シール貼付方法及びシール貼付装置
【課題】貼付後のシールと金属フレームとが接触しないように、シールを第1、第2のICチップに貼付する。
【解決手段】制御装置は、シール28の第1のICチップ22aと第2のICチップ22bとの間の部分にエアを吹き付け、シール28を両ICチップ22a、22bの間に入り込むように変形させ、ハンド20を、シール28を介して第2のICチップ22bと対向する位置、かつ金属フレーム24の高さよりも低く第2のICチップ22bの高さよりも高い位置(高さb)に位置決めした状態で、エアの吹き付けを停止する。そして、制御装置は、エア吹き付け停止後に、ハンドをシールに近づけていき、当該ハンド20により第2のICチップ22bに対してシール28を圧着して貼付する。
【解決手段】制御装置は、シール28の第1のICチップ22aと第2のICチップ22bとの間の部分にエアを吹き付け、シール28を両ICチップ22a、22bの間に入り込むように変形させ、ハンド20を、シール28を介して第2のICチップ22bと対向する位置、かつ金属フレーム24の高さよりも低く第2のICチップ22bの高さよりも高い位置(高さb)に位置決めした状態で、エアの吹き付けを停止する。そして、制御装置は、エア吹き付け停止後に、ハンドをシールに近づけていき、当該ハンド20により第2のICチップ22bに対してシール28を圧着して貼付する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、シール貼付方法及びシール貼付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工業製品の製造工程等においては、物体上に設けられた被着体に対して、シールを貼付する処理が行われる場合がある。例えば、電子機器の製造工程においては、プリント基板上に設けられたICチップに対して、電磁波をシールドするためのシールを貼付する処理が行われる場合がある。
【0003】
シールを貼付する対象(被着体)は様々であるが、被着体そのものに段差が存在する場合や、高さが異なる複数の被着体に対して1枚のシールを貼付しなければならない場合には、種々工夫が必要となる。
【0004】
特許文献1には、段差のある物体にシールを貼付する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−112345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、被着体近傍には、シール貼付の障害となるような物体(障害物)が設けられる場合もある。例えば、プリント基板の場合、複数のICチップを取り囲むように金属製のフレーム(板金カバーを嵌め込むためのフレーム)が設けられることがあり、当該フレームがシール貼付の障害になる場合がある。
【0007】
このような場合、障害物があってもシールを確実に貼付するため、障害物(フレーム)を避けるようにしてシールを被着体(ICチップ)に貼付する必要がある。しかしながら、上記特許文献1では、このような障害物に対する検討は一切なされていない。
【0008】
そこで本件は上記の課題に鑑みてなされたものであり、貼付後のシールと障害物とが接触しないように高さの異なる被着体にシールを貼付することが可能なシール貼付方法及びシール貼付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載のシール貼付方法は、第1の高さを有する第1の被着体と、前記第1の被着体の近傍に設けられ、前記第1の高さよりも低い第2の高さを有する第2の被着体と、少なくとも前記第1の被着体よりも前記第2の被着体に近い位置に設けられ、前記第1の高さよりも高い第3の高さを有する障害物と、を有する物体に対し、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを覆うようにシールを貼付するシール貼付方法であって、前記障害物の少なくとも一部、前記第1の被着体及び前記第2の被着体を覆うように配置された前記シールに押圧機構を近づけていき、当該押圧機構により前記第1の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する第1貼付工程と、前記シールの前記第1の被着体と第2の被着体の間の部分にエアを吹き付け、前記シールを前記第1の被着体と前記第2の被着体との間に入り込むように変形させるシール変形工程と、前記押圧機構を、前記シールを介して前記第2の被着体と対向する位置、かつ前記第3の高さよりも低く前記第2の高さよりも高い位置に位置決めした状態で、前記エアの吹き付けを停止し、当該停止後に、前記押圧機構を前記シールに近づけていき、当該押圧機構により前記第2の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する第2貼付工程と、を含んでいる。
【0010】
本明細書に記載のシール貼付装置は、第1の高さを有する第1の被着体と、前記第1の被着体の近傍に設けられ、前記第1の高さよりも低い第2の高さを有する第2の被着体と、少なくとも前記第1の被着体よりも前記第2の被着体に近い位置に設けられ、前記第1の高さよりも高い第3の高さを有する障害物と、を有する物体に対し、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを覆うようにシールを貼付するシール貼付装置であって、前記シールを前記第1、第2の被着体に対して押し付けて圧着する押圧機構と、前記シールに対してエアを吹き付けるエア供給装置と、前記押圧機構の動作と、前記エア供給装置の動作とを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記障害物の少なくとも一部、前記第1の被着体及び前記第2の被着体を覆うように配置された前記シールに前記押圧機構を近づけていき、当該押圧機構により前記第1の被着体に対して前記シールを圧着して貼付し、前記エア供給装置を制御して、前記シールの前記第1の被着体と第2の被着体の間の部分に対してエアを吹き付けることで、前記シールを前記第1の被着体と前記第2の被着体との間に入り込むように変形させ、前記押圧機構を、前記シールを介して前記第2の被着体と対向する位置、かつ前記第3の高さよりも低く前記第2の高さよりも高い位置に位置決めした状態で、前記エア供給装置によるエアの吹き付けを停止し、当該停止後に、前記押圧機構を前記シールに近づけていき、当該押圧機構により前記第2の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する、シール貼付装置である。
【発明の効果】
【0011】
本明細書に記載のシール貼付方法及びシール貼付装置は、貼付後のシールと障害物とが接触しないように高さの異なる被着体にシールを貼付することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係るシール貼付装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】ハンドを拡大して示す図である。
【図3】シール貼付装置の制御系を示すブロック図である。
【図4】プリント基板の構成を概略的に示す図である。
【図5】図5(a)は、プリント基板上のICチップ及び金属フレームの寸法等の条件を説明するための図であり、図5(b)は、寸法の一例を示す図である。
【図6】シール貼付装置の処理を示すフローチャートである。
【図7】図7(a)〜図7(d)は、シール貼付装置によるシール貼付の手順を説明するための図(その1)である。
【図8】図6のステップS26の具体的な処理を示すフローチャートである。
【図9】図9(a)〜図9(d)は、シール貼付装置によるシール貼付の手順を説明するための図(その2)である。
【図10】エアの吹き付け方向を説明するための図である。
【図11】図11(a)、図11(b)は、シール貼付装置によるシール貼付の手順を説明するための図(その3)である。
【図12】シ―ルが貼付された状態のプリント基板を示す平面図である。
【図13】図13(a)は、シールが剥がれた状態(シールを金属フレームの下側に潜り込ませない場合)を示す図であり、図13(b)は、シールが剥がれた状態(シールを金属フレームの下側に潜り込ませた場合)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、シール貼付方法及びシール貼付装置の一実施形態について、図1〜図13に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1には、一実施形態に係るシール貼付装置100が概略的に示されている。このシール貼付装置100は、プリント基板50上の複数のICチップを覆うようにして、絶縁性能を有する電磁波をシールドするためのシールをプリント基板50に貼付するための装置である。なお、図1では、プリント基板50の上面に直交する方向をZ軸方向とし、当該Z軸方向に直交する方向をX軸方向及びY軸方向としている。
【0015】
シール貼付装置100は、図1に示すように、複数本(図1では2本)の脚部12により保持されたXガイド14と、Xガイド14に沿ってX軸方向に移動するアーム部30と、物体としてのプリント基板50を載置可能な載置台40と、制御装置60と、操作用ペンダント62と、を備える。
【0016】
Xガイド14は、X軸方向を長手方向とし、Zガイド16をX方向にガイドするためのガイド溝(不図示)を有している。
【0017】
アーム部30は、Xガイド14のガイド溝に沿ってX軸方向に移動するZガイド16と、Zガイド16のガイド溝16aに沿ってZ軸方向に移動するZ可動体18と、Z可動体18の+X端部に固定された押圧機構としてのハンド20と、を有する。
【0018】
Zガイド16は、ステッピングモータやリニアモータ等のX駆動装置46(図3参照)により、Xガイド14のガイド溝に沿って、X軸方向に移動する。Zガイド16の位置は、X位置計測装置42(図3参照)により計測される。X位置計測装置42としては、リニアエンコーダなどの位置計測装置を用いることができる。なお、X駆動装置46としてステッピングモータを用いる場合には、当該ステッピングモータをX位置計測装置42として用いることとしても良い。
【0019】
Z可動体18は、ハンド20を保持して、ステッピングモータやリニアモータ等のZ駆動装置48(図3参照)により、Zガイド16のガイド溝16aに沿ってZ軸方向に移動する。
【0020】
Z可動体18の位置は、Z位置計測装置44(図3参照)により計測される。Z位置計測装置44としては、リニアエンコーダなどの位置計測装置を用いることができる。なお、Z駆動装置48としてステッピングモータを用いる場合には、当該ステッピングモータをZ位置計測装置44として用いることとしても良い。
【0021】
なお、アーム部30においては、上述したX駆動装置46及びZ駆動装置48により、ハンド20がX軸方向及びZ軸方向の2次元方向に移動するようになっている。
【0022】
図2には、ハンド20が拡大して示されている。図2に示すように、ハンド20は、その下端部(−Z端部)に略円柱状の押圧部34を有する。押圧部34の下面(−Z面)は、XY2次元方向に広がる平面(押圧面34a)とされている。押圧面34aは、プリント基板50上のICチップに対してシールを押圧するための面である。
【0023】
押圧部34には、図2に示すように、エア噴出し口32が設けられている。このエア噴出し口32からは、エア供給装置52(図2では不図示、図3参照)から供給されるエアが噴出されるようになっている。ここで、エア噴出し口32から噴出されるエアの噴出方向は、X軸及びZ軸のそれぞれに対して45°傾斜した方向となっている。
【0024】
図1に戻り、載置台40は、その上面がプリント基板50の載置面とされている。載置面上の所定の位置には、プリント基板50を固定することが可能となっている。なお、プリント基板50は、人(オペレータ等)が手作業にて載置することとしてもよいし、専用のローダを用いて載置することとしてもよい。
【0025】
制御装置60は、シール貼付装置100全体を統括的に制御する。より具体的には、制御装置60は、図3に示す、X位置計測装置42及びZ位置計測装置44の計測結果に基づいて、X駆動装置46及びZ駆動装置48、並びにエア供給装置52の動作を制御する。操作用ペンダント62は、オペレータ等が、ハンド20の位置制御に用いるパラメータ等を設定するのに用いる端末である。
【0026】
図1に戻り、載置台40上に載置されているプリント基板50は、多数のICチップを有している。図4は、プリント基板50を模式的に示す平面図である。図4では、プリント基板50上の多数のICチップのうちの2つのICチップ22a、22b(以下、第1の被着体としての第1のICチップ22a、第2の被着体としての第2のICチップ22b、とする)を図示している。第1のICチップ22aと、第2のICチップ22bは、X軸方向に沿って配置されており、Y軸方向の寸法(幅)は同一とされている。
【0027】
また、プリント基板50には、第1のICチップ22aと、第2のICチップ22bの存在する領域を取り囲むように、障害物としての矩形状の金属フレーム24が設けられている。この金属フレーム24は、不図示の板金カバーを嵌め込むためのものである。板金カバーは、ICチップが電磁波によりダメージを受けないようにするためのものである。
【0028】
図5(a)には、図4のA−A線断面図(ただし、図示の便宜上、断面を表すハッチングは省略している)が示されている。この図5(a)に示すように、金属フレーム24は、断面が逆L字状を有している。より具体的には、金属フレーム24は、平面視(Z軸方向から見て)矩形枠状の枠部26aと、当該枠部26aの+Z端部(上端部)に設けられ、枠部26aの内側領域側に張り出した状態の庇部26bとを有する。
【0029】
上記のように構成されるプリント基板50では、図5(a)に示す、第1のICチップ22aの高さ(H1)と、第2のICチップ22aの高さ(H2)と、金属フレーム24の枠部26aの高さ(庇部26bの下面の高さ)(H3)との間に、次式(1)〜(3)の関係があるものとする。なお、tは、プリント基板50に貼付されるシールの厚さを意味する。
H3>H1>H2 …(1)
H3>H1+t …(2)
H1−H2>0.3(mm) …(3)
【0030】
また、図5(a)に示す、第1のICチップ22aと第2のICチップ22bとの間の間隔(L1)と、庇部26bの枠部26aからの張り出し量(L2)には、次式(4)の関係があるものとする。
L1>L2 …(4)
【0031】
また、プリント基板50(第1、第2のICチップ22a,22b)に貼付するシールの幅(X軸方向の幅)は、金属フレーム24の内部領域のX軸方向に関する幅よりも小さく設定されているものとする。
【0032】
なお、図5(b)には、プリント基板50における各種寸法の一例(単位(mm))が示されている。この図5(b)の例では、シールのX軸方向幅が22.0(mm)、厚さが0.05(mm)であるものとする。
【0033】
次に、シール貼付装置100の動作(制御装置60の処理)について、図6、図8のフローチャートに沿って、かつその他図面を適宜参照しつつ、詳細に説明する。
【0034】
なお、シール貼付装置100の処理の前提として、シール貼付装置100の載置台40の載置面上には、プリント基板50が既に載置されているものとする。また、プリント基板50上には、図7(a)に示すように、シール28が配置されているものとする。なお、シール28は、不図示のシールローダにより、プリント基板50上に配置されるものとする。
【0035】
ここで、シール28は、図7(a)に示すように、第1のICチップ22aと第2のICチップ22bとを覆うような状態とされている。また、シール28の+X側の端部は、金属フレーム24の庇部26bの上面の一部と接触した状態とされている。
【0036】
また、制御装置60は、載置台40上に載置されているプリント基板50の種別に基づいて、ICチップ22a、22bの位置座標(X座標)や高さ(Z座標)をデータベース等から読み出す。そして、制御装置60は、当該位置座標や高さに基づいて、処理に用いるパラメータ(後述するa〜c、A,Bなど)を算出等しているものとする。なお、制御装置60は、実際には、第2のICチップ22bの上面を基準とした値(後述するa〜c、A,Bを第2のICチップ22bの上面を0として換算した値)に基づいて制御を行う。
【0037】
なお、以下において、「ハンド20の高さ」と記述する場合には、ハンド20の下面(押圧面34a)の高さを意味するものとする。
【0038】
図6の処理では、まず、ステップS10において、制御装置60が、X駆動装置46を制御して、第1のICチップ22aの上方を目標位置とするハンド20の移動を開始する。
【0039】
次いで、ステップS12では、制御装置60が、X位置計測装置42の計測値に基づいて、第1のICチップ22aの上方にハンド20が位置した状態になるまで待機する。この場合、ハンド20が第1のICチップ22aの上方に位置した段階で、ステップS12の判断が肯定されて、ステップS14に移行する。ここで、ハンド20が第1のICチップ22aの上方に位置した状態が、図7(a)に示されている。この場合のハンド20の高さは、金属フレーム24に接触しない程度の高さとされている。
【0040】
ステップS12の判断が肯定され、ステップS14に移行すると、制御装置60は、Z駆動装置48を制御して、ハンド20の下降駆動を開始する。次いで、ステップS16では、制御装置60が、Z位置計測装置44の計測値をモニタしつつ、ハンド20の高さが高さA(図7(b)参照)に到達するまで待機する。ここで、高さAは、第1のICチップ22aの高さにシール28の厚さを加算した高さであるものとする。図7(b)の状態では、ハンド20の押圧面34aが第1のICチップ22aに対してシール28を押し付けた状態(押圧した状態)となる。すなわち、ハンド20が高さAに到達すると、第1のICチップ22aにシール28が貼付されることになる。
【0041】
図7(b)のようにハンド20が高さAまで到達した段階、すなわち、シール28が第1のICチップ22aに貼付された段階で、図6のステップS16の判断が肯定され、ステップS18に移行する。
【0042】
ステップS18に移行すると、制御装置60は、Z駆動装置48を制御して、ハンド20の上昇を開始する。次いで、ステップS20では、制御装置60が、Z位置計測装置44の計測値に基づいて、ハンド20の高さがaとなるまで待機する。ここで、高さaは、一例として、金属フレーム24よりも高い位置であるものとする。ハンド20の高さが図7(c)に示すように、高さaまで到達すると、ステップS20の判断は肯定され、ステップS22に移行する。
【0043】
ステップS22に移行すると、制御装置60は、X駆動装置46を制御して、ハンド20を第2のICチップ22bの上方への移動を開始する。
【0044】
次いで、ステップS24では、制御装置60が、Z位置計測装置44の計測値に基づいて、第2のICチップ22bの上方(高さa)にハンド20が位置するまで待機する。この場合、制御装置60は、ハンド20が第2のICチップ22bの上方に位置した段階(図7(d)参照)で、ステップS26に移行する。
【0045】
ステップS26に移行すると、制御装置60は、第2のICチップ22bへのシール貼付処理のサブルーチンを実行する。このサブルーチンでは、図8のフローチャートに沿った処理が実行されることになる。
【0046】
図8の処理では、まず、ステップS30において、制御装置60が、エア供給装置52を制御して、エア噴出し口32からのエアの噴出し(シール28への吹き付け)を開始する(図9(a)参照)。
【0047】
次いで、ステップS32では、制御装置60が、Z駆動装置48を制御して、ハンド20の下降駆動を開始する(図9(b)参照)。この下降駆動の間、エア噴出し口32からのエアの噴出しは、継続されているものとする。この下降駆動により、シール28とエア噴出し口32とが近づくので、シール28に対してエアから与えられる力が大きくなる。このため、図9(b)の状態では、シール28の変形量が、図9(a)の状態よりも大きくなる。
【0048】
次いで、ステップS34では、制御装置60が、ハンド20の高さがbになったか否かを判断する。ここで、高さbは、図9(c)に示すように、金属フレーム24の高さよりも低く、第2のICチップ22bの高さよりも高い位置であるものとする。なお、図9(c)では、高さbが、庇部26bの下面の高さと同一、又は当該下面の高さよりもわずかに低い高さとされている。
【0049】
ここで、本実施形態では、上述したようにエア噴出し口32からのエアの噴出し方向を、X、Z軸方向それぞれに対して45°傾斜した方向に設定している。このようにしているのは、図10に示すように、シール28に対して、Z軸方向(下方向)に撓ませる力と、シール28を横方向に動かす力を均等に作用させるためである。このようにすることで、図9(c)に示すように、シール28が第1のICチップ22aと第2のICチップ22bとの間に入り込むように変形するようになる。また、図9(c)の状態では、シール28の+X端部が、金属フレーム24の庇部26bよりも下側に位置するとともに、庇部26bよりも−X側(金属フレーム24の内側領域側)に位置するようになっている。
【0050】
ステップS34の判断が肯定されると、ステップS36に移行し、制御装置60が、Z駆動装置48を制御して、ハンド20の下降駆動を停止する。次いで、ステップS38では、制御装置60が、エア供給装置52を制御して、エア噴出し口32からのエアの噴出しを停止する。
【0051】
次のステップS40においては、制御装置60が、所定時間経過するまで待機する。ここで、所定時間とは、シールが弾性力により、図9(d)に示すような形状にとなるまでの時間を意味する。なお、所定時間については、制御装置60が、シールの材料や弾性力などに基づいて、自動で設定するようにしてもよいし、オペレータ等が、操作用ペンダント62を介して予め設定してもよい。このように、本実施形態では、エアの吹き付けによりシール28を変形させて、シール28と金属フレーム24の上端部(庇部26bの上面)とを非接触にし(図9(a)〜図9(c))、その後、ハンド20を高さbに位置決めした状態でエアの吹き付けを停止した後、所定時間待機する(図9(d))。これにより、シール28を元の形状(図7(a))に戻さず、庇部26bの下側にシール28の+X端部をもぐりこませた状態(図9(d))とすることが可能となっている。
【0052】
次いで、ステップS42では、制御装置60が、Z駆動装置48を制御して、ハンド20の下降駆動を開始する。次いで、ステップS44では、制御装置60が、ハンド20の高さが高さBになるまで待機する。ここで、高さBは、第2のICチップ22bの高さと、シール28の厚さとを加算した高さであるものとする(図11(a)参照)。図11(a)の状態では、ハンド20が第2のICチップ22bに対してシール28を押し付ける(押圧する)。これにより、第2のICチップ22bに、シール28が貼付されるようになっている。
【0053】
上記のように、ハンド20が高さBまで到達し、シール28が第2のICチップ22bに貼付されると、ステップS44の判断が肯定され、ステップS46に移行する。
【0054】
ステップS46では、制御装置60が、Z駆動装置48を制御して、ハンド20の上昇駆動を開始する。次いで、ステップS48では、制御装置60が、高さcになるまで待機する。ここで、高さcは、図11(b)に示すように、ハンド20が金属フレーム24と接触しない程度の高さ(例えば、高さa=c)であるものとする。
【0055】
本実施形態では、以上の処理を行うことで、貼付後のシール28が金属フレーム24(特に庇部26bの上面)に対して非接触となるように、シール28をプリント基板50(ICチップ22a、22b)に貼付することができる。図12は、シール28が貼付されたプリント基板50を示す平面図である。この図12及び図11(b)に示すように、ICチップ22a,22bにシール28が貼付された状態では、シール28の+X端部が、金属フレーム24の庇部26bの下側に潜りこんだ状態となる。ここで、シール28は、高さの異なる第1のICチップ22aと第2のICチップ22bに貼付されているため、シール28の弾性力により剥がれが発生する可能性がある。この場合、図13(a)に示すように、高さの低い側の第2のICチップ22b部分ほどシールが剥がれる可能性が高い。
【0056】
しかるに、本実施形態では、前述のようにシール28を庇部26bの下側に潜りこませることとしているので、たとえシール28が剥がれたとしても、図13(b)に示すように、シール28の+X端部を押さえることができる。これにより、シール28が剥がれた場合でも、シールの絶縁性能(電磁波のシールド性能)を維持することが可能である。
【0057】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、制御装置60は、金属フレーム24の一部、第1、第2のICチップ22a、22bを覆うように配置されたシール28にハンド20を近づけていき、当該ハンド20により第1のICチップ22aに対してシール28を圧着して貼付する(ステップS14、S16)。そして、制御装置60は、シール28の第1のICチップ22aと第2のICチップ22bとの間の部分にエアを吹き付け、シール28を両ICチップ22a、22bの間に入り込むように変形させ(ステップS30〜S38)、ハンド20を、シール28を介して第2のICチップ22bと対向する位置、かつ金属フレーム24の高さよりも低く第2のICチップ22bの高さよりも高い位置(高さb)に位置決めした状態(ステップS36)で、エアの吹き付けを停止する(ステップS38)。更に、制御装置60は、エア吹き付け停止後に、ハンド20をシール28に近づけていき、当該ハンド20により第2のICチップ22bに対してシール28を圧着して貼付する(ステップS42、S44)。このように、本実施形態では、エアの吹き付けによりシール28を変形させて、シール28と金属フレーム24の上端部とを非接触にし、ハンド20を高さbに位置決めした状態でエアの吹き付けを停止することで、シール28を元の形状(図7(a))に戻さずに、第2のICチップ22bにシール28を貼付する。これにより、貼付後のシール28と金属フレーム24(特に庇部26bの上面)とが非接触となるように、ICチップ22a,22bに対してシール28を貼付することが可能となる。これにより、シール28が金属フレーム24の上に載った状態でICチップ22a,22bにシール28を貼付する場合に比べ、ICチップ22a、22bにおけるシールの剥がれを抑制することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態によると、金属フレーム24が、第1、第2のICチップ22a,22bを取り囲む枠部26aと、枠部26aの上端部において枠部26aの内側領域側に張り出した状態の庇部26bとを有しており、エアを吹き付けてシールを変形させる場合には、シール28の変形により、シール28の金属フレーム24側の端部(+X側端部)が庇部26bの下側に位置し、第2のICチップ22bにシール28を貼付する際には、シール28の金属フレーム24近傍側の端部が庇部26bの下側に位置した状態で、シール28が貼付される。これにより、シール28の+X側端部の位置を、金属フレーム24の庇部26bの下側に潜り込ませた状態で、シール28を貼付することができる。このため、シール28に剥がれが生じた場合であっても、図13(b)に示すように、シール28が第2のICチップ22bを覆い続けるため、シール28の絶縁性能(電磁波のシールド性能)を維持することができる。ここで、本実施形態では、第1のICチップ22aの高さが第2のICチップ22bの高さよりも高く設定されているので、シールの弾性力により第2のICチップ22bにおいてシールが剥がれやすくなることが想定される。このため、シール28のうち、第2のICチップ22b側の端部のみを金属フレーム24の庇部26bの下側にもぐりこませておくこととしても、シールの機能を効率よく維持することが可能である。
【0059】
また、本実施形態によると、シール28にエアを吹き付ける場合、第2のICチップ22bの上方から第1のICチップ22a側に向けて斜め方向(45°)にエアを吹き付けることとしている。これにより、シール28に対して下側に撓ませる力と横方向に動かす力とを同時に作用させることができる。したがって、効率的に、シール28を第1、第2のICチップ22a,22b間に入り込むように変形させることが可能となる。
【0060】
また、本実施形態では、ハンド20の一部にエア噴出し口32が設けられている。これにより、ハンド20の動きに連動してエアの噴出しを行うことができ、ハンド20とシール28との距離を調整することでエアがシールに与える力を調整することが可能となる。
【0061】
なお、上記実施形態では、シール28をプリント基板50上に配置する装置が不図示のシールローダである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、例えば、ハンド20の下面(押圧面34a)に吸着機構を設けておき、当該吸着機構を用いて、ハンド20がシール28をプリント基板50上に搬送するようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、ICチップ22a,22bに対するシール貼付の障害となる物(障害物)が断面逆L字状の金属フレーム24である場合について説明したが、これに限られるものではない。障害物が金属フレーム24である場合には、その形状が断面逆L字状でなくてもよい。また、障害物は、金属フレーム24以外の物体であってもよい。
【0063】
なお、上記実施形態では、エアのシールに対する吹き付けをX、Z軸に対して45°傾斜した方向から行う場合について説明したが、これに限らず、その他の角度からシールに対するエアの吹き付けを行うこととしてもよい。また、上記実施形態では、エアをハンド20に設けられたエア噴出し口32からシールに対して吹き付ける場合について説明したが、これに限らず、エアを吹き付ける機構をハンド20とは別に用意してもよい。
【0064】
なお、上記実施形態では、第1の被着体が第1のICチップ22aであり、第2の被着体が第2のICチップ22bである場合について説明したが、これに限られるものではない。第1の被着体と第2の被着体のそれぞれが一つの物体の一部であってもよい。この場合、例えば、段差のある物体のうち、高さが大きい部分が第1の被着体に相当する部分となり、高さの小さい部分が第2の被着体に相当する部分となる。
【0065】
なお、上記実施形態では、シールを貼付する対象である第1の被着体と第2の被着体が、プリント基板上に配置されているICチップである場合について説明したが、これに限らず、その他の物体であってもよい。
【0066】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【0067】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1) 第1の高さを有する第1の被着体と、前記第1の被着体の近傍に設けられ、前記第1の高さよりも低い第2の高さを有する第2の被着体と、少なくとも前記第1の被着体よりも前記第2の被着体に近い位置に設けられ、前記第1の高さよりも高い第3の高さを有する障害物と、を有する物体に対し、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを覆うようにシールを貼付するシール貼付方法であって、
前記障害物の少なくとも一部、前記第1の被着体及び前記第2の被着体を覆うように配置された前記シールに押圧機構を近づけていき、当該押圧機構により前記第1の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する第1貼付工程と、
前記シールの前記第1の被着体と第2の被着体の間の部分にエアを吹き付け、前記シールを前記第1の被着体と前記第2の被着体との間に入り込むように変形させるシール変形工程と、
前記押圧機構を、前記シールを介して前記第2の被着体と対向する位置、かつ前記第3の高さよりも低く前記第2の高さよりも高い位置に位置決めした状態で、前記エアの吹き付けを停止し、当該停止後に、前記押圧機構を前記シールに近づけていき、当該押圧機構により前記第2の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する第2貼付工程と、を含むシール貼付方法。
(付記2) 前記障害物は、前記第1、第2の被着体を取り囲む枠部と、当該枠部の上端部において該枠部の内側領域側に張り出した状態の庇部と、を有し、前記シール変形工程では、前記シールの変形により、当該シールの前記障害物側の端部が前記庇部の下側に位置し、前記第2貼付工程では、前記シールの前記障害物側の端部が前記庇部の下側に位置した状態で、前記第2の被着体に対して前記シールを貼付することを特徴とする付記1に記載のシール貼付方法。
(付記3) 前記シール変形工程では、前記第2の被着体の上方から前記第1の被着体側に向けた斜め方向に前記エアを吹き付けることを特徴とする付記1又は2に記載のシール貼付方法。
(付記4) 前記押圧機構は、前記エアを吹き付き出す噴出し口を有し、前記シール変形工程では、前記噴出し口から前記エアを噴き出した状態で、前記押圧機構が前記シールに近づくことを特徴とする付記3に記載のシール貼付方法。
(付記5) 第1の高さを有する第1の被着体と、前記第1の被着体の近傍に設けられ、前記第1の高さよりも低い第2の高さを有する第2の被着体と、少なくとも前記第1の被着体よりも前記第2の被着体に近い位置に設けられ、前記第1の高さよりも高い第3の高さを有する障害物と、を有する物体に対し、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを覆うようにシールを貼付するシール貼付装置であって、
前記シールを前記第1、第2の被着体に対して押し付けて圧着する押圧機構と、
前記シールに対してエアを吹き付けるエア供給装置と、
前記押圧機構の動作と、前記エア供給装置の動作とを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記障害物の少なくとも一部、前記第1の被着体及び前記第2の被着体を覆うように配置された前記シールに前記押圧機構を近づけていき、当該押圧機構により前記第1の被着体に対して前記シールを圧着して貼付し、前記エア供給装置を制御して、前記シールの前記第1の被着体と第2の被着体の間の部分に対してエアを吹き付けることで、前記シールを前記第1の被着体と前記第2の被着体との間に入り込むように変形させ、前記押圧機構を、前記シールを介して前記第2の被着体と対向する位置、かつ前記第3の高さよりも低く前記第2の高さよりも高い位置に位置決めした状態で、前記エア供給装置によるエアの吹き付けを停止し、当該停止後に、前記押圧機構を前記シールに近づけていき、当該押圧機構により前記第2の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する、ことを特徴とするシール貼付装置。
(付記6) 前記エア供給装置から供給されるエアは、前記押圧機構の一部に設けられたエア噴出し口から前記シールに対して吹き付けられることを特徴とする付記5に記載のシール貼付装置。
(付記7) 前記制御装置は、前記第1の被着体と前記第2の被着体との間に入り込むように前記シールを変形させる際に、前記押圧機構を前記シールに近づけつつ、前記エア供給装置を制御して、前記エア噴出し口から前記シールに対して前記エアを吹き付けることを特徴とする付記6に記載のシール貼付装置。
【符号の説明】
【0068】
20 ハンド(押圧機構)
22a 第1のICチップ(第1の被着体)
22b 第2のICチップ(第2の被着体)
24 金属フレーム(障害物)
26a 枠部
26b 庇部
28 シール
32 エア噴出し口(噴出し口)
50 プリント基板(物体)
100 シール貼付装置
【技術分野】
【0001】
本件は、シール貼付方法及びシール貼付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工業製品の製造工程等においては、物体上に設けられた被着体に対して、シールを貼付する処理が行われる場合がある。例えば、電子機器の製造工程においては、プリント基板上に設けられたICチップに対して、電磁波をシールドするためのシールを貼付する処理が行われる場合がある。
【0003】
シールを貼付する対象(被着体)は様々であるが、被着体そのものに段差が存在する場合や、高さが異なる複数の被着体に対して1枚のシールを貼付しなければならない場合には、種々工夫が必要となる。
【0004】
特許文献1には、段差のある物体にシールを貼付する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−112345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、被着体近傍には、シール貼付の障害となるような物体(障害物)が設けられる場合もある。例えば、プリント基板の場合、複数のICチップを取り囲むように金属製のフレーム(板金カバーを嵌め込むためのフレーム)が設けられることがあり、当該フレームがシール貼付の障害になる場合がある。
【0007】
このような場合、障害物があってもシールを確実に貼付するため、障害物(フレーム)を避けるようにしてシールを被着体(ICチップ)に貼付する必要がある。しかしながら、上記特許文献1では、このような障害物に対する検討は一切なされていない。
【0008】
そこで本件は上記の課題に鑑みてなされたものであり、貼付後のシールと障害物とが接触しないように高さの異なる被着体にシールを貼付することが可能なシール貼付方法及びシール貼付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載のシール貼付方法は、第1の高さを有する第1の被着体と、前記第1の被着体の近傍に設けられ、前記第1の高さよりも低い第2の高さを有する第2の被着体と、少なくとも前記第1の被着体よりも前記第2の被着体に近い位置に設けられ、前記第1の高さよりも高い第3の高さを有する障害物と、を有する物体に対し、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを覆うようにシールを貼付するシール貼付方法であって、前記障害物の少なくとも一部、前記第1の被着体及び前記第2の被着体を覆うように配置された前記シールに押圧機構を近づけていき、当該押圧機構により前記第1の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する第1貼付工程と、前記シールの前記第1の被着体と第2の被着体の間の部分にエアを吹き付け、前記シールを前記第1の被着体と前記第2の被着体との間に入り込むように変形させるシール変形工程と、前記押圧機構を、前記シールを介して前記第2の被着体と対向する位置、かつ前記第3の高さよりも低く前記第2の高さよりも高い位置に位置決めした状態で、前記エアの吹き付けを停止し、当該停止後に、前記押圧機構を前記シールに近づけていき、当該押圧機構により前記第2の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する第2貼付工程と、を含んでいる。
【0010】
本明細書に記載のシール貼付装置は、第1の高さを有する第1の被着体と、前記第1の被着体の近傍に設けられ、前記第1の高さよりも低い第2の高さを有する第2の被着体と、少なくとも前記第1の被着体よりも前記第2の被着体に近い位置に設けられ、前記第1の高さよりも高い第3の高さを有する障害物と、を有する物体に対し、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを覆うようにシールを貼付するシール貼付装置であって、前記シールを前記第1、第2の被着体に対して押し付けて圧着する押圧機構と、前記シールに対してエアを吹き付けるエア供給装置と、前記押圧機構の動作と、前記エア供給装置の動作とを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記障害物の少なくとも一部、前記第1の被着体及び前記第2の被着体を覆うように配置された前記シールに前記押圧機構を近づけていき、当該押圧機構により前記第1の被着体に対して前記シールを圧着して貼付し、前記エア供給装置を制御して、前記シールの前記第1の被着体と第2の被着体の間の部分に対してエアを吹き付けることで、前記シールを前記第1の被着体と前記第2の被着体との間に入り込むように変形させ、前記押圧機構を、前記シールを介して前記第2の被着体と対向する位置、かつ前記第3の高さよりも低く前記第2の高さよりも高い位置に位置決めした状態で、前記エア供給装置によるエアの吹き付けを停止し、当該停止後に、前記押圧機構を前記シールに近づけていき、当該押圧機構により前記第2の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する、シール貼付装置である。
【発明の効果】
【0011】
本明細書に記載のシール貼付方法及びシール貼付装置は、貼付後のシールと障害物とが接触しないように高さの異なる被着体にシールを貼付することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係るシール貼付装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】ハンドを拡大して示す図である。
【図3】シール貼付装置の制御系を示すブロック図である。
【図4】プリント基板の構成を概略的に示す図である。
【図5】図5(a)は、プリント基板上のICチップ及び金属フレームの寸法等の条件を説明するための図であり、図5(b)は、寸法の一例を示す図である。
【図6】シール貼付装置の処理を示すフローチャートである。
【図7】図7(a)〜図7(d)は、シール貼付装置によるシール貼付の手順を説明するための図(その1)である。
【図8】図6のステップS26の具体的な処理を示すフローチャートである。
【図9】図9(a)〜図9(d)は、シール貼付装置によるシール貼付の手順を説明するための図(その2)である。
【図10】エアの吹き付け方向を説明するための図である。
【図11】図11(a)、図11(b)は、シール貼付装置によるシール貼付の手順を説明するための図(その3)である。
【図12】シ―ルが貼付された状態のプリント基板を示す平面図である。
【図13】図13(a)は、シールが剥がれた状態(シールを金属フレームの下側に潜り込ませない場合)を示す図であり、図13(b)は、シールが剥がれた状態(シールを金属フレームの下側に潜り込ませた場合)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、シール貼付方法及びシール貼付装置の一実施形態について、図1〜図13に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1には、一実施形態に係るシール貼付装置100が概略的に示されている。このシール貼付装置100は、プリント基板50上の複数のICチップを覆うようにして、絶縁性能を有する電磁波をシールドするためのシールをプリント基板50に貼付するための装置である。なお、図1では、プリント基板50の上面に直交する方向をZ軸方向とし、当該Z軸方向に直交する方向をX軸方向及びY軸方向としている。
【0015】
シール貼付装置100は、図1に示すように、複数本(図1では2本)の脚部12により保持されたXガイド14と、Xガイド14に沿ってX軸方向に移動するアーム部30と、物体としてのプリント基板50を載置可能な載置台40と、制御装置60と、操作用ペンダント62と、を備える。
【0016】
Xガイド14は、X軸方向を長手方向とし、Zガイド16をX方向にガイドするためのガイド溝(不図示)を有している。
【0017】
アーム部30は、Xガイド14のガイド溝に沿ってX軸方向に移動するZガイド16と、Zガイド16のガイド溝16aに沿ってZ軸方向に移動するZ可動体18と、Z可動体18の+X端部に固定された押圧機構としてのハンド20と、を有する。
【0018】
Zガイド16は、ステッピングモータやリニアモータ等のX駆動装置46(図3参照)により、Xガイド14のガイド溝に沿って、X軸方向に移動する。Zガイド16の位置は、X位置計測装置42(図3参照)により計測される。X位置計測装置42としては、リニアエンコーダなどの位置計測装置を用いることができる。なお、X駆動装置46としてステッピングモータを用いる場合には、当該ステッピングモータをX位置計測装置42として用いることとしても良い。
【0019】
Z可動体18は、ハンド20を保持して、ステッピングモータやリニアモータ等のZ駆動装置48(図3参照)により、Zガイド16のガイド溝16aに沿ってZ軸方向に移動する。
【0020】
Z可動体18の位置は、Z位置計測装置44(図3参照)により計測される。Z位置計測装置44としては、リニアエンコーダなどの位置計測装置を用いることができる。なお、Z駆動装置48としてステッピングモータを用いる場合には、当該ステッピングモータをZ位置計測装置44として用いることとしても良い。
【0021】
なお、アーム部30においては、上述したX駆動装置46及びZ駆動装置48により、ハンド20がX軸方向及びZ軸方向の2次元方向に移動するようになっている。
【0022】
図2には、ハンド20が拡大して示されている。図2に示すように、ハンド20は、その下端部(−Z端部)に略円柱状の押圧部34を有する。押圧部34の下面(−Z面)は、XY2次元方向に広がる平面(押圧面34a)とされている。押圧面34aは、プリント基板50上のICチップに対してシールを押圧するための面である。
【0023】
押圧部34には、図2に示すように、エア噴出し口32が設けられている。このエア噴出し口32からは、エア供給装置52(図2では不図示、図3参照)から供給されるエアが噴出されるようになっている。ここで、エア噴出し口32から噴出されるエアの噴出方向は、X軸及びZ軸のそれぞれに対して45°傾斜した方向となっている。
【0024】
図1に戻り、載置台40は、その上面がプリント基板50の載置面とされている。載置面上の所定の位置には、プリント基板50を固定することが可能となっている。なお、プリント基板50は、人(オペレータ等)が手作業にて載置することとしてもよいし、専用のローダを用いて載置することとしてもよい。
【0025】
制御装置60は、シール貼付装置100全体を統括的に制御する。より具体的には、制御装置60は、図3に示す、X位置計測装置42及びZ位置計測装置44の計測結果に基づいて、X駆動装置46及びZ駆動装置48、並びにエア供給装置52の動作を制御する。操作用ペンダント62は、オペレータ等が、ハンド20の位置制御に用いるパラメータ等を設定するのに用いる端末である。
【0026】
図1に戻り、載置台40上に載置されているプリント基板50は、多数のICチップを有している。図4は、プリント基板50を模式的に示す平面図である。図4では、プリント基板50上の多数のICチップのうちの2つのICチップ22a、22b(以下、第1の被着体としての第1のICチップ22a、第2の被着体としての第2のICチップ22b、とする)を図示している。第1のICチップ22aと、第2のICチップ22bは、X軸方向に沿って配置されており、Y軸方向の寸法(幅)は同一とされている。
【0027】
また、プリント基板50には、第1のICチップ22aと、第2のICチップ22bの存在する領域を取り囲むように、障害物としての矩形状の金属フレーム24が設けられている。この金属フレーム24は、不図示の板金カバーを嵌め込むためのものである。板金カバーは、ICチップが電磁波によりダメージを受けないようにするためのものである。
【0028】
図5(a)には、図4のA−A線断面図(ただし、図示の便宜上、断面を表すハッチングは省略している)が示されている。この図5(a)に示すように、金属フレーム24は、断面が逆L字状を有している。より具体的には、金属フレーム24は、平面視(Z軸方向から見て)矩形枠状の枠部26aと、当該枠部26aの+Z端部(上端部)に設けられ、枠部26aの内側領域側に張り出した状態の庇部26bとを有する。
【0029】
上記のように構成されるプリント基板50では、図5(a)に示す、第1のICチップ22aの高さ(H1)と、第2のICチップ22aの高さ(H2)と、金属フレーム24の枠部26aの高さ(庇部26bの下面の高さ)(H3)との間に、次式(1)〜(3)の関係があるものとする。なお、tは、プリント基板50に貼付されるシールの厚さを意味する。
H3>H1>H2 …(1)
H3>H1+t …(2)
H1−H2>0.3(mm) …(3)
【0030】
また、図5(a)に示す、第1のICチップ22aと第2のICチップ22bとの間の間隔(L1)と、庇部26bの枠部26aからの張り出し量(L2)には、次式(4)の関係があるものとする。
L1>L2 …(4)
【0031】
また、プリント基板50(第1、第2のICチップ22a,22b)に貼付するシールの幅(X軸方向の幅)は、金属フレーム24の内部領域のX軸方向に関する幅よりも小さく設定されているものとする。
【0032】
なお、図5(b)には、プリント基板50における各種寸法の一例(単位(mm))が示されている。この図5(b)の例では、シールのX軸方向幅が22.0(mm)、厚さが0.05(mm)であるものとする。
【0033】
次に、シール貼付装置100の動作(制御装置60の処理)について、図6、図8のフローチャートに沿って、かつその他図面を適宜参照しつつ、詳細に説明する。
【0034】
なお、シール貼付装置100の処理の前提として、シール貼付装置100の載置台40の載置面上には、プリント基板50が既に載置されているものとする。また、プリント基板50上には、図7(a)に示すように、シール28が配置されているものとする。なお、シール28は、不図示のシールローダにより、プリント基板50上に配置されるものとする。
【0035】
ここで、シール28は、図7(a)に示すように、第1のICチップ22aと第2のICチップ22bとを覆うような状態とされている。また、シール28の+X側の端部は、金属フレーム24の庇部26bの上面の一部と接触した状態とされている。
【0036】
また、制御装置60は、載置台40上に載置されているプリント基板50の種別に基づいて、ICチップ22a、22bの位置座標(X座標)や高さ(Z座標)をデータベース等から読み出す。そして、制御装置60は、当該位置座標や高さに基づいて、処理に用いるパラメータ(後述するa〜c、A,Bなど)を算出等しているものとする。なお、制御装置60は、実際には、第2のICチップ22bの上面を基準とした値(後述するa〜c、A,Bを第2のICチップ22bの上面を0として換算した値)に基づいて制御を行う。
【0037】
なお、以下において、「ハンド20の高さ」と記述する場合には、ハンド20の下面(押圧面34a)の高さを意味するものとする。
【0038】
図6の処理では、まず、ステップS10において、制御装置60が、X駆動装置46を制御して、第1のICチップ22aの上方を目標位置とするハンド20の移動を開始する。
【0039】
次いで、ステップS12では、制御装置60が、X位置計測装置42の計測値に基づいて、第1のICチップ22aの上方にハンド20が位置した状態になるまで待機する。この場合、ハンド20が第1のICチップ22aの上方に位置した段階で、ステップS12の判断が肯定されて、ステップS14に移行する。ここで、ハンド20が第1のICチップ22aの上方に位置した状態が、図7(a)に示されている。この場合のハンド20の高さは、金属フレーム24に接触しない程度の高さとされている。
【0040】
ステップS12の判断が肯定され、ステップS14に移行すると、制御装置60は、Z駆動装置48を制御して、ハンド20の下降駆動を開始する。次いで、ステップS16では、制御装置60が、Z位置計測装置44の計測値をモニタしつつ、ハンド20の高さが高さA(図7(b)参照)に到達するまで待機する。ここで、高さAは、第1のICチップ22aの高さにシール28の厚さを加算した高さであるものとする。図7(b)の状態では、ハンド20の押圧面34aが第1のICチップ22aに対してシール28を押し付けた状態(押圧した状態)となる。すなわち、ハンド20が高さAに到達すると、第1のICチップ22aにシール28が貼付されることになる。
【0041】
図7(b)のようにハンド20が高さAまで到達した段階、すなわち、シール28が第1のICチップ22aに貼付された段階で、図6のステップS16の判断が肯定され、ステップS18に移行する。
【0042】
ステップS18に移行すると、制御装置60は、Z駆動装置48を制御して、ハンド20の上昇を開始する。次いで、ステップS20では、制御装置60が、Z位置計測装置44の計測値に基づいて、ハンド20の高さがaとなるまで待機する。ここで、高さaは、一例として、金属フレーム24よりも高い位置であるものとする。ハンド20の高さが図7(c)に示すように、高さaまで到達すると、ステップS20の判断は肯定され、ステップS22に移行する。
【0043】
ステップS22に移行すると、制御装置60は、X駆動装置46を制御して、ハンド20を第2のICチップ22bの上方への移動を開始する。
【0044】
次いで、ステップS24では、制御装置60が、Z位置計測装置44の計測値に基づいて、第2のICチップ22bの上方(高さa)にハンド20が位置するまで待機する。この場合、制御装置60は、ハンド20が第2のICチップ22bの上方に位置した段階(図7(d)参照)で、ステップS26に移行する。
【0045】
ステップS26に移行すると、制御装置60は、第2のICチップ22bへのシール貼付処理のサブルーチンを実行する。このサブルーチンでは、図8のフローチャートに沿った処理が実行されることになる。
【0046】
図8の処理では、まず、ステップS30において、制御装置60が、エア供給装置52を制御して、エア噴出し口32からのエアの噴出し(シール28への吹き付け)を開始する(図9(a)参照)。
【0047】
次いで、ステップS32では、制御装置60が、Z駆動装置48を制御して、ハンド20の下降駆動を開始する(図9(b)参照)。この下降駆動の間、エア噴出し口32からのエアの噴出しは、継続されているものとする。この下降駆動により、シール28とエア噴出し口32とが近づくので、シール28に対してエアから与えられる力が大きくなる。このため、図9(b)の状態では、シール28の変形量が、図9(a)の状態よりも大きくなる。
【0048】
次いで、ステップS34では、制御装置60が、ハンド20の高さがbになったか否かを判断する。ここで、高さbは、図9(c)に示すように、金属フレーム24の高さよりも低く、第2のICチップ22bの高さよりも高い位置であるものとする。なお、図9(c)では、高さbが、庇部26bの下面の高さと同一、又は当該下面の高さよりもわずかに低い高さとされている。
【0049】
ここで、本実施形態では、上述したようにエア噴出し口32からのエアの噴出し方向を、X、Z軸方向それぞれに対して45°傾斜した方向に設定している。このようにしているのは、図10に示すように、シール28に対して、Z軸方向(下方向)に撓ませる力と、シール28を横方向に動かす力を均等に作用させるためである。このようにすることで、図9(c)に示すように、シール28が第1のICチップ22aと第2のICチップ22bとの間に入り込むように変形するようになる。また、図9(c)の状態では、シール28の+X端部が、金属フレーム24の庇部26bよりも下側に位置するとともに、庇部26bよりも−X側(金属フレーム24の内側領域側)に位置するようになっている。
【0050】
ステップS34の判断が肯定されると、ステップS36に移行し、制御装置60が、Z駆動装置48を制御して、ハンド20の下降駆動を停止する。次いで、ステップS38では、制御装置60が、エア供給装置52を制御して、エア噴出し口32からのエアの噴出しを停止する。
【0051】
次のステップS40においては、制御装置60が、所定時間経過するまで待機する。ここで、所定時間とは、シールが弾性力により、図9(d)に示すような形状にとなるまでの時間を意味する。なお、所定時間については、制御装置60が、シールの材料や弾性力などに基づいて、自動で設定するようにしてもよいし、オペレータ等が、操作用ペンダント62を介して予め設定してもよい。このように、本実施形態では、エアの吹き付けによりシール28を変形させて、シール28と金属フレーム24の上端部(庇部26bの上面)とを非接触にし(図9(a)〜図9(c))、その後、ハンド20を高さbに位置決めした状態でエアの吹き付けを停止した後、所定時間待機する(図9(d))。これにより、シール28を元の形状(図7(a))に戻さず、庇部26bの下側にシール28の+X端部をもぐりこませた状態(図9(d))とすることが可能となっている。
【0052】
次いで、ステップS42では、制御装置60が、Z駆動装置48を制御して、ハンド20の下降駆動を開始する。次いで、ステップS44では、制御装置60が、ハンド20の高さが高さBになるまで待機する。ここで、高さBは、第2のICチップ22bの高さと、シール28の厚さとを加算した高さであるものとする(図11(a)参照)。図11(a)の状態では、ハンド20が第2のICチップ22bに対してシール28を押し付ける(押圧する)。これにより、第2のICチップ22bに、シール28が貼付されるようになっている。
【0053】
上記のように、ハンド20が高さBまで到達し、シール28が第2のICチップ22bに貼付されると、ステップS44の判断が肯定され、ステップS46に移行する。
【0054】
ステップS46では、制御装置60が、Z駆動装置48を制御して、ハンド20の上昇駆動を開始する。次いで、ステップS48では、制御装置60が、高さcになるまで待機する。ここで、高さcは、図11(b)に示すように、ハンド20が金属フレーム24と接触しない程度の高さ(例えば、高さa=c)であるものとする。
【0055】
本実施形態では、以上の処理を行うことで、貼付後のシール28が金属フレーム24(特に庇部26bの上面)に対して非接触となるように、シール28をプリント基板50(ICチップ22a、22b)に貼付することができる。図12は、シール28が貼付されたプリント基板50を示す平面図である。この図12及び図11(b)に示すように、ICチップ22a,22bにシール28が貼付された状態では、シール28の+X端部が、金属フレーム24の庇部26bの下側に潜りこんだ状態となる。ここで、シール28は、高さの異なる第1のICチップ22aと第2のICチップ22bに貼付されているため、シール28の弾性力により剥がれが発生する可能性がある。この場合、図13(a)に示すように、高さの低い側の第2のICチップ22b部分ほどシールが剥がれる可能性が高い。
【0056】
しかるに、本実施形態では、前述のようにシール28を庇部26bの下側に潜りこませることとしているので、たとえシール28が剥がれたとしても、図13(b)に示すように、シール28の+X端部を押さえることができる。これにより、シール28が剥がれた場合でも、シールの絶縁性能(電磁波のシールド性能)を維持することが可能である。
【0057】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、制御装置60は、金属フレーム24の一部、第1、第2のICチップ22a、22bを覆うように配置されたシール28にハンド20を近づけていき、当該ハンド20により第1のICチップ22aに対してシール28を圧着して貼付する(ステップS14、S16)。そして、制御装置60は、シール28の第1のICチップ22aと第2のICチップ22bとの間の部分にエアを吹き付け、シール28を両ICチップ22a、22bの間に入り込むように変形させ(ステップS30〜S38)、ハンド20を、シール28を介して第2のICチップ22bと対向する位置、かつ金属フレーム24の高さよりも低く第2のICチップ22bの高さよりも高い位置(高さb)に位置決めした状態(ステップS36)で、エアの吹き付けを停止する(ステップS38)。更に、制御装置60は、エア吹き付け停止後に、ハンド20をシール28に近づけていき、当該ハンド20により第2のICチップ22bに対してシール28を圧着して貼付する(ステップS42、S44)。このように、本実施形態では、エアの吹き付けによりシール28を変形させて、シール28と金属フレーム24の上端部とを非接触にし、ハンド20を高さbに位置決めした状態でエアの吹き付けを停止することで、シール28を元の形状(図7(a))に戻さずに、第2のICチップ22bにシール28を貼付する。これにより、貼付後のシール28と金属フレーム24(特に庇部26bの上面)とが非接触となるように、ICチップ22a,22bに対してシール28を貼付することが可能となる。これにより、シール28が金属フレーム24の上に載った状態でICチップ22a,22bにシール28を貼付する場合に比べ、ICチップ22a、22bにおけるシールの剥がれを抑制することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態によると、金属フレーム24が、第1、第2のICチップ22a,22bを取り囲む枠部26aと、枠部26aの上端部において枠部26aの内側領域側に張り出した状態の庇部26bとを有しており、エアを吹き付けてシールを変形させる場合には、シール28の変形により、シール28の金属フレーム24側の端部(+X側端部)が庇部26bの下側に位置し、第2のICチップ22bにシール28を貼付する際には、シール28の金属フレーム24近傍側の端部が庇部26bの下側に位置した状態で、シール28が貼付される。これにより、シール28の+X側端部の位置を、金属フレーム24の庇部26bの下側に潜り込ませた状態で、シール28を貼付することができる。このため、シール28に剥がれが生じた場合であっても、図13(b)に示すように、シール28が第2のICチップ22bを覆い続けるため、シール28の絶縁性能(電磁波のシールド性能)を維持することができる。ここで、本実施形態では、第1のICチップ22aの高さが第2のICチップ22bの高さよりも高く設定されているので、シールの弾性力により第2のICチップ22bにおいてシールが剥がれやすくなることが想定される。このため、シール28のうち、第2のICチップ22b側の端部のみを金属フレーム24の庇部26bの下側にもぐりこませておくこととしても、シールの機能を効率よく維持することが可能である。
【0059】
また、本実施形態によると、シール28にエアを吹き付ける場合、第2のICチップ22bの上方から第1のICチップ22a側に向けて斜め方向(45°)にエアを吹き付けることとしている。これにより、シール28に対して下側に撓ませる力と横方向に動かす力とを同時に作用させることができる。したがって、効率的に、シール28を第1、第2のICチップ22a,22b間に入り込むように変形させることが可能となる。
【0060】
また、本実施形態では、ハンド20の一部にエア噴出し口32が設けられている。これにより、ハンド20の動きに連動してエアの噴出しを行うことができ、ハンド20とシール28との距離を調整することでエアがシールに与える力を調整することが可能となる。
【0061】
なお、上記実施形態では、シール28をプリント基板50上に配置する装置が不図示のシールローダである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、例えば、ハンド20の下面(押圧面34a)に吸着機構を設けておき、当該吸着機構を用いて、ハンド20がシール28をプリント基板50上に搬送するようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、ICチップ22a,22bに対するシール貼付の障害となる物(障害物)が断面逆L字状の金属フレーム24である場合について説明したが、これに限られるものではない。障害物が金属フレーム24である場合には、その形状が断面逆L字状でなくてもよい。また、障害物は、金属フレーム24以外の物体であってもよい。
【0063】
なお、上記実施形態では、エアのシールに対する吹き付けをX、Z軸に対して45°傾斜した方向から行う場合について説明したが、これに限らず、その他の角度からシールに対するエアの吹き付けを行うこととしてもよい。また、上記実施形態では、エアをハンド20に設けられたエア噴出し口32からシールに対して吹き付ける場合について説明したが、これに限らず、エアを吹き付ける機構をハンド20とは別に用意してもよい。
【0064】
なお、上記実施形態では、第1の被着体が第1のICチップ22aであり、第2の被着体が第2のICチップ22bである場合について説明したが、これに限られるものではない。第1の被着体と第2の被着体のそれぞれが一つの物体の一部であってもよい。この場合、例えば、段差のある物体のうち、高さが大きい部分が第1の被着体に相当する部分となり、高さの小さい部分が第2の被着体に相当する部分となる。
【0065】
なお、上記実施形態では、シールを貼付する対象である第1の被着体と第2の被着体が、プリント基板上に配置されているICチップである場合について説明したが、これに限らず、その他の物体であってもよい。
【0066】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【0067】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1) 第1の高さを有する第1の被着体と、前記第1の被着体の近傍に設けられ、前記第1の高さよりも低い第2の高さを有する第2の被着体と、少なくとも前記第1の被着体よりも前記第2の被着体に近い位置に設けられ、前記第1の高さよりも高い第3の高さを有する障害物と、を有する物体に対し、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを覆うようにシールを貼付するシール貼付方法であって、
前記障害物の少なくとも一部、前記第1の被着体及び前記第2の被着体を覆うように配置された前記シールに押圧機構を近づけていき、当該押圧機構により前記第1の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する第1貼付工程と、
前記シールの前記第1の被着体と第2の被着体の間の部分にエアを吹き付け、前記シールを前記第1の被着体と前記第2の被着体との間に入り込むように変形させるシール変形工程と、
前記押圧機構を、前記シールを介して前記第2の被着体と対向する位置、かつ前記第3の高さよりも低く前記第2の高さよりも高い位置に位置決めした状態で、前記エアの吹き付けを停止し、当該停止後に、前記押圧機構を前記シールに近づけていき、当該押圧機構により前記第2の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する第2貼付工程と、を含むシール貼付方法。
(付記2) 前記障害物は、前記第1、第2の被着体を取り囲む枠部と、当該枠部の上端部において該枠部の内側領域側に張り出した状態の庇部と、を有し、前記シール変形工程では、前記シールの変形により、当該シールの前記障害物側の端部が前記庇部の下側に位置し、前記第2貼付工程では、前記シールの前記障害物側の端部が前記庇部の下側に位置した状態で、前記第2の被着体に対して前記シールを貼付することを特徴とする付記1に記載のシール貼付方法。
(付記3) 前記シール変形工程では、前記第2の被着体の上方から前記第1の被着体側に向けた斜め方向に前記エアを吹き付けることを特徴とする付記1又は2に記載のシール貼付方法。
(付記4) 前記押圧機構は、前記エアを吹き付き出す噴出し口を有し、前記シール変形工程では、前記噴出し口から前記エアを噴き出した状態で、前記押圧機構が前記シールに近づくことを特徴とする付記3に記載のシール貼付方法。
(付記5) 第1の高さを有する第1の被着体と、前記第1の被着体の近傍に設けられ、前記第1の高さよりも低い第2の高さを有する第2の被着体と、少なくとも前記第1の被着体よりも前記第2の被着体に近い位置に設けられ、前記第1の高さよりも高い第3の高さを有する障害物と、を有する物体に対し、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを覆うようにシールを貼付するシール貼付装置であって、
前記シールを前記第1、第2の被着体に対して押し付けて圧着する押圧機構と、
前記シールに対してエアを吹き付けるエア供給装置と、
前記押圧機構の動作と、前記エア供給装置の動作とを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記障害物の少なくとも一部、前記第1の被着体及び前記第2の被着体を覆うように配置された前記シールに前記押圧機構を近づけていき、当該押圧機構により前記第1の被着体に対して前記シールを圧着して貼付し、前記エア供給装置を制御して、前記シールの前記第1の被着体と第2の被着体の間の部分に対してエアを吹き付けることで、前記シールを前記第1の被着体と前記第2の被着体との間に入り込むように変形させ、前記押圧機構を、前記シールを介して前記第2の被着体と対向する位置、かつ前記第3の高さよりも低く前記第2の高さよりも高い位置に位置決めした状態で、前記エア供給装置によるエアの吹き付けを停止し、当該停止後に、前記押圧機構を前記シールに近づけていき、当該押圧機構により前記第2の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する、ことを特徴とするシール貼付装置。
(付記6) 前記エア供給装置から供給されるエアは、前記押圧機構の一部に設けられたエア噴出し口から前記シールに対して吹き付けられることを特徴とする付記5に記載のシール貼付装置。
(付記7) 前記制御装置は、前記第1の被着体と前記第2の被着体との間に入り込むように前記シールを変形させる際に、前記押圧機構を前記シールに近づけつつ、前記エア供給装置を制御して、前記エア噴出し口から前記シールに対して前記エアを吹き付けることを特徴とする付記6に記載のシール貼付装置。
【符号の説明】
【0068】
20 ハンド(押圧機構)
22a 第1のICチップ(第1の被着体)
22b 第2のICチップ(第2の被着体)
24 金属フレーム(障害物)
26a 枠部
26b 庇部
28 シール
32 エア噴出し口(噴出し口)
50 プリント基板(物体)
100 シール貼付装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の高さを有する第1の被着体と、前記第1の被着体の近傍に設けられ、前記第1の高さよりも低い第2の高さを有する第2の被着体と、少なくとも前記第1の被着体よりも前記第2の被着体に近い位置に設けられ、前記第1の高さよりも高い第3の高さを有する障害物と、を有する物体に対し、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを覆うようにシールを貼付するシール貼付方法であって、
前記障害物の少なくとも一部、前記第1の被着体及び前記第2の被着体を覆うように配置された前記シールに押圧機構を近づけていき、当該押圧機構により前記第1の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する第1貼付工程と、
前記シールの前記第1の被着体と第2の被着体の間の部分にエアを吹き付け、前記シールを前記第1の被着体と前記第2の被着体との間に入り込むように変形させるシール変形工程と、
前記押圧機構を、前記シールを介して前記第2の被着体と対向する位置、かつ前記第3の高さよりも低く前記第2の高さよりも高い位置に位置決めした状態で、前記エアの吹き付けを停止し、当該停止後に、前記押圧機構を前記シールに近づけていき、当該押圧機構により前記第2の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する第2貼付工程と、
を含むシール貼付方法。
【請求項2】
前記障害物は、前記第1、第2の被着体を取り囲む枠部と、当該枠部の上端部において該枠部の内側領域側に張り出した状態の庇部と、を有し、
前記シール変形工程では、前記シールの変形により、当該シールの前記障害物側の端部が前記庇部の下側に位置し、
前記第2貼付工程では、前記シールの前記障害物側の端部が前記庇部の下側に位置した状態で、前記第2の被着体に対して前記シールを貼付することを特徴とする請求項1に記載のシール貼付方法。
【請求項3】
前記シール変形工程では、前記第2の被着体の上方から前記第1の被着体側に向けた斜め方向に前記エアを吹き付けることを特徴とする請求項1又は2に記載のシール貼付方法。
【請求項4】
前記押圧機構は、前記エアを吹き付き出す噴出し口を有し、
前記シール変形工程では、前記噴出し口から前記エアを噴き出した状態で、前記押圧機構が前記シールに近づくことを特徴とする請求項3に記載のシール貼付方法。
【請求項5】
第1の高さを有する第1の被着体と、前記第1の被着体の近傍に設けられ、前記第1の高さよりも低い第2の高さを有する第2の被着体と、少なくとも前記第1の被着体よりも前記第2の被着体に近い位置に設けられ、前記第1の高さよりも高い第3の高さを有する障害物と、を有する物体に対し、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを覆うようにシールを貼付するシール貼付装置であって、
前記シールを前記第1、第2の被着体に対して押し付けて圧着する押圧機構と、
前記シールに対してエアを吹き付けるエア供給装置と、
前記押圧機構の動作と、前記エア供給装置の動作とを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記障害物の少なくとも一部、前記第1の被着体及び前記第2の被着体を覆うように配置された前記シールに前記押圧機構を近づけていき、当該押圧機構により前記第1の被着体に対して前記シールを圧着して貼付し、
前記エア供給装置を制御して、前記シールの前記第1の被着体と第2の被着体の間の部分に対してエアを吹き付けることで、前記シールを前記第1の被着体と前記第2の被着体との間に入り込むように変形させ、
前記押圧機構を、前記シールを介して前記第2の被着体と対向する位置、かつ前記第3の高さよりも低く前記第2の高さよりも高い位置に位置決めした状態で、前記エア供給装置によるエアの吹き付けを停止し、当該停止後に、前記押圧機構を前記シールに近づけていき、当該押圧機構により前記第2の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する、
ことを特徴とするシール貼付装置。
【請求項1】
第1の高さを有する第1の被着体と、前記第1の被着体の近傍に設けられ、前記第1の高さよりも低い第2の高さを有する第2の被着体と、少なくとも前記第1の被着体よりも前記第2の被着体に近い位置に設けられ、前記第1の高さよりも高い第3の高さを有する障害物と、を有する物体に対し、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを覆うようにシールを貼付するシール貼付方法であって、
前記障害物の少なくとも一部、前記第1の被着体及び前記第2の被着体を覆うように配置された前記シールに押圧機構を近づけていき、当該押圧機構により前記第1の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する第1貼付工程と、
前記シールの前記第1の被着体と第2の被着体の間の部分にエアを吹き付け、前記シールを前記第1の被着体と前記第2の被着体との間に入り込むように変形させるシール変形工程と、
前記押圧機構を、前記シールを介して前記第2の被着体と対向する位置、かつ前記第3の高さよりも低く前記第2の高さよりも高い位置に位置決めした状態で、前記エアの吹き付けを停止し、当該停止後に、前記押圧機構を前記シールに近づけていき、当該押圧機構により前記第2の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する第2貼付工程と、
を含むシール貼付方法。
【請求項2】
前記障害物は、前記第1、第2の被着体を取り囲む枠部と、当該枠部の上端部において該枠部の内側領域側に張り出した状態の庇部と、を有し、
前記シール変形工程では、前記シールの変形により、当該シールの前記障害物側の端部が前記庇部の下側に位置し、
前記第2貼付工程では、前記シールの前記障害物側の端部が前記庇部の下側に位置した状態で、前記第2の被着体に対して前記シールを貼付することを特徴とする請求項1に記載のシール貼付方法。
【請求項3】
前記シール変形工程では、前記第2の被着体の上方から前記第1の被着体側に向けた斜め方向に前記エアを吹き付けることを特徴とする請求項1又は2に記載のシール貼付方法。
【請求項4】
前記押圧機構は、前記エアを吹き付き出す噴出し口を有し、
前記シール変形工程では、前記噴出し口から前記エアを噴き出した状態で、前記押圧機構が前記シールに近づくことを特徴とする請求項3に記載のシール貼付方法。
【請求項5】
第1の高さを有する第1の被着体と、前記第1の被着体の近傍に設けられ、前記第1の高さよりも低い第2の高さを有する第2の被着体と、少なくとも前記第1の被着体よりも前記第2の被着体に近い位置に設けられ、前記第1の高さよりも高い第3の高さを有する障害物と、を有する物体に対し、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを覆うようにシールを貼付するシール貼付装置であって、
前記シールを前記第1、第2の被着体に対して押し付けて圧着する押圧機構と、
前記シールに対してエアを吹き付けるエア供給装置と、
前記押圧機構の動作と、前記エア供給装置の動作とを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記障害物の少なくとも一部、前記第1の被着体及び前記第2の被着体を覆うように配置された前記シールに前記押圧機構を近づけていき、当該押圧機構により前記第1の被着体に対して前記シールを圧着して貼付し、
前記エア供給装置を制御して、前記シールの前記第1の被着体と第2の被着体の間の部分に対してエアを吹き付けることで、前記シールを前記第1の被着体と前記第2の被着体との間に入り込むように変形させ、
前記押圧機構を、前記シールを介して前記第2の被着体と対向する位置、かつ前記第3の高さよりも低く前記第2の高さよりも高い位置に位置決めした状態で、前記エア供給装置によるエアの吹き付けを停止し、当該停止後に、前記押圧機構を前記シールに近づけていき、当該押圧機構により前記第2の被着体に対して前記シールを圧着して貼付する、
ことを特徴とするシール貼付装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−58684(P2013−58684A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197274(P2011−197274)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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