説明

シールリングの癖付け方法、シールリングの癖付け装置及びシールリング

【課題】癖付けの処理効率及び処理精度が向上されたシールリングの癖付け方法、シールリングの癖付け装置及びシールリングを提供する。
【解決手段】合口部が開いた状態のシールリング1を、外周治具101に設けられた孔部101aの内周面と該孔部101a内に配置された内周治具102の外周面との間に形成された環状隙間に、合口部が略閉じた状態で嵌め入れ、次に、環状隙間において外周治具101および内周治具102がシールリング1の樹脂材のガラス転移点よりも高い温度に維持された加熱領域を通過させ、最後に、環状隙間において外周治具101および内周治具102がシールリング1の樹脂材のガラス転移点よりも低い温度に維持された冷却領域を通過させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円周上の一箇所において互いに接合可能に設けられた合口端部が互いに離れた状態で成形される合成樹脂製のシールリングを、合口端部が所定の隙間を有して対向する状態となるように癖付けする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製のシールリングは、流体密封や油圧保持等を目的として油圧機器をはじめ種々の機器に用いられている。このようなシールリングは、軸の外周面に形成された環状溝に装着され、軸外周面と、軸が挿入される軸孔やシリンダの内周面との間の環状隙間を密封するように構成されている。
【0003】
合成樹脂製のシールリングは、装着性を高めるために円周上の一箇所に合口部を設けた形状が一般的である。合口部の形状には、いわゆる、ストレートカットやバイアスカット、ステップカット等、種々のものが知られており、シールリングは合口部が開いた状態(合口端部が互いに離れた状態)で成形される。
【0004】
合口部が開いた状態において、シールリングの外径は装着箇所の内径よりも大きくなっている。そのため、装着箇所への組込み性を良くし、また、装着姿勢を安定させて十分なシール機能を発揮させるために、自然状態において合口部が閉じた状態(合口端部が互いに略接合した状態)となるように癖付け(縮径変形)が行われる。
【0005】
シールリングの癖付けの方法としては種々の方法が知られており(特許文献1〜5参照)、例えば、円筒形の治具に複数個の製品を縮径させて組み込み、治具全体を電気炉等に投入して加熱する方法が知られている。しかし、この方法には以下のような課題がある。
【0006】
まず、治具全体を満遍なく均一な温度に加熱する必要があり、昇温に時間がかかる。したがって、加熱時間を短くしようとすると、治具の部位間で温度差が生じてしまう場合があり、癖付け後の形状における寸法精度が製品ごとに異なることになってしまう。
【0007】
また、この手法は、基本的にバッチ方式であり、1回の作業で処理可能な部材数が決まってしまい、大量生産を図るためには作業効率において限界がある。したがって、処理可能な部材数を増やすためには、治具を大きくしたり、治具の数を増やすことが考えられるが、治具を大きくするには電気炉等も大型化する必要があり、また、治具の数を増やした分だけ治具の投入・取出しの作業が増えることになる。
【0008】
さらに、合口部の形状がステップカットや特殊ステップカットのように合口端部間の接合面を多くしたタイプの場合には、加熱による合口端部同士の固着が発生しやすいため、精度の高い処理が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3894752号公報
【特許文献2】実公平2−35088号公報
【特許文献3】特開2002−372153号公報
【特許文献4】特開2002-89718号公報
【特許文献5】特許第2729886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、癖付けの処理効率及び処理精度が向上されたシールリングの癖付け方法、シールリングの癖付け装置及びシールリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明におけるシールリングの癖付け方法は、
円周上の一箇所において互いに接合可能に設けられた合口端部が互いに離れた状態で成形される合成樹脂製のシールリングを、前記合口端部が所定の隙間を有して対向する状態となるように癖付けるシールリングの癖付け方法であって、
外周治具に設けられた孔部の内周面と該孔部内に配置された内周治具の外周面との間に形成された環状隙間に、シールリングを前記合口端部が略所定の隙間を有して対向した状態で嵌め入れる第1工程と、
前記シールリングに、前記環状隙間において前記外周治具および前記内周治具が前記シールリングの樹脂材のガラス転移点よりも高い一定温度に維持されている加熱領域を通過させる第2工程と、
前記加熱領域を通過したシールリングに、前記環状隙間において前記外周治具および前記内周治具が前記シールリングの樹脂材のガラス転移点よりも低い一定温度に維持されている冷却領域を通過させる第3工程と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明におけるシールリングの癖付け装置は、
円周上の一箇所において互いに接合可能に設けられた合口端部が互いに離れた状態で成形される合成樹脂製のシールリングを、前記合口端部が所定の隙間を有して対向する状態となるように癖付けるシールリングの癖付け装置であって、
孔部を備えた外周治具と、該孔部内に配置され孔部内周面との間に環状隙間を形成する内周治具と、を備え、
前記環状隙間には、前記外周治具および前記内周治具が前記シールリングの樹脂材のガラス転移点よりも高い一定温度に維持されている加熱領域と、前記シールリングの樹脂材のガラス転移点よりも低い一定温度に維持されている冷却領域と、が形成されており、
前記シールリングは、前記合口端部が略所定の隙間を有して対向した状態で前記環状隙間に嵌め入れられ、前記加熱領域及び前記冷却領域を順次通過することにより、前記癖付けがなされることを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するために、本発明におけるシールリングは、
円周上の一箇所において互いに接合可能に設けられた合口端部が互いに離れた状態で成形された後に、前記合口端部が所定の隙間を有して対向する状態となるように癖付けされる合成樹脂製のシールリングであって、
前記成形の後、外周治具に設けられた孔部の内周面と該孔部内に配置された内周治具の外周面との間に形成された環状隙間に、前記合口端部が略所定の隙間を有して対向した状態で嵌め入れられ、
前記環状隙間において前記外周治具および前記内周治具がシールリングの樹脂材のガラス転移点よりも高い一定温度に維持されている加熱領域を通過し、
該加熱領域を通過した後、前記環状隙間において前記外周治具および前記内周治具がシールリングの樹脂材のガラス転移点よりも低い一定温度に維持されている冷却領域を通過することにより前記癖付けがなされることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、外周治具と内周治具との間の環状隙間にシールリングを嵌め入れ、環状隙間において所定の温度に維持された2つの領域を通過させることで、シールリングの
癖付けを行うことができる。すなわち、一定の温度環境でシールリングが加熱・冷却されることになり、製品ごとに熱履歴が異なってしまうことが抑制される。したがって、製品ごとのシールリング形状のバラツキが抑制され、製品の寸法精度の向上を図ることができる。
【0015】
前記内周治具の外径は、前記内周治具の外周面と、前記合口端部が所定の隙間を有して対向した状態のシールリングと、の間に隙間が形成されるように設定されている。
【0016】
合口端部が互いに離れた拡径状態で成形されたシールリングは、合口端部が所定の隙間を有して対向した状態、すなわち、成形直後の形状に対して縮径された状態で環状隙間に嵌め入れられる。そうすると、シールリングは、再び元の拡径状態(成形直後の形状)に復元しようとすることで、外周面が外周治具の孔部内周面に接触する状態となる。
【0017】
環状隙間に嵌め入れられたシールリングは、外周治具の孔部内周面に接触した状態で加熱領域を通過させられる。このときシールリングはシールリングの樹脂材のガラス転移点よりも高い温度に加熱される。
【0018】
加熱領域から冷却領域に進入したシールリングは、まず、外周治具の孔部内周面に接触している外周面側が急速に冷却される。このとき、シールリングの内周面側は、内周治具外周面との間に設けられた隙間により、高温が保たれている。外周面側がシールリングの樹脂材のガラス転移点以下に冷却されたシールリングは、外周面側の密度が内周面側の密度に対して相対的に低下して曲率が大きくなる、すなわち、径が小さくなる。これにより、シールリングの内周面が内周治具の外周面に接近する。内周治具に接近する直前まで高温で維持されていたシールリングの内周面側は、内周治具に接近することで急速に冷却されて密度が低下する。これにより、シールリングの内周面側と外周面側との密度差が小さくなり、シールリングの径が若干大きくなる。シールリングはこの状態で完全に冷却され、癖付けは終了する。
【0019】
シールリングの合口端部は、最初の加熱工程では、外周面が外周治具の孔部内周面に接触していることにより、所定の温度に維持される。そして、冷却工程において、シールリングの外周面側が冷却されてシールリングの径が小さくなる過程では、合口端部間の隙間が狭くなり、場合によっては合口端部同士が接触した状態となる。しかし、その後、シールリングの内周面側が冷却されてシールリングの径が再び大きくなることにより、合口端部間の隙間は再度拡がることになる。この作用により、合口端部同士が接触したまま完全に冷却されてしまうことが抑制され、合口端部同士が固着してしまうことが抑制される。
【0020】
また、癖付けの最終過程においてシールリングが内周治具と接触しないため、環状隙間からのシールリングの取出しを比較的容易に行うことができる。
【0021】
前記環状隙間は、軸方向両側で開口するとともに、軸方向一方側に前記加熱領域が設けられ、軸方向他方側に前記冷却領域が設けられており、
前記シールリングは、前記環状隙間の軸方向一方側の開口部から嵌め入れられ、軸方向他方側の開口部から排出される。
【0022】
また、複数の前記シールリングを連続的に前記環状隙間に嵌め入れ、先行するシールリングが後続のシールリングに押されることにより、複数の前記シールリングが前記環状隙間内を移動する。
【0023】
このように、連続的にシールリングを環状隙間に嵌め入れていくことにより、複数のシールリングの癖付け作業を連続的に行うことが可能となる。したがって、作業効率の向上
が図られるとともに作業の自動化を図ることが可能となり、大量生産に寄与することができる。
【0024】
また、全てのシールリングが同じ温度環境で加熱・冷却されることになるので、熱履歴が製品ごとに異なってしまうことが抑制される。したがって、癖付け後のシールリング形状の製品ごとのバラツキが抑制され、寸法精度の向上を図ることができる。
【0025】
前記環状隙間は、軸に垂直な断面が略楕円状であり、
前記シールリングは、前記合口端部の位置が、前記環状隙間の楕円断面における短軸の一方の端点の位置と略一致するように、前記環状隙間に嵌め入れられるようにするとよい。
【0026】
シールリングの射出成形において、合口端部近傍をそれぞれゲートとして2箇所から樹脂材を射出する場合、両合口端部の間の中間の部位、すなわち、シールリングにおいて合口端部に対向する部位が樹脂材の合流部となる。そのため、成形後に合口端部を互いに接近させるようにシールリングを変形させると、合口端部に対向する部位に歪が残留することになる。この状態でシールリングをガラス転移点以上に加熱し略真円状に熱固定しても、シールリングは、癖付け装置から排出されると、残留応力によって合口端部を長軸の一方の端点として楕円状に変形してしまう。
【0027】
そこで本発明では、環状隙間を楕円状とし、シールリングを合口端部とこれに対向する部位とを結ぶ線が短軸と略一致する楕円形状となるように癖付けするようにした。これにより、シールリングは、残留応力によって合口端部とこれに対向する部位とが互いに離れるように(短軸が延びるように)変形を生じることで、癖付け後の形状を略真円状とすることができる。
【0028】
したがって、癖付け後のシールリングの真円度を向上させることができ、また、真円度が向上されることでシールリングの組付け性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明により、癖付けの処理効率及び処理精度が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、実施例1に係るシールリングの使用状態を説明する模式的半断面図である。
【図2】図2は、癖付け前のシールリングの構成を説明する模式図である。
【図3】図3は、癖付け後のシールリングの構成を説明する模式図である。
【図4】図4は、癖付け装置の構成を説明する模式図である。
【図5】図5は、図4の癖付け装置のシールリング投入部の構成を説明する模式図である。
【図6】図6は、図4の癖付け装置の押し込み治具の構成を説明する模式図である。
【図7】図7は、図4の癖付け装置のシールリング排出部の構成を説明する模式図である。
【図8】図8は、実施例1に係るシールリングの癖付け後の形状を説明する模式図である。
【図9】図9は、実施例2に係る癖付け装置の構成を説明する模式図である。
【図10】図10は、癖付け後のシールリングの形状の評価実験を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0032】
(実施例1)
図1〜図6を参照して、本発明の実施例1に係るシールリングの癖付け方法、シールリングの癖付け装置及びシールリングについて説明する。図1は、シールリングの使用状態を説明する模式的半断面図である。図2は、成形直後、すなわち、癖付けされる前のシールリングの構成を説明する模式図であり、(a)は軸方向から見た図、(b)は(a)のA矢視図をそれぞれ示している。図3は、癖付けされた後のシールリングの構成を説明する模式図であり、(a)は軸方向から見た図、(b)は(a)のB矢視図をそれぞれ示している。図4は、癖付け装置の構成を説明する模式図である。図5は、図4の癖付け装置のシールリング投入部の構成を説明する模式図である。図6は、図4の癖付け装置の押し込み治具の構成を説明する模式図であり、(a)は押し込み治具の正面図、(b)は押し込み治具の下面図をそれぞれ示している。図7は、図4の癖付け装置のシールリング排出部の構成を説明する模式図である。
【0033】
<シールリングの構成>
図1に示すように、本実施例に係るシールリング1は、軸200とハウジング300の軸孔301との間の環状隙間400を密封するためのものであり、流体密封や油圧保持等を目的として油圧機器をはじめ種々の機器に用いられる。シールリング1は、軸200の外周面に設けられた環状溝201に装着され、軸方向一方側から作用する圧力Pによって軸方向他方側に押し付けられ、軸孔301の内周面に密着するとともに環状溝201の側壁面202に密着する。これにより環状隙間400が密封される。
【0034】
図2及び図3に示すように、シールリング1は、合成樹脂製の環状部材であり、互いに接合可能な合口端部10a、10bによって構成される合口部10が円周上の一箇所に設けられている。この合口部10は、ゴムリングのように容易に弾性変形させることが困難な樹脂製のシールリング1を環状溝201に装着し易くさせるとともに、温度変化等によってシールリング1の周長が変化した場合や軸200とハウジング300との間に偏心等が生じた場合等において、合口端部10a、10bが互いに接離等して接合状態を変化させることによってそのような周長変化や偏心等を吸収し、シールリングの装着状態を安定させ、シール面の密着状態を維持できるようにするために設けられている。
【0035】
合口部10としては、いわゆる、ストレートカットやバイアスカット、ステップカット等、種々のものを採用できるが、本実施例では、各合口端部の凸部に対して軸に垂直な面と軸に平行な面の2種類の面でそれぞれ接触するように構成された特殊ステップカット形状を採用している。
【0036】
また、本実施例に係るシールリング1は、環状溝201の側壁面202との摺動面積を低減するために、側面の一部を凹ませた構成となっている。
【0037】
ここで、シールリング1の材料としては、耐熱性樹脂と充填材からなる樹脂組成物等が挙げられる。また、耐熱性樹脂としては、耐熱性、耐燃性、耐薬品性に優れ、優れた機械的性質を示す結晶性樹脂が好ましく、例えば、ポリシアノアリールエーテル系樹脂(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)等の芳香族ポリエーテルケトン樹脂、芳香族系熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド4−6系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)系樹脂等が挙げられる。また、充填材は、材料の機械的強度の向上、耐摩耗性の向上、低摩耗特性の付与等を目的に配合され
るものであり、その種類は特に限定されない。
【0038】
上述のように構成されたシールリング1は、射出成形によって基本となる形状が成形される。射出成形後のシールリング1は、図2に示すように合口部10が開いた状態、すなわち、合口端部10a、10bが互いに離れた状態となっている。この状態におけるシールリング1の径は、製品として目指すべき仕様における径よりも大きい拡径状態となっている。
【0039】
したがって、シールリング1は、射出成形によって成形された後、図3に示すように合口部10が閉じた状態、すなわち、合口端部10a、10bが互いに略接合した状態となるように癖付け(縮径変形)が行われる。合口部10が閉じた状態において、合口端部10a、10bとの間に所定の隙間が形成されているのが好ましく、このときのシールリング1の径が、製品として目指すべき仕様における外径となる。ここで、所定の隙間とは、製品として目指すべき仕様において許容されるあるいは好ましい隙間であり、使用時におけるシール性や組付け性、周長変化等に対する追随性等の観点から適宜設定されるものである。
【0040】
<癖付け装置の構成>
図4に示すように、本実施例に係るシールリングの癖付け装置100は、概略、癖付けのための加熱・冷却処理を行う外周治具101及び内周治具102と、射出成形後のシールリング1を外周治具101と内周治具102との環状隙間に押し込むための押し込み治具103と、癖付けを終えたシールリング1を排出する排出部104と、を備えている。
【0041】
外周治具101は、所定の径に設定された内周面を有する孔部101aを備えている。内周治具102は、外周治具101の孔部101a内径よりも小径の外周面を有している。外周治具101と内周治具102は、それぞれ全体形状が略円筒状に構成されており、孔部101aの内周面と内周治具102の外周面とが互いに対向するように同軸に配置され、孔部101aの内周面と内周治具102の外周面との間に環状隙間が形成されている。シールリング1はこの環状隙間を通過することにより癖付けが行われる。
【0042】
ここで、外周治具101の孔部101aの径及び内周治具102の外径は、シールリングの仕様等に応じて適宜設定されるものであり、例えば、シールリング1が加熱により熱膨張する際に、合口端部10a、10bが突き当たることで異常変形を生じず、かつ、シールリング1が縮径状態となった際に、合口端部10a、10bに所望の隙間が確保されるような範囲で設定することができる。また、孔部101a内周面及び内周治具102外周面は、それぞれ略真円状の断面となっており、環状隙間は、略円筒状に形成されている。
【0043】
環状隙間の上方側はシールリング1の投入口となっており、外周治具101の上方側の端部における孔部101aの開口部にはテーパ面101bが形成されている。環状隙間の下方側はシールリング1の排出口となっており、癖付けされたシールリング1の落下を防止するためのクランプ101cが設けられている。
【0044】
シールリング1の投入口に近い領域において、カートリッジヒータ105aと熱電対105bが外周治具101の外周面に設けられており、カートリッジヒータ106aと熱電対106bが内周治具102の内部に設けられている。この領域は、環状隙間においてシールリング1を加熱する加熱領域を形成する。
【0045】
加熱領域の下方側、すなわち、シールリング1の投入口から遠い領域(排出口に近い領域)において、冷却ジャケット107が外周治具101の外周面に設けられており、内周
治具102にはシールリング1の排出口側に開口する空洞部102aが設けられている。この領域は、環状隙間においてシールリング1を冷却する冷却領域を形成する。
【0046】
押し込み治具103は、環状隙間の上方において上下に昇降可能に配置されている。射出成形直後のシールリング1の径は環状隙間の径より大きいため、投入口に投入されたシールリング1は、外周治具101のテーパ面101bに引っかかった状態となる。シールリング1は、下降する押し込み治具103によってテーパ面101bにそって徐々に縮径しながら環状隙間に向かって押し込められることになる。
【0047】
本実施例における押し込み治具103は、図6に示すようなコレット形状を有し、比較的変形し易い樹脂(例えば、ナイロン)で製作されている。押し込み治具103は、切り込みがあることによりテーパ面101bに沿ってコレット部分が内径側に変形し、シールリング1を投入口のストレート部まで押し込むことができるように構成されている。
【0048】
図4及び図7に示すように、排出部104は、クランプ101cと、排出台108と、製品受けパイプ109と、芯棒110と、プッシャー111と、を備えている。排出台108は、環状隙間の下方に配置されており、上面がシールリング1の排出面となっている。製品受けパイプ109は、環状隙間の下方において上下に昇降可能に配置されており、環状隙間から排出されたシールリング1を下方から受け止める。芯棒110は、内周治具102の下方において上下に昇降可能に配置されており、内周治具102の空洞部102aにエアを送り込むエア流路を有している。プッシャー111は、排出台108の排出面に沿って進退可能に構成されており、製品受けパイプ109に支えられて排出高さまで下降したシールリング1を排出面上に押し出すとともに、シールリング1が排出台108のわきに配置された計数棒112の上方に落下するようにシールリング1を排出面から押し出す。プッシャー111によって排出面から押し出されたシールリング1は、計数棒112に積み重なるようにして係合し回収される。
【0049】
排出部104における排出動作について説明する。まず、空洞部102aへのエアの送り込みが停止される。次に、製品受けパイプ109の上に積み上げられた複数のシールリング1のうち、最下のシールリングの1つ上のシールリングが、クランプ101cによってクランプされる。そして、最下のシールリング1を載せた製品受けパイプ109が、シールリング1を排出台108の排出面に排出可能な高さまで下降する。さらに、芯棒110が排出台108の排出面以下の高さまで下降する。最後に、プッシャー111がシールリング1を計数棒112まで押し出す。以上によりシールリング1の排出が完了する。
【0050】
<癖付け方法>
本実施例に係るシールリングの癖付け方法は、外周治具101と内周治具102との間の環状隙間に、環状隙間の一方側からシールリング1を嵌め入れ、環状隙間において所定の温度に維持された2つの領域を通過させ、環状隙間の他方側から排出することで癖付けを行う構成となっている。
【0051】
まず、シールリング1が押し込み治具103によって環状隙間に押し込まれる(第1工程)。この時点では合口端部が互いに離れた拡径状態がシールリング1の自然状態(外的な拘束を加えない状態)における形状となっているので、シールリング1は、目標外径と同径に設定された外周治具101の孔部101aの内周面に接触した状態で環状隙間に嵌る。シールリング1は連続的に幾つも環状隙間に押し込められ、後続のシールリング1が先行のシールリング1を押すことによって複数のシールリング1が連なって環状隙間内を進むように構成されている。
【0052】
環状隙間に嵌め入れられたシールリング1は、外周治具101の孔部101a内周面に
接触した状態で環状隙間の加熱領域を通過する(第2工程)。加熱領域では、外周治具101がカートリッジヒータ105aによって、内周治具102がカートリッジヒータ106aによって、それぞれシールリング1の樹脂材のガラス転移点よりも高い温度に加熱・維持されている。したがって、通過するシールリング1はシールリング1の樹脂材のガラス転移点よりも高い温度に加熱されることになる。ここで、加熱温度としては、材料がPEEK、外径が47mm、厚さが2mmのシールリング1の場合、例えば、180℃に設定される。
【0053】
加熱領域を通過したシールリング1は、次に冷却領域を通過する(第3工程)。環状隙間の冷却領域では、外周治具101が冷却ジャケット107によって、シールリングの樹脂材のガラス転移点よりも低い温度に冷却・維持されている。ここで、冷却温度としては、材料がPEEK、外径が47mm、厚さが2mmのシールリング1の場合、例えば、ガラス転位点143℃以下の25℃に設定される。内周治具102は空洞部102aに送り込まれるエアにて、加熱部よりも低い温度に設定される。
【0054】
冷却領域に侵入したシールリング1は、まず、外周治具101の孔部101a内周面に接触している外周面側が急速に冷却される。このとき、シールリング1の内周面側は、内周治具102との間に隙間があるため高温を保っている。外周面側がシールリング1の樹脂材のガラス転移点以下に冷却されたシールリング1は、外周面側の密度が内周面側の密度に対して相対的に低下して曲率が大きくなる、すなわち、径が小さくなる。これにより、シールリング1の内周面が内周治具102の外周面に接近する。
【0055】
内周治具102に接近する直前まで高温で維持されていたシールリング1の内周面側は、内周治具102に接近することで急速に冷却されて密度が低下する。これにより、シールリング1の内周面側と外周面側との密度差が小さくなり、シールリング1の径が若干大きくなる。シールリング1はこの状態で完全に冷却され、癖付けが終了する。
【0056】
ここで、加熱領域の距離が65mm、冷却領域の距離が100mmの癖付け装置に、材料がPEEK、外径が47mm、厚さが2mmの製品を投入して癖付け処理を行った場合の製品排出までの時間は約340秒となった。また、製品が投入後に所定の温度になるまでの時間は1〜2分であった。
【0057】
ここで、シールリング1の合口部10に着目すると、合口端部10a、10bは、最初の加熱工程では、シールリング1の外周面が外周治具101の孔部101a内周面に接触していることにより、外径が目標外径に維持され、所定の隙間を有して対向した状態となる。そして、冷却工程において、始めにシールリング1の外周面側が冷却されてシールリング1の径が小さくなる過程では合口端部10a、10bの間の隙間が狭くなり、場合によっては合口端部10a、10bが互いに接触した状態となる。しかしながら、その後、シールリング1の内周面側が冷却されてシールリング1の径が再び大きくなると、合口端部10a、10bの間の隙間も再度拡がることになる。
【0058】
また、シールリングの連続投入においては、隣接するシールリング間において合口端部同士の干渉等が生じるのを防止するため、隣接するシールリングの合口部10の位置が互いにずれるように、例えば、合口部10とこれに対向する部位との位置が交互に入れ替わるように、連続的に嵌め入れられる。
【0059】
<本実施例の優れた点>
本実施例によれば、所定の温度に維持された2つの領域を有する外周治具と内周治具との間の環状隙間に嵌め入れ、環状隙間の一方側から他方側に通過させるだけでシールリングの癖付け行うことができる。これにより、連続的にシールリングを環状隙間に嵌め入れ
ていくことにより、複数のシールリングの癖付け作業を連続的に行うことが可能となる。したがって、作業効率の向上が図られるとともに、作業の自動化を図ることが可能となり、大量生産に寄与することができる。
【0060】
また、本実施例によれば、全てのシールリングが同じ温度環境で加熱・冷却されることになるので、熱履歴が製品ごとに異なってしまうことが抑制され、癖付け後のシールリング形状の製品ごとのバラツキが抑制される。したがって、シールリングの寸法精度の向上を図ることができる。
【0061】
また、本実施例によれば、合口端部同士が接触したまま完全に冷却されてしまうことが抑制され、合口端部同士が固着してしまうことが抑制される。
【0062】
また、本実施例によれば、癖付けの最終過程においてシールリングが内周治具と接触しないため、環状隙間からのシールリングの取出しを比較的容易に行うことができる。したがって、作業性の向上を図ることができる。
【0063】
すなわち、本実施例によれば、シールリング癖付けの処理効率及び処理精度が向上される。
【0064】
(実施例2)
図8〜図10を参照して、本発明の実施例2に係るシールリングの癖付け方法、シールリングの癖付け装置及びシールリングについて説明する。図8は、実施例1に係る癖付け後のシールリングの形状を説明する模式図である。図9は、実施例2に係る癖付け装置の構成を説明する模式図である。図10は、癖付け後のシールリングの形状の評価実験を説明する模式図であり、(a)は外径測定箇所を説明する模式図であり、(b)は実験結果を説明する図表である。なお、ここでは実施例1と異なる点についてのみ説明し、共通する構成等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
本実施例は、環状隙間の軸に垂直な断面形状が略楕円状となるように、外周治具101の孔部101a内周面が楕円状に構成され、内周治具102外周面が楕円状もしくは真円状に構成されている点で実施例1と異なっている。
【0066】
シールリング1の射出成形において、合口端部10a、10b近傍をそれぞれゲートとして2箇所から樹脂材を射出する場合、合口部10に対向する部位11が樹脂材の合流部となる。そのため、成形後に合口部10を閉じるように変形させると、部位11に歪が残留することになる。この状態でシールリング1をガラス転移点以上に加熱し略真円状に熱固定しても、シールリング1は、癖付け装置から排出されると、残留応力によって部位11を基点に合口部10を長軸Lの端点とする楕円状に変形してしまう(図8参照)。このような楕円形状に癖付けされたシールリング1は、装着の際に合口部10とこれに対向する部位11においてかみ込み等を生じるおそれがある。
【0067】
図9に示すように、本実施例では、外周治具101の孔部101a内周面及び内周治具102外周面の軸に垂直な断面形状を略楕円形状とし、環状隙間の軸に垂直な断面形状が、略楕円状となるように構成されている。したがって、本実施例では、シールリング1が略楕円状の環状隙間を移動して癖付けされる。また、シールリング1は、合口端部10a、10bの位置が、環状隙間の楕円断面における短軸Sの一方の端点の位置と略一致するように(合口部10とこれに対向する部位11とを結ぶ線が楕円の短軸Sと略一致するように)、環状隙間に嵌め入れられる。なお、内周治具102外周面については、軸に垂直な断面形状が真円状であってもよい。
【0068】
また、シールリングの連続投入においては、隣接するシールリング間において合口端部の干渉等が生じるのを防止するため、合口部10と部位11との位置を交互に入れ替えて、すなわち、一方のシールリング1の合口部10と他方のシールリング1の部位11とが隣接するようにして、連続的に嵌め入れられる。
【0069】
略楕円状の環状隙間を通過して加熱・冷却処理を施されたシールリング1は、環状隙間から排出されると、楕円の短軸S上に位置する合口部10と部位11とが部位11における残留応力によって互いに離れるような(短軸Sが延びるような)変形を生じる。これにより、シールリング1を略真円状に癖付けすることができる。
【0070】
なお、外周治具101の孔部101a内周面及び内周治具102外周面の各長軸L、短軸Sの寸法は、シールリング1の材料や寸法、排出後の変形度合等に応じて適宜設定されるものである。
【0071】
ここで、癖付け後のシールリングの真円度を、長軸が49.837mm、短軸が49.786mmの楕円状の外周治具を用いて癖付け処理を行った場合と、φ49.82mmの真円の外周治具を用いて癖付け処理を行った場合とで比較した実験を行った。具体的には、真円タイプの癖付け装置と楕円タイプの癖付け装置に対してそれぞれ10個のサンプルを癖付け処理し、癖付け後の各サンプルのフリー外径を記録した。ここで、フリー外径とは、外的な拘束を加えない状態におけるシールリングの外径である。また、1個のサンプルに対してフリー外径における図10(a)に示すa〜dの4箇所のうちの最大値(MAX)、最小値(MIN)と、a〜dの4箇所の平均値(AVE)を記録した。図10(b)の表には、それぞれの値について10個のサンプルにおける平均値及び最大値をまとめてある。
【0072】
図10(b)の表に示すように、真円タイプの癖付け装置の場合には、癖付け後のシールリングの外径にバラツキが大きく(MAX49.925、MIN49.789)、また、外径の最大値の平均(AVE49.852)と平均値の平均(AVE49.736)との差が大きい。すなわち、癖付け後のシールリングの形状が楕円状になっていることがわかる。
【0073】
一方、楕円タイプの癖付け装置の場合には、癖付け後のシールリングの外径のバラツキが小さく(MAX49.760、MIN49.708)、また、外径の最大値の平均(AVE49.737)と平均値の平均(AVE49.684)との差が小さい。すなわち、癖付け後のシールリングの形状が真円に近いことがわかる。
【0074】
このように、癖付け装置を楕円タイプとし、合口部が短軸の端点に位置するように癖付けを行うことで、シールリングの外径における最大値と平均値との差が小さくなり、真円度が向上されることが確認できた。
【0075】
<本実施例の優れた点>
本実施例によれば、癖付け後のシールリングの真円度の向上を図ることができる。また、真円度が向上されることでシールリングの組付け性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0076】
1 シールリング
10 合口部
10a、10b 合口端部
100 癖付け装置
101 外周治具
101a 孔部
101b テーパ面
101c クランプ
102 内周治具
102a 空洞部
103 押し込み治具
104 排出部
105a カートリッジヒータ
105b 熱電対
106a カートリッジヒータ
106b 熱電対
107 冷却ジャケット
108 排出台
109 製品受けパイプ
110 芯棒
111 プッシャー
112 計数棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周上の一箇所において互いに接合可能に設けられた合口端部が互いに離れた状態で成形される合成樹脂製のシールリングを、前記合口端部が所定の隙間を有して対向する状態となるように癖付けるシールリングの癖付け方法であって、
外周治具に設けられた孔部の内周面と該孔部内に配置された内周治具の外周面との間に形成された環状隙間に、シールリングを前記合口端部が略所定の隙間を有して対向した状態で嵌め入れる第1工程と、
前記シールリングに、前記環状隙間において前記外周治具および前記内周治具が前記シールリングの樹脂材のガラス転移点よりも高い一定温度に維持されている加熱領域を通過させる第2工程と、
前記加熱領域を通過したシールリングに、前記環状隙間において前記外周治具および前記内周治具が前記シールリングの樹脂材のガラス転移点よりも低い一定温度に維持されている冷却領域を通過させる第3工程と、
を備えることを特徴とするシールリングの癖付け方法。
【請求項2】
前記内周治具の外径は、前記内周治具の外周面と、前記合口端部が所定の隙間を有して対向した状態のシールリングと、の間に隙間が形成されるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のシールリングの癖付け方法。
【請求項3】
前記環状隙間は、軸方向両側で開口するとともに、軸方向一方側に前記加熱領域が設けられ、軸方向他方側に前記冷却領域が設けられており、
前記シールリングを、前記環状隙間の軸方向一方側の開口部から嵌め入れ、軸方向他方側の開口部から排出することを特徴とする請求項1または2に記載のシールリングの癖付け方法。
【請求項4】
複数の前記シールリングを連続的に前記環状隙間に嵌め入れ、先行するシールリングを後続のシールリングで押すことにより、複数の前記シールリングを前記環状隙間内で移動させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシールリングの癖付け方法。
【請求項5】
前記環状隙間は、軸に垂直な断面が略楕円状であり、
前記第1工程において、前記シールリングの合口端部の位置が前記環状隙間の楕円断面における短軸の一方の端点の位置と略一致するように、前記シールリングを前記環状隙間に嵌め入れることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のシールリングの癖付け方法。
【請求項6】
円周上の一箇所において互いに接合可能に設けられた合口端部が互いに離れた状態で成形される合成樹脂製のシールリングを、前記合口端部が所定の隙間を有して対向する状態となるように癖付けるシールリングの癖付け装置であって、
孔部を備えた外周治具と、該孔部内に配置され孔部内周面との間に環状隙間を形成する内周治具と、を備え、
前記環状隙間には、前記外周治具および前記内周治具が前記シールリングの樹脂材のガラス転移点よりも高い一定温度に維持されている加熱領域と、前記シールリングの樹脂材のガラス転移点よりも低い一定温度に維持されている冷却領域と、が形成されており、
前記シールリングは、前記合口端部が略所定の隙間を有して対向した状態で前記環状隙間に嵌め入れられ、前記加熱領域及び前記冷却領域を順次通過することにより、前記癖付けがなされることを特徴とするシールリングの癖付け装置。
【請求項7】
前記内周治具の外径は、前記内周治具の外周面と、前記合口端部が所定の隙間を有して対向した状態のシールリングと、の間に隙間が形成されるように設定されていることを特
徴とする請求項6に記載のシールリングの癖付け装置。
【請求項8】
前記環状隙間は、軸方向両側で開口するとともに、軸方向一方側に前記加熱領域が設けられ、軸方向他方側に前記冷却領域が設けられており、
前記シールリングは、前記環状隙間の軸方向一方側の開口部から嵌め入れられ、軸方向他方側の開口部から排出されることを特徴とする請求項6または7に記載のシールリングの癖付け装置。
【請求項9】
複数の前記シールリングが連続的に前記環状隙間に嵌め入れられ、先行するシールリングが後続のシールリングに押されることにより、複数の前記シールリングが前記環状隙間内を移動することを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載のシールリングの癖付け装置。
【請求項10】
前記環状隙間は、軸に垂直な断面が略楕円状であり、
前記シールリングは、前記合口端部の位置が前記環状隙間の楕円断面における短軸の一方の端点の位置と略一致するように、前記環状隙間に嵌め入れられることを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載のシールリングの癖付け装置。
【請求項11】
円周上の一箇所において互いに接合可能に設けられた合口端部が互いに離れた状態で成形された後に、前記合口端部が所定の隙間を有して対向する状態となるように癖付けされる合成樹脂製のシールリングであって、
前記成形の後、外周治具に設けられた孔部の内周面と該孔部内に配置された内周治具の外周面との間に形成された環状隙間に、前記合口端部が略所定の隙間を有して対向した状態で嵌め入れられ、
前記環状隙間において前記外周治具および前記内周治具がシールリングの樹脂材のガラス転移点よりも高い一定温度に維持されている加熱領域を通過し、
該加熱領域を通過した後、前記環状隙間において前記外周治具および前記内周治具がシールリングの樹脂材のガラス転移点よりも低い一定温度に維持されている冷却領域を通過することにより前記癖付けがなされることを特徴とするシールリング。
【請求項12】
前記内周治具の外径は、前記内周治具の外周面と、前記合口端部が所定の隙間を有して対向した状態のシールリングと、の間に隙間が形成されるように設定されていることを特徴とする請求項11に記載のシールリング。
【請求項13】
前記環状隙間は、軸方向両側で開口するとともに、軸方向一方側に前記加熱領域が設けられ、軸方向他方側に前記冷却領域が設けられており、
前記環状隙間の軸方向一方側の開口部から嵌め入れられ、軸方向他方側の開口部から排出されることを特徴とする請求項11または12に記載のシールリング。
【請求項14】
後続のシールリングに押されることで、先行するシールリングを押しながら前記環状隙間内を移動することを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載のシールリング。
【請求項15】
前記環状隙間は、軸に垂直な断面が略楕円状であり、
前記合口端部の位置が前記環状隙間の楕円断面における短軸の一方の端点と略一致するように、前記環状隙間に嵌め入れられることを特徴とする請求項11から14のいずれかに記載のシールリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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