説明

シールチェーン

【課題】シール部材13の第1のリップ部13aとプレートとの接触圧が適切に確保でき、且つ、シールチェーンが斜めに掛け渡されシール潰し量が不均一になっても上記接触圧の不均一を抑制でき、更には、シール部材13が潰された状態で各リップ部13a、13b、13c、13dの接続部の応力集中を緩和する。
【解決手段】中央基部13eから径方向に延びる第1及び第2のリップ部13a、13bは、自然状態において、径方向中間部の幅C、Aが第3及び第4のリップ部13c、13dの幅Bよりも大きく、前記径方向基端部に、前記径方向中間部よりも幅が狭いくびれ部13fを有する。くびれ部13fは湾曲凹面13hを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートバイ等の運輸機械及び一般産業機械等のドライブチェーンとして、またコンベヤ等の搬送用チェーンとして用いられるシールチェーンに係り、詳しくは自然状態にあって断面略々プラス(十)形状のシール部材を用いたシールチェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、自然状態で内径方向に垂下するリップ部を有するリング状のシール部材を用い、該シール部材が、上記リップ部を支点として捩られるようにインナーリンクプレートとアウターリンクプレートとの間に装着されるシールチェーンの製造方法を案出した(特許文献1参照)。該製造方法を図9にて示すと、まず、図9(a)に示すように、シール部材3の第1のリップ部3aをブシュ突出部7aの先端とアウターリンクプレート8との間に位置して、アウターリンクプレート8を、シール部材3から所定間隔c離した状態でピン2に仮組する。この状態で、例えば流動性のあるグリース(潤滑剤)内にドブ漬けして、グリースをシール部材3内のピン2とブシュ7との間に供給する。そして、図9(b)に示すように、アウターリンクプレート8を矢印方向に圧入する。この際、アウターリンクプレート8の圧入に伴い、該プレート8がシール部材3に接触し、更に、シール部材3の第1のリップ部3aがブシュ7の突出部7a先端に当接した状態でアウターリンクプレート8が矢印方向に移動すると、図9(c)で示すように、該当接部を支点としてシール部材3が矢印に示すように捩られる。
【0003】
これにより、シール部材は、第1のリップ部3aがブシュ突出部7aの先端外周面とアウターリンクプレート8に当接して位置すると共に、第3のリップ部3cがアウターリンクプレート8に当接して、また第4のリップ部3dがインナーリンクプレート6に、かつ第2のリップ部3bがインナーリンクプレート6に当接して、該シール部材3が断面略々X字状のシール部材となって両リンクプレート6,8の間に挟持される。以上のようなシール部材3の装着がブシュ7の左右両側にて行われ、そしてピン2の先端がカシメられてアウターリンクプレート8が抜止めされ、シールチェーン1が完成する。
【0004】
図10は、自然状態にある上記シール部材3を示す断面図で、(a),(b)は、それぞれ異なるものである。図10(a)のシール部材3は、中央基部3eの内径方向(図10の右方)に垂下する幅広の半円状の第1のリップ部3a、同幅にて外径方向(図10の左方)に延びる第2のリップ部3b、及びこれら第1及び第2のリップ部3a,3bから左右方向(径方向に直角な方向、図10の上下方向)に延びる幅狭の第3及び第4のリップ部3c,3dを有し、全体で断面略十字状に形成されている。また、第1のリップ部3aの先端部は半円からなるアール形状raにて構成され、各リップ部の接続部分は所定アール形状rにて構成されている。
【0005】
図10(b)のシール部材3は、中央基部3eの内径方向に垂下する断面略円形状の第1のリップ部3aを有すると共に、外径方向及び左右方向にそれぞれ同幅の第2のリップ部3b,第3のリップ部3c及び第4のリップ部3dを有し、全体で断面略十字状に形成されている。また、該シール部材3は、その第1のリップ部3aがアール形状raにて構成されている。また、第1のリップ部3aと第3及び第4のリップ部3c,3dとの接続部分は凹状に構成されたアール形状r’にて構成され、また第2のリップ部3bと第3及び第4のリップ部3c,3dとの接続部分は所定アール形状rにて構成されている。なお、図示の例の場合、第1のリップ部3aの基端部及び第2のリップ部3bの幅は、第3及び第4のリップ部3c,3dの幅とほぼ同じか、若干大きい程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平6−48038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、シールチェーン1は、インナーリンクプレート6とアウターリンクプレート8との間にシール部材3又は3を挟むため、シールなしのノンシールチェーンに比して、インナーリンクプレート6とアウターリンクプレート8とのクリアランスを大きくとる必要がある。従って、上記シールチェーンは、上記大きなクリアランスの分だけピンが長くなって曲り易くなり、同じピン径及び同じリンクプレートを用いたチェーンであっても、ノンシールチェーンに比して引張り強度が小さくなる。
【0008】
シールチェーンの強度を上げるには、インナーリンクプレート6とアウターリンクプレート8とのクリアランスを小さくする必要があるが、シール部材の断面積を小さくすると、リップ部のプレートへの接触圧が小さくなって潤滑剤が漏出し易くなる。そして、チェーンの耐摩耗性を低下してチェーンの寿命を短くしてしまう。
【0009】
これに対して、インナーリンクプレート6とアウターリンクプレート8とのクリアランスに対し、シール部材の断面積が大き過ぎると、シール部材が押し潰され過ぎて、リップ部のプレートに対する接触圧が高くなり過ぎてしまう。通常、シール部材は、アウターリンクプレート8に対して摺接するが、この接触部の接触圧が高いとチェーンの屈曲性が悪化すると共に、シール部材で摩耗が早期に生じ易くなる。そして、潤滑剤が漏出し易くなり、チェーンの寿命が短くなってしまう。
【0010】
一方、図11に示すように、シールチェーン1は、使用状態で、斜めに掛け渡されるように駆動する場合(オフセット状態)がある。例えば、自動二輪車ではエンジン側のスプロケットと車輪側のスプロケットにチェーンを掛け渡すが、製造誤差や旋回時などに作用する荷重により、これらスプロケットがオフセットして、これらスプロケット同士に掛け渡されるチェーンが斜めになる場合がある。この際、図11に示すように、インナーリンクプレート6に対しアウターリンクプレート8が傾斜し、これら両プレート6、8同士の間に挟持されるシール部材3の押し潰される量(シール潰し量)が不均一になる。
【0011】
即ち、一部でシール潰し量が大きくなる一方、他部でシール潰し量が小さくなる。そして、シール部材のリップ部とプレートとの間の接触圧も不均一になり、潤滑剤が漏出し易くなったり、シール部材で摩耗が生じ易くなったりする。また、シール部材の形状によっては、シール部材が潰された状態で、各リップ部の接続部に応力集中が生じ、シール部材に早期に亀裂などの損傷が生じ易くなったり、応力集中部分で永久歪みが進行して追従性が悪化し、潤滑油が漏出し易くなる。
【0012】
上述の点を考慮すると、シール部材としては、インナーリンクプレート6とアウターリンクプレート8とのクリアランスが小さくても押し潰され過ぎないサイズにすると共に、リップ部とプレートとの接触圧が適切に確保でき、且つ、シールチェーンが斜めに掛け渡されシール潰し量が不均一になっても上記接触圧の不均一を抑制でき、更には、シール部材が潰された状態で各リップ部の接続部の応力集中を緩和できるようにすることが好ましい。
【0013】
上述の図10に示した従来構造のうち、図10(a)に示した構造の場合、第1及び第2のリップ部3a,3bの幅が大きいため、上記クリアランスを小さくすることに対応してサイズを小さくしたとしても接触圧を確保し易いと考えられる。但し、第1のリップ部3a及び第2のリップ部3bが同幅にて径方向に延びるように形成されているため、シールチェーンがオフセット状態となってシール潰し量が変化した場合に、この変化に対応しにくく、接触圧が大きくなる部分と小さくなる部分との接触圧の差が大きくなると考えられる。
【0014】
また、図10(b)に示した構造の場合、第1のリップ部3aの基端部及び第2のリップ部3bの幅は、幅が小さい第3及び第4のリップ部3c,3dの幅とほぼ同じであるため、上記クリアランスを小さくすることに対応してサイズを小さくした場合に、オフセットが生じていない通常状態であっても、プレートに対する突っ張り力を確保しにくく、接触圧を確保しにくいと考えられる。即ち、径方向中間部の幅が大きい第1のリップ部3aがアウターリンクプレート8に十分に当接しても、幅寸法が小さい第2のリップ部3bのインナーリンクプレート6に対する接触圧が小さく、結果として、シール部材によるインナーリンクプレート6とアウターリンクプレート8との間での突っ張り力を十分に大きくできない。このため、第1のリップ部3aとアウターリンクプレート8との接触圧も十分に確保できないと考えられる。
【0015】
また、図10(b)の形状の場合も、第2のリップ部3bが同幅にて径方向に延びるように形成されているため、シールチェーンがオフセット状態となってシール潰し量が変化した場合に、この変化に対応しにくく接触圧が大きくなる部分と小さくなる部分との接触圧の差が大きくなると考えられる。なお、第1のリップ部3aに関しては、径方向中間部の幅が大きく基端部の幅が小さいため、該基端部で上記シール潰し量の変化を多少は吸収でき、図10(b)の形状よりもオフセットによる接触圧の差を小さくできると考えられる。
【0016】
但し、上記基端部のアール形状r’を大きくしなければ、変形時に応力集中が生じ、シール部材に損傷が生じ易くなったり、シール部材の追従性が悪化し易くなる。アール形状r’を大きくすると、第1のリップ部3aの径方向基端部と中間部との幅の差が小さくなり、該中間部の幅が小さくなる。該中間部の幅が小さくなれば、第1のリップ部3aによる突っ張り力が低下し、接触圧が低くなってしまう。一方、第1のリップ部3aの径方向の長さを長くすれば、アール形状r’を大きくしつつ、上記径方向基端部と中間部との幅の差を大きくすることはできるが、この長さ寸法は、幅の狭いプレート6、8同士の間に組み付ける関係上、制約があるため、図10(b)の形状の場合、アール形状r’を大きくすることは難しい。
【0017】
本発明は、チェーンの引張り強度を高めるべく、インナーリンクプレートとアウターリンクプレートとのクリアランスを小さくしたものに対応して、シール部材のサイズを小さくしても、リップ部とプレートとの接触圧が適切に確保でき、且つ、シールチェーンが斜めに掛け渡されシール潰し量が不均一になっても上記接触圧の不均一を抑制でき、更には、シール部材が潰された状態で各リップ部の接続部の応力集中を緩和できるシールチェーンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明は、インナーリンクプレート(16)よりブシュ(17)を一部突出し、該突出部(17a)を囲むようにかつインナーリンクプレート(16)とアウターリンクプレート(18)との間に挟持されるようにリング状のシール部材(13)を配置し、
前記シール部材(13)は、自然状態における断面が十字形状からなり、中央基部(13e)と、該中央基部(13e)から内径方向に延びる第1のリップ部(13a)と、前記中央基部(13e)から外径方向に延びる第2のリップ部(13b)と、前記中央基部(13e)から左右方向に延びる第3及び第4のリップ部(13c)(13d)とを有し、
前記第1のリップ部(13a)を、前記ブシュ突出部(17a)先端と前記アウターリンクプレート(18)との間に配置した状態で、アウターリンクプレート(18)をインナーリンクプレート(16)に接近する方向に移動して、前記シール部材(13)が、前記ブシュ突出部(17a)との接触に基づく回転モーメントにより捩られ、断面略々X字状に変形して前記インナーリンクプレート(16)と前記アウターリンクプレート(18)との間に挟持されてなる、シールチェーン(11)に関する。
【0019】
そして、自然状態において、前記第1のリップ部(13a)は、アール面(13g)又はそれに近い曲面により形成される断面円形又はそれに近い形状からなり、
前記第1及び第2のリップ部(13a)(13b)は、それぞれ、径方向中間部の幅(A)が前記第3及び第4のリップ部(13c)(13d)の幅(B)よりも大きく、前記径方向基端部に、前記径方向中間部よりも幅が狭く、前記第1及び第2のリップ部(13a)(13b)の左右方向両側面と前記第3及び第4のリップ部(13c)(13d)の径方向両端面とをそれぞれ湾曲凹面(13h)により連続させるくびれ部(13f)を有する、ことを特徴とする。
【0020】
なお、上記第1のリップ部(13a)は、断面円形に限らず、楕円,長円,小判形等の円に近い形状のものも含まれる。また、上記第2のリップ部(13b)も、第1のリップ部(13a)と同様に、断面円形又はそれに近い形状とすることもできる。
【0021】
好ましくは、自然状態において、前記第1及び第2のリップ部(13a)(13b)は、それぞれ、径方向基端部の幅(C)が前記第3及び第4のリップ部(13c)(13d)の幅(B)よりも大きい。
【0022】
好ましくは、自然状態において、前記第1及び第2のリップ部(13a)(13b)は、前記シール部材(13)の断面で径方向に直交する中心線(O−O)に関し線対称に形成される。
【0023】
好ましくは、自然状態において、前記第1及び第2のリップ部(13a)(13b)の幅が最も大きい部分の幅(A)は、前記第3及び第4のリップ部(13c)(13d)の幅(B)の1.5〜1.7倍である。
【0024】
好ましくは、自然状態において、前記第1及び第2のリップ部(13a)(13b)のくびれ部(13f)の湾曲凹面(13g)は、前記シール部材(13)の左右方向の寸法の0.12倍以上の曲率半径(r)を有する。なお、前記湾曲凹面(13g)の曲率半径(r)は、好ましくは前記シール部材の左右方向の寸法の0.2倍以下とし、より好ましくは0.15倍以下とする。
【0025】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に係る本発明によると、第1及び第2のリップ部は、径方向中間部の幅が第3及び第4のリップ部の幅よりも大きいため、シール部材が押し潰された状態で前記第1及び第2のリップ部がプレートに対して十分に突っ張り、リップ部とプレートとの接触圧を確保できる。また、前記径方向基端部に、前記径方向中間部よりも幅が狭く、前記第1及び第2のリップ部の左右方向両側面と前記第3及び第4のリップ部の径方向両端面とをそれぞれ湾曲凹面により連続させるくびれ部を有するため、シール潰し量が大きくなってもこのくびれ部で変形し易く、このくびれ部の変形によりシール潰し量の増大によるリップ部とプレートとの接触圧の増大を抑えられる。また、前記くびれ部に前記湾曲凹面を設けることにより、シール部材が押し潰された状態で応力集中を緩和できる。
【0027】
この結果、インナーリンクプレートとアウターリンクプレートとのクリアランスを小さくしてチェーンの引張り強度を高めたものであっても、シール部材を押し潰され過ぎないサイズにしつつ、リップ部とプレートとの接触圧が適切に確保でき、且つ、シールチェーンが斜めに掛け渡されシール潰し量が不均一になっても上記接触圧の不均一を抑制でき、更には、シール部材が潰された状態で各リップ部の接続部の応力集中を緩和でき、シールチェーンの耐久性を向上させられる。
【0028】
請求項2に係る本発明によると、第1及び第2のリップ部は、それぞれ、径方向基端部の幅が第3及び第4のリップ部の幅(B)よりも大きいため、第1及び第2のリップ部の長さを長くすることなく、第1及び第2のリップ部による突っ張り力を確保しつつ、応力集中を緩和できる。即ち、応力集中の緩和のために前記湾曲凹面の曲率半径を大きくすると、前記第1及び第2のリップ部の長さ寸法の制約があり、前記径方向基端部と前記径方向中間部との幅の差を大きくしにくいが、前記径方向基端部の幅が前記第3及び第4のリップ部の幅よりも大きいため、前記突っ張り力の低下は抑えられる。したがって、第1及び第2のリップ部の長さを長くすることなく、第1及び第2のリップ部による突っ張り力を確保しつつ、応力集中を緩和できる。
【0029】
請求項3に係る本発明によると、第1及び第2のリップ部は線対称に形成されるため、シール部材が潰されることによる変形がバランス良く行われ、リップ部とプレートとの接触圧をより安定させ易くなる。
【0030】
請求項4に係る本発明によると、第1及び第2のリップ部の幅が最も大きい部分(最大幅寸法部分)の幅を適切な範囲にしているため、シール部材が押し潰された状態で前記第1及び第2のリップ部の突っ張り力を適切にでき、リップ部とプレートとの接触圧を適切な範囲にできる。即ち、前記最大寸法部分の幅が第3及び第4のリップ部の幅の1.5倍未満であれば、前記第1及び第2のリップ部の突っ張り力を十分に確保できず、リップ部とプレートとの接触圧が不足し易くなる。一方、前記最大寸法部分の幅が前記第3及び第4のリップ部の幅の1.7倍よりも大きいと、前記第1及び第2のリップ部の突っ張り力が大き過ぎて、リップ部とプレートとの接触圧が過大になり易くなる。
【0031】
したがって、前記第1及び第2のリップ部の最大寸法部分の幅を適切な範囲にすることにより、接触圧の不足による潤滑油の漏れをより抑制し易く、接触圧が過大になることによるチェーンの屈曲性の悪化、シール部材の早期摩耗の発生をより防止し易くなる。
【0032】
請求項5に係る本発明によると、第1及び第2のリップ部のくびれ部の湾曲凹面を、シール部材の左右方向の寸法の0.12倍以上と曲率半径を大きくしているため、シール部材が押し潰された状態で応力集中をより緩和できる。但し、前記曲率半径を大きくし過ぎると、くびれ部と第1及び第2のリップ部の最大幅寸法部分との寸法差が小さくなり、くびれ部で変形しにくくなる。そして、このくびれ部の変形によりシール潰し量の増大によるリップ部とプレートとの接触圧の増大を抑えられると言う効果を得られにくくなる。したがって、前記湾曲凹面の曲率半径は、好ましくは前記シール部材の左右方向の寸法の0.2倍以下とし、より好ましくは0.15倍以下とする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る実施形態のシールチェーンを示す一部切断図。
【図2】本実施形態の自然状態のシール部材の拡大断面図。
【図3】シール部材の寸法関係を説明するための自然状態での部分拡大断面図。
【図4】従来のシール部材でシール潰し量を変化させた場合に作用する接触圧を示す図。
【図5】本実施形態のシール部材でシール潰し量を変化させた場合に作用する接触圧を示す図。
【図6】本発明の効果を確認するために行った試験条件を説明するための図。
【図7】同じくスプロケットのオフセット量を示す図。
【図8】同じく試験結果を示す図。
【図9】本発明の対象となるシールチェーンの製造方法を工程順に示す部分拡大断面図。
【図10】従来のシール部材の2例を示す部分拡大断面図。
【図11】シールチェーンのオフセット状態を示す部分概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図1ないし図8を用いて、本発明の実施形態について説明する。本シールチェーン11は、図1に示すように、2枚の鋼製のまゆ形のアウター(ピン)リンクプレート18の両端部をピン12にて連結したアウター(ピン)リンク19と、同形状の2枚のインナー(ローラ)リンクプレート16の両端部とをブシュ17にて連結したインナー(ローラ)リンク20とを、ブシュ17にピン12を嵌挿することにより無端状に連結して構成されている。また、前記ブシュ17にはローラ21が回転自在に被嵌されており、該ブシュ17は、インナーリンクプレート16の外側面から所定量突出して固定されている。そして、該ブシュ17の突出部17aを囲むように、前記インナーリンクプレート16とアウターリンクプレート18との間には、本実施形態に係るシール部材(シールリング)13が介在している。アウターリンクプレート18とインナーリンクプレート16とのクリアランスi{左右(図1の上下)のリンクプレートにそれぞれクリアランスがあるので、チェーン全体では2iとなる}は小さい。そして、このクリアランス内に前記シール部材13を弾性的に圧縮した状態で配置している。
【0035】
シール部材13は、図2に示すように、ゴムなどの弾性材をリング状に形成したもので、自然状態にあって断面が十(プラス)字状で、左右方向(図1の上下方向)の幅寸法Hが前記クリアランスiよりも大きい。例えば、i/Hが50〜70%である。このようなシール部材13は、前述の図6に示した場合と同様に、インナーリンクプレート16とアウターリンクプレート18との間に挟持される装着状態では、断面略々X字状となる。そして、ピン12及びブシュ17との間の軸受空間にグリース又はオイル等の潤滑剤を封入する。前記シール部材13は、装着された状態でアウターリンクプレート18及びインナーリンクプレート16との間に所定量圧縮されているが、該シール部材13の材料であるゴムは、比較的硬いものが用いられている。
【0036】
このような本実施形態のシール部材13の自然状態の形状について、図2及び図3を用いて説明する。シール部材13は、中央基部13eと、該中央基部13eから内径方向に延びる第1のリップ部13aと、前記中央基部13eから外径方向に延びる第2のリップ部13bと、前記中央基部13eから左右方向(図2、3の上下方向)に延びる第3及び第4のリップ部13c、13dとを有する。
【0037】
本実施形態の場合、シール部材13は、その断面形状において、径方向(図2、3の左右方向)に直交する中心線O−Oに関し線対称に形成される。したがって、前記第1及び第2のリップ部13a、13bは、前記シール部材13の断面で径方向に直交する中心線O−Oに関し線対称に形成される。このような第1及び第2のリップ部13a、13bは、径方向中間部乃至先端部の外周面がアール(円弧)面13gにより形成される断面円形からなり、径方向基端部に、径方向中間部よりも幅が狭いくびれ部13fを有する。そして、くびれ部13fの側面である、前記第1及び第2のリップ部13a、13bの左右方向両側面と前記第3及び第4のリップ部13c、13dの径方向両端面との連続部を湾曲凹面13hとしている。言い換えれば、これら湾曲凹面13hにより、前記第1及び第2のリップ部13a、13bの左右方向両側面と前記第3及び第4のリップ部13c、13dの径方向両端面とを滑らかに連続させている。また、前記湾曲凹面13hは前記アール面rと滑らかに連続している。なお、滑らかにとは、局所的に凹凸がなく変形時に局所的な応力集中が生じにくいことを言う。
【0038】
上述のアール面13gの曲率半径rは、前記シール部材13の左右方向の寸法Hの0.15倍〜0.25倍とすることが好ましく、特に0.2倍とすることが好ましい。また、上述の湾曲凹面13hの曲率半径rは、前記シール部材13の左右方向の寸法Hの0.12倍以上とする。なお、この曲率半径rは、好ましくは前記シール部材13の左右方向の寸法Hの0.2倍以下とし、より好ましくは0.15倍以下とする。
【0039】
また、前記第1及び第2のリップ部13a、13bは、それぞれ、径方向中間部の幅Aが、前記第3及び第4のリップ部13c、13dの幅Bよりも大きい。また、第1及び第2のリップ部13a、13bの径方向基端部乃至中間部のうち最も幅が狭いくびれ部13fの幅Cも、第3及び第4のリップ部13c、13dの幅Bよりも大きい。また、前記第1及び第2のリップ部13a、13bの幅が最も大きい部分(最大寸法部分)の幅Aは、前記第3及び第4のリップ部13c、13dの幅Bの1.5〜1.7倍とする。また、この最大寸法部の幅Aは、シール部材13の幅寸法Hの0.35〜0.45倍とすることが好ましい。更に、前記くびれ部13fの幅Cは、前記第3及び第4のリップ部13c、13dの幅Bの1.2〜1.4倍とすることもできる。
【0040】
また、前記第1及び第2のリップ部13a、13bの、前記第3及び第4のリップ部13c、13dの径方向両端面からの突出量Lは、これらリップ部13c、13dの幅Bの1.8〜2.2倍、好ましくは2倍程度で、前記シール部材13の幅寸法Hの0.4〜0.6倍、好ましくは0.5倍程度とすることが好ましい。これらをまとめると以下のようになる。
A:B=1.5〜1.7:1
A:H=0.35〜0.45:1
C:B=1.2〜1.4:1
L:B=1.8〜2.2:1
L:H=0.4〜0.6:1
【0041】
また、シール部材13は、その断面形状において、左右方向(図2、3の上下方向)に直交する中心線N−Nに関し線対称に形成される。したがって、前記第3及び第4のリップ部13c、13dは、前記シール部材13の断面で左右方向に直交する中心線N−Nに関し線対称に形成される。したがって、前記第3及び第4のリップ部13c、13dの、前記第1及び第2のリップ部13a、13bの左右方向両側面からの突出量は同じである。また、前記第3及び第4のリップ部13c、13dは、湾曲凹面13hとの連続部を除いて左右方向にほぼ同幅に形成されている。また、先端部の角部は面取り又は湾曲させている。なお、第3及び第4のリップ13c、13dは、図示のように左右方向にほぼ同幅とする以外に、例えば、先端に向かう程幅が小さくなるような形状とすることもできる。この場合に、前記幅Bは平均値とする。また、前記第3及び第4のリップ部13c、13dの形状を一致させないようにもできるが、この場合に、前記幅Bは前記第3及び第4のリップ部13c、13dのうちの幅が大きい方を基準として定める。
【0042】
このような本実施形態の場合も、前述の図6で説明した場合と同様に、シール部材13の配置を次のように行う。まず、前記第1のリップ部13aを、前記ブシュ突出部17a先端と前記アウターリンクプレート18との間に配置した状態で、アウターリンクプレート18をインナーリンクプレート16に接近する方向に移動する。すると、前記シール部材13が、前記ブシュ突出部17aとの接触に基づく回転モーメントにより捩られ、断面略々X字状に変形して前記インナーリンクプレート16と前記アウターリンクプレート18との間に挟持される。
【0043】
このような本実施形態によると、第1及び第2のリップ部13a、13bは、径方向中間部の幅が第3及び第4のリップ部の幅Bよりも大きいため、シール部材13が押し潰された状態で前記第1及び第2のリップ部13a、13bがプレート16、18に対して十分に突っ張り、リップ部13aとプレート18との接触圧を確保できる。この場合に、第1及び第2のリップ部13a、13bの最大幅寸法部分の幅Aと前記Bとの関係をA:B=1.5〜1.7:1とすることにより、接触圧が不足したり接触圧が過大になることを防止できる。
【0044】
また、前記径方向基端部に、前記径方向中間部よりも幅が狭く、前記第1及び第2のリップ部13a、13bの左右方向両側面と前記第3及び第4のリップ部13c、13dの径方向両端面とをそれぞれ湾曲凹面13hにより連続させるくびれ部13fを有するため、シール潰し量が大きくなってもこのくびれ部13fで変形し易く、このくびれ部13fの変形によりシール潰し量の増大によるリップ部13a、13bとプレート16、18との接触圧の増大を抑えられる。即ち、本実施形態の場合、第1及び第2のリップ部13a、13bの幅を大きくすることにより、必要な接触圧を確保すると共に、くびれ部13fを設けることにより、インナーリンクプレート16とアウターリンクプレート18とのクリアランスが小さくなってシール潰し量が大きくなった場合には、前記くびれ部13fで変形して接触圧の増大を抑えている。
【0045】
また、前記くびれ部13fに前記湾曲凹面13hを設けることにより、シール部材13が押し潰された状態で応力集中を緩和できる。この場合に、前記湾曲凹面13hを、シール部材13の左右方向の寸法Hの0.12倍以上と曲率半径を大きくすると、シール部材が押し潰された状態で応力集中をより緩和できる。但し、前記曲率半径rを大きくし過ぎると、くびれ部13fと第1及び第2のリップ部13a、13bの最大幅寸法部分との寸法差が小さくなり、くびれ部13fで変形しにくくなるたるため、前記湾曲凹面13hの曲率半径rは、前記シール部材13の左右方向の寸法Hの0.2倍以下、より好ましくは0.15倍以下としている。
【0046】
なお、本実施形態の場合、応力集中の緩和のために前記湾曲凹面13hの曲率半径rを大きくしているが、前記第1及び第2のリップ部の長さ寸法の制約があり、前記第1及び第2のリップ部13a、13bの径方向基端部と径方向中間部との幅の差を大きくしにくい。但し、本実施形態の場合、前記径方向基端部の幅Cが前記第3及び第4のリップ部13c、13dの幅よりも大きいため、前記差を大きくできなくても前記突っ張り力の低下は抑えられる。したがって、第1及び第2のリップ部の長さを長くすることなく、第1及び第2のリップ部13a、13bによる突っ張り力を確保しつつ、応力集中を緩和できる。
【0047】
また、前記Aとシール部材13の左右方向の幅Hとの関係をA:H=0.35〜0.45:1とし、前記第1及び第2のリップ部13a、13bの突出量Lと前記Hとの関係をL:H=0.4〜0.6:1とすることにより、シール部材13の自然状態での左右方向の幅と径方向の幅との関係を適切にでき、装着状態で、各リップ部をプレート16又は18或はブシュ突出部17aに適切に当接させることができる。また、このような関係を有することにより、前記湾曲凹面13hを適切な曲率半径により形成し易くなり、応力集中の緩和を図り易くなると共に、くびれ部13fを適切に変形させ易くできる。例えば、突出量Lが小さ過ぎると、湾曲凹面13hを適切な曲率半径とするためには、くびれ部13fの幅が大きくなり過ぎて、このくびれ部13を変形させにくくなる。
【0048】
なお、第3及び第4のリップ13c、13dに関しては、A:B=1.5〜1.7:1及びA:H=0.35〜0.45:1を満たすような幅、即ち、B:H≒0.2〜0.3:1とすることにより、必要な突っ張り力を確保すると共に突っ張り力が過大になることを防止できる。この結果、上述のような第1及び第2のリップ部13a、13bによる突っ張り力に基づく接触圧をより安定させられる。例えば、第3及び第4のリップ部13c、13dの幅が小さ過ぎる場合、突っ張り力が小さくて、そもそもシール部材13を組み付けた状態で所定の断面略X字状を維持しにくくなる。一方、第3及び第4のリップ部13c、13dの幅が大き過ぎる場合、突っ張り力が大きくて、クリアランスの減少による上述のくびれ部13fの変形を円滑に行いにくくなる。
【0049】
また、本実施形態の場合、第1及び第2のリップ部13a、13bは線対称に形成されるため、シール部材13が潰されることによる変形がバランス良く行われ、リップ部13a、13bとプレート16、18との接触圧をより安定させ易くなる。但し、本発明はこのような構造に限らず、第1及び第2のリップ部13a、13bが非対称であっても良い。この場合に、第1及び第2のリップ部13a、13bが上述の数値関係の範囲に入るようにすることが好ましい。この場合に、第1及び第2のリップ部13a、13bが非対称であるから、それぞれに適用される数値自体が異なることは言うまでもない。また、第3及び第4のリップ部13c、13dに関しても、線対称に限定されず、このような第1及び第2のリップ部13a、13bと同様に扱える。
【0050】
本実施形態の場合、上述のように構成及び作用を有する結果、インナーリンクプレート16とアウターリンクプレート18とのクリアランスiを小さくしてチェーンの引張り強度を高めたものであっても、シール部材13を押し潰され過ぎないサイズにしつつ、リップ部13a、13bとプレート16、18との接触圧が適切に確保でき、且つ、シールチェーン11が斜めに掛け渡されシール潰し量が不均一になっても上記接触圧の不均一を抑制でき、更には、シール部材13が潰された状態で各リップ部13a、13b、13c、13dの接続部の応力集中を緩和でき、シールチェーンの耐久性を向上させられる。
【0051】
次に、本実施形態のシール部材と、前述の図10(b)に示したような形状を有する従来構造のシール部材とで、シール潰し量の変化に対する接触圧の変化の違いを検討した結果について、図4及び図5を用いて説明する。なお、本実施形態と従来例とで、自然状態において、シール部材の左右方向の寸法(Hに相当)及び径方向の寸法(2L+Bに相当)は、同じとした。その他の寸法関係については、本実施形態では、上述した関係を満たし、従来例では、図10(b)で説明した関係を満たす。
【0052】
そして、このようなシール部材が配置されるアウターリンクプレートとインナーリンクプレートとのクリアランスiを変えた場合に、各接触部に作用する接触圧を計算により求めた。この結果を図4及び図5に示す。なお、図4は従来例で、図5は本実施形態で、それぞれ、シール部材を、アウターリンクプレートとインナーリンクプレートとブシュの突出部との間に配置した状態の断面図である。また、それぞれの(a)はi/Hが0.5、(b)はi/Hが0.6、(c)はi/Hが0.7の場合を示す。このうちのクリアランスiがシールチェーンの使用状態で正規のクリアランスであるとする。また、各図の黒塗り部分が接触圧の大きさ及び作用している個所を示しており、高さが高い程、接触圧が大きい。また、各図の上側がアウターリンクプレートの接触部に対応し、下側がインナーリンクプレートの接触部に対応し、左側がブシュの突出部の接触部に対応する。したがって、シール部材の断面の左上が第1のリップ部、右下が第2のリップ部、右上が第3のリップ部、左下が第4のリップ部である。
【0053】
図4の従来例の場合、図の左上である第1のリップ部とアウターリンクプレートとの接触部の接触圧が、クリアランスiの減少、即ちシール潰し量の増大により大きく変化していることがわかる。また、正規の状態である(c)では、この部分で接触圧がある程度高いところは僅かであり、接触圧の平均値は低いことがわかる。この第1のリップ部とアウターリンクプレートとの接触部は、潤滑剤が最も封入されている軸受空間に近いため、潤滑剤の漏出を防ぐ上で重要な部分である。また、通常、シール部材とアウターリンクプレートとの接触部では、使用状態で摺動が生じる。このため、接触圧が高すぎると、チェーンの屈曲性が悪化すると共に、シール部材で摩耗が早期に生じ易くなる。そして、潤滑剤が漏出し易くなり、チェーンの寿命が短くなってしまう。
【0054】
したがって、図4の従来例の場合には、クリアランスが正規の状態では、第1のリップ部とアウターリンクプレートとの接触圧が小さいため、潤滑剤が漏出し易い。一方、クリアランスが小さくなった状態では、この部分の接触圧が高すぎるため、チェーンの屈曲性が悪化したりシール部材が早期に摩耗する可能性がある。特に、前述したように、チェーンのオフセット状態が生じた場合には、クリアランスが不均一になり、シール部材のシール潰し量も変化する。このため、チェーンの駆動により図の(a)〜(c)の状態が繰り返され、図4の従来例の場合には、第1のリップ部とアウターリンクプレートとの接触圧が大きく変化することが繰り返されてしまうことになる。
【0055】
これに対して図5の本実施形態の場合には、図の左上である第1のリップ部とアウターリンクプレートとの接触部の接触圧が、クリアランスiの減少、即ちシール潰し量の増大による変化量が小さいことがわかる。また、正規の状態である(c)では、この部分で接触圧がある程度高いところが多く、接触圧の平均値が高いことがわかる。したがって、図5の本実施形態の場合には、クリアランスが正規の状態でも、第1のリップ部とアウターリンクプレートとの接触圧を確保でき、潤滑剤の漏出を抑制できる。一方、クリアランスが小さくなった状態でも、この部分の接触圧の上昇を抑えられ、チェーンの屈曲性が悪化したりシール部材が早期に摩耗することを抑制できる。したがって、チェーンのオフセット状態が生じても、第1のリップ部とアウターリンクプレートとの接触圧の変化が少なく、安定したチェーンの駆動を長期に亙って維持できる。
【0056】
次に、本実施形態のシール部材13を組み込んだシールチェーン11の耐久試験について説明する。なお、チェーンとしては、JIS 50を使用した。また、シール部材13の形状の寸法関係は、以下の通りである。
A:B=1.5〜1.7:1
A:H=0.35〜0.45:1
C:B=1.2〜1.4:1
L:B=1.8〜2.2:1
L:H=0.4〜0.6:1
:H=0.15〜0.25:1
:H=0.12〜0.2:1
【0057】
そして、このような形状のシール部材13を組み込んだシールチェーン11を、図6に示すように、歯数が多い大スプロケット30と歯数が少ない小スプロケット31とに掛け渡し、所定の引張張力Tを付与した状態で所定回転数で回転させた。また、これら大スプロケット30と小スプロケット31とは、図7に示すように所定量δオフセットさせた。試験条件は次の通りである。
大スプロケット30の歯数:小スプロケット31の歯数=43:15
チェーン引張張力T=1.96kN
小スプロケット31の回転数=3500rpm
オフセット量δ=8mm
【0058】
このような試験条件で回転させ、所定時間経過後のシールチェーン11(本発明品)の伸びを測定した。なお、試験は、常温常湿の屋内で、給油を20時間毎に、送風なしで行った。また、同じ試験条件で、前述の図10(b)に示した従来例のシール部材を組み込んだシールチェーン(従来品)についても耐久試験を行った。この試験結果を図8に示す。図8は駆動時間に対するシールチェーンの伸び率を示しており、従来品のシールチェーンの伸び率が0.5%に達した時間を100%とした。この図8から明らかなように、本発明品の場合、従来品に比べて耐久性を2倍以上にできた。
【符号の説明】
【0059】
11 シールチェーン
12 ピン
13 シール部材
13a 第1のリップ部
13b 第2のリップ部
13c 第3のリップ部
13d 第4のリップ部
13e 中央基部
13f くびれ部
13g アール面
13h 湾曲凹面
16 インナーリンクプレート
17 ブシュ
17a ブシュ突出部
18 アウターリンクプレート
19 アウターリンク
20 インナーリンク
21 ローラ
i 両リンクプレートのクリアランス
第1及び第2のリップ部アール面の曲率半径
湾曲凹面の曲率半径
A 第1及び第2のリップ部最大寸法部分
B 第3及び第4のリップ部の幅
C くびれ部の幅
H シール部材の左右方向の幅寸法
L 第1及び第2のリップ部の突出量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーリンクプレートよりブシュを一部突出し、該突出部を囲むようにかつインナーリンクプレートとアウターリンクプレートとの間に挟持されるようにリング状のシール部材を配置し、
前記シール部材は、自然状態における断面が十字形状からなり、中央基部と、該中央基部から内径方向に延びる第1のリップ部と、前記中央基部から外径方向に延びる第2のリップ部と、前記中央基部から左右方向に延びる第3及び第4のリップ部とを有し、
前記第1のリップ部を、前記ブシュ突出部先端と前記アウターリンクプレートとの間に配置した状態で、アウターリンクプレートをインナーリンクプレートに接近する方向に移動して、前記シール部材が、前記ブシュ突出部との接触に基づく回転モーメントにより捩られ、断面略々X字状に変形して前記インナーリンクプレートと前記アウターリンクプレートとの間に挟持されてなる、シールチェーンにおいて、
自然状態において、前記第1のリップ部は、アール面又はそれに近い曲面により形成される断面円形又はそれに近い形状からなり、
前記第1及び第2のリップ部は、それぞれ、径方向中間部の幅が前記第3及び第4のリップ部の幅よりも大きく、前記径方向基端部に、前記径方向中間部よりも幅が狭く、前記第1及び第2のリップ部の左右方向両側面と前記第3及び第4のリップ部の径方向両端面とをそれぞれ湾曲凹面により連続させるくびれ部を有する、
ことを特徴とするシールチェーン。
【請求項2】
自然状態において、前記第1及び第2のリップ部は、それぞれ、径方向基端部の幅が前記第3及び第4のリップ部の幅よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1記載のシールチェーン。
【請求項3】
自然状態において、前記第1及び第2のリップ部は、前記シール部材の断面で径方向に直交する中心線に関し線対称に形成される、
ことを特徴とする請求項1又は2記載のシールチェーン。
【請求項4】
自然状態において、前記第1及び第2のリップ部の幅が最も大きい部分の幅は、前記第3及び第4のリップ部の幅の1.5〜1.7倍である、
ことを特徴とする請求項1ないし3のうちの何れか1項記載のシールチェーン。
【請求項5】
自然状態において、前記第1及び第2のリップ部のくびれ部の湾曲凹面は、前記シール部材の左右方向の寸法の0.12倍以上の曲率半径を有する、
ことを特徴とする請求項1ないし4のうちの何れか1項記載のシールチェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−163388(P2011−163388A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24437(P2010−24437)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000207425)大同工業株式会社 (45)