説明

シール材の装着工具

【課題】 より効率向上でき得るシール材装着工具を提供する。
【解決手段】 本発明は、装着されるシール材の幅よりも狭い挿入口を有す抜け防止効果を持った溝に対し、シール材の断面形状、材質、硬度、粘度を問わず、当該シール材を容易に装着させる、シール材装着工具にであって、工具先端に熱可塑性樹脂から成る、平滑な表面を有するシール材保護用樹脂を備え、当該シール材保護用樹脂は、傷ついたり、磨耗した際においても容易に脱着交換が可能なシール材装着工具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着されるシール材の幅よりも狭い挿入口を有す抜け防止効果を持った溝に対し、シール材の断面形状、材質、硬度、粘度を問わず、当該シール材を容易に装着させる、シール材装着工具に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置など、腐食性の高い気体、液体、若しくは高温部をシールする際、その環境に応じ、JIS規格:4種Dフッ素ゴム、またはパーフロロエラストマー等のエラストマーシール材が用いられている。当該シール材は装置大型化に伴い大口径化、大線径化、耐久性向上のため高硬度化される傾向にある。また、シール材の装着部位における、捩れ、歪み、遊動防止や脱落防止のため、シール材断面形状、及び装着部位形状にも工夫が見られ、手作業では装着が困難、かつ非常に作業効率が悪い状況にある。
【0003】
本発明のシール材装着工具は、プライヤー状の形態を成している。プライヤーとは本来、対象物を滑らすことなく鋏持するものであって、鋏持した際には対象物に多少の傷が生じることもあるが、シール材にとってその傷は致命的である。市場には先端に保護樹脂を備えたプライヤーが存在する。しかし、基本概念は滑らさずに掴むというものであり、その意味において、本発明と大きく異なる。そのため、先端に保護樹脂を備えた既存のプライヤーを本用途に用いることは出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−129766
【特許文献2】実開平02−070966
【特許文献3】実開平01−030166
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シール材はエラストマーであり、伸び率が100%以上の弾性体である。装着されるシール材の幅よりも狭い挿入口を有す抜け防止効果を持った溝に対しシール材を装着する際も、この弾性故に装着が可能であるが、シール材を変形させながら装着する必要があり、作業効率が悪い主要因である。本発明は、シール材装着作業をより効率的に行うためのシール材装着工具を提供することを目的とする。
【0006】
装着されるシール材の幅よりも狭い挿入口を有す抜け防止効果を持った溝に対し、変形させられながら装着されたシール材は、適切に装着されなければ、伸び、捩れ、歪み等の外的応力が残存した状態で保持され、シール材寿命低下の最大要因となっている。
【0007】
シール材を装着する際に作業効率向上を求め、既存の工具類、例えばドライバーの柄や、ヘラの類を用いた場合、シール材硬度が高い場合には、装着されるシール材の幅よりも狭い挿入口を有す抜け防止効果を持った溝に対し、挿入される前にシール材が破損する事例が見受けられる。また、破損までいかずとも表面に痕や傷が生じ、結果として使用不可となる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシール材装着工具は、工具先端に自己潤滑性を有する樹脂から成る、平滑な表面を有するシール材保護用樹脂を備え、当該シール材保護用樹脂は、傷ついたり、磨耗した際においても容易に脱着交換が可能である。
【0009】
本発明のシール材装着工具は、シール材を鋏持しない。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシール材装着工具は、装着されるシール材の幅よりも狭い挿入口を有す抜け防止効果を持った溝に対し、シール材をその断面形状、材質、硬度、粘度を問わず、容易に装着することができる。
【0011】
本発明のシール材装着工具は、工具先端に自己潤滑性を有する樹脂から成るシール材保護樹脂を備え、シール材装着の際にシール材に傷をつけることが無い。
【0012】
本発明のシール材装着工具は、シール材を左右より挟み込む力、当該シール材を装着する部位に向かう力の三方向の力を同時に付与することで、一工程でのシール材装着が可能であり、且つ外的応力を発生させない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好適な実施例を示す全体図
【図2】実施例の作用面を示す図
【図3】本発明の実施例の使用状態を示す図
【図4】保護部材の形状を示す断面図
【図5】好適なシール材を示す断面図
【図6】実施例の作用面を示す図2
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、同シール材装着工具はプライヤー状の工具をベースとし、工具先端顎部にはシール材保護用樹脂を備えている。
【0015】
図1に示す、工具先端顎部のシール材保護用樹脂は、ベースのプライヤー状工具の顎の先端に取り付けられており、工具顎の動きと完全一致して動く。プライヤー状工具を完全に閉じた際には、左右の顎部に取り付けられたシール保護用樹脂は密着する。
【0016】
図2に示す通り、シール材装着工具で挟むことにより、当該シール材に対し三方向の力を同時に付与することが出来る。そのうちBの力はAの力を受けたシール材保護用樹脂に与えられた迎角、及び当該樹脂表面の低摩擦により生じる合力である。
【0017】
シール材保護用樹脂は図2のBの力を生み出す関係上、及びシール材表面への傷を防止する点からも、丹念なR加工と平滑さが求められる。図4に示す保護樹脂の素材としては、自己潤滑性を有する樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、MCナイロン、超高分子ポリエチレン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイドが有効である。
【0018】
シール材装着部位は多くの場合、シール材の抜け防止構造を有しており、当該シール材よりも狭い開口幅を持っている。そのため、手作業でのシール材装着における作業効率低下の最大要因となっている。同シール材装着工具は、シール材の幅を狭めながら装着することができるため、作業効率の大幅な向上が期待できる。
【0019】
シール材には図5に示すとおり、O型、D型、角型、鳩尾型等、様々な形状が存在する。同シール材装着工具はこれらシール材断面形状、材質、硬度、粘度を問わず使用できる。
【0020】
シール材寿命低下の原因として、伸び、捩れ、歪み、傷の発生が挙げられる。これらの発生状況はシール材装着時に集中している。
本発明のシール材装着工具が付与する力バランスは常に一定であり、伸び、捩れ、歪み、傷の発生を起こさない装着が可能である。
【0021】
本発明のシール材装着工具が付与する力バランスは一定であるが故、熟練の手腕を要しない。初心者であっても、数回の使用で使いこなすことが可能である。
【0022】
鳩尾型リングの一部の形状においては、シール材を回転させながら装着することが要求される。図6に示すように、工具先端顎部のシール材保護樹脂の突出長さを違えることにより、シール材を挟持したときにシール材に回転を付与することが可能になり、容易に装着することが可能である。
【0023】
工具先端顎部の各々長さの異なるシール材保護樹脂は、シール材を左右より挟み込む力、当該シール材を装着する部位に向かう力、当該シール材を回転させる力の四方向の力を同時に付与することで、一工程でのシール材装着が可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 シール材保護樹脂
2 シール材保護樹脂取付ネジ
3 顎部
4 軸
5 基体
6 ハンドル
7 鋏持力A
8 鋏持力Aの合力B
9 シール材
10 シール材装着溝
11 R加工
12 顎部ズレ防止用凹部
13 シール材取付ネジ用穴
14 顎部ズレ防止用凸部
15 シール材保護樹脂・短
16 シール材保護樹脂・長
17 シール材保護樹脂によるシール材把持力
18 鋏持力Aの合力Bと、シール材把持力の合力C

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部を開閉することによって、部材を鋏持する顎部が開閉する構造の工具において、対向する顎部先端の内側に着脱可能に係止され、平滑な表面仕上げを施された保護部材を備えて成るシール材装着工具。
【請求項2】
顎部先端に係止される保護部材は、各々が異なった長さより成る請求項1に記載のシール材装着工具。
【請求項3】
保護部材は自己潤滑性を有する樹脂である請求項1、請求項2に記載のシール材装着工具。
【請求項4】
保護部材は熱可塑性樹脂である請求項1ないし請求項3に記載のシール材装着工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−131375(P2011−131375A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278604(P2010−278604)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(504190722)北酸株式会社 (2)
【Fターム(参考)】