シート綴じ方法及び綴じ部材
【課題】シュレッダー処理に適し、綴じ部分の厚みを薄くし、耐インク性に優れるシート綴じ方法を提供する。
【解決手段】複数のシートに孔部を形成し、下記一般式(1)で表される単位を有する熱可塑性樹脂を含む綴じ部材を孔部に配置し、孔部に配置された綴じ部材を加熱接着し、複数のシートを綴じる工程を含む、シート綴じ方法である。
[一般式(1)中、Rは任意の2価の基であり;Xは2価以上のヘテロ原子である。]
【解決手段】複数のシートに孔部を形成し、下記一般式(1)で表される単位を有する熱可塑性樹脂を含む綴じ部材を孔部に配置し、孔部に配置された綴じ部材を加熱接着し、複数のシートを綴じる工程を含む、シート綴じ方法である。
[一般式(1)中、Rは任意の2価の基であり;Xは2価以上のヘテロ原子である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート綴じ方法及び綴じ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
コの字状のステープルを用いるステープラーは、一般的に、金属針のステープルを用いて、コの字状の脚部をシート束に打ち込みシート束を挟むように折り曲げることで、シート束を綴じる。しかし、金属針で綴じたシート束をシュレッダー処分する際に、金属針によってシュレッダー機が損傷する恐れがある。また、金属針がシート束の表面に露出するため、綴じ部分で金属針の分厚みが厚くなることがある。
【0003】
一方、特許文献1には、コの字状のステープルを紙製として、脚部の内側面にホットメルトタイプの接着剤を塗布したものが提案されている。このステープルは、特定のステープラーを用いて、ステープラーに備えられたカッターで書類に孔を開けながら打ち込まれる。また、ステープラーに備えられたステープル受け台ではステープルがヒーターによって加熱され、ステープルの脚部の内側面の接着剤が溶融し、書類の下面に強く接着される。
【0004】
しかしながら、特許文献1では、ステープルが予めコの字状に成形されているため、厚みのある書類に対応することが難しい。また、ステープルの基材が紙製であるため、ステープルの脚部を折り曲げるための機構が複雑になりやすい。
【0005】
ほつれ難い堅牢な糸綴じである冊子として、特許文献2には、上糸と下糸によりミシン縫いをした糸綴じ冊子であって、上糸及び/または下糸を熱溶融性の材料とし、上糸と下糸との交差部分及び/または重なり部分を溶融固着したものが提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2では、上糸と下糸によりミシン縫いをするために複雑な機構になりやすい。また、堅牢に糸綴じされるため、糸を取り除くことが難しく、書類の差し替えに手間を要することがある。
【0007】
一方、シートを綴じる箇所にインク画像が形成されている場合、ステープルや糸等の綴じ部材が劣化して、十分な強度が得られないことがある。例えば、非水系インクによってインク画像が形成された箇所を樹脂製の綴じ部材で綴じる場合、インクに含まれる溶剤等によって、綴じ部材の樹脂が溶解して劣化することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−168216号公報
【特許文献2】特開2003−226080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的としては、シュレッダー処理に適し、綴じ部分の厚みを薄くし、耐インク性に優れるシート綴じ方法及綴じ部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面としては、複数のシートに孔部を形成し、下記一般式(1)で表される単位を有する熱可塑性樹脂を含む綴じ部材を前記孔部に配置し、前記孔部に配置された前記綴じ部材を加熱接着し、前記複数のシートを綴じる工程を含む、シート綴じ方法である。
【化1】
【0011】
[一般式(1)中、Rは任意の2価の基であり;Xは2価以上のヘテロ原子である。]
【0012】
本発明の他の側面としては、複数のシートに孔部を形成し、綴じ部材を前記孔部に配置し、前記孔部に配置された前記綴じ部材を加熱接着し、前記複数のシートを綴じる工程を含む、シート綴じ方法に用いられる綴じ部材であって、下記一般式(1)で表される単位を有する熱可塑性樹脂を含む、綴じ部材である。
【化2】
【0013】
[一般式(1)中、Rは任意の2価の基であり;Xは2価以上のヘテロ原子である。]
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シュレッダー処理に適し、綴じ部分の厚みを薄くし、耐インク性に優れるシート綴じ方法及び綴じ部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態によるシート綴じ方法の一例を説明するための説明図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態によるシート綴じ方法の他の例によって綴じられたシート束の概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態によるシート綴じ方法の他の例によって綴じられたシート束の概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態によるシート綴じ方法の他の例によって綴じられたシート束の概略断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態によるシート綴じ方法の他の例によって綴じられたシート束の概略断面図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態によるシート綴じ方法の他の例によって綴じられたシート束の概略断面図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態によるシート綴じ方法の他の例によって綴じられたシート束の概略平面図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態によるシート綴じ方法においてシートを取り出し及び差し込みする一例を説明するための説明図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態によるプリンタとシート後処理装置との概略断面図を示す。
【図10】図10は、本発明の一実施形態によるシート綴じ装置の概略断面図を示す。
【図11】図11は、本発明の一実施形態によるシート綴じ装置の処理工程の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本実施形態における例示が本発明を限定することはない。
【0017】
本実施形態によるシート綴じ方法としては、複数のシートに孔部を形成し、所定の熱可塑性樹脂を含む綴じ部材を孔部に配置し、孔部に配置された綴じ部材を加熱接着し、複数のシートを綴じる工程を含むことを特徴とする。これによって、シュレッダー処理に適し、綴じ部分の厚みを薄くし、耐インク性に優れるシート綴じ方法を提供することができる。
【0018】
綴じ部材は、下記一般式(1)で表される単位を有する熱可塑性樹脂を含む。
【化3】
【0019】
[一般式(1)中、Rは任意の2価の基であり;Xは2価以上のヘテロ原子である。]
【0020】
Rで表される任意の2価の基としては、特に制限されることはなく、飽和または不飽和であってもよく、分岐、鎖状または環状であってもよく、置換または非置換であってもよい。また、Rは、主鎖または分岐鎖にヘテロ原子を有してもよい。
【0021】
Xで表される2価以上のヘテロ原子としては、N(窒素)、O(酸素)、S(硫黄)等を挙げることができるが、これに限定されない。Xで表されるヘテロ原子が3価以上である場合は、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基等の任意の置換基を有することができる。ヘテロ原子を主鎖に有することで、非水系インクに対する溶解性が低下して、接着性を十分に維持することができると推測される。
【0022】
上記本実施形態の熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリカーボネート樹脂等を用いることができ、これらを組み合わせて用いてもよい。特に、一般式(1)でX=Oとなる、ポリウレタン樹脂及び/またはポリエステル樹脂が、熱溶融温度が比較的低いため好ましい。
【0023】
本実施形態の熱可塑性樹脂の市販品としては、例えば、スーパーフレックス150、210、300、420、460、470、740、800、830、840、860、870、E2000、及びE4000等(ポリウレタン樹脂、第一工業製薬株式会社製)、バイロナールMD−1100、MD−1335(ポリエステル樹脂、東洋紡績株式会社製)等を使用することができる。
【0024】
上記した本実施形態の熱可塑性樹脂は、主鎖にヘテロ原子を有するため、非水系溶剤に対し溶解しにくいという特性があり、特に、シートのうち非水系インクによる画像が形成された部分で綴じ部材が加熱接着されても接着強度を十分に得ることができる。一方、ポリエチレン樹脂やエチレン/酢酸ビニル共重合樹脂は、非水系溶剤に侵されやすく、加熱接着の際、またはその後に、樹脂が劣化し、接着強度が低下するという問題がある。
【0025】
本実施形態の熱可塑性樹脂としては、熱溶融温度が70〜200℃の範囲にあることが好ましい。より好ましくは90〜180℃である。熱溶融温度が高すぎると、熱によりシートが損傷され、また、処理時に必要なエネルギーが大きくなるため、200℃以下が好ましく、180℃以下がさらに好ましい。一方、熱溶融温度が低いと、シート束の耐熱性が低下するため、70℃以上が好ましく、90℃以上がさらに好ましい。
【0026】
綴じ部材としては、上記した本実施形態の熱可塑性樹脂に加え、その作用及び効果を損なわない範囲で、通常の熱可塑性樹脂を適宜選択して使用することができる。通常の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン/アクリル酸共重合樹脂、エチレン/アクリル酸エチル共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂等を使用することができる。この場合、本実施形態の熱可塑性樹脂は、綴じ部材に含まれる樹脂全体に対し、30〜100質量%とするとよい。
【0027】
綴じ部材には、その他任意成分として、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤等を添加してもよい。
【0028】
以下、本実施形態によるシート綴じ方法について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態によるシート綴じ方法の一例を説明するための説明図である。図1において、1はシート束であり、2は綴じ部材である。
【0029】
図1(a)では複数のシートを任意の枚数で重ねシート束1とし、図1(b)ではシート束1に厚み方向に貫通する孔部3を形成し、図1(c)では糸状の綴じ部材2をこの孔部3に挿入し、綴じ部材2の一方端がシート束1の一方面に露出し、綴じ部材2の他方端がシート束1の他方面に露出し、綴じ部材2の両端部が互いに逆の方向を向くように、綴じ部材2を配置し、図1(d)では孔部3に配置された綴じ部材2をシート束1の一方面または両面から加熱することで硬化し、綴じ部材2によってシート束1の孔部3とシート束1の両面の孔部3周辺とを接着し、複数のシートを綴じる。ここで、綴じ部材2は、上記した一般式(1)で表される単位を有する熱可塑性樹脂を含む。
【0030】
孔部の開口形状としては、円形、楕円形、矩形及び三角形等の多角形、星型等任意に選択することができる。また、孔部としては、図1に示すようにシート面に対して直行する方向に貫通して形成してもよく、図2に示すようにシート面に対し45〜90°で傾斜した方向に貫通して形成してもよい。図2に示すように孔部が傾斜していることで、複数のシート束を積載するときに隣り合うシート束間で綴じ部材の露出位置がずれ、樹脂同士が接触して接着することを防ぐことができる。また、図1で示すように孔部の孔径を厚さ方向に等しくしてもよく、不図示であるが孔部の孔径を厚さ方向に小さくまたは大きくするようにしてもよい。
【0031】
図1において、綴じ部材の断面形状としては、孔部に挿入可能な形状であればよく、円形、楕円形、矩形及び三角形等の多角形、星型等任意に選択することができる。また、綴じ部材の形状としては、加熱接着によって溶融される際に孔部の内壁に接着可能であることが好ましい。また、綴じ部材としては、図1に示すように糸状の綴じ部材の両端をそれぞれシート束の両表面に残すようにして配置して孔部の壁面とともにシート束の両表面でシート束を接着してもよく、図3に示すように、糸状の綴じ部材の両端のうち一方または両方をシート束の孔部の開口端部に配置して孔部の壁面でシート束を接着してもよい。また、糸状の綴じ部材は、予め切断されていてもよいし、シート束の孔部に挿入された状態で切断されてもよい。
【0032】
孔部の寸法としては、特に制限されないが、例えば開口形状の面積を0.7〜320mm2とすることができる。孔部の開口形状が円形の場合、孔部の孔径は、見栄えやシート束の取り扱い性の観点から直径10mm以内とすることができ、より好ましくは直径5mm以内である。
【0033】
綴じ部材の寸法としては、孔部に配置可能な形状であれば特に制限されないが、例えばその断面形状が孔部の断面形状と嵌合する形状や、孔部に隙間を有して挿入可能な形状とすることができる。シート束のズレを防ぐために、孔部と、孔部に配置される綴じ部材との隙間は小さい方がよく、1mm以内が好ましく、さらには0.5mm以内が好ましい。一例として、綴じ部材の径としては、取り扱いの観点から、直径0.5mmの円と同じか、より大きいことが好ましく、さらには直径1mmの円と同じか、より大きいことが好ましい。また、綴じ部材の径としては、見栄えやシート束の取り扱い性の観点から、直径10mmの円と同じか、より小さいことが好ましく、直径5mmの円と同じか、より小さいことがさらに好ましい。
【0034】
加熱接着としては、綴じ部材の少なくとも一部を加熱すればよく、例えばシート束の一方または両方から綴じ部材を加熱することができる。加熱温度としては、シート束の損傷を避けるため、200℃以下、さらには180℃以下が好ましい。また、シート束の耐熱性の観点から、70℃以上、さらには90℃以上が好ましい。また、綴じ部材をシート束の一方または両方から加圧して圧着してもよく、加圧圧力は0〜0.3MPaとすることができる。
【0035】
加熱時間としては、例えば、生産性の観点から5秒以内、さらには3秒以内が好ましい。加熱時間が短いと熱が十分に伝わらないため、加熱機構を余分に高温に保つ必要があり、環境負荷の観点から好ましくない。そのため、加熱時間は0.3秒以上あることが好ましい。
【0036】
図1に示すようにシート束を綴じることで、綴じ部材が樹脂製であるためシュレッダー処理に適し、加熱接着によってシート束表面の綴じ部材を薄く形成可能であるため綴じ部分の厚みを薄くすることができる。また、綴じ部材が上記した特定の樹脂を含むため、綴じ部分にインク画像が形成されていても綴じ部材の劣化を防いで十分な強度を得ることができる。また、糸状の綴じ部材の長さを調整することで、様々な厚みのシート束を綴じることが可能である。
【0037】
さらに、図1に示すように、綴じ部材を加熱する前に孔部に配置して、孔部に配置された綴じ部材を加熱接着することで、綴じ部材を加熱接着する際に加熱量をより低減することができる。例えば、綴じ部材の表面とシートの孔部の壁部とが接着すればよく、綴じ部材の一部のみを加熱して綴じ部材の表面を溶融してシートの孔部の壁部と接着することで、さらに加熱量を低減することができる。これに対し、樹脂を予め溶融し、溶融した樹脂を孔部に流し込む方法では、より大きな加熱量を必要とする。
【0038】
本実施形態によるシート綴じ方法の他の例を図4から図7に示す。
【0039】
図4では、孔部3を2箇所形成して、糸状の綴じ部材2をシート束1の一方面から一方の孔部3を通して挿入して、続けてシート束1の他方面から他方の孔部3を通して挿入し、糸状の綴じ部材2の両端部をシート束1の一方面に接するように折り曲げ、綴じ部材2を配置している。これによって、シート束をより強固に綴じることができる。図4において、孔部を3箇所以上に形成し、それぞれの孔部に糸状の綴じ部材を挿入してもよい。また、図5に示すように、糸状の綴じ部材2の端部をシート束1の一方面上で交差するように配置してもよい。これによって、綴じ部材の脱落をより確実に防ぐことができる。
【0040】
図6では、孔部3を1箇所形成して、糸状の綴じ部材2を孔部3に挿入してリング状に配置し、孔部3のリング状の接続部分を加熱接着して、シート束1を綴じている。
【0041】
図7では、綴じ部材2を加熱して溶融固着する際に、綴じ部材2の露出面に凹凸形状(図7において「XYZ」)を形成している。これによって、シート束1に任意の情報を付与することができ、また意匠性を付与することもできる。
【0042】
上記した構成では、シート束を1箇所で綴じているが、シート束を複数箇所で綴じるようにしてもよい。また、シート束を綴じる箇所は、シートの縁部周辺が好ましく、シートの角周辺としてもよい。
【0043】
本実施形態によるシート綴じ方法によれば、シート束に別のシートを差し込むことや、シート束から一部のシートを取り出すことをより簡単にできる。
【0044】
図8は、シートの差し込み及び取り出しの一例を説明するための説明図である。
【0045】
図8(a)ではシート束1のうち取り出したいシートの一方面上にハサミ4を挿入して綴じ部材2を切断し、不図示であるが同様にして取り出したいシートの他方面上にハサミを挿入して綴じ部材を切断して、1枚のシートを取り出すことができる。このとき、切り離されたそれぞれのシート束1は、綴じ部材2によって孔部の壁面で接着されているため、綴じた状態を維持している。図8(b)では、切り離されたシート束1間に差し替え用のシート1aを挿入する。ここで、差し替え用シート1aにはシート束1の孔部3と同形状の孔部3aが形成され、差し替え用シート1aはその孔部3aをシート束1の孔部3と合わせて配置される。図8(c)では、綴じ部材2の切断面を加熱された鉄片等の加熱部材5で加熱溶融する。図8(d)では、この加熱部材を取り外してから、切断された綴じ部材2が切断面で合うようにして圧着することで、シート束1を再度綴じることができる。
【0046】
以下、シート綴じ装置について図面を参照して説明する。
【0047】
図9は、プリンタAとシート後処理装置Bとの概略断面図を示す。図9において、Aはシートに画像を形成するためのプリンタであり、BはプリンタAに接続されシートを搬送及び排紙するためのシート後処理装置である。シート後処理装置Bは、シート束を綴じるシート綴じ装置100と、プリンタAから排紙されるシートをシート綴じ装置100に搬送する搬送経路200と、シート綴じ装置100から排紙されるシート束1が排紙される排紙台300と、プリンタAから排紙されるシートをシート綴じ装置100を介さずに排紙するためのバイパス経路400とを備える。
【0048】
図10は、図9に示すシート綴じ装置100の概略断面図を示す。図10において、シート綴じ装置100は、搬送されるシートを積層して収容するためのシートトレイ10と、シートトレイ10に収容されたシート束1に孔部3を穿孔するための穿孔部材11と、綴じ部材2を収容するための綴じ部材収容部12と、綴じ部材収容部12から穿孔部に綴じ部材2を搬送するための搬送経路13と、穿孔部で綴じ部材2を切断するための切断部材14と、穿孔部で綴じ部材2を加熱接着するための加熱部材15a及び15bとを備える。
【0049】
シートトレイ10は、シートトレイ10の一側面に設けられ穿孔部材11の先端部がシートトレイ10内の穿孔部に移動するために挿入可能である開口部10aと、シートトレイ10の下面に設けられ穿孔部材11の先端部がシート束1に孔部3を形成する際にシート束1の最下面から突出可能である開口部10bとを備える。
【0050】
穿孔部材11は、パンチャー等で構成され、先端部が鋭利な刃になっており、回転軸11aを基点として不図示の駆動部によって回転可能に配置され、回転することでその先端部がシートトレイ10の開口部10aからシート束1の穿孔部に移動し、シート束1を貫通して孔部3を形成するように配置される。穿孔部材11は、シートトレイ10に収容されるシート束1の収容位置に対応させて複数箇所に配置してもよく、また、穿孔部材11をシート束1の収容位置内で移動可能に配置して所望の綴じ位置でシート束1を穿孔するようにしてもよい。
【0051】
綴じ部材収容部12は、糸状の綴じ部材2を巻き取られた状態で収容する。綴じ部材収容部12はカートリッジとしてシート綴じ装置100から着脱可能に配置されてもよい。綴じ部材収容部12内の綴じ部材2は、搬送経路13によって搬送ローラ13aを用いてシート束1の穿孔部に搬送可能である
【0052】
切断部材14は、シートトレイ10にシート束1が積載された状態で最表面のシート上に配置され、綴じ部材2を穿孔部で切断するように水平方向に移動可能に配置される。切断部材14は、シートトレイ10にシート束1を最大に積載した状態でシート束1と干渉しない垂直方向の位置に固定して配置してもよく、また、不図示のセンサーによってシート束1の最表面の位置を検出してシート束1と干渉しない垂直方向の位置に移動可能に配置してもよい。切断部材14は、カッター等で構成され、水平方向に移動することで、穿孔部で綴じ部材2を切断してもよく、水平移動した後に鋏のように作動して切断してもよい。
【0053】
加熱部材15は、ヒーター等で構成され、シートトレイ10に収容されるシート束1に対して上方に配置される加熱部材15aと下方に配置される加熱部材15bとを有する。切断部材14と同様に、水平方向に移動可能に配置され、垂直方向に固定して配置してもよく、シート束1の積載量に応じて移動可能に配置してもよい。また、加熱部材15は、上方または下方のどちらか一方のみに配置するようにしてもよい。
【0054】
次に、シート綴じ装置100の処理工程について図11を参照して説明する。図11は、シート綴じ装置100の処理工程を説明するための説明図を示す。
【0055】
図11(a)ではシートトレイ10に複数のシートを揃えて重ねる。
【0056】
図11(b)では穿孔部材11を回転軸11aを基点にして図中X方向に回転させ、穿孔部材11の先端部がシート束1に突き当たり貫通して、シート束1の厚さ方向に貫通した孔部3を形成する。このとき、穿孔部材11によって切り抜かれたシート屑は穿孔部材ボックス16に回収される。
【0057】
図11(c)では穿孔部材11を反対方向に回転させてもとの位置に戻した後、綴じ部材収容部12内から綴じ部材2を搬送経路13を介して搬送ローラ13aを用いて穿孔部に搬送し、さらに綴じ部材2を孔部3に挿入して配置する。
【0058】
図11(d)では切断部材14を穿孔部方向Yに水平移動させて、綴じ部材2を孔部3の上部の開口縁部周辺で切断する。
【0059】
図11(e)では切断部材14を反対方向に水平移動させてもとの位置に戻した後、加熱部材15a及び15bを穿孔部方向Zに水平移動させて、孔部3の上部及び下部の開口縁部周辺に位置させ、綴じ部材2を両端部から加熱する。このとき、加熱部材15a及び15bは水平移動した際に加熱を開始してもよく、また、予め加熱状態としておいてもよい。
【0060】
図11(f)では加熱部材15a及び15bによって綴じ部材2が両端部から加熱されることで溶融及び硬化されてシート束1が綴じられ、また、加熱部材15a及び15bは反対方向に水平移動されてもとの位置に戻してある。
【0061】
以下、シートに形成される画像のインクとして、非水系インクについて説明する。非水系インクとしては、特に限定されないが、非水系溶剤、顔料または染料を含み、適宜顔料分散剤、その他添加剤を含むことができる。
【0062】
顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、染料系、縮合多環系、ニトロ系、ニトロソ系等の有機顔料(ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウォッチングレッド、ジスアゾイエロー、ハンザイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー、アニリンブラック等);コバルト、鉄、クロム、銅、亜鉛、鉛、チタン、バナジウム、マンガン、ニッケル等の金属類、金属酸化物および硫化物、ならびに黄土、群青、紺青等の無機顔料、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック類を用いることができる。これらの顔料は、いずれか1種が単独で用いられるほか、2種以上が組み合わせて使用されてもよい。
【0063】
顔料の平均粒径は、分散性と保存安定性の観点から300nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましい。ここで、顔料の平均粒径は、(株)堀場製作所製の動的光散乱式粒度分布測定装置LB−500により測定された値である。
【0064】
インク中の顔料の含有量は、通常0.01〜20重量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から3〜15重量%であることが好ましい。
【0065】
顔料を使用する場合には顔料分散剤を配合することができる。配合される顔料分散剤は、特に限定されず、顔料を溶剤中に安定して分散させるものであればよい。たとえば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等が好適に使用され、そのうち、高分子分散剤の使用が好ましい。これらは単独で用いられるほか、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
インク中の顔料分散剤の配合量は、適宜設定できるが、顔料分散性の観点から、重量比で、顔料1部に対し0.05〜1.0部程度であることが好ましく、0.1〜0.7部であることがより好ましい。インク総量に対しては、顔料分散剤は、0.5〜10重量%程度含まれていることが好ましく、1〜5重量%であることが一層好ましい。
【0067】
染料としては、例えば、アゾ系、アントラキノン系、アジン系等の油溶性染料を用いることができる。これらの染料は、いずれか1種が単独で用いられるほか、2種以上が組み合わせて使用されてもよい。また、これらの染料は、上記した顔料とともに使用されてもよい。
【0068】
非水系溶剤としては、非極性有機溶剤および極性有機溶剤であって、50%留出点が150℃以上の溶剤である。50%留出点は、JIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定される、重量で50%の溶剤が揮発したときの温度を意味する。
【0069】
たとえば、非極性有機溶剤としては、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素溶剤等を好ましく挙げることができる。脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素系溶剤としては、たとえば、JX日鉱日石エネルギー(株)製「テクリーンN−16、テクリーンN−20、テクリーンN−22、日石ナフテゾールL、日石ナフテゾールM、日石ナフテゾールH、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、日石アイソゾール300、日石アイソゾール400、AF−4、AF−5、AF−6、AF−7」、Exxon社製「Isopar(アイソパー)G、Isopar H、Isopar L、Isopar M、Exxsol D40、Exxsol D80、Exxsol D100、Exxsol D130、Exxsol D140」等を好ましく挙げることができる。芳香族炭化水素溶剤としては、JX日鉱日石エネルギー(株)製「日石クリーンソルG」(アルキルベンゼン)、Exxon社製「ソルベッソ200」等を好ましく挙げることができる。
【0070】
極性有機溶剤としては、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤、エーテル系溶剤、およびこれらの混合溶剤を用いることができる。たとえば、炭素数8〜20の高級脂肪酸と炭素数1〜24のアルコールとのエステルであるエステル系溶剤、炭素数8〜24の高級アルコール、および炭素数8〜20の高級脂肪酸からなる群から選ばれた1種以上を好ましく使用できる。
【0071】
極性有機溶剤としてより具体的には、ラウリル酸メチル、ラウリル酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリ2エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルなどのエステル系溶剤;イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノールなどのアルコール系溶剤;ノナン酸、イソノナン酸、イソミリスチン酸、ヘキサデカン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などの高級脂肪酸系溶剤;ジエチルグリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル系溶剤、が好ましく挙げられる。
【0072】
本実施形態の綴じ部材に用いる熱可塑性樹脂は、上記した非水系溶剤に対して溶解性が低いため、加熱接着の際に本実施形態の熱可塑性樹脂が変性することを防止し、接着強度の低下を防ぐことができる。上記した非水系溶剤の中でも、非水系インクに好ましく使用される溶剤としては、脂肪族炭化水素溶剤や、脂環式炭化水素系溶剤、脂肪酸エステル等であり、これらに対し、本実施形態の熱可塑性樹脂は溶解性が低いため、綴じ部材の接着強度を十分に確保することができる。
【0073】
以上の各成分に加え、インクには、必要に応じて、各種添加剤を含ませることができる。具体的には、消泡剤、表面張力低下剤等として、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、または高分子系、シリコーン系、フッ素系の界面活性剤をインクに含有させることができる。
【0074】
非水系インクを用いた印刷方法は、特に限定されないが、インクジェット記録装置を用いて行われることが好ましい。インクジェットプリンタは、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよい。インクジェット記録装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから本実施形態に係るインクを吐出させ、吐出されたインク液滴をシートに付着させるようにすることが好ましい。
【0075】
非水系インクをインクジェット記録用非水系インクとして用いる場合のインクの粘度は、吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において5〜30mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることがより好ましく、約10mPa・s程度であることが最も適している。ここで粘度は、23℃において0.1Pa/sの速度で剪断応力を0Paから増加させたときの10Paにおける値を表す。
【0076】
シートとしては、特に限定されず、普通紙、上質普通紙、インクジェット(IJ)紙、IJマット紙、シート上にインク吸収溶液がコートされたコート紙、コート紙よりもインク吸収層の厚みが薄い微コート紙、光沢紙(フォト光沢用紙)、特殊紙、布等で使用することができる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
(製造例1)
綴じ部材として、断面が2mm×3mmの矩形となる糸状ポリウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社製スーパーフレックス840を乾燥させて作製、下記式(2)で表される単位を有する樹脂である)を用いた。
【化4】
【0079】
[式(2)中、R´は任意の2価の基である。]
【0080】
シートとして上質紙(アジア原紙株式会社製、WHITE PPC)を用いた。この上質紙10枚を印刷していない状態で重ね、3mm×3mmの孔部を形成した。
【0081】
この孔部に上記糸状ポリウレタン樹脂を通して配置し、加熱接着して10枚の上質紙を綴じた。この加圧条件は、160℃、0.5kN/m2、3秒間とした。
【0082】
(製造例2)
上質紙10枚を印刷した状態で重ねた他は、上記製造例1と同様にして10枚の上質紙を綴じた。
【0083】
上質紙の印刷は、ライン型インクジェットプリンタ「ORPHIS X9050」(理想科学工業株式会社製)を使用して、非水系インク「RISO XインクFブラック」(理想科学工業株式会社製、溶剤の主成分として石油系炭化水素、高級アルコール、及び脂肪酸エステルを含む)を用いて、黒ベタ画像を片面に形成した。印刷設定は、用紙種類:普通紙、プリント濃度:0(標準)とした。
【0084】
(製造例3)
綴じ部材として、断面が2mm×3mmの矩形となる糸状ポリエチレン樹脂(大倉工業株式会社製LDPE(低密度ポリエチレン)フィルム(ローデンポリ、厚さ0.03mm)を溶融させて成形して作製)を用いた他は、上記製造例1と同様にして10枚の上質紙を綴じた。
【0085】
(製造例4)
上質紙10枚を印刷した状態で重ねた他は、上記製造例3と同様にして10枚の上質紙を綴じた。上質紙の印刷は、上記製造例2と同様とした。
【0086】
(剥離強度評価)
10枚の上質紙を綴じた状態で綴じ部を含むように25mm×100mmの短冊状に切り出し、引っ張り試験機(株式会社A&D製、テンシロンRTC−1210A)を用いて、100mm/min.の速度でT字剥離し、ピーク強度を測定した。このピーク強度を剥離強度として評価した。結果を表1に示す。
【表1】
【0087】
表1に示すとおり、実施例1では、綴じ部材の非水系インクに対する耐性が高く、剥離強度が印刷によっても低下しにくいことがわかる。一方、比較例1では、綴じ部材の非水系インクに対する耐性が比較的低いため、剥離強度が印刷によって低下することがわかる。
【符号の説明】
【0088】
1 シート束
2 綴じ部材
3 孔部
4 ハサミ
5 加熱部材
10 シートトレイ
11 穿孔部材
12 綴じ部材収容部
13 搬送経路
14 切断部材
15 加熱部材
16 パンチャーボックス
100 シート綴じ装置
200 搬送経路
300 排紙台
400 バイパス経路
A プリンタ
B シート後処理装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート綴じ方法及び綴じ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
コの字状のステープルを用いるステープラーは、一般的に、金属針のステープルを用いて、コの字状の脚部をシート束に打ち込みシート束を挟むように折り曲げることで、シート束を綴じる。しかし、金属針で綴じたシート束をシュレッダー処分する際に、金属針によってシュレッダー機が損傷する恐れがある。また、金属針がシート束の表面に露出するため、綴じ部分で金属針の分厚みが厚くなることがある。
【0003】
一方、特許文献1には、コの字状のステープルを紙製として、脚部の内側面にホットメルトタイプの接着剤を塗布したものが提案されている。このステープルは、特定のステープラーを用いて、ステープラーに備えられたカッターで書類に孔を開けながら打ち込まれる。また、ステープラーに備えられたステープル受け台ではステープルがヒーターによって加熱され、ステープルの脚部の内側面の接着剤が溶融し、書類の下面に強く接着される。
【0004】
しかしながら、特許文献1では、ステープルが予めコの字状に成形されているため、厚みのある書類に対応することが難しい。また、ステープルの基材が紙製であるため、ステープルの脚部を折り曲げるための機構が複雑になりやすい。
【0005】
ほつれ難い堅牢な糸綴じである冊子として、特許文献2には、上糸と下糸によりミシン縫いをした糸綴じ冊子であって、上糸及び/または下糸を熱溶融性の材料とし、上糸と下糸との交差部分及び/または重なり部分を溶融固着したものが提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2では、上糸と下糸によりミシン縫いをするために複雑な機構になりやすい。また、堅牢に糸綴じされるため、糸を取り除くことが難しく、書類の差し替えに手間を要することがある。
【0007】
一方、シートを綴じる箇所にインク画像が形成されている場合、ステープルや糸等の綴じ部材が劣化して、十分な強度が得られないことがある。例えば、非水系インクによってインク画像が形成された箇所を樹脂製の綴じ部材で綴じる場合、インクに含まれる溶剤等によって、綴じ部材の樹脂が溶解して劣化することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−168216号公報
【特許文献2】特開2003−226080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的としては、シュレッダー処理に適し、綴じ部分の厚みを薄くし、耐インク性に優れるシート綴じ方法及綴じ部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面としては、複数のシートに孔部を形成し、下記一般式(1)で表される単位を有する熱可塑性樹脂を含む綴じ部材を前記孔部に配置し、前記孔部に配置された前記綴じ部材を加熱接着し、前記複数のシートを綴じる工程を含む、シート綴じ方法である。
【化1】
【0011】
[一般式(1)中、Rは任意の2価の基であり;Xは2価以上のヘテロ原子である。]
【0012】
本発明の他の側面としては、複数のシートに孔部を形成し、綴じ部材を前記孔部に配置し、前記孔部に配置された前記綴じ部材を加熱接着し、前記複数のシートを綴じる工程を含む、シート綴じ方法に用いられる綴じ部材であって、下記一般式(1)で表される単位を有する熱可塑性樹脂を含む、綴じ部材である。
【化2】
【0013】
[一般式(1)中、Rは任意の2価の基であり;Xは2価以上のヘテロ原子である。]
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シュレッダー処理に適し、綴じ部分の厚みを薄くし、耐インク性に優れるシート綴じ方法及び綴じ部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態によるシート綴じ方法の一例を説明するための説明図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態によるシート綴じ方法の他の例によって綴じられたシート束の概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態によるシート綴じ方法の他の例によって綴じられたシート束の概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態によるシート綴じ方法の他の例によって綴じられたシート束の概略断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態によるシート綴じ方法の他の例によって綴じられたシート束の概略断面図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態によるシート綴じ方法の他の例によって綴じられたシート束の概略断面図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態によるシート綴じ方法の他の例によって綴じられたシート束の概略平面図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態によるシート綴じ方法においてシートを取り出し及び差し込みする一例を説明するための説明図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態によるプリンタとシート後処理装置との概略断面図を示す。
【図10】図10は、本発明の一実施形態によるシート綴じ装置の概略断面図を示す。
【図11】図11は、本発明の一実施形態によるシート綴じ装置の処理工程の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本実施形態における例示が本発明を限定することはない。
【0017】
本実施形態によるシート綴じ方法としては、複数のシートに孔部を形成し、所定の熱可塑性樹脂を含む綴じ部材を孔部に配置し、孔部に配置された綴じ部材を加熱接着し、複数のシートを綴じる工程を含むことを特徴とする。これによって、シュレッダー処理に適し、綴じ部分の厚みを薄くし、耐インク性に優れるシート綴じ方法を提供することができる。
【0018】
綴じ部材は、下記一般式(1)で表される単位を有する熱可塑性樹脂を含む。
【化3】
【0019】
[一般式(1)中、Rは任意の2価の基であり;Xは2価以上のヘテロ原子である。]
【0020】
Rで表される任意の2価の基としては、特に制限されることはなく、飽和または不飽和であってもよく、分岐、鎖状または環状であってもよく、置換または非置換であってもよい。また、Rは、主鎖または分岐鎖にヘテロ原子を有してもよい。
【0021】
Xで表される2価以上のヘテロ原子としては、N(窒素)、O(酸素)、S(硫黄)等を挙げることができるが、これに限定されない。Xで表されるヘテロ原子が3価以上である場合は、水素原子、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基等の任意の置換基を有することができる。ヘテロ原子を主鎖に有することで、非水系インクに対する溶解性が低下して、接着性を十分に維持することができると推測される。
【0022】
上記本実施形態の熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリカーボネート樹脂等を用いることができ、これらを組み合わせて用いてもよい。特に、一般式(1)でX=Oとなる、ポリウレタン樹脂及び/またはポリエステル樹脂が、熱溶融温度が比較的低いため好ましい。
【0023】
本実施形態の熱可塑性樹脂の市販品としては、例えば、スーパーフレックス150、210、300、420、460、470、740、800、830、840、860、870、E2000、及びE4000等(ポリウレタン樹脂、第一工業製薬株式会社製)、バイロナールMD−1100、MD−1335(ポリエステル樹脂、東洋紡績株式会社製)等を使用することができる。
【0024】
上記した本実施形態の熱可塑性樹脂は、主鎖にヘテロ原子を有するため、非水系溶剤に対し溶解しにくいという特性があり、特に、シートのうち非水系インクによる画像が形成された部分で綴じ部材が加熱接着されても接着強度を十分に得ることができる。一方、ポリエチレン樹脂やエチレン/酢酸ビニル共重合樹脂は、非水系溶剤に侵されやすく、加熱接着の際、またはその後に、樹脂が劣化し、接着強度が低下するという問題がある。
【0025】
本実施形態の熱可塑性樹脂としては、熱溶融温度が70〜200℃の範囲にあることが好ましい。より好ましくは90〜180℃である。熱溶融温度が高すぎると、熱によりシートが損傷され、また、処理時に必要なエネルギーが大きくなるため、200℃以下が好ましく、180℃以下がさらに好ましい。一方、熱溶融温度が低いと、シート束の耐熱性が低下するため、70℃以上が好ましく、90℃以上がさらに好ましい。
【0026】
綴じ部材としては、上記した本実施形態の熱可塑性樹脂に加え、その作用及び効果を損なわない範囲で、通常の熱可塑性樹脂を適宜選択して使用することができる。通常の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン/アクリル酸共重合樹脂、エチレン/アクリル酸エチル共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂等を使用することができる。この場合、本実施形態の熱可塑性樹脂は、綴じ部材に含まれる樹脂全体に対し、30〜100質量%とするとよい。
【0027】
綴じ部材には、その他任意成分として、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤等を添加してもよい。
【0028】
以下、本実施形態によるシート綴じ方法について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態によるシート綴じ方法の一例を説明するための説明図である。図1において、1はシート束であり、2は綴じ部材である。
【0029】
図1(a)では複数のシートを任意の枚数で重ねシート束1とし、図1(b)ではシート束1に厚み方向に貫通する孔部3を形成し、図1(c)では糸状の綴じ部材2をこの孔部3に挿入し、綴じ部材2の一方端がシート束1の一方面に露出し、綴じ部材2の他方端がシート束1の他方面に露出し、綴じ部材2の両端部が互いに逆の方向を向くように、綴じ部材2を配置し、図1(d)では孔部3に配置された綴じ部材2をシート束1の一方面または両面から加熱することで硬化し、綴じ部材2によってシート束1の孔部3とシート束1の両面の孔部3周辺とを接着し、複数のシートを綴じる。ここで、綴じ部材2は、上記した一般式(1)で表される単位を有する熱可塑性樹脂を含む。
【0030】
孔部の開口形状としては、円形、楕円形、矩形及び三角形等の多角形、星型等任意に選択することができる。また、孔部としては、図1に示すようにシート面に対して直行する方向に貫通して形成してもよく、図2に示すようにシート面に対し45〜90°で傾斜した方向に貫通して形成してもよい。図2に示すように孔部が傾斜していることで、複数のシート束を積載するときに隣り合うシート束間で綴じ部材の露出位置がずれ、樹脂同士が接触して接着することを防ぐことができる。また、図1で示すように孔部の孔径を厚さ方向に等しくしてもよく、不図示であるが孔部の孔径を厚さ方向に小さくまたは大きくするようにしてもよい。
【0031】
図1において、綴じ部材の断面形状としては、孔部に挿入可能な形状であればよく、円形、楕円形、矩形及び三角形等の多角形、星型等任意に選択することができる。また、綴じ部材の形状としては、加熱接着によって溶融される際に孔部の内壁に接着可能であることが好ましい。また、綴じ部材としては、図1に示すように糸状の綴じ部材の両端をそれぞれシート束の両表面に残すようにして配置して孔部の壁面とともにシート束の両表面でシート束を接着してもよく、図3に示すように、糸状の綴じ部材の両端のうち一方または両方をシート束の孔部の開口端部に配置して孔部の壁面でシート束を接着してもよい。また、糸状の綴じ部材は、予め切断されていてもよいし、シート束の孔部に挿入された状態で切断されてもよい。
【0032】
孔部の寸法としては、特に制限されないが、例えば開口形状の面積を0.7〜320mm2とすることができる。孔部の開口形状が円形の場合、孔部の孔径は、見栄えやシート束の取り扱い性の観点から直径10mm以内とすることができ、より好ましくは直径5mm以内である。
【0033】
綴じ部材の寸法としては、孔部に配置可能な形状であれば特に制限されないが、例えばその断面形状が孔部の断面形状と嵌合する形状や、孔部に隙間を有して挿入可能な形状とすることができる。シート束のズレを防ぐために、孔部と、孔部に配置される綴じ部材との隙間は小さい方がよく、1mm以内が好ましく、さらには0.5mm以内が好ましい。一例として、綴じ部材の径としては、取り扱いの観点から、直径0.5mmの円と同じか、より大きいことが好ましく、さらには直径1mmの円と同じか、より大きいことが好ましい。また、綴じ部材の径としては、見栄えやシート束の取り扱い性の観点から、直径10mmの円と同じか、より小さいことが好ましく、直径5mmの円と同じか、より小さいことがさらに好ましい。
【0034】
加熱接着としては、綴じ部材の少なくとも一部を加熱すればよく、例えばシート束の一方または両方から綴じ部材を加熱することができる。加熱温度としては、シート束の損傷を避けるため、200℃以下、さらには180℃以下が好ましい。また、シート束の耐熱性の観点から、70℃以上、さらには90℃以上が好ましい。また、綴じ部材をシート束の一方または両方から加圧して圧着してもよく、加圧圧力は0〜0.3MPaとすることができる。
【0035】
加熱時間としては、例えば、生産性の観点から5秒以内、さらには3秒以内が好ましい。加熱時間が短いと熱が十分に伝わらないため、加熱機構を余分に高温に保つ必要があり、環境負荷の観点から好ましくない。そのため、加熱時間は0.3秒以上あることが好ましい。
【0036】
図1に示すようにシート束を綴じることで、綴じ部材が樹脂製であるためシュレッダー処理に適し、加熱接着によってシート束表面の綴じ部材を薄く形成可能であるため綴じ部分の厚みを薄くすることができる。また、綴じ部材が上記した特定の樹脂を含むため、綴じ部分にインク画像が形成されていても綴じ部材の劣化を防いで十分な強度を得ることができる。また、糸状の綴じ部材の長さを調整することで、様々な厚みのシート束を綴じることが可能である。
【0037】
さらに、図1に示すように、綴じ部材を加熱する前に孔部に配置して、孔部に配置された綴じ部材を加熱接着することで、綴じ部材を加熱接着する際に加熱量をより低減することができる。例えば、綴じ部材の表面とシートの孔部の壁部とが接着すればよく、綴じ部材の一部のみを加熱して綴じ部材の表面を溶融してシートの孔部の壁部と接着することで、さらに加熱量を低減することができる。これに対し、樹脂を予め溶融し、溶融した樹脂を孔部に流し込む方法では、より大きな加熱量を必要とする。
【0038】
本実施形態によるシート綴じ方法の他の例を図4から図7に示す。
【0039】
図4では、孔部3を2箇所形成して、糸状の綴じ部材2をシート束1の一方面から一方の孔部3を通して挿入して、続けてシート束1の他方面から他方の孔部3を通して挿入し、糸状の綴じ部材2の両端部をシート束1の一方面に接するように折り曲げ、綴じ部材2を配置している。これによって、シート束をより強固に綴じることができる。図4において、孔部を3箇所以上に形成し、それぞれの孔部に糸状の綴じ部材を挿入してもよい。また、図5に示すように、糸状の綴じ部材2の端部をシート束1の一方面上で交差するように配置してもよい。これによって、綴じ部材の脱落をより確実に防ぐことができる。
【0040】
図6では、孔部3を1箇所形成して、糸状の綴じ部材2を孔部3に挿入してリング状に配置し、孔部3のリング状の接続部分を加熱接着して、シート束1を綴じている。
【0041】
図7では、綴じ部材2を加熱して溶融固着する際に、綴じ部材2の露出面に凹凸形状(図7において「XYZ」)を形成している。これによって、シート束1に任意の情報を付与することができ、また意匠性を付与することもできる。
【0042】
上記した構成では、シート束を1箇所で綴じているが、シート束を複数箇所で綴じるようにしてもよい。また、シート束を綴じる箇所は、シートの縁部周辺が好ましく、シートの角周辺としてもよい。
【0043】
本実施形態によるシート綴じ方法によれば、シート束に別のシートを差し込むことや、シート束から一部のシートを取り出すことをより簡単にできる。
【0044】
図8は、シートの差し込み及び取り出しの一例を説明するための説明図である。
【0045】
図8(a)ではシート束1のうち取り出したいシートの一方面上にハサミ4を挿入して綴じ部材2を切断し、不図示であるが同様にして取り出したいシートの他方面上にハサミを挿入して綴じ部材を切断して、1枚のシートを取り出すことができる。このとき、切り離されたそれぞれのシート束1は、綴じ部材2によって孔部の壁面で接着されているため、綴じた状態を維持している。図8(b)では、切り離されたシート束1間に差し替え用のシート1aを挿入する。ここで、差し替え用シート1aにはシート束1の孔部3と同形状の孔部3aが形成され、差し替え用シート1aはその孔部3aをシート束1の孔部3と合わせて配置される。図8(c)では、綴じ部材2の切断面を加熱された鉄片等の加熱部材5で加熱溶融する。図8(d)では、この加熱部材を取り外してから、切断された綴じ部材2が切断面で合うようにして圧着することで、シート束1を再度綴じることができる。
【0046】
以下、シート綴じ装置について図面を参照して説明する。
【0047】
図9は、プリンタAとシート後処理装置Bとの概略断面図を示す。図9において、Aはシートに画像を形成するためのプリンタであり、BはプリンタAに接続されシートを搬送及び排紙するためのシート後処理装置である。シート後処理装置Bは、シート束を綴じるシート綴じ装置100と、プリンタAから排紙されるシートをシート綴じ装置100に搬送する搬送経路200と、シート綴じ装置100から排紙されるシート束1が排紙される排紙台300と、プリンタAから排紙されるシートをシート綴じ装置100を介さずに排紙するためのバイパス経路400とを備える。
【0048】
図10は、図9に示すシート綴じ装置100の概略断面図を示す。図10において、シート綴じ装置100は、搬送されるシートを積層して収容するためのシートトレイ10と、シートトレイ10に収容されたシート束1に孔部3を穿孔するための穿孔部材11と、綴じ部材2を収容するための綴じ部材収容部12と、綴じ部材収容部12から穿孔部に綴じ部材2を搬送するための搬送経路13と、穿孔部で綴じ部材2を切断するための切断部材14と、穿孔部で綴じ部材2を加熱接着するための加熱部材15a及び15bとを備える。
【0049】
シートトレイ10は、シートトレイ10の一側面に設けられ穿孔部材11の先端部がシートトレイ10内の穿孔部に移動するために挿入可能である開口部10aと、シートトレイ10の下面に設けられ穿孔部材11の先端部がシート束1に孔部3を形成する際にシート束1の最下面から突出可能である開口部10bとを備える。
【0050】
穿孔部材11は、パンチャー等で構成され、先端部が鋭利な刃になっており、回転軸11aを基点として不図示の駆動部によって回転可能に配置され、回転することでその先端部がシートトレイ10の開口部10aからシート束1の穿孔部に移動し、シート束1を貫通して孔部3を形成するように配置される。穿孔部材11は、シートトレイ10に収容されるシート束1の収容位置に対応させて複数箇所に配置してもよく、また、穿孔部材11をシート束1の収容位置内で移動可能に配置して所望の綴じ位置でシート束1を穿孔するようにしてもよい。
【0051】
綴じ部材収容部12は、糸状の綴じ部材2を巻き取られた状態で収容する。綴じ部材収容部12はカートリッジとしてシート綴じ装置100から着脱可能に配置されてもよい。綴じ部材収容部12内の綴じ部材2は、搬送経路13によって搬送ローラ13aを用いてシート束1の穿孔部に搬送可能である
【0052】
切断部材14は、シートトレイ10にシート束1が積載された状態で最表面のシート上に配置され、綴じ部材2を穿孔部で切断するように水平方向に移動可能に配置される。切断部材14は、シートトレイ10にシート束1を最大に積載した状態でシート束1と干渉しない垂直方向の位置に固定して配置してもよく、また、不図示のセンサーによってシート束1の最表面の位置を検出してシート束1と干渉しない垂直方向の位置に移動可能に配置してもよい。切断部材14は、カッター等で構成され、水平方向に移動することで、穿孔部で綴じ部材2を切断してもよく、水平移動した後に鋏のように作動して切断してもよい。
【0053】
加熱部材15は、ヒーター等で構成され、シートトレイ10に収容されるシート束1に対して上方に配置される加熱部材15aと下方に配置される加熱部材15bとを有する。切断部材14と同様に、水平方向に移動可能に配置され、垂直方向に固定して配置してもよく、シート束1の積載量に応じて移動可能に配置してもよい。また、加熱部材15は、上方または下方のどちらか一方のみに配置するようにしてもよい。
【0054】
次に、シート綴じ装置100の処理工程について図11を参照して説明する。図11は、シート綴じ装置100の処理工程を説明するための説明図を示す。
【0055】
図11(a)ではシートトレイ10に複数のシートを揃えて重ねる。
【0056】
図11(b)では穿孔部材11を回転軸11aを基点にして図中X方向に回転させ、穿孔部材11の先端部がシート束1に突き当たり貫通して、シート束1の厚さ方向に貫通した孔部3を形成する。このとき、穿孔部材11によって切り抜かれたシート屑は穿孔部材ボックス16に回収される。
【0057】
図11(c)では穿孔部材11を反対方向に回転させてもとの位置に戻した後、綴じ部材収容部12内から綴じ部材2を搬送経路13を介して搬送ローラ13aを用いて穿孔部に搬送し、さらに綴じ部材2を孔部3に挿入して配置する。
【0058】
図11(d)では切断部材14を穿孔部方向Yに水平移動させて、綴じ部材2を孔部3の上部の開口縁部周辺で切断する。
【0059】
図11(e)では切断部材14を反対方向に水平移動させてもとの位置に戻した後、加熱部材15a及び15bを穿孔部方向Zに水平移動させて、孔部3の上部及び下部の開口縁部周辺に位置させ、綴じ部材2を両端部から加熱する。このとき、加熱部材15a及び15bは水平移動した際に加熱を開始してもよく、また、予め加熱状態としておいてもよい。
【0060】
図11(f)では加熱部材15a及び15bによって綴じ部材2が両端部から加熱されることで溶融及び硬化されてシート束1が綴じられ、また、加熱部材15a及び15bは反対方向に水平移動されてもとの位置に戻してある。
【0061】
以下、シートに形成される画像のインクとして、非水系インクについて説明する。非水系インクとしては、特に限定されないが、非水系溶剤、顔料または染料を含み、適宜顔料分散剤、その他添加剤を含むことができる。
【0062】
顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、染料系、縮合多環系、ニトロ系、ニトロソ系等の有機顔料(ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウォッチングレッド、ジスアゾイエロー、ハンザイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー、アニリンブラック等);コバルト、鉄、クロム、銅、亜鉛、鉛、チタン、バナジウム、マンガン、ニッケル等の金属類、金属酸化物および硫化物、ならびに黄土、群青、紺青等の無機顔料、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック類を用いることができる。これらの顔料は、いずれか1種が単独で用いられるほか、2種以上が組み合わせて使用されてもよい。
【0063】
顔料の平均粒径は、分散性と保存安定性の観点から300nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましい。ここで、顔料の平均粒径は、(株)堀場製作所製の動的光散乱式粒度分布測定装置LB−500により測定された値である。
【0064】
インク中の顔料の含有量は、通常0.01〜20重量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から3〜15重量%であることが好ましい。
【0065】
顔料を使用する場合には顔料分散剤を配合することができる。配合される顔料分散剤は、特に限定されず、顔料を溶剤中に安定して分散させるものであればよい。たとえば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等が好適に使用され、そのうち、高分子分散剤の使用が好ましい。これらは単独で用いられるほか、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
インク中の顔料分散剤の配合量は、適宜設定できるが、顔料分散性の観点から、重量比で、顔料1部に対し0.05〜1.0部程度であることが好ましく、0.1〜0.7部であることがより好ましい。インク総量に対しては、顔料分散剤は、0.5〜10重量%程度含まれていることが好ましく、1〜5重量%であることが一層好ましい。
【0067】
染料としては、例えば、アゾ系、アントラキノン系、アジン系等の油溶性染料を用いることができる。これらの染料は、いずれか1種が単独で用いられるほか、2種以上が組み合わせて使用されてもよい。また、これらの染料は、上記した顔料とともに使用されてもよい。
【0068】
非水系溶剤としては、非極性有機溶剤および極性有機溶剤であって、50%留出点が150℃以上の溶剤である。50%留出点は、JIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定される、重量で50%の溶剤が揮発したときの温度を意味する。
【0069】
たとえば、非極性有機溶剤としては、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素溶剤等を好ましく挙げることができる。脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素系溶剤としては、たとえば、JX日鉱日石エネルギー(株)製「テクリーンN−16、テクリーンN−20、テクリーンN−22、日石ナフテゾールL、日石ナフテゾールM、日石ナフテゾールH、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、日石アイソゾール300、日石アイソゾール400、AF−4、AF−5、AF−6、AF−7」、Exxon社製「Isopar(アイソパー)G、Isopar H、Isopar L、Isopar M、Exxsol D40、Exxsol D80、Exxsol D100、Exxsol D130、Exxsol D140」等を好ましく挙げることができる。芳香族炭化水素溶剤としては、JX日鉱日石エネルギー(株)製「日石クリーンソルG」(アルキルベンゼン)、Exxon社製「ソルベッソ200」等を好ましく挙げることができる。
【0070】
極性有機溶剤としては、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤、エーテル系溶剤、およびこれらの混合溶剤を用いることができる。たとえば、炭素数8〜20の高級脂肪酸と炭素数1〜24のアルコールとのエステルであるエステル系溶剤、炭素数8〜24の高級アルコール、および炭素数8〜20の高級脂肪酸からなる群から選ばれた1種以上を好ましく使用できる。
【0071】
極性有機溶剤としてより具体的には、ラウリル酸メチル、ラウリル酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリ2エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルなどのエステル系溶剤;イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノールなどのアルコール系溶剤;ノナン酸、イソノナン酸、イソミリスチン酸、ヘキサデカン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などの高級脂肪酸系溶剤;ジエチルグリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル系溶剤、が好ましく挙げられる。
【0072】
本実施形態の綴じ部材に用いる熱可塑性樹脂は、上記した非水系溶剤に対して溶解性が低いため、加熱接着の際に本実施形態の熱可塑性樹脂が変性することを防止し、接着強度の低下を防ぐことができる。上記した非水系溶剤の中でも、非水系インクに好ましく使用される溶剤としては、脂肪族炭化水素溶剤や、脂環式炭化水素系溶剤、脂肪酸エステル等であり、これらに対し、本実施形態の熱可塑性樹脂は溶解性が低いため、綴じ部材の接着強度を十分に確保することができる。
【0073】
以上の各成分に加え、インクには、必要に応じて、各種添加剤を含ませることができる。具体的には、消泡剤、表面張力低下剤等として、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、または高分子系、シリコーン系、フッ素系の界面活性剤をインクに含有させることができる。
【0074】
非水系インクを用いた印刷方法は、特に限定されないが、インクジェット記録装置を用いて行われることが好ましい。インクジェットプリンタは、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよい。インクジェット記録装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから本実施形態に係るインクを吐出させ、吐出されたインク液滴をシートに付着させるようにすることが好ましい。
【0075】
非水系インクをインクジェット記録用非水系インクとして用いる場合のインクの粘度は、吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において5〜30mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることがより好ましく、約10mPa・s程度であることが最も適している。ここで粘度は、23℃において0.1Pa/sの速度で剪断応力を0Paから増加させたときの10Paにおける値を表す。
【0076】
シートとしては、特に限定されず、普通紙、上質普通紙、インクジェット(IJ)紙、IJマット紙、シート上にインク吸収溶液がコートされたコート紙、コート紙よりもインク吸収層の厚みが薄い微コート紙、光沢紙(フォト光沢用紙)、特殊紙、布等で使用することができる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
(製造例1)
綴じ部材として、断面が2mm×3mmの矩形となる糸状ポリウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社製スーパーフレックス840を乾燥させて作製、下記式(2)で表される単位を有する樹脂である)を用いた。
【化4】
【0079】
[式(2)中、R´は任意の2価の基である。]
【0080】
シートとして上質紙(アジア原紙株式会社製、WHITE PPC)を用いた。この上質紙10枚を印刷していない状態で重ね、3mm×3mmの孔部を形成した。
【0081】
この孔部に上記糸状ポリウレタン樹脂を通して配置し、加熱接着して10枚の上質紙を綴じた。この加圧条件は、160℃、0.5kN/m2、3秒間とした。
【0082】
(製造例2)
上質紙10枚を印刷した状態で重ねた他は、上記製造例1と同様にして10枚の上質紙を綴じた。
【0083】
上質紙の印刷は、ライン型インクジェットプリンタ「ORPHIS X9050」(理想科学工業株式会社製)を使用して、非水系インク「RISO XインクFブラック」(理想科学工業株式会社製、溶剤の主成分として石油系炭化水素、高級アルコール、及び脂肪酸エステルを含む)を用いて、黒ベタ画像を片面に形成した。印刷設定は、用紙種類:普通紙、プリント濃度:0(標準)とした。
【0084】
(製造例3)
綴じ部材として、断面が2mm×3mmの矩形となる糸状ポリエチレン樹脂(大倉工業株式会社製LDPE(低密度ポリエチレン)フィルム(ローデンポリ、厚さ0.03mm)を溶融させて成形して作製)を用いた他は、上記製造例1と同様にして10枚の上質紙を綴じた。
【0085】
(製造例4)
上質紙10枚を印刷した状態で重ねた他は、上記製造例3と同様にして10枚の上質紙を綴じた。上質紙の印刷は、上記製造例2と同様とした。
【0086】
(剥離強度評価)
10枚の上質紙を綴じた状態で綴じ部を含むように25mm×100mmの短冊状に切り出し、引っ張り試験機(株式会社A&D製、テンシロンRTC−1210A)を用いて、100mm/min.の速度でT字剥離し、ピーク強度を測定した。このピーク強度を剥離強度として評価した。結果を表1に示す。
【表1】
【0087】
表1に示すとおり、実施例1では、綴じ部材の非水系インクに対する耐性が高く、剥離強度が印刷によっても低下しにくいことがわかる。一方、比較例1では、綴じ部材の非水系インクに対する耐性が比較的低いため、剥離強度が印刷によって低下することがわかる。
【符号の説明】
【0088】
1 シート束
2 綴じ部材
3 孔部
4 ハサミ
5 加熱部材
10 シートトレイ
11 穿孔部材
12 綴じ部材収容部
13 搬送経路
14 切断部材
15 加熱部材
16 パンチャーボックス
100 シート綴じ装置
200 搬送経路
300 排紙台
400 バイパス経路
A プリンタ
B シート後処理装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシートに孔部を形成し、
下記一般式(1)で表される単位を有する熱可塑性樹脂を含む綴じ部材を前記孔部に配置し、
前記孔部に配置された前記綴じ部材を加熱接着し、前記複数のシートを綴じる工程を含む、シート綴じ方法。
【化1】
[一般式(1)中、Rは任意の2価の基であり;Xは2価以上のヘテロ原子である。]
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は、ポリウレタン樹脂及び/またはポリエステル樹脂である、請求項1に記載のシート綴じ方法。
【請求項3】
前記綴じ部材は糸状である、請求項1または2に記載のシート綴じ方法。
【請求項4】
複数のシートに孔部を形成し、
綴じ部材を前記孔部に配置し、
前記孔部に配置された前記綴じ部材を加熱接着し、前記複数のシートを綴じる工程を含む、シート綴じ方法に用いられる綴じ部材であって、
下記一般式(1)で表される単位を有する熱可塑性樹脂を含む、綴じ部材。
【化2】
[一般式(1)中、Rは任意の2価の基であり;Xは2価以上のヘテロ原子である。]
【請求項1】
複数のシートに孔部を形成し、
下記一般式(1)で表される単位を有する熱可塑性樹脂を含む綴じ部材を前記孔部に配置し、
前記孔部に配置された前記綴じ部材を加熱接着し、前記複数のシートを綴じる工程を含む、シート綴じ方法。
【化1】
[一般式(1)中、Rは任意の2価の基であり;Xは2価以上のヘテロ原子である。]
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は、ポリウレタン樹脂及び/またはポリエステル樹脂である、請求項1に記載のシート綴じ方法。
【請求項3】
前記綴じ部材は糸状である、請求項1または2に記載のシート綴じ方法。
【請求項4】
複数のシートに孔部を形成し、
綴じ部材を前記孔部に配置し、
前記孔部に配置された前記綴じ部材を加熱接着し、前記複数のシートを綴じる工程を含む、シート綴じ方法に用いられる綴じ部材であって、
下記一般式(1)で表される単位を有する熱可塑性樹脂を含む、綴じ部材。
【化2】
[一般式(1)中、Rは任意の2価の基であり;Xは2価以上のヘテロ原子である。]
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−31977(P2013−31977A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169903(P2011−169903)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
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