説明

ジッタ測定方法およびジッタ測定装置

【課題】 パターン依存性ジッタを正確に把握できるようにする。
【解決手段】 被測定データ信号に対する平均化を行ってノイズ性ジッタを抑圧したデータ信号の波形情報を、ビットレートに対応した周波数のクロック信号の周期より短い一定間隔の時系列データで生成し(S1)、その波形情報に対して広帯域なクロック再生処理を行って(S2)、パターン依存性ジッタを含むクロック信号を再生する。そして、再生されたクロック信号を位相検波して各ビット位置の位相変動量を求め(S3)、その位相変動量に対してデータ信号のビットレートによって予め規定されているジッタ測定の帯域でフィルタ処理することで、ビット毎のパターン依存性ジッタを求める(S4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ信号に含まれるジッタ成分のうち、データ信号のパターンに依存して発生するパターン依存性ジッタを測定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
データ伝送システムでは、そのデータ信号の位相の揺らぎ(ジッタ)が大きくなると、正常にデータ信号を伝達できなくなる。
このため、データ伝送システムやそれらを構成する機器のジッタ特性を予め測定しておく必要がある。
【0003】
データ信号のジッタを測定する一つの方法として、図7に示すように、データ信号を波形観測装置に入力してそのアイ(eye)パターンを表示させ、その表示されたアイパターンの立ち上がりと立ち下がりの交差部分の幅Wからデータ信号のジッタ量を把握する方法がある。
【0004】
このようにデータ信号のアイパターンを観測してジッタを求める方法は、例えば、次の特許文献1に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−145582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように波形観測装置に表示されるアイパターンの幅Wに基づいてジッタを測定する方法では、データ信号のパターンに依存して発生するパターン依存性ジッタを把握することはできない。
【0007】
即ち、ジッタには、伝送するデータ信号のパターンに依存せず、機器自身の雑音や外来雑音等に起因して発生するランダムノイズ性または周期ノイズ性のもの(以下これらをノイズ性ジッタという)と、伝送するデータ信号のパターンに起因して発生するパターン依存性ジッタとがある。
【0008】
パターン依存性ジッタは、測定対象のデータ伝送通過帯域が高い(数GHz)場合に、直流成分が通過できないために生じる波形歪み、データ信号のデューティサイクル歪み、伝送される信号周波数に対して、機器の周波数特性が十分でないことによって生じる波形歪み等に起因して発生するジッタである。
【0009】
このパターン依存性ジッタは、データ信号が擬似ランダムパターンのようにランダム性の強い場合には大きな問題にならないが、実際にデータ伝送で用いるデータ信号列、例えばSDHフレームやSONETフレームのように常に先頭位置にスクランブルされていない特定のパターンが存在するデータ信号の場合、そのフレーム間隔(例えば、125μs間隔)で大きなパターン依存性ジッタが発生する。
【0010】
しかも、このフレーム間隔で発生するジッタの周波数は、SDHフレームやSONETフレームのジッタ測定で規定されている周波数帯域内に入ってしまうため、ノイズ性ジッタ成分と区別することができない。
【0011】
また、上記のようにデータ信号のパターンに依存するジッタの測定では、データの位置とジッタとの関連性が把握できる必要があるが、上記したようなアイパターンの観測では、その関連性の正確な把握も困難である。
【0012】
このため、パターン依存性ジッタを正確に把握できるジッタ測定装置およびジッタ測定方法の実現が強く望まれていた。
【0013】
本発明は、この課題を解決して、パターン依存性ジッタを正確に把握できるジッタ測定方法およびジッタ測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1のジッタ測定方法は、
被測定データ信号からデータ信号のパターンに依存しないノイズ性ジッタ成分を抑圧した信号の波形情報を間隔一定の時系列データにより生成する段階(S1)と、
前記生成された波形情報からパターン依存性ジッタを含むクロック信号を再生する段階(S2)と、
前記再生されたクロック信号の位相変動成分を検出する段階(S3)と、
前記検出された位相変動成分に対して所定の帯域制限処理を行い、前記パターン依存性ジッタ成分を抽出する段階(S4)とを含んでいる。
【0015】
また、本発明の請求項2のジッタ測定装置は、
被測定データ信号からデータ信号のパターンに依存しないノイズ性ジッタ成分を抑圧した信号の波形情報を間隔一定の時系列データで生成する波形データ列生成部(21)と、
前記波形データ列生成部によって生成された波形情報からパターン依存性ジッタを含むクロック信号を再生するクロック再生手段(22)と、
前記クロック再生手段によって再生されたクロック信号の位相変動成分を検出する位相検波手段(23)と、
前記位相検波手段の出力信号に対して所定の帯域制限処理を行い、前記パターン依存性ジッタ成分を抽出する帯域制限手段(24)と、
前記帯域制限手段によって抽出された前記パターン依存性ジッタ成分に対する評価演算を行う評価演算部(25)とを備えている。
【0016】
また、本発明の請求項3のジッタ測定装置は、請求項2のジッタ測定装置において、
前記波形データ列生成部は、
前記被測定データ信号と、該被測定データ信号のビットレートに対応した周波数を有しジッタを含まない基準クロック信号とを受け、該基準クロック信号のレベルが所定方向に遷移するタイミングを基準タイミングとし、該基準タイミングに対する前記被測定データ信号のレベル遷移タイミングの時間差を、前記被測定データ信号の複数のパターン周期分求める時間差検出手段(21a)と、
前記時間差検出手段によって得られた時間差に基づいて、前記被測定データ信号のパターン周期内におけるレベル遷移タイミング毎の前記時間差の平均値をそれぞれ求める平均値算出手段(21c)と、
前記被測定データ信号と同一パターンで、前記各基準タイミングに対して前記平均値算出手段によって得られた前記時間差の平均値をもってレベル遷移する信号の波形情報を、一定間隔の時系列データとして生成するデータ列生成手段(21d)とを有している。
【0017】
また、本発明の請求項4のジッタ測定装置は、請求項2のジッタ測定装置において、
前記波形データ列生成部は、
前記被測定データ信号の波形情報を、複数のパターン周期分取得して平均化し、前記ノイズ性ジッタ成分を抑圧した信号の波形情報を生成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
上記のように本発明のジッタ測定方法および装置は、被測定データ信号からパターンに依存しないノイズ性ジッタ成分を抑圧した信号の波形情報を間隔一定の時系列データにより生成し、その生成した波形情報からパターンに依存するジッタを含むクロック信号を再生し、再生したクロック信号の位相変動成分を検出し、その検出した位相変動成分に対して所定の帯域制限処理を行い、パターン依存性ジッタ成分を検出している。
【0019】
このため、従来のようなアイパターンの観測では不可能であった、SDH/SONET等のジッタ測定で規定されている帯域制限処理がなされたパターン依存性ジッタの測定を、正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
始めに本発明のジッタ測定方法の原理について説明する。
前記したように、データ信号のジッタ成分には、パターンに依存して発生するパターン依存性ジッタと、パターンに依存しないノイズ性ジッタとがあり、両ジッタにより、被測定データ信号のレベル遷移タイミング(つまり位相)が変動する。
【0021】
この位相変動分からパターン依存性ジッタの成分を取り出すためには、ノイズ性ジッタの成分をできる限り抑圧する必要がある。
【0022】
ここで、各レベル遷移タイミングにおいて、ノイズ性ジッタによる位相変動量は、ある程度の時間をかけて平均化すれば、ほぼゼロまで抑圧することができるので、被測定データ信号のレベル遷移タイミングあるいは被測定データ信号の波形全体を、複数のパターン周期分平均化することで、ノイズ性ジッタの影響による位相変動をほぼ除去することができる。
【0023】
このようにしてノイズ性ジッタの影響が抑圧されたデータ信号の位相変動は、そのデータ信号のパターンに依存した成分であるから、その位相変動成分を抽出し、その抽出した位相変動成分に対して、所定の帯域制限特性をもつフィルタによってフィルタ処理することで、パターン依存性ジッタを定量的に求めることができる。
【0024】
このフィルタ処理を行うためには、処理対象となる信号のサンプリング周期が一定である必要がある。しかし、測定対象となるデータ信号は一般的にNRZ形式であり、同一符号が連続する期間はレベル遷移が発生しない。したがって、同一符号が連続する期間内では、各ビットの位相変動量を得ることができず、フィルタに与えるデータのサンプリング周期がデータ符号によって変化してしまい、正しくフィルタ処理を行うことができない。
【0025】
そこで、本発明では、図1のフローチャートに示しているように、被測定データ信号に対する平均化を行ってノイズ性ジッタを抑圧したデータ信号の波形情報を、データ信号のビットレートに対応した周波数のクロック信号の周期より短い一定間隔の時系列データで生成し(S1)、その波形情報に対して広帯域なクロック再生処理(S2)を行って、パターン依存性ジッタを含むクロック信号を再生する。
【0026】
そして、再生されたクロック信号を位相検波して各ビット位置の位相変動量を求め(S3)、その位相変動量に対してデータ信号のビットレートによって予め規定されているジッタ測定の帯域でフィルタ処理することで、ビット毎のパターン依存性ジッタを求め(S4)、そのジッタに対する評価演算を行い、その結果を出力する(S5)。
【0027】
上記方法によれば、データ信号のビット毎の位相変動量を得ることができ、それに対するフィルタ処理によって被測定データ信号のパターン依存性ジッタを正確に測定することができる。
【0028】
図2は、上記方法に基づく本発明のジッタ測定装置20の構成を示している。
このジッタ測定装置20は、測定対象から出力される所定周波数の基準クロック信号CKと、フレーム同期信号Sと、基準クロック信号CKに基づいて生成され、所定ビット数Nで1フレームが構成される所定パターンのNRZ形式の被測定データ信号Drとを受けて、その被測定データ信号Drのパターン依存性ジッタを測定するためのものである。
【0029】
なお、ここでは、1フレームを構成するNビットのデータ列全体を被測定データ信号Drとして説明するが、例えばビットレートが約2.5Gbpsや約10GbpsのSDH/SONETフレーム中のNビットのヘッダ部分のみを被測定データ信号Drとしてもよい。
【0030】
また、基準クロック信号CKにはジッタが含まれないと仮定し、被測定データ信号Drを電気信号として説明する。
【0031】
被測定データ信号Drは、基準クロック信号CKおよびフレーム同期信号Sとともに波形データ列生成部21に入力される。
【0032】
波形データ列生成部21は、図3に示すように、時間差検出手段21a、メモリ21b、平均値算出手段21cおよびデータ列生成手段21dとによって構成されている。
【0033】
時間差検出手段21aは、図4の(a)、(b)および(c)に示すフレーム同期信号S、基準クロック信号CKおよび被測定データ信号Drを受け、基準クロック信号CKのレベルが所定方向(例えば立ち上がり方向)に遷移するタイミングを基準タイミングtとし、その基準タイミングtと被測定データ信号Drの立ち上がりおよび立ち下がりのレベル遷移タイミングtとの時間差T(i)を、所定分解能ΔTで複数のパターン周期分求めて、メモリ21bに記憶する。
【0034】
なお、ここでは、基準クロック信号CKの毎回の立ち上がり(または立ち下がり)タイミングを基準タイミングtとし、被測定データ信号Drの各レベル遷移タイミングtと、そのレベル遷移タイミングにそれぞれ対応する基準タイミングとの差を時間差T(i)として求めるものとするが、基準クロック信号CKの1フレーム内におけるある一つ(例えば最初)の立ち上がり(または立ち下がり)タイミングを基準タイミングtとし、その一つの基準タイミングtと被測定データ信号Drの各レベル遷移タイミングtとの差を時間差T(i)として求めてもよい。
【0035】
上記分解能ΔTは、基準クロック信号CKの周期に比べて格段に短くなるように設定されている。例えば、被測定データ信号Drのビットレートが10Gbpsであれば、基準クロック信号CKの周期は100ps(ピコ秒)であり、これに対し分解能ΔTは、例えば0.1ps〜1psの値となる。
【0036】
ただし、この分解能ΔTに対応した周波数1000〜10000GHzのクロックで時間差を計ることは現実的ではないので、フレーム同期信号Sをトリガ信号とし、被測定データ信号Drおよび基準クロック信号CKを、オフセット時間ΔTの等価時間サンプリング方式でサンプリングして、それらの波形情報を分解能ΔTで求め、求めた基準クロック信号の波形の立ち上がりタイミング(基準タイミング)と被測定データ信号波形の各レベル遷移タイミングとの時間差を複数のパターン周期分求めてメモリ21bに記憶する。
【0037】
平均値算出手段21cは、メモリ21bに記憶された時間差の値をパターン周期内の各レベル遷移タイミングについてそれぞれ平均化する。
【0038】
例えば、Nビットの被測定データ信号が1パターン周期内にP回レベル遷移するとし、mパターン周期分の時間差を得る場合、各パターン周期のレベル遷移タイミングの時間差T1(1)〜T1(P)、T2(1)〜T2(P)、…、Tm(1)〜Tm(P)の平均値(以下、時間差平均値という)Ta1〜TaPを次の演算でそれぞれ算出する。
【0039】
Ta1={T1(1)+T2(1)+……+Tm(1)}/m
Ta2={T1(2)+T2(2)+……+Tm(2)}/m
…………
TaP={T1(P)+T2(P)+……+Tm(P)}/m
【0040】
これらの時間差平均値Ta1〜TaPは、データ列生成手段21dに出力される。
データ列生成手段21dは、図5に示すように、予め指定されている被測定データ信号のパターンと同一パターンで、各基準タイミングt(または前記した一つの基準タイミング)に対して時間差平均値Ta1〜TaPでレベル遷移するデータ列x(k)を前記ΔTの間隔で生成する。
【0041】
この波形データは、レベル遷移タイミングを境界にして値0から値1または値1から値0に切り替わるデータ列であり、境界点の値のみ例えば0.5に設定する。
【0042】
このようにしてノイズ性ジッタによる位相変動分が抑圧され、パターン依存性ジッタによる位相変動分のみを有する波形データ列x(k)は、クロック再生手段22に出力される。
【0043】
クロック再生手段22は、波形データ列生成部21から出力される波形データ列に対して広帯域なクロック再生処理を行い、パターン依存性ジッタを含むクロック信号CKjを再生する。
【0044】
このクロック再生手段22は、例えば図6に示すように、波形データ列x(k)を遅延器22aにより基準クロック信号CKの1/2周期分遅延し、その遅延した波形データ列x(k)′と元の波形データ列x(k)とを排他的論理和(EX−OR)回路22bに入力して、両者が不一致のとき1、一致しているとき0のデータに変換させる。
【0045】
この処理により、例えばNRZ形式の1のビットデータは1、0のデータ、即ち、クロック信号の周波数と等しい周波数の信号に変換されることになる。
【0046】
排他的論理和回路22bの出力y(k)はフィルタ22cに入力される。フィルタ22cは、信号y(k)に対して、中心周波数がクロック周波数、通過帯域幅がジッタ測定帯域の例えば4倍程度のフィルタリング処理を行う。例えば、クロック周波数10GHz、ジッタ測定帯域の上限が80MHzであれば、10GHz±320MHzの帯域制限処理を行う。
【0047】
フィルタ22cからほぼ正弦波状に出力される信号y(k)′は、波形整形回路22dにより矩形波のクロック信号CKjに整形されて、位相検波手段23に出力される。
【0048】
なお、クロック再生手段22は、上記のようにデータ信号を2逓倍してフィルタリングする方式だけでなく、データ信号に位相を合わせるようにVCOの周波数および位相をフィードバック制御するPLL回路で構成してもよい。
【0049】
位相検波手段23は、クロック再生手段22から出力されるクロック信号CKjの位相変動を検出する。
【0050】
この検出は、1パターン周期分のクロック信号CKjの立ち上がり(立ち下がりでもよい)の各タイミングと、被測定データ信号Drのビットレートに対応した基準タイミングとの時間差j(1)〜j(N)を検出する。
【0051】
帯域制限手段24は、位相検波手段23によって得られた時間差データj(1)〜j(N)に対して、ビットレートによって規定されている帯域制限処理を行い、ジッタ成分Jを抽出する。
【0052】
この帯域制限手段24は、例えばITU−T O.172勧告等で規定されているジッタ測定帯域を与えるデジタル構成のHPFおよびLPFにより構成されており、前記したSDH/SONETで、ビットレートが約2.5Gbpsの場合、5kHz〜20MHz、12kHz〜20MHz、1MHz〜20MHzのいずれかの帯域制限処理を行う。また、ビットレートが約10Gbpsの場合、20kHz〜80MHz、50kHz〜80MHz、4MHz〜80MHzのいずれかの帯域制限処理を行う。
【0053】
この帯域制限手段24に入力される時間差データは、クロック周期毎に一定間隔で得られるもので、欠落がないので、上記した規定の帯域制限処理を正しく行うことができ、正確なジッタを検出することができる。
【0054】
なお、上記したクロック再生手段22によるクロック再生処理、位相検波手段23による位相変動検出処理および帯域制限手段24による帯域制限処理の高速な処理は、ΔT間隔のデータ列x(k)に対する演算処理(ソフトウェア処理)で等価的に実現される。
【0055】
この帯域制限処理によって得られたパターン依存性ジッタは、SDH/SONET等で規定されているジッタ測定帯域における評価が可能である。
【0056】
評価演算部25は、例えば、帯域制限手段24から出力されるジッタ信号列Jの負ピーク値から正のピーク値までの大きさ(p−p値)あるいは実効値(rms)の値を計算して、これをパターン依存性ジッタの測定結果Jdpとして図示しない表示部やプリンタあるいは外部装置に出力する。
【0057】
なお、この測定結果は、上記のように位相差を時間の単位で表したもののほかに、UI(ユニットインターバル)の単位に換算して出力してもよい。
【0058】
このように実施形態のジッタ測定装置20および測定方法では、被測定データ信号に対する平均化処理によりノイズ性ジッタ成分が抑圧されたデータ信号の波形情報を生成し、この波形に対して広帯域なクロック再生処理を行い、その再生されたクロック信号の位相検波処理をすることで、被測定データ信号のパターン周期内の全ビットについて位相変化のデータを求め、その位相変化情報に対して規定の帯域制限処理を行うことで、パターン依存性ジッタを測定している。
【0059】
このため、従来のようなアイパターンの観測では不可能であったパターン依存性ジッタのみを正確に測定することができる。
【0060】
また、帯域制限処理されたパターン依存性ジッタは、被測定データ信号のパターン周期内の全ビット位置について得られるので、ビット位置とパターン依存性ジッタとの関連を容易に把握できる。
【0061】
前記実施形態の波形データ列生成部21は、ノイズ性ジッタが抑圧されたデータ信号の波形を生成するために、ジッタのない基準クロック信号CKの例えば立ち上がりと、被測定データ信号の各レベル遷移タイミングとの時間差を求めてこれを複数のパターン周期分平均化し、その平均化された時間差でレベル遷移するデータ信号列を擬似的に生成していたが、波形データ列生成部21が、被測定データ信号の波形情報を複数のパターン周期分所得して、その波形全体、即ち時間軸と振幅軸を含めて平均化処理を行うことで、ノイズ性ジッタが抑圧されたデータ信号の波形を生成し、これをクロック再生手段22に出力してもよい。
【0062】
また、前記した波形データ列生成部21の構成要件のうち、少なくとも時間差検出手段21a、メモリ21bおよび平均値算出手段21cは、既成のデジタルサンプリングオシロスコープのサンプリングおよび演算機能を用いて構成することが可能である。
【0063】
また、上記したように波形情報全体を平均化することで、ノイズ性ジッタが抑圧されたデータ信号の波形を生成する場合には、デジタルサンプリングオシロスコープの波形平均化モードを用いることでより簡易にデータを取得することができる。
【0064】
また、前記説明では、入力信号が電気信号の場合で説明したが、光信号の場合、光電変換器によって電気信号に変換して入力すればよく、また、前記したように、デジタルサンプリングオシロスコープには、光信号に対し高速な光サンプリングパルスで等価時間サンプリングを行うものが実現されており、そのような光対応のデジタルサンプリングオシロスコープを用いることで、上記ジッタ測定装置を容易に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のジッタ測定方法の手順を示すフローチャート
【図2】本発明の実施形態の構成を示す図
【図3】実施形態の要部の構成例を示す図
【図4】実施形態の要部の動作を説明するための図
【図5】実施形態の要部の動作を説明するための図
【図6】実施形態の要部の構成例を示す図
【図7】従来のジッタ測定方法を説明するための図
【符号の説明】
【0066】
20……ジッタ測定装置、21……波形データ列生成部、21a……時間差検出手段、21b……メモリ、21c……平均値算出手段、21d……データ列生成手段、22……クロック再生手段、23……位相検波手段、24……帯域制限手段、25……評価演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定データ信号からデータ信号のパターンに依存しないノイズ性ジッタ成分を抑圧した信号の波形情報を間隔一定の時系列データにより生成する段階(S1)と、
前記生成された波形情報からパターン依存性ジッタを含むクロック信号を再生する段階(S2)と、
前記再生されたクロック信号の位相変動成分を検出する段階(S3)と、
前記検出された位相変動成分に対して所定の帯域制限処理を行い、前記パターン依存性ジッタ成分を抽出する段階(S4)とを含むジッタ測定方法。
【請求項2】
被測定データ信号からデータ信号のパターンに依存しないノイズ性ジッタ成分を抑圧した信号の波形情報を間隔一定の時系列データで生成する波形データ列生成部(21)と、
前記波形データ列生成部によって生成された波形情報からパターン依存性ジッタを含むクロック信号を再生するクロック再生手段(22)と、
前記クロック再生手段によって再生されたクロック信号の位相変動成分を検出する位相検波手段(23)と、
前記位相検波手段の出力信号に対して所定の帯域制限処理を行い、前記パターン依存性ジッタ成分を抽出する帯域制限手段(24)と、
前記帯域制限手段によって抽出された前記パターン依存性ジッタ成分に対する評価演算を行う評価演算部(25)とを備えたジッタ測定装置。
【請求項3】
前記波形データ列生成部は、
前記被測定データ信号と、該被測定データ信号のビットレートに対応した周波数を有しジッタを含まない基準クロック信号とを受け、該基準クロック信号のレベルが所定方向に遷移するタイミングを基準タイミングとし、該基準タイミングに対する前記被測定データ信号のレベル遷移タイミングの時間差を、前記被測定データ信号の複数のパターン周期分求める時間差検出手段(21a)と、
前記時間差検出手段によって得られた時間差に基づいて、前記被測定データ信号のパターン周期内におけるレベル遷移タイミング毎の前記時間差の平均値をそれぞれ求める平均値算出手段(21c)と、
前記被測定データ信号と同一パターンで、前記各基準タイミングに対して前記平均値算出手段によって得られた前記時間差の平均値をもってレベル遷移する信号の波形情報を、一定間隔の時系列データとして生成するデータ列生成手段(21d)とを有していることを特徴とする請求項2記載のジッタ測定装置。
【請求項4】
前記波形データ列生成部は、
前記被測定データ信号の波形情報を、複数のパターン周期分取得して平均化し、前記ノイズ性ジッタ成分を抑圧した信号の波形情報を生成することを特徴とする請求項2記載のジッタ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−3255(P2006−3255A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180874(P2004−180874)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)