説明

ジスアゾ顔料組成物

【課題】本発明の目的は、透明性、光沢、着色力、流動性、耐熱性等の諸特性を向上させたジスアゾ顔料組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明は、下記一般式(I)で表される化合物のテトラゾニウム塩からなるジアゾ成分と、アセトアセトアニライド系化合物からなる第1カップリング成分と、置換基を有していてもよいウラシル、イソシアヌル酸、バルビツール酸およびキサンチンよりなる群から選ばれる化合物からなる第2カップリング成分とをカップリング反応させて得られる反応生成物を含有してなることを特徴とするジスアゾ顔料組成物に係る。


(式中R1、R2、R3およびR4は、各々独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、または炭素数1〜4のアルコキシル基を有するアルコキシカルボニル基を表す)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インキや塗料等に好適に用いることができるジスアゾ顔料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ジスアゾ顔料とは、広義には分子構造中にアゾ基を2つもつ顔料の総称であるが、3、3’−ジクロロベンジジン等のテトラゾニウム塩をジアゾ成分とし、このジアゾ成分とアセトアセトアニライド系化合物からなるカップリング成分とをカップリング反応させて得られる黄色系顔料の総称(ジスアゾイエローとも呼ばれる)として主に用いられることが多い。本発明においても、ジスアゾ顔料とはこの後者の総称を意味するものとする。このようなジスアゾ顔料は、印刷インキ、塗料、プラスチック分野等において従来より広く用いられてきた顔料である。
【0003】
このジスアゾ顔料は、上記のような利用分野において諸特性を向上させるべく種々の改良が施されて用いられることが一般的であり、たとえば印刷インキ分野に用いられる場合、流動性や透明性を改良することを目的として次のような改良を施すことが知られている。
【0004】
すなわち、カップリング成分である従来のアセトアセトアニライド系化合物に代えて、特定の置換基を導入したアセトアセトアニライド系化合物を用いてカップリング反応を実行し、それにより得られるジスアゾ化合物を従来のジスアゾ顔料(主顔料)に混合して用いる方法(顔料混合法)や、カップリング反応において従来のアセトアセトアニライド系化合物とともに特定の置換基を導入した異種のアセトアセトアニライド系化合物を混合使用することにより、顔料混合物を得る方法(混合カップリング法)等が知られている。このような方法のうち、後者の方法(すなわち混合カップリング法)は、生産性に優れるとともに種々の要求に合致する目的物を比較的容易な制御条件下で得ることができることから昨今多数の研究開発がなされている。
【0005】
たとえば、アセトアセトアニライド系化合物に水溶性の置換基を導入する方法(特許文献1、2)や、置換基としてアミド基やイミド基を導入する方法(特許文献3)が知られている。
【0006】
これらの方法は、上述の通り流動性や透明性、あるいは着色力や耐熱性を向上させることを目的として提案されたものであるが、ジスアゾ顔料に対するこれらの諸特性をより向上させることがさらに要求されている。
【特許文献1】特開昭49−105822号公報
【特許文献2】特開昭55−135165号公報
【特許文献3】特開昭59−008761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであってその目的とするところは、透明性、光沢、着色力、流動性、耐熱性等の諸特性をさらに向上させたジスアゾ顔料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、カップリング成分としてアセトアセトアニライド系化合物とともにこれとは基本構造が異なる特定の化合物を併用してカップリング反応を実行すると、透明性、光沢、着色力、流動性、耐熱性等の諸特性が向上するとの知見を得、この知見に基づきさらに研究を重ねることによりついに本発明を完成させたものである。
【0009】
すなわち本発明は、下記一般式(I)で表される化合物のテトラゾニウム塩からなるジアゾ成分と、アセトアセトアニライド系化合物からなる第1カップリング成分と、置換基を有していてもよいウラシル、イソシアヌル酸、バルビツール酸およびキサンチンよりなる群から選ばれる化合物からなる第2カップリング成分とをカップリング反応させて得られる反応生成物を含有してなることを特徴とするジスアゾ顔料組成物に係る。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中R1、R2、R3およびR4は、各々独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、または炭素数1〜4のアルコキシル基を有するアルコキシカルボニル基を表す)。
【0012】
上記第1カップリング成分と上記第2カップリング成分の配合割合は、上記第1カップリング成分85mol%以上99mol%以下に対して、上記第2カップリング成分を1mol%以上15mol%以下とすることが好ましい。
【0013】
また、上記カップリング反応において、下記一般式(II)で表される化合物からなる第3カップリング成分をさらに用いることが好ましい。この第3カップリング成分の配合割合は、上記第1カップリング成分と上記第2カップリング成分の合計量95mol%以上99.9mol%以下に対して、上記第3カップリング成分を0.1mol%以上5mol%以下とすることが好ましい。
【0014】
【化2】

【0015】
(式中R5およびR6は、各々独立して、水素、ハロゲン、メチル基、メトキシ基、カルボキシル基、またはスルフォン酸基を表し、R7はメチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、メトキシカルボニル基またはエトキシカルボニル基を表す)。
【0016】
また、上記カップリング反応において、下記一般式(III)または(IV)で表される化合物からなる第4カップリング成分をさらに用いることが好ましい。この第4カップリング成分の配合割合は、上記第1カップリング成分と上記第2カップリング成分の合計量または上記第1カップリング成分と上記第2カップリング成分と上記第3カップリング成分の合計量85mol%以上99mol%以下に対して、上記第4カップリング成分を1mol%以上15mol%以下とすることが好ましい。
【0017】
【化3】

【0018】
(式中R8、R9およびR10は、各々独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基を有するアミド基、炭素数1〜4のアルキル基を有するイミド基、フタルイミド基、炭素数1〜4のアルコキシル基を有するアルコキシカルボニル基、炭素数1〜4のアルコキシル基を有するアルコキシスルフォニル基、ベンズイミダゾロン基、カルボキシル基、カルボン酸塩、スルフォン酸基、またはスルフォン酸塩を表す。また、R8、R9およびR10は、そのうち2つのものが互いに結合し、イミダゾロンとなるものも含まれる。なお、一般式(IV)の場合、R8、R9およびR10は各々独立していずれのベンゼン環に置換していても良いことを表す)。
【0019】
また、上記ジスアゾ顔料組成物は、C.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 55、C.I.Pigment Yellow 81、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 87、C.I.Pigment Yellow 152、C.I.Pigment Yellow 170、C.I.Pigment Orange 15およびC.I.Pigment Orange 16からなる群から選ばれる少なくとも1種の顔料を含有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のジスアゾ顔料組成物は、上記の通りの構成を有することにより、透明性、光沢、着色力、流動性、耐熱性等の諸特性の少なくともいずれか1以上の特性が従来のものに比し向上したものとなる。このため、本発明のジスアゾ顔料組成物を各種用途に用いた場合、透明性、光沢、着色力、流動性、耐熱性等に優れる着色物等が得られることから、極めて有用な産業利用性を有している。
【0021】
特に本発明のジスアゾ顔料組成物を、その主用途の1つである印刷インキ分野に用いた場合、高い着色力を有しかつ極めて透明性に優れるインキ薄膜が要求されるフルカラー印刷においてその要求を十分に満たす高い透明性と高い着色力とを両立し得るものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<ジスアゾ顔料組成物>
本発明のジスアゾ顔料組成物は、後述のジアゾ成分と複数のカップリング成分とをカップリング反応させて得られる反応生成物を含有するものである。この反応生成物は、カップリング反応において複数のカップリング成分が用いられることから、少なくとも2種以上のものが生成することになる。したがって、本発明のジスアゾ顔料組成物は、このような2種以上の反応生成物を含有したものとなる。
【0023】
<ジアゾ成分>
本発明で用いられるジアゾ成分は、下記一般式(I)で表される化合物のテトラゾニウム塩である。
【0024】
【化4】

【0025】
上記一般式(I)中、R1、R2、R3およびR4は、各々独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、または炭素数1〜4のアルコキシル基を有するアルコキシカルボニル基を表す。
【0026】
このような一般式(I)で表される化合物は、上記の通りの構造を有する限り特に制限なく用いることができるものであるが、とりわけ3、3’−ジクロロベンジジン(下記式(I−1))、3、3’−ジメトキシベンジジン、または2、2’、5、5’−テトラクロロベンジジンを採用することが好ましい。これらの化合物は工業原料として容易に入手することができるためである。
【0027】
【化5】

【0028】
なお、テトラゾニウム塩とは、上記一般式(I)に含まれる2つのアミノ基を各々ジアゾ化したものであるが、ジアゾ化の方法は特に制限されず従来公知の方法をいずれも採用し得る。
【0029】
<カップリング成分>
カップリング成分とは、一般的にカップリング反応において上記ジアゾ成分と反応する成分をいうが、本発明においてはこのようなカップリング成分を複数用いることを特徴とする。
【0030】
すなわち、本発明では後述の第1カップリング成分と第2カップリング成分とを必須成分として用いるものであり、さらに所望により第3カップリング成分および/または第4カップリング成分を用いることもできる。なお、各カップリング成分の詳細については後述する。
【0031】
なお、カップリング反応とは、ジアゾ成分とカップリング成分とが反応してアゾ化合物(反応生成物)を生成する反応をいう。本発明の場合、このカップリング反応においてカップリング成分は、ジアゾ成分1分子に対して理論上2分子反応することから、カップリング成分の配合量はジアゾ成分1molに対して2〜2.5molとなるように用いることが好ましい。
【0032】
<第1カップリング成分>
本発明の第1カップリング成分は、アセトアセトアニライド系化合物からなるものである。ここで、アセトアセトアニライド系化合物とは、アセトアセトアニライド(下記式(C1−1))またはアセトアセトアニライドのフェニル基に各種の置換基を有する化合物をいう。このような置換基としては、たとえばハロゲン、メチル基、メトキシ基、エトキシ基等を挙げることができ、これらの置換基を1種または2種以上有することができる。
【0033】
本発明においては、このようなアセトアセトアニライド系化合物として、従来公知のジスアゾ顔料のカップリング成分として知られるアセトアセトアニライド系化合物を特に制限なく使用することができる。たとえば、以下の式(C1−1)〜式(C1−6)で表されるいずれかのアセトアセトアニライド系化合物を好適に用いることができる。
【0034】
【化6】

【0035】
【化7】

【0036】
【化8】

【0037】
【化9】

【0038】
【化10】

【0039】
【化11】

【0040】
なお、このような第1カップリング成分としては、上記のようなアセトアセトアニライド系化合物を1種または2種以上用いることができる。
【0041】
<第2カップリング成分>
本発明の第2カップリング成分は、置換基を有していてもよいウラシル、イソシアヌル酸、バルビツール酸およびキサンチンよりなる群から選ばれる化合物からなるものである。このようにカップリング成分として、上記の第1カップリング成分とともにこの第2カップリング成分を必須成分として用いることにより、透明性、光沢、着色力、流動性、耐熱性等の諸特性が飛躍的に向上したものとなる。
【0042】
すなわち、従来のジスアゾ顔料は、通常上記のようなジアゾ成分とアセトアセトアニライド系化合物のみをカップリング反応させて得られるものであったが、これによると上記の諸特性のうちのいずれか1以上の特性において要求される性能を十分に示すことが困難であった。たとえば、耐熱性が劣ることから加工時の加熱等によって容易に結晶成長が起こり、着色力と透明性とを共に低下させるという欠点があった。また、インキに含有させた場合、顔料構造に起因してインキの流動性を悪化させるという欠点もあった。
【0043】
本発明は、正しくこれらの問題を抜本的に解決したものであり、カップリング成分としてアセトアセトアニライド系化合物である第1カップリング成分とともに、これとは化学構造を異にする第2カップリング成分を併用したことにより、透明性、光沢、着色力、流動性、耐熱性等の諸特性を飛躍的に向上させることに成功したものである。
【0044】
ここで、置換基を有していてもよいウラシルとは、ウラシル(下記式(C2−1))または置換基を有するウラシルをいい、置換基を有するウラシルとしては、たとえば5−メチルウラシル(下記式(C2−2))、5−アミノウラシル(下記式(C2−3))、5−クロロウラシル、5−ブロモウラシル、5−フルオロウラシル、5−ニトロウラシル等を挙げることができる。
【0045】
本発明の第2カップリング成分としては、特にウラシル(下記式(C2−1))、5−メチルウラシル(下記式(C2−2))、イソシアヌル酸(下記式(C2−4))、またはキサンチンを用いることが好適である。特に優れた諸特性の向上作用が示されるためである。
【0046】
【化12】

【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
【化15】

【0050】
なお、このような第2カップリング成分としては、上記の化合物を1種または2種以上用いることができる。また、第1カップリング成分と第2カップリング成分の配合割合は、第1カップリング成分85mol%以上99mol%以下に対して、第2カップリング成分を1mol%以上15mol%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは、第1カップリング成分90mol%以上95mol%以下に対して、第2カップリング成分を5mol%以上10mol%以下とすることが好適である。
【0051】
第2カップリング成分が1mol%未満の場合、上記のような諸特性の向上効果が十分に示されない場合があり、15mol%を超えると原料コスト面で不利となり経済上現実的でない場合がある。
【0052】
<第3カップリング成分>
本発明のカップリング成分は、カップリング反応において上記の第1カップリング成分および第2カップリング成分とともに、下記一般式(II)で表される化合物からなる第3カップリング成分をさらに用いることができる。
【0053】
【化16】

【0054】
上記一般式(II)中、R5およびR6は、各々独立して、水素、ハロゲン、メチル基、メトキシ基、カルボキシル基、またはスルフォン酸基を表し、R7はメチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、メトキシカルボニル基またはエトキシカルボニル基を表す。
【0055】
このような第3カップリング成分を上記の第1カップリング成分および第2カップリング成分とともに用いることにより、透明性、光沢、着色力、流動性、耐熱性等の諸特性をさらに向上させることができる。
【0056】
上記一般式(II)で表される化合物としては、特に以下の式(C3−1)〜式(C3−5)で表されるいずれかの化合物を用いることが好ましく、より好ましくは以下の式(C3−4)または式(C3−5)で表される化合物を用いることが特に好ましい。
【0057】
【化17】

【0058】
【化18】

【0059】
【化19】

【0060】
【化20】

【0061】
【化21】

【0062】
なお、このような第3カップリング成分としては、上記一般式(II)で表される化合物を1種または2種以上用いることができる。また、その配合割合は、第1カップリング成分と第2カップリング成分の合計量95mol%以上99.9mol%以下に対して、第3カップリング成分を0.1mol%以上5mol%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは、第1カップリング成分と第2カップリング成分の合計量97mol%以上99.5mol%以下に対して、第3カップリング成分を0.5mol%以上3mol%以下とすることが好適である。
【0063】
第3カップリング成分が0.1mol%未満の場合、上記のような諸特性のさらなる向上効果が十分に示されない場合があり、5mol%を超えると原料コスト面で不利となり経済上現実的ではない場合がある。
【0064】
<第4カップリング成分>
本発明のカップリング成分は、カップリング反応において上記の第1カップリング成分および第2カップリング成分とともに、下記一般式(III)または(IV)で表される化合物からなる第4カップリング成分をさらに用いることができる。このような第4カップリング成分は、上記の第3カップリング成分とともに用いることができるとともに、上記の第3カップリング成分を伴うことなくそれ単独で第1カップリング成分および第2カップリング成分に併用させることもできる。
【0065】
【化22】

【0066】
上記一般式(III)または(IV)中、R8、R9およびR10は、各々独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基を有するアミド基、炭素数1〜4のアルキル基を有するイミド基、フタルイミド基、炭素数1〜4のアルコキシル基を有するアルコキシカルボニル基、炭素数1〜4のアルコキシル基を有するアルコキシスルフォニル基、ベンズイミダゾロン基、カルボキシル基、カルボン酸塩、スルフォン酸基、またはスルフォン酸塩を表す。また、R8、R9およびR10は、そのうち2つのものが互いに結合し、イミダゾロンとなるものも含まれる(たとえば下記式(C4−5)で表されるもの)。なお、一般式(IV)の場合、R8、R9およびR10は各々独立していずれのベンゼン環に置換していても良いことを表す。
【0067】
このような第4カップリング成分は、主として流動性を調節したり、色相を調節することを目的として用いられるものである。
【0068】
上記一般式(III)または(IV)で表される化合物としては、特に以下の式(C4−1)〜式(C4−7)で表されるいずれかの化合物を用いることが好ましい。
【0069】
【化23】

【0070】
【化24】

【0071】
【化25】

【0072】
【化26】

【0073】
【化27】

【0074】
【化28】

【0075】
【化29】

【0076】
なお、このような第4カップリング成分としては、上記一般式(III)または(IV)で表される化合物を1種または2種以上用いることができる。また、その配合割合は、上記の第2カップリング成分と同様の割合で用いることができる。すなわち、第1カップリング成分と第2カップリング成分の合計量または第1カップリング成分と第2カップリング成分と第3カップリング成分の合計量85mol%以上99mol%以下に対して、上記第4カップリング成分を1mol%以上15mol%以下、さらに好ましくは、第1カップリング成分と第2カップリング成分の合計量または第1カップリング成分と第2カップリング成分と第3カップリング成分の合計量90mol%以上95mol%以下に対して、上記第4カップリング成分を5mol%以上10mol%以下とすることが好適である。
【0077】
<反応生成物>
本発明の反応生成物は、上記のジアゾ成分と上記のカップリング成分とをカップリング反応させて得られるものである。本発明においてはジアゾ成分がテトラゾニウム塩であることから、ジアゾ成分1分子に対して2分子のカップリング成分が反応して反応生成物が生成されることになる。
【0078】
したがって、カップリング成分として第1カップリング成分と第2カップリング成分とを用いる場合、このような反応生成物としては、1分子のジアゾ成分と2分子の第1カップリング成分との反応生成物、1分子のジアゾ成分と2分子の第2カップリング成分との反応生成物、および1分子のジアゾ成分と1分子の第1カップリング成分と1分子の第2カップリング成分との反応生成物が混在して生成されることが予想される。
【0079】
また同様にして、カップリング成分として第1カップリング成分と第2カップリング成分と第3カップリング成分とを用いる場合、このような反応生成物としては、1分子のジアゾ成分と2分子の第1カップリング成分との反応生成物、1分子のジアゾ成分と2分子の第2カップリング成分との反応生成物、1分子のジアゾ成分と2分子の第3カップリング成分との反応生成物、1分子のジアゾ成分と1分子の第1カップリング成分と1分子の第2カップリング成分との反応生成物、1分子のジアゾ成分と1分子の第1カップリング成分と1分子の第3カップリング成分との反応生成物、1分子のジアゾ成分と1分子の第2カップリング成分と1分子の第3カップリング成分との反応生成物が混在して生成されることが予想される。
【0080】
カップリング成分として第1カップリング成分と第2カップリング成分と第4カップリング成分とを用いる場合や、あるいは第1カップリング成分と第2カップリング成分と第3カップリング成分と第4カップリング成分とを用いる場合についてもこれらと同様にして予想することができる。
【0081】
つまり、本発明の反応生成物は、その組成が1種だけのものが含まれる場合はなく、必ず2種以上のものが混在して含まれることになる。
【0082】
<ジスアゾ顔料組成物の組成>
本発明のジスアゾ顔料組成物は、上記の通り、その組成が互いに異なる2種以上の上記反応生成物を含有してなることを特徴とするものである。
【0083】
そして、その反応生成物の少なくとも1種として、以下のC.I.Pigment No.(カラーインデックスピグメントナンバー)で特定される顔料を含有していることが好ましい。すなわち、本発明のジスアゾ顔料組成物は、C.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 55、C.I.Pigment Yellow 81、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 87、C.I.Pigment Yellow 152、C.I.Pigment Yellow 170、C.I.Pigment Orange 15およびC.I.Pigment Orange 16からなる群から選ばれる少なくとも1種の顔料を含有していることが好ましい。
【0084】
<製造方法>
本発明のジスアゾ顔料組成物は、上記のジアゾ成分とカップリング成分とをカップリング反応させて得られる反応生成物を含有するものであるが、そのカップリング反応の具体的条件は何等制限されるものではなく従来公知のいかなる反応条件を採用するものであっても差し支えない。たとえば、カップリング成分を酸析させた弱酸性のスラリー中にジアゾ成分を注入する方法(酸析カップリング法)や、弱酸性のバッファー溶液中にジアゾ成分とカップリング成分を同時に注入する方法(同時注入カップリング法)等を挙げることができる。
【0085】
ここで、酸析カップリング法の具体的条件を例示すると以下の通りである。すなわち、まずカップリング成分を溶解したアルカリ水溶液に、酢酸等の水溶液を滴下することにより系のpHを3〜6.5の弱酸性条件に調節することによってカップリング成分を析出させる。続いて、撹拌下ジアゾ成分の水溶液を徐々に滴下することにより、カップリング反応を行なうものである。
【0086】
また、同時注入カップリング法の具体的条件を例示すると次のようになる。すなわち、酢酸や水酸化ナトリウム等を用いて弱酸性(pH3〜6.5)のバッファー溶液を調製し、ジアゾ成分の水溶液とカップリング成分を溶解した水溶液とを同時に徐々に滴下することにより、カップリング反応を行なうものである。この場合、ジアゾ成分1molに対して、カップリング成分が2〜2.5molとなるような割合で両者の水溶液を滴下することが好ましい。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の記載において、特に断りのない限り「部」は質量部を示し、「%」は質量%を示す。
【0088】
<実施例1>
3、3’−ジクロロベンジジン塩酸塩169部と、32%塩酸229部と、水4000部とを撹拌した後、浮氷下(温度を0℃±2℃に調節した条件下)、この水溶液に亜硝酸ナトリウム96部を含む水溶液を加えることにより3、3’−ジクロロベンジジン(上記式(I−1))のテトラゾニウム塩(すなわち上記一般式(I)で表される化合物のテトラゾニウム塩からなるジアゾ成分)を得た。以下、この水溶液をジアゾ成分含有溶液という。なお、このジアゾ成分含有溶液は、ジアゾ成分を0.67mol含有している。
【0089】
一方、アセトアセトアニライド(上記式(C1−1)、第1カップリング成分)238部とウラシル(上記式(C2−1)、第2カップリング成分)15部とを、水酸化ナトリウム87部および水1000部からなるアルカリ水溶液に溶解させた。以下、この水溶液をカップリング成分含有溶液という。なお、このカップリング成分含有溶液は、第1カップリング成分を1.32mol、第2カップリング成分を0.13mol含有している。
【0090】
続いて、酢酸70部と、水酸化ナトリウム30部と、水5000部とを混合して20℃のバッファー溶液を調製した。このバッファー溶液に対して、上記ジアゾ成分含有溶液とカップリング成分含有溶液とを、2時間かけて滴下することによりカップリング反応を行なった。
【0091】
次いで、カップリング反応終了後、pHを5.0に調整し、ロジン21部の鹸化物を添加した後、さらに硫酸アルミニウム15部を添加した。引き続き、撹拌下、80℃で30分間加熱した後、濾過および水洗を行なうことにより含水率73%のプレスケーキを得た。
【0092】
このプレスケーキは、本発明のジスアゾ顔料組成物を含むものであり、ジアゾ成分と第1カップリング成分と第2カップリング成分とをカップリング反応させて得られる反応生成物を含有するものである。なお、FD/MS(電界脱離イオン化質量分析)測定により分析を行なうことにより、この反応生成物の1種としてC.I.Pigment Yellow 12を含んでいることを確認した。
【0093】
<実施例2>
実施例1において、カップリング成分含有溶液が、カップリング成分としてアセトアセトアニライド(上記式(C1−1)、第1カップリング成分)238部(1.32mol)と、イソシアヌル酸(上記式(C2−4)、第2カップリング成分)13.2部(0.1mol)と、1−(2−クロロ−5−スルフォフェニル)−3−メチル−5−ピラゾロン(上記式(C3−5)、第3カップリング成分)6.6部(0.02mol)とを含有するものであることを除き、他は全て同様にして含水率72%のプレスケーキを得た。
【0094】
このプレスケーキは、本発明のジスアゾ顔料組成物を含むものであり、ジアゾ成分と第1カップリング成分と第2カップリング成分と第3カップリング成分とをカップリング反応させて得られる反応生成物を含有するものである。なお、実施例1と同様な分析を行なうことにより、この反応生成物の1種としてC.I.Pigment Yellow 12を含んでいることを確認した。
【0095】
<実施例3>
実施例1において、カップリング成分含有溶液が、カップリング成分としてアセトアセトアニライド(上記式(C1−1)、第1カップリング成分)238部(1.32mol)と、イソシアヌル酸(上記式(C2−4)、第2カップリング成分)9.0部(0.07mol)と、5−アセトアセチルアミノベンズイミダゾロン(上記式(C4−5)、第4カップリング成分)15.5部(0.07mol)とを含有するものであることを除き、他は全て同様にして含水率73%のプレスケーキを得た。
【0096】
このプレスケーキは、本発明のジスアゾ顔料組成物を含むものであり、ジアゾ成分と第1カップリング成分と第2カップリング成分と第4カップリング成分とをカップリング反応させて得られる反応生成物を含有するものである。なお、実施例1と同様な分析を行なうことにより、この反応生成物の1種としてC.I.Pigment Yellow 12を含んでいることを確認した。
【0097】
<実施例4>
実施例1において、カップリング成分含有溶液が、カップリング成分としてアセトアセトアニライド(上記式(C1−1)、第1カップリング成分)238部(1.32mol)と、5−メチルウラシル(上記式(C2−2)、第2カップリング成分)8.6部(0.07mol)と、3−メチル−1−(p−スルフォフェニル)−5−ピラゾロン(上記式(C3−4)、第3カップリング成分)6.0部(0.02mol)と、アセトアセチル−p−フェネチダイド(上記式(C4−6)、第4カップリング成分)15.5部(0.07mol)とを含有するものであることを除き、他は全て同様にして含水率74%のプレスケーキを得た。
【0098】
このプレスケーキは、本発明のジスアゾ顔料組成物を含むものであり、ジアゾ成分と第1カップリング成分と第2カップリング成分と第3カップリング成分と第4カップリング成分とをカップリング反応させて得られる反応生成物を含有するものである。なお、実施例1と同様な分析を行なうことにより、この反応生成物の1種としてC.I.Pigment Yellow 12を含んでいることを確認した。
【0099】
<実施例5>
アセトアセトアニライド(上記式(C1−1)、第1カップリング成分)238部とウラシル(上記式(C2−1)、第2カップリング成分)15部とを、水酸化ナトリウム70部および水1000部からなるアルカリ水溶液に溶解させた。
【0100】
次いで、この水溶液に対して、酢酸94部を水1000部で希釈した弱酸性水溶液を30分間かけて滴下することにより系のpHを5.0の弱酸性条件に調節することによって、カップリング成分の結晶を析出させた。以下、この析出物含有溶液をカップリング成分含有溶液という。なお、このカップリング成分含有溶液は、第1カップリング成分を1.32mol、第2カップリング成分を0.13mol含有している。
【0101】
続いて、このカップリング成分含有溶液を5℃に冷却した後、撹拌下、実施例1と同じジアゾ成分含有溶液を3時間かけて滴下することによりカップリング反応を行なった。
【0102】
次いで、カップリング反応終了後、pHを5.0に調整し、ロジン21部の鹸化物を添加した後、さらに硫酸アルミニウム15部を添加した。引き続き、撹拌下、80℃で30分間加熱した後、濾過および水洗を行なうことにより含水率70%のプレスケーキを得た。
【0103】
このプレスケーキは、本発明のジスアゾ顔料組成物を含むものであり、ジアゾ成分と第1カップリング成分と第2カップリング成分とをカップリング反応させて得られる反応生成物を含有するものである。なお、実施例1と同様な分析を行なうことにより、この反応生成物の1種としてC.I.Pigment Yellow 12を含んでいることを確認した。
【0104】
<実施例6>
実施例5において、カップリング成分含有溶液が、カップリング成分としてアセトアセトアニライド(上記式(C1−1)、第1カップリング成分)238部(1.32mol)と、イソシアヌル酸(上記式(C2−4)、第2カップリング成分)13.2部(0.1mol)と、1−(2−クロロ−5−スルフォフェニル)−3−メチル−5−ピラゾロン(上記式(C3−5)、第3カップリング成分)6.6部(0.02mol)とを含有するものであることを除き、他は全て同様にして含水率71%のプレスケーキを得た。
【0105】
このプレスケーキは、本発明のジスアゾ顔料組成物を含むものであり、ジアゾ成分と第1カップリング成分と第2カップリング成分と第3カップリング成分とをカップリング反応させて得られる反応生成物を含有するものである。なお、実施例1と同様な分析を行なうことにより、この反応生成物の1種としてC.I.Pigment Yellow 12を含んでいることを確認した。
【0106】
<比較例1>
実施例1において、カップリング成分含有溶液に含まれるウラシル(第2カップリング成分)15部に代えて2−アセトアセチルアミノ安息香酸(上記式(C4−1))30部(0.13mol)を用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして含水率75%のプレスケーキを得た。
【0107】
このプレスケーキは、アセトアセトアニライドと2−アセトアセチルアミノ安息香酸とからなる2種のカップリング成分を用いたカップリング反応の生成物を含むものであるが、この生成物は本発明の第2カップリング成分を用いない点において本発明の反応生成物とは組成が異なるものである。
【0108】
<比較例2>
実施例1において、カップリング成分含有溶液に含まれるウラシル(第2カップリング成分)15部に代えて5−アセトアセチルアミノベンズイミダゾロン(上記式(C4−5))30部(0.13mol)を用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして含水率74%のプレスケーキを得た。
【0109】
このプレスケーキは、アセトアセトアニライドと5−アセトアセチルアミノベンズイミダゾロンとからなる2種のカップリング成分を用いたカップリング反応の生成物を含むものであるが、この生成物は本発明の第2カップリング成分を用いない点において本発明の反応生成物とは組成が異なるものである。
【0110】
<比較例3>
実施例5において、カップリング成分含有溶液に含まれるウラシル(第2カップリング成分)15部に代えて2−アセトアセチルアミノ安息香酸(上記式(C4−1))30部(0.13mol)を用いることを除き、他は全て実施例5と同様にして含水率72%のプレスケーキを得た。
【0111】
このプレスケーキは、アセトアセトアニライドと2−アセトアセチルアミノ安息香酸とからなる2種のカップリング成分を用いたカップリング反応の生成物を含むものであるが、この生成物は本発明の第2カップリング成分を用いない点において本発明の反応生成物とは組成が異なるものである。
【0112】
<比較例4>
実施例5において、カップリング成分含有溶液に含まれるウラシル(第2カップリング成分)15部に代えて5−アセトアセチルアミノベンズイミダゾロン(上記式(C4−5))30部(0.13mol)を用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして含水率74%のプレスケーキを得た。
【0113】
このプレスケーキは、アセトアセトアニライドと5−アセトアセチルアミノベンズイミダゾロンとからなる2種のカップリング成分を用いたカップリング反応の生成物を含むものであるが、この生成物は本発明の第2カップリング成分を用いない点において本発明の反応生成物とは組成が異なるものである。
【0114】
<インキ化>
上記の実施例および比較例で各得られたプレスケーキを以下の方法によりインキ化した。
【0115】
すなわち、50℃に加温した平版インキ用ワニス(商品名:大豆油系ワニスLS−151;東新油脂社製)210部をフラッシングニーダーに充填し、ジスアゾ顔料組成物換算で100部に相当するプレスケーキをさらに充填することによりフラッシングを行なった。次いで、遊離水を取り除いた後、さらに上記平版インキ用ワニスを150部追加混合した。
【0116】
引き続き、90℃で1時間真空脱水しながら水分を除去した後、上記平版インキ用ワニス173.3部および溶剤(商品名:AF−7号ソルベント;日本石油(株)製)33.3部をさらに加えることにより、ジスアゾ顔料組成物を15%含むベースインキを調製した。
【0117】
そして、このベースインキ60部に対して、上記平版インキ用ワニス35部および上記溶剤5部をさらに加えることによりジスアゾ顔料組成物を9%含むインキを調製した。以下、このインキを用いることにより各種の試験を行なった。
【0118】
<色相評価試験>
RIテスター(商品名:RI−2型;石川島産業機械(株)製)を用いて上記で各得られたインキをアート紙に塗布することにより、透明性、光沢、着色力を評価した。なお、インキの塗布条件は、RIテスターのロールとして四分割ゴムロールを用いて各分割部分に0.125ccのインキを盛る条件で実施した。
【0119】
まず透明性の評価は、中央部を境界として白色部と黒色部とに二分されたアート紙上にインキを塗布することにより、インキが塗布された黒色部の透視性を目視で判断することにより行なった。具体的には、インキ塗布部を介して下層の黒色部が明瞭に透視される程(漆黒性が高い程)透明性が優れていると評価し、特に良好な透明性を有するものを「A」、良好な透明性を有するものを「B」、中程度の透明性を有するものを「C」、透明性が劣っているものを「D」として評価した。
【0120】
また光沢の評価は、デジタル変角光沢計(商品名:UGV−4D;スガ試験機(株)製)を用いてアート紙上のインキ塗布面の60度光沢を測定することにより評価した。この測定は、測定された数値が大きくなる程良好な光沢を有していることを示す。
【0121】
また着色力の評価は、マクベス反射濃度計(商品名:RD914;マクベス(株)製)を用いてアート紙上のインキ塗布面を測定することにより評価した。この測定は、測定された数値が大きくなる程着色力が高いことを示す。
【0122】
<流動性評価試験>
ガラス板上に上記で得られた各インキを2cc載せた後、そのガラス板を60度に傾斜させることにより20分後のインキの流動距離を測定した。流動距離が長くなる程流動性が良好であることを示す。
【0123】
<耐熱性評価試験>
上記のベースインキ製造時において、フラッシングニーダー内においてさらに90℃で2時間混錬した後、そのベースインキを用いて上記と同様にしてジスアゾ顔料組成物を9%含むインキを調製した。そして、このインキと90℃で2時間の混錬を行なわなかったインキ(すなわち上記の色相評価試験等で用いたインキ)とをそれぞれアート紙上に塗布することにより、両者の色相の差異を目視により観察することによって耐熱性を評価した。色相の差異の少ないもの程耐熱性が優れていると評価し、特に良好な耐熱性を有するものを「A」、良好な耐熱性を有するものを「B」、中程度の耐熱性を有するものを「C」、耐熱性が劣っているものを「D」として評価した。
【0124】
以上の試験結果を以下の表1および表2に示す。
【0125】
【表1】

【0126】
【表2】

【0127】
表1および表2より明らかなように、同一の製造方法間で比較した場合、本発明のジスアゾ顔料組成物を配合したインキ(実施例)は、比較例のインキに比し、透明性、光沢、着色力、流動性、耐熱性の5項目のうち4項目以上において優れた結果を示した。したがって、本発明のジスアゾ顔料組成物が従来のものに比し優れた諸特性が示されることは明らかである。
【0128】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0129】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物のテトラゾニウム塩からなるジアゾ成分と、アセトアセトアニライド系化合物からなる第1カップリング成分と、置換基を有していてもよいウラシル、イソシアヌル酸、バルビツール酸およびキサンチンよりなる群から選ばれる化合物からなる第2カップリング成分とをカップリング反応させて得られる反応生成物を含有してなることを特徴とするジスアゾ顔料組成物。
【化1】

(式中R1、R2、R3およびR4は、各々独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、または炭素数1〜4のアルコキシル基を有するアルコキシカルボニル基を表す)。
【請求項2】
前記第1カップリング成分と前記第2カップリング成分の配合割合は、前記第1カップリング成分85mol%以上99mol%以下に対して、前記第2カップリング成分を1mol%以上15mol%以下とすることを特徴とする請求項1記載のジスアゾ顔料組成物。
【請求項3】
前記カップリング反応において、下記一般式(II)で表される化合物からなる第3カップリング成分をさらに用いることを特徴とする請求項1または2に記載のジスアゾ顔料組成物。
【化2】

(式中R5およびR6は、各々独立して、水素、ハロゲン、メチル基、メトキシ基、カルボキシル基、またはスルフォン酸基を表し、R7はメチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、メトキシカルボニル基またはエトキシカルボニル基を表す。)
【請求項4】
前記第3カップリング成分の配合割合は、前記第1カップリング成分と前記第2カップリング成分の合計量95mol%以上99.9mol%以下に対して、前記第3カップリング成分を0.1mol%以上5mol%以下とすることを特徴とする請求項3記載のジスアゾ顔料組成物。
【請求項5】
前記カップリング反応において、下記一般式(III)または(IV)で表される化合物からなる第4カップリング成分をさらに用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のジスアゾ顔料組成物。
【化3】

(式中R8、R9およびR10は、各々独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基を有するアミド基、炭素数1〜4のアルキル基を有するイミド基、フタルイミド基、炭素数1〜4のアルコキシル基を有するアルコキシカルボニル基、炭素数1〜4のアルコキシル基を有するアルコキシスルフォニル基、ベンズイミダゾロン基、カルボキシル基、カルボン酸塩、スルフォン酸基、またはスルフォン酸塩を表す。また、R8、R9およびR10は、そのうち2つのものが互いに結合し、イミダゾロンとなるものも含まれる。なお、一般式(IV)の場合、R8、R9およびR10は各々独立していずれのベンゼン環に置換していても良いことを表す。)
【請求項6】
前記第4カップリング成分の配合割合は、前記第1カップリング成分と前記第2カップリング成分の合計量または前記第1カップリング成分と前記第2カップリング成分と前記第3カップリング成分の合計量85mol%以上99mol%以下に対して、前記第4カップリング成分を1mol%以上15mol%以下とすることを特徴とする請求項5記載のジスアゾ顔料組成物。
【請求項7】
前記ジスアゾ顔料組成物は、C.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 55、C.I.Pigment Yellow 81、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 87、C.I.Pigment Yellow 152、C.I.Pigment Yellow 170、C.I.Pigment Orange 15およびC.I.Pigment Orange 16からなる群から選ばれる少なくとも1種の顔料を含有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のジスアゾ顔料組成物。