説明

シート案内装置

【課題】シートを所定位置へ案内する機構を簡単な構成で実現でき、且つ、装置の小型化及びシート案内動作の高速化を実現できるシート案内装置を提供する。
【解決手段】シート案内装置10は、ベルト駆動装置13とシートガイド17と電源制御部15とを備える。ベルト駆動装置の回転ベルト33の内部に電極41,42が埋設されており、この電極41,42に電圧が印加されると回転ベルトが誘電分極される。このときシート支持面62に現れた電荷によって静電気の引力がシート20に作用し、シート20がシート支持面に吸着する。シート20の先端部20Aがシートガイドに到達すると、電極41,42に印加されていた電圧の正負が逆にされる。これにより、シート支持面の電荷の電極が逆極性となり、シート20が一時的に浮き上がる。この状態でシート20が搬送されると、シート20はガイド面77によって先端部20Aが通路82側へ案内される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上記支持面に吸着されたシートを所定位置へ案内するシート案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送経路を搬送されるシートを分岐させて別の経路へ案内するシート仕分け装置が知られている。このような装置は、例えば、印刷機の排紙装置の排出側に配置されており、複数部数の印刷物を複数の排紙トレイに仕分けるソーター(特許文献1乃至3参照)として用いられている。
【0003】
特許文献1及び2に記載の各装置は、搬送経路中に設けられたフラップと、このフラップを駆動させるためのソレノイドとを備える。各装置においては、ソレノイドによってフラップが動作されると、シートはフラップによって案内された経路へ進入する。また、特許文献3に記載の装置は、シートが逆送されたときだけシートを所望する経路へ案内するゲートが設けられている。この装置では、上記ゲートを通り過ぎたシートの進行方向を逆転させることにより、シートを所望の経路へ案内している。
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の装置では、シートを仕分けるためには、フラップを動作させるためのソレノイドが必要であるため、装置を小型化、軽量化することができない。また、特許文献3に記載の装置では、ソレノイドを必要としないものの、シートを逆送させている間は、次のシートを進入させることができないため、先のシートと次のシートとの間隔を大きくせざるを得ず、搬送処理を高速化することができない。
【0005】
一方、特許文献4乃至6には、静電気を用いた搬送装置が開示されている。これらの装置においては、搬送ベルトや給紙用回転体などの支持体とシートとの間に静電気を発生させて、その引力(クーロン力)によってシートを支持体に吸着させつつシートを搬送している。特許文献4に記載の装置においては、搬送ベルトに吸着されたシートが、搬送向き側に設けられた従動ローラによってその進行方向が変えられるよう構成されている。具体的には、シートが従動ローラの上面を通過すると、従動ローラ(実際は、搬送ベルトの湾曲部)の曲率及びシート自体の剛性によって搬送ベルトからシートが解離する。解離したシートは下流側の排紙トレイへ渡されて、排紙トレイへ進入する(特許文献4の段落[0050]参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献4の如くシートを搬送ベルトから解離させる機構では、搬送ベルトが湾曲している箇所でしかシートを解離させることができない。換言すれば、搬送ベルトの直線部分では、シートを解離させることができない。そのため、搬送ベルトの直線部分から搬送経路が分岐している場合は、その分岐経路へシートを案内することができない。また、剛性が弱い薄紙が搬送される場合と剛性の強い厚紙が搬送される場合とでは、搬送ベルトからシートが解離する条件が異なるところ、薄紙に合わせて従動ローラの曲率を大きくしなければならないとすると、従動ローラや搬送ベルトなどの設計自由度が奪われ、厚紙に合わせて従動ローラの曲率を小さくすると、薄紙が搬送されたときに搬送ベルトから解離しないという問題が生じ得る。かかる問題は、搬送ベルトによってシートが支持される機構を有する装置に限られず、静電気の引力によってシートが支持される支持面からシートを他の位置へ案内する機構を有する装置全般に生じ得る。
【0007】
【特許文献1】特開平11−228013号公報
【特許文献2】特開平08−324876号公報
【特許文献3】特開2002−137866号公報
【特許文献4】特開2005−15227号公報
【特許文献5】特開昭53−114424号公報
【特許文献6】特開2004−120921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シートの逆送機構やソレノイドなどの複雑な機構を用いることなく簡単な構成でシートを所定位置へ案内する機構を実現することができ、且つ、搬送経路において所望する位置でシートを選択的に支持面から解離させて所定位置へ案内することが可能なシート案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 上記問題を解決するため、本発明は、誘電体からなる支持面を有する支持部材を有し、帯電する上記支持面に静電吸着されたシートを所定位置へ案内するシート案内装置として構成されている。このシート案内装置は、上記支持部材に設けられた第1電極と、上記第1電極に電圧を印加することによって上記支持面と上記第1電極との間に電界を発生させることによって上記支持面を帯電させる電界発生部と、上記支持面に対して傾斜するガイド面を有し、上記支持面から所定距離隔てられ、上記所定位置へ続く通路を形成するガイド部材と、上記支持部材及び上記ガイド部材の双方若しくはいずれか一方に駆動力を付与することによって上記所定距離を隔てたまま上記支持部材と上記ガイド部材とが相対的に移動されることにより、上記支持面に支持されたシートを上記ガイド部材側へ進行させる移動手段と、上記移動手段によってシートにおける上記ガイド部材側の第1端部が上記ガイド部材付近に到達したときに、上記支持面において上記第1端部が吸着されている第1端部吸着部位に現れた電荷の正負を反転させることにより、少なくとも上記所定距離よりも大きく上記第1端部を上記支持面から浮き上がらせる反転手段とを具備する。
【0010】
支持部材に第1電極が設けられている。電界発生部がこの第1電極に電圧を印加すると、第1電極と支持面との間に電界が発生する。これにより、上記支持面が帯電する。この支持面にシートが配置される。例えば、人為的にシートが支持面に載置される場合や、或いは搬送ローラなどの搬送手段によって支持面にシートが搬送される場合が考えられる。支持面にシートが配置されると、シートにおいて支持面に対向する面(以下「対向面」という。)には、支持面に現れた電荷の極性とは逆の極性(逆極性)の電荷が現れる。この現象は、例えばシートが誘電体であれば誘電分極によって現れ、シートが導体であれば静電誘導によって現れる。これにより、支持部材の支持面とシートとの間に静電気の引力が生じ、シートが支持部材の支持面に吸着されるように支持される。
【0011】
支持部材及びガイド部材は、移動手段によって相対的に移動される。これにより、支持部材の支持面に支持されたシートが、ガイド部材側へ進行する。シートにおけるガイド部材側の第1端部がガイド部材付近に到達すると、反転手段が作動する。詳細には、上記支持面において上記第1端部が吸着されている第1端部吸着部位に現れた電荷の正負が反転手段によって反転される。これにより、シートの第1端部における対向面に現れていた電荷の極性と、第1端部吸着部位に現れた電荷の極性とが同じになるため、第1端部と第1端部吸着部位との間に静電気による斥力(反発力)が働く。この斥力によって第1端部が上記所定距離よりも大きく第1端部吸着部位から浮き上がる。このとき、浮き上がった第1端部と支持面との間に隙間が生じる。この隙間にガイド部材が入り込むことによって、第1端部が支持面から剥離(解離)されてガイド部材のガイド面に乗り掛かる。第1端部がガイド部材によって剥離される際にシートはガイド面から剥離方向の力を受ける。そのため、シートは、第1端部側から順次剥離されながらガイド部材のガイド面に沿って所定位置側へ案内される。
【0012】
(2) 上記第1電極は、上記支持部材の移動方向に沿って配置され互いに絶縁された複数の分割電極で構成されている。上記電界発生部は、上記複数の分極電極それぞれと上記支持面との間に電界を発生させるものであることが好ましい。上記反転手段は、上記第1端部が上記ガイド部材付近に到達したときに上記第1端部吸着部位に対応する分割電極と上記支持面との間で発生する電界の向きを反転させるものであることが好ましい。
【0013】
この構成であれば、シートの第1端部のみを支持面から浮き上がらせることができる。シートにおいて第1端部以外の部分は支持部材の支持面に吸着している。そのため、支持部材が移動手段によって駆動される場合は、支持部材からシートへ搬送力が付与されるため、シートの第1端部が浮き上がってガイド部材に乗り掛かった後は、シートが円滑に所定位置へ向けて案内される。
【0014】
(3) 上記反転手段は、上記第1端部が上記ガイド部材付近に到達したときに上記電界発生部による所定の基準電位に対する電圧の正負を反転させるスイッチング部を有することが好ましい。
【0015】
これにより、上記反転手段を簡単な構成で実現することができる。
【0016】
(4) 本発明のシート案内装置は、上記基準電位に維持された第2電極を更に備える。この第2電極は、上記支持部材に設けられている。この場合、上記スイッチング部は、上記第1電極と上記第2電極とを切り替えるものが考えられる。
【0017】
(5) 上記第1電極及び上記第2電極が上記移動手段による移動方向に沿って交互に配置されている。この場合、上記電界発生部は、上記第1電極及び上記第2電極間に電位差を生じさせるものであることが好ましい。
【0018】
この構成であれば、第1電極及び第2電極に電圧が印加されると、上記支持部材の移動方向に沿って交互に異なる極性の電荷がシートの表面に現れる。この場合、シートの対向面が支持面に吸着された状態では、シートの対向面のみに電荷が残存する。なお、シートの上面に現れた電荷は、隣接する異極の電荷同士によって打ち消されるため、残存しない。したがって、シートの上面に塵埃などが静電気によって引き寄せられることはない。また、仮にシートの上面にインク滴を噴出してインク画像を形成する場合であっても、静電気によってインクの着弾位置がずれることもない。また、シートが支持部材から離れると、シートの対向面においても隣接する異極の電荷が打ち消し合う。そのため、所定位置に案内されたシートから静電気を除去するための除電装置を設ける必要がない。
【0019】
(6) 上記支持部材は、連続した支持面を有する回転体であることが考えられる。
【0020】
これにより、回転体が回転することにより、複数のシートを途切れることなく連続して支持することができる。
【0021】
(7) 上記回転体は、少なくとも2つの回転支持部によって回転可能に架設され、外側に上記支持面を有する回転ベルトであることが好ましい。
【0022】
このような回転ベルトであれば、シートを平坦に支持可能な直線状の支持面を形成することができる。したがって、この直線上の支持面にシートが支持された場合は、曲率を有する支持面にシートが支持された場合に曲率面から受ける解離作用が生じないため、シートが支持面に確実に吸着される。そのため、シートの搬送力が向上する。
【0023】
(8) 本発明のシート案内装置は、上記支持面に沿って形成された主通路と、上記主通路上に定められた少なくとも一つの分岐点から分岐する分岐通路とを備える。上記ガイド部材は上記分岐点に固設されている。この場合、上記移動手段は、上記支持部材に駆動力を付与することにより上記所定距離を隔てたまま上記主通路に沿って上記支持部材を移動させるものであることが好ましい。
【0024】
(9) 本発明のシート案内装置は、上記主通路上に定められた複数の分岐点それぞれから分岐された複数の分岐通路を備える。上記ガイド部材は上記複数の分岐点それぞれに固設されている。この場合、上記反転手段は、上記シートの第1端部がいずれかの上記ガイド部材付近に到達したときに上記第1端部吸着部位に現れた電荷の正負を反転させるものであることが好ましい。
【0025】
(10) 本発明のシート案内装置は、上記複数の分岐通路の少なくとも一つに設けられ、上記シートが排出される排出トレイを備えていてもよい。
【0026】
(11) また、本発明のシート案内装置は、上記複数の分岐通路の少なくとも一つに設けられ、上記シートに画像を記録する画像記録部を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、シートを所定位置へ案内する機構を簡単な構成で実現することができ、且つ、搬送経路において所望する位置でシートを選択的に支持面から解離させて所定位置へ案内することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される各実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更することができる。
【0029】
〈第1実施形態〉
まず、図1から図7を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係るシート案内装置10の外観構成を示す斜視図である。図2は、シート案内装置10の側面図である。図3は、回転ベルト33の電極パターンを示す図である。図4は、図3における切断線IV−IVの断面図である。図5は、図3における切断線V−Vの断面図である。図6は、シート20が案内される動作を説明するための図である。図7は、回転ベルト33の電極パターンの変形例を示す図である。
【0030】
[シート案内装置10の概略]
図1に示されるシート案内装置10は、予め定められた位置(所定位置)に記録用紙や原稿などのシートを案内するためのものである。このシート案内装置10は、プリンタやファクシミリ装置、複写機などの画像記録装置、画像記録装置によって画像が記録された記録済シートを仕分けるためのシート仕分け装置、複写機やスキャナにおいて原稿を搬送するための原稿搬送装置などのように、記録用紙や原稿などのシートを取り扱う装置に用いられる。このシート案内装置10は、主として、シートの搬送中にその搬送経路を切り換える用途に用いられる。
【0031】
本実施形態に係るシート案内装置10は、静電気による斥力によってシート20がシート支持面62(本発明の支持面に相当)から浮き上がる現象を利用してシート20を所定位置へ案内するものである。このシート案内装置10は、図1に示されるように、主として、ベルト駆動装置13(本発明の移動手段の一例)と、電源制御部15(本発明の反転手段の一例)と、シートガイド17(本発明のガイド部材の一例)とを備える。以下、シート案内装置10が備える各構成要素、シート20の浮き上がり現象、及びシート20の案内動作について説明する。なお、シート案内装置10が適用される上記各装置については、従来から公知のものであるため、本明細書では詳細な説明を省略する。
【0032】
[ベルト駆動装置13]
ベルト駆動装置13は、駆動ローラ30(本発明の回転支持部の一例)と、従動ローラ31(本発明の回転支持部の一例)と、無端状の回転ベルト33(本発明の支持部材、回転体の一例)と、従動ローラ39とを備える。このベルト駆動装置13は、回転ベルト33に駆動力を付与することにより回転ベルト33を所定方向へ回転させるものである。また、ベルト駆動装置13は、後述するシートガイド17とシート支持面62との間に一定の距離D(本発明の所定距離に相当)を常に確保した状態で回転ベルト33を回転させる。
【0033】
回転ベルト33は、駆動ローラ30及び従動ローラ31に回転可能に支持されている。駆動ローラ30の回転軸35及び従動ローラ31の回転軸36は、図示しないフレームに軸支されている。回転軸36は、バネなどの弾性部材によって駆動ローラ30から離れる向き(例えば、図2の右側)へ弾性付勢されている。これにより、回転ベルト33が所定の張力で張られた状態で支持される。なお、本実施形態では、2つのローラ(駆動ローラ30及び従動ローラ31)によって回転ベルト33を支持する機構を採用しているが、例えば、駆動ローラ30及び従動ローラ31に加えて第3のローラを設けて、3つのローラで回転ベルト33を支持する機構を採用してもかまわない。もちろん、4つ以上のローラで回転ベルト33を支持してもよい。
【0034】
駆動ローラ30は、その回転軸35が図示しないモータに連結されている。このモータが回転駆動されて、その回転駆動力が回転軸35に伝達されると、駆動ローラ30が所定方向(本実施形態では、図2において時計回転方向)に回転する。駆動ローラ30が回転すると、駆動ローラ30の表面と回転ベルト33の内側面38(回転中心側の面)との摩擦力によって回転ベルト33が駆動ローラ30と同じ方向へ回転し、更に、回転ベルト33の内側面38と従動ローラ31の表面との摩擦力によって従動ローラ31が駆動ローラ30と同じ方向へ回転する。駆動ローラ30及び従動ローラ31の表面は、回転ベルト33との間で少ないロスで回転力の伝達を可能とするべく、スポンジゴムなどにように摩擦係数の大きい部材で構成されている。なお、駆動ローラ30及び従動ローラ31に代えてピニオンギヤを採用し、回転ベルト33の内側面38に上記ピニオンギヤに噛合可能なラックが設けられた構成を採用してもかまわない。このような構成であっても、回転ベルト33を回転させることができる。
【0035】
従動ローラ39は、駆動ローラ30の上側に設けられている。従動ローラ39の回転軸は、図示しないフレームに軸支されている。従動ローラ39は、駆動ローラ30の上側において、回転ベルト33へ向けて図示しない弾性部材によって付勢されており、回転ベルト33に圧接されている。
【0036】
回転ベルト33は、記録用紙や原稿などのシート20を静電気による引力によって支持するとともに、そのシート20を搬送するためのものである。回転ベルト33の外側面(回転中心側とは反対側の面)のうち上側に現れる面がシート支持面62である。本実施形態では、シート支持面62に沿ってシート20が通過可能な通路81(図2参照)が形成されている。シート20がシート支持面62に吸着した状態で搬送されることに鑑みると、実質的に、シート支持面62の面上が通路81となる。図1及び図2に示されるように、回転ベルト33は、シート支持面62が水平となるように設けられている。もちろん、本発明は、シート支持面62が水平である場合に限定されない。例えば、シート支持面62が鉛直面であってもよいし、水平面に対して所定の角度で傾斜していてもよい。
【0037】
駆動ローラ30が図2において時計回転方向へ回転されると、回転ベルト33が同方向へ回転する。そして、回転ベルト33の回転に伴って、シート支持面62に圧接された従動ローラ39が連れ回る。図示しない搬送手段によって、図2における左側から回転ベルト33側へ向かう進行向き(片矢印26で示される向き)へシート20が搬送されて、当該シート20が回転ベルト33と従動ローラ39との間に進入すると、回転ベルト33と従動ローラ39とによって挟持されながら、シート支持面62上へシート20が搬送される。シート20がシート支持面62上に配置されて、その下面がシートし地面62に接触すると、後述する電極41,42に印加された電圧により発生した電界によって回転ベルト33とシート20との間に生じた静電気による引力がシート20に作用して、シート20がシート支持面62に吸着するかのように貼り付く。この状態で回転ベルト33が回転すると、シート20がシート支持面62に吸着した状態で進行向き26へ搬送される。なお、以下において、シート支持面62にシート20が吸着するかのように貼り付く現象を単に「吸着」と称する。
【0038】
[回転ベルト33]
回転ベルト33は、誘電体で構成されたベース34と、2つの電極41,42とにより構成されている。ベース34は、側面視で環状に形成されている。このベース34は、回転ベルト33の外側面に露出されている。したがって、ベース34の露出面がシート支持面62である。言い換えると、シート支持面62は誘電体からなるものである。
【0039】
電極41,42は、回転ベルト33のベース34内に埋め込まれており、その周囲がベース34によって被覆されている。電極41,42は、導電性を有する金属などの導電体で構成されている。
【0040】
図3に電極41,42のパターンが示されている。なお、図3には、電極41,42が示されているが、実際は、電極41,42は、ベース34内に埋め込まれているため、回転ベルト33の表面には現れない。電極41は、回転ベルト33の長手方向(両矢印23で示される方向)に延出された接触部41Aと、回転ベルト33の幅方向(両矢印24で示される方向)に延出された複数の分岐部41Bとを有する。接触部41Aに後述する電極ローラ51が電気的に接続される。接触部41Aは、幅方向24の一方側の端部に配置されている。接触部41Aは、ベース34と同様に側面視で環状に形成されている。図4に示されるように、接触部41Aは、回転ベルト33の内側面38に露出されている。分岐部42Bは、接触部41Aから分岐して幅方向24に延びている。分岐部41Bの延出端は、幅方向24の他方側の端部付近に達している。複数の分岐部41Bそれぞれは、長手方向23に沿って等間隔を隔てて配置されている。
【0041】
電極42は、電極41と同様に、接触部42Aと分岐部42Bとを有する。接触部42Aに後述する電極ローラ52が電気的に接続される。接触部42Aは、回転ベルト33の内側面38に露出されている(図4参照)。電極42と電極41とは電気的に絶縁されている。電極42は、回転ベルト33の幅方向中心を通る中心線25を基準に電極41と対称な形状を有している。図3に示されるように、電極42の複数の分岐部42Bは、電極41の複数の分岐部41Bの間に配置されている。本実施形態では、分岐部41B及び分岐部42Bは所定間隔ごとに交互に長手方向23に配置されている。
【0042】
回転ベルト33の内側に電極ローラ51(本発明の第1電極の一例)と電極ローラ52(本発明の第2電極の一例)とが設けられている。電極ローラ51,52は、電極41,42に電圧を印加するためのものである。電極ローラ51,52は、円筒状又は円柱状に形成された導電体で構成されている。電極ローラ51は、接触部41Aの露出面58に当接した状態で回転可能に支持されている。また、電極ローラ52は、接触部42Aの露出面59に当接した状態で回転可能に支持されている。電極ローラ51に、後述する電源制御部15から引き出されたリード線55が接続されおり、電極ローラ52に電源制御部15から引き出されたリード線56が接続されている。リード線55は、例えばブラシを介して電極ローラ51に電気的に接続されている。これにより、電源制御部15からリード線55及び電極ローラ51を介して電極41に電圧を印加することが可能となり、リード線56及び電極ローラ52を介して電極42に電圧を印加することが可能となる。
【0043】
なお、本実施形態では、電極ローラ51,52を用いて電極41,42に電圧を印加することとしたが、例えば、電極ローラ51,52を用いずに、リード線55,56と露出面58,59とをブラシで電気的に接続することにより電極41,42に電圧を印加するようにしてもよい。また、本実施形態では、駆動ローラ30及び従動ローラ31とは別個に電極ローラ51,52を設ける構成を採用したが、駆動ローラ30及び従動ローラ31が電極ローラ51,52を兼ねていてもかまわない。
【0044】
[電源制御部15]
電源制御部15は、予め定められた電圧を電極ローラ51,52それぞれに印加するよう制御するものである。この電源制御部15は、直流電圧源64(本発明の電界発生部の一例)と、スイッチング部68(本発明のスイッチング部の一例)とを有する。直流電圧源64は、電極41,42に電圧を印加することにより、シート支持面62を帯電させるものである。本実施形態では、後述するように、直流電圧源64は、電極41と電極42との間にX[V]の直流電圧を印加しており、これにより、電極41と電極42との間に電位差を生じさせている。この直流電圧源64は、例えばバッテリー、或いは、外部から入力された交流電圧を整流して直流電圧に変換する整流回路が該当する。直流電圧源64は、基準電位0[V](通常は接地箇所の電位)に維持された端子66と、上記基準電位0[V]に対して+X[V]の直流電圧に維持された端子65とを有する。
【0045】
スイッチング部68は、直流電圧源64によって電極41及び電極42に印加される電圧の正負を切り替えるものである。このスイッチング部68は、2つのスイッチ71,72を有する。これらのスイッチ71,72は、例えばトランジスタやリレー接点で構成することができる。スイッチ71,72それぞれは、2つの出力接点を有する。詳細には、スイッチ71は、共通端子である71Cと、2つの出力端子71A,71Bとを有する。端子71Cは、端子65に接続されており、端子71Aは、リード線55に接続されており、端子71Bは、リード線56に接続されている。また、スイッチ72は、共通端子である72Cと、2つの出力端子72A,72Bとを有する。端子72Cは、端子66に接続されており、端子72Aは、リード線56に接続されており、端子72Bは、リード線55に接続されている。
【0046】
本実施形態では、スイッチ71,72は、電源制御部15に設けられた図示しない制御回路によって、各出力接点が連動して動作するように構成されている。具体的には、上記制御回路によりスイッチ71,72が動作されないときは、スイッチ71は端子71Cと端子71Bとを導通する位置を保持し、スイッチ72は端子72Cと端子72Bとを導通する位置を保持する。この導通状態において、電極41の電位は+X[V]となり、電極42の電位は基準電位0[V]となっている。つまり、電極41は、電極42よりも高い電位となっている。一方、上記制御回路(不図示)によってスイッチ71,72が動作されると、スイッチ71は端子71Cと端子71Aとを導通する位置に切り換えられ、スイッチ72は端子72Cと端子72Aとを導通する位置に切り換えられる。この状態において、電極41の電位は基準電位0[V]となり、電極42の電位は+X[V]となる。つまり、電極41は、電極42よりも低い電位となる。
【0047】
[シートガイド17]
図1及び図2に示されるように、シートガイド17は、回転ベルト33によって搬送されたシート20をシート支持面62から剥離しつつ所定位置へ案内するものである。シートガイド17は、回転ベルト33のシート支持面62の上側に設けられている。このシートガイド17は、図示しないフレームに固定されている。もちろん、シートガイド17を上記フレームと一体に構成してもよい。
【0048】
シートガイド17は、シート支持面62から距離Dを隔てられた位置に配置されている。シートガイド17は、シート支持面62に対して傾斜するガイド面77を有する。上記距離Dは、後述するようにシート20の先端部20A(本発明の第1端部に相当)が静電気による斥力によって浮き上がったときにシート20の先端部20Aがガイド面77に乗り掛かることが可能な寸法に設定されている。なお、この距離Dは、ベース34の誘電率、回転ベルト33により搬送可能なシート20の種類(厚みや重量、材質など)、シート支持面62が水平でない場合は水平面に対するシート支持面62の角度などの要素に基づいて決定される。
【0049】
ガイド面77に連続するようにして通路82(本発明の分岐通路の一例)が形成されている(図2の破線参照)。通路82は、その先に設定された所定位置へシート20を案内するためのものである。図2に示されるように、通路82は、シートガイド17の手前付近を分岐点として通路81からシート支持面62に対して斜め上方へ向かって分岐している。言い換えれば、通路82は、通路81上に定められた分岐点から分岐している。この通路82には、シートガイド17によって案内されたシート20を搬送する搬送手段(不図示)が設けられていてもよい。
【0050】
ガイド面77に対向する位置に補助ガイド18が設けられている。この補助ガイド18は、シートガイド17と同様にシート支持面62の上側に配置されている。補助ガイド18とシート支持面62との間には、シート20が通過可能な隙間が形成されている。補助ガイド18は、ガイド面77に対向する対向面79を有する。ガイド面77と対向面79との間に、少なくともシート20が通過可能な隙間が形成されている。この隙間に通路82が連続していてもよい。本実施形態では、シート案内装置10は、後述するシート20の浮き上がり現象を利用して、ガイド面77と対向面79との間に形成された隙間にシート20が案内されるように動作する。
【0051】
[シート20の浮き上がり現象]
以下、図4及び図5を参照して、シート20の浮き上がり現象について説明する。図4(A)には、シート20がシート支持面62に吸着されている様子が示されている。図4(B)には、シート20がシート支持面62から浮き上がった様子が示されている。図4(C)には、シート20がシート支持面62へ引っ張られる様子が示されている。なお、図4においては、説明の便宜上、分岐部41Bとシート支持面62との間の厚みが極端に大きく表されている。また、図5(A)には、電極41に+X[V]の電圧が印加されたときの電界の向きが表されており、図5(B)及び(C)には、電極42に+X[V]の電圧が印加されたときの電界の向きが表されている。なお、図5においては、各電極41,42の下面から出る電気力線が省略されている。
【0052】
図4(A)に示されるように、電極41に+X[V]の電圧が印加され、電極42に基準電圧0[V]の電圧が印加されている。このとき、電極41と電極42との間には、電極41から電極42へ向かう向き(図5(A)の破線矢印に示される向き)の電界が生じる。図5に示される破線は、電極41と電極42との間に生じた電界における電気力線であり、矢印は電界の向きを示す。この電界が発生すると、誘電体からなるベース34は、誘電分極によって、電極41に近い部分に負極の電荷(分極電荷)が現れ、電極41から遠いシート支持面62に正極の電荷(分極電荷)が現れる。また、電極42から遠いシート支持面62に負極の電荷(分極電荷)が現れる。なお、回転ベルト33の内側面38にも同様に誘電分極が起こり、シート支持面62側で生じる現象と同じ現象が生じる。そのため、以下の説明では、内側面38で生じる現象についての説明は省略する。
【0053】
上述したように正極又は負極の電荷が現れたシート支持面62にシート20が搬送され、シート支持面62にシート20が配置されると、シート20においてシート支持面62に対向する対向面21には、シート支持面62に現れた電荷の極性とは逆の極性(逆極性)の電荷が現れる。具体的には、図4(A)に示されるように、電極41の上側に配置されたシート20においては、その対向面21に負極の電荷が現れる。また、電極42の上側に配置されたシート20においては、その対向面21に正極の電荷が現れる(図5(A)参照)。この現象は、シート20が誘電体としての性質が強いものであれば誘電分極によって生じ、シート20が導電体としての性質が強いものであれば静電誘導によって生じる。これにより、シート支持面62とシート20との間に静電気による引力が生じ、シート20がシート支持面62に吸着される。なお、一般に、プリンタやファクシミリ装置、複写機などの画像記録装置において使用されるシートは、誘電体としての性質が強いものが多い。本実施形態に係るシート案内装置10は、誘電体からなるシートに対して好ましく適用されるものである。
【0054】
本実施形態では、シート20の対向面21とは反対側の上面22にも一時的に電荷が現れる。詳細には、対向面21とは逆極性の電荷が現れる。しかしながら、上面22に現れた電荷は、隣接する逆極性の電荷によって互いに打ち消されるため、上面22に現れた電荷は徐々に消える。なお、シート20の対向面21に現れた電荷は、シート支持面62に現れた電荷との間に生じた静電気力によって引き合っている。そのため、シート20がシート支持面62に吸着されている間、対向面21に現れた電荷は、隣接する電荷同士で打ち消し合うことなく安定して残存する。
【0055】
次に、図4(A)に示される状態から、図4(B)に示される状態に電圧の正負が切り替えられた場合、つまり、図4(B)及び図5(B)に示されるように、電極41に印加されていた電圧が+X[V]から0[V]に変えられ、電極42に印加されていた電圧が0[V]から+X[V]に変えられた場合について考察する。この場合、図5(B)に示されるように、電極41と電極42との間には、電極42から電極41へ向かう向き(図5(B)の破線矢印に示される向き)の電界が生じる。この電界が発生すると、誘電体からなるベース34は、誘電分極によって、電極42に近い部分に負極の電荷(分極電荷)が現れ、電極42から遠いシート支持面62に正極の電荷(分極電荷)が現れる(図5(B)参照)。また、電極41から遠いシート支持面62に負極の電荷(分極電荷)が現れる。このとき、図4(B)及び図5(B)に示されるように、シート20の対向面21に現れている電荷とシート支持面62に現れている電荷の極性とが一時的に同一になる。そのため、シート支持面62とシート20との間に静電気による斥力が生じ、その斥力によってシート20がシート支持面62から離れる。言い換えれば、シート支持面62に吸着されていたシート20がシート支持面62から浮き上がる(図4(B)、図5(B)参照)。
【0056】
上記シート20の浮き上がり量は、ベース34の誘電率、回転ベルト33により搬送可能なシート20の種類(厚みや重量、材質など)、シート支持面62が水平でない場合は水平面に対するシート支持面62の角度などの要素によって決まる。本実施形態では、上述した距離Dは、シート20の浮き上がり量よりも小さい寸法に設定されている。
【0057】
シート20が浮き上がってシート支持面62との離間距離が大きくなるにつれて、シート20の対向面21に現れていた電荷は一時的に消滅する。このような電荷の消滅は、2つの原因によるものである。すなわち、シート20がシート支持面62から離れることによってシート支持面62に現れた電荷の影響が小さくなったために、対向面21に現れていた電荷が隣接する逆極性の電荷同士で打ち消し合う。また、シート支持面62に新たに現れた電荷の影響を受けて、シート20が誘電分極或いは静電誘導される過程において対向面21に現れていた電荷が一時的に消滅する。
【0058】
シート支持面62から浮かび上がったシート20は、シート支持面62に現れた電荷の影響を受けて再び誘電分極或いは静電誘導される。これにより、これまで対向面21の現れていた電荷とは逆極性の電荷が対向面21に現れる(図4(C)及び図5(C)参照)。つまり、シート支持面62に現れた電荷の極性とは逆極性の電荷が対向面21に現れる。これにより、図4(C)及び図5(C)に示されるように、シート支持面62とシート20との間に静電気による引力が再び発生して、シート20が再びシート支持面62に吸着される。
【0059】
なお、本実施形態では、電極41の分岐部41Bと電極42の分岐部42Bとが回転ベルト33の長手方向23に沿って交互に配置されている。そのため、電極41及び電極42によってシート20に現れる電荷の極性は、シート20の進行向き26に沿って交互に現れる。後述するようにシート20がシート支持面62から離れて通路82へ案内されたとしても、シート20が誘電体からなる場合は、分極電荷がシート20の表面に現れたまま存在するが、隣接する電極が逆極性の電荷を保持するため、隣接する電極間で電荷が打ち消し合うため、電荷はシート20の表面から短時間で消滅することになる。
【0060】
[シート20の案内動作]
以下、図6を参照して、シート20がシートガイド17によって案内される動作について説明する。図6(A)には、シート20がシート支持面62に吸着されている様子が示されている。図6(B)には、シート20の先端部20Aがシートガイド17の手前に到達した状態が示されている。図6(C)には、シート支持面62に接していたシート20が浮き上がった様子が示されている。図6(D)には、シート20の先端部20Aがガイド面77に乗り掛かった様子が示されている。図6(E)には、シート20の先端部20Aがガイド面77によって案内されている様子が示されている。なお、説明の便宜上、図6(A)では、スイッチ71が端子71Cと端子71Bとを導通する位置を保持し、スイッチ72が端子72Cと端子72Bとを導通する位置を保持しているものとする(つまり、電極41に+X[V]が印加され、電極42に基準電圧0[V]が印加されているものとする)。
【0061】
図6(A)に示されるように、図示しない搬送手段によってシート20が搬送されて、その先端部20Aがシート支持面62上に配置されると、先端部20Aにおいてシート支持面62との接触部がシート支持面62に吸着される。その後、上記搬送手段と回転ベルト33とによってシート20が進行向き26(図6の右側)へ搬送される。
【0062】
本実施形態では、図6(B)に示されるように、先端部20Aがシートガイド17の手前に到達すると、電源制御部15に設けられた図示しない制御回路によって、スイッチング部68の各スイッチ71,72の出力接点が切り換えられる。具体的には、上記制御回路によってスイッチ71,72が動作されて、スイッチ71が端子71Cと端子71Aとを導通する位置に切り換えられ、スイッチ72が端子72Cと端子72Aとを導通する位置に切り換えられる。この状態で、電極42に+X[V]の電圧が印加され、電極41に基準電圧0[V]の電圧が印加される。これにより、シート支持面62上に現れていた電荷の極性が反転される。この場合、言うまでもなく、シート支持面62においてシート20の先端部20Aが吸着されていた部位(第1端部吸着部位)に現れていた電荷の極性も反転されることになる。その結果、図6(C)に示されるように、シート20の先端部20Aだけでなく、シート20がシート支持面62に接触する接触部がシート支持面62から一時的に浮き上がる。なお、先端部20Aがシートガイド17の手前に到達したかどうかは、例えば、シート支持面62の上側に配置されたシート検出用センサや駆動ローラ30の回転軸35に設けられたロータリエンコーダなどの出力値に基づいて判定することが可能である。
【0063】
先端部20Aが浮き上がった状態でシート20が搬送されると、図6(D)に示されるように、先端部20Aがシートガイド17のガイド面77に乗り掛かり、ガイド面77に沿って通路82へ案内される。
【0064】
その後、しばらくすると、シート20とシート支持面62との間に静電気による引力が働き、シート20がシート支持面62に再び吸着される。しかしながら、先端部20Aがガイド面77に乗り掛かったように支持されているため、シート20がシート支持面62に吸着された状態でシート20が搬送されても、シートガイド17によってシート20がシート支持面62から剥がされる。そして、シート20は、シートガイド17によって徐々に剥離されながらガイド面77に沿って通路82側へ案内される。
【0065】
なお、上述の第1実施形態では、回転ベルト33に電極41と電極42とを設けることとしたが、例えば、図7に示されるように、電極42及び電極ローラ52を排除して、回転ベルト33に電極41のみを設けた構成を採用してもよい。この場合、電源制御部15が接地電位に対して+X[V]の電圧を電極41に印加し、シート20の先端部20Aがシートガイド17の手前に到達したときに、接地電位に対して−X[V]の電圧を電極41に印加する。この構成であっても、シート20を浮き上がらせて、シートガイド17のガイド面77に沿ってシート20を案内することが可能である。なお、回転ベルト33の全域に渡って電極を設けた構成とすることも可能である。
【0066】
〈第2実施形態〉
次に、図8を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図8は、本発明の第2実施形態に係るシート案内装置100の側面図である。図8には、複数の通路(82A,82B,82C)が示されている。
【0067】
第2実施形態のシート案内装置100が上述の第1実施形態と相違するところは、シート案内装置100に複数の通路82A,82B,82Cが備えられている点にある。なお、上記相違点以外の構成は、上述の第1実施形態と同様であるため、ここでは、上記相違点についてのみ説明し、その他の構成については第1実施形態の各構成要素に付した符号を用いることでその説明を省略する。
【0068】
図8に示されるように、通路82A,82B,82Cは、通路81に定められた複数の分岐点(本実施形態では3つの分岐点)から分岐されている。各分岐点には、シートガイド17と概ね同じ構成を有するシートガイド17A,17B,17Cが設けられている。シートガイド17A,17B,17Cは、回転ベルト33のシート支持面62の上側において図示しないフレームに固定されている。また、各シートガイド17A,17B,17Cに対向する位置に、補助ガイド18と概ね同じ構成を有する補助ガイド18A,18B,18Cが設けられている。
【0069】
このように構成されたシート案内装置100では、シート20の先端部20Aがシートガイド17A,17B,17Cのうちいずれか一つのシートガイド付近に到達したときに、電源制御部15に設けられた図示しない制御回路によって、スイッチング部68の各スイッチ71,72の出力接点が切り換えられる。これにより、シート支持面62上に現れていた電荷の極性が反転されて、シート20の先端部20Aがシート支持面62から一時的に浮き上がる。なお、シート支持面62の上側に配置されたシート検出用センサや駆動ローラ30の回転軸35に設けられたロータリエンコーダなどの出力値に基づいて先端部20Aの位置を判定することができるので、シートガイド17A,17B,17Cのうち所望するシートガイドに先端部20Aが到達したときにスイッチング部68の各スイッチ71,72の出力接点を切り換えるようにすれば、シート20を任意の通路へ案内することができる。
【0070】
〈第3実施形態〉
次に、図9を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。図9は、本発明の第3実施形態に係るシート案内装置120の側面図である。
【0071】
第3実施形態のシート案内装置120が上述の第1実施形態と相違するところは、通路81に沿って複数のベルト駆動装置113A,113B,113Cが設けられている点である。なお、上記相違点以外の構成は、上述の第1実施形態と同様であるため、ここでは、上記相違点についてのみ説明し、その他の構成については第1実施形態の各構成要素に付した符号を用いることでその説明を省略する。
【0072】
図9に示されるように、シート案内装置120は、複数のベルト駆動装置113A,113B,113Cが設けられている。ベルト駆動装置113A,113B,113Cは、上述の第1実施形態のベルト駆動装置13と概ね同様の構成を有するが、駆動ローラ30と従動ローラ31との間隔が搬送されるシート20の長手方向23の長さに比べて極端に狭く、回転ベルト33の長さも短く構成されている点が異なる。
【0073】
各ベルト駆動装置113A,113B,113Cは、シート20の進行向き26に沿って配置されている。各ベルト駆動装置113A,113B,113Cが備える回転ベルト33及び回転ベルト33に設けられた電極41,42は互いに絶縁されている。なお、各ベルト駆動装置113A,113B,113Cそれぞれに設けられたそれぞれの電極41,42が、本発明の分割電極に相当する。各ベルト駆動装置113A,113B,113C間には、シート20を進行向き26の下流側のベルト駆動装置へ受け渡すための逆三角形状のガイド122が設けられている。従動ローラ31に当接している回転ベルト33の湾曲部の曲率を大きくすることにより、当該湾曲部でシート20の先端部20Aが解離する。ガイド122は、この解離した先端部20Aを支持するとともに、下流側のベルト駆動装置へ案内する。
【0074】
各ベルト駆動装置113A,113B,113Cそれぞれの内側に電極ローラ51,52が設けられている。複数の電極ローラ51それぞれには、電源制御部15に接続されたリード線が接続されている。また、複数の電極ローラ52それぞれにも、電源制御部15に接続されたリード線が接続されている。上述の第1実施形態のスイッチング部68を電極ローラ51,52ごとに設けることによって、電源制御部15は、各電極ローラ51,52に印加される電圧を個別に制御することが可能である。
【0075】
このように構成されているため、本実施形態のシート案内装置120においては、シート20の先端部20Aがシートガイド17付近(正確にはシートガイド17の手前付近)に到達したときに、先端部20Aに対応するベルト駆動装置113Aの電極ローラ51,52への印加電圧だけをスイッチング部68で切り替えることができる。したがって、ベルト駆動装置113Aの電極ローラ51,52への印加電圧だけを切り替えることにより、ベルト駆動装置113Aのシート支持面62に現れていた電荷の正負が反転する。その結果、シート20の先端部20Aだけがシート支持面62から一時的に浮き上がる。そして、先端部20Aが浮き上がった状態でシート20が搬送されると、先端部20Aがシートガイド17のガイド面77に乗り掛かり、ガイド面77に沿って通路82へ案内される。
【0076】
〈第4実施形態〉
次に、図10を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。図10は、本発明の第4実施形態に係るシート案内装置130の側面図である。
【0077】
第4実施形態のシート案内装置130が上述の第1実施形態と相違するところは、本発明の支持部材として回転ベルト33に代えてプレート状の支持台133が用いられている点と、ベルト駆動装置13に代えて支持台133を駆動させる駆動ローラ132が設けられている点である。駆動ローラ132は、支持台133の裏面に接触した状態で回転可能に支持されている。支持台133は、誘電体からなるベース34と、該ベース34内に埋設された電極41,42とを有する。電極41,42の電極パターンは、上述の回転ベルト33と同様である。支持台133の裏面には、電極ローラ51,52が設けられている。なお、本実施形態では、電極ローラ51,52を用いることとしたが、電極ローラ51,52を用いずにリード線55,56を直接に電極41,42に接続してもかまわない。
【0078】
支持台133の上面がシート支持面62である。電極41,42に所定電圧が印加された状態でシート支持面62にシート20が載置されると、シート20がシート支持面62に吸着する。この状態で、駆動ローラ132がモータなどによって回転駆動されると、シート20とともに支持台133が進行向き26へ移動する(図10(A)参照)。本実施形態のシート案内装置130において、シート20の先端部20Aがシートガイド17の手前に到達したときに、電極41,42への印加電圧の正負が逆にされると、図10(B)に示されるように、シート20がシート支持面62から浮き上がり、先端部20Aがガイド面77によって通路82側へ案内される。なお、シート20が通路82へ完全に案内されると、駆動ローラ132が逆回転駆動されて、次のシートを載置可能な位置へ支持台133を移動させる。
【0079】
また、図11に示されるように、支持台133を固定して、シートガイド17を移動させるように構成されたシート案内装置135とすることも可能である。図11は、本発明の第4実施形態の変形例に係るシート案内装置135の側面図である。
【0080】
この変形例のシート案内装置135では、支持台133が図示しないフレームに固定されている。一方、シートガイド17には、駆動ローラ132の駆動力が伝達される伝達部136が設けられている。駆動ローラ132は、この伝達部136の裏面に当接された状態で回転可能に支持されている。
【0081】
電極41,42に所定電圧が印加された状態でシート支持面62にシート20が載置されると、シート20がシート支持面62に吸着する(図11(A)参照)。駆動ローラ132がモータなどによって回転駆動されると、シートガイド17がシート20の先端部20A側へ移動する。シートガイド17が移動して、先端部20Aが相対的にシートガイド17付近に到達すると、電極41,42への印加電圧の正負が逆にされる。これにより、シート20がシート支持面62から浮き上がる。このとき、浮き上がった先端部20Aとシート支持面62との間の隙間にシートガイド17が入り込むと、先端部20Aがシート支持面62から剥離されてガイド面77に乗り掛かる。先端部20Aがシートガイド17によって剥離される際にシート20はガイド面77から剥離方向の力を受ける。そのため、シート20は、先端部20A側から順次剥離されながらガイド面77に沿って通路82側へ案内される。
【0082】
〈他の実施形態〉
なお、上述の実施形態では、シート支持面62が水平となるように回転ベルト33や支持台133が設けられた例について説明したが、本発明は、シート支持面62が水平である機構に限定されない。例えば、回転ベルト33については、図12及び図13に示されるように、シート支持面62が鉛直面となるようにベルト駆動装置13等を配置してもかまわない。このようにシート支持面62を鉛直面としても、シート20は静電気の引力によってシート支持面62に吸着しているため、シート20が落下することはない。なお、シート支持面62を水平面に対して所定の角度で傾斜させてもかまわない。
【0083】
また、図12に示されるように、通路81から分岐した複数の通路82それぞれに、シートが排出される排出トレイ140(本発明の排出トレイの一例)を設けてもかまわない。このように構成されることで、シート20を任意の排出トレイ140に排出させることができる。なお、この場合、回転ベルト33のシート支持面62だけでなく、下端部の湾曲面145にもシート20が吸着された状態でシート20が搬送される。この構成では、湾曲面145の曲率の影響によってシート20が剥離しないように、湾曲面145に対向する位置に従動ローラ147を設けることが好ましい。この従動ローラ147は、第1実施形態における従動ローラ39と同様のものであり、図示しない弾性部材によって湾曲面145に圧接された状態でフレームなどに軸支されている。
【0084】
また、図13に示されるように、通路81から分岐した複数の通路82それぞれに画像記録ユニット142及びプラテン143を設けてもかまわない。このように構成されることで、任意のプラテン143にシート20を搬送して、シート20に対する画像記録を任意の画像記録ユニット142に実行させることができる。なお、この場合は、回転ベルト33のシート支持面62だけでなく、下端部の湾曲面145及び上端部の湾曲面146にもシート20が吸着された状態でシート20が搬送される。したがって、この構成では、湾曲面146におけるシート20の剥離を防止するために、湾曲面146に対向する位置にも、湾曲面146の曲率に応じた数の従動ローラ147を設けることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、第1実施形態に係るシート案内装置10の外観構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、シート案内装置10の側面図である。
【図3】図3は、回転ベルト33の電極パターンを示す図である。
【図4】図4は、図3における切断線IV−IVの断面図である。
【図5】図5は、図3における切断線V−Vの断面図である。
【図6】図6は、シート20が案内される動作を説明するための図である。
【図7】図7は、回転ベルト33の電極パターンの変形例を示す図である。
【図8】図8は、第2実施形態に係るシート案内装置100の側面図である。
【図9】図9は、本発明の第3実施形態に係るシート案内装置120の側面図である。
【図10】図10は、本発明の第4実施形態に係るシート案内装置130の側面図である。
【図11】図11は、本発明の第4実施形態の変形例に係るシート案内装置135の側面図である。
【図12】図12は、通路82に排出トレイ140が設けられた構成を示す側面図である。
【図13】図13は、通路82に画像記録装置142及びプラテン143が設けられた構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0086】
10・・・シート案内装置
13・・・ベルト駆動機構
15・・・電源制御部
17・・・シートガイド
18・・・補助ガイド
20・・・シート
30・・・駆動ローラ
31・・・従動ローラ
33・・・回転ベルト
41,42・・・電極
51,52・・・電極ローラ
55,56・・・リード線
62・・・シート支持面
64・・・直流電圧源
68・・・スイッチング部
77・・・ガイド面
81・・・通路
82・・・通路
100,120,130,135・・・シート案内装置
133・・・支持台
140・・・排出トレイ
142・・・画像記録ユニット
143・・・プラテン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体からなる支持面を有する支持部材を有し、帯電する上記支持面に静電吸着されたシートを所定位置へ案内するシート案内装置であって、
上記支持部材に設けられた第1電極と、
上記第1電極に電圧を印加することによって上記支持面と上記第1電極との間に電界を発生させることによって上記支持面を帯電させる電界発生部と、
上記支持面に対して傾斜するガイド面を有し、上記支持面から所定距離隔てられ、上記所定位置へ続く通路を形成するガイド部材と、
上記支持部材及び上記ガイド部材の双方若しくはいずれか一方に駆動力を付与することによって上記所定距離を隔てたまま上記支持部材と上記ガイド部材とが相対的に移動されることにより、上記支持面に支持されたシートを上記ガイド部材側へ進行させる移動手段と、
上記移動手段によってシートにおける上記ガイド部材側の第1端部が上記ガイド部材付近に到達したときに、上記支持面において上記第1端部が吸着されている第1端部吸着部位に現れた電荷の正負を反転させることにより、少なくとも上記所定距離よりも大きく上記第1端部を上記支持面から浮き上がらせる反転手段とを具備するシート案内装置。
【請求項2】
上記第1電極は、上記支持部材の移動方向に沿って配置され互いに絶縁された複数の分割電極で構成され、
上記電界発生部は、上記複数の分極電極それぞれと上記支持面との間に電界を発生させるものであり、
上記反転手段は、上記第1端部が上記ガイド部材付近に到達したときに上記第1端部吸着部位に対応する分割電極と上記支持面との間で発生する電界の向きを反転させるものである請求項1に記載のシート案内装置。
【請求項3】
上記反転手段は、上記第1端部が上記ガイド部材付近に到達したときに上記電界発生部による所定の基準電位に対する電圧の正負を反転させるスイッチング部を有する請求項1又は2に記載のシート案内装置。
【請求項4】
上記支持部材に設けられ、上記基準電位に維持された第2電極を更に備え、
上記スイッチング部は、上記第1電極と上記第2電極とを切り替えるものである請求項3に記載のシート案内装置。
【請求項5】
上記第1電極及び上記第2電極が上記移動手段による移動方向に沿って交互に配置されており、
上記電界発生部は、上記第1電極及び上記第2電極間に電位差を生じさせるものである請求項4に記載のシート案内装置。
【請求項6】
上記支持部材は、連続した支持面を有する回転体である請求項1から5のいずれかに記載のシート案内装置。
【請求項7】
上記回転体は、少なくとも2つの回転支持部によって回転可能に架設され、外側に上記支持面を有する回転ベルトである請求項6に記載のシート案内装置。
【請求項8】
上記支持面に沿って形成された主通路と、
上記主通路上に定められた少なくとも一つの分岐点から分岐する分岐通路とを備え、
上記ガイド部材は上記分岐点に固設されてなり、
上記移動手段は、上記支持部材に駆動力を付与することにより上記所定距離を隔てたまま上記主通路に沿って上記支持部材を移動させる請求項1から7のいずれかに記載のシート案内装置。
【請求項9】
上記主通路上に定められた複数の分岐点それぞれから分岐された複数の分岐通路を備え、
上記ガイド部材は上記複数の分岐点それぞれに固設されてなり、
上記反転手段は、上記シートの第1端部がいずれかの上記ガイド部材付近に到達したときに上記第1端部吸着部位に現れた電荷の正負を反転させるものである請求項8に記載のシート案内装置。
【請求項10】
上記複数の分岐通路の少なくとも一つに設けられ、上記シートが排出される排出トレイを備える請求項9に記載のシート案内装置。
【請求項11】
上記複数の分岐通路の少なくとも一つに設けられ、上記シートに画像を記録する画像記録部を備える請求項9又は10に記載のシート案内装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−52916(P2010−52916A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221041(P2008−221041)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】