、最上位シート材を吸着させる力が強くなり、最上位シート材を誘電体ベルトの表面移動に安定して追従させることができる。
ここで、めくり動作を伴う従来のシート材給送装置では、最上位シート材も、そのコシにより最上位シート材が真っ直ぐな状態に戻ろうとする復元力が働く。この復元力は、最上位シート材が吸着するベルト平坦部分から最上位シート材を引き離そうとする引き離し力となる。この引き離し力は、めくり角度を大きく設定するほど大きくなる。よって、めくり角度を大きく設定するほど、ベルト平坦部分と最上位シート材との吸着力が弱くなり、最上位シート材を誘電体ベルトの表面移動に安定して追従させることが難しくなる。そのため、めくり角度を大きく設定するためには、最上位シート材を送り出すときのベルト平坦部分の長さを十分に長く設定して、めくり角度を大きくしたことによる吸着力の減少を補う必要がある。
しかしながら、めくり動作を伴う従来のシート材給送装置は、めくり動作の際、ベルト平坦部分の誘電体ベルト表面移動方向両端に位置する2つの支持ローラのうちの下流側支持ローラを、その上流側支持ローラを中心に揺動させる構成となっている。具体的には、最上位シート材を最初にベルト平坦部分に吸着させるときには、シート束の上面に近づく向きに下流側支持ローラが揺動し、ベルト平坦部分がシート束の上面に接触する。その後、シート束の上面から離れる向きに下流側支持ローラが揺動して、最上位シート材が吸着したベルト平坦部分がシート束の上面から離れる。このような構成においては、下流側支持ローラの揺動により誘電体ベルトが変位するための空きスペースが必要となる。この空きスペースは、最上位シート材を誘電体ベルトの表面移動に安定して追従させるためにベルト平坦部分の長さを長く設定するほど、より広いスペースを必要とする。そのため、従来のシート材給送装置においては、装置レイアウト上の制約により、下流側支持ローラの揺動範囲やベルト平坦部分の長さがおのずと限定されることになる。下流側支持ローラの揺動範囲が限定されると、めくり角度が制限される。また、ベルト平坦部分の長さが限定されると、めくり角度を大きくしたことによる最上位シート材と誘電体ベルトとの吸着力の減少を補うことが難しくなり、最上位シート材を誘電体ベルトへ追従させることが困難となり、やはり、めくり角度が制限される。
【0009】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、めくり角度を大きくすることが容易で、かつ、めくり角度を大きくした場合に必要となる最上位シート材と誘電体ベルトとの吸着力の確保に必要な長さのベルト平坦部分を得ることが容易なシート材給送装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、シート材が複数積載されたシート束の上面に対向する位置に設けられ、表面移動する無端状の誘電体ベルトと、互いに極性が異なる電位をもつ電位部同士が互いに隣り合うように配置された複数の電位部からなる電位パターンを該誘電体ベルトの表面上に形成する電位パターン形成手段とを有し、上記誘電体ベルトの表面に形成される電位パターンにより誘電体ベルトの表面と上記シート束の上面との界面に不平等電界を生じさせることで発生する、マクスウェルの応力に基づく該界面の法線方向における吸着力によって、2つの支持部材の間に張架された該誘電体ベルトのベルト平坦部分に最上位シート材を吸着させて、該誘電体ベルトの表面移動により最上位シート材をシート束の上面から斜め上方に向かって送り出すシート材給送装置において、上記誘電体ベルトの上記ベルト平坦部分の内周面に接触して該誘電体ベルトをその外周面側に押し出す方向に移動可能なベルト押出部材と、上記ベルト平坦部分を押し出して該ベルト平坦部分を屈曲させることにより該ベルト平坦部分における誘電体ベルト表面移動方向の上流側部分を上記シート束の上面と平行な状態にする吸着位置と、該ベルト平坦部分を押し出さずに該ベルト平坦部分の全体を平坦な状態に維持する送出位置との間で、該ベルト押出部材を移動させる移動手段とを有し、上記移動手段により上記ベルト押出部材を上記吸着位置に移動させた状態で、上記ベルト平坦部分の上記上流側部分に最上位シート材のシート給送方向下流側部分を吸着させた後、該移動手段により該ベルト押出部材を上記送出位置に移動させ、該誘電体ベルトの表面移動により、該最上位シート材を該ベルト平坦部分の誘電体ベルト表面移動方向全域にわたって吸着させた状態で送り出すことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のシート材給送装置において、上記移動手段による上記ベルト押出部材の移動前後で上記誘電体ベルトのベルト周長が同じになるように、上記2つの支持部材のうち上記ベルト平坦部分の誘電体ベルト表面移動方向上流側に位置する上流側支持部材以外で該誘電体ベルトを支持する支持部材の少なくとも1つを変位させる変位手段を有することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2のシート材給送装置において、上記変位手段は、上記2つの支持部材のうち上記ベルト平坦部分の誘電体ベルト表面移動方向下流側に位置する下流側支持部材を変位させることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3のシート材給送装置において、上記変位手段は、上記下流側支持部材を略記録材給送方向に変位させることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載シート材給送装置において、上記ベルト平坦部分における誘電体ベルト表面移動方向下流側の表面部分との間に最上位シート材を挟み込んだ状態で、該誘電体ベルトに対して連れ回り方向に表面移動する送出補助部材を有することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート材給送装置において、上記ベルト押出部材を、該誘電体ベルトに対して連れ回り方向に表面移動するように構成するとともに、上記移動手段により上記ベルト押出部材を上記送出位置に移動させた状態で、該ベルト押出部材が誘電体ベルト内周面と接触するように構成したことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、シート材給送装置により送り出されるシート材上に画像を形成する画像形成装置において、上記シート材給送装置として、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシート材給送装置を用いることを特徴とするものである。
【0011】
本発明においては、所定のめくり角度となるようにシート束上面に対して傾斜している誘電体ベルトのベルト平坦部分を、吸着位置に移動したベルト押出部材で押し出すと、そのベルト平坦部分が屈曲して、ベルト平坦部分における誘電体ベルト表面移動方向上流側部分がシート束の上面と平行な状態になる。そして、この状態のベルト平坦部分の上記上流側部分に最上位シート材のシート給送方向下流側部分(シート材給送方向先頭側部分)を吸着させた後、ベルト押出部材を送出位置へ移動させると、ベルト平坦部分の全体がシート束上面に対して傾斜した平坦状態となる。これにより、ベルト平坦部分の上記上流側部分がシート束の上面から離れるので、これに吸着した最上位シート材のシート材給送方向先頭側部分と第二位シート材との間に隙間ができる。よって、上述しためくり動作により第二位シート材を最上位シート材から剥離させることができる。
この構成において、めくり角度を大きくする場合には、ベルト押出部材が送出位置に位置するときのシート束上面に対するベルト平坦部分の傾斜角度を大きく設定することになる。このとき、めくり角度を大きくするほど、ベルト平坦部分の上記上流側部分をシート束上面に対して接離させるためにベルト押出部材の移動幅を大きくする必要がある。本発明において、このベルト押出部材は、ベルト平坦部分における誘電体ベルト表面移動方向の途中箇所をシート束上面との間で移動するものであり、同じ長さのベルト平坦部分について、上述した従来のシート材給送装置のようにベルト平坦部分の誘電体ベルト表面移動方向下流端に位置する下流側支持部材を揺動させる場合と比べて、誘電体ベルトが変位あるいは変形するために必要な空きスペースは少なくて済み、その移動に装置レイアウト上の制約は少ない。よって、ベルト押出部材の移動量を多くすることが容易であり、めくり角度を大きく設定することができる。
また、めくり角度を大きく設定する場合には、最上位シート材の誘電体ベルトへの追従性を確保するために、ベルト平坦部分の長さを長く設定することが必要となるが、本発明によれば、ベルト平坦部分の長さが装置レイアウトの制約を受けにくい。すなわち、本発明において、ベルト平坦部分の長さを長くする場合には、ベルト平坦部分のベルト押出部材が接触する箇所と下流側支持部材が位置するベルト平坦部分の下流端との距離を長くすればよい。この部分を長くしても、ベルト押出部材の移動による誘電体ベルトの変位あるいは変形に必要な空きスペースの大きさに与える影響はごく僅かである。したがって、本発明では、ベルト平坦部分の長さを長くして、めくり角度を大きくする場合に必要となる最上位シート材と誘電体ベルトとの吸着力の確保が容易である。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によれば、めくり角度を大きくすることが容易で、かつ、めくり角度を大きくした場合に必要となる最上位シート材と誘電体ベルトとの吸着力の確保に必要な長さのベルト平坦部分を得ることが容易となるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る複写機を示す模式図である。
【図2】同複写機における給紙部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】同給紙部に設けられるシート分離給紙装置の概略構成を示す部分斜視図である。
【図4】同シート分離給紙装置の変形例を示す斜視図である。
【図5】実施形態に係るシート分離給紙装置の構成を説明するための説明図である。
【図6】(a)は、同シート分離給紙装置のベルト押出ローラが吸着位置に位置する状態を示す説明図である。(b)は、同シート分離給紙装置のベルト押出ローラが送出位置に位置する状態を示す説明図である。(c)は、誘電体ベルトに吸着した最上位シートをめくり動作を行いながら送り出している状態を示す説明図である。
【図7】同シート分離給紙装置に搬送ローラを追加した変形例を説明するための説明図である。
【図8】電位パターン形成手段の他の例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を、電子写真方式の画像形成装置である複写機に適用した一実施形態について説明する。
なお、本発明は、本実施形態の画像形成装置に限らず、例えばインクジェット方式の画像形成装置などにも適用することができることは言うまでもない。
【0015】
図1は、本実施形態に係る複写機10を示す模式図である。
この複写機10は、原稿トレイ11aに載置された原稿束から原稿を1枚ずつ分離して原稿読取部12上のコンタクトガラスに自動給紙する自動原稿搬送装置11と、自動原稿搬送装置11によってコンタクトガラス上に搬送された原稿を読み取る原稿読取部12と、給紙部13から給紙された記録材シート(シート材)に対して、原稿読取部12によって読み取った原稿画像に基づいて画像を形成する画像形成部14とを備えている。給紙部13は、複数枚のシートが積層されたシート束Sを収容していて、このシート束Sからその最上位に位置する最上位シートS1を画像形成部14に給紙する。なお、本実施形態では、画像形成部14と給紙部13とは分割可能となっている。
【0016】
画像形成部14は、主に、イエロー(以下「Y」と記載し、イエロー用の部材の符号には色別符号として「Y」を付す。シアン、マゼンタ、ブラックについても同様。)用の作像部23Y、C(シアン)用の作像部23C、M(マゼンタ)用の作像部23M、BK(ブラック)用の作像部23BKの4つの作像部と、中間転写材である中間転写ベルト24と、潜像形成手段としての露光装置25とから構成されている。
【0017】
露光装置25は、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等から入力される色分解された画像データや、原稿読取部12によって読み取った原稿の画像データを、光源駆動用の信号に変換し、それに従い各レーザ光源ユニット内の半導体レーザを駆動して光ビームを出射するようになっている。
【0018】
各作像部23Y,23C,23M,23BKは、それぞれ、回転駆動される潜像担持体としての感光体26Y,26C,26M,26BK、それぞれの感光体26Y,26C,26M,26BKの周囲に配置される帯電部27、現像部28、クリーニング部29等により構成されている。感光体26Y,26C,26M,26BKは、円筒状に形成された感光体ドラムであり、図示しない駆動源により回転駆動される。各帯電部27は、それぞれ対応する感光体26Y,26C,26M,26BKの表面を所定電位となるように一様帯電するものである。本実施形態の帯電部27は、帯電ローラ等の帯電部材を感光体26Y,26C,26M,26BKの表面に接触又は近接させて帯電処理する接触帯電方式のものを採用しているが、これに限られない。露光装置25から出射された破線で示す光ビームが帯電部27により一様帯電された各感光体26Y,26C,26M,26BKの表面にスポット照射されることにより、各感光体表面にはそれぞれの画像情報に応じた静電潜像が書き込まれる。各現像部28は、感光体26Y,26C,26M,26BK上の静電潜像にトナーを付着させることにより、その静電潜像をトナー像として顕像化させるもので、感光体26Y,26C,26M,26BKに対して非接触状態でトナーを供給する非接触現像方式のものが採用されている。各クリーニング部29は、感光体26Y,26C,26M,26BKの表面に付着している転写残トナー等の不要物を除去するもので、感光体表面にブラシを接触させてクリーニングするブラシ接触方式のものが採用されている。
【0019】
中間転写ベルト24は、樹脂フィルムまたはゴムを基体として形成された無端状ベルトから構成されており、各感光体26Y,26C,26M,26BK上に形成された各色トナー像が互いに重なり合うように転写される。このように重なった中間転写ベルト24上の画像は、転写ローラ19によってシートS1に転写される。
画像が転写されたシートS1は、その後に定着器20に搬送され、熱と圧力によって画像がシートS1に定着される。その後、シートS1は、排紙ローラ対21により排紙トレイ22へ排出される。
【0020】
図2は、給紙部13の概略構成を示す斜視図である。
図3は、シート分離給紙装置30の概略構成を示す部分斜視図である。
給紙部13は、複数枚のシートを積載して収容するシート材収容部としての給紙カセット15と、給紙カセット15上の複数枚のシートからなるシート束Sから最上位に位置する最上位シートS1を分離して搬送するシート材給送装置としてのシート分離給紙装置30とを含んで構成されている。シート分離給紙装置30によって分離給紙されたシートS1は、搬送路17に送り出される。そして、レジストローラ対18により所定のタイミングで転写ローラ19による転写位置へ搬送される。
【0021】
シート分離給紙装置30は、積載可能用紙幅に対して短く、中心付近に配置されているが、これは、積載可能用紙幅に対して、同等もしくは長くても問題ない。また、本実施形態では、シート給紙方向に対して直交する方向(幅方向)の中心付近にシート分離給紙装置30を1つ設けた構成であるが、幅方向に複数個のシート分離給紙装置30を配置してもよい。
【0022】
シート分離給紙装置30は、図2に示すように、下流側支持部材としての駆動ローラ31と上流側支持部材としての従動ローラ32とに巻掛けられた無端状の誘電体ベルト33を備えている。この誘電体ベルト33の表面には、誘電体ベルト33の表面に所定の電位パターンを形成するための電位パターン形成手段としての帯電用電極ローラ34が当接している。なお、本実施形態では、電位パターン形成手段として帯電用電極ローラ34を用いているが、図4に示すようなブレード状の帯電部材134を用いてもよい。
【0023】
図5は、シート分離給紙装置30の構成を説明するための説明図である。
本実施形態の誘電体ベルト33は、体積抵抗率が108Ω・cm以上の誘電体(例えば、厚さ100μm程度のポリエチレンテレフタレート等のフィルム)からなる表層と、体積抵抗率が106Ω・cm以下の導体からなる裏層とを有する2層構造となっている。なお、誘電体ベルト33の構成は、これに限らず、単層構造であってもよいし、3層以上の層構造を有するものでもよい。帯電用電極ローラ34は、誘電体ベルト33の表層に接した位置であればどこに設けてもよい。また、シート束Sに対する誘電体ベルト33の位置は、シート束Sを吸着する誘電体ベルト33の表面部分(吸着面)の面積が十分に取れる位置であって、かつ、その吸着面が最上位シート材のシート給送方向下流側部分(先端側部分)に接触する位置であれば、どこに設けても良い。
【0024】
駆動ローラ31の表面は、体積抵抗率が106Ω・cm程度の導電性ゴム層で構成され、従動ローラ32の表面は金属で構成されている。駆動ローラ31および従動ローラ32はいずれも接地されている。従動ローラ32の径は、誘電体ベルト33から最上位シートS1を、その従動ローラ32に巻き付いたベルト部分の曲率により分離するのに適した小さな径をもつように設定となっている。すなわち、従動ローラ32の径を小さく設定して曲率を大きくすることにより、誘電体ベルト33に吸着されて分離搬送された最上位シートS1が、従動ローラ32に巻回された部分で誘電体ベルト33の表面から離れ、ガイド部材により形成される搬送路17に入ることができるようになっている。
【0025】
帯電用電極ローラ34は、本実施形態では、誘電体ベルト33が駆動ローラ31に巻回された位置の近くで誘電体ベルト33の表面(外周面)に接するように配置されている。帯電用電極ローラ34は、交流を発生する交流電源35に接続されている。帯電用電極ローラ34に印加する電圧は、交番電圧であれば、正弦波交流電圧であっても、直流電圧を高低交互の電位に変化させたような電圧でもなんでもよい。本実施形態では、交流電源35により4kVの振幅を持った交流電圧を印加している。
なお、帯電用電極ローラ34に対して誘電体ベルト33の表面移動方向上流側であって、シートS1と誘電体ベルト33との分離位置よりも下流側に、誘電体ベルト33を除電する除電手段を設けてもよい。
また、シート束Sを収容する給紙カセット15のシート給送方向先端側の側壁15aは、シート束Sのシート給送方向先端位置を規制するものである。
【0026】
本実施形態のシート分離給紙装置30は、誘電体ベルト33とシート束Sの上面とを接離させる接離手段としての接離機構40を備えている。この接離機構40は、給紙カセット15の底板15bを、ラック&ピニオン形式のシート押上部41により水平を保ったまま上下に移動するような構成となっている。本実施形態において、接離機構40はシート束Sを上下動させるものであり、シート分離給紙装置30は上下動しない構成となっている。もちろん、シート分離給紙装置30を上下動させる接離手段を用いてもよいし、両者を上下動させる接離手段であってもよい。また、本実施形態の接離機構40は、シート束上面の鉛直方向位置を検知するためのセンサ42も備えている。接離機構40は、このセンサ42の結果を受けて給紙カセット15の底板15bの上下動を制御し、シート束上面と誘電体ベルト33との離間間隔や接触圧などを適正に制御できるようになっている。本実施形態においては、既存の摩擦力を用いた分離方式の接触圧とは異なり、シート束Sの上面に誘電体ベルト33が触れる程度の接触圧で十分である。
【0027】
また、本実施形態において、誘電体ベルト33は、駆動ローラ31と従動ローラ32との間に張架された平坦なベルト部分のうち、シート束Sの上面と対面する側のベルト張架部分がベルト平坦部分を形成している。以下、このベルト平坦部分を下側ベルト張架部分Bという。本実施形態では、誘電体ベルト33の下側ベルト張架部分Bの内周面に接触して誘電体ベルト33をその外周面側に押し出す方向Cに沿って移動可能なベルト押出部材としてのベルト押出ローラ36を備えている。このベルト押出ローラ36は、図示しない移動手段としての移動機構により、図中矢印Cの方向に移動可能である。また、本実施形態の従動ローラ32は、シート給送方向Dに沿って変位自在に設けられており、図示しない付勢手段によってシート給送方向下流側に向かって付勢されている。このように付勢された従動ローラ32は、誘電体ベルト33に対してその内周面側から外周面側へ向かう付勢力を付与し、これにより誘電体ベルト33は、所定のテンションで張架状態が維持される。
【0028】
本実施形態において、従動ローラ32は、変位支持部材として機能する。すなわち、従動ローラ32は、ベルト押出ローラ36が移動機構により誘電体ベルト33の外周側へ移動して吸着位置へ移動すると、誘電体ベルト33が押し出され、これに応じて誘電体ベルト33のベルト周長を一定に維持すべく付勢力に抗して誘電体ベルト33の内周側、より詳しくはシート給送方向に沿ってその上流側へ変位する。また、ベルト押出ローラ36が移動機構により誘電体ベルト33の内周側へ移動して、下側ベルト張架部分Bを押し出さずに下側ベルト張架部分Bの全体を平坦な状態に維持する送出位置へ移動すると、従動ローラ32は、これに応じて誘電体ベルト33のベルト周長を一定に維持すべく付勢力によりシート給送方向下流側へ変位する。
【0029】
次に、本発明の特徴部分である、最上位シートS1の送り出し動作について詳述する。
図6(a)は、ベルト押出ローラ36が吸着位置に位置する状態を示す説明図である。
図6(b)は、ベルト押出ローラ36が送出位置に位置する状態を示す説明図である。
図6(c)は、誘電体ベルト33に吸着した最上位シートS1をめくり動作を行いながら送り出している状態を示す説明図である。
本複写機の図示しない本体制御部から給送信号が出されると、図5に示すように、ベルト押出ローラ36が送出位置に位置し、かつ、誘電体ベルト33とシート束Sの上面とが離間した状態において、駆動ローラ31の駆動伝達系に設けられた電磁クラッチがONになる。これにより、駆動ローラ31に駆動力が伝達されて駆動ローラ31が回転駆動を開始され、表面移動を開始した誘電体ベルト33には交流電源35が接続された帯電用電極ローラ34から交番電圧が印加される。その結果、誘電体ベルト33の表面には交流電源35の周波数と誘電体ベルト33の表面移動速度とに応じた間隔で、プラス極性の電位部とマイナス極性の電位部が誘電体ベルト33の表面移動方向に沿って交互に配列された電位パターンあるいは電荷パターンが形成される。互いに隣り合う2つの電位部からなる1組の電位部組間のピッチは、2mm〜15mm程度が好ましく、2mm〜4mmがより好ましい。
【0030】
少なくとも誘電体ベルト33の下側ベルト張架部分Bにおけるベルト押出ローラ36が接触するベルト部分と下側ベルト張架部分Bの表面移動方向下流端との間(以下「めくり吸着部分」という。)B1について電位パターンが形成されたら、一旦、電磁クラッチをOFFにして駆動ローラ31の回転駆動を停止させる。そして、表面移動が停止した状態の誘電体ベルト33に接離機構40によりシート束Sの上面を接触させる。このときは、シート束Sの上面に、誘電体ベルト33の駆動ローラ31に巻き付いた部分が接触した状態である。その後、ベルト押出ローラ36を送出位置から吸着位置へ移動させ、図6(a)に示す状態にする。これにより、誘電体ベルト33の下側ベルト張架部分Bが屈曲し、下側ベルト張架部分Bのうちのめくり吸着部分B1がシート束Sの上面に接触する。
【0031】
ここで、電位パターンが形成された誘電体ベルト33のめくり吸着部分B1がシート束Sの上面に接触すると、誘電体である最上位シートS1には、めくり吸着部分B1の表面上の電位パターンにより形成される不平等電界によりMaxwellの応力が働き、最上位シートS1がめくり吸着部分B1に吸着して保持される。電位パターンによる誘電体ベルト33側への吸着力は、シートが吸着した瞬間からある一定時間は上から2枚目の第二位シートS2、場合によってはその下以降のシートにも発生する。しかし、この吸着力は、一定時間(分離完了時間)経過した後は、最上位シートS1にしか生じず、第二位シートS2以下のシートには生じなくなることが知られている。よって、シートが吸着してから所定の分離完了時間を待ってから、他のシートから最上位シートS1のみを分離して送り出す。しかしながら、種々の原因により、誘電体ベルト33をシート束Sの上面に接触させてから一定時間待っても、最上位シートS1とともに第二位シートS2もピックアップされてしまう場合がある。
【0032】
そこで、本実施形態においては、誘電体ベルト33をシート束Sの上面に接触させてから一定時間待った後、ベルト押出ローラ36を吸着位置から送出位置へ移動させ、図6(b)に示す状態にする。これにより、屈曲していた誘電体ベルト33の下側ベルト張架部分Bが平坦な状態となり、めくり吸着部分B1がシート束Sの上面から離間する。このとき、最上位シートS1の先端側部分はめくり吸着部分B1に吸着しているので、最上位シートS1の先端側部分と第二位シートS2との間には、図6(b)に示すように隙間ができる。なお、最上位シートS1の先端側部分と第二位シートS2との間には種々の原因により僅かに吸着力が存在している場合も多いが、第二位シート材のコシ及び自重によって最上位シートS1の先端側部分と第二位シートS2との間には引き離し力が働き、第二位シートS2が最上位シートS1の先端側部分に吸着したままとなることはない。
【0033】
図6(b)に示すように、最上位シートS1の先端側部分と第二位シートS2との間に隙間ができた状態で、再び、電磁クラッチをONにして駆動ローラ31を回転駆動させ、交流電源35により電位パターンを形成しながら、誘電体ベルト33を表面移動させる。これにより、最上位シートS1の先端側部分に吸着した最上位シートS1は、その表面移動に伴い、下側ベルト張架部分Bに沿ってシート給送方向へ送り出される。この最上位シートS1の送り出しにより、最上位シートS1と第二位シートS2とが密着した部分と上記隙間との境界部分Eにおいて、最上位シートS1が搬送される力が、最上位シートS1を第二位シートS2から剥がす剥離力として作用する。その結果、最上位シートS1と第二位シートS2との密着部分で互いが吸着している場合でも、その剥離力を利用して剥離させることができる。すなわち、本実施形態では、図6(c)に示すように、めくり動作を利用して、最上位シートS1を第二位シートS2から剥がしながら(分離させながら)、最上位シートS1を送り出すことができる。
【0034】
本実施形態において、最上位シートS1を第二位シートS2から剥がすための剥離力を大きくして、より安定した分離を実現するためには、ベルト押出ローラ36が送出位置に位置するときの誘電体ベルト33の下側ベルト張架部分Bの表面とシート束Sの上面とのなす角度であるめくり角度αを大きくすることが望ましい。本実施形態においては、めくり角度αを大きく設定するほど、下側ベルト張架部分Bの上流側部分である吸着部分B1をシート束Sの上面に接触させるために必要なベルト押出ローラ36の移動量が大きくなる。なお、このベルト押出ローラ36の移動量が大きくなっても、その移動に対する装置レイアウト上の制約は少ないので、ベルト押出ローラ36の移動量を大きくとるように設計することは容易である。
【0035】
また、本実施形態では、このベルト押出ローラ36の移動に対応して、上述したように、その移動前後で誘電体ベルト33のベルト周長が同じになるように従動ローラ32が変位する。これにより、ベルト押出ローラ36の移動前後で誘電体ベルト33の張架状態を維持することができるのである。一方、この構成は、ベルト押出ローラ36が吸着位置へ移動することによる下側ベルト張架部分Bの押し出し量が多くなるほど、従動ローラ32の変位量が多くなる結果という結果をもたらす。しかしながら、ベルト押出ローラ36の移動により下側ベルト張架部分Bが押し出されたときの従動ローラ32の変位方向は、図中矢印Dで示すように、誘電体ベルト33の内周側に向かう方向となる。誘電体ベルト33の内周面に囲まれたスペースはデッドスペースである。よって、本実施形態の構成によれば、従動ローラ32の変位に対する装置レイアウトの制約も少ない。
以上のように、本実施形態では、めくり動作による分離性を高めるためにめくり角度αを大きくしようとすると、ベルト押出ローラ36の移動量を大きくなったり、従動ローラ32の変位量が大きくなったりするが、これらの移動あるいは変位については装置レイアウトの制約が少なく、その移動量や変位量を多くすることが容易であり、めくり角度αを、めくり動作による分離性を高めるために十分に大きな角度に設定することができる。
【0036】
ただし、めくり角度αを大きく設定する場合には、最上位シートS1の誘電体ベルト33への追従性を確保するために、下側ベルト張架部分Bのベルト表面移動方向長さを長く設定することが必要となる。本実施形態では、下側ベルト張架部分Bのベルト押出ローラ36が接触する箇所と従動ローラ32が位置する下側ベルト張架部分Bの下流端との間の部分B2を長くして、下側ベルト張架部分Bの長さを確保している。この部分B2を長くしても、ベルト押出ローラ36の移動や従動ローラ32の変位による誘電体ベルト33の変位・変形に必要な空きスペースの大きさに与える影響はごく僅かである。したがって、本実施形態によれば、下側ベルト張架部分Bの長さを長くして、めくり角度αを大きくする場合に必要となる最上位シートS1の誘電体ベルト33への追従性の確保が容易である。
【0037】
以上、本実施形態に係る複写機は、シート材給送装置としてのシート分離給紙装置30により送り出されるシート材としてのシートS1上に画像を形成する画像形成装置であり、そのシート分離給紙装置30は、シートが複数積載されたシート束Sの上面に対向する位置に設けられ、表面移動する無端状の誘電体ベルト33と、互いに極性が異なる電位をもつ電位部同士が互いに隣り合うように配置された複数の電位部からなる電位パターンを誘電体ベルト33の表面上に形成する電位パターン形成手段としての帯電用電極ローラ34及び交流電源35と、誘電体ベルト33の表面に形成される電位パターンにより誘電体ベルト33の表面とシート束Sの上面との界面に不平等電界を生じさせることで発生する、マクスウェルの応力に基づく当該界面の法線方向における吸着力によって、2つの支持部材である駆動ローラ31及び従動ローラ32の間に張架された誘電体ベルト33のベルト平坦部分である下側ベルト張架部分Bに最上位シートS1を吸着させて、誘電体ベルト33の表面移動により最上位シートS1をシート束Sの上面から斜め上方に向かって送り出すものである。このシート分離給紙装置30は、誘電体ベルト33の下側ベルト張架部分Bの内周面に接触して誘電体ベルト33をその外周面側に押し出す方向に移動可能なベルト押出部材としてのベルト押出ローラ36と、下側ベルト張架部分Bを押し出して下側ベルト張架部分Bを屈曲させることにより下側ベルト張架部分Bにおける誘電体ベルト表面移動方向の上流側部分である吸着部分B1をシート束Sの上面と平行な状態にする吸着位置と、下側ベルト張架部分Bを押し出さずに下側ベルト張架部分Bの全体を平坦な状態に維持する送出位置との間で、ベルト押出ローラ36を移動させる移動手段とを有し、上記移動手段によりベルト押出ローラ36を吸着位置に移動させた状態で、下側ベルト張架部分Bの吸着部分B1に最上位シートS1のシート給送方向下流側部分を吸着させた後、移動手段によりベルト押出ローラ36を送出位置に移動させ、誘電体ベルト33の表面移動により、最上位シートS1を下側ベルト張架部分Bの誘電体ベルト表面移動方向全域にわたって吸着させた状態で送り出す。このような構成により、上述したとおり、めくり動作による分離性を高めるためにめくり角度αを大きくすることが容易で、かつ、めくり角度αを大きくした場合に必要となる最上位シートS1の誘電体ベルト33への追従性の確保に必要な長さの下側ベルト張架部分Bを得ることも容易となる。
【0038】
特に、本実施形態では、移動手段によるベルト押出ローラ36の移動前後で誘電体ベルト33のベルト周長が同じになるように、上流側支持部材である駆動ローラ31以外で誘電体ベルトを支持する従動ローラ32を変位させる変位手段を有する。これにより、誘電体ベルトとして、伸縮性の無い一般的な誘電体ベルトを用いることができる。この構成においては、ベルト押出ローラ36の移動による下側ベルト張架部分Bの押し出し量が多くなるほど、従動ローラ32の変位量が多くなる。しかしながら、本実施形態では、ベルト押出ローラ36の移動により下側ベルト張架部分Bが押し出されたときの従動ローラ32の変位方向が、誘電体ベルト33の内周側に向かう方向となる。誘電体ベルト33の内周面に囲まれたスペースは空きスペースが多いので、従動ローラ32の変位に対する装置レイアウトの制約は少ない。よって、伸縮性の無い一般的な誘電体ベルトを用いる場合であっても、めくり角度αを大きくすることが容易で、かつ、めくり角度αを大きくした場合に必要となる最上位シートS1の誘電体ベルト33への追従性の確保に必要な長さの下側ベルト張架部分Bを得ることも容易である。
また、本実施形態では、下流側支持部材である従動ローラ32を変位させるものであるため、誘電体ベルト33を支持する支持部材は、ベルト平坦部分である下側ベルト張架部分Bの両端に位置する2つの支持部材(駆動ローラ31及び従動ローラ)と、ベルト押出部材(ベルト押出ローラ36)の3つがあればよく、非常に簡易な構成とすることができる。
特に、本実施形態では、従動ローラ32を略記録材給送方向に変位させる構成であるので、その変位による装置レイアウト上の制約がより少なくなる。
【0039】
また、本実施形態において、図7に示すように、下側ベルト張架部分Bにおける誘電体ベルト表面移動方向下流側の表面部分との間に最上位シートS1を挟み込んだ状態で、誘電体ベルト33に対して連れ回り方向に表面移動する送出補助部材としての搬送ローラ50を設けてもよい。この場合、最上位シートS1の搬送の信頼性が高まる。
【0040】
また、本実施形態では、移動手段によりベルト押出ローラ36を送出位置に移動させた状態で、ベルト押出ローラ36が誘電体ベルト内周面と接触するように構成してあるため、その接触が誘電体ベルト33の表面移動に伴う駆動負荷をつながり得るが、ベルト押出ローラ36が、誘電体ベルト33に対して連れ回り方向に表面移動する構成となっているので、駆動負荷は少ない。
【0041】
また、本実施形態では、誘電体ベルト33の表面をその表面外部から帯電させて電位パターンを形成する例について説明したが、例えば、図8に示すような構成を採用してもよい。
図8に示す構成は、電源235Aからプラス極性の電圧が印加される櫛歯状のプラス電位部PAと、電源235Bからマイナス極性の電圧が印加される櫛歯状のマイナス電位部PBとを、互いの櫛歯部分が相手の櫛歯間に入り込むように、誘電体ベルト233の表面又は内部に配置し、誘電体ベルト233の表面に、プラス電位部PAとマイナス電位部PBとがシート材給送方向に交互に配列されるようにしたものである。この誘電体ベルト233の表面上には、その幅方向端部領域に、それぞれ、プラス電位部PAとマイナス電位部PBにそれぞれの電源235A,235Bから給電を行うための被給電部233cが露出しており、この被給電部233cを通じて各電源235A,235Bからの電圧をプラス電位部PA及びマイナス電位部PBに印加する。
【符号の説明】
【0042】
10 複写機
13 給紙部
30 シート分離給紙装置
31 駆動ローラ
32 従動ローラ
33,233 誘電体ベルト
34 帯電用電極ローラ
35 交流電源
36 ベルト押出ローラ
40 接離機構
50 搬送ローラ
134 帯電部材
235A,235B 電源
B 下側ベルト張架部分
B1 吸着部分
S シート束
S1 最上位シート
S2 第二位シート
α めくり角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】特開2003−237958号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材が複数積載されたシート束の上面に対向する位置に設けられ、表面移動する無端状の誘電体ベルトと、
互いに極性が異なる電位をもつ電位部同士が互いに隣り合うように配置された複数の電位部からなる電位パターンを該誘電体ベルトの表面上に形成する電位パターン形成手段とを有し、
上記誘電体ベルトの表面に形成される電位パターンにより誘電体ベルトの表面と上記シート束の上面との界面に不平等電界を生じさせることで発生する、マクスウェルの応力に基づく該界面の法線方向における吸着力によって、2つの支持部材の間に張架された該誘電体ベルトのベルト平坦部分に最上位シート材を吸着させて、該誘電体ベルトの表面移動により最上位シート材をシート束の上面から斜め上方に向かって送り出すシート材給送装置において、
上記誘電体ベルトの上記ベルト平坦部分の内周面に接触して該誘電体ベルトをその外周面側に押し出す方向に移動可能なベルト押出部材と、
上記ベルト平坦部分を押し出して該ベルト平坦部分を屈曲させることにより該ベルト平坦部分における誘電体ベルト表面移動方向の上流側部分を上記シート束の上面と平行な状態にする吸着位置と、該ベルト平坦部分を押し出さずに該ベルト平坦部分の全体を平坦な状態に維持する送出位置との間で、該ベルト押出部材を移動させる移動手段とを有し、
上記移動手段により上記ベルト押出部材を上記吸着位置に移動させた状態で、上記ベルト平坦部分の上記上流側部分に最上位シート材のシート給送方向下流側部分を吸着させた後、該移動手段により該ベルト押出部材を上記送出位置に移動させ、該誘電体ベルトの表面移動により、該最上位シート材を該ベルト平坦部分の誘電体ベルト表面移動方向全域にわたって吸着させた状態で送り出すことを特徴とするシート材給送装置。
【請求項2】
請求項1のシート材給送装置において、
上記移動手段による上記ベルト押出部材の移動前後で上記誘電体ベルトのベルト周長が同じになるように、上記2つの支持部材のうち上記ベルト平坦部分の誘電体ベルト表面移動方向上流側に位置する上流側支持部材以外で該誘電体ベルトを支持する支持部材の少なくとも1つを変位させる変位手段を有することを特徴とするシート材給送装置。
【請求項3】
請求項2のシート材給送装置において、
上記変位手段は、上記2つの支持部材のうち上記ベルト平坦部分の誘電体ベルト表面移動方向下流側に位置する下流側支持部材を変位させることを特徴とするシート材給送装置。
【請求項4】
請求項3のシート材給送装置において、
上記変位手段は、上記下流側支持部材を略記録材給送方向に変位させることを特徴とするシート材給送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載シート材給送装置において、
上記ベルト平坦部分における誘電体ベルト表面移動方向下流側の表面部分との間に最上位シート材を挟み込んだ状態で、該誘電体ベルトに対して連れ回り方向に表面移動する送出補助部材を有することを特徴とするシート材給送装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート材給送装置において、
上記ベルト押出部材を、該誘電体ベルトに対して連れ回り方向に表面移動するように構成するとともに、
上記移動手段により上記ベルト押出部材を上記送出位置に移動させた状態で、該ベルト押出部材が誘電体ベルト内周面と接触するように構成したことを特徴とするシート材給送装置。
【請求項7】
シート材給送装置により送り出されるシート材上に画像を形成する画像形成装置において、
上記シート材給送装置として、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシート材給送装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−57417(P2011−57417A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211289(P2009−211289)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】