説明

シードフィーダ

【課題】畑に種まきをおこなうプランタにコーティングされた種子を供給するためのシードフィーダ内で、種子が転動してそのコーティングが破損することを抑制する。
【解決手段】斜めに支持されたシャッタプレート11に対し、スライドプレート20を衝合し、駆動機構40によりシャッタプレート11の傾斜方向に往復してスライドさせる。シャッタプレート11には供給孔11bが、スライドプレート20には保持孔21が、それぞれ形成されている。保持孔21の内壁は傾斜方向下側が凹球面形に窪んでいる。ホッパ30に投入された種子は、シャッタプレート11の板面が下蓋となって保持孔21の凹球面部へとはまり込む。スライドプレート20が移動して、その保持孔21とシャッタプレート11の供給孔11bとが合致すると、種子は落下してプランタへと供給される。シャッタプレート11が傾斜していることで種子への動摩擦力が減じられ、保持孔21との摩擦が凹球面により増大しているため、種子の転動が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、畑に種まきをおこなうプランタに対して、コーティングされた種子を供給するためのシードフィーダに関する。
【背景技術】
【0002】
畑への種まき作業を自動化する試みは以前からなされているが、一般に種子は形状がいびつであったり寸法が小さすぎたりして、そのままでは機械装置による取り扱いに適していない。
そのため、種子に樹脂でコーティングを施して全体を球形に整えるとともにサイズアップさせ、機械装置による取り扱いの容易化を図っている。
【0003】
ところで、このようなコーティングは、堅固でありすぎると種子の発芽が阻害される。そのため、種まき後の畑への散水で水分を含んだり、畝をローラで加圧したりすると、簡単に割れるように非常に脆い状態に設計されている。
しかし種子のコーティングが脆いと、種まき作業中に種子が転がるだけでも破損してしまうおそれがある。
【0004】
一方、種まき作業時に用いる機械装置としては、畑に種まきをおこなうプランタの他に、このプランタへと所定量の種子を供給するシードフィーダがある。
従来のシードフィーダとしては、特許文献1のように、種子を投入するホッパと、回転するシャッタドラムとからなり、上方に配置されたホッパの下面に形成された開口を、下方に配置されたシャッタドラムで閉塞したものが知られている。
【0005】
シャッタドラムの全周には凹部が多数設けられており、ホッパの開口に臨むドラム上半部の凹部には種子がはまり込むようになっている。種子がはまり込んだ凹部がシャッタドラムの回転によりドラム下半部へと移動すると、種子は自重により凹部から抜け出して落下する。落下した種子は、下方に配置されたプランタへと供給されるようになっている。
種子が脱落して空になった凹部は、シャッタドラムの回転によりふたたび上半部に移動し、ホッパの開口に臨むとホッパ内の種子が再度充填される。そして、シャッタドラムがさらに回転にすると種子は凹部から落下する。これが繰り返されることでプランタに順次種子が供給される。
【0006】
シードフィーダにこのような構成を採用した場合、シャッタドラムの回転に伴って種子が転動するため、脆いコーティングが破損してしまう問題がある。
コーティングが破損すると、その破片がシードフィーダやプランタの機構に引っかかって故障したり、また種子の外形がいびつになってプランタから畑に向けてスムーズに排出されなくなったりするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−333979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明の課題は、コーティングされた種子がシードフィーダ内で転動するのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、球形にコーティングされた種子の種まきをおこなうプランタへと前記種子を供給するためのシードフィーダを、以下の構成を備えるものとしたのである。
【0010】
すなわち、シードフィーダは、水平方向に対して傾斜した状態に支持され、種子が通過可能な供給孔を有するシャッタプレートを備える。
また、シードフィーダは、このシャッタプレートの上面に衝合し、種子が通過可能な保持孔を有するスライドプレートを備える。
さらに、シードフィーダは、投入された種子を前記スライドプレートの保持孔に案内するホッパを備える。
最後に、シードフィーダは、スライドプレートをシャッタプレートの傾斜方向に沿って往復動させる駆動機構を備える。
【0011】
そして、スライドプレートの保持孔とシャッタプレートの供給孔とが合致しない位置で、ホッパに投入された種子はシャッタプレートの板面が下蓋となってスライドプレートの保持孔にはまり込むものとする。
また、スライドプレートの保持孔とシャッタプレートの供給孔とが合致する位置で、スライドプレートの保持孔にはまりこんだ種子はシャッタプレートの供給孔を通じて落下するものとする。
【0012】
スライドプレートの往復動により、種子の保持孔へのはまり込みおよび供給孔を通じての落下が繰り返されることになる。そのため、プランタをシードフィーダの下方に配置するか、供給孔とプランタとをパイプ等で接続しておくと、供給孔から落下した種子はプランタへと順次供給される。
【0013】
ここでスライドプレートの保持孔にはまり込んだ種子は、シャッタプレートの板面が下蓋となってこれと接触しながらスライドプレートとともに移動する。そのためシャッタプレートから常時動摩擦力を受け、この動摩擦力により種子に回転トルクが生じる。ここで、この動摩擦力はシャッタプレートから受ける垂直抗力に比例する。
このシードフィーダでは、シャッタプレートを水平方向に対して傾斜させているため、シャッタプレートが水平の場合に比べて垂直抗力が減じられている。そのため、種子にかかる動摩擦力およびそれにより生じる回転トルクも減じられ、種子の転動が抑制される。
【0014】
シャッタプレートの水平に対する傾斜角度は、30度〜60度が好ましく、40度〜50度がさらに好ましい。
シャッタプレートの傾斜角度を90度に近づけるほど種子にかかる垂直抗力は減じられるが、その一方で、傾斜角度が急すぎるとスライドプレートの保持孔とシャッタプレートの供給孔が合致した際に種子が供給孔から落下しにくくなるからである。
【0015】
スライドプレートの保持孔は、種子との摩擦を増大させる摩擦面をスライドプレートの傾斜方向の下側の内壁に有するのが好ましい。
保持孔にはまり込んだ種子は、重力によりスライドプレートの傾斜方向の下側となる保持孔の内壁に接触するところ、この接触個所の摩擦が大きいと、それが種子にシャッタプレートとの接触により生じる回転トルクへの抵抗となり、種子の転動がさらに抑制されるからである。
【0016】
このような摩擦面としては、球形にコーティングされた種子との接触面積が大きいように、種子と球径がほぼ同じの凹球面部とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
シードフィーダを以上のように構成したので、コーティングされた種子の転動が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態のシードフィーダの斜視図
【図2】実施形態のシードフィーダの縦断面図
【図3】実施形態のシードフィーダの正面図
【図4】実施形態のシードフィーダの要部縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつこの発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1から3に示す実施形態のシードフィーダ1は、畑に種まきをおこなうプランタへと球形にコーティングされた種子Sを順次供給するために用いられる。
図示のように、シードフィーダ1は、台座10と、スライドプレート20と、ホッパ30と、駆動機構40と、を備える。
【0021】
ここで台座10は、シャッタプレート11とシャッタプレート11を下方から支持する脚部12とを有する。
図示のように、矩形のシャッタプレート11は、左右一対の三角形の脚部12により、水平に対して傾斜した状態に支持されている。
シャッタプレート11の傾斜角度R(図2参照)は、特に限定されないが30度〜60度が好ましく、40度〜50度がより好ましい。
【0022】
また、シャッタプレート11の上面には、シャッタプレート11の傾斜方向に延びる左右一対のガイド枠11aが固定されている。
このガイド枠11aの間には、左右方向に並列する複数の円形の供給孔11bが形成されている。さらにシャッタプレート11の下面には、各供給孔11bにそれぞれ通じるパイプ11cが接続されている。ここで供給孔11bの径およびパイプ11cの内径は、種子Sの径よりも大きくなっている。
【0023】
シャッタプレート11のガイド枠11aの間には、矩形のスライドプレート20が配置されている。スライドプレート20の左右端はそれぞれガイド枠11aにはまり込んでおり、シャッタプレート11の傾斜方向に沿ってスライド可能となっている。
このスライドプレート20には、左右方向に並列する円形の複数の保持孔21が形成されている。この保持孔21の径は、種子Sの径よりも大きくなっている。
【0024】
ここで保持孔21と供給孔11bの配列パターンは、図示のようにほぼ同じになっている。そのため、スライドプレート20がシャッタプレート11の傾斜方向の特定の高さ位置にあるときに、各保持孔21と各供給孔11bとがそれぞれ合致することになる。
また、図4に示すように、保持孔21のスライドプレート20の傾斜方向下側の内壁は、その上半部が種子Sとほぼ同じ球径にへこんで凹球面部21aとなっている。
【0025】
またスライドプレート20の上面には、複数の保持孔21のすべてを取り囲む角筒型のホッパ30が固定されている。このホッパ30のスライドプレート20の傾斜方向下側の内壁には、三角柱型にくぼむ複数のガイド溝31が形成されており、ガイド溝31の各溝底の位置と各保持孔21の位置とが対応している。
【0026】
図示のように、駆動機構40は、モータ41と、クランク42と、コンロッド43と、を有する。モータ41はシャッタプレート11の下面に固定され、クランク42はモータ41の回転軸に取り付けられて一体に回転するようになっており、コンロッド43はクランク42とスライドプレート20とをピン結合している。
したがってモータ41が回転すると、クランク42およびコンロッド43を通じてスライドプレート20は、シャッタプレート11の傾斜方向に沿って往復してスライドするようになっている。
【0027】
実施形態のシードフィーダ1の構成は、以上のようであり、次にその作用について説明する。
【0028】
いま、図4(a)のようにホッパ30に多数の種子Sを投入すると、ガイド溝31に案内されて種子Sはスライドプレート20の保持孔21へとスムーズに案内される。
図示のように、スライドプレート20の保持孔21とシャッタプレート11の供給孔11bの位置が合致していないときは、シャッタプレート11の板面が下蓋となって種子Sは保持孔21にはまり込む。こうして保持孔21にはまり込んだ種子Sは、スライドプレートが傾斜しているため、自重により保持孔21の凹球面部21aに接触する。
【0029】
この状態から、モータ41を駆動させてスライドプレート20をシャッタプレート11の傾斜方向に沿ってスライドさせると、保持孔21にはまり込んだ種子Sは、その下部がシャッタプレート11と接触しつつ一緒にスライドする。
【0030】
このとき、種子Sはシャッタプレート11から動摩擦力を受け、回転トルクが生じるが、シャッタプレート11が傾斜しているため、種子への垂直抗力の大きさに比例する動摩擦力の大きさは、シャッタプレート11が水平の場合に比べて小さくなっている。
また、種子Sは保持孔21の凹球面部21aにはまり込んでいるため、スライドプレート20との接触面積が大きくなっており、スライドプレート20との間の摩擦力が大きくなっている。
【0031】
種子Sにスライドプレート20との接触により生じる回転トルクが、種子Sとシャッタプレート11の間に働く摩擦力により減殺される。そのため、種子Sは転動することなく、スライドプレート20のスライド方向に沿って横滑りしてゆく。このように種子Sは転動しないため、その脆いコーティングが破損することが抑制されている。
【0032】
図4(b)のように、スライドプレート20がスライドしてその保持孔21がシャッタプレート11の供給孔11bに合致すると、保持孔21にはまり込んでいた種子Sは供給孔11bを通じて下方に落下する。そしてパイプ11cを通って図示省略のプランタへと供給される。
【0033】
種子Sが落下し空になった保持孔21には、ホッパ30に投入されている後続の種子Sがガイド溝31を通じて案内されてはまり込む。
新たにはまり込んだ種子Sは、上述したのと同様にスライドプレート20とともに移動し、その保持孔21とシャッタプレート11の供給孔11bとが合致すると供給孔11bから落下する。
これが繰り返されることで、定量の種子Sがプランタへと断続的に供給されることになる。
【0034】
このように実施形態のシードフィーダ1では、種子Sの転動が防止されている。そのため種子Sのコーティングが破損して、シードフィーダ1の機構が破片をかみこんで故障の原因になったり、種子Sの外形がいびつになってプランタへの供給がスムーズにできなくなったりすることが防止される。
【0035】
ここで、保持孔21の内壁に種子との摩擦増大のために形成される摩擦面部は、実施形態の凹球面部21aに限定されず、たとえば粗面部でもよい。
また、実施形態では凹球面部21aを内壁の上半部にのみ設けているが、内壁の上半部から下半部にかけて半球形に設けてよい。
【0036】
実施形態では、保持孔21と供給孔11bを同形かつ同径としているが、これに限定されず、たとえば保持孔21を小径かつ多数に供給孔11bを大径かつ少数にして、1つの供給孔11bに複数の保持孔21が合致するようにしてもよいし、楕円形や矩形としてもよい。
【0037】
さらに、スライドプレート20を往復動させる駆動機構は、実施形態の往復スライダクランク機構に限定されず、たとえばカムを用いる機構でもよい。スライドプレート20をシャッタプレート11の傾斜方向に沿って案内する構造は、ガイド枠11aに限定されず、たとえばスライドプレート20に長孔を設け、シャッタプレート11にピンを固定して、ピンを長孔にはめ込んで案内する構造を採用してもよい。
また、シャッタプレート11を斜めに支持する機構は、実施形態の脚部12に限定されず、たとえばシャッタプレート11を片持ち状態に吊り下げて傾斜させてもよい。シャッタプレート11の傾斜角度は、一定でなくともよく、角度調節機構を付属させて変更可能としてもよい。
ホッパ30の構造も実施形態に限定されず、要は投入した種子Sがスライドプレート20の保持孔21に案内されるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0038】
1 実施形態のシードフィーダ
10 台座
11 シャッタプレート
11a ガイド枠
11b 供給孔
11c パイプ
12 脚部
20 スライドプレート
21 保持孔
21a 凹球面部(摩擦面部)
30 ホッパ
31 ガイド溝
40 駆動機構
41 モータ
42 クランク
43 コンロッド
S 球形にコーティングされた種子
R シャッタプレートの傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球形にコーティングされた種子Sの種まきをおこなうプランタへと、前記種子Sを供給するシードフィーダ1であって、
水平方向に対して傾斜した状態に支持され、前記種子Sが通過可能な供給孔11bを有するシャッタプレート11と、
このシャッタプレート11の上面に衝合し、前記種子Sが通過可能な保持孔21を有するスライドプレート20と、
投入された前記種子Sを前記スライドプレート20の保持孔21へと案内するホッパ30と、
前記スライドプレート20を前記シャッタプレート11の傾斜方向に沿って往復動させる駆動機構40と、を備え、
前記スライドプレート20の保持孔21と前記シャッタプレート11の供給孔11bとが合致しない位置で、前記ホッパ30に投入された種子Sは前記シャッタプレート11の板面が下蓋となって前記スライドプレート20の保持孔21にはまり込み、
前記スライドプレート20の保持孔21と前記シャッタプレート11の供給孔11bとが合致する位置で、前記スライドプレート20の保持孔21にはまりこんだ種子Sは前記シャッタプレート11の供給孔11bを通じて落下するシードフィーダ。
【請求項2】
前記保持孔21は、はまり込んだ種子Sとの摩擦を増大させる摩擦面部を、前記スライドプレート20の傾斜方向の下側の内壁に有する請求項1に記載のシードフィーダ。
【請求項3】
前記摩擦面は、前記種子Sと球径がほぼ同じの凹球面部21aである請求項2に記載のシードフィーダ。
【請求項4】
前記シャッタプレート11の水平方向に対する傾斜角度は、30度〜60度である請求項1から3のいずれかに記載のシードフィーダ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−193829(P2011−193829A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65543(P2010−65543)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(510046929)株式会社樋原製作所 (2)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(592202170)農事組合法人三国バイオ農場 (10)
【Fターム(参考)】