説明

シールドケースと、その製造方法と、これらに用いる製造装置

【課題】端子板からF接栓を外れにくくする。
【解決手段】シールドケース20の側面に設けられた端子板21と、この端子板21と枠体20aとを連結する連結部20bと、端子板21に設けられた丸孔22と、この丸孔22の外周部に設けられた複数の回転防止溝23とを備え、丸孔22の連結部22b側の外周部は、回転防止溝23の不形成部24としたので、回転防止溝23の不形成部24においてかしめ部38が端子板21に対し広い面積で圧接されることとなり、コネクタ1の横押し強度を強くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタをかしめ固定する端子板装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の端子板装置について図面を用いて説明する。図11は従来の端子板装置における製造設備の要部断面図であり、図12は、同、シールドケースの断面図である。では、図11と図12を用いて、まずは従来の端子板装置に用いるF接栓1と端子板2とに関して説明する。図11、図12において、F接栓1は、アンテナなどからのケーブルが接続されるネジ部1aと、このネジ部1aの根元に設けられたフランジ部3と、このフランジ部3に対してネジ部1aの反対側に設けられた挿入部4とから構成されている。なお、この挿入部4は直径が9.1mmであり、肉厚が1.0mmの円筒形状をしている。
【0003】
一方、端子板2には丸孔5が設けられ、この丸孔5へ挿入部4が挿入されるものである。そして丸孔5の外周には回転防止溝6が設けられる。なお、これら回転防止溝6は、丸孔5の外周に60度の間隔で6箇所設けてあり、その回転防止溝の幅を2.0mmとし、深さを0.3mmとしてある。
【0004】
そして従来の端子板装置7は、F接栓1の挿入部4を丸孔5へ挿入し、回転防止溝6に対応する位置をかしめることで、F接栓1を端子板2へ固定していた。
【0005】
では次に従来の端子板装置の製造方法について説明する。8は受け台であり、この受け台8の穴9には、ネジ部1aが挿入される。そして、端子板2の丸孔5に挿入部を挿入し、その後に穴9の上方に設けられたかしめパンチ10により挿入部4をかしめていた。
【0006】
図13は、従来の端子板装置7の製造装置で用いるかしめパンチ10の正面図であり、図14は、同、かしめ部の要部断面図である。図13、図14において、かしめパンチ10には、回転防止溝に対応する位置に設けた押圧部10aを有し、この押圧部10aは下方に向かって径が小さくなる方向へ約30度傾斜している。そしてこの押圧部10aによって、挿入部4を押し潰すことで、F接栓1にかしめ部8が形成される。なお、押圧部10aの幅は回転防止溝6の幅よりも大きくし、かしめ部8の幅を回転防止溝6の幅よりも大きくなるようにかしめられていた。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平9−106863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながらこのような従来の端子板装置においては、かしめ部の肉は回転防止溝内へ押し込まれるので、かしめ部と端子板とが圧接する面積が小さくなり、F接栓の横押し方向の強度が弱いという課題を有していた。
【0009】
そこで本発明は、この問題を解決したもので、F接栓の横押し方向への力に対し、端子板からF接栓が外れ難いシールドケースを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために本発明のシールドケースは、枠体の側面に設けられた端子板と、この端子板と前記枠体とを連結する連結部と、前記端子板に設けられた丸孔と、この丸孔の外周部に設けられた複数の回転防止溝とを備え、前記丸孔の前記連結部側の外周部は、前記回転防止溝の不形成部としたものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によれば、枠体の側面に設けられた端子板と、この端子板と前記枠体とを連結する連結部と、前記端子板に設けられた丸孔と、この丸孔の外周部に設けられた複数の回転防止溝とを備え、前記丸孔の前記連結部側の外周部は、前記回転防止溝の不形成部としたので、回転防止溝の不形成部をかしめれば、回転防止溝の不形成部においてかしめ部が端子板に対し広い面積で圧接されることとなり、コネクタの横押し強度を強くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1について図面を用いて説明する。図1は、本実施の形態1における端子板装置の正面図であり、図2は、同、シールドケースの側面図である。なお本実施の形態1において、従来と同じものは同じ番号として、その説明は簡略化している。
【0013】
まず図1、図2を用いて、本実施の形態1に用いるF接栓と、端子板21について説明する。本実施の形態1においてF接栓1は、従来の端子板装置と同一のものを用いている。一方、端子板21はシールドケース20の側面を形成するものであり板厚が0.6mmの金属板で形成される。そしてこのシールドケース20の枠体部20aと端子板21は連結部20bによって連結されている。そして、端子板21には、連結部20bに連結された反対側の端部近傍に、枠体20aから端子板21を貫通して設けられた爪20cを形成している。そして、この爪20cを折り曲げることで、枠体20aと端子板21とを一体化する。このように、枠体20aと端子板21とは共に、連結部20bから折り曲げることで一体に形成しているので、シールドケース20の強度を大きくできる。
【0014】
また、端子板21には、丸孔22が設けられ、この丸孔22へはF接栓1の挿入部4が挿入される。なお、本実施の形態1における丸孔22の直径は9.25mmとすることで、挿入部4との間の隙間を小さくすることで、かしめ強度を大きくしている。そしてこの丸孔22の外周には回転防止溝23a,23bが設けられる。これら回転防止溝23a,23bは、丸孔22の外周に60度の間隔で4箇所設けてあり、連結部20b側の半周には、回転防止溝23a,23bを設けない回転防止溝不形成部24としている。なお、本実施の形態における回転防止溝の幅は、2.0mmであり、深さは0.3mmとしてある。
【0015】
そして本実施の形態1における端子板装置25は、F接栓1の挿入部4を丸孔22へ挿入し、回転防止溝23と、回転防止溝不形成部24とに対応する位置をかしめることで、F接栓1を端子板21へ固定するものである。
【0016】
では次に本実施の形態1における端子板装置25の製造方法について図面を用いて説明する。図3は、本実施の形態1における端子板装置の製造装置の要部断面図である。31は受け台であり、この受け台31に設けられた穴32には、ネジ部1aが挿入される。このとき、F接栓1は、フランジ部3の下面が受け台31の上面と当接されて保持される。そして、端子板21の丸孔22に挿入部4を挿入し、その後に穴32の上方に設けられたかしめパンチ33を油圧駆動などのプレス機器(図示せず)で上下動させて、挿入部4をかしめていた。なおかしめパンチ33は繰り返し使用するので、ハイス鋼のように金型などに用いられる硬い材料を用いる。
【0017】
図4は、本実施の形態1の端子板装置25を製造する製造装置で用いるかしめパンチ33の正面図であり、図5は同、かしめ部の要部拡大図である。図4、図5および図3において、かしめパンチ33には、回転防止溝23a(図2に示す)に対応する押圧部34aと、回転防止溝23b(図2に示す)に対応する押圧部34bと、回転防止溝不形成部24(図2に示す)に対応する押圧部34cとが設けられる。
【0018】
なお、これらの押圧部34a,34b,34cには、それぞれ下方に向かって径が小さくなる傾斜を有している。そして、これらの傾斜の始点35は、挿入部4の内面4aよりも内側としている。これにより、挿入部4の肉をかしめによって確りと広げることができるので、ネジ部の軸線に垂直方向の力を、ネジ部1aに加えた場合に、F接栓1が端子板から外れるまでの保持強度(以下、横押し強度という)を大きくすることができる。
【0019】
また図3に示すように、本実施の形態1における押圧部34の傾斜は、始点35より勾配角36aで傾斜し、変化点37で勾配角36aよりも小さな勾配角36bへ変化させている。そしてかしめパンチ33によって挿入部4を押し潰すことにより、図5に示すように、それぞれの押圧部34a,34b,34cに対応したかしめ部38a,38b,38cが形成される。
【0020】
では次にこのようにしてかしめられた端子板装置25において、それぞれのかしめ部38a,38b,38cについて詳細に説明する。図6(a)は本実施の形態1におけるかしめ部38aの要部拡大断面図であり、図6(b)は同、かしめ部38cの要部拡大断面図であり、図6(c)は同、かしめ部38bの要部拡大断面図である。なお、これらの図面において、図3と同じものは同じ番号とし、その説明は簡略化している。
【0021】
まずこの図6(a)を用いてかしめ部38aを説明する。図6(a)においてかしめ部38aは、勾配36aと勾配36bとを有して押圧部34aを有したかしめパンチ33を用いてかしめが行われる。これにより、かしめ部38aには勾配36aの押圧部34aで押圧された被押圧部39aと、勾配36bの押圧部34aで押圧された被押圧部39bとが形成される。このとき、勾配36aを勾配36bよりも大きくしているので、挿入部4が、勾配36aに沿って外周方向へ広がることとなる。そしてさらに、勾配36bに沿って端子板21方向へかしめられることとなる。加えて、かしめ部38aにおいては、被押圧部39a,39bの幅を回転防止溝23aの幅よりも大きくしている。これにより、挿入部4の肉を確りと広げることができ、端子板21は、かしめ部38aとフランジ部3との間に確りと挟み込まれるので、さらに横押し強度を大きくすることができる。
【0022】
その上、勾配36aを持つ押圧部34aの先端で押圧されることにより、挿入部4の根元側に被押圧部39aが形成される。このとき、勾配36aが勾配36bよりも大きいので、かしめパンチ33のストロークの下死点位置ばらつきなどによるかしめ部38aの最小肉厚部39cの厚みがばらつきにくくなる。これにより、最小肉厚部39cの強度が安定するので、かしめパンチ33の下死点位置などに対しても、安定した保持強度を得ることができる。
【0023】
ここで、勾配36aは45度以上の角度とし、勾配36bは45度未満の角度とすることが望ましい。このように勾配36aを45度以上とすれば、挿入部4の肉は勾配36aに沿って外周方向へ広がりやすくなる。また、勾配36bを45度以下とすれば、かしめ部38aを端子板21側へ密着してかしめし易くなる。従って、かしめ部38aとフランジ部3との間に、確りと端子板21を挟み込んで保持することができるので、横押し強度を大きくできる。なお、本実施の形態1においては勾配36aを45度としているので、挿入部4の肉は外周方向に対して広がり易くなる。また、勾配36bを30度とすることで、挿入部4の肉が端子板21を確りと挟むようになる。
【0024】
なお、変化点37は、常に挿入部4の内周面4aより外側となる位置に設けておくことが重要である。つまりかしめパンチ33と穴32(図3)あるいはかしめパンチ33とF接栓1との間での発生し得る相対位置ズレ分以上に外側の位置に設けておくこととなる。これにより上記ズレが起こっても被押圧部39aを形成することができるので、パンチ33と穴32あるいはかしめパンチ33とF接栓1との間での発生し得る相対位置ズレによるF接栓1の保持強度のばらつきを小さくすることができる。
【0025】
また、押圧部34aの勾配36aが45度である場合、変化点37は丸孔22の外周面よりも内側に位置させると良い。これにより、押圧部34aが角部11を変形させることが少なくなるので、回転方向の保持強度を維持できる。
【0026】
そこで、本実施の形態1において変化点37は、挿入部4の肉厚の略中心に対する位置に設けてある。これにより、かしめパンチ33と穴32あるいはかしめパンチ33とF接栓1との間で相対位置にズレが生じても、変化点37は挿入部4の上面部4bの上方に位置させることができる。これにより、かしめパンチ33と、穴32あるいはかしめパンチ33とF接栓1との間の相対位置がズレても、被押圧部39aを形成させることができるので、F接栓1の保持強度のばらつきを小さくすることができる。
【0027】
なお、変化点37において、これらの勾配36aと勾配36bとは、円弧37a(図3に示す)によって接続している。これにより、かしめ時にこの円弧37aに沿って挿入部4の肉が広がり易くなり、確りとかしめることができるので、さらに横押し強度を大きくすることができる。
【0028】
次に図6(b)を用いてかしめ部38cについて詳細に説明する。かしめ部38cは、回転防止溝不形成部24に対応した位置に設けられている。つまり、挿入部4と丸孔22の外周とが約0.025mmの小さな隙間で配置されることとなるので、挿入部4を押圧部34cで押圧すると、かしめ部38c端子板とが当接する面積が大きくなる。これにより、かしめ部38cとフランジ部3との間に端子板21が確りと挟み込まれて固定されるので、横押し強度を大きくすることができる。
【0029】
なお本実施の形態1において、回転防止溝不形成部24は、丸孔22の連結部20bに近い側の外周に設けることで、特に連結部側の方向(図2中B方向)の横押し強度を大きくしている。これは、連結部20bの反対側の方向(図2中A方向)から横押しの力が加わった場合には、端子板21がその力を緩和できる。しかし、端子板21は連結部20bで連結されているために、端子板21の連結部側の剛性は高い。そのために、端子板21の連結部20b側の方向(図2中B方向)から横押しの力が加わった場合に、横押しの力による応力は、連結部側のF接栓の取付け根元近傍に集中しやすくなるわけである。従って回転防止溝不形成部24は、連結部20b側に設けておくと良いわけである。
【0030】
さらに、かしめ部38cを形成させる押圧部34cにも、押圧部34aと同様に2つの勾配角の傾斜を設けている。これにより、さらにかしめ部38cと端子板21とが当接する面積を大きくでき、さらに横押し強度を大きくできる。
【0031】
次に、図6(c)を用いてかしめ部38bについて詳細に説明する。図6(c)において、かしめ部38bは、回転防止溝23bの幅よりも小さな幅の押圧部34b(図4に示す)によって押圧され形成される。これによりかしめ部38bには押圧部34bの幅と略同じ幅の被押圧部40と、回転防止溝23へ突出して係合される係合部41とが形成される。このとき、押圧部34bの幅を回転防止溝23bの幅よりも小さくすることによって、回転防止溝23bに対し、確実に係合する係合部41が突出する。さらに、押圧部34bの側面42(図4に示す)と、回転防止溝23bの側面43との間の間隔は、挿入部4の厚み以下としておくことによって、係合部41が確りと回転防止溝23内へ押し込まれる。これにより、回転防止溝23bの側面43に対して、係合部41の側面41aが圧接されて固定されることとなるので、F接栓1の回転方向の力に対する保持強度を大きくできるものである。
【0032】
なお本実施の形態1における押圧部34bの幅は2.0mmとしている。これにより、かしめパンチ33と穴32との位置ズレや、回転防止溝23bと押圧部34bとの間の角度ズレなどに対しても押圧部34bで角部11を押圧しないようにできる。また、これらのズレが発生しても押圧部34bの側面42と回転防止溝23bの側面43との間の間隔を挿入部4の厚み以下とできるので、かしめパンチ33の取付け時のズレなどが発生しても、係合部41は回転防止溝23に対し、確りと圧接して保持される。
【0033】
なお、押圧部34bにも勾配36aと36bの傾斜を設けている。これにより、かしめ部38bでは挿入部4の肉が回転防止溝23bの深さ方向(図5のC方向)へ広げられる。これによってかしめ部38bの先端部近傍で端子板21を確りと挟み込むことができるので、横押し強度を大きくできる。
【0034】
以上のように本実施の形態1においては、丸孔22に回転防止溝不形成部24を設け、この回転防止溝不形成部24をかしめることで、連結部20b側からの横押し強度を大きくしている。しかしこれにより回転防止溝23が4箇所となるので、回転方向の保持強度が悪くなる。そこで、この回転方向の保持強度の低下を補うために、押圧部34bの幅を回転防止溝23の幅より小さくするとともに、係合部41の側面41aを回転防止溝23bの側面43に対し圧接させている。これにより係合部41が回転防止溝23内に押し込まれて圧接することで、回転方向に対する保持強度の低下を防いでいる。
【0035】
ところが、特にかしめ部38bにおいて、端子板21の面21a上にかしめ肉が当接しないと、かしめ部38b側(図2におけるD方向)からの横押し強度が弱くなる。そこで、押圧部34bの先端部の勾配36aを勾配36bよりも大きくすることで、挿入部4の肉が回転防止溝23の深さ方向へと広がりやすくしている。これによりかしめ部38bの先端部で端子板21を確りと保持することとなり、横押し強度が低下することを防いでいる。本実施の形態1では、さらに加えて押圧部34a,34cに対しても勾配36a,36bを設けている。これによりさらにD方向以外に対する横押し強度も大きくしている。
【0036】
一般的にこのようなかしめ固定では、回転方向の保持強度と横押し強度とは反比例する。しかしながら、発明者らの実験によれば、本実施の形態1の構成とすることで、横押し方向に対して2.3Nmの保持強度を実現し、かつ回転方向に対しては5.88Nmの保持強度を実現できることを確認した。これにより、回転方向と、横押し方向に対する保持強度を共に大きくできるので、F接栓1と端子板21とをはんだ付けなどで補強することも不要となる。
【0037】
なお、かしめ部の形状は、左右対称となるようにしておくのが良い。これは、かしめ時にかしめパンチが逃げることを防止し、位置精度良くかしめを行うためである。これにより確りとかしめ固定ができ、かしめ強度のばらつきなどを小さくできる。
【0038】
また、本実施の形態1では、かしめ部の形状は、左右対称としたが、これは回転防止溝不形成部24におけるかしめ部の幅を回転防止溝23のかしめ部の幅よりも小さくしても良い。これにより回転防止溝不形成部24によるかしめパンチの逃げをさらに小さくできるので、さらに確りとかしめ固定することができる。
【0039】
さらに、本実施の形態1では、横押し強度も強くするために回転防止溝不形成部24を設けた。しかし、この回転防止溝不形成部24の位置に回転防止溝23を設けても良い。この場合の保持強度として、横押し方向に対して2.3Nmの保持強度を実現し、かつ回転方向に対しては5.88Nmの保持強度を実現できる。従ってこの場合においても、回転方向と横押し方向に対する保持強度を大きくできることを確認している。
【0040】
(実施の形態2)
以下実施の形態2について図面を用いて説明する。図7は本実施の形態2における端子板の展開図である。図8は、同、端子板の4面図であり、正面、上面、側面と、背面を示している。そして、図7、図8において、図2と同じものは同じ番号とし、その説明は簡略化している。
【0041】
図7、図8において、本実施の形態2における端子板51は、図7に示す形状に打ち抜き加工された板状体52を、曲げ線53で折り重ねて形成するものである。これにより、内板部51aと外板部51bとが連結部54で連結され、それらを2枚重ねした端子板51が形成される。そして、本実施の形態2においては、実施の形態1とは異なり、端子板51と枠体(図示せず)とは、それぞれ別々に製造される。そして、枠体の先端に設けられた爪を端子板51の両端近傍に設けられた孔55へ挿入し、かしめて一体化することでシールドケース(図示せず)を完成する。なお、枠体への端子板51の取付けは、内板部51a側が内側となるように取付けられる。
【0042】
ではまず端子板51の内板部51aについて説明する。内板部51aには、F接栓1の挿入部4を挿入する丸孔56が設けられ、この丸孔56には回転防止溝57が略一定の間隔で設けられている。本実施の形態2においては、回転防止溝57を略60度の間隔で6箇所設けている。なお、この丸孔56の直径は9.25mmとすることで、丸孔56と挿入部4との隙間を小さくし、かしめ強度を大きくしている。また、回転防止溝57の幅は、2.0mmであり、深さは0.3mmとしてある。
【0043】
58は、端子板51に設けられたグランド端子であり、内板部51aから略直角に切曲げを行うことによって形成されている。このグランド端子は、シールドケース内に嵌合されるプリント基板(図示せず)上に設けられる孔へ挿入する。そして、プリント基板に形成された電子回路のグランドパターンに対してはんだ付け接続される。なお本実施の形態2においてグランド端子58は、「L字」状に突出しているものであり、そのグランド端子58の幅は、1.0mmとしている。このように、グランド端子を幅の小さな「L字」形状としているので、熱ストレスなどによって発生するはんだ付け接続部でのはんだクラックを発生し難くできる。
【0044】
59は、グランド爪であり、プリント基板の外周部に設けられたグランドパターンに対応する位置に形成される。このグランド爪59には、このグランド爪の先端に設けられ、幅広のはんだ付け部59aとグランド爪59の根元に設けられ、幅が狭い弾性部59bとを有している。このようにプリント基板とのはんだ接続は、幅が広いはんだ付け部59aで行うので、充分なはんだによって接続が可能であるので、はんだクラックなどが起こり難くなる。さらに、幅の狭い弾性部の弾性によって熱ストレスによるはんだクラックをさらに起こり難くできる。
【0045】
次に、外板部51bについて説明する。外板部51bには、丸孔56に対応する位置に丸孔61が設けられる。この丸孔61の径は、9.65mmとしている。これは、丸孔61の径は、丸孔56と同じとすることが望ましい。しかし端子板51を折り重ねた時に丸孔56と丸孔61との位置にズレが発生した場合においても、F接栓1の挿入部4が丸孔56と丸孔61とに対し挿入可能なように、これらの丸孔56,61の大きさは変えている。なお本実施の形態2において、丸孔56と丸孔61との径の差は、約0.4mmとしている。
【0046】
本実施の形態2においてF接栓は、外板部51b側から挿入され、内板部51a側でかしめられる。そして、内板部側の丸孔56の径の方を、外板部51b側の丸孔61の径よりも小さくしている。これは、かしめ側における挿入部4と丸孔56との隙間を小さくすることにより、端子板51とかしめ部とが接触する面積が大きくなる。これにより、回転方向の保持強度と横押し強度とを共に大きくできるためである。従って本実施の形態2においては、丸孔57の径を丸孔61の径より0.4mm小さくすることで、F接栓の保持強度を大きくしている。
【0047】
62は、はんだ付け部59に対応する位置に設けられた孔であり、これは、曲げパンチなどを用いて、外板部51b側(シールドケースの外側)からはんだ付け部59を押し曲げるために設けている。
【0048】
そしてこのような端子板51におけるF接栓1をかしめる方法について以下に説明する。本実施の形態2における端子板装置を製造するための製造装置は、実施の形態1と同じものを用いる。ただし、端子板51を受け台8に装着されたF接栓1の挿入部4へ装着する場合、フランジ部3が端子板51の外板部51b側となるように装着する。
【0049】
図9は、本実施の形態2における端子板装置の背面図である。そして、本実施の形態2においても、実施の形態1と同じ方法によってかしめ固定することにより、図9に示すようにF接栓1が端子板51へかしめ固定される。図10は本実施の形態2におけるかしめ部の要部拡大断面図である。本実施の形態2においては、図10に示すように、丸孔61を丸孔56より大きくし、かつ回転防止溝57においては外板部51bの内側面を露出させている。これにより、かしめ部71の根元部71aが外板部51bの露出部51cへ当接し、さらにかしめ部の先端部71bが内板部51aの内面51dへ当接することとなる。これによりかしめ部71において端子板51と当接する面積が大きくなるので、特に横押し強度を強くできる。
【0050】
なお、本実施の形態2におけるかしめは、実施の形態1と同じかしめパンチ33を用いている。従って、かしめ部71の被押圧部72にはかしめパンチ33に設けた勾配の傾斜が形成される。これによって実施の形態1と同様に、挿入部4の肉は回転防止溝57の深さ方向へ広がり易くなるので、横押し強度を強くできる。
【0051】
また、回転防止溝57の幅、深さともに実施の形態1と同じ寸法としてあるので、押圧部34b(図4に示す)でかしめられた箇所においては、回転方向への保持強度を大きくしている。
【0052】
発明者らの実験によれば、以上の構成によってF接栓1の回転方向に対する保持強度は、3.55Nmであり、一方横押し強度は3Nmであることを確認している。
【0053】
さらに、図8において、本実施の形態2における外板部51bには、グランド端子58により形成される孔60に対応し、この孔60を塞ぐために閉塞部63としている。これにより本実施の形態2における端子板装置を、電子チューナなどの高周波機器のシールドケースに用いると、シールドケース内に構成される高周波回路における高周波信号などが、孔60から漏洩することを少なくできる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明にかかる端子板装置は、コネクタのかしめ保持強度を大きくできるという効果を有し、かしめて固定するコネクタを使用する電子機器等に用いると有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1における端子板装置の正面図
【図2】同、シールドケースの側面図
【図3】同、端子板装置の製造装置の要部断面図
【図4】同、かしめパンチの正面図
【図5】同、かしめ部の要部拡大図
【図6】(a)同、かしめ部38aの要部拡大断面図、(b)同、かしめ部38cの要部拡大断面図、(c)同、かしめ部38bの要部拡大断面図
【図7】本発明の実施の形態2における端子板の展開図
【図8】同、端子板の4面図
【図9】同、端子板装置の背面図
【図10】同、かしめ部の要部拡大断面図
【図11】従来の端子板装置の製造設備の要部断面図
【図12】同、シールドケースの断面図
【図13】同、かしめパンチの正面図
【図14】同、要部断面図
【符号の説明】
【0056】
20 シールドケース
20a 枠体
20b 連結部
21 端子板
22 丸孔
23 回転防止溝
24 回転防止溝不形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体の側面に設けられた端子板と、この端子板と前記枠体とを連結する連結部と、前記端子板に設けられた丸孔と、この丸孔の外周部に設けられた複数の回転防止溝とを備え、前記丸孔の前記連結部側の外周部は、前記回転防止溝の不形成部としたシールドケース。
【請求項2】
コネクタには丸孔に挿入された挿入部を有し、前記挿入部には、回転防止溝に対応して設けられた第1のかしめ部と、前記回転防止溝の不形成部に対応して設けられた第2のかしめ部とを設けた請求項1に記載のシールドケース。
【請求項3】
コネクタと請求項1に記載のシールドケースとをかしめて固定するシールドケースの製造方法において、丸孔にコネクタの挿入部を嵌合し、回転防止溝に対応した位置と、前記の回転防止溝の不形成部とに対応した位置をかしめるシールドケースの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の枠体とコネクタとをかしめ固定する端子板装置の製造設備において、前記製造設備は、前記コネクタのネジ部が嵌合される穴を有した受け部と、この受け部に嵌合されたコネクタの挿入部を押圧すべく前記穴の上方に設けられたかしめパンチを備え、前記かしめパンチは、回転防止溝と回転防止溝の不形成部とに対応し、下方に向かってその径が小さくなる方向へ傾斜する押圧部を有したシールドケースの製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−108020(P2006−108020A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295928(P2004−295928)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】