説明

シート給送装置

【課題】 センサを追加することなく簡単な構成で、シートの積載量検知が可能な給送装置を提供する。
【解決手段】 プリンタは、スプリング403の付勢力に抗して中板402を押圧し、中板402上のシートを給紙ローラ405から一定距離離間させる押下げカム407や押下げスライダ413などの離間手段と、離間手段を動かすDCモータ等の離間駆動手段と、離間駆動手段が離間手段を駆動する際の、離間駆動手段にかかる駆動負荷を計測する計測手段と、中板402や離間手段等に負荷を付与するブレーキ板420等の負荷付与手段とを有する。離間手段によってシートが給紙ローラ405から離間するときにブレーキ板420等が負荷を付与するとともに、ブレーキ板420等は中板402の回動角度に応じて、付与する負荷を変化させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数枚の用紙などのシートを積載し装置本体に一枚ずつ供給するシート給送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、積載された複数のシートの分離給送を行い、シートに画像を形成するプリンタ、複写機、ファクシミリなどの画像形成装置において、特許文献1に述べられているような、積載されているシートの積載量を検知する装置がある。この装置では、検知されたシートの積載量によってメッセージを出したり、処理を変更したりしている。
【0003】
また、シートを圧板上に積載し、シート給送時に圧板を上下させ、用紙上面を給送ローラに当接させて給送を行う給紙装置において、シートの積載量によって圧板に動作量が変わることを避けるために、特許文献2に述べられているような装置がある。
【0004】
特許文献2に開示された装置では、シート離間時のシート上面と給送ローラとの距離をシート積載量によらず一定にし、シート給紙時の圧板の動作量を一定にすることでシート搬送のタイミングを一定にすることが出来る。そして、圧板動作による積載されたシートの整列性への影響も最小に出来るため、安定したシート給送を行うことが出来る。
【0005】
しかしながら、特許文献1に述べられているように、シート積載量検出のために専用のスイッチやセンサ等を設けると、機構的、電気的にスペースやコストがかかってしまう。
【0006】
また、特許文献3に開示されるように、既存のシート搬送検出用センサを活用することで専用のセンサを設けずにシートの積載量を検出するものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−79537号公報
【特許文献2】特開平2006−137564号公報
【特許文献3】特開平8−259039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では積載量の差による圧板動作時間の変化を検出しているので、圧板動作時間がシート積載量に応じて変化することが必要となる。
【0009】
ところが、特許文献2に記載されるような給紙性の安定や時間の短縮のために圧板の動作量を一定にした給紙装置では、圧板動作時間が積載量に関わらず一定であるため、特許文献1で開示されている技術を適用するのが難しい。
【0010】
そこで本発明は、圧板の動作量を一定にしてシートの給送性を安定させた装置において、専用のセンサ等を追加することなく、シートの積載量を検出することが出来る給送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、シートに当接して該シートを給送する給送手段と、シートを積載し、積載されたシートのうちの最上層のシートが前記給送手段に当接するように回動可能に支持された圧板と、圧板に積載されたシートを給送手段に圧接させるために圧板を付勢する付勢手段と、付勢手段の付勢力に抗して圧板を押圧し、シートを給送手段から一定距離離間させる離間手段と、離間手段を動かす離間駆動手段と、離間駆動手段が離間手段を駆動する際の、離間駆動手段にかかる駆動負荷を計測する計測手段と、圧板と離間手段と離間駆動手段のうちの少なくともどれか一つに負荷を付与する負荷付与手段とを有する。さらに、離間手段によってシートが給送手段から離間するときに負荷付与手段が負荷を付与するとともに、負荷付与手段は圧板の回動角度に応じて付与する負荷を変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、圧板上のシートを給送手段から離間させる離間動作の負荷を圧板の回動角度に応じて変えることで、離間動作時の圧板の角度すなわちシートの積載量に応じた駆動負荷の違いを計測し、この計測結果から簡単に概略の積載量を算出できる。また駆動負荷の計測に関しては、モータ駆動のPWMデューティから算出できるため、新たに専用の計測手段を設ける必要も無い。このため、簡単な構成で、センサ追加によるコスト増加を抑えたシート残量検知が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態によるシート給送装置を備えたインクジェットプリンタの本体構成を表す斜視図。
【図2】図1のインクジェットプリンタ本体の断面図。
【図3】図1のシート給送装置を示す斜視図。
【図4】図3のシート給送装置の断面図。
【図5】図4の押下げ爪周辺の説明図。
【図6】図3のカセット内の用紙満載時での給紙動作の説明図。
【図7】図3のカセット内の用紙中載時での給紙動作の説明図。
【図8】図3のカセット内の用紙少載時での給紙動作の説明図。
【図9】本実施形態によるシート給送装置での給紙動作中のPWMデューティのグラフ。
【図10】本実施形態によるシート給送装置の積載量検出フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のシート給送装置の実施形態について図面を参照して説明する。ここでは、本発明のシート給送装置を適用されたインクジェットプリンタを例にとって説明することにするが、勿論、本発明のシート給送装置はインクジェットプリンタ以外の装置にも適用可能である。
【0015】
図1は本発明のシート給送装置を用いたインクジェットプリンタの主要内部構成を表す斜視図であり、図2は該インクジェットプリンタの主要部分を説明する断面図である。
【0016】
図1及び図2に示されるインクジェットプリンタ本体1は、シートのおもて面にインク滴を吐出して画像を形成する記録部2と、装置内に積載されたシートである記録紙Pを一枚ずつ分離して給送するシート給送装置4と、を備える。シート給送装置4から分離給送された記録紙Pは、搬送路31に配置された搬送ローラ32で狭持されつつ搬送され、搬送路下流側に配置された記録部2に搬送される。
【0017】
記録部2には、用紙搬送方向と直交する方向に往復動作するキャリッジ21が配設されており、キャリッジ22は、インクを記録紙に吐出する不図示のヘッドと、該ヘッドにインクを供給するインクタンク22とを保持している。
【0018】
このようなインクジェットプリンタでは、搬送部3から搬送された用紙の先端位置を所定位置まで搬送した後、キャリッジ21を記録紙搬送方向と直交する方向に移動しながら前記ヘッドよりインク滴を吐出して、所定のライン分の画像データを用紙に記録する。その後、用紙を所定ライン分搬送し次の画像データを記録する。上記の手順を一枚分の記録データが終了するまで繰り返し、一枚分の記録が終了したら、排紙ローラ24によって用紙を排紙トレイ23に排出する。
【0019】
図3は、本発明に係るシート給送装置4の斜視図であり、図4にはそのシート給送装置の断面図が示されている。図4(a)はカセット400の側面の様子を説明する断面図であり、図4(b)はローラ類等の状態を説明する断面図であり、図4(c)は中板の押し下げ動作を説明する断面図である。このシート給送装置4は画像形成装置である上述のインクジェットプリンタに組み込まれ、A4、レター(LTR)やリーガル(LGL)等いわゆる定形紙の給紙が可能である。
【0020】
まず、本実施の形態の構成について説明する。図3に示すように、箱状の枠体401で構成されて上面が開口している給紙カセット400が、インクジェットプリンタ本体に設けられたカセットガイド(不図示)に沿って、図2の右側から着脱可能に構成されている。給紙カセット400の枠体401の内側には、端部を支軸401Aで揺動可能に軸支された圧板としての中板402が配置されている。図4(b)に示すように中板402と枠体401の底部との間には、付勢手段としてのコイルスプリング403が配置され、このコイルスプリング403の弾性力によって、中板402は図4中矢印X方向に付勢される。
【0021】
中板402の支軸401Aと反対側の端部の上方に、プリンタ本体のフレームによって支持されている給紙ローラ軸404が配置されている。給紙ローラ軸404には、給送手段として給紙ローラ405が取付けられている。
【0022】
コイルスプリング403の弾性力により中板402が矢印X方向に付勢されて回動すると、中板402に積載された用紙Pのうち最上層の用紙P1が給紙ローラ405に当接して、中板402の回動が停止されて用紙を給送可能状態となる。
【0023】
また、分離ローラ409が給紙ローラ405に対向して配置されており、分離ローラ409は支軸408Aを中心に揺動自在なホルダ408に支持されている。ホルダ408は不図示のバネにより給紙ローラ405に向かって付勢され、その結果分離ローラ409と給紙ローラ405は圧接した状態を維持する。分離ローラ409は不図示のトルクリミッタを介してホルダ408に支持され、所定のトルク以上になるとホルダ408に対して回転するよう構成されている。そして、給紙ローラ405が回転駆動されると、中板402に積載された用紙Pが給紙ローラ405と分離ローラ409のニップ部に送り込まれる。ニップ部に導かれる用紙が一枚の場合、分離ローラ409は給送される用紙に連れ回る。しかし二枚の用紙が重なって給送された場合は用紙間の摩擦力よりもトルクリミッタによる摩擦力の方が勝り、分離ローラ409の回転は停止し重送された用紙のうちの下側の用紙は分離ローラ409に塞き止められ最上層の用紙のみが下流側に搬送される。
【0024】
また、給紙動作で給紙カセット400から下流側に飛び出した二枚目以降の用紙をカセット側に押し戻す戻しレバー410が設けられており、戻しレバー410は支軸410Aを中心に回動可能かつ上下動可能に構成されている。
【0025】
戻しレバー410の先端は、給紙ローラ405と分離ローラ409のニップ部に対して下流側で通紙経路外に退避し、ニップ部近傍では通紙経路内に進入し上流側で再度通紙経路外に退避する回動軌跡を描くよう配置されている。
【0026】
また、ホルダ408と係合及び離間可能なホルダ解除レバー411が設けられていて、支軸411Aを中心に回動可能に構成されている。ホルダ解除レバー411がホルダ408と係合する位置の場合、ホルダ408をバネ力に抗して給紙ローラ405から離間する方向に回動させ、結果、分離ローラ409が給紙ローラ405から離間する。他方、ホルダ解除レバー411がホルダ408と離間する位置の場合、ホルダ408はバネ力によって給紙ローラ405と分離ローラ409との圧接状態を維持する。
【0027】
レバー410の支軸410Aの端部とホルダ解除レバー411の支軸411Aの端部にはそれぞれカムフォロア(不図示)が設けられている。各カムフォロアはそれぞれコントロールカム412のカム面と係合し、コントロールカム412の回転に応じて、戻しレバー410とホルダ411が所望の用紙分離動作をするようカム面が形成されている。
【0028】
さらに、本発明のシート給送装置を構成する離間手段、およびこれを動かす離間駆動手段の例について説明する。
【0029】
給紙ローラ軸404の搬送方向上流側には押下げカム軸406が設けられ、この軸の両端部であって中板402上の記録紙Pの紙幅よりも外側で記録紙Pと干渉しない位置に、押下げカム407が取付けられている。
【0030】
また、給紙カセット400に対して上下動(図中X方向またはその反対方向)可能に構成された押下げスライダ413が設けられている。押下げスライダ413は、枠体401に縦長の抜き穴状に設けられたスライドガイド部401Bに取り付けガイドされることで上下動自在に取付けられている。この押下げスライダ413の上部には上端突起部413Aが形成されており、押下げスライダ413がコイルスプリング418によって上方に付勢されることにより押下げカム407の外周カム面に上端突起部413Aを常に摺接するようにしている。そのため、押下げスライダ413は押下げカム407が回転することで押下げカム407のカムプロファイルに沿ってスライドガイド401Bに沿って矢印X方向に揺動する。
【0031】
また、この押下げスライダ413の内側には押下げ爪414が設けられている。図5(a)は押下げスライダ413と押下げ爪414の構成を説明する図である。押下げ爪414は、押下げスライダ413に設けられているガイド穴413Bに押下げ爪414のガイド軸414Aを係合させることにより、押下げスライダ413の揺動方向と交差する図中矢印W方向又はその反対方向に移動可能となっている。一方、押下げ爪414にはガイド軸414Bが形成され、枠体401に設けられたガイド穴401Cと係合している。押下げ爪414はバネ415によって常にW方向に付勢され、押下げ爪414のガイド軸414Bはガイド穴401Cのカム面401Dと摺接することで位置が決まる。押下げ爪414の端部には、移動方向(W方向)に向かって先端が形成された爪部414Cが設けられており、この爪部414Cに対向して中板402の先端側には中板爪416が取付けられている。中板爪416は中板402に対してスライド可能に構成され不図示のバネによって押下げ爪414に近づく方向に付勢されている。
【0032】
そして、押下げスライダ413が上下動することにより、カム面401Dが軸414Bに摺動して押下げ爪414が移動する。押下げスライダ413が上方に移動するときには、押下げ爪414がバネ415の弾性力に抗して中板爪416から離れる方向(図中矢印Wと反対方向)に移動する。他方、押下げスライダ413が下方に揺動するときには、バネ415の弾性力により押下げ爪414の爪部414Cが中板爪416に係合するように移動するとともに、係合した中板爪416を押下げて中板402を矢印Xとは反対方向に一定の量だけ揺動させる。なお、押下げ爪414の爪部414Cが中板爪416と係合する際、押下げ爪414はバネ417の付勢力に抗して中板爪416をスライド方向(図中W方向)に押し、中板爪416が中板402の突当部(不図示)に突き当たる位置までスライドしている。
【0033】
図5(b)は押下げ爪414と中板爪416の周辺を説明する図である。図5に示すように、押下げ爪414の爪部414Cはそれぞれにロック面414Dとテーパ面414Eとを備え、中板爪416の爪部416Aもそれぞれにロック面416Bとテーパ面416Cとをそれぞれ備えている。
【0034】
中板402を矢印Xとは反対方向に揺動させようとすると、押下げ爪414のテーパ面414Eと中板爪416のテーパ面416Cとが係合するため押下げ爪414は矢印Wと反対方向に逃げて、中板402は移動が規制されず揺動可能である。また、中板402を矢印X方向に揺動させようとすると、押下げ爪414のロック面414Dと中板爪416のロック面416Bが係合して、押下げ爪414は矢印Wと反対方向に移動することができず、中板402は揺動が規制される。このように、押下げ爪414の爪部414Cと中板爪416の爪部416Aとで、一方向の移動は規制され、他方向の移動は自由であるラチェット機構が構成されている。
【0035】
また、給紙ローラ405、押下げカム407、およびコントロールカム412(図3)はギア連結され不図示の駆動源である給紙モータからの駆動を受けて回転駆動される。
【0036】
なお、給紙カセット400には、インクジェットプリンタ本体1から引き出した状態で、中板402を下まで押し下げると、押し下げた位置で中板402をロックするための図示しない中板ロック機構が設けられている。これにより、用紙Pの積載スペースを広く確保することができて中板402上に用紙Pのセットが容易にできる。そして、中板402が中板ロック機構でロックされている状態で給紙カセット400をインクジェットプリンタ本体1に装着すると、装着途中で、カセットガイドに形成された図示しない中板ロック解除部により中板ロック機構による中板402のロックが解除される。
【0037】
次に、第1の実施の形態であるシート給送装置4における一連の用紙給送動作について図6、図7および図8を用いて説明する。図6は中板402に積載されている用紙の積載量が多い場合(満載時)であり、図7は用紙の積載量が半分程度の場合(中載時)、図8は用紙の積載量が少量の場合(少載時)をそれぞれ示している。
【0038】
給紙カセット400をインクジェットプリンタ本体1から引き出した状態で、中板402を押し下げると、中板ロック機構(図示しない)によって中板402がロックされ、その状態で用紙束を中板402上にセットする。次に、給紙カセット400をインクジェットプリンタ本体1に装着すると中板ロック解除部により中板ロック機構のロックが解除される。このとき、給紙カセット400に取付けられた押下げスライダ413は、押下げカム軸406に取付けられた押下げカム407に当接した状態で装着される。
【0039】
図6(a)、図7(a)、図8(a)に示すように、給紙カセット400が所定の位置に装着されると、押下げスライダ413に設けられている上端突起413Aと押下げカム407の凹部407Aとが係合し、待機状態となる。この状態では、押下げ爪414の爪部414Cが中板爪416の爪部416Aに係合していて、積載されている用紙Pの上面と給紙ローラ405とは離間している。また、分離ローラ409は給紙ローラ405に圧接し、戻しレバー410は分離ローラの上流側、すなわち用紙が給紙ローラ405と分離ローラ409のニップ部への進入を阻止する位置にある。
【0040】
給紙信号に基づき不図示の駆動源である給紙モータが回転を始めると、ギア列を介して給紙ローラ405及び押下げカム407ならびにコントロールカム412が回転する。図中の矢印に示すように給紙ローラ405は時計回りに、押下げカム407ならびにコントロールカム412は反時計回りに回転する。押下げスライダ413はコイルスプリング418の弾性力によって上方へ付勢されていて上端突起部413Aが押下げカム407に常時当接しているため、押下げカム407のプロファイルに沿って上端突起部413Aが移動する。これにより、押下げスライダ413がスライドガイド401Bに沿って上方へ揺動し、押下げスライダ413に取付けられた押下げ爪414も押下げスライダ413と同様に上方に揺動する。このとき、戻しレバー410はコントロールカム412のカム面と係合するカムフォロアがカム面に沿って回動することで分離ローラ下流側の通紙経路外の退避位置に移動する。
【0041】
さらに給紙ローラ405を回転させると、押下げスライダ413がさらに上方へ揺動する。すると、押下げ爪414の軸414Bが枠体401のカム面401Dと摺動し、カム面401Dに沿って押下げ爪414は押下げスライダ413内を矢印Wと反対方向に略水平移動する。これにより、押下げ爪414と中板402に取付けられていた中板爪416との係合が外れて中板402の規制が解除される。中板402はコイルスプリング403によって常に上方へ付勢されているため、規制が解除されると中板402は支軸401Aを中心に矢印X方向に上昇する。そして、中板402に積載された最上位の用紙P1が給紙ローラ405に圧接される(図6(b)、図7(b)、図8(b))。さらに給紙ローラ405が回転することにより、給紙ローラ405と最上位の用紙P1の摩擦により用紙P1が図中の矢印Y方向に給送される。
【0042】
送り出された用紙が給紙ローラ405と分離ローラ409の間に到達すると、ニップ部において上述したように用紙は一枚ずつに分離される。押下げカム407が更に回転し押下げスライダ413の上端突起部413Aを押下げ始める。押下げスライダ413はバネ418の弾性力に抗して、給紙カセット400に形成されたガイド401Bに沿って下方へ移動する。押下げスライダ413が下方に揺動すると、押下げ爪414はガイド軸414Bがカム面401D(図5(a))に摺接しながらコイルスプリング415によって押下げスライダ413内を矢印W方向に移動する。
【0043】
そして、押下げ爪414と中板402に取付けられた中板爪416とが係合を始める(図6(c)、図7(c)、図8(c))。更に押下げカム407の回転が進むと、押下げ爪414のロック面414D(図5(b))と中板爪416のロック面416B(図5(b))が係合する。さらに、押下げ爪414の爪部414Cの下降に伴って中板爪416も下降して中板402が押し下げられる(図6(d)、図7(d)、図8(d))。
【0044】
このように押下げカム407によって押下げスライダ413を下方に揺動させることで、中板爪416が押し下げられる。これにより、コイルスプリング403の弾性力に抗して中板402を矢印Xとは反対方向に揺動させ、中板402上の最上位の用紙P1の上面と給紙ローラ405の間に一定量の隙間を空け給紙ローラ405と用紙最上面との間に一定量の離間がなされる。その際、上記の戻しレバー410はコントロールカム412のカム面に沿って不図示のカムフォロアが回動し用紙搬送経路に侵入しつつ給紙ローラ405と分離ローラ409のニップ部へ移動する。同時にホルダ解除レバー411はコントロールカム412のカム面に沿って不図示のカムフォロアが回動し、ホルダ408に軸支された分離ローラ409を給紙ローラ405から離間させる。分離ローラ409が給紙ローラ405から離間した後、戻しレバー410はコントロールカム412のカム面に沿って不図示のカムフォロアが更に回動し分離ローラ409の上流側の搬送経路外に退避する。
【0045】
上述した戻しレバー410の一連の動きによって、給紙ローラ405と分離ローラ409とのニップ部に塞き止められていた2枚目以降の用紙は戻し爪410の先端によって給紙カセット内に押し戻される。その後、ホルダ解除レバー411はコントロールカム412のカム面に沿って不図示のカムフォロアがさらに回動する。これにより、ホルダ408に軸支された分離ローラ409を給紙ローラ405に再度圧接させ、一枚分離した記録紙を給紙ローラ405とのニップ部で狭持しつつ搬送する。こうして、給紙カセット400内に積載された用紙から一枚分離し給送する動作が確実に行われる。
【0046】
その後、給紙ローラ405をさらに回転させると、図6(a)、図7(a)、図8(a)に示すように、押下げスライダ413に設けられた上端突起413Aと押下げカム407の凹部407Aとが係合し、初期の待機位置(ホームポジション)に保持され一連の分離動作が終了する。上述した押下げ爪414と中板爪416の係合開始から用紙P上面と給紙ローラ405の間に一定距離離間がなされ、待機位置に戻るまでの一連の動作を以後は、「一定量離間動作」と呼ぶ。
【0047】
その後、最上位の用紙P1は給紙ローラ405と分離ローラ409で挟持されて、下流側に備えられている搬送ローラ対32に向けて分離搬送され、さらに用紙は搬送ローラ対32により記録部2に搬送される。そして、引き続き給紙ローラ405を回転させれば、上記と同様にして、次の用紙Pを連続して給送することができる。
【0048】
また本実施形態では、カセット枠体401の給紙方向先端側下方で、中板爪416に対応する位置に、ブレーキ板420が設けられている。ブレーキ板420は、バネ421によって中板爪416の方向に付勢されている。中板爪416が押下げ爪414に押され給紙方向に迫り出した状態で、中板402の回動に応じて中板爪416が下降すると、中板爪416先端に設けられた摺動部416Dと圧接摺動するよう、ブレーキ板420は配置されている。(図6(d)、図7(d)、図8(d)参照)なお、中板爪416の摺動部416Dまたはブレーキ板420のいずれか一方は摺動抵抗の高いゴム材料(例えばシリコンゴム)で構成されている。
【0049】
ブレーキ板420は枠体401の下方に設けられているため、中板402の先端が枠体401の下方まで回動し、更に中板爪416がブレーキ板420方向に移動したときのみ、ブレーキ板420と摺動部416Dは圧接摺動することになる。すなわち、一定量離間動作時に圧接摺動する。ブレーキ板420の作用については後述する。
【0050】
上述した中板402の昇降動作では、図6、図7、図8に示すように、中板402に積載された用紙Pの積載量(積載高さ)が異なっても、押下げ爪414に設けられた複数の爪部414Cと中板爪416の爪部416Aとが係合する位置が変わる。これにより、給紙ローラ405の回転開始からほぼ同じタイミングで中板402を給紙ローラ405から離間させられる。更に、積載されている用紙Pの最上面と給紙ローラ405との間に一定量の離間を行うことが出来る。給紙ローラ405と用紙を一定量離間させる事で給紙開始から給紙ローラ405に用紙が圧接するまでの時間が均一となり給紙動作時間を一定に出来る。また、給紙ローラ405に近い位置で用紙を離間させ待機させることで、中板402が勢い良く上昇することを防ぎ、給紙時に発生する用紙と給紙ローラ405の衝突音を低減できる効果がある。
【0051】
シート給送装置の駆動用のモータとしてDCモータを用いている。そして、DCモータの駆動制御方法としてはPWM(パルス幅変調方式)制御が用いられている。また、駆動系にはエンコーダが設けられエンコーダの出力からその時点での駆動系の駆動量や駆動速度を算出できるようシステム構成されている。これらの駆動量や駆動速度などの駆動情報を元に、DCモータに通電するパルス幅を変調(デューティを変化)させ、目標とする駆動量や駆動速度に到達させるフィードバック制御により、本実施形態にかかるシート給送装置の駆動系は駆動制御されている。ここでパルス幅を大きく(デューティを大きく)するとモータ出力は大きくなり、パルス幅を小さく(デューティを小さく)するとモータ出力は小さくなる。すなわち、モータ駆動中において駆動系に係る負荷が増加した場合、モータ出力を上げるべくPWMのデューティを上げ、負荷が減少した場合、モータ出力を抑えるべくPWMのデューティを下げるよう制御がなされる。
【0052】
図9は給紙カセット400の用紙積載量が満載/中載/少載時における各給紙動作中のPWMデューティの変化を表した代表的なグラフである。横軸は時間を表し、一枚給紙開始から給紙終了までを表している。また、縦軸はPWMデューティを表す。実線は満載時、一点鎖線は中載時、点線は少載時のPWMデューティを示す。給紙を開始すると、戻しレバー410の退避動作、押下げ爪414と中板爪416の係合解除、給紙ローラ405と用紙の圧接、用紙の一枚分離動作等、上述した一連の給紙動作において駆動系にかかる負荷の大きさに応じてPWMデューティが増減している。
【0053】
カセット400内の用紙積載量が満載時の一定量離間動作では、図6(d)、図6(a)のように、給紙動作中で中板爪416の摺動部416Dが下方に移動すると、摺動部416Dとブレーキ板420とは接触状態を保っている。また、カセット400内の用紙積載量が中載時の一定量離間動作では、図7(d)、図7(a)のように、満載時と同様、中板爪416の摺動部416Dはブレーキ板420と接触している。しかし、図7(c)に示すように中板爪416と押下げ爪414が係合開始時にまだ摺動部416Dがブレーキ板420と同じ高さに下がっていないため、摺動部416Dとブレーキ板420が接触を始めるタイミングは満載時よりも遅れることになる。
【0054】
さらに、カセット400内の用紙積載量が少量の場合、図8(d)、図8(a)のように、中載時よりも更に遅れて摺動部416Dとブレーキ板420とが接触を始める。
【0055】
このことから、給紙動作における一定量離間動作で、満載時にはブレーキ板420による負荷トルクが駆動系の負荷トルクに上乗せされ一定量離間動作初期で負荷トルクが増加し、これ以降給紙待機時まで増加した状態を維持する。また、用紙積載量が減少するにつれて負荷トルクが増加するタイミングが次第に遅れていく。すなわち、積載されている用紙Pの最上面が給紙ローラ405から一定量の離間を行うときにブレーキ板420等が、負荷を付与する負荷付与手段となって、中板(圧板)の回動角度に応じて前記負荷を変化させている。
【0056】
一定量離間動作以外の動作に関しては、カセット400内の用紙積載量に関わらず、給紙ローラ405と用紙との圧接力、分離ローラ409と給紙ローラ405との圧接力、戻しレバー410とホルダ解除レバー411の回動トルク等は一定に設定されている。このため、給紙動作のモータ負荷トルクの変動は、一定量離間動作時に負荷トルク変動カーブに差が生じ、一定量離間動作以外では積載量に関わらず同じとなる。すなわち、給紙動作中モータ駆動のPWMデューティの変動カーブは、一定量離間動作時に変動に差が生じ(図9中Aの範囲)、一定量離間動作以外では積載量に関わらず同じとなる(図9中Bの範囲)。このPWMデューティ変動カーブの差を計測手段で検出すれば、カセット400内の概略の用紙積載量を検知できる。
【0057】
図10はカセット400内の用紙積載量の検出ならびに装置表示部の制御フローチャートである。HはPWMデューティが上述した増加カーブを迎えたかどうかの判断をするための閾値である。CはPWMデューティが閾値Hを超えた時の給紙開始からのモータ駆動量(第1の駆動量)である。満載時にPWMデューティが閾値Hを超えるときのモータ駆動量(第2の駆動量)をC1、ラスト紙(最後の1枚積載されている時)のPWMデューティが閾値Hを超える時の駆動量(第3の駆動量)をC2とすると、以下の計算式でカセット内の用紙積載残量割合Rを概略算出することが出来る。
【0058】
用紙積載残量割合R(%)=(C2−C)/(C2−C1)×100

以下にフローチャートの詳細を図10に基づいて説明する。印字命令が出されると給紙モータ駆動が開始され、同時にモータの駆動量カウントが開始される(ステップS501)。次に、給紙モータのPWMデューティの値を閾値Hと比較し(ステップS502)、閾値Hを超えた場合はそのときの駆動量Cを記憶する(ステップS503)。上記の計算式によりカセット内用紙積載残量割合Rを算出する(ステップS504)。表示部に用紙積載残量割合Rを表示する(ステップS505)。さらに、10<R≦50なら用紙の準備を促すメッセージを表示部に表示し(ステップS506)、R≦10ならまもなく用紙が無くなることを知らせるメッセージを表示する(ステップS507)。
【0059】
このような表示動作により、オペレータは用紙の概略残量をあらかじめ知り用紙補給に備えることができ、いきなり用紙切れして印字できなくなり立ち往生するといったトラブルを回避できる。
【0060】
本実施形態では、残量50%と10%での2段階の状態遷移としているが、更に細かく分割して、オペレータに対してきめ細かく残量に応じた案内表示を行うことも可能である。
【0061】
また、表示部に目盛り等を用いたインジケータ部を設け、上記残量割合Rの変化が視覚的に分かるように示すことも可能である。
【0062】
したがって本発明によると、新たな用紙積載量検出のためのセンサを追加することなくカセット内の用紙残量を検知することができ、複雑な機構も必要なく容易に構成できる。このためコストも抑えられる。
【符号の説明】
【0063】
4・・・シート給送装置、402・・・中板、403・・・コイルスプリング、405・・・給紙ローラ、407・・・押下げカム、413・・・押下げスライダ、414・・・押下げ爪、416・・・中板爪、420・・・ブレーキ板、P・・・用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに当接して該シートを給送する給送手段と、
シートを積載し、積載されたシートのうちの最上層のシートが前記給送手段に当接するように回動可能に支持された圧板と、
前記圧板に積載されたシートを前記給送手段に圧接させるために前記圧板を付勢する付勢手段と、
前記付勢手段の付勢力に抗して前記圧板を押下げ、前記シートを前記給送手段から一定距離離間させる離間手段と、
前記離間手段を駆動する離間駆動手段と、
前記離間駆動手段が前記離間手段を駆動する際の、前記離間駆動手段にかかる駆動の負荷を計測する計測手段と、
前記圧板と前記離間手段と前記離間駆動手段のうちの少なくともどれか一つに負荷を付与する負荷付与手段とを有し、
前記離間手段によって前記シートが前記給送手段から離間するときに前記負荷付与手段が負荷を付与するとともに、
前記負荷付与手段は前記圧板の回動角度に応じて、付与する負荷を変化させることを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記計測手段によって計測された負荷が所定の閾値を超えるまでの、前記離間駆動手段の第1の駆動量と、
前記シートを満載した時の前記圧板の回動角度に応じた負荷が前記閾値を超えるまでの、前記離間駆動手段の第2の駆動量と、
前記シートを1枚積載した時の前記圧板の回動角度に応じた負荷が前記閾値を超えるまでの、前記離間駆動手段の第3の駆動量と、
前記第1の駆動量と、前記第2の駆動量および第3の駆動量を比較して前記シートの積載量を算出することを特徴とする請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記離間駆動手段はDCモータを含んでおり、
前記計測手段は前記DCモータの駆動時のPWMデューティから、前記離間駆動手段にかかる駆動の負荷を算出することを特徴とする請求項1または2に記載のシート給送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−121765(P2011−121765A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282696(P2009−282696)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】