ジグソーパズルのピース、及びそれを配列するトレイ
【課題】ピースを一定以下のサイズに保ち、ピースを回転させても他のピースと噛合可能なジグソーパズルを提供すると共に、そのようなジグソーパズルにおいて組み立ての遊技性及び組み立て時の噛合性を高めることを目的とする。
【解決手段】四角形の四辺に備えた少なくとも1組の凸部10及び凹部11からなるインターロック部によって他のピース1と噛合可能なジクソーパズルのピース1であって、その四角形の中心12に対して、各辺の形状を点対称に形成し、ピースの向きに関わらず他のピースと噛合可能とし、各ピースのわずかな傾斜により、抜き型の曲率を最大限にする。そして、ピースの表面にピースの向きを識別可能な近距離可視性表記20〜22を付与することで、従来のジグソーパズルの組み立てと異なる遊技方法を提供する。
【解決手段】四角形の四辺に備えた少なくとも1組の凸部10及び凹部11からなるインターロック部によって他のピース1と噛合可能なジクソーパズルのピース1であって、その四角形の中心12に対して、各辺の形状を点対称に形成し、ピースの向きに関わらず他のピースと噛合可能とし、各ピースのわずかな傾斜により、抜き型の曲率を最大限にする。そして、ピースの表面にピースの向きを識別可能な近距離可視性表記20〜22を付与することで、従来のジグソーパズルの組み立てと異なる遊技方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジグソーパズルのピースと、それを配列するトレイに関し、特にピースの形状及びピース上の表示に特徴を有する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
ジグソーパズルは周知のように1枚の完成画像をパズルの形状に分割して切断し、各ピースの外縁の凹凸の形状や各ピースに描かれた画像の一部を頼りにして組み合わせていくゲームである。多くのジグソーパズルは、厚紙の表面に完成画像を印刷して様々なパターンでカットして製造されている。
一般的には図10に示すように2回に分け、(b)1回目に横方向に型を抜き、(b)2回目に縦方向に型を抜き、(c)縦横にブロック化されたカットパターンのピースを製造している。
【0003】
このようにしてカットされたジグソーパズルは、各ピースの形が似ていながら微妙な違いがあり、遊技者はわずかな差を見つけ出す楽しみがある。推理の要素が多く、くり返し遊んでもピースの形で場所がわかることが少ないので、ほとんどのジグソーパズルは、この方式で作成されている。
【0004】
また、図11に示すように、ランダムなパターンを1回で型抜きする方法もある。このようなパターンのジグソーパズルは、ピースの形がさまざまで、隣にくるピースの形が予測できないという難しさと、意外性がある。本件出願人は、この自由な形が作れるという特徴を生かして、各ピースを犬や猫など、特殊な形にすることにより、組む時の楽しさを増すシルエットピースのジグソーパズルも製造している。
【0005】
従来提供されてきたジグソーパズルでは、例えば1000ピースでも同じ形のピースがひとつもないように、ピースデザイナーが工夫をこらしてピースのラインを作っている。カットパターンの出来によってジグソーパズルの遊技性が大きく左右される。
このようにジグソーパズルの楽しみは、ピースの形と表面の画像から完成画像上の位置を想像して並べていく点にある。
【0006】
一方、床に敷くためのパズルマットと呼ばれる製品がある。これはEVA(エチレン・ビニル・アセテート)素材の厚みのあるマットで、例えば1辺30cm程度の略正方形のピースを敷き詰めて使用する。各ピースは周縁に設けた多数の凹凸を他のピースの凹凸と噛合させて擦れが生じないようにする。
パズルマットでは、図柄がピースごとに描かれており、組み合わせて1つの完成画像を作成するものではないので、対称形の凹凸形状によりどの方向でもピースが組み合うようになっていることが多い。パズルマットは実用性から任意の方向に組み合わせることができるようにしているので、ジグソーパズルのように完成画像に至るために向きを考慮する必要がない。
【0007】
同様の発想から提案されている特許文献1には、ジグソーパズルにおいて縦方向にも横方向にも連結できる組み合わせピースが開示されている。該開示によると、ピース本体の各辺の隅部寄りに凸部と凹部とがそれぞれ設けられる。ひとつのピース本体のいずれの辺に対しても、他のピース本体の任意の辺を突き合わせた状態で、両ピース本体の凸部と凹部とが嵌合できる。
本文献の発明の目的は、ピース上に描かれた道路の一部分を子供が向きを変えながら自由に組み合わせて遊ぶことができる点にあり、既定の完成画像に向けてピースを並べる本来的なジグソーパズルではない。そのため、各ピース上の画像を見れば並べるべき向きがわかるものでなければならない。
【0008】
また、特許文献2には、縦ピースおよび横ピースの裏面に、ピースの配置、嵌め合わせ方向に応じたピース番号を形成する技術が提案されている。これはピースを特定する手間を軽減するために、A−1、B−2などの形式で番号を付与する技術である。遊技者は番号通りに配列していけば、形や模様を考慮することなくジグソーパズルを完成することができるが、パズルの遊技性を高めることには寄与しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許公開2001−113036号
【特許文献2】特許公開1997−299610号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上に述べたように、ジグソーパズルの遊技性は、各ピースの形や模様から既定の完成画像上の位置を想像できる点にある。形がそれぞれ変えてあるため各ピースの組み合わせ方法を変えることはできない。一方、特許文献1のようにピースの向きを変えても組み合わせることができるパズルの場合には、既定の完成画像は存在せず、ただ自由に組めるだけでジグソーパズルの遊技性は有しない。
【0011】
さらに、向きを自在に組み合わせられる従来のパズルは、図12のように1辺が30cm以上のものであったり、3cm以下の小さなものであっても、図13のように一辺に凸あるいは凹がひとつの構成であり、2方向のみに回転するものであった。ハガネを折り曲げて作製するジグソーパズルの抜き型において、一定の距離の中に設定できる凹凸の数は物理的限界があり、さらにそれらを、向きを変えても精密に組み合わせることができる同一形状にすることは、技術的に困難であり、また特に必要性もないものであった。
しかし、本件でとりあげるジグソーパズルのように、個々のピースには単色のグラデーションパターンのみが印刷されており、全体を組み上げたときにひとつの画像が見えてくるというようなものの場合、完成画像を鑑賞するためには一定の距離を置いて見る必要があり、壁に掛けて室内で楽しむためには、ピースの1辺のサイズを1〜2cm程度にすることが要求される。
【0012】
そして、ピースの配置を変えても凹凸が噛合するためには、すべてのピースが合同形でなければならず、さらに各ピースが4方向に回転するためには一辺に図14(a)のように一組以上の凹凸を付ける必要がある。その場合、この図のようにインターロックのサイズが比較的大きいと、中央部分の画像情報が損なわれることになる。
結果、要求されるのは図14(b)のような、周辺部にのみインターロックが配置された形である。このように、本件ジグソーパズルにおいては、ピースのサイズが1〜2cmであること、一辺に凹凸を一組以上配置すること、すべてのピースが合同形、かつピースの中心に対して点対称、中央部をできるだけ広く残すというすべての要求を満たすには、相当に高い加工精度が要求される。
【0013】
例えば、ハガネを溶かして刃をシャーピングさせた腐食刃であるピナクル型であれば、高い精度での打ち抜きが可能であるが、これはシールなどの打ち抜きに使われるものであり、1mm程度までの厚みしか抜けない。通常ジグソーパズルの厚みは、1.8mm前後であり、1mmの厚みでは噛合性が悪く、快適な遊戯性が確保できない。
ピースをプラスチックにすれば、金型成型による加工が可能であるが、紙のジグソーパズルに比べ、コストがかかり、印刷の自由度が少なく、またジグソーパズルの愛好者が求める紙の感触という点においても優位性に欠けるものである。
本件のように厚紙を打ち抜くための抜き型を作る場合、全長が20mにもなるハガネを順次折り曲げて作るため、ピースサイズが小さいほど、精密に折り曲げることの難易度が増すといえる。
【0014】
本発明は上記従来技術に鑑みて創出されたものであり、ピースサイズが1〜2cmでありながら、各ピースを交換したり、ピースを回転させても、他のピースと噛合可能な、紙を打ち抜いて作るジグソーパズルを提供すると共に、そのようなジグソーパズルにおいて組み立ての遊技性及び組み立て時の噛合性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため本発明は、次のようなジグソーパズルのピースを提案する。
すなわち、四角形の四辺に備えた少なくとも1組の凸部及び凹部からなるインターロック部によって他のピースと噛合可能なジクソーパズルのピースであって、四角形の中心に対して、各辺の形状を点対称に形成し、ピースの上下左右の4方向において他のピースと噛合可能にする。そして、ピースにおける各辺の形状が、正方形の辺をなす仮想基準線に対し、その凸部に隣接する凸部隣接辺部を四角形の内方に偏位すると共に、その凹部に隣接する凹部隣接辺部を四角形の外方に偏位させる。
さらに、該各偏位に対応する距離だけ該凸部及び凹部を該仮想基準線上で移動して他のピースとの噛合時に隣り合うピースの辺に段差が生じないようにし、かつ凸部の膨大部の最大幅が凹部の括れ部の最小幅よりも大きいことによって、噛合した凸部と凹部との離脱を防止する。
本構成によれば、隣接辺部をずらすことで凸部及び凹部と辺との接続部における曲率を大きくすることができるので、噛合に必要なインターロック部の括れを容易に製造することができ、特に1辺が2cm以下の小型のピースにおいて組み立て時の噛合性の向上に寄与する。
【0016】
また、ピースの表面に、パズルの完成画像情報とは別に、ピースを特定でき、かつその向きを特定できる近距離可視性(遠距離不可視性)の表記を付与することで組み立て時の遊技性を高めることを特徴とする。
上記の近距離可視性表記は、2種類以上の反射率又は光沢又は表面粗さの差異によって表示される構成であり、例えばニスなどで印刷することにより、簡便に実施することができる。
【0017】
本発明では、上記記載のピースを複数配列するためのトレイを提供することもできる。
本トレイでは、外縁をジグソーパズルの完成状態のサイズに一致させ、四辺にピースの脱落防止のための枠体を用意し、各ピースの縦位置及び横位置を表示する行列表示を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上記構成を備えることにより次のような効果を奏する。
すなわち、各辺を点対称とすることで、どの向きでも他のピースと噛合させることができるジグソーパズルを提供することができる。そして、近距離可視性表記により、各方向で噛合可能なピースであっても向きが付与されるので、従来のピース外形から向きを合わせる作業に対応する作業を作出することができ、ジグソーパズルとしての遊技性を高めることができる。
【0019】
同時に、従来小型のピースで困難であった逆テーパを形成する極小の凹凸曲線であっても、凹凸に隣接する辺部に偏位を与えることで凹凸の曲率を大きくしてインターロックをかけることができる。これにより、組み立て時にピースの脱落がなく、快適に遊技を楽しむことができる。
また、曲率を大きくすることができるので、凹凸部の加工精度を保つことができ、場所や向きを変えても、正確に噛合するピースを提供することができる。
【0020】
そして、近距離可視性の表記により、ピースの絵柄からは区別しにくいものでもピースを特定でき、各方向で噛合可能な形状であっても向きが判別できるので、従来のジグソーパズルを楽しむときのように、ピース表面に印刷された画像から全体を組み上げていく作業に対応する作業を作出することができ、ジグソーパズルとしての遊技性を高めることができる。
【0021】
近距離可視性表記を2種類以上の反射率又は光沢又は表面粗さの差異によって表示する構成においては、これらの差異は距離を置いて見た場合、ほとんど目立たず、パズルの完成画像の表現に影響を及ぼさない。一方、組み立て時にピースを手に取って見ると、光の反射の違いからピースを特定したり、ピースの方向をはっきりと視認することができ、パズルを組み立てることができる。
【0022】
本発明のトレイによれば、各ピースを配置すべき場所をトレイ上で確認することができるので、従来のジグソーパズルのようにピースを見て直接正しい位置にピースを配置することができるようになる。すなわち、従来、幼児用のパズルでは、トレイ上にピースの外形を示す表示があり、外形を比較することでも組み立てられるようになっていたものもあったが、本発明のピースは、外形形状が合同形であるため、そのような配置ができなかった。この点、本発明のトレイでは、行列表示を参考にしてピースを配置できるので、従来と同様に分かった場所から順にピースを配列することができ、遊技性の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るジグソーパズルのピース表面の模様及び近距離可視性表記を示す図である。
【図2】本発明に係る近距離可視性表記によるピースの配列表の一例である。
【図3】本実施例におけるピース画像の一例と、組み立て例である。
【図4】本発明の課題を説明する図である。
【図5】本発明のピースの打ち抜き方法を説明する図である。
【図6】本発明に係るピースの外形形状を示す説明図である。
【図7】本発明に係るピースを配列した状態を示す図である。
【図8】近距離可視性表記の実施例を示す図である。
【図9】本発明に係るトレイを説明する平面図である。
【図10】従来のピースにおけるカットパターンの説明図である。
【図11】従来のピースにおけるカットパターンの説明図である。
【図12】従来のパズルの一例を説明する図である。
【図13】従来のパズルの一例を説明する図である。
【図14】パズルの凹凸の大きさを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。
本発明に係るジグソーパズルのピース(1)を図1に示す。図1(a)はピースの表面の形状であり、図示のようにグラデーションを施した模様が印刷されている。図1(b)は表面に印刷された近距離可視性表記の説明図である。近距離可視性表記については後述する。
【0025】
本発明の第1の特徴はこのジグソーパズルの外形形状にある。すなわち、四角形の各辺上に1つの凸部(10)と、その凸部に連続する1つの凹部(11)が形成される。凸部(10)は凹部(11)と噛合可能に形成され、かつピース(1)の中心点(12)に対して各辺の形状が点対称に形成されていることにより、本発明のピースは縦横に連結することができる。ピースの向きは4方向どの向きでも噛合する。
【0026】
図3は、本実施例における表面のグラデーションのパターンの一例と、図2の配列表に従ってこのようなピースを配列した完成画像を示す説明図である。
図3(a)は様々なグラデーションを表面に印刷したシートを表す。厚紙上に各ピースを型抜きしてあり、例えば500ピースほどを用意しておく。そのうちから必要なピースだけを使うことにより、異なる絵柄を作ることができる。完成図を元に作ることは至難なので、あらかじめ用意された配列図を元に近距離可視性表記のマークと図2を参考に配列する組むことになる。
【0027】
図3(b)は300ピースでベートーベンの肖像画を表したものである。絵柄によってピースを使いわけることにより、さまざまな絵柄を組み上げることができるが、完成画像は一種のモザイク模様となるため、絵柄を認識するには、ある程度の距離を置いて見る必要がある。完成画像が大きいほど、遠くから見る必要があるため、一般の家庭で鑑賞できるようにするためには、ピースのサイズを一定以下、例えば2cm以下にすることが望ましい。そこで本発明に係るピースの外形形状について説述する。
【0028】
まず、従来技術による問題点を図4を用いて説明する。1辺が1〜2cm程度のピース(100)において、図10の(a)(b)のような縦横2回に分けて抜くと、相対的に抜き位置がずれる可能性があり、各ピースを点対称の正方形にすることが至難である。また(c)のように1回抜きで抜く場合も、1つ1つのピースが完全に同一形状になるようにハガネの抜き刃を曲げていくことが至難である。本件では、図5のように各ピースを分離して抜くことを想定しているが、以下の説明においては、各ピースを連結させた状態で例示するものとする。
【0029】
さて、図4(a)に示すように凸部(111)と凹部(112)とを嵌合させる場合、凸部の高さ(113)(部分拡大図(110)参照)が足りず、抜き刃を曲線部(114)で十分に内側に曲げることができない問題がある。同様に凹部(112)ではその深さが足りず、抜き刃を内側に折り込むことができない。
【0030】
このような凸部(111)及び凹部(112)は括れ部分(115)が無いため、嵌合したピースでも斜めに引くと離脱してしまい、インターロックが係らない状態である。ジグソーパズルの組み立て過程において、インターロックが係らないピースに振動を与えると容易にバラバラに分散してしまい、快適な遊技性を著しく損なう恐れがある。そこで、一般的なジグソーパズルでは凸部の頭頂側や凹部の底辺側に幅が大きくなる膨大部を形成すると共に、中途位置では幅が小さくなる括れ部を形成し、これらの組み合わせからなるインターロック部が設けられているのが通常である。
【0031】
前述したように従来のカットパターンでは各辺を対称形にせず、抜き刃の曲げが可能な曲率でカットパターンを設計すれば良かったので、本発明のような問題が生じることはなかった。たとえば、図10に示すように1辺には1つの凹部又は凸部でも良かったし、図11のように対称性を全く考慮しない自由なパターンが可能であった。
ところが、本発明のように4方向に回転可能な点対称形のピースでインターロックをかけるには、1辺に1組以上の凹凸が必要となることから、本発明の課題が生じている。
さらに、本発明のピースの場合、ピースの向きや位置が毎回異なることから、いかなるピースの組み合わせでも良好に噛合する必要があり、凹部及び凸部の形状を高精度に保たなければならない。従来の方法は型抜き時に隣接するピース以外と噛合することは想定しておらず、組み合わせを変えるとうまく噛合しない問題がある。
【0032】
これらの問題の解決の1つの方法は凸部(111)の高さ及び凹部(112)の深さを長くすることである。しかし、本件のようにグラデーション表現で画像を作る場合、凸部と凹部を大きくすることは、図14(a)のように中央方形部を小さくすることにつながり、結果として完成画像の再現性に問題が生じる。再現性の趣旨からいえば全ピースを凹凸のない正方形だけにすることが望ましいが、その場合、前述のように快適な遊技性を損ねてしまう。中央に最大の正方形の面積を保持しつつインターロック部を用意するというのが、本発明の趣旨である。
【0033】
そこで、凸部(111)及び凹部(112)の大きさの変化を最小限に保ち、辺からの高さを高くする方法を提案する。
まず、図4(b)のようにピース(120)の凸部(121)に隣接する辺部(131)(部分拡大図(130)参照)は、点線(135)の位置から四角形の内方(図中の上方)に偏位した位置とする。そうすると、凸部(121)の高さ(132)が長くなり、曲線部(133)の曲率を大きくすることができる。凹部(122)についても同様に形成する。
この方法によると、凸部(121)及び凹部(122)に括れた部分が形成でき、インターロックをかけられる。
【0034】
しかし、凸部に隣接した辺部(131)を内方に偏位する一方、凹部(122)に隣接した辺部(134)は四角形の外方に偏位することになるため、両者の接する部分に段差が生じる。
部分拡大図(140)に明らかなように、左右方向に隣接する辺部(141)と(142)の間、上下方向に隣接する辺部(143)と(144)の間に段差があり、その結果4ピースの間に隙間(145)が生じてしまう。
さらに、このように配列すると、明らかに段差を生じながら右に向かってピースが下がっていくので、全体を配列した場合に平行四辺形の形状となってしまい外観を損なう。
【0035】
そこで、本発明では図6に示すように、ピース(200)において正方形の仮想基準線(240)を基準として各辺に1組の凸部及び凹部を形成し、凸部に隣接する凸部隣接辺部を仮想基準線(240)よりも四角形の内方に、凹部に隣接する凹部隣接辺部を仮想基準線(240)よりも四角形の外方に、それぞれ偏位する。
図において説明すると、凸部(201)(211)(221)(231)に隣接する凸部隣接辺部(203)(213)(223)(233)を四角形内方に偏位し、凹部(202)(212)(222)(232)に隣接する凹部隣接辺部(204)(214)(224)(234)を四角形外方に偏位させる。
【0036】
さらに、上記の問題を解決するため、凸部及び凹部を仮想基準線(240)上で平行に移動する。すなわち、図中の左辺における凸部(211)及び凹部(212)を例にとって説明すると、上辺の凸部隣接辺部(203)と下辺の凹部隣接辺部(224)が仮想基準線(240)から下方に偏位した距離だけ、凸部(211)と凹部(212)を下方(矢印の方向)に移動する。同様に全ての凸部及び凹部を移動する。
このように移動した結果、全ての凸部隣接辺部の長さと凹部隣接辺部の長さが等しくなるので、ピース同士を噛合した時に、段差を生じなくなる。
【0037】
そして、凸部(201)(その他の凸部も同様)の膨大部の最大幅(201a)が凹部(202)(その他の凹部も同様)の括れ部における最小幅(202a)よりも大きいことによって、噛合した凸部と凹部との離脱を防止し、確実なインターロックを実現している。
【0038】
本発明の外形形状にすると、ピース内で辺に段差があるため、連続して配列すると、個々のピースが図3(b)や図7のようにわずかに傾斜した状態で配列することになる。しかし、図4(b)のようにその段差が累積されることなく、各ピースのわずかな傾斜の中で吸収されるため、通常の水平垂直にピースを配置したのと同じ外観になる。
図7でも分かるように、段差が生じているのが凸部及び凹部の部位である上、ピースの傾きもわずかなため、見た目には四角形が整列しているように見え、外観を損なうことはない。
以上の構成により、小型のピースにおいてもインターロック部を良好に形成することが可能となり、かつピース中心部の画像情報を保つことができる。ジグソーパズルの組み立て時の噛合性の向上と製造コストの低減に寄与する。
【0039】
また、このような精緻な抜き型を2cm以下のサイズで作る場合、図10(c)あるいは図11のようにピース同士を隣接させた形状ではその精度を生み出すことができなかったり、非常に精密な加工を必要とした。そのため本発明の実施例では、図5のようにピース同士を切り離して配置することを提案する。また図10(c)あるいは図11のようにピースを隣接して配置し、抜き型で抜いた場合、各ピースは4方向から内側に向かって圧縮がかけられ、わずかに縮みが生じ、組むときの噛合性が落ちることになる。本件のようにピース同士を切り離して配置した場合、本来の形状よりも弱プラス気味の設計を行うことができ、圧縮が生じたとしても、噛合性を保つことができる。
特に、実施例のようなグラデーションや、ピース毎に異なるベタ色の印刷を行う場合には、図5のように切り離して配置することにより、各ピースに対して隅々まで適切な印刷を行うことができる。
【0040】
次に本発明に関わるピース表面の表示方法について説述する。
本発明では、通常のジグソーパズルのように、細分化されていても認識できる具体的な画像が個々のピースに表示されておらず、かつピースが上下左右どの方向にも配置可能なため、遊技者に通常のジグソーパズルのように完成画像情報を元に各ピースを比較して配置する楽しみを与えることができない問題があった。すなわち、各ピースの表面は微妙に異なるグラデーションの表示のみであり、類似のピースが多いため、正解となるピースの特定をすることが困難であり、画像からも方向性を判断することが困難であり、必ずしも遊技性が高くない。どちらかと言えば、完成に向けた単調な試行錯誤の繰り返し作業になり、飽きを生じさせる原因ともなりかねない。
そこで、本発明では、ピース表面の画像とは別に、ピースを特定し、ピースの方向を遊技者に認知させる表記を提案する。
【0041】
通常、その表記は、特許文献2のように、裏面に番号を付与して行われることになる。しかし、その場合、ピースを表向きに組もうとすると、ピースの方向を確認することがわずらわしい作業となる。ピースを裏向きのまま組んでいけば、その問題は解決するが、絵柄が少しずつ組み上がっていくというジグソーパズル本来の楽しさが失われ、また完成後にパズル全体を表返すときにピースがくずれてしまうという問題が生じる。番号を表面に印刷すればその問題は解決するが、完成画像を鑑賞するときに、美観を損ねることになる。かりに目立たない程度に小さく印刷すると、組み立てるときに、ピースを判別することがわずらわしい作業になってしまう。
【0042】
そこで本発明では、表面の画像とは別に、2種類以上の反射率又は光沢又は表面粗さの差異によって近距離可視性の表記を施すようにする。前記のグラデーション表記は、通常のジグソーパズルでいえば、風景や人物などの完成画像情報に該当するが、本発明では、完成画像情報とは別に近距離可視性図形を付与することにより、図2のような解答図と見比べながらピース選択及び方向を判断するので、通常のジグソーパズルと同様の感覚で、遊技者がピースを組み続けることができる。かつ完成状態においては、ピース識別及び方向性識別のための図形は、一定の距離からは認識できないようにして、該完成画像を楽しめるようにしたものである。
【0043】
本実施例では、UVニスによる印刷によってマーク部分に光沢が与えられ、グラデーションの画像印刷とは異なる拡散反射率となるため、近距離からは明瞭にマークを視認することができる。
遊技者は、画像の全体的な印象と共に、近距離可視性表記を参考にしてパズルを組み立てることができる。また裏面にも通常の印刷手法で同じ表記を印刷しておくことにより、より容易に該当ピースを探すことができる。その場合でも、ピースの方向は表面の近距離可視性表記によって判断することになる。
【0044】
図1(a)の点線で示すように本実施例のピースには模様と共に近距離可視性表記が印刷されている。図1の(b)は近距離可視性表記だけを分かりやすく示した説明図である。近距離可視性表記として、例えば携帯電話の図柄をピース中心部に大き目に配置する。この携帯電話ではアンテナ(20)とモニタ画面(21)、ダイヤルキー(22)によって、携帯電話の上下方向が明瞭に判別でき、携帯電話の向きによってピース(1)の向きが分かるようになっている。
【0045】
図8には本発明によるピースの実物写真を示す。図8(a)はピースを正面から撮影した写真、図8(b)は下方から撮影した写真である。本ピースの表面はグラデーション模様を印刷したあと、全体にマットニスを印刷し、さらに携帯電話のマークをUVニスを用いて印刷しているが、
光がニス面に当たるとき、垂直に近いほど反射の強度は小さくなり、ニスを通過した紙表面の印刷を視認することになり、(a)のように、正面から見た場合は、マークの存在は極めてわかりにくい。すなわち完成したパズルを見るときには、マークは視認しにくくなる。
【0046】
ところが光が斜めから当たると、平滑性の強いUVニスが塗られた面はより光の反射の法則にもとづいて光を反射させるのに対し、マットニス、あるいは紙表面に当たった光は散乱光として認知されるため、その違いにより、ピースを斜めから見たときは、 (b)のようにマークが視認でき、ピースを組む段階においては、容易に手がかりとして利用できるようになる。
【0047】
さらに、完成後に距離を置いて見た場合、マーク部分は無色であるのに対し、本来のピース表面の印刷は単色あるいはカラーの印刷であるため、マーク部分は視認しにくく、結果として、本来のジグソーパズル画像だけが見えてくることになる。
またジグソーパズルは完成後、一般にポリビニルアルコール樹脂の糊を表面から塗布して各ピースを接着するため、糊の被膜によって、さらに視認しにくくなる。本発明の近距離可視性表記は、このように近距離からピースを見たときのみ視認できる表記である。
【0048】
図2に示すように、本実施例で用いるマークは単色の模式化されたデザインであり、動物、植物、道具、食物、工業製品、乗り物などの他、記号や文字、文字列などが含まれている。これらのデザインは、方向の判別が容易であると共に、他のピースとの識別性が高くなければならない。さらに、遊技者が見て楽しめるように一定の意味を付与されたものが望ましい。例えば、マークであれば適度に模式化されてデザイン自体を楽しめること、記号や文字であれば、GO!やOH!のように小気味の良い単語等を用いて遊技性を高めることが好ましい。遊技者は、よりやさしく正しいピースを見つけられるよう、あらかじめ類似のマークごとにピースを仕分けするような、通常のジグソーパズルと同じ工夫も楽しめるようになる。
【0049】
本発明は、このように各ピースごとにマークを独立して付与することにより、通常のジグソーパズルのように絵柄を元に組み立てていく楽しさを保ちつつ、そのマーク表記を利用して異なる配列をさせるようにすれば、任意の画像を作成できる点に特徴がある。
【0050】
なお、図2のような配列表は、コンピュータによる画像処理や、人手による試行錯誤によって予め正解画像を作成し、その配列を記録することで生成することができる。なお、本発明のピースの表面画像は、本実施例に限定されるものではなく、従来のように1枚の完成画像を1つの正解とするものでもよい。
【0051】
なお、本実施例ではUVニスを用いたが、近距離可視性表記部分の反射率、光沢、表面粗さが他の部分と異なる方法であれば、通常のニスあるいは、いかなる製造方法を用いても良い。例えば、塗料に微粉末を混合して印刷することで表記部分の光沢を落とす構成でもよい。また、近距離可視性表記部分かそれ以外の部分の表面を研磨して、表面粗さを変化させる構成でもよい。
このような特性を利用して、本発明は従来のジグソーパズルには無いピース認識と方向認識の表示方法を提案するものである。
【0052】
図9は、上述したジグソーパズルのピースを配列するためのトレイ(2)の平面図である。本トレイ(2)は平板体で構成し、表面にパズルのピースの外形形状を示すガイド線(21)が縦横に印刷される。さらにガイド線(21)に対応してA〜Oで列を示す列表示(22)と、1〜20で行を示す行表示(23)が側部全体に表示され、遊技者は例えば正解の配列表に表示された行列表示に従ってピースを配列することができる。
【0053】
本発明のピースでは、外形形状に特徴がないため、通常のジグソーパズルのように組み合うところから部分的に作成していくことができない。しかし、本トレイ(2)を用いることで、ピースをランダムに取っても、配列表から正しい位置に直接ピースを配置することが可能となり、従来のジグソーパズルと同様の感覚で遊技を楽しむことができる。
【0054】
ピースを配列する周縁部(24)は、本実施例のように紙製であれば、ピース脱落防止のための折り返し形状に加工し、組み立て時にピースが動かないように固定することができる。これは、あらかじめ周囲を枠状に加工した樹脂製、木製のトレイでもよい。
さらに、H列全体(25)と、11行(26)全体はピース形状が塗りつぶされて、中途の部位でも行と列の位置が判別しやすいように表示されている。
【0055】
本トレイ(2)は、組み立て後に上から糊を塗布してピースを接着し、乾燥後に行列表示(22)(23)を切り落とすことで、装飾時のピースの基板として用いることもできる。予め行列表示(22)(23)に切り取り線を入れて簡便に切り落とせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 本発明に係るピース
10 凸部
11 凹部
12 中心点
20 近距離可視性表記(アンテナ部分)
21 近距離可視性表記(モニタ画面部分)
22 近距離可視性表記(ダイヤルキー部分)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジグソーパズルのピースと、それを配列するトレイに関し、特にピースの形状及びピース上の表示に特徴を有する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
ジグソーパズルは周知のように1枚の完成画像をパズルの形状に分割して切断し、各ピースの外縁の凹凸の形状や各ピースに描かれた画像の一部を頼りにして組み合わせていくゲームである。多くのジグソーパズルは、厚紙の表面に完成画像を印刷して様々なパターンでカットして製造されている。
一般的には図10に示すように2回に分け、(b)1回目に横方向に型を抜き、(b)2回目に縦方向に型を抜き、(c)縦横にブロック化されたカットパターンのピースを製造している。
【0003】
このようにしてカットされたジグソーパズルは、各ピースの形が似ていながら微妙な違いがあり、遊技者はわずかな差を見つけ出す楽しみがある。推理の要素が多く、くり返し遊んでもピースの形で場所がわかることが少ないので、ほとんどのジグソーパズルは、この方式で作成されている。
【0004】
また、図11に示すように、ランダムなパターンを1回で型抜きする方法もある。このようなパターンのジグソーパズルは、ピースの形がさまざまで、隣にくるピースの形が予測できないという難しさと、意外性がある。本件出願人は、この自由な形が作れるという特徴を生かして、各ピースを犬や猫など、特殊な形にすることにより、組む時の楽しさを増すシルエットピースのジグソーパズルも製造している。
【0005】
従来提供されてきたジグソーパズルでは、例えば1000ピースでも同じ形のピースがひとつもないように、ピースデザイナーが工夫をこらしてピースのラインを作っている。カットパターンの出来によってジグソーパズルの遊技性が大きく左右される。
このようにジグソーパズルの楽しみは、ピースの形と表面の画像から完成画像上の位置を想像して並べていく点にある。
【0006】
一方、床に敷くためのパズルマットと呼ばれる製品がある。これはEVA(エチレン・ビニル・アセテート)素材の厚みのあるマットで、例えば1辺30cm程度の略正方形のピースを敷き詰めて使用する。各ピースは周縁に設けた多数の凹凸を他のピースの凹凸と噛合させて擦れが生じないようにする。
パズルマットでは、図柄がピースごとに描かれており、組み合わせて1つの完成画像を作成するものではないので、対称形の凹凸形状によりどの方向でもピースが組み合うようになっていることが多い。パズルマットは実用性から任意の方向に組み合わせることができるようにしているので、ジグソーパズルのように完成画像に至るために向きを考慮する必要がない。
【0007】
同様の発想から提案されている特許文献1には、ジグソーパズルにおいて縦方向にも横方向にも連結できる組み合わせピースが開示されている。該開示によると、ピース本体の各辺の隅部寄りに凸部と凹部とがそれぞれ設けられる。ひとつのピース本体のいずれの辺に対しても、他のピース本体の任意の辺を突き合わせた状態で、両ピース本体の凸部と凹部とが嵌合できる。
本文献の発明の目的は、ピース上に描かれた道路の一部分を子供が向きを変えながら自由に組み合わせて遊ぶことができる点にあり、既定の完成画像に向けてピースを並べる本来的なジグソーパズルではない。そのため、各ピース上の画像を見れば並べるべき向きがわかるものでなければならない。
【0008】
また、特許文献2には、縦ピースおよび横ピースの裏面に、ピースの配置、嵌め合わせ方向に応じたピース番号を形成する技術が提案されている。これはピースを特定する手間を軽減するために、A−1、B−2などの形式で番号を付与する技術である。遊技者は番号通りに配列していけば、形や模様を考慮することなくジグソーパズルを完成することができるが、パズルの遊技性を高めることには寄与しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許公開2001−113036号
【特許文献2】特許公開1997−299610号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上に述べたように、ジグソーパズルの遊技性は、各ピースの形や模様から既定の完成画像上の位置を想像できる点にある。形がそれぞれ変えてあるため各ピースの組み合わせ方法を変えることはできない。一方、特許文献1のようにピースの向きを変えても組み合わせることができるパズルの場合には、既定の完成画像は存在せず、ただ自由に組めるだけでジグソーパズルの遊技性は有しない。
【0011】
さらに、向きを自在に組み合わせられる従来のパズルは、図12のように1辺が30cm以上のものであったり、3cm以下の小さなものであっても、図13のように一辺に凸あるいは凹がひとつの構成であり、2方向のみに回転するものであった。ハガネを折り曲げて作製するジグソーパズルの抜き型において、一定の距離の中に設定できる凹凸の数は物理的限界があり、さらにそれらを、向きを変えても精密に組み合わせることができる同一形状にすることは、技術的に困難であり、また特に必要性もないものであった。
しかし、本件でとりあげるジグソーパズルのように、個々のピースには単色のグラデーションパターンのみが印刷されており、全体を組み上げたときにひとつの画像が見えてくるというようなものの場合、完成画像を鑑賞するためには一定の距離を置いて見る必要があり、壁に掛けて室内で楽しむためには、ピースの1辺のサイズを1〜2cm程度にすることが要求される。
【0012】
そして、ピースの配置を変えても凹凸が噛合するためには、すべてのピースが合同形でなければならず、さらに各ピースが4方向に回転するためには一辺に図14(a)のように一組以上の凹凸を付ける必要がある。その場合、この図のようにインターロックのサイズが比較的大きいと、中央部分の画像情報が損なわれることになる。
結果、要求されるのは図14(b)のような、周辺部にのみインターロックが配置された形である。このように、本件ジグソーパズルにおいては、ピースのサイズが1〜2cmであること、一辺に凹凸を一組以上配置すること、すべてのピースが合同形、かつピースの中心に対して点対称、中央部をできるだけ広く残すというすべての要求を満たすには、相当に高い加工精度が要求される。
【0013】
例えば、ハガネを溶かして刃をシャーピングさせた腐食刃であるピナクル型であれば、高い精度での打ち抜きが可能であるが、これはシールなどの打ち抜きに使われるものであり、1mm程度までの厚みしか抜けない。通常ジグソーパズルの厚みは、1.8mm前後であり、1mmの厚みでは噛合性が悪く、快適な遊戯性が確保できない。
ピースをプラスチックにすれば、金型成型による加工が可能であるが、紙のジグソーパズルに比べ、コストがかかり、印刷の自由度が少なく、またジグソーパズルの愛好者が求める紙の感触という点においても優位性に欠けるものである。
本件のように厚紙を打ち抜くための抜き型を作る場合、全長が20mにもなるハガネを順次折り曲げて作るため、ピースサイズが小さいほど、精密に折り曲げることの難易度が増すといえる。
【0014】
本発明は上記従来技術に鑑みて創出されたものであり、ピースサイズが1〜2cmでありながら、各ピースを交換したり、ピースを回転させても、他のピースと噛合可能な、紙を打ち抜いて作るジグソーパズルを提供すると共に、そのようなジグソーパズルにおいて組み立ての遊技性及び組み立て時の噛合性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため本発明は、次のようなジグソーパズルのピースを提案する。
すなわち、四角形の四辺に備えた少なくとも1組の凸部及び凹部からなるインターロック部によって他のピースと噛合可能なジクソーパズルのピースであって、四角形の中心に対して、各辺の形状を点対称に形成し、ピースの上下左右の4方向において他のピースと噛合可能にする。そして、ピースにおける各辺の形状が、正方形の辺をなす仮想基準線に対し、その凸部に隣接する凸部隣接辺部を四角形の内方に偏位すると共に、その凹部に隣接する凹部隣接辺部を四角形の外方に偏位させる。
さらに、該各偏位に対応する距離だけ該凸部及び凹部を該仮想基準線上で移動して他のピースとの噛合時に隣り合うピースの辺に段差が生じないようにし、かつ凸部の膨大部の最大幅が凹部の括れ部の最小幅よりも大きいことによって、噛合した凸部と凹部との離脱を防止する。
本構成によれば、隣接辺部をずらすことで凸部及び凹部と辺との接続部における曲率を大きくすることができるので、噛合に必要なインターロック部の括れを容易に製造することができ、特に1辺が2cm以下の小型のピースにおいて組み立て時の噛合性の向上に寄与する。
【0016】
また、ピースの表面に、パズルの完成画像情報とは別に、ピースを特定でき、かつその向きを特定できる近距離可視性(遠距離不可視性)の表記を付与することで組み立て時の遊技性を高めることを特徴とする。
上記の近距離可視性表記は、2種類以上の反射率又は光沢又は表面粗さの差異によって表示される構成であり、例えばニスなどで印刷することにより、簡便に実施することができる。
【0017】
本発明では、上記記載のピースを複数配列するためのトレイを提供することもできる。
本トレイでは、外縁をジグソーパズルの完成状態のサイズに一致させ、四辺にピースの脱落防止のための枠体を用意し、各ピースの縦位置及び横位置を表示する行列表示を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上記構成を備えることにより次のような効果を奏する。
すなわち、各辺を点対称とすることで、どの向きでも他のピースと噛合させることができるジグソーパズルを提供することができる。そして、近距離可視性表記により、各方向で噛合可能なピースであっても向きが付与されるので、従来のピース外形から向きを合わせる作業に対応する作業を作出することができ、ジグソーパズルとしての遊技性を高めることができる。
【0019】
同時に、従来小型のピースで困難であった逆テーパを形成する極小の凹凸曲線であっても、凹凸に隣接する辺部に偏位を与えることで凹凸の曲率を大きくしてインターロックをかけることができる。これにより、組み立て時にピースの脱落がなく、快適に遊技を楽しむことができる。
また、曲率を大きくすることができるので、凹凸部の加工精度を保つことができ、場所や向きを変えても、正確に噛合するピースを提供することができる。
【0020】
そして、近距離可視性の表記により、ピースの絵柄からは区別しにくいものでもピースを特定でき、各方向で噛合可能な形状であっても向きが判別できるので、従来のジグソーパズルを楽しむときのように、ピース表面に印刷された画像から全体を組み上げていく作業に対応する作業を作出することができ、ジグソーパズルとしての遊技性を高めることができる。
【0021】
近距離可視性表記を2種類以上の反射率又は光沢又は表面粗さの差異によって表示する構成においては、これらの差異は距離を置いて見た場合、ほとんど目立たず、パズルの完成画像の表現に影響を及ぼさない。一方、組み立て時にピースを手に取って見ると、光の反射の違いからピースを特定したり、ピースの方向をはっきりと視認することができ、パズルを組み立てることができる。
【0022】
本発明のトレイによれば、各ピースを配置すべき場所をトレイ上で確認することができるので、従来のジグソーパズルのようにピースを見て直接正しい位置にピースを配置することができるようになる。すなわち、従来、幼児用のパズルでは、トレイ上にピースの外形を示す表示があり、外形を比較することでも組み立てられるようになっていたものもあったが、本発明のピースは、外形形状が合同形であるため、そのような配置ができなかった。この点、本発明のトレイでは、行列表示を参考にしてピースを配置できるので、従来と同様に分かった場所から順にピースを配列することができ、遊技性の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るジグソーパズルのピース表面の模様及び近距離可視性表記を示す図である。
【図2】本発明に係る近距離可視性表記によるピースの配列表の一例である。
【図3】本実施例におけるピース画像の一例と、組み立て例である。
【図4】本発明の課題を説明する図である。
【図5】本発明のピースの打ち抜き方法を説明する図である。
【図6】本発明に係るピースの外形形状を示す説明図である。
【図7】本発明に係るピースを配列した状態を示す図である。
【図8】近距離可視性表記の実施例を示す図である。
【図9】本発明に係るトレイを説明する平面図である。
【図10】従来のピースにおけるカットパターンの説明図である。
【図11】従来のピースにおけるカットパターンの説明図である。
【図12】従来のパズルの一例を説明する図である。
【図13】従来のパズルの一例を説明する図である。
【図14】パズルの凹凸の大きさを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。
本発明に係るジグソーパズルのピース(1)を図1に示す。図1(a)はピースの表面の形状であり、図示のようにグラデーションを施した模様が印刷されている。図1(b)は表面に印刷された近距離可視性表記の説明図である。近距離可視性表記については後述する。
【0025】
本発明の第1の特徴はこのジグソーパズルの外形形状にある。すなわち、四角形の各辺上に1つの凸部(10)と、その凸部に連続する1つの凹部(11)が形成される。凸部(10)は凹部(11)と噛合可能に形成され、かつピース(1)の中心点(12)に対して各辺の形状が点対称に形成されていることにより、本発明のピースは縦横に連結することができる。ピースの向きは4方向どの向きでも噛合する。
【0026】
図3は、本実施例における表面のグラデーションのパターンの一例と、図2の配列表に従ってこのようなピースを配列した完成画像を示す説明図である。
図3(a)は様々なグラデーションを表面に印刷したシートを表す。厚紙上に各ピースを型抜きしてあり、例えば500ピースほどを用意しておく。そのうちから必要なピースだけを使うことにより、異なる絵柄を作ることができる。完成図を元に作ることは至難なので、あらかじめ用意された配列図を元に近距離可視性表記のマークと図2を参考に配列する組むことになる。
【0027】
図3(b)は300ピースでベートーベンの肖像画を表したものである。絵柄によってピースを使いわけることにより、さまざまな絵柄を組み上げることができるが、完成画像は一種のモザイク模様となるため、絵柄を認識するには、ある程度の距離を置いて見る必要がある。完成画像が大きいほど、遠くから見る必要があるため、一般の家庭で鑑賞できるようにするためには、ピースのサイズを一定以下、例えば2cm以下にすることが望ましい。そこで本発明に係るピースの外形形状について説述する。
【0028】
まず、従来技術による問題点を図4を用いて説明する。1辺が1〜2cm程度のピース(100)において、図10の(a)(b)のような縦横2回に分けて抜くと、相対的に抜き位置がずれる可能性があり、各ピースを点対称の正方形にすることが至難である。また(c)のように1回抜きで抜く場合も、1つ1つのピースが完全に同一形状になるようにハガネの抜き刃を曲げていくことが至難である。本件では、図5のように各ピースを分離して抜くことを想定しているが、以下の説明においては、各ピースを連結させた状態で例示するものとする。
【0029】
さて、図4(a)に示すように凸部(111)と凹部(112)とを嵌合させる場合、凸部の高さ(113)(部分拡大図(110)参照)が足りず、抜き刃を曲線部(114)で十分に内側に曲げることができない問題がある。同様に凹部(112)ではその深さが足りず、抜き刃を内側に折り込むことができない。
【0030】
このような凸部(111)及び凹部(112)は括れ部分(115)が無いため、嵌合したピースでも斜めに引くと離脱してしまい、インターロックが係らない状態である。ジグソーパズルの組み立て過程において、インターロックが係らないピースに振動を与えると容易にバラバラに分散してしまい、快適な遊技性を著しく損なう恐れがある。そこで、一般的なジグソーパズルでは凸部の頭頂側や凹部の底辺側に幅が大きくなる膨大部を形成すると共に、中途位置では幅が小さくなる括れ部を形成し、これらの組み合わせからなるインターロック部が設けられているのが通常である。
【0031】
前述したように従来のカットパターンでは各辺を対称形にせず、抜き刃の曲げが可能な曲率でカットパターンを設計すれば良かったので、本発明のような問題が生じることはなかった。たとえば、図10に示すように1辺には1つの凹部又は凸部でも良かったし、図11のように対称性を全く考慮しない自由なパターンが可能であった。
ところが、本発明のように4方向に回転可能な点対称形のピースでインターロックをかけるには、1辺に1組以上の凹凸が必要となることから、本発明の課題が生じている。
さらに、本発明のピースの場合、ピースの向きや位置が毎回異なることから、いかなるピースの組み合わせでも良好に噛合する必要があり、凹部及び凸部の形状を高精度に保たなければならない。従来の方法は型抜き時に隣接するピース以外と噛合することは想定しておらず、組み合わせを変えるとうまく噛合しない問題がある。
【0032】
これらの問題の解決の1つの方法は凸部(111)の高さ及び凹部(112)の深さを長くすることである。しかし、本件のようにグラデーション表現で画像を作る場合、凸部と凹部を大きくすることは、図14(a)のように中央方形部を小さくすることにつながり、結果として完成画像の再現性に問題が生じる。再現性の趣旨からいえば全ピースを凹凸のない正方形だけにすることが望ましいが、その場合、前述のように快適な遊技性を損ねてしまう。中央に最大の正方形の面積を保持しつつインターロック部を用意するというのが、本発明の趣旨である。
【0033】
そこで、凸部(111)及び凹部(112)の大きさの変化を最小限に保ち、辺からの高さを高くする方法を提案する。
まず、図4(b)のようにピース(120)の凸部(121)に隣接する辺部(131)(部分拡大図(130)参照)は、点線(135)の位置から四角形の内方(図中の上方)に偏位した位置とする。そうすると、凸部(121)の高さ(132)が長くなり、曲線部(133)の曲率を大きくすることができる。凹部(122)についても同様に形成する。
この方法によると、凸部(121)及び凹部(122)に括れた部分が形成でき、インターロックをかけられる。
【0034】
しかし、凸部に隣接した辺部(131)を内方に偏位する一方、凹部(122)に隣接した辺部(134)は四角形の外方に偏位することになるため、両者の接する部分に段差が生じる。
部分拡大図(140)に明らかなように、左右方向に隣接する辺部(141)と(142)の間、上下方向に隣接する辺部(143)と(144)の間に段差があり、その結果4ピースの間に隙間(145)が生じてしまう。
さらに、このように配列すると、明らかに段差を生じながら右に向かってピースが下がっていくので、全体を配列した場合に平行四辺形の形状となってしまい外観を損なう。
【0035】
そこで、本発明では図6に示すように、ピース(200)において正方形の仮想基準線(240)を基準として各辺に1組の凸部及び凹部を形成し、凸部に隣接する凸部隣接辺部を仮想基準線(240)よりも四角形の内方に、凹部に隣接する凹部隣接辺部を仮想基準線(240)よりも四角形の外方に、それぞれ偏位する。
図において説明すると、凸部(201)(211)(221)(231)に隣接する凸部隣接辺部(203)(213)(223)(233)を四角形内方に偏位し、凹部(202)(212)(222)(232)に隣接する凹部隣接辺部(204)(214)(224)(234)を四角形外方に偏位させる。
【0036】
さらに、上記の問題を解決するため、凸部及び凹部を仮想基準線(240)上で平行に移動する。すなわち、図中の左辺における凸部(211)及び凹部(212)を例にとって説明すると、上辺の凸部隣接辺部(203)と下辺の凹部隣接辺部(224)が仮想基準線(240)から下方に偏位した距離だけ、凸部(211)と凹部(212)を下方(矢印の方向)に移動する。同様に全ての凸部及び凹部を移動する。
このように移動した結果、全ての凸部隣接辺部の長さと凹部隣接辺部の長さが等しくなるので、ピース同士を噛合した時に、段差を生じなくなる。
【0037】
そして、凸部(201)(その他の凸部も同様)の膨大部の最大幅(201a)が凹部(202)(その他の凹部も同様)の括れ部における最小幅(202a)よりも大きいことによって、噛合した凸部と凹部との離脱を防止し、確実なインターロックを実現している。
【0038】
本発明の外形形状にすると、ピース内で辺に段差があるため、連続して配列すると、個々のピースが図3(b)や図7のようにわずかに傾斜した状態で配列することになる。しかし、図4(b)のようにその段差が累積されることなく、各ピースのわずかな傾斜の中で吸収されるため、通常の水平垂直にピースを配置したのと同じ外観になる。
図7でも分かるように、段差が生じているのが凸部及び凹部の部位である上、ピースの傾きもわずかなため、見た目には四角形が整列しているように見え、外観を損なうことはない。
以上の構成により、小型のピースにおいてもインターロック部を良好に形成することが可能となり、かつピース中心部の画像情報を保つことができる。ジグソーパズルの組み立て時の噛合性の向上と製造コストの低減に寄与する。
【0039】
また、このような精緻な抜き型を2cm以下のサイズで作る場合、図10(c)あるいは図11のようにピース同士を隣接させた形状ではその精度を生み出すことができなかったり、非常に精密な加工を必要とした。そのため本発明の実施例では、図5のようにピース同士を切り離して配置することを提案する。また図10(c)あるいは図11のようにピースを隣接して配置し、抜き型で抜いた場合、各ピースは4方向から内側に向かって圧縮がかけられ、わずかに縮みが生じ、組むときの噛合性が落ちることになる。本件のようにピース同士を切り離して配置した場合、本来の形状よりも弱プラス気味の設計を行うことができ、圧縮が生じたとしても、噛合性を保つことができる。
特に、実施例のようなグラデーションや、ピース毎に異なるベタ色の印刷を行う場合には、図5のように切り離して配置することにより、各ピースに対して隅々まで適切な印刷を行うことができる。
【0040】
次に本発明に関わるピース表面の表示方法について説述する。
本発明では、通常のジグソーパズルのように、細分化されていても認識できる具体的な画像が個々のピースに表示されておらず、かつピースが上下左右どの方向にも配置可能なため、遊技者に通常のジグソーパズルのように完成画像情報を元に各ピースを比較して配置する楽しみを与えることができない問題があった。すなわち、各ピースの表面は微妙に異なるグラデーションの表示のみであり、類似のピースが多いため、正解となるピースの特定をすることが困難であり、画像からも方向性を判断することが困難であり、必ずしも遊技性が高くない。どちらかと言えば、完成に向けた単調な試行錯誤の繰り返し作業になり、飽きを生じさせる原因ともなりかねない。
そこで、本発明では、ピース表面の画像とは別に、ピースを特定し、ピースの方向を遊技者に認知させる表記を提案する。
【0041】
通常、その表記は、特許文献2のように、裏面に番号を付与して行われることになる。しかし、その場合、ピースを表向きに組もうとすると、ピースの方向を確認することがわずらわしい作業となる。ピースを裏向きのまま組んでいけば、その問題は解決するが、絵柄が少しずつ組み上がっていくというジグソーパズル本来の楽しさが失われ、また完成後にパズル全体を表返すときにピースがくずれてしまうという問題が生じる。番号を表面に印刷すればその問題は解決するが、完成画像を鑑賞するときに、美観を損ねることになる。かりに目立たない程度に小さく印刷すると、組み立てるときに、ピースを判別することがわずらわしい作業になってしまう。
【0042】
そこで本発明では、表面の画像とは別に、2種類以上の反射率又は光沢又は表面粗さの差異によって近距離可視性の表記を施すようにする。前記のグラデーション表記は、通常のジグソーパズルでいえば、風景や人物などの完成画像情報に該当するが、本発明では、完成画像情報とは別に近距離可視性図形を付与することにより、図2のような解答図と見比べながらピース選択及び方向を判断するので、通常のジグソーパズルと同様の感覚で、遊技者がピースを組み続けることができる。かつ完成状態においては、ピース識別及び方向性識別のための図形は、一定の距離からは認識できないようにして、該完成画像を楽しめるようにしたものである。
【0043】
本実施例では、UVニスによる印刷によってマーク部分に光沢が与えられ、グラデーションの画像印刷とは異なる拡散反射率となるため、近距離からは明瞭にマークを視認することができる。
遊技者は、画像の全体的な印象と共に、近距離可視性表記を参考にしてパズルを組み立てることができる。また裏面にも通常の印刷手法で同じ表記を印刷しておくことにより、より容易に該当ピースを探すことができる。その場合でも、ピースの方向は表面の近距離可視性表記によって判断することになる。
【0044】
図1(a)の点線で示すように本実施例のピースには模様と共に近距離可視性表記が印刷されている。図1の(b)は近距離可視性表記だけを分かりやすく示した説明図である。近距離可視性表記として、例えば携帯電話の図柄をピース中心部に大き目に配置する。この携帯電話ではアンテナ(20)とモニタ画面(21)、ダイヤルキー(22)によって、携帯電話の上下方向が明瞭に判別でき、携帯電話の向きによってピース(1)の向きが分かるようになっている。
【0045】
図8には本発明によるピースの実物写真を示す。図8(a)はピースを正面から撮影した写真、図8(b)は下方から撮影した写真である。本ピースの表面はグラデーション模様を印刷したあと、全体にマットニスを印刷し、さらに携帯電話のマークをUVニスを用いて印刷しているが、
光がニス面に当たるとき、垂直に近いほど反射の強度は小さくなり、ニスを通過した紙表面の印刷を視認することになり、(a)のように、正面から見た場合は、マークの存在は極めてわかりにくい。すなわち完成したパズルを見るときには、マークは視認しにくくなる。
【0046】
ところが光が斜めから当たると、平滑性の強いUVニスが塗られた面はより光の反射の法則にもとづいて光を反射させるのに対し、マットニス、あるいは紙表面に当たった光は散乱光として認知されるため、その違いにより、ピースを斜めから見たときは、 (b)のようにマークが視認でき、ピースを組む段階においては、容易に手がかりとして利用できるようになる。
【0047】
さらに、完成後に距離を置いて見た場合、マーク部分は無色であるのに対し、本来のピース表面の印刷は単色あるいはカラーの印刷であるため、マーク部分は視認しにくく、結果として、本来のジグソーパズル画像だけが見えてくることになる。
またジグソーパズルは完成後、一般にポリビニルアルコール樹脂の糊を表面から塗布して各ピースを接着するため、糊の被膜によって、さらに視認しにくくなる。本発明の近距離可視性表記は、このように近距離からピースを見たときのみ視認できる表記である。
【0048】
図2に示すように、本実施例で用いるマークは単色の模式化されたデザインであり、動物、植物、道具、食物、工業製品、乗り物などの他、記号や文字、文字列などが含まれている。これらのデザインは、方向の判別が容易であると共に、他のピースとの識別性が高くなければならない。さらに、遊技者が見て楽しめるように一定の意味を付与されたものが望ましい。例えば、マークであれば適度に模式化されてデザイン自体を楽しめること、記号や文字であれば、GO!やOH!のように小気味の良い単語等を用いて遊技性を高めることが好ましい。遊技者は、よりやさしく正しいピースを見つけられるよう、あらかじめ類似のマークごとにピースを仕分けするような、通常のジグソーパズルと同じ工夫も楽しめるようになる。
【0049】
本発明は、このように各ピースごとにマークを独立して付与することにより、通常のジグソーパズルのように絵柄を元に組み立てていく楽しさを保ちつつ、そのマーク表記を利用して異なる配列をさせるようにすれば、任意の画像を作成できる点に特徴がある。
【0050】
なお、図2のような配列表は、コンピュータによる画像処理や、人手による試行錯誤によって予め正解画像を作成し、その配列を記録することで生成することができる。なお、本発明のピースの表面画像は、本実施例に限定されるものではなく、従来のように1枚の完成画像を1つの正解とするものでもよい。
【0051】
なお、本実施例ではUVニスを用いたが、近距離可視性表記部分の反射率、光沢、表面粗さが他の部分と異なる方法であれば、通常のニスあるいは、いかなる製造方法を用いても良い。例えば、塗料に微粉末を混合して印刷することで表記部分の光沢を落とす構成でもよい。また、近距離可視性表記部分かそれ以外の部分の表面を研磨して、表面粗さを変化させる構成でもよい。
このような特性を利用して、本発明は従来のジグソーパズルには無いピース認識と方向認識の表示方法を提案するものである。
【0052】
図9は、上述したジグソーパズルのピースを配列するためのトレイ(2)の平面図である。本トレイ(2)は平板体で構成し、表面にパズルのピースの外形形状を示すガイド線(21)が縦横に印刷される。さらにガイド線(21)に対応してA〜Oで列を示す列表示(22)と、1〜20で行を示す行表示(23)が側部全体に表示され、遊技者は例えば正解の配列表に表示された行列表示に従ってピースを配列することができる。
【0053】
本発明のピースでは、外形形状に特徴がないため、通常のジグソーパズルのように組み合うところから部分的に作成していくことができない。しかし、本トレイ(2)を用いることで、ピースをランダムに取っても、配列表から正しい位置に直接ピースを配置することが可能となり、従来のジグソーパズルと同様の感覚で遊技を楽しむことができる。
【0054】
ピースを配列する周縁部(24)は、本実施例のように紙製であれば、ピース脱落防止のための折り返し形状に加工し、組み立て時にピースが動かないように固定することができる。これは、あらかじめ周囲を枠状に加工した樹脂製、木製のトレイでもよい。
さらに、H列全体(25)と、11行(26)全体はピース形状が塗りつぶされて、中途の部位でも行と列の位置が判別しやすいように表示されている。
【0055】
本トレイ(2)は、組み立て後に上から糊を塗布してピースを接着し、乾燥後に行列表示(22)(23)を切り落とすことで、装飾時のピースの基板として用いることもできる。予め行列表示(22)(23)に切り取り線を入れて簡便に切り落とせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 本発明に係るピース
10 凸部
11 凹部
12 中心点
20 近距離可視性表記(アンテナ部分)
21 近距離可視性表記(モニタ画面部分)
22 近距離可視性表記(ダイヤルキー部分)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角形の四辺に備えた少なくとも1組の凸部及び凹部からなるインターロック部によって他のピースと噛合可能なジクソーパズルのピースであって、
該四角形の中心に対して、各辺の形状を点対称に形成し、
該ピースの上下左右の4方向において他のピースと噛合可能にする一方、
該ピースにおける各辺の形状が、
正方形の辺をなす仮想基準線に対し、
該凸部に隣接する凸部隣接辺部を四角形の内方に偏位すると共に、
該凹部に隣接する凹部隣接辺部を四角形の外方に偏位し、
該各偏位に対応する距離だけ該凸部及び凹部を該仮想基準線上で移動して他のピースとの噛合時に隣り合うピースの辺に段差が生じないようにし、かつ凸部の膨大部の最大幅が凹部の括れ部の最小幅よりも大きいことによって、噛合した凸部と凹部との離脱を防止する
ことを特徴とするジグソーパズルのピース。
【請求項2】
四角形の四辺に凸部及び凹部によるインターロック部を備えることによって他のピースと噛合可能なジクソーパズルのピースであって、
2種類以上の反射率又は光沢又は表面粗さの差異によって表示されるジグソーパズルのピース。
【請求項3】
前記請求項1又は2のいずれかに記載のピースを複数配列するためのトレイであって、
外縁をジグソーパズルの完成状態のサイズに一致させ、四辺にピースの脱落防止のための枠体を用意し、各ピースの縦位置及び横位置を表示する行列表示を備えた
ことを特徴とするピース配列用のトレイ。
【請求項1】
四角形の四辺に備えた少なくとも1組の凸部及び凹部からなるインターロック部によって他のピースと噛合可能なジクソーパズルのピースであって、
該四角形の中心に対して、各辺の形状を点対称に形成し、
該ピースの上下左右の4方向において他のピースと噛合可能にする一方、
該ピースにおける各辺の形状が、
正方形の辺をなす仮想基準線に対し、
該凸部に隣接する凸部隣接辺部を四角形の内方に偏位すると共に、
該凹部に隣接する凹部隣接辺部を四角形の外方に偏位し、
該各偏位に対応する距離だけ該凸部及び凹部を該仮想基準線上で移動して他のピースとの噛合時に隣り合うピースの辺に段差が生じないようにし、かつ凸部の膨大部の最大幅が凹部の括れ部の最小幅よりも大きいことによって、噛合した凸部と凹部との離脱を防止する
ことを特徴とするジグソーパズルのピース。
【請求項2】
四角形の四辺に凸部及び凹部によるインターロック部を備えることによって他のピースと噛合可能なジクソーパズルのピースであって、
2種類以上の反射率又は光沢又は表面粗さの差異によって表示されるジグソーパズルのピース。
【請求項3】
前記請求項1又は2のいずれかに記載のピースを複数配列するためのトレイであって、
外縁をジグソーパズルの完成状態のサイズに一致させ、四辺にピースの脱落防止のための枠体を用意し、各ピースの縦位置及び横位置を表示する行列表示を備えた
ことを特徴とするピース配列用のトレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−87718(P2011−87718A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242828(P2009−242828)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(391010529)株式会社テンヨー (33)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(391010529)株式会社テンヨー (33)
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