説明

シート

【課題】本発明は、前席と後席との間の移動の障害になることがないアシストグリップの実現と、物を入れるためのポケット機能と、を兼ね備えたシートを提供する。
【解決手段】シートにおいては、成形容体状の指先挿入体20の凹状部20bがシートバックSBの頂部に埋設されているので、グリップ機能がシートバックSBの背面から突出することがなく、更には、凹状部20bをポケットとして機能させることができる。そして、シートバックSBの頂部に設けられた指先挿入体20の上方に位置するヘッドレストHRには、指先挿入体20の凹状部20bの開口部20cを露出する切欠き部4が形成されているので、ヘッドレストHRに邪魔されることなく、凹状部20b内に指を入れ易く、これによって、乗り降り時にシートバックSBの頂部を乗員がつかみ易くなる。また、凹状部SBをポケットとして利用する場合には、物の出し入れが容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員の乗り降りの際に利用可能なアシストグリップとしての機能を備えたシートバックを有するシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、実開平4−35933号公報がある。この公報に記載されたシートに設けられる樹脂製のアシストグリップは、ヘッドレストの下面とシートバックの頂面との間に配置される本体部と、この本体部から下方に垂下した一対の保持筒部と、本体部の背面から後方に突出したグリップ部と、からなる。また、この保持筒部は、シートバックフレームの上部に固定された筒部内に挿入されると共に、ヘッドレストから延出されたステーを差し込むためのステー挿入孔を有している。このようなアシストグリップは、乗員の乗り降りの際に利用可能なグリップ機能と、ヘッドレストのステーを保持する機能とを両立させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−35933号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来のシートに設けられているアシストグリップのグリップ部は、乗員の乗り降りの際に利用に供するためにシートバックの背面から突出させる必要があり、前席と後席との間の移動の障害になるといった問題点がある。
【0005】
本発明は、前席と後席との間の移動の障害になることがないアシストグリップの実現と、物を入れるためのポケット機能と、を兼ね備えたシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シートバックにヘッドレストを設けたシートにおいて、
凹状部を有する成形容体状の指先挿入体が、前記シートバック内への該凹状部の埋設を伴って前記シートバックの頂部に設けられると共に、前記指先挿入体の上方に位置する前記ヘッドレストには、前記指先挿入体の前記凹状部の開口部を露出する切欠き部が形成されたことを特徴とする。
【0007】
このシートにおいては、成形容体状の指先挿入体の凹状部がシートバックの頂部に埋設されているので、グリップ機能がシートバックの背面から突出することがなく、乗員の乗り降りの際に、前席と後席との間の移動をスムーズに行うことができ、更には、凹状部をポケットとして機能させることができる。そして、シートバックの頂部に設けられた指先挿入体の上方に位置するヘッドレストには、指先挿入体の凹状部の開口部を露出する切欠き部が形成されているので、ヘッドレストに邪魔されることなく、凹状部内に指を入れ易く、これによって、乗り降り時にシートバックの頂部を乗員がつかみ易くなる。また、凹状部をポケットとして利用する場合には、物の出し入れが容易になる。
【0008】
また、前記指先挿入体の前記切欠き部は、該ヘッドレストの背面であって下面の開口した横断面略凹形状であると好適である。
このような構成は、ヘッドレストのクッション性を損なうことなく、指先挿入体の凹状部の開口部を露出させ易い。
【0009】
また、前記指先挿入体は、縫合連結の可能な軟質素材から容体状に成形されており、前記凹状部の前記開口部の周縁に形成された連結部は、前記シートバックのトリムカバーに設けられた取付孔の周縁に縫着することにより、前記トリムカバーに連結されていると好適である。
このような構成を採用すると、指先挿入体とシートバックとの一体化を簡単且つ確実に達成させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係わるシートによれば、前席と後席との間の移動の障害になることがないアシストグリップの実現と、物を入れるためのポケット機能と、を兼ね備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るシートの第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】本発明に係るシートの第2の実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【図4】図3のB−B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るシートの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1及び図2に示されるように、シートは、シートクッションSCに対して傾動自在なシートバックSBを具備し、このシートバックSBの上方にはヘッドレストHRが配置されている。
【0014】
ヘッドレストHRは、例えば、合成樹脂が不織布にコーティングされた状態でプレスにより所定の形状に成形され、これによって保形性をもたせたトリムカバー3と、トリムカバー3内に注入された発泡液が硬化してなるパッド体2と、パッド体2内で固定されたヘッドレストフレーム1に形成されると共に、トリムカバー3から延出されたステー1aとからなる。
【0015】
シートバックSBは、例えば、合成樹脂が不織布にコーティングされた状態でプレスにより所定の形状に成形され、これによって保形性をもたせたトリムカバー11と、トリムカバー11内に装填させるパッド体10と、パッド体10内で固定されたシートバックフレーム2と、シートバックフレーム2の上端で横方向に延在するアッパーフレーム2aに溶接により固定されると共に、上下方向に延在してステー1aをアッパーフレーム2aで支持するための左右一対の筒体5と、各筒体5内に差し込まれて係止させられると共に、上端にヘッド部6aが形成されて、上部からステー1aの差し込みを可能にする樹脂製の筒状のヘッドレスト支持体6と、から主として構成されている。
【0016】
なお、パッド体10は、トリムカバー11内に注入された発泡液が硬化して一体成形される場合と、トリムカバー11と別体に形成されて、トリムカバー11内に挿着される場合とがある。本発明では、その両タイプの適用が可能である。
【0017】
また、トリムカバー11の頂部には、筒状のヘッドレスト支持体6の差し込みを可能にする差込み孔7bが形成され、パッド体10の頂部にも、ヘッドレスト支持体6の差し込みを可能にする差込み孔10bが形成されている。そして、ヘッドレスト支持体6の差し込みを可能にするために、トリムカバー11側の差込み孔7bとパッド体10側の差込み孔10bとの位置合わせがなされている。
【0018】
シートバックSBの頂部には、手Hの指Fの挿入を可能にする成形容体状の指先挿入体20に設けられた凹状部20bが埋設されている。指先挿入体20の凹状部20bの開口部20cの周縁部には、フランジ状の連結部20aが形成されている。このような構成の指先挿入体20は、トリムカバー11との縫合連結の可能なエストマーなどの軟質合成樹脂からなる軟質素材から容体状に成形されている。
【0019】
トリムカバー11の頂部には、指先挿入体20の凹状部20bの挿入を可能にする取付孔7aが形成され、この取付孔7aは、トリムカバー11の頂部において差込み孔7bの後方に配置されている。パッド体10の頂部にも、指先挿入体20の凹状部20bの挿入を可能にする挿通孔10aが形成され、この挿通孔10aは、パッド体10の頂部において差込み孔10bの後方に配置されている。そして、凹状部20bの装着を可能にするために、トリムカバー11側の取付孔7aとパッド体10側の挿通孔10aとの位置合わせがなされている。
【0020】
指先挿入体20の連結部20aは、トリムカバー11の頂部に設けられた取付孔7aの周縁で縫合部Rにより縫着されることで、トリムカバー11に連結されている。連結部20aは、トリムカバー11の取付孔7aを形成するために折り返された縫合端の厚み分だけ、指先挿入体20の開口部20cの上端縁から、凹状部20bの底部方向にずれて設けられている。このような縫合により、トリムカバー11の取付孔7aの外観品質を向上させることができる。そして、指先挿入体20とシートバックSBとの一体化を簡単且つ確実に達成させることができる。
【0021】
このようにしてトリムカバー11に縫着される指先挿入体20は、軟質素材により成形されているため、手Hの指Fの力で変形し易い。従って、指先挿入体20の変形によって周囲のトリムカバー11が引っ張られることによりヘッドレスト支持体6のヘッド部6aの周囲で差込み孔7bが見えたり、シワなどの外観不良が発生する。更には、指Fの力による指先挿入体20の凹状部20bの変形は、グリップ機能の剛性不足をももたらす。
【0022】
そこで、指先挿入体20の素材特性を生かしながらトリムカバー11への縫着性とグリップ機能の安定性とを両立させるために、指先挿入体20の凹状部20bを保持するための樹脂製の支持プレート30が利用される。この支持プレート30は、凹状部20bの嵌入を可能にする嵌入孔30bと、各ヘッドレスト支持体6を挿入するための挿通孔30aと、が形成されている。支持プレート30において、左右一対の挿通孔30aの後方に嵌入孔30bが形成されている。
【0023】
変形し難い樹脂で成形された支持プレート30の各挿通孔30a内にヘッドレスト支持体6が挿入されることで、支持プレート30は、ヘッドレスト支持体6により横方向の移動が規制されている。これにより、ヘッドレスト支持体6に対する指先挿入体20の横方向の移動を規制することができ、支持プレート30の嵌入孔30b内に嵌入された凹状部20bの変形を防止することができる。
【0024】
トリムカバー11に縫着される指先挿入体20を軟質素材により成形させていても、トリムカバー11への縫着性とグリップ機能の安定性とを両立させることができる。また、支持プレート30に各挿通孔30a及び嵌入孔30bが設けられることにより組み立て作業性が向上する。
【0025】
なお、パッド体10は、トリムカバー11内に注入された発泡液が硬化して一体成形される場合には、図2で示されるように、支持プレート30は、パット体10内に埋設される。パッド体10とトリムカバー11とが別体に形成される場合には、図示しないが、支持プレート30は、パット体10の頂部とトリムカバー11の頂部との間に介挿される。
【0026】
さらに、指先挿入体20の上方に位置するヘッドレストHRには、指先挿入体20の凹状部20bの開口部20cを露出するための切欠き部4が形成されている。この切欠き部4は、ヘッドレストHRの背面8bであって下面8aの開口した横断面略凹形状である。このような構成により、ヘッドレストHRのクッション性を損なうことなく、指先挿入体20の凹状部20bの開口部20cを露出させ易い。切欠き部4は、ヘッドレストHRの背面側で凹状部20bの横幅より広くなっており、下側に行くにつれて広くなっているので、十分な広さを確保しつつ、凹状部20bの開口部20cへ指Fを上から差し入れ易くなる。
【0027】
このシートにおいては、成形容体状の指先挿入体20の凹状部20bがシートバックSBの頂部に埋設されているので、グリップ機能がシートバックSBの背面から突出することがないので、乗員の乗り降りの際に、前席と後席との間の移動をスムーズに行うことができ、更には、凹状部20bをポケットとして機能させることができる。そして、シートバックSBの頂部に設けられた指先挿入体20の上方に位置するヘッドレストHRには、指先挿入体20の開口部20cを露出する切欠き部4が形成されているので、ヘッドレストHRに邪魔されることなく、凹状部20b内に指を入れ易く、これによって、乗り降り時にシートバックSBの頂部を乗員がつかみ易くなる。また、指先挿入体20をポケットとして利用する場合には、物の出し入れが容易になる。
【0028】
[第2の実施形態]
ただし、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一又は同等な構成部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0029】
図3及び図4に示されるように、指先挿入体20の凹状部20bは、左右のヘッドレスト支持体6の間でアッパーフレーム2aの前側に隣接して配置されている。すなわち、指先挿入体20の凹状部20bは、シートバックSBの頂部で左右のヘッドレスト支持体6の間に配置されると共に、パッド体10内でアッパーフレーム2aの前側に隣接して配置されている。
【0030】
さらに、指先挿入体20の凹状部20bを保持するための樹脂製の支持プレート40は、凹状部20bの嵌入を可能にする嵌入孔40aと、各ヘッドレスト支持体6を挿入するための挿通孔40bと、が形成されている。支持プレート40において、嵌入孔40aの両側方に左右一対の挿通孔40bが形成されている。
【0031】
このような構成を採用すると、指先挿入体20の凹状部20bの左右及び後方への移動を、左右のヘッドレスト支持体6及びアッパーフレーム2aによって容易且つ簡単に規制することができる。
【0032】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、前述した指先挿入体20と支持プレート30は、別体として成形されているが、前述した指先挿入体20と支持プレート30とが一体成形されたものであってもよい。なお、支持プレート40も同様である。
【符号の説明】
【0033】
1a…ステー、2…シートバックフレーム、2a…アッパーフレーム、4…切欠き部、6…ヘッドレスト支持体、7a…取付孔、8a…ヘッドレストの下面、8b…ヘッドレストの背面、10…パッド体、11…トリムカバー、20…指先挿入体、20a…連結部、20b…凹状部、20c…開口部、30…支持プレート、30a…挿通孔、30b…嵌入孔、40…支持プレート、40a…嵌入孔、40b…挿通孔、HR…ヘッドレスト、R…縫合部、SB…シートバック、SC…シートクッション。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックにヘッドレストを設けたシートにおいて、
凹状部を有する成形容体状の指先挿入体が、前記シートバック内への該凹状部の埋設を伴って前記シートバックの頂部に設けられると共に、前記指先挿入体の上方に位置する前記ヘッドレストには、前記指先挿入体の前記凹状部の開口部を露出する切欠き部が形成されたことを特徴とするシート。
【請求項2】
前記指先挿入体の前記切欠き部は、該ヘッドレストの背面であって下面の開口した横断面略凹形状であることを特徴とする請求項1記載のシート。
【請求項3】
前記指先挿入体は、縫合連結の可能な軟質素材から容体状に成形されており、前記凹状部の前記開口部の周縁に形成された連結部は、前記シートバックのトリムカバーに設けられた取付孔の周縁に縫着することにより、前記トリムカバーに連結されていることを特徴とする請求項1又は2記載のシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−201322(P2012−201322A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69935(P2011−69935)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】