説明

ジカルコゲナイドインク含有セレンインク、並びにその製造方法および使用方法

【課題】1重量%以上のセレンを含み、安定な分散物であり、ヒドラジンおよびヒドラジニウムを含まない、セレンインク。このセレンインクを製造する方法、およびこのセレンインクを使用して、様々なカルコゲナイドを含む半導体物質、並びにカルコゲナイド含有相変化メモリ物質の製造に使用するための基体上に、セレンを堆積する方法を提供する。
【解決手段】液体キャリア;セレンを含むセレン成分;RZ−Z’R’およびR−SH[式中、ZおよびZ’はそれぞれ独立して硫黄、セレンおよびテルルから選択され;RはH、アルキル基、アリール基、アルキルヒドロキシ基、アリールエーテル基およびアルキルエーテル基から選択され;R’およびRはアルキル基、アリール基、アルキルヒドロキシ基、アリールエーテル基およびアルキルエーテル基から選択される]から選択される式を有する有機カルコゲナイド成分;を初期成分として含むセレンインク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セレンを含むセレン成分;RZ−Z’R’およびR−SHから選択される式を有する有機カルコゲナイド成分;並びに液体キャリア;を初期成分として含むセレンインクであって、1重量%以上のセレンを含み、安定な分散物であり、ヒドラジンおよびヒドラジニウムを含まないセレンインクに関する。本発明は、さらに、このセレンインクを製造する方法、およびこのセレンインクを使用して基体上にセレンを堆積する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なカルコゲナイド含有半導体物質、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)、発光ダイオード(LED);および光応答デバイス[例えば、エレクトロフォトグラフィ(electrophotography)(例えば、レーザープリンタおよびコピー機)、整流器、写真用露出計(photographic exposure meters)、および太陽電池]において使用するための基体上にセレンは堆積される。相変化メモリデバイスにおいて使用するための相変化合金の製造において使用するための基体上にもセレンは堆積される。
【0003】
ある非常に有望なセレンの用途は、太陽光の電気への変換のための太陽電池の製造におけるものである。特に、第1a−1b−3a−6a族の混合金属カルコゲナイド物質、例えば、二セレン化−銅−インジウム(CuInSe)、二セレン化−銅−ガリウム(CuGaSe)、および二セレン化−銅−インジウム−ガリウム(CuIn1−xGaSe)などをベースとした太陽電池の製造におけるセレンの使用は、その太陽エネルギーの電気エネルギーへの高い変換効率のために、著しく興味のあるものである。第1a−1b−3a−6a族の混合金属カルコゲナイド半導体は、総称的に、CIGS物質と称される場合がある。従来のCIGS太陽電池は裏面電極、次にモリブデンの層、CIGS吸収体層、CdS接合パートナー層、および透明導電性酸化物層電極(例えば、ZnOまたはSnO)を含み、このモリブデン層は裏面電極上に堆積され、CIGS吸収体層はモリブデン層とCdS接合パートナーとの間に入れられ、CdS接合パートナーはCIGS吸収体層と透明導電性酸化物層電極との間に入れられる。
【0004】
光起電力素子において使用されるCIGS吸収体層は、その層の他の構成要素と比べて過剰のセレンを含む。セレンのこの有望な用途についての1つの試みはCIGS物質を生産するためのコスト効果的な製造技術の開発である。セレンを堆積させる従来の方法は、典型的には、真空ベースのプロセス、例えば、真空蒸発、スパッタリングおよび化学蒸着などの使用を伴う。このような堆積技術は低いスループット能力と高いコストを示す。セレン含有半導体物質(特に、CIGS物質)の大スケール、高スループット、低コストの製造を容易にするために、溶液系のセレン堆積技術を提供することが望まれる。
【0005】
CIGS物質の製造においてセレンを堆積させる液体堆積方法の1つは、ミツィー(Mitzi)らによって、アドバンストマテリアルズ(ADVANCED MATERIALS)、第20巻、3657−62ページ(2008年)、高効率の溶液堆積薄膜光起電力素子(A High−Efficiency Solution−Deposited Thin−Film Photovoltaic Device)(Mitzi I)に開示されている。Mitzi Iは特に、薄膜CIGS層の製造におけるセレンの堆積のための液体ビヒクルとしてのヒドラジンを含むセレンインクの使用を開示する。しかし、ヒドラジンは高毒性および爆発性の物質である。よって、Mitzi Iのプロセスは、セレン含有半導体デバイスの大規模製造における使用のためには、限定された価値しか有しない。
【0006】
Mitzi Iに記載されるヒドラジン含有セレンインクの代替物が、Mitziらによって、アドバンストマテリアルズ、第17巻、1285〜89ページ(2005年)、高機動性スピンコートカルコゲナイド半導体を使用する低電圧トランジスタ(Low−Voltage Transistor Employing a High−Mobility Spin−Coated Chalcogenide Semiconductor)(Mitzi II)に開示されている。Mitzi IIは、セレン化インジウムを堆積し、薄膜トランジスタのセレン化インジウムチャネル形成のための、ヒドラジニウム前駆体物質の使用を開示する。Mitzi IIはさらに、そのヒドラジニウムアプローチは、SnS2−XSe、GeSeおよびInSeシステム以外に、他のカルコゲナイドにおそらく拡張可能であることを述べる。
【0007】
Mitzi IIによって開示されるヒドラジニウム前駆体物質は、セレン含有半導体膜を生産するための製造工程からヒドラジンを除く。にもかかわらず、Mitzi IIはヒドラジンについての必要性を除いていない。むしろ、Mitzi IIは、ヒドラジニウム前駆体物質の製造において、依然として、ヒドラジンを利用する。さらに、ヒドラジニウムイオン前駆体は、エッカートW.シュミット(Eckart W.Schmidt)によって、彼の本、ヒドラジンおよびその誘導体:製造、特性および用途(Hydrazine and Its Derivatives: Preparation, Properties, and Applications)、ジョンウイリーアンドサンズ(JOHN WILEY&SONS)、第392〜401ページ(1984年)に記載されるように、かなりの爆発の危険性を有している。多くの金属イオンの存在は、ヒドラジン爆発または爆轟の危険性を深刻にする。残留するヒドラジニウム塩は、製造中にプロセス装置内に蓄積することができ、許容できない安全上のリスクを生じさせるので、このことは問題であり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Mitziらによる、アドバンストマテリアルズ(ADVANCED MATERIALS)、第20巻、3657−62ページ(2008年)、高効率の溶液堆積薄膜光起電力素子(A High−Efficiency Solution−Deposited Thin−Film Photovoltaic Device)
【特許文献2】Mitziらによる、アドバンストマテリアルズ、第17巻、1285〜89ページ(2005年)、高機動性スピンコートカルコゲナイド半導体を使用する低電圧トランジスタ(Low−Voltage Transistor Employing a High−Mobility Spin−Coated Chalcogenide Semiconductor)
【特許文献3】エッカートW.シュミット(Eckart W.Schmidt)による、ヒドラジンおよびその誘導体:製造、特性および用途(Hydrazine and Its Derivatives: Preparation, Properties, and Applications)、ジョンウイリーアンドサンズ(JOHN WILEY&SONS)、第392〜401ページ(1984年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、セレン含有半導体物質および相変化合金の製造に使用するための、ヒドラジンを含まず、ヒドラジニウムを含まない、セレン含有インクについての必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある形態においては、セレンを含むセレン成分;RZ−Z’R’およびR−SH[式中、ZおよびZ’はそれぞれ独立して硫黄、セレンおよびテルルから選択され;RはH、C1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、アリールエーテル基およびアルキルエーテル基から選択され;R’およびRはC1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、アリールエーテル基およびアルキルエーテル基から選択される]から選択される式を有する有機カルコゲナイド成分;並びに、液体キャリア;を初期成分として含むセレンインクであって、1重量%以上のセレンを含み、安定な分散物であり、ヒドラジンおよびヒドラジニウムを含まないセレンインクが提供される。
本発明の別の形態においては、セレンを含むセレン成分を提供し;RZ−Z’R’およびR−SH[式中、ZおよびZ’はそれぞれ独立して硫黄、セレンおよびテルルから選択され;RはH、C1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、アリールエーテル基およびアルキルエーテル基から選択され;R’およびRはC1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、アリールエーテル基およびアルキルエーテル基から選択される]から選択される式を有する有機カルコゲナイドを提供し;液体キャリアを提供し;セレン成分、有機カルコゲナイド成分および液体キャリアを一緒にし;一緒にしたものを攪拌しつつ加熱して、複合セレン/有機カルコゲナイド成分を生じさせる;ことを含む、セレンインクを製造する方法であって、複合セレン/有機カルコゲナイド成分は液体キャリア中に安定に分散されており、セレンインクがヒドラジンを含まず、ヒドラジニウムを含まない、セレンインクを製造する方法が提供される。
本発明の別の形態においては、基体を提供し;本発明のセレンインクを提供し;セレンインクを基体に適用して、基体上にセレン物質を形成し;セレン物質を処理して液体キャリアを除去し、セレンを基体上に堆積させる;ことを含む、基体上にセレンを堆積する方法が提供される。
本発明の別の形態においては、基体を提供し;場合によっては、ナトリウムを含む第1a族ソースを提供し;第1b族ソースを提供し;第3a族ソースを提供し;場合によっては、第6a族硫黄ソースを提供し;第6a族セレンソースを提供し、第6aセレンソースは本発明のセレンインクを含み;第1a族ソースを使用してナトリウムを基体に場合によって適用すること、第1b族ソースを使用して第1b族物質を基体に適用すること、第3a族ソースを使用して第3a族物質を基体に適用すること、第6a族硫黄ソースを使用して硫黄物質を基体に場合によって適用すること、および第6a族セレンソースを使用してセレン物質を基体に適用することにより、少なくとも1種の第1a−1b−3a−6a族前駆体物質を基体上に形成し;前駆体物質を処理して、式:NaSe[式中、Xは銅および銀から選択される少なくとも1種の第1b族元素であり;Yはアルミニウム、ガリウムおよびインジウムから選択される少なくとも1種の第3a族元素であり;0≦L≦0.75;0.25≦m≦1.5;nは1であり;0≦p<2.5;0<q≦2.5;並びに、1.8≦(p+q)≦2.5]を有する第1a−1b−3a−6a族物質を形成する;ことを含む、第1a−1b−3a−6a族物質を製造する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、セレンインクに関する言及における用語「安定な」とは、液体キャリア中でセレン成分と有機カルコゲナイド成分とを一緒にすることによって形成される生成物が、22℃、窒素下での、少なくとも30分間の、セレンインクの貯蔵中に、沈殿物を形成しないことを意味する。
【0012】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、セレンインクに関する言及における用語「貯蔵安定な」とは、液体キャリア中でセレン成分と有機カルコゲナイド成分とを一緒にすることによって形成される生成物が、22℃、窒素下での、少なくとも16時間の、セレンインクの貯蔵中に、沈殿物を形成しないことを意味する。
【0013】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、セレンインクに関する言及における用語「延長された安定性」とは、液体キャリア中でセレン成分と有機カルコゲナイド成分とを一緒にすることによって形成される生成物が、22℃、窒素下での、少なくとも5日間の、セレンインクの貯蔵中に、沈殿物を形成しないことを意味する。
【0014】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、セレンインクに関する言及における用語「ヒドラジンを含まない」とは、セレンインクが100ppm未満しかヒドラジンを含まないことを意味する。
【0015】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、セレンインクに関する言及における用語「ヒドラジニウムを含まない、または(Nを含まない」とは、セレンと複合体を形成したヒドラジニウムをセレンインクが100ppm未満しか含まないことを意味する。
【0016】
本発明はセレンインク、セレンインクの製造、およびセレン含有デバイス、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)、発光ダイオード(LED);メモリデバイスに使用するための相変化合金;および光応答デバイス[例えば、エレクトロフォトグラフィ(例えば、レーザープリンタおよびコピー機)、整流器、写真用露出計、および太陽電池]の製造におけるセレンインクの使用に関する。以下の詳細な記載は、太陽電池における使用のために設計されたCIGS物質の製造における、本発明のセレンインクの使用に焦点を当てる。
【0017】
本発明のセレン成分はセレンを含む。好ましくは、セレン成分はセレン粉体を含む。
【0018】
任意の有機カルコゲナイド成分はRZ−Z’R’およびR−SH[式中、ZおよびZ’はそれぞれ独立して硫黄、セレンおよびテルル(好ましくは硫黄およびセレン;最も好ましくは硫黄)から選択され;RはH、C1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、アリールエーテル基およびアルキルエーテル基から選択され(好ましくは、RはC1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、C7−20アリールエーテル基およびC3−20アルキルエーテル基から選択され;より好ましくは、RはC1−20アルキル基およびC6−20アリール基から選択され;さらにより好ましくはRはC1−10アルキル基であり;最も好ましくはRはC1−5アルキル基であり);R’はC1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、アリールエーテル基およびアルキルエーテル基から選択される(好ましくは、R’はC1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、C7−20アリールエーテル基およびC3−20アルキルエーテル基から選択され;より好ましくは、R’はC1−20アルキル基およびC6−20アリール基から選択され;さらにより好ましくは、R’はC1−10アルキル基であり;最も好ましくは、R’はC1−5アルキル基である)]から選択される式を有する。任意に、R、R’およびRは液体キャリア中の有機カルコゲナイドの溶解性を増大させるように選択される。
【0019】
任意の有機カルコゲナイド成分は、本発明のセレンインクに向上した安定性を提供すると考えられる。セレンインクにおける、セレンの、RZ−Z’R’およびR−SHから選択される式を有する有機カルコゲナイドに対するモル比は、セレンインクの特性を所望のように調節するように選択される。理論に拘束されるのを望むものではないが、本発明のセレンインクにおいて、セレンに対する、RZ−Z’R’およびR−SHから選択される式を有する有機カルコゲナイドの高いモル比は、セレンインクの高い安定性に関連すると考えられる。好ましくは、セレンインクにおける、セレンの、RZ−Z’R’およびR−SHから選択される式を有する有機カルコゲナイドに対するモル比は、2:1〜20:1、より好ましくは2:1〜14:1、さらにより好ましくは2:1〜10:1、最も好ましくは2:1〜6:1である。
【0020】
場合によっては、ZおよびZ’は両方とも硫黄である。好ましくは、ZおよびZ’が両方とも硫黄である場合には、RおよびR’はそれぞれ独立して、フェニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基およびtert−ブチル基から選択される。より好ましくは、ZおよびZ’が両方とも硫黄である場合には、RおよびR’は両方ともブチル基である。
【0021】
場合によっては、ZおよびZ’は両方ともセレンである。好ましくは、ZおよびZ’が両方ともセレンである場合には、RおよびR’はそれぞれ独立して、フェニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基およびtert−ブチル基から選択される。より好ましくは、ZおよびZ’が両方ともセレンである場合には、RおよびR’は両方ともフェニル基である。
【0022】
本発明のセレンインクのセレニド含有量は、具体的な用途ニーズ、並びに所定の基体にセレンインクを適用するのに使用される処理技術および装置に適合するように、選択的に提供されることができる。場合によっては、セレンインクは、セレンインクの重量を基準にして、1〜50重量%;1〜5重量%;4〜15重量%;および5〜10重量%から選択されるセレニド含有量を示す。場合によっては、セレンインクは、セレンインクの重量を基準にして1〜50重量%のセレニド含有量を示す。場合によっては、セレンインクは、セレンインクの重量を基準にして1〜5重量%のセレニド含有量を示す。場合によっては、セレンインクは、セレンインクの重量を基準にして4〜15重量%のセレニド含有量を示す。場合によっては、セレンインクは、セレンインクの重量を基準にして5〜10重量%のセレニド含有量を示す。
【0023】
本発明のセレンインクにおける、セレン成分と有機カルコゲナイド成分との組み合わせによって形成される生成物の平均サイズは、具体的な用途ニーズ、並びに所定の基体にセレンインクを適用するのに使用される処理技術および装置に適合するように、選択的に提供されることができる。場合によっては、セレン成分と有機カルコゲナイド成分との組み合わせによって形成される生成物の平均サイズは、0.05〜10ミクロン;0.05〜1ミクロン;0.05〜0.4ミクロン;0.1〜0.4ミクロン;および1ミクロン未満から選択される。場合によっては、セレン成分と有機カルコゲナイド成分との組み合わせによって形成される生成物は、0.05〜10ミクロンの平均粒子サイズを示す。場合によっては、セレン成分と有機カルコゲナイド成分との組み合わせによって形成される生成物は、0.05〜1ミクロンの平均粒子サイズを示す。場合によっては、セレン成分と有機カルコゲナイド成分との組み合わせによって形成される生成物は、0.05〜0.4ミクロンの平均粒子サイズを示す。場合によっては、セレン成分と有機カルコゲナイド成分との組み合わせによって形成される生成物は、0.4ミクロンの平均粒子サイズを示す。セレン成分と有機カルコゲナイド成分との組み合わせによって形成される生成物の平均粒子サイズは、例えば、CIGS物質の製造において、Cu、InおよびまたはGaインクと共堆積する場合には、小さな粒子サイズの物質の堆積を容易にするように;CIGS成分の緊密な混合を容易にするように;目詰まりなしにセレンインクを噴霧するのを容易にするように;またはセレンインクの寿命を延ばすのを容易にするように;選択されうる。
【0024】
場合によっては、本発明のセレンインクは立体的に安定化された懸濁物である。すなわち、セレンインクは不均一な流体であり、セレン成分と有機カルコゲナイド成分との組み合わせによって形成される生成物は、1ミクロンを超える平均粒子サイズを有する複数の粒子を含む。好ましくは、時間と共に沈降する、立体的に安定化された懸濁物中の、セレン成分と有機カルコゲナイド成分との組み合わせによって形成される生成物の粒子は容易に再分散可能である。本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、セレンインクに関する言及における、用語「容易に再分散可能」とは、時間の経過と共に沈降するセレンインクの物質が攪拌または超音波処理で再分散されうる(すなわち、沈降した物質は永続的な凝集体を形成しない)ことを意味する。
【0025】
場合によっては、セレンインクはゾルである。すなわち、セレンインクはコロイド分散物であり、セレン成分と有機カルコゲナイド成分との組み合わせによって形成される生成物は1〜500nmの平均サイズを有する複数の粒子を含む。
【0026】
場合によっては、セレン成分と有機カルコゲナイド成分との組み合わせによって形成される生成物[ここで、RおよびR’またはRの少なくとも1つは、エーテル基を含み、当該エーテル基は2〜20の繰り返し単位を有するエチレンオキシドオリゴマーを含む]を含む本発明のセレンインクは、水性媒体中に溶解されるかまたは分散される。
【0027】
本発明のセレンインクにおいて使用される液体キャリアは、セレン成分と有機カルコゲナイド成分との組み合わせによって形成される生成物が両方とも安定に分散可能なあらゆる溶媒であることができる。場合によっては、使用される液体キャリアは水、エーテル、ポリエーテル、アミド溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)、N−メチルピロリドン、ケト溶媒(例えば、メチルイソブチルケトン)、アリール溶媒(例えば、トルエン)、クレゾールおよびキシレンから選択される。場合によっては、使用される液体キャリアはエーテル、ポリエーテル、アミド溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)、N−メチルピロリドン、ケト溶媒(例えば、メチルイソブチルケトン)、アリール溶媒(例えば、トルエン)、クレゾール、キシレンおよびこれらの混合物から選択される。場合によっては、液体キャリアは窒素含有溶媒、または窒素含有溶媒の組み合わせである。場合によっては、使用される液体キャリアは、式:NR[式中、各Rは独立して、H、C1−10アルキル基、C6−10アリール基、C3−10シクロアルキルアミノ基(例えば、1,2−ジアミノシクロヘキサン)、およびC1−10アルキルアミノ基から選択される]を有する液体アミンを含む。場合によっては、本発明のセレン/第1b族インクの製造に使用される液体キャリアは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリエチレンテトラミン、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチル−1−ヘキシルアミン、3−アミノ−1−プロパノール、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ピリジン、ピロリジン、1−メチルイミダゾール、テトラメチルグアニジンおよびこれらの混合物から選択される。場合によっては、液体キャリアはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリエチレンテトラミン、n−ヘキシルアミン、ピロリジン、n−ブチルアミンおよびこれらの混合物から選択される。場合によっては、液体キャリアはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ピロリジン、n−ブチルアミンおよびこれらの混合物から選択される。場合によっては、液体キャリアはエチレンジアミン、ジエチレントリアミンおよびこれらの混合物から選択される。場合によっては、液体キャリアはエチレンジアミンである。
【0028】
場合によっては、液体キャリアが水の場合には、RおよびR’またはRの少なくとも1つはエーテルを含み、エーテル基は2〜20の繰り返し単位を有するエチレンオキシドオリゴマーを含む。
【0029】
場合によっては、本発明のセレンインクは、非水性インク(すなわち、10重量%以下、好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.1重量%以下しか水を含まない)である。
【0030】
本発明のセレンインクは、場合によっては、補助溶媒をさらに含むことができる。本発明において使用するのに好適な補助溶媒は液体キャリアと混和性である。好ましい補助溶媒は、液体キャリアの沸点の30℃以内の沸点を示す。
【0031】
本発明のセレンインクは、場合によっては、分散剤、湿潤剤、ポリマー、バインダー、消泡剤、乳化剤、乾燥剤、充填剤、増量剤、膜コンディショニング剤、酸化防止剤、可塑剤、保存剤、増粘剤、フロー制御(flow control)剤、レベリング剤、腐蝕抑制剤、およびドーパント(例えば、CIGS物質の電気的特性を向上させるためのナトリウム)から選択される、少なくとも1種の任意の添加剤をさらに含むことができる。場合によっては、例えば、延長した寿命を容易にするために、フロー特性を向上させるために、基体への適用方法(例えば、印刷、噴霧)を容易にするために、基体上へのインクの濡れ/展着特性を変更するために、基体上に他の成分(例えば、CIGS物質の他の構成成分、例えば、Cu、In、GaおよびS)を堆積させるのに使用される他のインクとセレンインクとの適合性を増大させるために、並びにセレンインクの分解温度を変えるために、任意の添加剤が本発明のセレンインクに組み込まれることができる。
【0032】
本発明のセレンインクを製造する方法は、セレンを提供し;RZ−Z’R’およびR−SHから選択される式を有する有機カルコゲナイドを提供し;液体キャリアを提供し;セレン、有機カルコゲナイドおよび液体キャリアを一緒にし;一緒にしたものを攪拌しつつ(好ましくは、液体キャリアの沸点温度から25℃以内の温度に;最も好ましくは、一緒にしたものを還流加熱し)(好ましくは、0.1〜40時間の間)加熱することを含む。好ましくは、セレンの、RZ−Z’R’およびR−SHから選択される式を有する有機カルコゲナイドに対するモル比は、2:1〜20:1、より好ましくは2:1〜14:1、さらにより好ましくは2:1〜10:1、最も好ましくは2:1〜6:1である。
【0033】
本発明のセレンインクの提供においては、提供される有機カルコゲナイドは、チオールおよび有機ジカルコゲナイドから選択される。チオールが使用される場合には、チオールは、好ましくは、式:R−SH[式中、Rは、C1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、アリールエーテル基およびアルキルエーテル基から選択され;好ましくは、Rは、C1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、C7−20アリールエーテル基およびC3−20アルキルエーテル基から選択され;より好ましくは、Rは、C1−20アルキル基およびC6−20アリール基から選択され;さらにより好ましくは、RはC1−10アルキル基であり;最も好ましくは、RはC1−5アルキル基である]を有する。有機ジカルコゲナイドが使用される場合には、有機ジカルコゲナイドは、好ましくは、式:RZ−Z’R’[式中、Rは、H、C1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、アリールエーテル基およびアルキルエーテル基から選択され(好ましくは、Rは、C1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、C7−20アリールエーテル基およびC3−20アルキルエーテル基から選択され;より好ましくは、RはC1−20アルキル基およびC6−20アリール基から選択され;さらにより好ましくは、RはC1−10アルキル基であり;最も好ましくは、RはC1−5アルキル基であり);R’は、C1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、アリールエーテル基およびアルキルエーテル基から選択され(好ましくは、R’は、C1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、C7−20アリールエーテル基およびC3−20アルキルエーテル基から選択され;より好ましくは、R’は、C1−20アルキル基およびC6−20アリール基から選択され;さらにより好ましくは、R’はC1−10アルキル基であり;最も好ましくは、R’はC1−5アルキル基であり);ZおよびZ’はそれぞれ独立して硫黄、セレンおよびテルル(好ましくは硫黄およびセレン、最も好ましくは硫黄である)から選択される]を有する。使用されるチオールおよび有機ジカルコゲナイドにおけるR、RおよびR’基は、得液体キャリア中での、セレン成分と有機カルコゲナイド成分との組み合わせによって形成される生成物の溶解性を増大させるように選択されうる。
【0034】
好ましくは、本発明のセレンインクの提供において、有機カルコゲナイド成分の添加のタイミングは、使用される有機カルコゲナイドの物理的状態に依存する。固体有機カルコゲナイドについては、固体有機カルコゲナイドは好ましくは、液体キャリアの添加前にセレンと一緒にされる。液体有機カルコゲナイドについては、液体有機カルコゲナイドは好ましくは、一緒にされたセレンおよび液体キャリアに添加される。
【0035】
液体有機カルコゲナイドを使用する場合には、本発明のセレンインクを提供することは、場合によっては、液体有機カルコゲナイドを添加する前に、一緒にされたセレンおよび液体キャリアを加熱することをさらに含む。好ましくは、本発明のセレンインクを提供することは、場合によっては、液体有機カルコゲナイドの添加前および添加中に、一緒にされた液体キャリアおよびセレンを加熱することをさらに含む。より好ましくは、一緒にされた液体キャリアおよびセレン粉体は、液体有機カルコゲナイドの添加中に20〜240℃の温度に維持される。最も好ましくは、一緒にされたセレンおよび液体キャリアに、液体有機カルコゲナイドを、連続攪拌、および還流加熱をしつつ、徐々に添加することにより、一緒にされたセレンおよび液体キャリアに、液体有機カルコゲナイドが添加される。
【0036】
好ましくは、本発明のセレンインクの製造に使用されるセレン成分はセレン粉体である。
【0037】
好ましくは、本発明のセレンインクの製造に使用されるセレンは、生産されるセレンインクの1〜50重量%、1〜20重量%、1〜5重量%、4〜15重量%、または5〜10重量%を構成する。
【0038】
場合によっては、本発明のセレンインクを製造する方法は、さらに、補助溶媒を提供し;並びに、液体キャリアと補助溶媒とを一緒にすることを含む。
【0039】
場合によっては、本発明のセレンインクを製造する方法は、少なくとも1種の任意の添加剤を提供し;並びに、少なくとも1種の任意の添加剤を、液体キャリアと一緒にし;当該少なくとも1種の任意の添加剤が分散剤、湿潤剤、ポリマー、バインダー、消泡剤、乳化剤、乾燥剤、充填剤、増量剤、膜コンディショニング剤、酸化防止剤、可塑剤、保存剤、増粘剤、フロー制御剤、レベリング剤、腐蝕抑制剤、およびドーパントから選択される;ことをさらに含む。
【0040】
好ましくは、本発明のセレンインクを製造する方法においては、液体キャリアをセレンに添加することにより、セレンおよび液体キャリアが一緒にされる。より好ましくは、セレンおよび液体キャリアは不活性技術を用いて一緒にされ、次いで、連続的に攪拌および加熱される。好ましくは、液体キャリアは、液体キャリアとセレン粉体とを一緒にする間、20〜240℃の温度に維持される。場合によっては、液体キャリアおよびセレンは、一緒にするプロセス中、セレンの融点(220℃)より高く加熱されうる。
【0041】
好ましくは、本発明のセレンインクを製造する方法においては、有機カルコゲナイドの添加のタイミングは、使用される有機カルコゲナイドの物理的状態に依存する。固体有機カルコゲナイドについては、固体有機カルコゲナイドは好ましくは、液体キャリアの添加前にセレンと一緒にされる。液体有機カルコゲナイドについては、液体有機カルコゲナイドは好ましくは、一緒にされたセレンおよび液体キャリアに添加される。
【0042】
液体有機カルコゲナイドを使用する場合には、本発明のセレンインクを製造する方法は、場合によっては、液体有機カルコゲナイドを添加する前に、一緒にされたセレンおよび液体キャリアを加熱することをさらに含む。好ましくは、本発明のセレンインクを製造する方法は、場合によっては、液体有機カルコゲナイドの添加前および添加中に、一緒にされた液体キャリアおよびセレン粉体を加熱することをさらに含む。より好ましくは、一緒にされた液体キャリアおよびセレン粉体は、液体有機カルコゲナイドの添加中に20〜240℃の温度に維持される。場合によっては、一緒にされたセレンおよび液体キャリアに、液体有機カルコゲナイドを、連続攪拌、加熱および還流を伴って、徐々に添加することにより、一緒にされたセレンおよび液体キャリアに、液体有機カルコゲナイドが添加される。
【0043】
本発明のセレンインクを製造する方法においては、使用される液体キャリアは、セレン成分と有機カルコゲナイド成分との組み合わせによって形成される生成物が安定に分散可能な溶媒または溶媒の組み合わせである。場合によっては、使用される液体キャリアは水、エーテル、ポリエーテル、アミド溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)、N−メチルピロリドン、ケト溶媒(例えば、メチルイソブチルケトン)、アリール溶媒(例えば、トルエン)、クレゾール、キシレンおよびこれらの混合物から選択される。好ましくは使用される液体キャリアはエーテル、ポリエーテル、アミド溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)、N−メチルピロリドン、ケト溶媒(例えば、メチルイソブチルケトン)、アリール溶媒(例えば、トルエン)、クレゾール、キシレンおよびこれらの混合物から選択される。より好ましくは、液体キャリアは窒素含有溶媒、または窒素含有溶媒の混合物である。場合によっては、使用される液体キャリアは、式:NR[式中、各Rは独立して、H、C1−10アルキル基、C6−10アリール基、C3−10シクロアルキルアミノ基(例えば、1,2−ジアミノシクロヘキサン)、およびC1−10アルキルアミノ基から選択される]を有する液体アミンを含む。さらにより好ましくは、使用される液体キャリアは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリエチレンテトラミン、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチル−1−ヘキシルアミン、3−アミノ−1−プロパノール、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ピリジン、ピロリジン、1−メチルイミダゾール、テトラメチルグアニジン、およびこれらの混合物から選択される。場合によっては、使用される液体キャリアはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n−ヘキシルアミン、ピロリジン、n−ブチルアミン、およびこれらの混合物から選択される。場合によっては、使用される液体キャリアはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ピロリジン、n−ブチルアミン、およびこれらの混合物から選択される。より好ましくは、使用される液体キャリアはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、およびこれらの混合物から選択される。
【0044】
本発明のセレンインクは、セレンを含む様々な半導体物質(例えば、薄層トランジスタ、太陽電池、エレクトロフォトグラフィ部品、整流器、写真用露出計、写真式複写(photocopying)メディア)の製造に、およびカルコゲナイド含有相変化メモリデバイスの製造に使用されうる。
【0045】
本発明のセレンインクを用いて基体上にセレンを堆積する方法は、基体を提供し;本発明のセレンインクを提供し;セレンインクを基体に適用して基体上にセレン物質を形成し;セレン物質を処理して液体キャリアを除去し、セレンを基体上に堆積させる;ことを含む。理論に拘束されるのを望むものではないが、この方法によって基体上に堆積されるセレンは、ゼロの形式的酸化状態を有する(すなわち、基体上に堆積されるセレンはSeである)と考えられる。
【0046】
本発明のセレンインクは、従来の処理技術、例えば、湿潤コーティング、噴霧コーティング、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング、接触印刷、トップフィード(top feed)反転印刷、ボトムフィード(bottom feed)反転印刷、ノズルフィード反転印刷、グラビア印刷、マイクログラビア印刷、反転マイクログラビア印刷、コマダイレクト(comma direct)印刷、ローラーコーティング、スロットダイコーティング、マイヤーバー(meyerbar)コーティング、リップダイレクトコーティング、デュアルリップダイレクトコーティング、キャピラリーコーティング、インクジェット印刷、ジェット堆積、噴霧熱分解および噴霧堆積を使用して基体上に堆積されうる。好ましくは、本発明のセレンインクは、従来の噴霧熱分解技術を用いて基体上に堆積されうる。好ましくは、本発明のセレンインクは不活性雰囲気下(例えば、窒素下)で基体上に堆積される。
【0047】
好ましくは、セレン物質を処理して液体キャリアを除去する場合には、セレン物質は液体キャリアの沸点温度より高い温度に加熱される。場合によっては、セレン物質は5〜200℃の温度に加熱される。場合によっては、セレン物質は、真空下で5〜200℃の温度に加熱される。場合によっては、セレン物質は、220℃より高い温度に加熱され、セレンを溶融しかつ液体キャリアを揮発させて、その除去を容易にする。
【0048】
第1a−1b−3a−6a族物質を製造する本発明の方法は、基体を提供し;場合によっては、ナトリウムを含む第1a族ソースを提供し;第1b族ソースを提供し;第3a族ソースを提供し;場合によっては、第6a族硫黄ソースを提供し;第6a族セレンソースを提供し、第6a族セレンソースは本発明のセレンインクを含み;第1a族ソースを使用してナトリウムを基体に場合によって適用すること、第1b族ソースを使用して第1b族物質を基体に適用すること、第3a族ソースを使用して第3a族物質を基体に適用すること、第6a族硫黄ソースを使用して硫黄物質を基体に場合によって適用すること、および第6a族セレンソースを使用してセレン物質を基体に適用することにより、第1a−1b−3a−6a族前駆体物質を基体上に形成し;前駆体物質を処理して、式:NaSe[式中、Xは銅および銀から選択される少なくとも1種の第1b族物質であり、好ましくは銅であり;Yはアルミニウム、ガリウムおよびインジウムから、好ましくはインジウムおよびガリウムから選択される少なくとも1種の第3a族物質であり;0≦L≦0.75;0.25≦m≦1.5;nは1であり;0≦p<2.5;0<q≦2.5]を有する第1a−1b−3a−6a族物質を形成することを含む。好ましくは、0.5≦(L+m)≦1.5、および1.8≦(p+q)≦2.5である。好ましくは、Yは(In1−bGa)[式中、0≦b≦1]である。より好ましくは、第1a−1b−3a−6a族物質は、式:NaCuIn(1−d)Ga(2+e)(1−f)Se(2+e)f[式中、0≦L≦0.75;0.25≦m≦1.5;0≦d≦1;−0.2≦e≦0.5;0<f≦1;0.5≦(L+m)≦1.5;および1.8≦{(2+e)f+(2+e)(1−f)}≦2.5]に従う。場合によっては、基体への適用前に、第1a族ソース、第6a族セレンソース、第3a族ソースおよび第6a族硫黄ソース1種以上が一緒にされる。前駆体物質の成分は公知の方法によって処理されることができ、式:NaSeを有する第1a−1b−3a−6a族物質を形成することができる。前駆体物質の成分は個々に、または様々な組み合わせで処理されることができる。0.5〜60分のアニーリング時間で、堆積された成分のためのアニーリング温度は200〜650℃の範囲であることができる。場合によっては、本発明のセレンインク、セレン蒸気、セレン粉体、セレン化水素ガス、硫黄粉体および硫化水素ガスの少なくとも1つの形態で、アニーリングプロセス中に、追加の第6a族物質が導入されうる。前駆体物質は、場合によっては、素早い熱処理プロトコルの使用によって、例えば、高出力石英ランプ、レーザーまたはマイクロ波加熱方法の使用によって、アニーリング温度に加熱されることができる。前駆体物質は、場合によっては、従来の加熱方法を用いて、例えば、炉内でアニーリング温度に加熱されうる。
【0049】
好ましい種類の第1a−1b−3a−6a族物質はCIGS物質である。CIGS物質を製造する方法を含む本発明の好ましい方法は、基体を提供し;銅ソースを提供し;場合によっては、インジウムソースを提供し;場合によっては、ガリウムソースを提供し;場合によっては、硫黄ソースを提供し;本発明のセレンインクを提供し;銅ソースを用いて基体上に銅物質を堆積すること、インジウムソースを用いて基体上にインジウム物質を場合によって堆積すること、ガリウムソースを用いて基体上にガリウム物質を場合によって堆積すること、硫黄ソースを用いて基体上に硫黄物質を場合によって堆積すること、およびセレンインクを用いて基体上にセレン物質を堆積することにより、少なくとも1つのCIGS前駆体層を基体上に形成し;少なくとも1つのCIGS前駆体層を処理して、式:CuInGaSe[式中、0.5≦v≦1.5(好ましくは、0.85≦v≦0.95)、0≦w≦1(好ましくは、0.68≦w≦0.75、より好ましくはwは0.7である)、0≦x≦1(好ましくは、0.25≦x≦0.32、より好ましくは、xは0.3である)、0<y≦2.5;並びに0≦z<2.5]を有するCIGS物質を形成することを含む。好ましくは、(w+x)=1、および1.8≦(y+z)≦2.5である。より好ましくは、製造されたCIGS物質は、式:CuIn1−bGaSe2−c[式中、0≦b≦1および0≦c<2]を有する。CIGS前駆体層の成分は公知の方法によって処理されることができ、式:CuInGaSeを有するCIGS物質を形成することができる。複数のCIGS前駆体層が適用される場合には、この層は個々に、または様々な組み合わせで処理されうる。例えば、本発明のセレンインクと、銅ソース、インジウムソースおよびガリウムソースの少なくとも1種とは、基体上に逐次的に堆積されることができ、または基体上に共堆積されることができ、CIGS前駆体層を形成し、次いで前駆体層を200〜650℃の温度に0.5〜60分間加熱し、次いで、本発明のさらなるセレンインクと、銅ソース、インジウムソースおよびガリウムソースの少なくとも1種とを使用して、別のCIGS前駆体層を基体上に堆積し、次いで、200〜650℃の温度で0.5〜60分間加熱することができる。別のアプローチにおいては、CIGS前駆体層の成分は全て、アニーリング前に、基体に適用される。0.5〜60分のアニーリング時間で、アニーリング温度は200〜650℃の範囲であることができる。場合によっては、セレンインク、セレン粉体およびセレン化水素ガスの少なくとも1つの形態で、アニーリングプロセス中に、追加のセレンが導入されうる。CIGS前駆体層は、場合によっては、素早い熱処理プロトコルの使用によって、例えば、高出力石英ランプ、レーザーまたはマイクロ波加熱方法の使用によって、アニーリング温度に加熱されることができる。CIGS前駆体層は、場合によって、従来の加熱方法を用いて、例えば、炉内でアニーリング温度に加熱されうる。
【0050】
場合によっては、銅ソース、インジウムソース、ガリウムソース、硫黄ソースおよび本発明のセレンインクの少なくとも2種が、これらを用いて基体上に物質を堆積させる前に、一緒にされうる。場合によっては、銅ソース、インジウムソース、ガリウムソース、硫黄ソースおよびセレンインクの少なくとも3種が、これらを用いて物質を基体上に堆積させる前に、一緒にされうる。場合によっては、銅ソース、インジウムソース、ガリウムソース、硫黄ソースおよびセレンインクは、これらを用いて物質を基体上に堆積させる前に、一緒にされる。
【0051】
場合によっては、セレン物質、銅物質、インジウム物質、ガリウム物質および硫黄物質の少なくとも2種は、望まれるCIGS物質組成を提供するように基体上に共堆積される。本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、用語「共堆積される(codeposited)」とは、基体上に共堆積されるものである、セレン物質、銅物質、インジウム物質、ガリウム物質および硫黄物質が、基体上で同時に個別に堆積される(すなわち、これら物質が基体上に堆積される直前または堆積されるのと同時に、これら物質が一緒にされる)ことを意味する。
【0052】
基体上への堆積前に2種以上の物質のソースを一緒にするのを容易にするために、または2種以上の物質のソースの共堆積を容易にするために、使用される物質のソースは好ましくは、類似の分解温度を示すように配合される。好ましくは、一緒にされるまたは共堆積される物質のソースの分解温度(すなわち、物質のソースにおける液体キャリアおよび液体ビヒクルの沸点温度)は50℃以内、より好ましくは25℃以内である。
【0053】
本発明に従って使用するのに好適な第1a族ソースは、液体堆積技術、真空蒸発技術、化学蒸着技術、スパッタリング技術またはナトリウムを基体上に堆積させるための任意の他の従来のプロセスを用いて、基体上にナトリウム(第1a族物質)を堆積させるための従来のビヒクルを含む。好ましくは、第1a族ソースは、第1b族ソース、第3a族ソース、第6a族硫黄ソースまたは第6a族セレンソースの1種以上に組み込まれうる。あるいは、ナトリウムは別の第1a族ソースを使用して基体上に堆積されうる。
【0054】
本発明に従って使用するのに好適な第1b族ソースは、液体堆積技術、真空蒸発技術、化学蒸着技術、スパッタリング技術または第1b族物質を基体上に堆積させるための任意の他の従来のプロセスを用いて、基体上に第1b族物質を堆積させるための従来のビヒクルを含む。好ましくは、第1b族物質には、銅および銀の少なくとも1種、より好ましくは銅が挙げられる。場合によっては、第1b族ソースは、第1b族物質に加えて、セレンを含む(例えば、CuSe、AgSe)。
【0055】
本発明に従って使用するのに好適な第3a族ソースは、液体堆積技術、真空蒸発技術、化学蒸着技術、スパッタリング技術または第3a族物質を基体上に堆積させるための任意の他の従来のプロセスを用いて、基体上に第3a族物質を堆積させるための従来のビヒクルを含む。好ましくは、第3a族物質には、ガリウム、インジウムおよびアルムニウムの少なくとも1種、より好ましくはガリウムおよびインジウムの少なくとも1種が挙げられる。場合によっては、第3a族ソースは、第3a族物質に加えて、セレンを含む(例えば、InSe、GaSe)。場合によっては、第3a族ソースは、第3a族物質に加えて銅およびセレンを含む(例えば、CIGSナノ粒子)。
【0056】
本発明に従って使用するのに好適な第6a族硫黄ソースは、液体堆積技術、真空蒸発技術、化学蒸着技術、スパッタリング技術または硫黄を基体上に堆積させるための任意の他の従来のプロセスを用いて、基体上に硫黄を堆積させるための従来のビヒクルを含む。
【0057】
使用される基体は、セレンを含む半導体の製造に伴い、またはカルコゲナイド含有相変化メモリデバイスに伴い使用される従来の物質から選択されうる。いくつかの用途における使用のためには、基体はモリブデン、アルミニウムおよび銅から好ましくは選択されうる。光起電力素子における使用のためのCIGS物質の製造における使用のためには、基体は最も好ましくはモリブデンである。ある用途においては、モリブデン、アルミニウムまたは銅基体はキャリア物質、例えば、ガラス、ホイルおよびプラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタラートおよびポリイミド)上の塗膜であり得る。場合によっては、基体は光起電力素子における使用のためのCIGS物質のロールツーロール生産を容易にするのに充分に柔軟である。
【0058】
基体上にCIGS物質を形成するための本発明の方法においては、1〜20のCIGS前駆体層が基体上に堆積され、CIGS物質を形成する。好ましくは2〜8のCIGS前駆体層が基体上に堆積され、CIGS物質を形成する。個々のCIGS前駆体層はそれぞれ、銅、銀、ガリウム、インジウム、硫黄およびセレンの少なくとも1種を含む。場合によっては、CIGS前駆体層の少なくとも1つは、銅および銀から選択される少なくとも1種の第1b族物質;ガリウムおよびインジウムから選択される少なくとも1種の第3a族物質;並びに、硫黄およびセレンから選択される少なくとも1種の第6a族物質を含む。
【0059】
本発明のセレンを堆積する方法を使用すると、セレンを含む均一なまたは段階的な半導体膜(例えば、CIGS物質)を提供することが可能である。例えば、段階的CIGS物質は、様々な濃度の堆積成分を堆積させることにより(すなわち、異なる組成の前駆体物質の複数層を堆積させることにより)製造されうる。CIGS物質の製造においては、(例えば、Ga濃度に関して)段階的な膜を提供することが場合によっては望まれる。光によって生じた電荷キャリアの分離の向上を容易にするために、および裏面接触(back contact)での組み替えの低減を容易にするために、光起電力素子に使用するためのCIGS物質の深さに応じて段階的なGa/(Ga+In)比を提供することが従来のものである。よって、所望の粒子構造および最も高い効率の光起電力素子特性を達成するようにCIGS物質組成を調整することが望ましいと考えられる。
【実施例】
【0060】
実施例1−32:セレンインク合成
セレンインクは以下の方法を用いて、表1に特定された成分および量を用いて製造された。セレン粉体は、空気中で反応容器に秤量された。固体有機ジカルコゲナイドを使用した実施例については、固体有機ジカルコゲナイドは、次いで、反応容器に秤量された。反応容器は、次いで、窒素でパージされた。次いで、グローブボックス内で不活性技術を使用して、攪拌することなく、反応容器に液体キャリアが添加された。液体有機ジカルコゲナイドを使用した実施例については、液体有機ジカルコゲナイドは、次いで、不活性技術を使用して(すなわち、ゴム隔壁を通したシリンジを介して)反応容器に添加された。次いで、反応容器の内容物は表1に示された反応条件に従って処理された。形成された生成物に関する観察結果が表1に示される。セレンインクの形成は、液体キャリアにおける特徴的な褐色の形成、および反応容器の底の固体の消失によって示された。いくつかのセレンインクは空気感受性であり、空気に曝露されると分解することに留意されたい。よって、セレンインクは窒素雰囲気下で製造され貯蔵された。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
A.反応容器の内容物を、120℃にセットされたホットプレート上で6.5時間加熱し;次いで、ホットプレート設定温度を130℃に上げて、さらに2時間加熱を続けた。
B.褐色溶液。反応完了時に固体は観察されなかった。
C.部分的溶解。反応完了時に反応容器の底に幾分かの固体。
D.反応容器の内容物を、80℃にセットされたホットプレート上で2時間加熱し;ホットプレート設定温度を125℃に上げて、2.3時間加熱を続け;ホットプレート設定温度を135℃に上げて、3.2時間加熱を続けた。
E.反応容器の内容物を、120℃にセットされたホットプレート上で4時間加熱し;ホットプレート設定温度を130℃に上げて8時間。
F.褐色溶液。反応完了時に固体は観察されなかった。時間の経過により、褐色溶液から透明な相が分離する。
I.透明溶液。セレンは実質的に溶液に溶解しなかった。
J.非常にかすかな褐色の溶液。わずかな量のセレンが溶解した。
K.透明溶液。セレンは実質的に溶液に溶解しなかった。
L.褐色溶液。反応完了時に幾分かの固体が残り、完全に溶解しなかった。
【0064】
実施例33−49:ろ過
前記実施例に従って製造されたセレンインクは表2に示され、これは、インクの合成の後で、1.2ミクロンガラスシリンジフィルタを通してろ過された。表2には結果が示される。
【0065】
【表3】

【0066】
M.示された保持期間の後で凝集または沈降は観察されなかった。セレンインクは停滞なくフィルタを通過した(すなわち、全ての物質がフィルタを通過した)。
【0067】
実施例50:モリブデン基体上でのセレニド膜の製造
以下の手順は窒素雰囲気下でグローブボックス内で行われた。モリブデンホイル基体が、120℃にセットされたホットプレート上で予備加熱された。実施例2に従って製造されたセレンインクが数滴、予備加熱したモリブデンホイル基体上に堆積された。セレンインクの堆積後に、ホットプレートの設定温度を120℃で5分間維持した。次いで、ホットプレートの設定温度を220℃に上げて、そこに5分間保持した。次いで、ホットプレートからモリブデン基体が取り出され、室温に冷却された。得られた生成物は、Rigaku D/MAX2500を用いて、ニッケルフィルターを通した銅Kα線の50kV/200mAで、x−線回折(2シータスキャン)によって分析された。サンプルは0.03度のステップで、0.75度/分で、5〜90度の2θでスキャンされた。反射配置(reflection geometry)が使用され、サンプルは20RPMで回転させられた。次いで、スキャン出力は、標準結晶学データベースにおける化合物についてのスキャンと比較されて、結晶セレンが基体の表面上に形成されたことを確かめた。
【0068】
実施例51:銅基体上のセレン化銅膜の製造
以下の手順は窒素雰囲気下でグローブボックス内で行われた。銅ホイル基体が、100℃にセットされたホットプレート上で予備加熱された。実施例2に従って製造されたセレンインクが数滴、予備加熱した銅ホイル基体上に堆積された。セレンインクの堆積後に、ホットプレートの設定温度を100℃で5分間維持した。次いで、ホットプレートの設定温度を220℃に上げて、そこに5分間保持した。次いで、ホットプレート設定温度を298℃に上げて、そこに5分間保持した。次いで、ホットプレートから基体が取り出され、室温に冷却された。得られた生成物は、Rigaku D/MAX2500を用いて、ニッケルフィルターを通した銅Kα線の50kV/200mAで、x−線回折(2シータスキャン)によって分析された。サンプルは0.03度のステップで、0.75度/分で、5〜90度の2θでスキャンされた。反射配置が使用され、サンプルは20RPMで回転させられた。次いで、スキャン出力は、標準結晶学データベースにおける化合物についてのスキャンと比較されて、セレン化銅が基体の表面上に形成されたことを確かめた。
【0069】
実施例52:モリブデン基体上のセレン化銅膜の製造
以下の手順は窒素雰囲気下でグローブボックス内で行われた。モリブデンホイル基体が、100℃にセットされたホットプレート上で予備加熱された。0.55gの銅(II)アセチルアセトナートを、銅(II)アセチルアセトナートが溶解するまで40℃で攪拌しつつ、9.5gのエチレンジアミンに溶解することにより、銅インクが製造された。実施例2に従って製造されたセレンインク1滴が、4滴の銅インクと共に、モリブデンホイル基体上に堆積された。インクを堆積した後で、ホットプレートの設定温度を100℃で5分間維持した。次いで、ホットプレートの設定温度を220℃に上げて、そこに5分間保持した。次いで、ホットプレート設定温度を298℃に上げて、そこに5分間保持した。次いで、ホットプレートから基体が取り出され、室温に冷却された。得られた生成物は、実施例51に示されたのと同じ装置およびセッティングを用いて、x−線回折(2シータスキャン)によって分析された。次いで、スキャン出力は、標準結晶学データベースにおける化合物についてのスキャンと比較されて、セレン化銅が基体の表面上に形成されたことを確かめた。
【0070】
実施例53:モリブデン基体上のセレン化銅膜の製造
以下の手順は窒素雰囲気下でグローブボックス内で行われた。モリブデンホイル基体が、100℃にセットされたホットプレート上で予備加熱された。0.35gの銅(II)エチルへキサノアートを、銅(II)エチルへキサノアートが溶解するまで40℃で攪拌しつつ、6.65gのヘキシルアミンに溶解することにより、銅インクが製造された。実施例2に従って製造されたセレンインク1滴が、4滴の銅インクと共に、モリブデンホイル基体上に堆積された。インクを堆積した後で、ホットプレートの設定温度を100℃で5分間維持した。次いで、ホットプレートの設定温度を220℃に上げて、そこに5分間保持した。次いで、ホットプレート設定温度を298℃に上げて、そこに5分間保持した。次いで、ホットプレートから基体が取り出され、室温に冷却された。得られた生成物は、実施例51に示されたのと同じ装置およびセッティングを用いて、x−線回折(2シータスキャン)によって分析された。次いで、スキャン出力は、標準結晶学データベースにおける化合物についてのスキャンと比較されて、セレン化銅が基体の表面上に形成されたことを確かめた。
【0071】
実施例54:モリブデン基体上のセレン化銅膜の製造
以下の手順は窒素雰囲気下でグローブボックス内で行われた。モリブデンホイル基体が、100℃にセットされたホットプレート上で予備加熱された。1.59gのギ酸銅(II)を、ギ酸銅(II)が溶解するまで40℃で攪拌しつつ、7.37gのn−ブチルアミンに溶解することにより、銅インクが製造された。実施例2に従って製造されたセレンインク1滴が、4滴の銅インクと共に、モリブデンホイル基体上に堆積された。インクを堆積した後で、ホットプレートの設定温度を100℃で5分間維持した。次いで、ホットプレートの設定温度を220℃に上げて、そこに5分間保持した。次いで、ホットプレート設定温度を298℃に上げて、そこに5分間保持した。次いで、ホットプレートから基体が取り出され、室温に冷却された。得られた生成物は、実施例51に示されたのと同じ装置およびセッティングを用いて、x−線回折(2シータスキャン)によって分析された。次いで、スキャン出力は、標準結晶学データベースにおける化合物についてのスキャンと比較されて、セレン化銅が基体の表面上に形成されたことを確かめた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セレンを含むセレン成分;
RZ−Z’R’およびR−SH[式中、ZおよびZ’はそれぞれ独立して硫黄、セレンおよびテルルから選択され;RはH、C1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、アリールエーテル基およびアルキルエーテル基から選択され;R’およびRはC1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、アリールエーテル基およびアルキルエーテル基から選択される]から選択される式を有する有機カルコゲナイド成分;並びに、
液体キャリア;
を初期成分として含むセレンインクであって、
1重量%以上のセレンを含み、安定な分散物であり、ヒドラジンおよびヒドラジニウムを含まないセレンインク。
【請求項2】
ZおよびZ’が両方とも硫黄である、請求項1に記載のセレンインク。
【請求項3】
ZおよびZ’が両方ともセレンであり;RおよびR’がそれぞれ独立して、フェニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基およびtert−ブチル基から選択される、請求項1に記載のセレンインク。
【請求項4】
ZおよびZ’が両方とも硫黄であり;RおよびR’がそれぞれ独立して、フェニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基およびtert−ブチル基から選択される、請求項1に記載のセレンインク。
【請求項5】
液体キャリアが窒素含有溶媒である、請求項1に記載のセレンインク。
【請求項6】
液体キャリアが、式:NR[式中、各Rは独立して、H、C1−10アルキル基、C6−10アリール基およびC1−10アルキルアミノ基から選択される]を有する液体アミンである、請求項1に記載のセレンインク。
【請求項7】
液体キャリアが、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリエチレンテトラミン、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチル−1−ヘキシルアミン、3−アミノ−1−プロパノール、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ピリジン、ピロリジン、1−メチルイミダゾール、テトラメチルグアニジンおよびこれらの混合物から選択される、請求項1に記載のセレンインク。
【請求項8】
セレンインクを製造する方法であって、
セレンを含むセレン成分を提供し;
RZ−Z’R’およびR−SH[式中、ZおよびZ’はそれぞれ独立して硫黄、セレンおよびテルルから選択され;RはH、C1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、アリールエーテル基およびアルキルエーテル基から選択され;R’およびRはC1−20アルキル基、C6−20アリール基、C1−20アルキルヒドロキシ基、アリールエーテル基およびアルキルエーテル基から選択される]から選択される式を有する有機カルコゲナイドを提供し;
液体キャリアを提供し;
セレン成分、有機カルコゲナイド成分および液体キャリアを一緒にし、一緒にしたものを攪拌しつつ加熱して、複合セレン/有機カルコゲナイド成分を生じさせる;
ことを含み、
複合セレン/有機カルコゲナイド成分は液体キャリア中に安定に分散されており、セレンインクがヒドラジンを含まず、ヒドラジニウムを含まない;
セレンインクを製造する方法。
【請求項9】
基体を提供し;
請求項1に記載のセレンインクを提供し;
セレンインクを基体に適用して、基体上にセレン物質を形成し;並びに、
セレン物質を処理して液体キャリアを除去し、セレンを基体上に堆積させる;ことを含む、基体上にセレンを堆積する方法。
【請求項10】
さらに、
場合によっては、ナトリウムを含む第1a族ソースを提供し;
第1b族ソースを提供し;
第3a族ソースを提供し;
場合によっては、第6a族硫黄ソースを提供し;
第1a族ソースを使用してナトリウムを基体に場合によって適用すること、第1b族ソースを使用して第1b族物質を基体に適用すること、第3a族ソースを使用して第3a族物質を基体に適用すること、および第6a族硫黄ソースを使用して硫黄物質を基体に場合によって適用することにより、少なくとも1種の第1a−1b−3a−6a族前駆体物質を基体上に形成し;
前駆体物質を処理して、式:NaSe[式中、Xは銅および銀から選択される少なくとも1種の第1b族元素であり;Yはアルミニウム、ガリウムおよびインジウムから選択される少なくとも1種の第3a族元素であり;0≦L≦0.75;0.25≦m≦1.5;nは1であり;0≦p<2.5;0<q≦2.5;並びに、1.8≦(p+q)≦2.5]を有する第1a−1b−3a−6a族物質を形成する;
ことを含む、請求項9に記載の方法。

【公開番号】特開2011−68547(P2011−68547A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−145574(P2010−145574)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)