説明

ジャガード綜絖

【課題】品質を低下させずにコスト効率の良いジャガード綜絖を製造する方法を提供する。
【解決手段】織り綜絖1は、糸挿通孔6によって形成される鳩目5を有し、中心開口7を取り囲む環状要素である。糸挿通孔6の外周には周囲溝が設けられ、糸挿通孔6を収容するために、綜絖本体の部分9が平坦化される。部分9から離間延出されているシャンク脚部10、11は、最初は、円形断面形状を有し、遷移部9aへ向かって徐々に平坦化され、交線VII−VIIのシャンク脚部10の円形断面はシャンク脚部11の円形断面に等しい。糸挿通孔6からやや離間されて開始される部分9の円形断面は変化し、平坦化された部分を形成する。その上下側面長手方向に溝状の凹み12、13が形成されると、断面IV−IVに沿った略8の字形状となるが、この断面積の合計は、シャンク11又は10の断面積に等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャガード(Jacquard)織機に使用するためのジャガードヘルド(綜絖)に関する。
【0002】
特許文献1によれば、ジャガード綜絖は、例えば、最初に二本の隣接しているワイヤが半田付けによって接合されるように製造される。次に、半田付けによって接合されたワイヤは、ある領域において再び分離され、わずかに屈曲されて離間される。次に、このように形成された開口へ糸挿通孔(マイヨン)が半田付けされ、この挿通孔が鳩目を形成する。
【0003】
同様の手法が特許文献2に開示されている。やはり、最初に二本のワイヤが使用され、錫鍍金又はニッケル鍍金されることによって強固に接合される。二本のワイヤは、ある領域において、糸挿通孔を挿入するために、分離され、屈曲されて離間される。次に、ワイヤとワイヤの間の適所に糸挿通孔を取り付けるために接着剤が使用される。
【0004】
この方法によって、糸挿通孔を適所に半田付けする必要はなくなったが、二連ワイヤを前もって製造する必要とあるという欠点があった。
【0005】
この不利な点を克服するために、例えば、特許文献3によれば、開始材料として、二連ワイヤの代わりに、プロファイル加工したワイヤを使用することが提案されている。プロファイル加工ワイヤは、略8の字の断面を有している。しかしながら、一般に、このようなプロファイル加工ワイヤは市場入手がなかなか難しいという欠点があった。
【0006】
かなり以前の文献である特許文献4は、円形ワイヤから作る綜絖の製造について開示している。この場合、鳩目を作成するために、塑性変形によって中心領域が平坦な形状に変換される。次に、鳩目がこの平坦化された中心領域に穿孔形成される。この手法では、鳩目における綜絖の引張り強さがかなり低下するという欠点があった。
【0007】
この欠点は、綜絖を製造するために相対的に太いワイヤを用いることを開示している、特許文献5によって改善される。ワイヤの中心領域は、最初は、変形されないままの状態だが、二本の軸方向に隣接している部分が軸方向に伸長されて、直径が減少される。次に、残っている太い中心領域は、伸長された領域の直径に対応する厚みを有するまで、平坦化される。次に、この場合も、得られた楕円形の平坦化領域へ楕円形の開口が穿孔形成され、この開口内へ糸挿通孔が配置される。
【0008】
このプロセスは非常に冗長である。ワイヤの伸長作業は大量生産には全く向いてないという欠点があった。
【0009】
特許文献6には、他の方法が開示されている。この文献は、最初にリボンから開始し、リボンに細い開口を形成し、糸挿通孔を取り付けるためにその開口幅を広げる方法を提案している。糸挿通孔の開始時の厚みが約0.35mmである場合、このような綜絖、相対的に大きなリボン断面を有している。結果的に、綜絖の重量がかなり増えるため、これは、綜絖の動作がバネによって制御されることを考慮しても好ましくない。
【0010】
特許文献7は、上記の公開内容を変えずに補足し、糸挿通孔の締結オプションの改善について開示している。
【0011】
特許文献8は、開始材料として、平坦なリボンの代わりに、円形ワイヤの使用を提案しており、円形ワイヤは、最初の製造工程において、平らに圧延される。この結果、先丸側方エッジが、ローラ(圧延機)によって形成される二つの平らな側面に隣接して形成される。次に、長手方向に延びる切欠(ノッチ)が平坦化されたワイヤの平らな側面においてエンボス加工され、その切欠によって糸挿通孔を設ける際の綜絖の分割が容易になる。
【0012】
特許文献9は、全く異なる手法を取っている。この文献に示されている綜絖の製造は、平坦化された領域が形成される円形ワイヤによって開始される。開口は、上記の平坦化領域においてエンボス加工され、それ以外の二本の平らな脚部によって画定される。開口は、挿通される鳩目より細く形成されている。所望される幅になるように、それ以外の脚部の部分は、長手方向に捻じられ、鳩目に対して傾斜した断面を有している。これによって得られる非対称形は、織布作業中の綜絖を通って摺れる糸を考えた場合は特に不都合であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】ドイツ特許第80945号
【特許文献2】欧州特許第1015675B1号
【特許文献3】欧州特許第1252944号
【特許文献4】米国特許出願第569149A号
【特許文献5】ドイツ特許第121105号
【特許文献6】欧州特許第0947620号
【特許文献7】欧州特許第1767676号
【特許文献8】ドイツ特許第1950903号
【特許文献9】特開昭57−117646号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、品質を低下させずにコスト効率のよい方法で製造され得るジャガード綜絖を提供することである。上述された従来の技術の欠点はできるだけ回避される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、請求項1に記載のジャガード綜絖によって達成される。
【0016】
本発明のジャガード綜絖は、円形材料からなる綜絖本体を含む。綜絖本体は、二本の脚部によって画定される幅広の開口を有する平坦化された部分を設けている。同時に、この二つの脚部の合計断面積は、綜絖本体の円形断面積に等しい。平坦化された部分及び鳩目領域における綜絖の引張り強さは、鳩目から離間された領域にあっても略同じである。更に、綜絖を製造する為に使用される開始材料は、コスト効率の良い半完成品として入手可能な円形ワイヤが好ましい。調整が困難な、例えば、ワイヤが局所的に伸長するなどの製造上の欠陥を生じるような製造工程は回避される。更に、(円形ワイヤの)綜絖は細く形成されるので、綜絖間を通過する縦糸が原因で擦り切れることが殆どなくなり、織機の使用寿命が長くなる。従って、特に大変な作業とされるジャガード綜絖の交換頻度が最小限に削減される。
【0017】
平坦なリボン綜絖又は二重ワイヤ綜絖に比較して幅が細い本発明のジャガード綜絖によって、比較的に織密度が高いジャガード織布の製造が可能になる。
【0018】
本発明のジャガード綜絖は、好ましくは、中心平面に対して対称形であり、鳩目の開口方向は、中心平面に対して垂直である。特に鳩目におけるジャガード綜絖の前と後ろは同じである。従って、穏やかな糸渡しが可能となる。
【0019】
更に、本発明の綜絖は、それらの重量に応じて最適化され得る。材料の長手方向の断面が略一定であること、そして、これによって得られる一定の引張り強さによって、織り綜絖は、材料の使用量を最少に抑えることができ、その全長が製造され得る。これは、ジャガード織機における様々な条件を考慮すれば、大変有利である。基本的に、ジャガード織機では、下抒口(したひぐち)が形成される。つまり、綜絖は、抒口の下方でバネ又は重りによって支持され、それぞれの通糸の引張り力によって抒口の上方へ移動する。綜絖が軽量であればあるほど、必要とされる力が少なくて済む。また、これに従って、抵抗力も小さくなる。即ち、同様に、綜絖を下方へ引く重り又はバネの重量が軽減され得る。これによって、ジャガード織機の仕事率が削減され得る。
【0020】
本発明の綜絖は、その製造中に全く材料を無駄にしない又はわずかに浪費するにすぎず、このことは、綜絖に、高品質の鉄鋼、ステンレス鋼、或いは、高級スチールが使用された場合は、殊更、重要な利点となる。開口を取り囲む脚部の断面は、(これは記載する価値があると思うが)開始材料の断面と材料摩擦を起こさずに、塑性変形によって作成される。
【0021】
本発明の綜絖は、最初は、円形ワイヤ、即ち、金属製ワイヤを用いて製造を開始する。この綜絖は、プラスチック材料、例えば、カーボンファイバ又はガラス繊維複合材料から製造され得る。プラスチック材料のオプションを考えた場合、脚部断面の面積の合計は、円形断面の面積に等しい。製造方法によっては、脚部断面の面積の合計が、円形断面の面積とはわずかに異なってもよい。これにより、脚部断面の機械生産中、本発明の綜絖の長手方向に材料流れが発生しても、断面の比率に殆ど影響を与えない程度とすることができる。従って、二つの脚部を合計した断面積は、円形の綜絖本体の断面積に略等しい。
【0022】
好ましくは、糸挿通孔は、二つの脚部によって画定される開口内で保持される。好ましくは、上記の挿通孔は接着される。半田付け又は溶接によって適所に固定させることも可能である。好ましくは、糸挿通孔はその外周に周囲溝を有している。綜絖の脚部は、互いから屈曲離間され、この溝に嵌入されて、糸挿通孔を保持する。糸挿通孔の外郭が脚部の断面にうまく適合された場合、即ち、これらが互いにぴったり合った場合、糸挿通孔の外郭と脚部の間に正のロックが形成されるので、例えば、半田付けや接着による糸挿通孔の締結は不要となる。
【0023】
綜絖の製造において、円形断面を有する細い円形ワイヤが使用される場合、好ましくは、糸挿通孔の大きさを始点として使用すべく、ワイヤ断面が前もって指定される。糸挿通孔の厚さによって、糸挿通孔の外側へ延在する溝に嵌合する二本のワイヤ型脚部の断面が求められる。これらの略円形の脚部の断面の合計は、通常、0.3〜0.4mmの直径を有し、ワイヤの断面、例えば、0.42〜0.57mmから得られる。脚部には、約0.35mmの直径が付与されるので、好ましくは、直径0.5mmのワイヤが使用される。これは、現在、最高使用頻度の糸挿通孔に適合する寸法に等しい。
【0024】
本発明の綜絖は、例えば、円形ワイヤ上に平坦な領域を形成するように、エンボス成形モールドを使用することによって作成され、この平坦領域は、二つの平らな側面の各々に、長手方向の溝を有している。好ましくは、二つの長手方向の溝は、整合する形を有している。これによって、円形ワイヤの作用される場所で8の字の断面形状が作成される。ここで、二つの脚部は、分離され、引き離される。開口が形成され、開口に糸挿通孔が挿入される。次に、互いから分離された二本の脚部は、少なくとも略円形の断面を有し、これによって、本発明の断面比が維持される。このように達成される形態によって、糸が綜絖の外側を移動することを考慮しても、糸を安定して取り扱うことに関するあらゆる要求を満足させることができる。これと同時に、脚部の断面が糸挿通孔の外溝又は溝へ嵌入するので、糸挿通孔の固定が容易になる。
【0025】
二本の脚部の外部形状は好ましくは丸いが、互いに対面するフランクが、開口内へ突出するリブを有しいてもよく、このリブが糸挿通孔の溝に極めて良好に嵌合されるので、挿通孔が確実に保持される。
【0026】
脚部が離間されている場合、脚部間の細い帯板が破れ、綜絖の長手方向にも裂け目が生じる。溝の端部に又は端部の近傍には横穴が形成される。この横穴は、脚部が離間される時、裂け止め(リップストップ)として作用する。
【0027】
接着技術を用いて糸挿通孔を締結することによって、殆ど問題なく半田付けされ得る材料、例えば、ステンレス鋼が、綜絖のための開始材料として使用され得る。更に、締結材料として使用される接着剤は、対応する半田よりも綜絖への加重が少なくて済む。
【0028】
好ましくは、平坦な断面と丸い断面の間の遷移が、個別の断面が織り綜絖の軸方向に沿って連続的に変化する連続遷移ゾーンによって達成される。これによって、好ましくは、急激な又は階段状の断面変化が回避される。
【0029】
好ましい実施の形態によるジャガード織り綜絖を考慮した場合、綜絖本体は、アイレットを有する二つの端部の一端にのみ備えているが、好ましくは、他端には、バネ、例えば、引張りコイルバネを締結するための係止要素を備えている。好ましくは、アイレットはヘアピン型のワイヤループによって形成され、これによって、ワイヤループのワイヤ部分が、一つ以上の溶接位置において綜絖本体に溶接され、溶接シームによって綜絖本体に接続されるか、又は、他の手段によって綜絖本体に固着される。好ましくは、ワイヤ脚部と綜絖本体の部分はそれぞれ、溶接位置間などの接続領域において互いに並列に接触して配置されている。
【0030】
好ましくは、引張りバネの係止要素は、材料ロック式及び正ロック式に綜絖本体の適切にプロファイルされた端部に固着され得るプラスチック部品であり、その端部は、例えば、屈曲されることによって波形状になっている。例えば、係止要素は、糸が引張りバネの重なりを収容するために好適なネジドッグを有している。
【0031】
本発明の有利となる実施の形態の更なる詳細は、明細書の記載内容の主題、図面、又は請求の範囲である。記載内容は、本発明の主要な態様及びさまざまな状況に限定されている。図面は、補足的に参考にしていただくために添付され、以下に簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明によるジャガード織り綜絖を概略的に示す図である
【図2】図1のジャガード織り綜絖の詳細を示す斜視図である
【図3】図2のジャガード織り綜絖の様々な線に沿った断面図である。
【図4】図2のジャガード織り綜絖の様々な線に沿った断面図である。
【図5】図2のジャガード織り綜絖の様々な線に沿った断面図である。
【図6】図2のジャガード織り綜絖の様々な線に沿った断面図である。
【図7】図2のジャガード織り綜絖の様々な線に沿った断面図である。
【図8】図2のジャガード織り綜絖を示す側面図である。
【図9】図2のジャガード織り綜絖を示す正面図である。
【図10】本発明の織り綜絖の更なる実施の形態を示す斜視図である。
【図11】本発明の織り綜絖の更なる実施の形態を示す斜視図である。
【図12】本発明の好ましい実施の形態によるジャガード織り綜絖を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、ジャガード織機に使用されるジャガードヘルド(綜絖)1を示す。綜絖は、例えば、その両端にアイレット3、4の形態の締結手段を設けている細長い綜絖本体2を含む。例えば、綜絖本体2は、ステンレス鋼ワイヤなどのワイヤから成る。しかしながら、綜絖本体2は、プラスチック材料などの他の好適な材料を含んでいてよい。
【0034】
図2は、織り綜絖1を詳細に示している。綜絖は、好ましくは糸挿通孔6によって形成される鳩目5を有している。このような糸挿通孔6は、マイヨン(長方形の輪)とも呼ばれる。糸挿通孔6は、硬鋼、セラミック、超硬合金、又は同様の材料から形成され、中心開口7を取り囲む環状要素である。図3から分かるように、糸挿通孔6の外周には周囲溝又は溝8が設けられている。
【0035】
糸挿通孔6を収容するために、綜絖本体の部分9が平坦化されている。図2は、部分9のみを示している。部分9から延出されているシャンク脚部10、11の断面形状は、最初は、円形であり、徐々に中間部又は遷移部9aへ向かって徐々に平坦化される。図7は、シャンク脚部11の円形断面に等しいシャンク脚部10の円形断面を示している。シャンク脚部10又は11の円形断面は、図2の交線VII−VIIにおいて測定され、シャンクの脚部10又は11によって形成されるジャガード綜絖のシャンク20にわたって変化しない断面積A1を含む。
【0036】
部分9は、糸挿通孔6からやや離間された位置から始まる。ここで、部分9の円形断面は変化して平坦化された部分を形成する。図2に示された交線VI−VIに沿った断面は、図6に示す断面形状を有する。この断面は、断面積A2を画定し、好ましくは、断面積A2は断面積A1に等しい。
【0037】
綜絖本体は、糸挿通孔6に近づくにつれてもっと平坦化される。例えば、図5のポイントVーVに沿った断面形状は、断面積A3を有し、断面積A3は、A2、A1に等しい。明らかなように、図5の平坦化された断面は、その上下側面に溝状の凹み12、13を有し、これにより、凹みの深さは長手方向に沿って徐々に大きくなる。この状態は、図4の断面IV−IVによって示されている。この例において、断面は略8角形(8の字形)であってよい。全体として、断面は、断面積A4を有し、このでも、断面積A4は、A3、A2、A1に等しい。
【0038】
図4の断面形状を提供することによって、平坦化部分9における脚部14、15は、互いから分離され、屈曲離間され得る。この場合、凹み12、13を互いから分離させる細い帯板が二つに割れる。このように、二つの脚部14、15は、糸挿通孔6が保持され得る開口16を画定する。状態が図3に示されている。二つの脚部14、15の各々は、好ましくは、大きさが等しい断面積A5とA6を含む断面を有している。更に、二つの断面積A5とA6の合計は、好ましくは、A4、A3、A2、A1のいずれかの断面積に等しい。図3により判りやすく示されているように、綜絖本体の両側の平坦部は、同じ形状を有している。従って、鳩目において織り綜絖1は対称面Eに関して対称であり、この平面は、二つの脚部14、15とシャンク脚部10、11を介して中心に延出している。
【0039】
開口16に隣接して、平坦化部分9に渡って、両シャンク脚部10、11に向かって、延在している溝状の凹み12、13(図8)が形成されている。各凹みの一端に、又はこれらの凹みから一定距離離間されて、横穴12a、12bが形成されており、これらの横穴は、二つの凹み12、13と交わり、鳩目と平行に配置されている。好ましくは、二つの横穴12aと12bの各直径は、凹み12、13の各幅より大きい。横穴12aと12bは、脚部14、15が互いから離間されるときに裂け止めとして作用する。次に、図1又は図9からよく分かるように、横穴12a及び12bは、得られた切込みの端部を表し、脚部14、15が屈曲離間されている間、引き裂きがそれ以上進行することを防止する。
【0040】
織り綜絖1のデザインをより詳細に説明するために、図8及び図9において後者(
織り綜絖1)が再度示されている。図から分かるように、綜絖本体2は、部分9が平坦化され、長手方向に延在している溝状の凹み12、13を備えた、円形ワイヤから形付けられている。この場合、上側の凹み12は下側の凹み13と平行に形成されている。凹み12、13がどこに形成されようと、平坦化部分は、図4に示した二重ワイヤ断面を有している。二重ワイヤ綜絖のように、開口16を形成するために、断面が二つの脚部14、15に分割され得る。糸挿通孔6が脚部14と脚部15の間に挟持される場合、糸挿通孔6は、接着剤によって固着されて、綜絖1の製造を終了する。
【0041】
図10及び図11は、綜絖1の変更された実施の形態を示している。上記の実施の形態と同一部分には同様の参照番号が付され、同様に構成されている。糸挿通孔6が尖端部を有する矩形の輪として形成されている。この輪の二つの側部の溝8a及び8bが、互いに傾斜付けされた側面を有する。即ち、溝8a及び8bが三角形の断面を有する。図10の実施の形態によれば、脚部14、15は、それぞれ、(断面積)A5、A6を含む円形断面を有している。断面積A5と断面積A6の合計は、やはり、シャンク軸10、11のそれぞれの断面積A1に等しい。接着剤17は、糸挿通孔6を固着させ、開口16をロックする。更に、接着剤は、溝8内へ浸透し、糸挿通孔6に脚部14、15を保持する。
【0042】
図11に示されているように、脚部14、15は、尖設リブ18、19の外側において丸みを帯びかつ尖設リブ18、19において終了する断面を有していてもよい。この場合も、尖設リブ18、19の断面積A5と断面積A6の合計が断面積A1に等しい。このこと以外は、上記の実施の形態と同様に構成されている。
【0043】
図12は、ジャガード織り綜絖1aの好ましい実施の形態を示しており、この織り綜絖の綜絖本体2は、金属ワイヤから作られている。鳩目5に関しては、上記の実施の形態と同一部分には同様の参照番号が付され、同様に構成されている。しかしながら、図12に示されているように、中間部分9aが省略されている。マイヨン6を両間で保持する分岐脚部14、15において、円形シャンク脚部10、11が直接終了する。
【0044】
綜絖本体1には、ワイヤ部分31がヘアピン式に約180°屈曲されるように作成されるアイレット3が設けられている。このワイヤ部分31の端部は、ポイント21、22の少なくともいずれか、好ましくは両方において、綜絖本体2に、具体的には、シャンク脚部11に接続されている。溶接継手は、ポイント21、22に配置されてよい。二つのポイント21と22の間には、ワイヤ部分31の端部がシャンク脚部11と平行に延在するように配置され得る。
【0045】
好ましくは、締結要素23は、綜絖本体2の反対端上に設けられている。締結要素は、例えば、シャンク脚部10の端部に接続された射出成形されたプラスチック部分である。その端部において、シャンク脚部10には、一つ以上の屈曲部24、25、26が設けられており、これによって、シャンク脚部はジグザグ状又は波形状に屈曲される。締結要素23は、例えば、射出成形部品であってもよいし、円筒形部分27がこの領域に外接してもよい。このようにして、材料ロック及び/または正ロック接続が達成され得る。
【0046】
図12から明確であるように、締結要素27は、例えば、引張りばね29を係止するためのネジ30を備えた噛合い(ドッグ)延長部28を有してよい。好ましくは、延長部28は、部分27より小さな直径を有し、ドッグ型延長部28と同心的に位置合わせされる。好ましくは、ネジ30は、円錐ネジである。好ましくは、引張りネジ29は、ばねワイヤの引張りコイルバネである。
【0047】
本発明による綜絖は、好ましくは、中心部分9を含む円形ワイヤによって作成されている。この部分9は、細い帯板によって互いに接続された二つの脚部によって画定される8の字形の断面を有している。この場合、綜絖本体2は、糸挿通孔6を収容するために二つに分割され得る。糸挿通孔6は、好ましくは、接着剤を使用することによって、得られる開口16内に固着される。
【符号の説明】
【0048】
1、1a: 綜絖、ジャガード綜絖
2: 綜絖本体
3、4: アイレット
5: 鳩目
6: 糸挿通孔/メイヨン
7: 開口
8、8a、8b: 長溝、溝
9: 部分
9a: 中間部分
10、11: シャンク脚部
12、13: 凹み
12a、12b: 横穴
14、15: 脚部
A1〜A6: 断面積
E: 左右対称中心平面
16: 開口
17: 接着剤
18、19: リブ
20: シャンク
21、22: ポイント
23: 締結要素
24〜26: 屈曲部
27: 締結要素の円筒形部分
28: ドッグ型延長部
29: 引張りバネ
30: ネジ
31: ワイヤ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの脚部によって画定された幅広開口(16)を備えた平坦部分(9)を有するシャンク(20)を有する円形材料から成る綜絖本体(2)を含むジャガード綜絖であって、
前記シャンク(20)の円形断面の面積A1が、前記脚部(14、15)の断面の面積A5、A6の合計に略等しい、
ジャガード綜絖。
【請求項2】
糸挿通孔(6)が、前記開口(16)内にセットされかつ固着される、請求項1に記載の綜絖。
【請求項3】
前記二つの脚部(14、15)が互いから屈曲離間されている、請求項1に記載の綜絖。
【請求項4】
前記脚部(14、15)が、それらの内側部に、前記開口(16)に向かって突出する構造を備えている、請求項1に記載の綜絖。
【請求項5】
前記脚部(14、15)が、円形断面を有している、請求項1に記載の綜絖。
【請求項6】
切り込みのない平坦化された中間部(9a)が前記幅広開口(16)に隣接している少なくとも一つの軸方向端部上に設けられている、請求項1に記載の綜絖。
【請求項7】
少なくとも一つの裂け止め手段(12a、12b)が、好ましくは少なくとも一つの横穴の形状において、前記開口(16)に隣接して配置されている、請求項1に記載の綜絖。
【請求項8】
前記裂け止め手段(12a、12b)が、少なくとも一つの横穴の形状に構成されている、請求項7に記載の綜絖。
【請求項9】
連続的な段無し遷移部(9a)のそれぞれが、前記平坦部分(9)と前記シャンク脚部(10、11)の間に設けられている、請求項1に記載の綜絖。
【請求項10】
前記円形材料は、金属又はプラスチック製の円形ワイヤである、請求項1に記載の綜絖。
【請求項11】
前記開口(16)が塑性のノンカット変形によって作成される、請求項1に記載の綜絖。
【請求項12】
前記綜絖本体(2)が、少なくとも一端に屈曲ワイヤ部分(31)によって形成されるアイレット(3)を有し、前記ワイヤ部分が少なくとも一つのポイント(21、22)において前記綜絖本体(2)に溶接される、請求項1に記載の綜絖。
【請求項13】
前記綜絖本体(2)の少なくとも一端が、少なくとも一つの屈曲部(24、25、26)を備えている、請求項1に記載の綜絖。
【請求項14】
引張りバネ(29)を締結するための締結要素(23)が、前記屈曲部(24、25、26)が設けられている前記綜絖本体(2)の端部に配置されている、請求項13に記載の綜絖。
【請求項15】
前記締結要素(23)が、前記引張りバネ(29)を締結するためのネジ(30)を有する軸方向ドッグ型延長部(28)を有している、請求項14に記載の綜絖。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−77588(P2010−77588A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−218995(P2009−218995)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(304012943)グローツ−ベッカート コマンディトゲゼルシャフト (46)