説明

ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ核酸配列および関連生成物

本発明は、ポリペプチドおよびそれに関連する核酸配列、ならびにこのような分子を精製する、得るおよび遺伝子操作用途に使用する方法に関する。特に、本発明は、植物および真菌におけるトリアシルグリセロールの生成に関連するポリペプチドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年7月31日に出願した米国仮出願第60/399,427号(参照により本明細書に組み入れる)の利益を主張する。
【0002】
本発明は、ポリペプチドおよびそれに関連する核酸配列、ならびにこのような分子を精製、入手および遺伝子操作用途において使用する方法に関する。特に、本発明は、植物、真菌および哺乳動物におけるトリアシルグリセロールの生成に関連するポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0003】
ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(以下、DGATと称する)は、植物、真菌および哺乳動物におけるトリアシルグリセロールの生成における最終酵素ステップを触媒する内在性膜タンパク質である。DGATは、全般的に、Harwood, Biochem. Biophysics. Acta, 13017-13056 (1996);Daumら, Yeast, 16:1471-1510 (1998);およびColemanら, Annu. Rev. Nutr., 20:77-103 (2000)に記載されている。この酵素は、アシル−コエンザイムAから1,2−ジアシルグリセロール(DAG)のsn−3位へアシル基を転移させ、トリアシルグリセロール(TAG)を形成することに関与する。植物および真菌では、DGATは、特に脂肪種子において、膜および脂質体画分に伴い、エネルギーが蓄積される際に使用される炭素の貯蔵に寄与する。TAGは、細胞におけるエネルギー蓄積のための重要な化学物質であると考えられている。DGATは、TAG構造を調節し、TAG合成を指令することが知られている。さらに、DGAT反応は、油合成に特異的であることが知られている。
【0004】
植物において、TAGは、種子発芽の間に使用されるエネルギーの貯蔵形態として種子によって使用される植物油の主要成分である。高等植物は、ケネディー経路(Kennedyら, J. Biol. Chem., 222:193 (1956);Finnlaysonら, Arch. Biochem. Biophys., 199:179-185 (1980))と一般的に称される同様の代謝経路を介して、油を合成すると考えられている。脂肪酸は、色素体中で、脂肪酸合成酵素(FAS)として集合的に知られる酵素により触媒される一連の反応を経てアセチルCoAから作られる。色素体において生成される脂肪酸は、細胞の細胞質画分に輸送され、コエンザイムAにエステル化される。これらのアシルCoAは、小胞体(ER)上でのグリセロ脂質合成の基質である。グリセロ脂質合成自体は、まずホスファチジン酸(PA)およびDAGを生じる一連の反応である。これらの代謝中間体のいずれも、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、もしくはホスファチジルコリン(PC)等の膜リン脂質に方向付けられ得るか、または中性トリアシルグリセロール(TAG)を形成するように方向付けられ得る。
【0005】
DAGは、グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼ(G3PAT)、およびリゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)により順番に触媒されてPAを作るステップと、次いで、ホスファチジン酸ホスファターゼ(PAP)により触媒される追加の加水分解ステップによってDAGを作ることにより、グリセロール−3−リン酸および脂質アシル−CoAから合成される。ほとんどの細胞において、DAGは、膜リン脂質を作るために使用され、最初のステップはCTP−ホスホコリンシチジリルトランスフェラーゼにより触媒されるPC合成である。貯蔵油を生成する細胞では、DAGは、DGATにより触媒される反応において第3の脂肪酸でアシル化される。
【0006】
DGATタンパク質の2つの異なるファミリーが同定されている。DGATタンパク質の第1のファミリー(以下、DGAT1と称する)は、アシル−コエンザイムA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)に関し、文献に記載されている(例えば、米国特許第6,100,077号および同第6,344,548号を参照)。先に同定されたファミリーであるDGAT1タンパク質とは無関係な、DGATタンパク質の第2のファミリー(以下、DGAT2と称する)は、本発明に記載する。このDGAT2タンパク質のファミリーは、2002年4月15日に出願された米国特許出願第10/121,857号にも記載されている。
【0007】
グリセロール骨格への脂肪酸の取り込みに関する表現型の結果をもたらしうる核酸配列を得て、油を生成することは、様々な障害の課題であり、目的の代謝因子の同定、有用な動的性質を有するタンパク質供給源の選択および特徴決定、アミノ酸配列決定を可能にするレベルまでの目的のタンパク質の精製、アミノ酸配列データを利用してプローブとして使用可能な核酸配列を得て所望のDNA配列を回収すること、ならびに構築物の調製、得られた植物の形質転換および分析が挙げられるがこれらに限定されない。
【0008】
従って、油構造および量を改変可能な酵素標的、およびこのような酵素標的の核酸配列の有用な組織供給源の同定が必要である。酵素標的は、単独で、あるいは油生成の増大もしくは低減、TAG構造、脂肪酸プールにおける飽和対不飽和脂肪酸の比率、および/または脂肪酸プールに対する改変の結果としての他の新規油組成物に関連する他の核酸配列との組合せで1つ以上の用途に適応することが理想的である。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、植物中で生成される油の組成および種子の他の成分(例えば、その食事内容物が挙げられる)に対する油の内容量(%)を改変する両方のニーズに応える遺伝学的ツールを提供する。本発明は、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)ポリペプチドおよびこれらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、植物および真菌供与源(例えば、モルティエレラ・ラマニアナ(Mortierella ramanniana)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、およびアカパンカビ(Neurospora crassa)が挙げられる)から誘導されたものを含む。
【0010】
本発明は、DGATタンパク質をコードするポリヌクレオチド、および部分的または完全DGATコード配列を含むポリヌクレオチドにさらに関する。本発明は、DGAT2タンパク質をコードするポリヌクレオチド、および部分的または完全DGAT2コード配列を含むポリヌクレオチドも提供する。
【0011】
本発明は、植物および昆虫宿主細胞中でDGAT2を発現可能な構築物を含む、DGAT2の転写および発現のために使用できる組換えDNA構築物も提供する。
【0012】
本発明は、配列番号14、18、20、22、24、26および28からなる群より選択されるポリペプチド配列を含むポリペプチド分子をコードする核酸配列を含む単離された核酸分子も含む。このような単離された核酸分子の好ましいものとしては、例えば、配列番号11、12、13、16、17、19、21、23、25および27が挙げられる。
【0013】
本発明は、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼと相同性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含む単離された核酸分子であって、配列番号11、12、13、16、17、19、21、23、25および27からなる群より選択される核酸分子を含む。
【0014】
本発明は、配列番号14、18、20、22および24からなる群より選択されるポリペプチド配列を含むポリペプチド分子をコードする核酸分子と機能的に連結された、植物細胞において機能する異種プロモーターを含む発現カセットを含むDNA構築物も含む。具体的な実施形態では、DNA構築物は、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼのポリペプチドをコードする核酸と機能的に連結された、植物細胞において機能する第2の異種プロモーターを含む第2の発現カセットをさらに含む。第2の異種プロモーターは、最初に使用する異種プロモーターと異なるかまたは同じであることが好ましく、2つの異種プロモーターが異なることがより好ましい。
【0015】
本発明は、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼと相同性を有するポリペプチドをコードする核酸分子(配列番号11、12、13、16、17、19、21および23からなる群より選択される)と機能的に連結された、植物細胞において機能する異種プロモーターを含む発現カセットを含むDNA構築物も含む。特定の実施形態では、DNA構築物は、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼのポリペプチドをコードする核酸分子と機能的に連結された、植物細胞において機能する第2の異種プロモーターを含む第2の発現カセットをさらに含む。第2の異種プロモーターは、最初に使用する異種プロモーターと異なるかまたは同じであることが好ましく、2つの異種プロモーターは異なることがより好ましい。
【0016】
本発明は、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼと相同性を有するポリペプチドをコードする核酸分子(核酸分子は、配列番号11、12、13、16、17、19、21および23からなる群より選択される)と機能的に連結された、植物細胞において機能する異種プロモーターを含む異種発現カセットから構成されるDNA構築物を含む植物または種子も含む。植物または種子は、トウモロコシ、ダイズ、カノーラ、アブラナ、綿、ゴマ、亜麻、ラッカセイ、ヒマワリ、ベニバナ、オリーブおよびアブラヤシのうちの1つ以上であることが好ましい。
【0017】
本発明は、配列番号14、18、20、22および24からなる群より選択されるポリペプチド配列を含むポリペプチド分子をコードする核酸分子と機能的に連結された、植物細胞において機能する異種プロモーターを含む発現カセットを含むDNA構築物を含む植物または種子も含む。植物または種子は、トウモロコシ、ダイズ、カノーラ、アブラナ、綿、ゴマ、亜麻、ラッカセイ、ヒマワリ、ベニバナ、オリーブおよびアブラヤシのうちの1つ以上であることが好ましい。
【0018】
本発明の植物または種子は処理されることが好ましい。植物または種子を使用して、例えば、飼料、食事、油またはタンパク質等の生成物を生成することがより好ましい。本明細書で使用する植物または種子は、植物細胞において機能する異種プロモーター、ならびに配列番号11、12、13、16、17、19、21および23からなる群より選択される核酸分子を含むDNA構築物を含む。
【0019】
別の実施形態では、本発明の植物または種子は、配列番号14、18、20、22および24からなる群より選択されるポリペプチド配列を含むポリペプチド分子をコードする核酸分子と機能的に連結された、植物細胞において機能する異種プロモーターを含む発現カセットを含むDNA構築物を含む。本発明の植物または種子は、(飼料、食事、油およびタンパク質であり得る)製品に加工されることが好ましい。
【0020】
本発明は、宿主細胞またはその子孫におけるDGAT2タンパク質の生成方法をさらに提供する。DGAT2を含む組換え細胞も提供する。
【0021】
本発明は、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼを発現するDNA構築物で植物細胞を形質転換するステップ、および該植物細胞を稔性植物に再生させるステップを含む、同様の遺伝バックグラウンドを有するが導入される核酸分子は欠いている植物から得た種子と比べて強化した油組成を有する植物の作製方法を提供する。本発明は、同様の遺伝バックグラウンドを有するが導入される核酸分子は欠いている植物から得た植物と比べて増大した油収率を有する稔性植物も含む。
【0022】
別の態様では、本発明は、AYVFGYEPHSVXPI(配列番号33)およびFXXPXYR(配列番号34)(Xは任意のアミノ酸を示す)のアミノ酸モチーフの少なくとも1つを有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。このようなポリペプチドとしては、例えば、配列番号14、18、20、22および24が挙げられる。
【0023】
さらに別の実施形態では、本発明は、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ活性を有し、AYVFGYEPHSVXPI(配列番号33)およびFXXPXYR(配列番号34)(Xは任意のアミノ酸を示す)のアミノ酸モチーフの少なくとも1つを有する断片およびタンパク質を含むポリペプチドを提供する。このようなポリペプチドとしては、例えば、配列番号14、18、20、22および24が挙げられる。
【0024】
配列表の簡単な説明
配列番号1 モルティエレラ・ラマニアナDGAT2AのDNA配列
配列番号2 モルティエレラ・ラマニアナDGAT2Aのポリペプチド配列
配列番号3 モルティエレラ・ラマニアナDGAT2BのDNA配列
配列番号4 モルティエレラ・ラマニアナDGAT2Bのポリペプチド配列
配列番号5 サッカロミセス・セレビシエDGAT2BのDNA配列
配列番号6 サッカロミセス・セレビシエDGAT2Bのポリペプチド配列
配列番号7 NcDGAT2のDNAプライマー
配列番号8 NcDGAT2のDNAプライマー
配列番号9 NcDGAT2のDNAプライマー
配列番号10 NcDGAT2のDNAプライマー
配列番号11 モルティエレラ・ラマニアナDAGT2B.nnoのDNA配列
配列番号12 アカパンカビDGAT.nnoのDNA配列
配列番号13 アカパンカビDGAT2のDNA配列
配列番号14 アカパンカビDGAT2のポリペプチド配列
配列番号15 モルティエレラ・ラマニアナDGAT2A.nnoのDNA配列
配列番号16 サッカロミセス・セレビシエDGAT2.nnoのDNA配列
配列番号17 ホルディウム・ブルガレ(Hordeum vulgare)DGAT2のDNA配列
配列番号18 ホルディウム・ブルガレDGAT2のポリペプチド配列
配列番号19 ズィー・メイス(Zea mays)DGAT2のDNA配列
配列番号20 ズィー・メイスDGAT2のポリペプチド配列
配列番号21 グリシン・マックス(Glycine max)DGAT2のDNA配列
配列番号22 グリシン・マックスDGAT2のポリペプチド配列
配列番号23 トリチカム・アエスチバム(Triticum aestivum)DGAT2のDNA配列
配列番号24 トリチカム・アエスチバムDGAT2のポリペプチド配列
配列番号25 キイロショウジョウバエDGATのDNA配列
配列番号26 キイロショウジョウバエDGATのポリペプチド配列
配列番号27 ホモ・サピエンスDGATのDNA配列
配列番号28 ホモ・サピエンスDGATのポリペプチド配列
配列番号29 シゾサッカロミセス・ポンベ1 DGAT2のポリペプチド配列
配列番号30 シゾサッカロミセス・ポンベ2 DGAT2のポリペプチド配列
配列番号31 カンジダ・アルビカンスDGAT2のポリペプチド配列
配列番号32 シロイヌナズナDGAT2のポリペプチド配列
図面の簡単な説明
【0025】
図1a、1b及び1cは、特定の誘導型DGAT2ポリペプチド配列の配列アライメントを集合的に示す。ポリペプチド間の類似する配列を使用して、同様の活性を有する類似分子を同定できる。関連する分子間の保存された配列モチーフを同定するためにいくつかのコンピュータプログラムが使用でき、これにはMEMEまたはGENE SCANがあるがこれらに限定されない。配列モチーフを同定した後、それらの機能をアッセイできる。例えば、DGAT中のモチーフ配列を使用して、他のDGATポリペプチドを同定できる。本発明で開示するポリペプチド配列から新規モチーフを誘導でき、配列データベースをスクリーニングするために、または縮重核酸プローブの設計において使用して、DGATをコードする新規DNA分子を単離できる。予測DGAT2ポリペプチドのアミノ酸配列は、クラスター(Clustal)マルチプル配列アライメントプログラムを使用してアライメントさせる。完全に保存された残基は、黒で網掛けし、灰色の網掛けは、3つ以上の配列のコンセンサスである。全ての配列が完全長配列である。アライメントの上に示す残基は、アシルトランスフェラーゼのモチーフDおよびEにおいて見とめられる高度に保存されたシグニチャー(signature)アミノ酸である(Neuwald, Curr. Biol., 7:465-466, (1997))。この領域においては、DGAT2およびアシルトランスフェラーゼスーパーファミリー配列は同時にアライメントし、共通の保存アミノ酸残基のみを示す。表記(Key):MrDGAT2A(配列番号2)、MrDGAT2B(配列番号4)、ScDGAT2B(配列番号6);NcDGAT2(配列番号14)、ZmDGAT2(配列番号20)、GmDGAT2(配列番号22)、HvDGAT2(配列番号18)、TaDGAT2(配列番号24)、CaDGAT2(配列番号31)、およびAtDGAT2(配列番号32)。
図2は、図1のDGAT2ファミリーメンバーの系統樹を示す。系統樹はDNASTARソフトウェアを使用して構築されている。
図3は、本発明で使用するDNAプライマー分子の一覧である。
図4は、ベクターpCGN8832の模式図である。
図5は、ベクターpMON68762の模式図である。
図6は、ベクターpMON68654の模式図である。
図7は、ベクターpMON70904の模式図である。
図8は、ベクターpMON70920の模式図である。
図9は、ベクターpMON70923の模式図である。
図10は、ベクターpMON70925の模式図である。
図11は、ベクターpMON70927の模式図である。
図12aおよび12bは、図中に示すように、特定の真菌種から誘導したDGAT2ポリペプチド配列の配列アライメントを示す。この図を読み取るための情報(使用した略語および網掛けの意味を含む)は、上記図1a、1bおよび1cについて記載した通りである。網掛けおよび黒色で示す保存領域は、効果的に利用されて、他の種から誘導された他のDGAT2ポリペプチドを同定しうる。具体的には、これらの配列の分析により、以下のモチーフが明らかになり、FXXPXYR(配列番号34)(Xは任意のアミノ酸を表す)、これはさらなるDGAT2配列(好ましくは真菌供与源のもの)を同定するために使用され得る。
図13は、図中に示すように、特定の植物種に由来するDGAT2ポリペプチド配列の配列アライメントを示す。この図を読み取るための情報(使用した略語および網掛けの意味を含む)は、上記図1a、1bおよび1cについて記載した通りである。網掛けおよび黒色で示す保存領域は、効果的に利用されて、他の種から誘導された他のDGAT2ポリペプチドを同定しうる。具体的には、これらの配列の分析により、以下のモチーフが明らかになり、AYVFGYEPHSVXPI(配列番号33)、これはさらなるDGAT2配列(好ましくは植物供与源のもの)を同定するために使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本明細書で使用する場合、トリアシルグリセロール組成物という用語は、グリセロールの非水溶性脂肪酸トリエステルを含む(すなわち、化学式(CH−R)(式中、Rはエステルである))、生物に存在する化合物を意味する。
【0027】
本明細書で使用する場合、DGAT1という用語は、1999年6月4日に出願された米国特許出願第09/326,203号(参照により本明細書に全体的に組み入れる)に記載されるDGATタンパク質を指し、これは、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)遺伝子ファミリーに関連し、アシル−コエンザイムAから1,2−ジアシルグリセロール(DAG)のsn−3位へアシル基を転移させてトリアシルグリセロール(TAG)を形成することに寄与する。
【0028】
本明細書で使用する場合、DGAT2という用語は、アシル−コエンザイムAから1,2−ジアシルグリセロール(DAG)のsn−3位へアシル基を転移させてトリアシルグリセロール(TAG)を形成することに寄与するが、上記定義した非DGAT1タンパク質を指す。DGAT2タンパク質は、典型的に、重量がほぼ40kD未満であり、典型的に33〜42kDの範囲にある。
【0029】
本明細書で使用する場合、DGAT2Aという用語は、配列番号2のアミノ酸配列を有するモルティエレラ・ラマニアナDGAT2を指す。本明細書で使用する場合、DGAT2Bという用語は、配列番号4のアミノ酸配列を有するモルティエレラ・ラマニアナDGAT2を指す。
【0030】
本明細書で使用する場合、「油組成」という表現は、サンプル中の種々の脂肪酸または油成分の比率を意味する。このようなサンプルは、植物、または種子等の植物部分であり得る。このようなサンプルはまた、植物部分の集合であってもよい。
【0031】
本明細書で使用する場合、好適な実施形態における「含有%」という表現は、好適な実施形態において、他の同様のまたは関連する成分に対する特定の成分の合計重量%を意味する。
【0032】
本明細書で使用する場合、「強化油(強化した油)」という表現は、高い油収率または変化した油組成を含む。
【0033】
本明細書で使用する場合、本発明のジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)遺伝子は、酵素反応条件下で、1,2−ジアシルグリセロールおよび脂肪アシル基質からのトリアシルグリセロールの生成を触媒する能力を示す、細胞供与源から入手可能なアミノ酸(タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド等)をコードするあらゆる核酸配列を含む。「酵素反応条件」とは、酵素を機能させるあらゆる必要な条件(すなわち、温度、pH、阻害物質の欠如等の因子)が環境中で整っていることを意味する。
【0034】
本発明は、トリアシルグリセロール(TAG)生成の最終ステップを触媒するアシルCoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(本明細書中ではDGATと称する)に関する。特に、本発明は、DGATポリペプチド、および該DGATポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。本発明のDGATポリペプチドおよびポリヌクレオチド分子は、植物および真菌供与源から単離される。昆虫および植物細胞中でのcDNAの発現により、これらの細胞から単離される膜に対して高レベルのDGAT活性が付与される。本発明は、DGAT機能を有する酵素をコードする、真菌、植物および動物におけるメンバーを含む遺伝子ファミリーを提供する。
【0035】
DGATタンパク質は、脂肪性(oleaginous)真菌モルティエレラ・ラマニアナの細胞から単離される。細胞溶解の後、DGAT活性は脂質体画分に伴っており、膜結合タンパク質を放出させて従来クロマトグラフィー技術を用いてそれらを精製するために界面活性剤による可溶化が必要とされる。ホモジネート中のDGAT活性の刺激が、界面活性剤Triton X−100の添加後に見とめられる。5ステッププロトコールを用いると、SDS−PAGEで得た36kDおよび36.5kDの2つのタンパク質がDGAT活性を有すると同定される。これらのタンパク質は、MrDGAT2AおよびMrDGAT2Bとそれぞれ称する。各タンパク質を含む最も純度が高く最も活性な画分について、それぞれ1.6%および4.2%の最終比活性回復が報告されている。昆虫細胞中でのクローン化cDNAの発現によりDGATを確認した。いくつかの植物および真菌DGATホモログについて完全長クローンを得て、昆虫細胞または植物細胞において発現タンパク質を評価する。テストしたホモログは、いくらかのレベルのDGAT活性を示し、このファミリーにおける遺伝子が機能により関係することを実証した。
【0036】
本発明は、多数の物質(例えば、アシル−コエンザイムAから1,2−ジアシルグリセロール(DAG)のsn−3位へアシル基を転移させて、トリアシルグリセロール(TAG)を形成することに関与する酵素と関連する核酸分子およびポリペプチド)を提供し、このような物質の使用を提供する。
【0037】
核酸分子
本発明の物質は核酸分子を含む。本発明の好適な態様では、核酸分子は、配列番号11、12、13、16、17、19、21、23、25および27からなる群より選択される核酸配列を含む。
【0038】
本発明の別の態様では、核酸分子は、配列番号14、18、20、22、24、26、28およびそれらの断片からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。
【0039】
本発明の好適な実施形態は、他のDGAT遺伝子およびタンパク質を同定することを目的とした、モチーフ(すなわち、同定したDGAT分子の配列において見とめられる保存配列)の使用に関する。従って、当業者であれば、例えば、配列番号33または34等のモチーフをモチーフ配列を逆転写するかまたは逆転写することなく使用して、DGATまたはDGAT活性を有する他のポリペプチドをコードする他の遺伝子をスクリーニングすることができる。
【0040】
本発明の第1の核酸配列は、他の核酸(またはその相補鎖)と最適にアライメントした際(適切なヌクレオチド挿入または欠失が基準配列の比較範囲において合計で20%未満)に、少なくとも20ヌクレオチド位置、好ましくは50ヌクレオチド位置、より好ましくは少なくとも100ヌクレオチド位置の比較範囲、そして最も好ましくは第1の核酸の全長にわたり、少なくとも約75%のヌクレオチド配列同一性、好ましくは少なくとも約80%の同一性、より好ましくは少なくとも約85%の同一性、さらに好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%の同一性がある場合に、基準核酸配列と「実質的な同一性」を示す。比較範囲をアライメントするための配列の最適なアライメントは、SmithおよびWaterman, Adv. Appl. Math., 2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムにより;NeedlemanおよびWunsch, J. Mol. Biol., 48:443 (1970)の相同性アライメントアルゴリズムにより;PearsonおよびLipman, Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.), 85:2444 (1988)類似法の検索により;好ましくはWisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.におけるこれらのアルゴリズムのコンピュータ化実装(GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)により実施され得る。基準核酸は、完全長分子またはより長い分子の一部であり得る。あるいはまた、2つの核酸は、一方が他方にストリンジェントな条件下でハイブリダイズした場合に実質的な同一性を有するとする。
【0041】
本発明の別の態様では、核酸配列は、機能は変化することなく1つ以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたためにいずれのタンパク質とも異なるタンパク質をコードし得ることが理解される。例えば、このような保存アミノ酸置換をコード可能なコドンが当該分野で公知であると理解される。
【0042】
本発明の核酸分子のサブセットの1つは、断片核酸分子である。断片核酸分子は、具体的に開示しているもの等、本発明の核酸分子の重要な部分または実際にほとんどの部分から構成され得る。あるいはまた、断片は、(約15〜約400ヌクレオチド残基、より好ましくは約15〜約30ヌクレオチド残基、または約50〜約100ヌクレオチド残基、または約100〜約200ヌクレオチド残基、または約200〜約400ヌクレオチド残基、または約275〜約350ヌクレオチド残基を有する)より小さいオリゴヌクレオチドを含み得る。
【0043】
本発明の1つ以上の核酸分子の断片は、プローブ、具体的にはPCRプローブであり得る。PCRプローブは、別の核酸と二本鎖構造を形成してポリメラーゼ活性を開始可能な核酸分子である。PCRプローブの構造を決定する様々な方法およびPCR技術が当該分野に存在する。例えばGeneUp(Pesoleら, BioTechniques, 25:112-123 (1998))等のプログラムを使用したコンピュータによる検索を使用して、可能性のあるPCRプライマーを同定できる。
【0044】
本発明の核酸分子またはその断片は、特定の状況下で他の核酸分子と特異的にハイブリダイズすることができる。本発明の核酸分子は、配列番号11、12、13、16、17、19、21、23、25および27、ならびにそれらの相補配列からなる群より選択される核酸配列を有する核酸分子に特異的にハイブリダイズするものを含む。本発明の核酸分子は、配列番号14、18、20、22、24、26、28およびそれらの断片から選択されるアミノ酸配列をコードする核酸分子に特異的にハイブリダイズするものも含む。
【0045】
核酸分子は、分子同士が完全な相補性を示す場合に、別の核酸分子の「相補配列」であると言う。本明細書で使用する場合、1つの分子の全てのヌクレオチドが他方のヌクレオチドと相補的である場合に、これらの分子は「完全な相補性」を示すと言う。2つの分子は、十分な安定性をもって互いとハイブリダイズして少なくとも慣用的な「低ストリンジェント」な条件下において互いとアニーリングしたままでいられる場合に、「最低限に相補的」であると言う。同様に、分子は、十分な安定性をもって互いにハイブリダイズして慣用的な「高ストリンジェント」な条件下において互いとアニーリングしたままでいられる場合に、「相補的」であると言う。慣用的なストリンジェントな条件は、Sambrookら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第二版, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (1989)およびHaymesら, Nucleic Acid Hybridization, A Practical Approach, IRL Press, Washington, DC (1985)に記載されている。従って、完全な相補性からの逸脱は、そのような逸脱が分子の二本鎖構造形成能力を完全に妨げない限り許容可能である。従って、核酸分子が、プライマーまたはプローブとして作用するためには、配列において十分に相補的であって、採用する特定の溶媒および塩条件下で安定した二本鎖構造を形成可能であることのみが必要である。
【0046】
例えば、約45℃における6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、その後20〜25℃での2.0×SSCの洗浄等の、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェントな条件は、当業者に公知であるか、またはCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, New York (1989), 6.3.1-6.3.6から知ることができる。例えば、洗浄ステップにおける塩濃度は、50℃で約2.0×SSCの低ストリンジェンシー〜65℃で約0.2×SSCの高ストリンジェンシーから選択され得る。さらに、洗浄ステップにおける温度は、室温(約22℃)での低ストリンジェンシー条件から、約65℃の高いストリンジェンシー条件に上昇させてもよい。温度および塩の両方とも可変的であり得るか、または温度もしくは塩濃度のいずれかを一定に保持して、他方の変数を変えてもよい。
【0047】
好適な実施形態では、本発明の核酸は、例えば約2.0×SSCおよび約65℃の中度のストリンジェント条件下で、配列番号11、12、13、16、17、19、21、23、25および27に示される1つ以上の核酸分子ならびにそれらの相補配列に特異的にハイブリダイズする。
【0048】
本発明の核酸分子は、ホモログポリペプチドもコードし得る。本明細書で使用する場合、ホモログポリペプチド分子またはその断片は、第2の種における対応するタンパク質分子またはその断片である(例えば、トウモロコシルビスコ(rubisco)小サブユニットは、シロイヌナズナルビスコ小サブユニットのホモログである)。ホモログは、分子進化またはDNAシャッフリング技術によっても生成されて、分子に、元のポリペプチドの少なくとも1つの機能的または構造的特徴を保持させることもできる(例えば、米国特許第5,811,238号を参照)。
【0049】
別の実施形態では、ホモログは、アルファルファ、シロイヌナズナ、オオムギ、ブラッシカ・カンペストリス(Brassica campestris)、アブラナ、ブロッコリー、キャベツ、カノーラ、シトラス、綿、ニンニク、オートムギ、ネギ属(Allium)、亜麻、鑑賞植物、ラッカセイ、コショウ、ジャガイモ、ナタネ、イネ、ライムギ、ソルガム、イチゴ、サトウキビ、サトウダイコン、トマト、コムギ、ポプラ、マツ、モミ、ユーカリ、リンゴ、レタス、レンズマメ、ブドウ、バナナ、茶、シバクサ、ヒマワリ、ダイズ、トウモロコシ、インゲンマメ(Phaseolus)、ハマナ、カラシナ、トウゴマ、ゴマ、綿実、アマニ、ベニバナおよびアブラヤシからなる群より選択される。より具体的には、好ましいホモログは、カノーラ、トウモロコシ、ブラッシカ・カンペストリス、アブラナ、ダイズ、ハマナ、カラシナ、トウゴマ、ラッカセイ、ゴマ、綿実、アマニ、ナタネ、ベニバナ、アブラヤシ、亜麻およびヒマワリから選択される。さらに好適な実施形態では、ホモログは、カノーラ、ナタネ、トウモロコシ、ブラッシカ・カンペストリス、アブラナ、ダイズ、ヒマワリ、ベニバナ、アブラヤシおよびラッカセイからなる群より選択される。特に好適な実施形態では、ホモログは、ダイズである。特に好適な実施形態では、ホモログはカノーラである。特に好適な実施形態では、ホモログはアブラナである。
【0050】
遺伝コードの縮重のために、異なるヌクレオチドコドンが特定のアミノ酸をコードするために使用され得る。宿主細胞は、コドン利用の好ましいパターンを示すことが多い。構造核酸配列は、特定の宿主細胞のコドン利用パターンを利用するように構築されることが好ましい。これにより、形質転換宿主細胞における構造核酸配列の発現が概して向上する。開示する核酸またはアミノ酸配列はいずれも、含まれる宿主細胞または生物のコドン利用を反映するように改変され得る。植物中のコドン利用についての構造核酸配列の改変は、例えば、米国特許第5,689,052号および同第5,500,365号に記載されている。
【0051】
好適な実施形態では、本発明の核酸分子はいずれも、植物細胞中で機能するプロモーター領域と機能的に連結され、mRNA分子を生成するが、その場合プロモーターに連結した核酸分子はそのプロモーターと異種である。本明細書で使用する場合、「異種」とは自然では一緒に存在しないことを意味する。
【0052】
タンパク質およびペプチド分子
あるクラスの物質は、本発明の核酸物質によりコードされる1つ以上のポリペプチド分子を含む。別のクラスの物質は、本発明の1つ以上のポリペプチド分子を含む。特に好ましいクラスのタンパク質は、配列番号14、18、20、22、24、26および28、ならびにそれらの断片からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するものである。ポリペプチド物質は、C末端またはN末端アミノ酸配列に延長部分(extension)を有し得る。
【0053】
本明細書で使用する場合、「タンパク質」、「ペプチド分子」または「ポリペプチド」という用語は、5つ以上のアミノ酸を含む任意の分子を含む。タンパク質、ペプチド、またはポリペプチド分子が修飾(限定されるものではないが、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、リン酸化、またはオリゴマー化等の翻訳後修飾が挙げられる)され得ることは当該分野で周知である。従って、本明細書で使用する場合、「タンパク質」、「ペプチド分子」、または「ポリペプチド」という用語は、生物学的または非生物学的プロセスにより修飾されるあらゆるタンパク質を含む。単数および複数の「アミノ酸」という用語は、全ての天然型Lアミノ酸を指す。この定義は、ノルロイシン、ノルバリン、オルニチン、ホモシステイン、およびホモセリンを含むことを意図する。
【0054】
本発明の別の態様では、本発明のDGAT2タンパク質は可溶化されている。「可溶化」とは、膜と結合していない酵素に典型的にみられる様式でその後作用するようにDGAT酵素を膜から抽出することを指す。
【0055】
様々な供与源からの植物DGATタンパク質を使用して、多様なin vivo用途におけるTAG生合成を研究できることに留意されたい。全ての植物種が、共通の代謝経路を経て脂質を合成すると考えられているため、異種植物宿主に対する植物DGATタンパク質の研究および/または用途は様々な種において容易に行い得る。他の用途では、植物DGATタンパク質は、DGATタンパク質の天然植物供与源以外で使用されて、in vitroで生成もしくは合成されるTAGの生成を向上および/またはその組成を改変し得る。
【0056】
配列同一性の%は、2本の最適にアライメントされた配列を比較範囲にわたり比較することにより決定される。ここで、2本の配列を最適にアライメントするため、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の比較範囲内にある部分は(付加または欠失を含まない)基準配列と比べた場合に付加または欠失(すなわちギャップ)を含み得る。%は、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列において生じる位置の数を決定して、一致した位置の数を得て、一致した位置の数を比較範囲内の合計位置数で割り、結果に100を乗じて配列同一性の%を得ることにより計算される。
【0057】
ポリペプチドまたはポリヌクレオチド分子は、一般的に関連する分子と実質的に同一または実質的に相同であり得る。関連分子と実質的に同一のこれらのホモログは、他のポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列と比べて少なくとも70%の配列同一性を有する少なくとも1つのポリペプチド配列または1つのポリヌクレオチド配列を含む。Genetics Computer Group, Inc.製のWISCONSIN PACKAGEバージョン10.0−UNIXのギャッププログラムは、ペアワイズ比較についてのデフォルトパラメータセット(アミノ酸配列比較の場合:ギャップ作成ペナルティー=8、ギャップ延長ペナルティー=2;ヌクレオチド配列比較の場合:ギャップ作成ペナルティー=50、ギャップ延長ペナルティー=3)を使用するNeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol., 48:443-453 (1970))の方法;またはBLAST2.2.1ソフトウェアスイート(Altschulら, Nucleic Acids Res., 25:3389-3402)のTBLASTNプログラムを使用;BLOSUM62マトリックス(HenikoffおよびHenikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.), 89:10915-10919 (1992))およびペアワイズ比較についてのデフォルトパラメータセット(ギャップ作成コスト=11、ギャップ延長コスト=1)の使用に基づく。BLASTでは、E値、すなわち予測値は、データベース検索において偶然に起こると考えられる、実際のアライメントスコアSと等しいかまたはそれよりも良いスコアを有する異なるアライメントの数を表す。E値が低いほど、一致がより有意である。データベースの大きさは、E値計算における要素であるため、GenBank等の公開データベースに対して「BLAST」を行って得られるE値は、任意の所与のクエリー/登録適合について時間と共に増加している。タンパク質についての同一性%は、BLASTアルゴリズムによりアライメントされる配列部分の長さにわたり存在する完全に一致するアミノ酸残基の%を指す。
【0058】
本発明の一態様は、ヌクレオチド配列またはその相補配列を含む単離されたポリ核酸分子を提供し、該ヌクレオチド配列は本発明のタンパク質アミノ酸配列と実質的に相同なポリペプチドをコードする。ここで、実質的に相同とは、配列番号14、18、20、22および24からなる群より選択されるメンバーと少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%の配列同一性、または少なくとも約85%、少なくとも約90%の配列同一性、または少なくとも約95%の配列同一性、または少なくとも約98%の配列同一性を有することと定義する。
【0059】
本発明の物質は、本発明のタンパク質の少なくとも約10個の連続するアミノ酸領域、好ましくは少なくとも約20個の連続するアミノ酸領域、より好ましくは少なくとも約25、35、50、75または100個の連続するアミノ酸領域を含むタンパク質およびそれらの断片を含む。別の好適な実施形態では、本発明のタンパク質は、約10〜約25個の連続するアミノ酸領域、より好ましくは約20〜約50個の連続するアミノ酸領域、さらに好ましくは約40〜約80個の連続するアミノ酸領域を含む。
【0060】
他のDGATタンパク質または遺伝子の単離に加えて、他の関連アシルトラスフェラーゼタンパク質の遺伝子も、本発明のDGAT配列および関連核酸またはアミノ酸配列からの配列情報を使用して得ることができる。例えば、アミノ酸配列番号29および30を含むDGAT2タンパク質のシゾサッカロミセス・ポンベアミノ酸配列ホモログを開示する。別の例では、リゾホスホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)、リゾホスホスファチジルセリンアシルトランスフェラーゼ(LPSAT)、リゾホスホスファチジルエタノールアミンアシルトランスフェラーゼ(LPEAT)、ホスファチジルコリンジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT)、およびリゾホスホスファチジルイノシトールアシルトランスフェラーゼ(LPIAT)を含む他のアシルトランスフェラーゼ酵素が植物脂質生合成に関与する。
【0061】
DNA構築物および植物形質転換体
本発明の1つ以上の核酸分子を植物の形質転換またはトランスフェクションに使用し得る。外因性遺伝物質は、植物細胞に導入され、植物細胞は全植物、稔性植物、または不稔植物の個体に再生され得る。外因性遺伝物質は、天然型であってもそうでなくても、任意の生物に挿入可能なあらゆる供与源に由来するあらゆる遺伝物質であり得る。細菌プラスミド維持エレメントは、DNA構築物の構成要素である。これらのエレメントには、抗生物質マーカー(すなわち、aadA遺伝子(SPC/STR、スペクトマイシンおよびストレプトマイシン耐性)、Ec.nptII(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、カナマイシン耐性));プラスミドコピー数を制御する複製起点またはエレメント(すなわち、Ec.oriV、Ec.ori322、ORI−PUCおよびEc.ROP)が含まれる。これらのエレメントのさらなる情報は、特にSambrookら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第二版, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (1989)から得ることができる。
【0062】
本発明の好適な態様では、外因性遺伝物質は、配列番号11、12、13、16、17、19、21、23およびそれらの相補配列、ならびにいずれかの断片からなる群より選択される核酸配列を含む。本発明の別の態様では、外因性遺伝物質は、配列番号14、18、20、22、24およびそれらの断片からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。
【0063】
本発明の一実施形態では、1つ以上の遺伝子を含む外因性遺伝物質を植物に導入する。一実施形態では、好ましい組合せの遺伝子としては、以下の遺伝子の1つ以上が挙げられるがこれらに限定されない:すなわち、MrDGAT2A(配列番号1)、MrDAGAT2A.nno(配列番号15)、MrDGAT2B(配列番号3)、MrDGAT2B.nno(配列番号11)、ScDGAT2(配列番号5)、ScDGAT2.nno(配列番号16)、NcDGAT2(配列番号13)、およびNcDGAT.nno(配列番号12)。別の実施形態では、好ましい組合せの遺伝子としては、2つの別個のプロモーターの制御下で発現される以下の遺伝子のいずれかが挙げられるがこれらに限定されない:すなわち、MrDGAT2A(配列番号1)、MrDAGAT2A.nno(配列番号15)、MrDGAT2B(配列番号3)、MrDGAT2B.nno(配列番号11)、ScDGAT2(配列番号5)、ScDGAT2.nno(配列番号16)、NcDGAT2(配列番号13)、およびNdDGAT.nno(配列番号12)。
【0064】
このような組合せでは、1つ以上の遺伝子生成物が細胞質中で局所化され得る。このような遺伝子は、例えば、モノシストロン(monocistronic)もしくはポリシストロン(polycistronic)のいずれかの配置で単一構築物上に導入するか、異なる構築物であるが同じ形質転換事象において導入するか、または別々の植物に導入された後1回以上交配を行って所望の組合せの遺伝子を生成し得る。
【0065】
このような遺伝物質は、単子葉植物または双子葉植物のいずれか(カノーラ、トウモロコシ、ダイズ、シロイヌナズナ、インゲンマメ、ラッカセイ、アルファルファ、コムギ、イネ、オートムギ、ソルガム、ナタネ、ライムギ、トリトルデウム(tritordeum)、キビ、フェスク、ペレニアルライグラス、サトウキビ、クランベリー、パパイヤ、バナナ、ベニバナ、アブラヤシ、亜麻、マスクメロン、リンゴ、キュウリ、デンドロビウム、グラジオラス、菊、ユリ科植物、綿、ユーカリ、ヒマワリ、ブラッシカ・カンペストリス、アブラナ、シバクサ、サトウダイコン、コーヒーおよびディオスコレアが挙げられるがこれらに限定されない)に導入され得る(Christou, Particle Bombardment for Genetic Engineering of Plants, Biotechnology Intelligence Unit, Academic Press, San Diego, California (1996)に掲載)。また、カノーラ、トウモロコシ、ブラッシカ・カンペストリス、アブラナ、ナタネ、ダイズ、ハマナ、カラシナ、トウゴマ、ラッカセイ、ゴマ、綿実、アマニ、ベニバナ、アブラヤシ、亜麻、およびヒマワリが好ましく、カノーラ、アウラヤシ、トウモロコシ、ブラッシカ・カンペストリス、アブラナ、ダイズ、ヒマワリ、ベニバナ、アブラヤシおよびラッカセイが好ましい。好適な実施形態では、ホモログは、トウモロコシ(maize)、ダイズ、カノーラ、綿実、ゴマ、亜麻、ラッカセイ、ヒマワリ、ベニバナおよびアブラヤシからなる群より選択される。より好適な実施形態では、遺伝物質はカノーラに導入される。別のより好適な実施形態では、遺伝物質はアブラナに導入される。別の特に好適な実施形態では、遺伝物質はダイズに導入される。
【0066】
タンパク質をコードする核酸分子の導入により、形質転換細胞またはトランスジェニック植物においてポリペプチドの発現または過剰発現を生じる。本発明の核酸分子にコードされる1つ以上のタンパク質またはその断片は、形質転換細胞または形質転換植物において過剰発現され得る。このような発現または過剰発現は、外因性遺伝物質の一過性または安定性導入により生じ得る。
【0067】
好適な実施形態では、植物における本発明のポリペプチドの発現または過剰発現は、同様の遺伝バックグラウンドを有する非形質転換植物に関連する植物と比べて、DGAT活性の増大との関連性をその植物に提供する。
【0068】
生成物のレベルは、植物等の生物の全体にわたって高められ得るか、または生物の1つ以上の特定の器官または組織に局所化され得る。例えば、生成物のレベルは、植物の1つ以上の組織および器官(根、塊茎、幹、葉、茎、果実、液果、堅果、樹皮、鞘、種子および花が挙げられるがこれらに限定されない)において高められ得る。好ましい器官は種子である。
【0069】
好適な態様では、同様の遺伝バックグラウンドは、比較する生物同士が、核遺伝物質の約50%以上を共有するバックグラウンドである。より好適な態様では、同様の遺伝バックグラウンドは、比較する生物同士が核遺伝物質の約75%以上、より好ましくは約90%以上を共有するバックグラウンドである。別のより好適な態様では、同様の遺伝子バックグランドは、比較する生物が植物であるバックグラウンドであり、該植物は、植物形質転換技術を使用して最初に導入される遺伝物質以外は同質である。
【0070】
構築物またはベクターは、選択したポリペプチドを発現させるための植物プロモーターを含み得る。好適な実施形態では、本明細書に記載するいずれの核酸分子も、植物細胞において機能してmRNA分子を生成させるプロモーター領域に機能的に連結され得る。例えば、本明細書に記載するようなプロモーター等(これらに限定されない)、植物細胞において機能してmRNA分子を生成するあらゆるプロモーターを使用し得る。好適な実施形態では、プロモーターは植物プロモーターである。
【0071】
他のプロモーターも、種子または果実等の特定の組織においてポリペプチドを発現するために使用され得る。実際、好適な実施形態では、使用するプロモーターは、種子特異的プロモーターである。このようなプロモーターの例としては、ナピン(Kridlら, Seed Sci. Res., 1:209:219 (1991))、ファセオリン(Bustosら, Plant Cell, 1(9):839-853 (1989))、ダイズトリプシンインヒビター(Riggsら, Plant Cell, 1(6):609-621 (1989))、ACP(Baersonら, Plant Mol. Biol., 22(2):255-267 (1993))、ステアロイル−ACPデサチュラーゼ(Slocombeら, Plant Physiol., 104(4):167-176 (1994))、βコングリシニンのダイズa’サブユニット(P−Gm7S、例えば、Chenら, Proc. Natl. Acad. Sci., 83:8560-8564 (1986)を参照)、ソラマメUSP(P−Vf.Usp、例えば、配列番号1、2および3、米国特許出願第10/429,516号を参照)、ならびにズィー・メイスL3オレオシンプロモーター(P−Zm.L3、例えば、Hongら, Plant Mol. Biol., 34(3):549-555(1997)を参照)等の遺伝子に由来する5’側調節領域が挙げられる。トウモロコシ胚乳において見とめられる貯蔵タンパク質のグループであるゼインも含まれる。ゼイン遺伝子のゲノムクローンは単離されている(Pedersenら, Cell, 29:1015-1026 (1982)、およびRussellら, Transgenic Res., 6(2):157-168)、ならびにこれらのクローンから得たプロモーター(15kD、16kD、19kD、22kD、27kD)および遺伝子も使用され得る。例えばトウモロコシにおいて機能することが知られている他のプロモーターとしては以下の遺伝子のプロモーターが挙げられる:すなわち、waxy、Brittle、Shrunken2、分枝酵素IおよびII、デンプンシンターゼ、脱分枝酵素、オレオジン、グルテリンおよびショ糖シンターゼ。トウモロコシ胚乳発現に特に好ましいプロモーターは、イネに由来するグルテリン遺伝子のプロモーター、より具体的にはOsgt−1プロモーター(Zhengら, Mol. Cell Biol., 13:5829-5842 (1993))である。コムギにおける発現に適したプロモーターの例としては、ADPグルコースピロシンターゼ(pyrosynthase)(ADPGPP)サブユニット、顆粒結合および他のデンプンシンターゼ、分枝および脱分枝酵素、胚形成−多量(abundant)タンパク質、グリアジンおよびグルテニンのプロモーターが挙げられる。イネにおけるこのようなプロモーターの例としては、ADPGPPサブユニット、顆粒結合および他のデンプンシンターゼ、分枝酵素、脱分枝酵素、ショ糖シンターゼおよびグルテリンのプロモーターが挙げられる。特に好ましいプロモーターは、イネグルテリンのプロモーターOsgt−1である。オオムギのこのようなプロモーターの例としては、ADPGPPサブユニット、顆粒結合および他のデンプンシンターゼ、分枝酵素、脱分枝酵素、ショ糖シンターゼ、ホルデイン、胚グロブリン、およびアリューロン(aleurone)特異的タンパク質のプロモーターが挙げられる。種子における発現に好ましいプロモーターは、本明細書においてP−Br.Snap2と称するナピンプロモーターである。発現のために好ましい別のプロモーターは、アルセリン5プロモーターである(米国特許公開第2003/0046727号)。さらに別の好ましいプロモーターはダイズ7Sプロモーター(P−Gm.7S)およびダイズ7Sα’βコングリシニンプロモーター(P−Gm.Sphas1)である。
【0072】
本発明のポリペプチドの過剰発現を生じ得るプロモーターは、当該分野で一般的に知られている。例えば、ウイルスプロモーター(P−CaMV35S、米国特許第5,352,605号;P−FMV35SおよびそのエンハンサーエレメントE−FMV35S(天然の転写開始部を持たないP−FMV35Sの5’側部分(米国特許第5,378,619号および5,018,100号)として同定される)、ならびに本発明においてE−FMV35S/P−At.Tsf1と称する、米国特許第6,462,258号に配列番号28として記載されるキメラプロモーター分子)、ならびに様々な植物由来プロモーター(例えば、植物アクチンプロモーター(P−Os.Act1、およびそこから誘導した遺伝エレメント(米国特許第5,641,876号および同第6,429,357号)))がある。
【0073】
利用し得るさらなるプロモーターは、例えば、米国特許第5,378,619号;同第5,391,725号;同第5,428,147号;同第5,447,858号;同第5,608,144号;同第5,608,144号;同第5,614,399号;同第5,633,441号;同第5,633,435号;および同第4,633,436号に記載されている。さらに、組織特異的エンハンサーを使用してもよい(Frommら, The Plant Cell, 1:977-984 (1989))。
【0074】
構築物またはベクターは、目的のコード領域と共に、その領域の転写を終結させるように全体または部分的に作用する核酸配列も含みうる。多数のこのような配列が単離されており、Tr7 3’配列およびNOS 3’配列(Ingelbrechtら, The Plant Cell, 1:671-680 (1989);Bevanら, Nucleic Acids Res., 11:369-385 (1983))が挙げられる。調節転写終結領域も、本発明の植物発現構築物において提供され得る。転写終結領域は、目的の遺伝子をコードするDNA配列、または異なる遺伝子供与源から誘導された都合の良い転写終結領域(例えば、転写開始領域を自然に伴う転写終結領域)により提供され得る。当業者は、植物細胞において転写を終結可能な都合の良いあらゆる転写終結領域が本発明の構築物において採用され得ることを理解するであろう。
【0075】
ベクターまたは構築物は、追加の調節エレメントも含みうる。このような例としては、ペチュニア・ハイブリダHsp70遺伝子から単離した翻訳リーダー(L−Ph.DnaK、米国特許第5,362,865号)、Adhイントロン1(Callisら, Genes and Develop., 1:1183-1200 (1987))、ショ糖シンターゼイントロン(Vasilら, Plant Physiol., 91:1575-1579 (1989))、イネアクチンイントロン(I−Os.Act1、米国特許第5,641,876号)、およびTMVΩエレメント(Gallieら, The Plant Cell, 1:301-311 (1989))が挙げられる。転写終結領域(例えば、ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)に由来する3’側非翻訳領域T−Br.Snap2)。これらおよび他の調節エレメントは、適切である場合には含まれうる。
【0076】
ベクターまたは構築物は、選択可能マーカーも含んでもよい。選択可能マーカーは、外因性遺伝物質を含む植物または植物細胞を選択するために使用され得る。このような例としては、カナマイシン耐性をコードし、カナマイシン、RptII、G418、hpt等を使用するために選択され得るnptII遺伝子(Potrykusら, Mol. Gen. Genet., 199:183-188 (1985));ビアラホス耐性をコードするbar遺伝子;変異型EPSPシンターゼ遺伝子(Hincheeら, Bio/Technology, 6:915-922 (1988);Reynaertsら, Selectable and Scrrenable Markers);GelvinおよびSchilperoort;Plant Molecular Biology Manual, Kluwer, Dordrecht(1988);Reynaertsら, Selectable and Screenable Markersに掲載。GelvinおよびSchilperoort;Plant Molecular Biology Manual, Kluwer, Dordrecht (1988)に掲載);ブロモキシニルに耐性を与えるニトリラーゼ遺伝子(Stalkerら, J. Biol. Chem. 263:6310-6314 (1988));イミダゾリノンまたはスルホニル尿素耐性を与える変異型アセト乳酸シンターゼ遺伝子(ALS)(欧州特許出願第154,204号(1985年9月11日))、ALS(D'Halluinら, Bio/Technology, 10:309-314 (1992))、およびメトトレキサート耐性DHFR遺伝子(Thilletら, J. Biol. Chem., 263:12500-12508 (1988))が挙げられるがこれらに限定されない。特に好ましいマーカーは、グリホサート耐性であり、これは、グリホサート耐性EPSPS(例えば、本明細書においてAGRtu.aroAと称する、アグロバクテリウム・ツメファシエンスに由来するaroA−CP4コード配列(米国特許第5,633,435号))を発現させることにより植物において達成され得る。AGRtu.aroAコード配列は、葉緑体移行ペプチド(CTP)、例えば、本明細書でTS−At.ShkF−CTP2と称する、シロイヌナズナShkF遺伝子から単離されたCTP2コード配列に連結されている。
【0077】
本発明の好適な実施形態では、所望のタンパク質を発現するトランスジェニック植物を生成する。所望のタンパク質をコードする所望のポリヌクレオチド配列を植物細胞に導入するための様々な方法が利用可能および当業者に公知であり、(1)マイクロインジェクション、エレクトロポーレーションおよび微小推進媒介型送達(ビオリスティック(biolistic)または遺伝子銃技術)等の物理的方法;(2)ウイルス媒介型送達方法;および(3)アグロバクテリウム媒介型形質転換方法が挙げられるがこれらに限定されない。
【0078】
植物細胞の形質転換のために最もよく使用される方法は、アグロバクテリウム媒介型DNA導入プロセスおよびビオリスティックまたは微小推進ボンバードメント媒介型プロセス(すなわち、遺伝子銃)である。典型的に、核形質転換が望ましいが、葉緑体またはアミロプラスト等の色素体を特異的に形質転換することが望ましい場合、所望のポリヌクレオチドの微小推進媒介型送達を利用して植物色素体が形質転換され得る。
【0079】
アグロバクテリウム媒介型形質転換は、アグロバクテリウム属に属する遺伝子操作された土壌菌を使用することで達成される。TiまたはRiプラスミドを担持するアグロバクテリウム・ツメファシエンスおよびアグロバクテリウム・リゾゲンス(rhizogenes)の多数の野生型および無核(disarmed)株が植物への遺伝子導入に使用され得る。遺伝子導入は、任意の所望のDNA部分を担持するように遺伝子操作され得る「T−DNA」として知られる特異的DNAを多くの植物種に導入することにより実行され得る。導入遺伝子は、DNAプラスミドベクターにおいて構築され、通常、アグロバクテリウムTiプラスミド右側境界DNA領域(RB)と左側境界DNA領域(LB)に隣接される。アグロバクテリウム媒介型形質転換のプロセスの間、DNAプラスミドは、右側および左側境界領域においてVirD1およびVirD2エンドヌクレアーゼで切断され、T−DNA領域を植物ゲノムに挿入する。
【0080】
植物のアグロバクテリウム媒介型遺伝子形質転換は、いくつかのステップを伴う。ビルレントアグロバクテリウムおよび植物細胞を最初に互いと接触させる第1のステップは、一般的に「植菌」と呼ばれる。植菌の後、アグロバクテリウムおよび植物細胞/組織を、数時間〜数日間以上の間、成長およびT−DNA導入に適した条件下で共に成長させる。このステップは「共培養」と称される。共培養およびT−DNA送達の後、植物細胞を殺菌剤または静菌剤で処理して、外植片と接触したままのおよび/または外植片を含む容器に入ったアグロバクテリウムを殺す。トランスジェニック対非トランスジェニック植物細胞の優先的な成長を促進するために任意の選択剤の不在下で行う場合、これは典型的に「遅延」ステップと称される。トランスジェニック植物細胞に有利な選択的圧力の存在下で行った場合、「選択」ステップと称される。「遅延」を採用する場合、典型的に1つ以上の「選択」ステップが後続する。
【0081】
微小推進ボンバードメント(米国特許第5,550,318号;同第5,538,880号;および同第5,610,042号;それぞれ参照により本明細書に全体的に組み入れる)については、粒子を核酸で被覆し、推進力により細胞に送達する。粒子の例としては、タングステン、プラチナおよび好ましくは金から構成されるものが挙げられる。
【0082】
微小推進ボンバードメント技術は広く適用可能であり、本質的にいかなる植物種も形質転換し得る。微小推進ボンバードメントにより、形質転換された種の例としては、トウモロコシ、オオムギ、コムギ(参照により本明細書に全体的に組み入れられる米国特許第5,563,055号)、イネ、オートムギ、ライムギ、サトウキビおよびソルガムを含む単子葉植物;ならびにタバコ、ダイズ(米国特許第5,322,783号、参照により本明細書に全体的に取り入れられる)、ヒマワリ、ラッカセイ、綿、トマトおよび一般的なマメ科(米国特許第5,563,055号、参照により本明細書に全体的に取り入れる)を含む多数の双子葉植物が挙げられる。
【0083】
形質転換方法論とは関係なく形質転換植物細胞を選択またはスコア付けするために、細胞に導入されるDNAは、再生可能植物組織において機能して植物組織に毒性化合物に対する耐性を付与する化合物を生成する遺伝子を含む。選択可能、スクリーニング可能またはスコア付け可能マーカーとして使用する目的の遺伝子としては、GUS、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ(LUX)、抗生物質または除草剤耐性遺伝子が挙げられるがこれらに限定されない。抗生物質耐性遺伝子の例としては、ペニシリン、カナマイシン(およびネオマイシン、G418、ブレオマイシン);メトトレキセート(およびトリメトプリム);クロラムフェニコール;カナマイシン;ならびにテトラサイクリンが挙げられる。
【0084】
様々な形質転換外植片からの植物の再生、発育および栽培は、当該分野で十分に報告されている。この再生および成長プロセスは、形質転換細胞を選択するステップ、およびそれらの個別の細胞を、通常の胚発達の段階から根付いた未発育植物段階を経て培養させるステップを典型的に含む。トランスジェニック胚および種子は同様に再生される。得られた根付いたトランスジェニック芽はその後、土壌等の適切な植物成長培地に植える。選択剤への暴露を生存した細胞、またはスクリーニングアッセイにおいて陽性であるとスコア付けされた細胞は、植物の再生を支持する培地において培養され得る。発達している未発育植物を、土壌が少量の植物成長混合物に移し、寒さに慣れさせてから、グリーンハウスまたは成長チャンバーに移して成熟させる。
【0085】
本発明は、あらゆる形質転換可能細胞または組織に使用できる。本明細書で使用する場合、形質転換可能とは、さらに増殖して植物を生じることができる細胞または組織を意味する。当業者は、多数の植物細胞または組織が形質転換可能であり、外因性DNAの挿入および適切な培養状態の後、植物細胞または組織が分化植物に形成され得ることを理解しうる。これらの目的に適した組織としては、未熟胚、胚盤組織、懸濁細胞培養液、花部、芽分裂組織、結節性(nodal)外植片、カルス組織、胚軸組織、子葉、根および葉が挙げられるがこれらに限定されない。
【0086】
あらゆる適切な植物培養培地が使用できる。適切な培地の例としては、追加の植物成長調節因子(オーキシン、サイトキニン、ABAおよびジベレリンが挙げられるがこれらに限定されない)を添加した、MSベースの培地(MurashigeおよびSkoog, Physiol. Plant, 15:473-497 (1962))またはN6ベースの培地(Chuら, Scientia Sinica, 18:659 (1975))が挙げられるがこれらに限定されない。当業者は、様々な組織培養培地に精通しており、これらは、適切に添加された場合に、植物組織の成長および発育を助け、植物形質転換および再生に適している。これらの組織培養培地は、市販調剤として購入するかまたは注文調製されて、改変され得る。当業者は、形質転換および再生において使用する培地、ならびに栄養および成長調節因子等の培地添加剤、ならびに特定の種類の目的のために最適化され得るインキュベーション中の光強度、pH、およびインキュベーション温度等の他の培養条件を承知している。
【0087】
アグロバクテリウム形質転換方法を使用して形成されるトランスジェニック植物は、典型的に、1つの染色体上に単一の遺伝子を含む。このようなトランスジェニック植物は、追加遺伝子についてヘテロ接合型であると呼ばれうる。追加の構造遺伝子に対してホモ接合性であるトランスジェニック植物(すなわち、2つの追加遺伝子(1つの遺伝子が染色体対の各染色体の同じ遺伝子座にある)を含むトランスジェニック植物)がより好ましい。ホモ接合性トランスジェニック植物は、単一の追加遺伝子を含む個別の分離体(segregant)トランスジェニック植物を性的に交配(自殖)させ、生成された種子のいくつかを発芽させ、目的の遺伝子について生成された植物を分析することにより得ることができる。
【0088】
2つの異なるトランスジェニック植物を交配して、2つの独立した分離外因性遺伝子を含む子孫を生成することもできることも理解されよう。適切な子孫の自殖により、目的のポリペプチドをコードする追加外因性遺伝子の両方に対してホモ接合性の植物が生成できる。植物育種と同様に、親植物への戻し交配および非トランスジェニック植物での異系交配も意図される。
【0089】
アンチセンス配向にある目的の遺伝子のDNAを含む構築物の形質転換による導入での植物における遺伝子のアンチセンス抑制は、米国特許第5,107,065号;同第5,453,566号;同第5,759,829号;同第5,874,269号;同第5,922,602号;5,973,226号;および同第6,005,167号(全て、参照により本明細書に取り入れる)に開示されている。
【0090】
センス配向にある目的の遺伝子のDNAを含む細胞質発現のための構築物の形質転換による導入での植物中の遺伝子の共抑制は、例えば、米国特許第5,034,323号;同第5,231,020号;同第5,283,184号;および同第6,271,033号(全て、参照により本明細書に取り入れる)に開示されている。
【0091】
アンチセンス手法は、遺伝物質を標的化することにより遺伝子機能を妨害または低減するための手法である(Molら, FEBS Lett., 268:427-430 (1990))。アンチセンス手法の目的は、標的遺伝子に相補的な配列を使用して、その発現をブロックし、単一の選択したタンパク質のレベルが選択的に低減または無くされる変異型細胞系または生物を作製することである。アンチセンス技術は他の「逆遺伝子」手法と比べていくつかの利点を有する。不活化の部位およびその発育上の効果は、アンチセンス遺伝子のプロモーターの選択により、または外部適用またはマイクロインジェクションのタイミングにより操作し得る。アンチセンスは、標的遺伝子の固有の領域または他の関係する遺伝子と相同性を共有する領域のいずれかを選択することでその特異性を操作することができる(Hiattら:Genetic Engineering, Setlow(編), New York: Plenum 11:49-63 (1989)に掲載)。
【0092】
本発明は、本発明の植物の部分、特に再生または貯蔵部分を提供する。植物部分としては、種子、胚乳、胚珠および花粉が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の特に好適な実施形態では、植物部分は種子である。一実施形態では、種子は動物飼料の構成成分である。
【0093】
本発明のあらゆる植物またはそれらの部分は、飼料、食事、タンパク質、粉末、繊維、抽出可能栄養素または油調製物を含む加工品を提供し得る。この目的のために特に好ましい植物部分は、種子である。好適な実施形態では、加工品は、家畜もしくはヒト、または両方のために設計される。飼料、食事、タンパク質および油調製物の生成方法は当該分野で公知である。例えば、米国特許第4,957,748号;同第5,100,679号;同第5,219,596号;同第5,936,069号;同第6,005,076号;同第6,146,669号および同第6,156,227号(参照により本明細書に組み入れる)を参照のこと。好適な実施形態では、タンパク質調製物は、高タンパク質調製物である。このような高タンパク質調製物は、好ましくは5%w/v、より好ましくは10%w/v、さらにより好ましくは15%w/vを上回るタンパク質含有量を有する。好ましい油調製物では、油調製物は、好ましくは5%w/v、より好ましくは10%w/v、さらにより好ましくは15%w/vの本発明の植物またはその部分から誘導された油含有量を有する高油調製物である。好適な実施形態では、油調製物は液体であり、1、5、10または50リットルを上回る容量である。本発明は、本発明の植物から生成されたか、または本発明の方法により生成された油を提供する。このような油は、向上した酸化安定性を示し得る。このような油はまた、得られる生成物の主要でないかまたは主要な構成成分であり得る。さらに、このような油は他の油と共に配合され得る。好適な実施形態では、本発明の植物から生成されるかまたは本発明の方法により生成された油は、任意の生成物の油成分の0.5%、1%、5%、10%、25%、50%、75%または90%を上回る容量または重量を構成する。別の実施形態では、油調製物は、配合されて、配合物の10%、25%、35%、50%または75%の容量を構成し得る。本発明の植物から生成される油は、1つ以上の有機溶剤または石油蒸留物と混合され得る。
【0094】
本発明の植物は、育種プログラムの一部であるか、育種プログラムから作製され得る。育種方法の選択は、植物再生の様式、改良する特性の遺伝力、および商業的に使用されている品種によって異なる(例えば、Fハイブリッド品種、純品種等)。育種プログラムは、任意の交配の子孫のマーカーに基づく選択を使用して向上できる。あらゆる市販されているおよび市販されていない品種が育種プログラムに利用され得ることがさらに理解されよう。例えば、発生力(emergence vigor)、生長力、ストレス耐性、疾患耐性、枝分かれ、開花、結実、種子の大きさ、種子密度、起立性(standability)および脱穀性(threshability)等の要素は、一般的に選択に影響する。
【0095】
使用例
本発明の核酸分子およびそれらの断片は、同じ種から他の核酸分子を得るために使用され得る(トウモロコシ由来の核酸分子を利用してトウモロコシから他の核酸分子を得ることができる)。このような核酸分子は、タンパク質の完全コード配列をコードする核酸分子、ならびにこのような分子のプロモーターおよびフランキング配列を含む。さらに、このような核酸分子は、他のイソ酵素または遺伝子ファミリーメンバーをコードする核酸分子を含む。このような分子は、上述した核酸分子またはそれらの断片を使用して、cDNAまたはゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより容易に得ることができる。このようなライブラリーを形成するための方法は当該分野で周知である。
【0096】
本発明の核酸分子およびそれらの断片はまた、核酸ホモログを得るためにも使用され得る。このようなホモログとしては、植物ならびに他の生物(細菌および真菌を含む)の核酸分子(他の植物種または他の生物のタンパク質ホモログを全体的または部分的にコードする核酸分子、遺伝エレメントの配列(プロモーターおよび転写調節エレメント等)を含む)が挙げられる。このような分子は、上述した核酸分子またはそれらの断片を使用して、このような植物種から得たcDNAまたはゲノムライブラリーをスクリーニングすることで容易に得ることができる。このようなライブラリーを形成する方法は、当該分野で周知である。このようなホモログ分子は、配列番号11、12、13、16、17、19、21、23、25および27ならびにそれらの相補配列からなる群より選択される1つ以上の配列において見とめられるものとはヌクレオチド配列が異なりうる。なぜなら、完全な相補性は安定したハイブリダイゼーションのために必要ではないからである。従って、本発明の核酸分子は、核酸分子に特異的にハイブリダイズ可能であるが、「完全な相補性」は欠いている場合もある分子も含む。
【0097】
開示した1つ以上の核酸配列に関連するプロモーター配列および他の遺伝エレメント(転写調節フランキング配列を含むがそれらに限定されない)は、本明細書で提供する開示核酸配列を使用しても得ることができる。一実施形態では、このような配列は、本発明の核酸分子を、ゲノムライブラリーのメンバーとインキュベートし、このような核酸分子とハイブリダイズするクローンを回収することにより得ることができる。第2の実施形態では、「染色体歩行」または逆PCRの方法を使用して、このような配列を得てもよい(Frohmanら, Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.), 85:8998-9002 (1988);Oharaら, Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.), 86:5673-5677 (1989);Pangら, Biotechniques, 22:1046-1048 (1977);Huangら, Methods Mol. Biol., 69:89-96 (1997);Huangら, Method Mol. Biol., 67:287-294 (1997);Benkelら, Genet. Anal., 13:123-127 (1996);Hartlら, Methods Mol. Biol., 58:293-301 (1996))。「染色体歩行」という用語は、連続したハイブリダイゼーションステップにより遺伝マップを伸長するプロセスを意味する。
【0098】
本発明の核酸分子を使用して、細胞増強、細胞特異的、組織増強、組織特異的、発達調節的または環境調節的発現プロファイルのプロモーターを単離してもよい。例えばゲノムスクリーニング方法およびPCR技術を使用した、ゲノムライブラリーから得たこれらの遺伝子の5’側フランキングプロモーター配列の単離および機能分析により、有用なプロモーターおよび転写調節エレメントが単離される。これらの方法は、当業者に公知であり、記載されている(例えば、Birrenら, Genome Analysis: Analyzing DNA, 1 (1997), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkを参照)。本発明の核酸分子を利用して得たプロモーターは、それらの制御特徴に影響するように改変され得る。このような改変の例としては、エンハンサー配列が挙げられるがこれに限定されない。このような遺伝エレメントを使用して、穀物改善のために新規および既存の形質の遺伝子発現を増強できる。
【0099】
本発明の核酸分子の別のサブセットは、マーカーである核酸分子を含む。マーカーは、分子遺伝学の分野における多数の従来手法で使用され得る。このようなマーカーとしては、配列番号11、12、13、16、17、19、21、23、25および27、それらの相補配列の核酸分子、マーカーとして作用し得るそれらのいずれかの断片、ならびにマーカーとして作用し得る本発明の他の核酸分子が挙げられる。
【0100】
本発明の一態様では、本発明の1つ以上の核酸分子を使用して、植物(好ましくは、カノーラ、トウモロコシ、ブラッシカ・カンペストリス、アブラナ、ナタネ、ダイズ、ハマナ、カラシナ、トウゴマ、ラッカセイ、ゴマ、綿実、アマニ、ベニバナ、アブラヤシ、亜麻またはヒマワリ)における、本発明の1つ以上の核酸分子により部分的または全体的にコードされるタンパク質の発現のレベル(サンプル中のmRNAの濃度)またはパターン(すなわち、発現の動態、分解速度、安定性プロファイル等)を測定する。
【0101】
細胞または組織の2つ以上のサンプル間の発現を比較するために、多数の方法が使用され得る。これらの方法としては、ノーザン、RNアーゼ保護アッセイ、およびin situハイブリダイゼーション等のハイブリダイゼーションアッセイが挙げられる。あるいはまた、これらの方法として、PCR型アッセイが挙げられる。好ましい方法では、2つ以上のサンプルから得た核酸を、核酸アレイにハイブリダイズさせることにより発現を比較する。アレイは、サンプルの細胞または組織中に存在することが知られているか疑われる複数の予測配列を含む。
【0102】
本発明を全般的に記載してきたが、以下の実施例を参照することでより理解し易くなるであろう。なお、以下の実施例は例示目的のためで本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0103】
DGAT2核酸配列の単離、およびDGAT活性の確認
Kamisaka, Y.ら, Lipids, 28:583-587 (1993)に記載されるようにモルティエレラ・ラマニアナを培養した。10〜13日間の培養液をミラクロス(Miracloth)に通し、手で絞って過剰分の液体を除去して、細胞を回収した。湿包装細胞を−70℃にて保存した。モルティエレラ・ラマニアナからのDGAT2タンパク質の精製を以下のように行った。70〜75gの湿包装細胞から脂質体を単離した。使用直前、細胞を氷上で解凍し、200mLの緩衝液D(10mMリン酸カリウム(pH7.0)、1M KCl、0.5Mショ糖、1mM EDTA)中に懸濁させた。「ホモジナイズ」に設定した細胞破砕機(Bead-Beater, Biospec Products, Bartlesville, OK)に入った等量の0.5mmガラスビーズで、45〜90秒間かけてサンプルを溶解させた。ガラスビーズを含む細胞スラリーを、500×gで遠心分離し、上清を取り出し、ペレットを別の5mLの緩衝液Dで洗浄した。遠心分離の後、両方の遠心分離から得た上清を合わせた。6つの超遠心分離管(25×89mm)に分け、それぞれに5mLの緩衝液E(10mMリン酸カリウム(pH7.0)、1M KClおよび0.3Mショ糖)を重層した。サンプルを、100,000×gで4℃にて3時間遠心分離にかけた。重層部の上に浮いている脂質体画分を合わせて、50mLの緩衝液F(10mMリン酸カリウム(pH7.0)、75mM KCl、0.5Mショ糖および1.5% TritonX−100)中に可溶化させた。非可溶化物質を、超遠心分離により(90,000×gにて1.8時間)除去した。浮遊脂質層を捨て、可溶化画分(TritonX−100抽出物)を含む上清はカラム精製のために保持した。DGAT活性を、[1−14C]オレオイル−CoAおよび非標識化ジオレオイル−DAGからの14Cトリアシルグリセロールの生成として測定した。非可溶化サンプルについて、反応混合液(0.1mL)は、酵素抽出物、10mMリン酸カリウム(pH7.0)、100〜150mM KCl、および0.1%TritonX−100(w/v)を含む緩衝液に入った、3.67μM[1−14C]オレオイル−CoA、および1.5mM 1,2−18:1ジアシルグリセロールから構成された。アッセイ混合液を、25℃にて5分間インキュベートし、1.5mLのヘプタン:イソプロパノール:0.5M HSO(10:40:1、v/v/v)を添加して反応を止めた。可溶化サンプルについて、1,2−18:1 DAGを0.5mMに減らし、TritonX−100を0.2%に増やし、300μM L−α−ホスファチジン酸を含めた。500μMではなく300μMホスファチジン酸を使用したこと以外はKamiskaら, J. Biochem., 119:520-523 (1996)に記載されるように界面活性剤での可溶化後に活性を回復するためにL−α−ホスファチジン酸が必要であった。これにより、より高い活性刺激がもたらされた。
【0104】
可溶化の後、生成物生成は、外因性DAGの添加に依存していた。これらの条件下では、反応速度は、10分間まで時間に対して直線的であった。アッセイを終了した後、0.1mLの1M NaHCO、および担体として15ナノモル/mLトリオレインを含む1mLのヘプタンを添加することで、放射性標識化グリセロ脂質を単離した。混合液を攪拌し、上部有機層を新しいガラスバイアルに移した。有機抽出物を1mLの1M NaClで逆抽出した。最終有機層の40%を液体シンチレーション計数のために取り、残った有機層は窒素ガスの下で乾燥するまで蒸発させた。残留物をヘキサンに再懸濁させ、前吸着充填(preadsorbent loading)ゾーンを有するシリカゲルGを用いたTLC(Analtech#31011, Newark, Delaware)に供した。TLCプレートをヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸(50:50:1、v/v/v)中で展開させた後、乾燥させ、放射画像分析器(AMBIS 3000, AMBIS, Inc., San Diego, California)で走査してTAGに取り込まれた放射活性部分を決定した。TLCプレート上のTAG活性の確認は、ヨウ素蒸気への暴露の後の非標識化トリオレイン担体と[14C]TAGとの同時移動により決定した。
【0105】
緩衝液G(10mMリン酸カリウム(pH7.0)、0.1%(w/v)TritonX−100、10%(w/v)グリセロール)に入った75mM KClで平衡化した黄色86−アガロースカラム(2.5cm×6.4cm)上での色素結合クロマトグラフィーにより、TritonX−100抽出物中のDGAT活性をさらに精製した。2mL/分にて5容量の平衡化緩衝液でカラムを洗浄し、次いで、緩衝液Gに入った500mM KClで活性を溶出した。この精製段階でDGAT活性は冷凍/解凍するのに安定しているため、溶出画分をすぐにアッセイし、活性画分を−70℃にて保存した。最大活性を維持するために、同じ日に、その後のクロマトグラフィーを行い、画分をアッセイした。黄色86−アガロース精製活性の4つの調製物を合わせ、超音波処理(YM−30膜、Amicon, Beverly, MA)により12倍濃縮した。緩衝液Gに入った500mM KClで平衡化した1.0cm×25.5cmカラム上でのヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにより活性をさらに精製した。40mLの平衡化緩衝液でカラムを洗浄した後、平衡化緩衝液中の100mMリン酸2カリウムを一段階勾配させて、結合したタンパク質を溶出した。DGAT活性を含むフロースルーから得た画分をプールし、緩衝液G中に1:3:3で希釈して、KCl濃度を500から150mMに低減させた。希釈サンプルを、緩衝液Gに入った150mM KClで平衡化したヘパリンカラムCL−6B(0.55×4.7cm)にアプライした。カラムを5容量の平衡化緩衝液で0.5mL/分で洗浄し、結合タンパク質を150〜500mM KClの10mL直線勾配で、その後0.25mL/分にて10mLの500mM KClで溶出させた。1.1mLの画分を回収した。2つの活性ピークをヘパリンカラムから溶出した(fnx22およびfxn28)。タンパク質精製スキームをまとめたものを表1に示す。300gのM.ラマニアナ細胞ペーストから単離された脂質体画分を調製に使用した。Mr−DGAT2A(ヘパリンfxn28)およびMr−DGAT2B(ヘパリンfxn22)の回収値が、最後のクロマトグラフィーステップにおいて別々に報告されている。
【表1】

【0106】
ポリアクリルアミド勾配ゲル電気泳動(10〜13%)を、Delepelaire, Proc. Nat. Acad.Sci., 76:115-115 (1979)の変更をいくつか加えてLaemmli, Nature, 227680-227685(1970)の方法に従って実行した。分離ゲルは、ショ糖の0〜10%直線勾配で安定化した10〜13%直線勾配のアクリルアミドストックを含んだ。Blumら, Electrophoresis, 8:93-99 (1987)の方法に従い銀で、またはクーマシーブルー(0.1%クーマシーブルーR−250、50%メタノール(v/v)、10%酢酸(v/v))で染色することによりタンパク質を可視化した。
【0107】
いくつかのタンパク質バンド(36.5kD、36kD、35kDおよび34kD)は、第1の活性ピーク(fxn22)と関連していた。34kDバンドは、全てのクロマトグラフィーステップにおいてDGAT活性と相関しなかったため、排除した(すなわち、データは示さない)。第2のピーク(fxn28)は、より高い比活性(表2)を有し、SDS−PAGEにより36kDに主要なタンパク質バンドを含んでいた。精製により3つのタンパク質(36.5kD、36kDおよび35kD)が、可能性のあるDGAT候補として同定された。
【0108】
36kDペプチドから誘導されたアミノ酸配列から設計した縮重プライマーを、センスおよびアンチセンス配向の両方で構築した。これらのプライマーを、異なる組合せで採用して、モルティエレラ・ラマニアナの総RNAから生成されたcDNAを増幅した。Jonesら, The Plant Cell, 7:359-371 (1995)に基本的に記載されるように湿包装細胞から総RNAを調製した。Marathon cDNA増幅キット(BD Biosciences Clontech, Inc. Palo Alto, California)を使用してRNAからcDNAを合成した。増幅混合液は、鋳型、ポリメラーゼ連鎖反応緩衝液、各プライマーを200〜300ng、2.5mM dNTP、および1ユニットのAmpliTaq Goldポリメラーゼ(Perkin Elmer, Norwalk, CT)を含む50μLで構成されていた。増幅プログラムは、95℃にて10分間維持を1回、30サイクルの変性(94℃、30秒間)、アニーリング(62℃、10秒間、50℃まで10%の傾斜、15秒間)、およびプライマー伸長(72℃、2分間)で構成した。反応生成物を、QIAPREP DNA抽出ハンドブック(Qiagen, Santa Clara, California)に従って、0.7%アガロースゲル上で分離させ、切り出し、精製した。精製した生成物を、pCR2.1TOPOベクター(Invitrogen, Carlsbad, California)にクローニングし、DNA配列決定により分析した。プライマーを設計するためには使用しなかったエドマン(Edman)分解により得られたペプチド配列とPCR生成物の推定アミノ酸配列との比較を使用して、断片の同一性を確認した。
【0109】
これらの断片に特異的なプライマーを使用したRACE反応(Marathon cDNA増幅キット)を行って、pCR2.1−TOPOベクターにクローニングされる1312塩基対(bp)の長さのcDNAを得た。このリーディングフレームの最も5’側のATGコドンは、塩基対76に位置し、355アミノ酸長のポリペプチドが翻訳される(図1、MrDGAT2A)。
【0110】
Genbank検索により、これらのポリペプチドは、既知のDGAT1またはその他のアシルトランスフェラーゼに配列関連性を持たないが、真核生物(特に真菌、植物、動物および下等真核生物)の主要な門に存在するこれまで報告されていない遺伝子ファミリーのメンバーであることが示された。
【0111】
市販されているBAC−to−BACバキュロウイルス発現系(Life Technologies, Inc., Gaithersburg, MD)を使用して、培養昆虫(sf9)細胞中でモルティエレラ・ラマニアナDGAT2AおよびDGAT2Bの完全長タンパク質を発現させた。5’末端において制限部位(センスプライマーに対してNotIおよびSpeI、ならびにアンチセンスプライマーに対してPstI)を含むPCR用プライマーにより完全長DGAT2オープンリーディングフレームを増幅させた。PCR生成物を、pCR.2.1TOPOベクターにクローニングし、構築物の忠実性を確認するために配列決定した。pCR2.1−TOPOベクター中の完全長cDNAを、NotIおよびPstIで消化し、pFASTBAC1ベクター(Life Technologies, Inc.)のNotIおよびPstI制限部位にクローニングした。バキュロウイルス発現系を使用して、配列番号18、20、22、24、26および28に示すポリペプチドをコードする完全長cDNAを発現させて、DGAT活性を決定することができる。
【0112】
昆虫細胞(1×10細胞/mL)を、0.05〜0.1の感染多重度(MOI)で感染させ、5日後に27℃にて遠心分離により回収した。ペレット化細胞を緩衝液H(100mMトリシン−NaOH(pH7.8)、10%グリセロール、100mM NaCl)に再懸濁し、超音波処理(2×10秒間)により溶解させた。細胞壁および他の屑を遠心分離によりペレット化し、廃棄した。上清画分の遠心分離(100,000×gにて1時間)により膜を回収し、酵素アッセイのために緩衝液Hにペレットを再懸濁した。昆虫細胞膜中のDGAT活性は、[1−14C]オレオイル−CoAおよび非標識化ジオレオイル−DAGからの14Cトリアシルグリセロールの生成として測定した。反応混合液(0.1mL)は、25〜30mMトリシン(pH7.8)、50〜60mM NaCl、および0.06%CHAPS(w/v)を含む緩衝液に入った、単離された膜、3.5μM[1−14C]オレオイル−CoA、21.5μMオレオイル−CoA、および200μM 1,2−18:1ジアシルグリセロールから構成されていた。アッセイ混合液を、25℃にて5〜10分間インキュベートし、1.5mLのヘプタン:イソプロパノール:0.5M HSO(10:40:1、v/v/v)を添加して反応を止めた。サンプルを上述したように処理した。アッセイは、タンパク質および時間に関して直線であった。
【0113】
モルティエレラ・ラマニアナDGAT2Aタンパク質(94倍)およびDGAT2Bタンパク質(37倍)の両方について、非形質転換sf9細胞と比べてDGAT活性の有意な上昇が検出された(表2)。
【表2】

【0114】
発現したモルティエレラ・ラマニアナDGAT2AおよびDGAT2B遺伝子の酵素学的性質も調査した。DGAT活性に対するpHの影響を、4.0〜11.0の範囲にわたり評価した。両方の酵素についてのpH最適値が6.8において見とめられた。pHについて、2つのポリペプチド間で差は検出されなかった。温度に対する応答で差が見とめられた。DGAT2Aの温度最適値は37℃である一方、DGAT2Bは最適温度を示さなかった。
【実施例2】
【0115】
アカパンカビDGAT2核酸配列の単離およびDGAT活性の確認
以下のプロトコールを使用して、アカパンカビ(Neurospora crassa)DGAT2タンパク質(NcDGAT2)に対応するコード領域全体を得た。Tri試薬(Sigma, St. Louis, MO)を製造元のプロトコールに従い使用して、アカパンカビA交配型(Fungal Genetics Stock Center, Kansas City, Kansas)菌糸体からRNAを単離した。SMART cDNA増幅キット(Clontech, California)を使用して、一本目のcDNA鎖合成を完了した。アカパンカビゲノム配列に対する配列比較に基づき、遺伝子特異的プライマーを設計して、NcDGAT2配列の完全長コード領域を増幅させた。クローニングし易くするために追加の制限部位を導入し(HindIIIおよびRsrII)、配列番号7および配列番号8と称するプライマーを使用した(図3)。製造元のプロトコール(Invitrogen)に従いPCR生成物をプラスミドpCR2.1にクローニングして、プラスミドpMON69834を得た。二本鎖DNA配列決定を行って、配列を検証した(配列番号13)。バキュロウイルス発現系を使用した昆虫細胞におけるNcDGAT2タンパク質の発現のために、pMON69834のRsrII−HindIII断片を、RsrII−HindIII消化プラスミドpFASTBAC1(Gibco-BRL, Gaithersburg, MD)にクローニングした。得られたプラスミドpMON69839を大腸菌DH10BACに形質転換し、組換えウイルスの回収をトランスフェクション5日後に行うこと以外は製造元の指示に従ってBAC−to−BACバキュロウイルス発現系(Gibco-BRL)を使用してタンパク質を発現させた。トランスフェクション混合液から得た上清を使用して、ウイルスストックを生成し、これを使用してSf9細胞を感染させてアッセイに使用した。DGAT活性を、[1−14C]オレオイル−CoAおよび非標識化ジオレオイル−DAGからの14Cトリアシルグリセロールの生成として測定した。反応混合液(0.1mL)は、25〜30mMトリシン(pH7.8)、50〜60mM NaCl、および0.06%CHAPS(w/v)を含む緩衝液に入った、単離膜、3.5μM[1−14C]オレオイル−CoA、21.5μMオレオイル−CoA、および200μM 1,2−18:1ジアシルグリセロールから構成されていた。アッセイ混合液を、25℃にて5〜10分間インキュベートし、1.5mLのヘプタン:イソプロパノール:0.5M HSO(10:40:1、v/v/v)を添加して反応を止めた。サンプルを実施例1に記載したように処理した。DGAT活性は、非形質転換(sf9)細胞における活性と比較してプラスミドpMON69839で形質転換した細胞において6倍増加した。
【0116】
植物におけるNcDGAT2配列の発現について、プライマーオリゴDB#19911(配列番号9)およびオリゴDB#19912(配列番号10)(図3)を使用してNotIおよびSse8387Iクローニング部位を導入するために、pMON69834から遺伝子をPCR増幅させた。PCR生成物をNotI−Sse8387Iで消化し、1071bpの断片を、pMON67164に由来するNotI−Sse8387I消化ベクターとライゲートさせて、pMON68762を形成した。このプラスミドにおいて、遺伝子はナピンプロモーターの制御下にある。プラスミドpMON68762をアグロバクテリウム・ツメファシエンスABI株に導入し、これを使用して、Martinellら、米国特許第6,384,301号に記載されるようにダイズを形質転換した。
【実施例3】
【0117】
再合成DGAT2遺伝子の調製および形質転換
ダイズに由来する8種の高発現種子特異的タンパク質、すなわち、コングリシニン(GenBank受託番号AB008678、AB008679、AB008680)、グリシニン(AB003680、AB004062)、およびグロブリン(D16107、U59425)、ならびにカノーラに由来する14種の高発現種子特異的タンパク質、すなわち、クシフェリン(cuciferin)(GenBank受託番号167133、167135、17800、17804、17810、21117)およびナピン(AA349403、167176、167178、167174、167154、17836、17834、17832)からコドン利用表を構築した。MrDGAT2BおよびScDGAT2アミノ酸配列(それぞれ配列番号4および配列番号6)を、上記コドン利用表と共に、Blue Heron Biotechnology Inc.(Bothell, WA)に送付した。その送付先では、独自のアルゴリズムを利用して、RNA二次構造を形成するために最低の自由エネルギーを有する最終的なコドン最適化ヌクレオチド配列を生成した。Blue Heron Biotechnology, Inc.にMrDGAT2Bのコドン最適化配列を合成してもらい、MrDGAT2B.nno(配列番号11)と名付けた。ScDGAT2のコドン最適化配列をMidland Certified Reagent Company(Midland, TX)に合成してもらい、ScDGAT2.nno(配列番号16)と名付けた。
【0118】
大腸菌発現ベクターにMrDGAT2B.nnoを含むプラスミドpMON70924を配列決定して、DNAがBlue Heron Biotechnologyに報告されるとおりであることを確認した。プラスミドDNAを、XhoIで消化し、末端を充填して平滑末端部をつくり、Sse8387Iで消化した。1068bp断片を、平滑末端/Sse8387I消化ベクターpMON70918とライゲートして、pMON70925を形成した。このプラスミドでは、遺伝子はナピンプロモーターの制御下にある。
【0119】
ScDGAT2.nnoを含むプラスミドpMON70917を配列決定して、DNAがMidland Certified Reagent Companyに報告されるとおりであることを確認した。プラスミドDNAをNotI−Sse8387Iで消化し、1269bp断片をゲル精製した。断片をNotI−Sse8387I消化pMON70918にライゲートしてpMON70920を形成した。このプラスミドでは、遺伝子はナピンプロモーターの制御下にある。同様の技術を用いてScDGAT2.nnoを別の発現ベクターにクローニングして、USP88プロモーターの制御下で遺伝子を発現させた(pMON70923)。プラスミドpMON70925、pMON70923およびpMON70920をアグロバクテリウム・ツメファシエンスABI株に導入し、それぞれを使用して、Martinellら、米国特許第6,384,301号に記載されるようにダイズを形質転換した。
【0120】
同様に、NcDGAT2アミノ酸配列(配列番号14)および上記コドン利用表をBlue Heron Biotechnology, Inc.に送付した。送付先では、RNA二次構造を形成するために最低の自由エネルギーを有するコドン最適化ヌクレオチド配列を生成した。Blue Heron Biotechnology, Inc.にNcDGAT2のコドン最適化配列を合成してもらい、NcDGAT2.nno(配列番号12)と名付けた。再合成NcDGAT2.nnoを配列決定して、DNAがBlue Heron Biotechnologyに報告されるとおりであることを確認した。プラスミドDNAを、NotI−Sse8387Iで消化し、断片をゲル精製した。断片を、NotI−Sse8387I消化pMON67164にライゲートして、遺伝子がナピンプロモーターの制御下にあるプラスミドを作製した。
【0121】
植物宿主のゲノムにおいて配列番号17、19、21および23に示す配列を発現するベクターを構築して、表現型変化を生じるような配列の転写または転写および翻訳を得た。トランスジェニックダイズ植物は、Martinellら、米国特許第6,384,301号に記載されるようにアグロバクテリウム媒介型形質転換により得ることができる。
【実施例4】
【0122】
植物中でのDGAT2の発現
再合成モルティエレラ・ラマニアナDGAT2A遺伝子、MrDGAT2A.nno(配列番号15)を、ダイズ7Sプロモーター配列(pCGN8832)の制御下でダイズ中で発現させた。粒子ボンバードメントにより植物を形質転換させ、プールした発育中のR種子において酵素アッセイを行った。いくつかの植物は、非形質転換植物と比べてDGAT活性の有意な増加(5〜20倍、スチューデントt検定、α=0.05)を示し、表3に示すとおりである。
【表3】

【0123】
植物中のDGAT活性を以下のようにアッセイした。発育中の胚を、すり鉢とすりこぎを使って液体窒素中で砕いた。サンプルの一部を、トリシン緩衝液(100mMトリシン、pH7.5、280mM NaCl、10%グリセロール)で再構成し、Bradford試薬を用いてタンパク質濃度を決定した(Sambrookら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989)。サンプルを1mg/mlに希釈し、10μlをアッセイで使用した。DGAT活性を、[1−14C]オレオイル−CoAおよび非標識化ジオレオイル−DAGからの14Cトリアシルグリセロールの生成として測定した。反応混合液(0.1mL)は、25mMトリシン(pH7.8)、28mM NaCl、および0.06%CHAPS(w/v)を含む緩衝液に入った、タンパク質ホモジネート、3.5μM[1−14C]オレオイル−CoA、10μMオレオイル−CoA、および1.5mM 1,2−18:1ジアシルグリセロールから構成されていた。アッセイ混合液を、25℃にて10分間インキュベートし、1.5mLのヘプタン:イソプロパノール:0.5M HSO(10:40:1、v/v/v)を添加して反応を止めた。サンプルを実施例1に記載したように処理した。
【0124】
MrDGAT2A.nno遺伝子を発現する植物からのR種子を、次世代(R)に進めた。油およびタンパク質レベルは、成熟R種子の近赤外(NIR)分析により測定した。個々の植物から回収したプールした種子サンプルのNIRスペクトルを測定し、加速(accelerated)溶媒抽出の後に重量測定的に測定した様々な油レベルでのダイズ種子の分析から得られた標準曲線を用いた回帰分析に基づいて油レベルを計算した(Better Solutions for Food and Beverage Analysis, 第2版, Dionex Corporation, Sunnyvale, California (1997))。1.7%の統計的に有意な増加が、MrDGAT2A.nnoについてホモ接合性の種子の油平均値(oil mean)と、導入遺伝子を含まない(空)種子の油平均値との間で見とめられた(スチューデントt検定、α=0.05)。タンパク質データの統計的評価は、平均値に差はなかったことを示している(スチューデントt検定、α=0.05)。
【0125】
ナピンプロモーターの制御下における植物中での再合成MrDGAT2A配列の発現について、NotI−Sse8387I断片を、NotI−Sse8387I消化バイナリーベクターpMON67164とライゲートさせて、プラスミドpMON70904を得た。プラスミドpMON70904を、アグロバクテリウム・ツメファシエンスABI株に導入し、これを使用してダイズを形質転換させた。発育中のR1種子を、R0植物から回収し、DGAT活性についてアッセイした。活性の上昇した選択した数の事象を、一世代進めた(R2種子)。第2世代成熟種子における油レベルおよびタンパク質レベルを、近赤外透過率(NIT)分光法により測定した。ここでは、個々の植物から回収したプールした種子サンプルのNITスペクトルを測定し、それぞれ加速溶媒抽出または元素(%N)分析の後に重量測定的に測定した様々な油レベルでのダイズ種子の分析から得た標準曲線を用いた回帰分析に基づいて油およびタンパク質レベルを計算した。導入遺伝子を含まない(空)種子の油平均値と比べて、MrDGAT2A.nnoについてホモ接合性の種子の油平均値に2.6%の統計的に有意な増加が見とめられた(スチューデントt検定、α=0.05)。タンパク質データの統計的評価は、平均値に差はなかったことを示している(スチューデントt検定、α=0.05)。
【実施例5】
【0126】
多数プロモーターからのDGAT2の発現
DGAT2活性を示す2つのタンパク質を、モルティエレラ・ラマニアナで同定した(MrDGAT2AおよびMrDGAT2B)。2つのDGAT遺伝子を発現可能なプラスミドを構築するために、2つの遺伝子を、単一のt−DNA上の同じプラスミドにクローニングした。プラスミドpMON70927は、7Sa’プロモーターの制御下にMrDGAT2A.nno(配列番号15)、そしてナピンプロモーターの制御下にMrDGAT2B.nno(配列番号11)を含んでいた。クローニングは以下の通りに行った:7Sa’プロモーターの制御下にMrDGAT2A.nnoを含むpMON70900を、EcoRVで消化し、充填して平滑末端部を作った。次いで、NotIおよび7Sa’で切断し:MrDGAT2A.nno断片をゲル精製した。断片を、平滑末端/NotI消化植物発現ベクターpMON63689にライゲートして、pMON70912を形成した。MrDGAT2B.nnoを得るために、pMON70924をXhoIおよびEcoRIで消化し、端部を充填して、1071bpの長さの平滑末端/平滑末端断片を作った。断片をゲル精製し、次いで、平滑末端/平滑末端pCGN7770(ナピンプロモーターおよび3’UTRを含む大腸菌発現ベクター)にライゲートして、pMON70926を形成した。ナピン発現カセット中にMrDGAT2B.nnoを含むこのプラスミドを、NotIで消化し、断片を上記NotI−消化pMON70912にライゲートして、pMON70927を形成した。pMON70927をA.ツメファシエンスABI株に導入し、これを使用してダイズをMartinellら、米国特許第6,384,301号に記載されるように形質転換させた。
【0127】
他のDGAT2遺伝子(MrDGAT2A(配列番号1)、MrDGAT2B(配列番号3)、ScDAGT2(配列番号5)、NcDGAT2(配列番号13)、NcDGAT2.nno(配列番号12)、およびScDGAT2.nno(配列番号16)が挙げられるがこれらに限定されない)を、対でまたは二連で同様にクローニングした。使用したプロモーターは、時間および/または強度に関して発現を制御する。
【実施例6】
【0128】
トウモロコシ胚(germ)中でのMrDGAT2Aの発現
トウモロコシにおいて再合成モルティエレラ・ラマニアナDGAT2A(配列番号15)遺伝子の遺伝子標的化発現を操作するために発現ベクターを調製した。具体的には、イネアクチンイントロンが後続するトウモロコシL3オレオシンプロモーターのすぐ3’側、かつグロブリン1の3’UTRの5’側にあるpMON72021のBsp120I/Sse8387I部位に、1076塩基対のNot1/Sse8387I断片に含まれる完全長MrDGAT2A.nno遺伝子(配列番号15)をクローニングして、pMON68654を作製した(図6)。
【0129】
構築物pMON68654を、アグロバクテリウム・ツメファシエンスABI媒介型形質転換によりえり抜きの(elite)トウモロコシ系統LH59において形質転換させた。この形質転換により生じた事象は、油の増加を示した。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1a】特定の誘導型DGAT2ポリペプチド配列の配列アライメントを集合的に示す。
【図1b】特定の誘導型DGAT2ポリペプチド配列の配列アライメントを集合的に示す。
【図1c】特定の誘導型DGAT2ポリペプチド配列の配列アライメントを集合的に示す。
【図2】図1のDGAT2ファミリーメンバーの系統樹を示す。系統樹はDNASTARソフトウェアを使用して構築されている。
【図3】本発明で使用するDNAプライマー分子の一覧である。
【図4】ベクターpCGN8832の模式図である。
【図5】ベクターpMON68762の模式図である。
【図6】ベクターpMON68654の模式図である。
【図7】ベクターpMON70904の模式図である。
【図8】ベクターpMON70920の模式図である。
【図9】ベクターpMON70923の模式図である。
【図10】ベクターpMON70925の模式図である。
【図11】ベクターpMON70927の模式図である。
【図12a】特定の真菌種から誘導したDGAT2ポリペプチド配列の配列アライメントを示す。
【図12b】特定の真菌種から誘導したDGAT2ポリペプチド配列の配列アライメントを示す。
【図13】特定の植物種に由来するDGAT2ポリペプチド配列の配列アライメントを示す。
【配列表】
































【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号14、18、20、22および24からなる群より選択されるものと少なくとも約50%同一であるポリペプチドをコードする核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、配列番号14、18、20、22および24からなる群より選択される、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
配列番号11、12、13、16、17、19、21および23からなる群より選択されるものと少なくとも約75%同一である核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項4】
前記核酸配列が、配列番号11、12、13、16、17、19、21および23からなる群より選択される、請求項3に記載の単離された核酸分子。
【請求項5】
請求項1または請求項3に記載の核酸分子と機能的に連結された、植物細胞において機能する異種プロモーターを含む発現カセットを含む、DNA構築物。
【請求項6】
ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼのポリペプチドをコードする核酸と機能的に連結された、植物細胞において機能する第2の異種プロモーターを含む第2の発現カセットをさらに含む、請求項5に記載のDNA構築物。
【請求項7】
請求項5に記載のDNA構築物を含む、植物または種子。
【請求項8】
トウモロコシ、ダイズ、カノーラ、アブラナ、綿、ゴマ、亜麻、ラッカセイ、ヒマワリ、ベニバナ、オリーブおよびアブラヤシからなる群より選択される、請求項7に記載の植物または種子。
【請求項9】
加工された、請求項7に記載の植物または種子。
【請求項10】
食料、食事、油およびタンパク質からなる群より選択される製品を製造するために使用される、請求項9に記載の植物または種子。
【請求項11】
請求項6に記載のDNA構築物を含む、植物または種子。
【請求項12】
トウモロコシ、ダイズ、カノーラ、アブラナ、綿、ゴマ、亜麻、ラッカセイ、ヒマワリ、ベニバナ、オリーブおよびアブラヤシからなる群より選択される、請求項11に記載の植物または種子。
【請求項13】
加工された、請求項11に記載の植物または種子。
【請求項14】
食料、食事、油およびタンパク質からなる群より選択される製品を製造するために使用される、請求項13に記載の植物または種子。
【請求項15】
(A)請求項5または請求項6に記載のDNA構築物で植物細胞を形質転換するステップ;および
(B)該植物細胞を、同様の遺伝バックグラウンドを有するが該DNA構築物は欠いている植物から得た種子と比べて強化した油を有する稔性植物に再生させるステップ
を含む、植物の作製方法。
【請求項16】
前記植物が、同様の遺伝バックグラウンドを有するが前記DNA構築物は欠いている植物から得た種子と比べて高い油収率を有する種子を提供する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
AYVFGYEPHSVXPI(配列番号33)およびFXXPXYR(配列番号34)からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸モチーフを有するポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項18】
ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ活性を有する、請求項17に記載の単離されたポリヌクレオチド。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13】
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【公表番号】特表2006−503557(P2006−503557A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−524298(P2004−524298)
【出願日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/024822
【国際公開番号】WO2004/011671
【国際公開日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
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【出願人】(501231613)モンサント テクノロジー エルエルシー (71)
【Fターム(参考)】