説明

シームレスカプセル

【課題】消化管での吸収性が低いために、経口投与では期待しうる効果を発揮できない薬物の吸収性を安全性の高い方法で改善するシームレスカプセルを提供する。
【解決手段】最内層に薬物溶液または分散液を有し、最外層に腸溶性コーティング層を有するシームレスカプセルに関する。消化管での吸収性が低い薬物について、最内層に薬物溶液または分散液を有し、最外層に腸溶性コーティング層を有するシームレスカプセルとすると、薬物の消化管での吸収性を改善できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
消化管での吸収性が低い薬物の吸収効率を改善するシームレスカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
薬物の中には、消化管での吸収性が低いために、経口投与では期待しうる薬理効果が得られない例がある。
これらの経口吸収性が低い薬物は、静脈内あるいは筋肉内注射が従来より行われているが、注射による投与の場合、疼痛、筋肉障害に加えて、使用するのに煩雑であるといった種々の問題点を有している。
これらの問題を解決するため、種々の添加剤(吸収促進剤)による吸収促進効果を利用した方法が提案されている。しかし、吸収促進剤によっては、それを用いると粘膜の障害を引き起こす可能性がある。さらに生体のバリアーの一つである消化管膜の透過性を向上させることは、生体に不要な各種成分を吸収させたり、また吸収促進剤自体が吸収されて毒性を示す場合があり、安全性上の問題も発生する。
経口吸収性の低い薬物を効率的に吸収させ、かつ安全性の高い方法として、崩壊性の高い賦形剤と崩壊剤を有する錠剤に腸溶性コーティング剤で剤皮を施した腸溶製剤が知られている(特許文献1参照)が、吸収効率の点で満足できるものではない。
一般に、胃液により不活性化または効力が低下される薬物、胃粘膜を刺激する薬物、胃の消化作用を阻害する薬物などが腸溶製剤に適用され、また、薬物の効力の持続性を目的としても腸溶製剤は製される。実際、胃液により不活性化または効力が低下されるビフィズス菌をシームレスカプセルに適用した例が知られている(非特許文献1)が、消化管での吸収性の低い薬物(難吸収性薬物)の経口吸収性を改善することを目的とした腸溶性コーティング剤で剤皮を施したシームレスカプセルは知られていない。
【0003】
【特許文献1】特開2001−139462号公報
【非特許文献1】PHARM TECH JAPAN 1999年 15巻 12号 p.55−68
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、消化管での吸収性が低いために、経口投与では期待しうる効果を発揮できない薬物の吸収性を安全性の高い方法で改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、最内層に薬物溶液または分散液を有し、最外層に腸溶性コーティング層を有するシームレスカプセルが、薬物の消化管での吸収性を改善できることを新たに見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は難吸収性薬物を最内層に含有するシームレスカプセルに関するものであり、以下の発明に関する。
(1)最内層に薬物溶液または分散液を有し、最外層に腸溶性コーティング層を有するシームレスカプセル。
(2)最内層に薬物溶液または分散液、内側から二番目の層に疎水性物質、内側から三番目の層に高分子ゲル層、最外層に腸溶性コーティング層を有するものである上記(1)記載のシームレスカプセル。
(3)最内層に薬物溶液または分散液を有するシームレスカプセルに腸溶性コーティング層を設けたものである上記(1)記載のシームレスカプセル。
(4)最内層が薬物溶液または分散液、中間層が疎水性物質、最外層が高分子ゲル層からなるシームレスカプセルに腸溶性コーティング層を設けたものである上記(1)記載のシームレスカプセル。
(5)疎水性物質が、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、硬化油およびレシチンからなる群より選ばれる1または2以上の組み合せである上記(2)または(4)記載のシームレスカプセル。
(6)高分子ゲル層が、高分子ゲル化剤、所望により多価アルコールを含むものである上記(2)または(4)記載のシームレスカプセル。
(7)高分子ゲル化剤が、ゼラチン、カラギーナン、ファーセレラン、寒天、グルコマンナン、アルギン酸、ローカストビーンガム、タマリンドガム、グアーガム、アラビアガム、ペクチン、プルラン、キサンタンガムおよびジェランガムからなる群より選ばれる1または2以上の組み合せである上記(6)記載のシームレスカプセル。
(8)多価アルコールが、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリンおよびソルビタンからなる群より選ばれる1または2以上の組み合せである上記(6)記載のシームレスカプセル。
(9)腸溶性コーティング層が、腸溶性コーティング剤、所望により可塑剤を含むものである上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載のシームレスカプセル。
(10)腸溶性コーティング剤が、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルローストリメリテート、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマーおよびメタクリル酸メタクリル酸メチルコポリマーからなる群より選ばれる1または2以上の組み合せである上記(9)記載のシームレスカプセル。
(11)可塑剤が、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびトリアセチンからなる群より選ばれる1または2以上の組み合せである上記(9)記載のシームレスカプセル。
(12)薬物溶液または薬物分散液の溶媒または分散媒が、水である上記(1)〜(11)のいずれか1つ記載のシームレスカプセル。
(13)薬物が、難吸収性薬物である上記(1)〜(12)のいずれか1つに記載のシームレスカプセル。
(14)薬物が、親水性薬物である上記(1)〜(12)のいずれか1つに記載のシームレスカプセル。
(15)薬物の消化管吸収改善用である上記(1)〜(14)のいずれか1つに記載のシームレスカプセル。
【発明の効果】
【0007】
後記実施例から明らかなように、本発明のシームレスカプセルは、経口吸収性の低い薬物を効率的に吸収させるために提案された特許文献1記載の腸溶製剤に比べ、優れた経口(消化管)吸収性改善効果を示した。
したがって、本発明のシームレスカプセルは、経口吸収性に難を示す薬物の経口吸収性を改善できるのみならず、経口吸収性に特段難を示さない薬物の投与量を減らすことができ、副作用の低減を可能とし、また食事の影響を回避することができる優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のシームレスカプセルは、最内層に薬物溶液または分散液を有し、最外層に腸溶性コーティング層を有するシームレスカプセルである。中でも、最内層に薬物溶液または分散液を有するシームレスカプセルに腸溶性コーティング層を設けたものが好ましい。また、本発明のシームレスカプセルは、最内層に薬物溶液または分散液、内側から二番目の層に疎水性物質、内側から三番目の層に高分子ゲル層、最外層に腸溶性コーティング層を有するシームレスカプセルであり、中でも最内層が薬物溶液または分散液、中間層が疎水性物質、最外層が高分子ゲル層からなるシームレスカプセルに腸溶性コーティング層を設けたものが好ましい。
【0009】
本発明に係る最内層に薬物溶液または分散液を含有するシームレスカプセルは、公知の方法に基づき製造すればよく、滴下法と呼ばれる二重または三重などのノズルを用いて、シームレスカプセルの原料を液中に滴下する方法を挙げることができる(例えば、上述の非特許文献1や特開昭49−59789号公報、特開昭51−8176号、特開昭60−17234号公報、特開平7−69867号公報参照)。
【0010】
本発明において、シームレスカプセルを構成する疎水性物質および高分子ゲル層は、シームレスカプセルの皮膜物質であり、疎水性物質としては、特に限定されるべきものではなく、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、硬化油、レシチン等を挙げることができ、これらは1種のみでも、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。疎水性物質は、皮膜物質および薬物溶液(薬物分散液)の全重量に対して、10〜50重量%が好ましく、20〜40重量%がさらに好ましい。
【0011】
高分子ゲル層は、高分子ゲル化剤、所望により多価アルコールを含むもので構成される。高分子ゲル化剤としては、特に限定されるべきものではなく、例えば、ゼラチン、カラギーナン、ファーセレラン、寒天、グルコマンナン、アルギン酸、ローカストビーンガム、タマリンドガム、グアーガム、アラビアガム、ペクチン、プルラン、キサンタンガム、ジェランガム等を挙げることができる。これらは1種のみでも、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。多価アルコールとしては、特に限定されるべきものではなく、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビタン等を挙げることができる。これらは1種のみでも、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。高分子ゲル層は、皮膜物質および薬物溶液(薬物分散液)の全重量に対して、3〜30重量%が好ましく、5〜25重量%がさらに好ましい。
【0012】
本発明のシームレスカプセルの製造方法において、三重のノズルを用いた滴下法を用いる場合、シームレスカプセル内に封入すべき薬物溶液または分散液は、最内側のノズルから吐出し、中間のノズルからは疎水性物質を吐出し、最外側のノズルから高分子ゲル層の材料を吐出する。なお、シームレスカプセルの製造条件下において、疎水性物質、高分子ゲル層の材料が固体または半固体の場合、加熱する等して液状化させて吐出するのが好ましい。得られるシームレスカプセルは、三層の構造をとっている。この三層構造のシームレスカプセルに、通常の腸溶性コーティングを施すことにより、本発明のシームレスカプセルを製することができる。すなわち、腸溶性コーティング剤、所望により可塑剤に、適当な溶媒または分散媒を加えて、腸溶性コーティング液を製し、該腸溶性コーティング液を本発明に係るシームレスカプセルに施し(具体的には、コーティング)、乾燥することで、本発明のシームレスカプセルを製造することができる。
また、本発明のシームレスカプセルは、四重のノズルを用いた滴下法を用いても製造することができる。すなわち、シームレスカプセル内に封入すべき薬物溶液または分散液を、最内側のノズルから吐出し、内側から二番目のノズルからは疎水性物質を吐出し、内側から三番目のノズルから高分子ゲル層の材料を吐出し、最外側のノズルからは腸溶性コーティング層の材料を吐出することで本発明のシームレスカプセルを製造することができる。本発明に係るシームレスカプセルおよび本発明のシームレスカプセルの製造条件下において、疎水性物質、高分子ゲル層、腸溶性コーティング層の材料が固体または半固体の場合、加熱する等して液状化させて吐出するのが好ましい。
【0013】
本発明のシームレスカプセルの腸溶性コーティング層は、腸溶性コーティング剤、所望により可塑剤を含むもので構成される。腸溶性コーティング剤は、特に限定されるべきものではなく、腸の吸収部位における薬物の至適pHや薬物との相互作用等に基づき、適宜選択すればよい。腸溶性コーティング剤としては、例えば、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルローストリメリテート等のセルロース系高分子、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸メタクリル酸メチルコポリマー等のメタクリル酸系高分子等を挙げることができる。これらは1種のみでも、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、可塑剤としては、特に限定されるべきものではなく、例えば、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリアセチン等を挙げることができる。本発明のシームレスカプセルにおける腸溶性コーティング層の構成量は、本発明のシームレスカプセルの全重量に対して、通常、1〜50重量%であり、2〜30重量%が好ましい。腸溶性コーティング層は、薬物の至適pHや選択した腸溶性コーティング剤により、上述の範囲を越えてもよい。
【0014】
本発明においては、後記一般式(1)で表される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物を薬物として用いる場合、腸溶性コーティング剤としては、pH4.0〜7.0で溶解するものを使用するのが好ましく、pH5.0〜6.5で溶解するものを使用するのが更に好ましい。具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース等のセルロース系高分子を挙げることができる。これらセルロース系高分子は置換基の置換度を変更することにより、溶解pHを調節することができるので、所望の溶解pHを適宜設定し、置換基の置換度を変更して用いればよい。
本発明のシームレスカプセルの粒径(Φ)は、通常、1〜15mmであり、3〜12mmが好ましい。粒径は、シームレスカプセルの製造条件や腸溶コーティング層を付与する際の製造条件によって制御することができる。
【0015】
本発明のシームレスカプセルの最内層に含まれる薬物溶液または薬物分散液は、薬物を適当な溶媒または分散媒に溶解または分散することにより得ることができる。溶媒または分散媒としては、特に限定されるべきものではなく、例えば、水、炭素数1〜6の低級アルコール等を挙げることができる。本発明のシームレスカプセルにおける薬物溶液または薬物分散液の配合量は、シームレスカプセルに含ませる薬物溶液または薬物分散液の濃度、薬物による所望の薬効等によって適宜設定すればよいが、シームレスカプセルの皮膜物質および薬物溶液(薬物分散液)の全重量に対して、通常、1〜90重量%であり、5〜80重量%が好ましい。
【0016】
本発明に係る薬物は、特に限定されるべきものではなく、天然に由来する生薬等の抽出物(エキス、チンキなど)、抽出物等から単離した化合物や化学合成した化合物等を含むものである。薬物は単一成分でもよいし、2種以上の混合物でもよい。また、薬物が化合物であるときは、化合物の塩、該化合物の医薬的に許容し得る各種溶媒和物(例えば、水等)、該化合物の塩の溶媒和物を含む。また、これらは一定の結晶多形に限定されるべきものではない。
【0017】
化合物の構造中に不斉炭素が存在する場合、それに基づくいずれの光学異性体あるいは立体異性体が存在するが、これらの光学異性体、立体異性体あるいはこれらの混合物のいずれもが本発明に係る薬物に含まれる。
【0018】
化合物の塩としては、医薬的に許容しうる塩であれば特に限定されるべきものではないが、具体的には、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩類、メタンスルホン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等の有機スルホン酸塩類、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩等の有機カルボン酸塩類等を挙げることができる。
【0019】
本発明に係る薬物は特に限定されるべきものではない。例えば、消化管での吸収性が低いにもかかわらず、経口投与でも充分な薬理効果が得られる薬物は、さらに経口吸収性を高くすることで薬物の投与量を減らすことができ、副作用を低減させることも可能である。また、消化管での吸収性が低いため、経口投与では充分な薬理効果が得られない薬物は、経口吸収性を高くすることで、期待しうる薬理効果を得ることができる。一般に、消化管での吸収性が低い薬物は、親水性が高いものが多い。また、本発明のシームレスカプセルを用いると薬物への食事の影響を排除することができるので、食事の影響を受けやすい薬物にも適用できる。
【0020】
本発明において、好ましい薬物としては塩基性化合物を挙げることができる。薬物としての塩基性化合物とは、置換されることもあるアミノ基、アミジノ基等の塩基性基をその化学構造中に1つまたは2つ以上有する化合物を意味する。なお、化学構造中の塩基性基の存在位置は特に限定されるべきものではない。例えば、塩基性基が化学構造の中心もしくはその近辺に存在していてもよいし、一方の端もしくはその近辺のみに存在していてもよいし、また両端もしくはその近辺に存在していてもよい。
【0021】
本発明に係る薬物において、置換されることもあるアミジノ基を有する化合物とは、上述の塩基性化合物に含まれるものであり、その化学構造中に置換されることもあるアミジノ基を有する化合物を意味する。具体的には、特開平5−208946号公報および国際公開WO96/16940号公報に記載されているような一般式(1)
【0022】
【化1】

【0023】
〔式中、Rは水素原子または低級アルコキシル基を示し、
は水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシアルキル基またはアルコキシカルボニルアルキル基を示し、
は水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、カルボキシアルコキシル基またはアルコキシカルボニルアルコキシル基を示し、
は水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、低級アルキル基または低級アルコキシル基を示し、
nは0〜4の数を示し、
Aは1〜2個のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシアルキル基もしくはアルコキシカルボニルアルキル基が置換していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基または

【0024】
【化2】

【0025】
で表わされる基{式中、Bは低級アルキレン基またはカルボニル基を示し、Rは水素原子または式−D−W−Rで表わされる基(式中、Dは式
【0026】
【化3】

【0027】
で表わされる基(式中、Zは酸素原子または硫黄原子を示す。)、

【0028】
【化4】

【0029】
で表わされる基またはスルホニル基を示し、
Wは単結合または−NR−で表わされる基(式中、Rは水素原子、カルバモイル基、低級アルコキシカルボニル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノカルボニル基、低級アルキルスルホニル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノチオカルボニル基、置換基を有していてもよい低級アルキル基または置換基を有していてもよい低級アルカノイル基を示す。)を示し、
は水酸基、低級アルコキシル基、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を示す。)}を示し、
Xは単結合、酸素原子、硫黄原子またはカルボニル基を示し、
Yは置換基を有していてもよい飽和もしくは不飽和の5〜6員環の複素環式基もしくは環状炭化水素基、置換基を有していてもよいアミノ基または置換基を有していてもよいアミノアルキル基を示し、
【0030】
【化5】

【0031】
で表わされる基は、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ナフチル、テトラヒドロナフチルおよびインダニルより選ばれる基を示す〕
で表わされる化合物、該化合物の塩、該化合物の溶媒和物、該化合物の塩の溶媒和物および次に示す化合物等を挙げることができる。
【0032】
【化6】

【0033】
これらの化合物はすでに公知のものであり、公知の製造方法により製造することができる。
【0034】
中でも、本発明においては、一般式(1)で表わされる化合物、その塩またはそれらの溶媒和物が薬物として好ましい。
【0035】
本発明に係る一般式(1)で表わされる化合物において、低級アルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状、分枝状または環状のアルキル基のいずれをも挙げることができ、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
なお、低級アルキル基は置換基を有していてもよく、低級アルキル基に置換し得る基としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルバモイル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、低級アルカノイル基、低級アルコキシル基、低級アルコキシカルボニル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノ基、アリール基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、低級アルキルチオ基、低級アルキチオカルボニル基、水酸基、カルバモイル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノカルボニル基等を挙げることができる。
【0036】
低級アルコキシル基としては、炭素数1〜6のものを挙げることができ、具体例としてはメトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、イソプロポキシル基、ブトキシル基、第二級ブトキシル基および第三級ブトキシル基等を挙げることができる。
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等を挙げることができる。
カルボキシアルキル基としては、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基等を挙げることができる。
アルコキシカルボニルアルキル基としては、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、プロポキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、エトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基、エトキシカルボニルプロピル基等を挙げることができる。
カルボキシアルコキシル基としては、カルボキシメトキシル基、カルボキシエトキシル基、カルボキシプロポキシル基等を挙げることができ、アルコキシカルボニルアルコキシル基としては、メトキシカルボニルメトキシル基、エトキシカルボニルメトキシル基、プロポキシカルボニルメトキシル基、メトキシカルボニルエトキシル基、エトキシカルボニルエトキシル基等を挙げることができる。
ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等を挙げることができる。炭素数1〜4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等を挙げることができる。
モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノカルボニル基としては、モノ−低級アルキルアミノカルボニル基として、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、イソプロピルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、イソブチルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、イソペンチルアミノカルボニル基、ヘキシルアミノカルボニル基、イソヘキシルアミノカルボニル基等を挙げることができる。また、ジアルキルアミノカルボニル基として、ジメチルアミノカルボニル基、ジエチルアミノカルボニル基、ジプロピルアミノカルボニル基、ジイソプロピルアミノカルボニル基、ジブチルアミノカルボニル基、ジペンチルアミノカルボニル基等の低級アルキル基でジ置換された対称型のジアルキルアミノカルボニル基、ならびに、エチルメチルアミノカルボニル基、メチルプロピルアミノカルボニル基、エチルプロピルアミノカルボニル基、ブチルメチルアミノカルボニル基、ブチルエチルアミノカルボニル基、ブチルプロピルアミノカルボニル基等の相異なる低級アルキル基でジ置換された非対称型のジアルキルアミノカルボニル基を挙げることができる。
低級アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、イソペンチルスルホニル基、ヘキシルプロピル基、イソヘキシルプロピル基等を挙げることができる。
モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノチオカルボニル基としては、モノ−低級アルキルアミノチオカルボニル基として、メチルアミノチオカルボニル基、エチルアミノチオカルボニル基、プロピルアミノチオカルボニル基、イソプロピルアミノチオカルボニル基、ブチルアミノチオカルボニル基、イソブチルアミノチオカルボニル基、ペンチルアミノチオカルボニル基、イソペンチルアミノチオカルボニル基、ヘキシルアミノチオカルボニル基、イソヘキシルアミノチオカルボニル基等を挙げることができる。また、ジアルキルアミノチオカルボニル基として、ジメチルアミノチオカルボニル基、ジエチルアミノチオカルボニル基、ジプロピルアミノチオカルボニル基、ジイソプロピルアミノチオカルボニル基、ジブチルアミノチオカルボニル基、ジペンチルアミノチオカルボニル基等の低級アルキル基でジ置換された対称型のジアルキルアミノチオカルボニル基、ならびに、エチルメチルアミノチオカルボニル基、メチルプロピルアミノチオカルボニル基、エチルプロピルアミノチオカルボニル基、ブチルメチルアミノチオカルボニル基、ブチルエチルアミノチオカルボニル基、ブチルプロピルアミノチオカルボニル基等の相異なる低級アルキル基でジ置換された非対称型のジアルキルアミノチオカルボニル基を挙げることができる。
低級アルカノイル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基等を挙げることができ、好ましくは、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基であり、更に好ましくはアセチル基、プロピオニル基である。低級アルカノイル基は置換基を有していてもよい。
なお、低級アルカノイル基に置換し得る基としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルバモイル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、低級アルカノイル基、低級アルコキシル基、低級アルコキシカルボニル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノ基、アリール基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、低級アルキルチオ基、低級アルキチオカルボニル基、水酸基、カルバモイル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノカルボニル基等を挙げることができる。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基等を挙げることができ、アリール基は置換基を有していてもよい。
ヘテロアリール基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、キノリジニル基、キノキサリニル基、シンノリニル基、ベンズイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾフラニル基、ナフチリジニル基、1,2−ベンゾイソキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、オキサゾロピリジル基、イソチアゾロピリジル基、ベンゾチエニル基等を挙げることができ、好ましくは、フリル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジル基等を挙げることができ、アリール基は置換基を有していてもよい。
なお、これらのアリール基またはヘテロアリール基に置換し得る基としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノ基、低級アルカノイル基、置換基を有していてもよい低級アルキル基を挙げることができる。
また、飽和もしくは不飽和の5〜6員環の複素環式基としては、ヘテロ原子として1〜2個の窒素原子または酸素原子を含む複素環式基が好ましい。このような複素環の具体例としてはピロリジン、ピペリジン、イミダゾリン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、ヘキサヒドロピリミジン、ピロール、イミダゾール、ピラジン、ピロリジノン、ピペリジノン、モルホリン等を挙げることができる。中でも、ピロリジンおよびピペリジンが好ましい。また、飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。また、アミノアルキル基としては、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基等を挙げることができる。
複素環式基または環状炭化水素基は置換基を有していてもよく、これらの複素環式基または環状炭化水素基に置換し得る基としては低級アルキル基、低級アルカノイル基、カルバモイル基、モノアルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基、ホルムイミドイル基、アルカノイミドイル基、ベンズイミドイル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシアルキル基、アルキルカルボニルアルキル基、アミノアルキル基、アルカノイルアミノ基、アルカノイルアミノアルキル基、イミノ基、アルコキシカルボニルイミノ基等を挙げることができる。
また、アミノ基またはアミノアルキル基のアミノ部分に置換し得る基としては、低級アルキル基、ピロリジニル基、ピラジル基、カルバモイル基、モノアルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基、低級アルカノイル基、ホルムイミドイル基、アルカノイミドイル基、ベンズイミドイル基、アルコキシカルボニル基等を挙げることができる。なお、ここで示したアルキル基、アルコキシル基、アルカノイル基等の炭素数は1〜6が好ましい。
また、
【0037】
【化7】

【0038】
で示される基としては、ベンゾフラニル、ベンズイミダゾリル、インドリル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、ナフチルおよびテトラヒドロナフチルより選ばれる基が好ましい。
【0039】
本発明に係る一般式(1)で表わされる化合物には、不斉炭素原子が存在することがあり、その場合、不斉炭素原子に基づく光学異性体あるいは立体異性体が存在するが、これらの光学異性体、立体異性体およびこれらの混合物のいずれも本発明に係る薬物に含まれる。
【0040】
本発明においては、上述した置換されることもあるアミジノ基を有する化合物、その塩またはそれらの溶媒和物の中でも、一般式(1)で表わされる化合物、その塩またはそれらの溶媒和物が薬物として好ましく、中でも以下のものが好ましい。
2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、
(+)−2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、
(2S)−2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、
(2R)−2−[4−[((3R)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、
2−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、
(+)−2−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、
2−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−3−(5−アミジノベンゾ[b]チエン−2−イル)プロピオン酸、
2−[4−[((2S)−1−アセトイミドイル−2−ピロリジニル)メロキシ]フェニル]−3−(5−アミジノベンゾ[b]チエン−2−イル)プロピオン酸、
(+)−2−[4−[((2S)−1−アセトイミドイル−2−ピロリジニル)メトキシ]フェニル]−3−(5−アミジノベンゾ[b]チエン−2−イル)プロピオン酸、
3−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−4−(5−アミジノベンゾ[b]チエン−2−イル)酪酸、
2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(6−アミジノ−1−エチル−2−インドリル)プロピオン酸、
2−[4−[((3R)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(6−アミジノ−1−エチル−2−インドリル)プロピオン酸、
2−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジニル)オキシ]フェニル]−3−(6−アミジノ−1−エチル−2−インドリル)プロピオン酸、
N−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]−N’−メチルスルファミド、エチル N−[N−4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]カルバメート、
4−[N−4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]ベンゾイックアシッド、
N−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイルアセティックアシッド、
エチル N−[N−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]グリシネート、
N−[N−4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]−N−エトキシカルボニルグリシン、および、
N−[N−4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]グリシン。
【0041】
特に好ましいものは、(2S)−2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、
(+)−2−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸、
(+)−2−[4−[((2S)−1−アセトイミドイル−2−ピロリジニル)メトキシ]フェニル]−3−(5−アミジノベンゾ[b]チエン−2−イル)プロピオン酸、
N−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイルアセティックアシッド、
エチル N−[N−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]グリシネート、および、
N−[N−4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]グリシンである。
【0042】
さらには、(2S)−2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸 塩酸塩 5水和物、
(+)−2−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸 2塩酸塩、
(+)−2−[4−[((2S)−1−アセトイミドイル−2−ピロリジニル)メトキシ]フェニル]−3−(5−アミジノベンゾ[b]チエン−2−イル)プロピオン酸 2塩酸塩、
N−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイルアセティックアシッド 2塩酸塩、
エチル N−[N−[4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]グリシネート 2塩酸塩、および、
N−[N−4−[(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)オキシ]フェニル]−N−[(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]グリシン 2塩酸塩が好ましい。
【0043】
本発明のシームレスカプセルは、そのまま、ヒトに投与してもよいし、さらに通常の製剤化技術を用い、このものをカプセルに充填してカプセル剤としてもよく、造粒、打錠等を行って、錠剤、顆粒剤等に製剤化することができる。本発明のシームレスカプセルの剤形としては、カプセル剤、錠剤、顆粒剤等を挙げることができる。
【0044】
以下に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらにのみ限定されるべきものではない。
【実施例】
【0045】
実施例1 シームレスカプセルの製造
同芯三重ノズルを用いて、表1に示す組成のΦ4.0mmのシームレスカプセルを製造した。すなわち、内側ノズルから1液の(2S)−2−[4−[((3S)−1−アセトイミドイル−3−ピロリジニル)オキシ]フェニル]−3−(7−アミジノ−2−ナフチル)プロピオン酸 塩酸塩 5水和物(以下、化合物Aと略する。)の水溶液を、中間ノズルから40℃に加温した2液の硬化油と大豆レシチンの混合液を、外側ノズルから60℃に加温した3液のゼラチン水溶液をそれぞれ表1に示す比率で、流速0.15m/sで流下する5.0℃に冷却された植物油中に吐出して、三層構造のシームレスカプセルを連続的に形成した。これらを20℃50%RHに温湿度を調整した雰囲気中で乾燥して、シームレスカプセルを得た。
【0046】
表1

【0047】
実施例2 シームレスカプセルの製造
同芯三重ノズルを用いて、表2に示す組成のΦ9.0mmのシームレスカプセルを製造した。すなわち、同芯三重ノズルを用いて内側ノズルから1液の化合物A水溶液を、中間ノズルから40℃に加温した2液の硬化油と大豆レシチンの混合液を、外側ノズルから60℃に加温した3液のゼラチン水溶液をそれぞれ表2に示す比率で、流速0.4m/sで流下する5.0℃に冷却された植物油中に吐出して三層構造のシームレスカプセルを連続的に形成した。これらを20℃50%RHに温湿度を調整した雰囲気中で乾燥して、シームレスカプセルを得た。
【0048】
表2

【0049】
実施例3 腸溶性コーティング層を有するシームレスカプセルの製造
実施例1のシームレスカプセル50個(約1.7g)と、大きさのほぼ等しい偽錠約300gについて、コーティング機(HCT−MINI:フロイント産業社製)を用いて、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネート(商品名:AQOAT AS−MF(信越化学社製))8%(w/w)及びクエン酸トリエチル0.8%(w/w)のエタノール/ジクロロメタン/水(=43:43:5(w/w/w))溶液567gをスプレーし、乾燥させ、腸溶性シームレスカプセルを得た。
【0050】
比較例1 腸溶錠
化合物A、エリスリトール及びクロスポビドンの混合末を単発打錠機を用いて打錠し、裸錠を得た。本裸錠に、コーティング機(HCT−MINI:フロイント産業社製)を用いて、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネート(商品名:AQOAT AS−MF(信越化学社製))8%(w/w)及びクエン酸トリエチル0.8%(w/w)のエタノール/ジクロロメタン(=1:1(w/w))溶液をスプレーし、1錠当り、以下に示した組成の腸溶錠を得た。
【0051】
成分
化合物A 6.425mg
エリスリトール 5.45mg
クロスポビドン 0.625mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート 1.875mg
(商品名:AQOAT AS−MF)
クエン酸トリエチル 0.188mg
計 14.563mg
【0052】
試験例1 溶出試験
実施例3で得たシームレスカプセルおよび比較例1で得た腸溶錠を日本薬局方第13改正溶出試験法第2法(パドル法)に従い、日局第1液500mL中で2時間溶出しないことを確認した後、シームレスカプセルを日局第2液500mLに移して行った。溶出プロファイルより、溶出速度の指標としてT75%−T25%(溶出率が75%に到達する時間と25%に到達する時間の差)を求めた。結果を表3に示した。表3から明らかなように、本発明のシームレスカプセル(実施例3)、既存の腸溶錠(比較例1)は、中性溶液において、速やかな溶出を示した。
【0053】
表3 溶出試験結果

【0054】
試験例2 経口投与試験(1)
実施例3で得たシームレスカプセルおよび比較例1で得た腸溶錠を16時間絶食したサル(雌性、カニクイザル、体重約3kg、n=6)に無麻酔下、経口用マーゲンチューブを用いて、1カプセルまたは1錠/headを経口投与した。同様に、化合物Aを精製水に溶解し、6.425mg/2.5mL/headとなるようにサル(雌性、カニクイザル、体重約3kg、n=6)に化合物Aの水溶液を経口投与した。
投与後、大腿静脈より1時間毎に10時間まで採血を行い、血漿を得た。得られた血漿中の化合物Aの血漿中濃度推移から血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC)及び最高血中濃度(Cmax)を求めた。結果を表4に示した。表4から明らかなように、本発明のシームレスカプセル(実施例3)は、化合物Aの水溶液と比較すると著しく高いAUCを示し、その効果は既存の腸溶錠(比較例1)と同程度であった。さらに、胃排泄時間に関し、既存の腸溶錠(比較例1)が個体ごとのバラツキが大きいのに対し、本発明のシームレスカプセル(実施例3)は、いずれも1時間以内であり、胃排泄時間のバラツキの抑制効果があることが判明した。
【0055】
表4 サル経口投与試験結果(平均±SD、n=6)

【0056】
試験例3 経口投与試験(2)
絶食条件(投与16時間以上前に給餌)及び食後条件(投与2時間前に給餌)のサル(雌性、カニクイザル、体重約3kg、n=6)に、ケタミン筋注麻酔下、口腔よりファイバースコープを挿入し、カテーテルの先端を十二指腸内に挿入した後、先端にセットした実施例3で得たシームレスカプセル1カプセルまたは比較例1で得た腸溶錠1錠を水5mlと共に押し出した。また、同様に、化合物Aの水溶液6.425mg/2.5mL)を投与した。投与後0.5hr、1hr、2hr、3hr及び4hrに大腿静脈より採血を行い、血漿を得た。得られた血漿中の化合物Aの血漿中濃度推移から血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC)及び最高血中濃度(Cmax)を求め、食後投与のAUCの絶食時投与との比(食後投与のAUC/絶食時投与のAUC)を求めた。既存の腸溶錠(比較例1)及び化合物A水溶液は、食後投与のAUC/絶食時投与のAUCの値がそれぞれ0.5及び0.1であったのに対し、実施例3で得たシームレスカプセルは、0.9であり、本発明のシームレスカプセルは、食事の影響を受けず、食後の投与が可能であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0057】
前記実施例から明らかなように、本発明のシームレスカプセルは、従前の腸溶製剤に比べ、優れた経口吸収性改善効果を示した。
したがって、本発明のシームレスカプセルは、経口吸収性に難を示す薬物の経口吸収性を改善できるのみならず、経口吸収性に特段難を示さない薬物の投与量を減らすことができ、副作用の低減を可能とし、胃排泄時間のバラツキを抑制した。また食事の影響を回避することができるので、本発明のシームレスカプセルは、医薬製剤として優れたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最内層に薬物溶液または分散液を有し、最外層に腸溶性コーティング層を有するシームレスカプセル。
【請求項2】
最内層に薬物溶液または分散液、内側から二番目の層に疎水性物質、内側から三番目の層に高分子ゲル層、最外層に腸溶性コーティング層を有するものである請求項1記載のシームレスカプセル。
【請求項3】
最内層に薬物溶液または分散液を有するシームレスカプセルに腸溶性コーティング層を設けたものである請求項1記載のシームレスカプセル。
【請求項4】
最内層が薬物溶液または分散液、中間層が疎水性物質、最外層が高分子ゲル層からなるシームレスカプセルに腸溶性コーティング層を設けたものである請求項1記載のシームレスカプセル。
【請求項5】
疎水性物質が、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、硬化油およびレシチンからなる群より選ばれる1または2以上の組み合せである請求項2または4記載のシームレスカプセル。
【請求項6】
高分子ゲル層が、高分子ゲル化剤、所望により多価アルコールを含むものである請求項2または4記載のシームレスカプセル。
【請求項7】
高分子ゲル化剤が、ゼラチン、カラギーナン、ファーセレラン、寒天、グルコマンナン、アルギン酸、ローカストビーンガム、タマリンドガム、グアーガム、アラビアガム、ペクチン、プルラン、キサンタンガムおよびジェランガムからなる群より選ばれる1または2以上の組み合せである請求項6記載のシームレスカプセル。
【請求項8】
多価アルコールが、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリンおよびソルビタンからなる群より選ばれる1または2以上の組み合せである請求項6記載のシームレスカプセル。
【請求項9】
腸溶性コーティング層が、腸溶性コーティング剤、所望により可塑剤を含むものである請求項1〜8のいずれか1項記載のシームレスカプセル。
【請求項10】
腸溶性コーティング剤が、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルローストリメリテート、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマーおよびメタクリル酸メタクリル酸メチルコポリマーからなる群より選ばれる1または2以上の組み合せである請求項9記載のシームレスカプセル。
【請求項11】
可塑剤が、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびトリアセチンからなる群より選ばれる1または2以上の組み合せである請求項9記載のシームレスカプセル。
【請求項12】
薬物溶液または薬物分散液の溶媒または分散媒が、水である請求項1〜11項のいずれか1項記載のシームレスカプセル。
【請求項13】
薬物が、難吸収性薬物である請求項1〜12項のいずれか1項記載のシームレスカプセル。
【請求項14】
薬物が、親水性薬物である請求項1〜12項のいずれか1項記載のシームレスカプセル。
【請求項15】
薬物の消化管吸収改善用である請求項1〜14項のいずれか1項記載のシームレスカプセル。

【公開番号】特開2006−232760(P2006−232760A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51824(P2005−51824)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】