説明

ジャンパ連結器

【課題】連結作業時のヒューマンエラーが発生せず、ジャンパ栓受とジャンパ栓との嵌め合い具合を維持しながら、簡単な作業で実施可能なジャンパ連結器の誤接続防止策を提供する。
【解決手段】制御回路用の車体配線100および補助回路用の車体配線100を並べて搭載する車両に対し、左側に配置される制御回路用のジャンパ栓受10では、絶縁台13の左側の貫通孔13aに対して、ビス15の代わりに、先端に雄螺子部が形成された長尺状の長尺部材18を用いる。なお、右側に配置される補助回路用のジャンパ栓受10については、制御回路用のジャンパ栓受10と左右対称に構成する。また、制御回路用のジャンパ栓20においては、絶縁台23の右側の貫通孔23bに対して、ビス25の代わりに、先端に雄螺子部が形成された長尺状の長尺部材28を用いる。なお、補助回路用のジャンパ栓20については、制御回路用のジャンパ栓20と左右対称に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後方向に連なる鉄道車両の車体配線同士を連結するジャンパ連結器に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両においては、車体間に渡る伝送情報量が多く存在し、現在はこの情報を有線で伝送している。なお、メンテナンス等で車体間を分離または連結する必要があるため、前後に連なる鉄道車両の車体配線同士をジャンパ連結器を用いて連結している。
【0003】
この種のジャンパ連結器は、各鉄道車両の車体配線の端部に取り付けられるジャンパ栓受と、両端それぞれにジャンパ栓を備えたジャンパケーブルと、からなり、ジャンパケーブルの両端それぞれのジャンパ栓を、鉄道車両の車体配線に取り付けられたジャンパ栓受に接続することで、前後に連なる鉄道車両の車体配線同士を連結するようになっている。
【0004】
なお、ジャンパ連結器として、制御回路用のジャンパ連結器および補助回路用のジャンパ連結器を並べて搭載する鉄道車両もある。
しかしながら、制御回路用のジャンパ連結器と補助回路用のジャンパ連結器とが同一構造を有する場合には、連結作業時のヒューマンエラーによって誤って接続するおそれがあり、誤接続防止策が望まれている。
【0005】
なお、制御回路用のジャンパ連結器と補助回路用のジャンパ連結器とで色分けをする方法も考えられるが、作業者への注意喚起にはなるが誤接続を物理的に防止することはできず、より確実な誤接続防止策が望ましい。
【0006】
そこで、ジャンパ栓受およびジャンパ栓に誤接続防止用の凹部および凸部を設けて誤接続を防止することが考えられる。
例えば、特許文献1には、複数の同軸接触部(27,37,47,57)を接触子配設絶縁部材(23,33,44,54)に少なくとも一列に配列した小型コネクタ(20,30,40,50)において、接触子配設絶縁部材の相手コネクタとの嵌合側で、同軸接触部を取り巻き且つそれら複数の同軸接触部に関して非対称な位置に誤挿入防止用の凸部(44B,54B)または凹部(24B,34B)を設けた点が開示されており、この技術をジャンパ連結器に適用することで実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平4−123089号公報(第2頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の技術を既存のジャンパ連結器に適用する場合には、ジャンパ栓受とジャンパ栓との嵌め合い具合を維持しながら凹部および凸部を追加で設けることは困難であった。また、このような改造は、ジャンパ栓受を鉄道車両から取り外して製造メーカにて行う必要があり、ジャンパ栓受の改造中はその車両が使用できず、車両運用上に影響が生じる。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、連結作業時のヒューマンエラーが発生せず、ジャンパ栓受とジャンパ栓との嵌め合い具合を維持しながら、簡単な作業で実施可能なジャンパ連結器の誤接続防止策を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係るジャンパ連結器は、前後方向に連なる鉄道車両の車体配線同士を連結するジャンパ連結器であって、前記車体配線の端部に取り付けられるジャンパ栓受と、前記ジャンパ栓受に接続可能なジャンパ栓が両端それぞれに設けられたジャンパケーブルと、を備える。
【0011】
前記ジャンパ栓受は、絶縁材料からなる板状であり、一方の平面に棒状の接触片が植設されるとともにその平面に垂直な貫通孔が形成される絶縁台と、前記絶縁台を前記接触片が植設される側の平面が露出される姿勢で内包し、前記貫通孔に連通するとともに内壁に雌螺子部が形成された取付孔が形成された筐体と、を備え、ビスが前記貫通孔に挿入された後に前記取付孔に取り付けられることで前記絶縁台が前記筐体に固定されている。
【0012】
一方、前記ジャンパ栓は、絶縁材料からなる板状であり、筒状の接触片が一方の平面に植設されるとともにその平面に垂直な貫通孔が形成される栓側の絶縁台と、前記絶縁台を前記接触片が植設される側の平面が露出される姿勢で内包し、前記貫通孔に連通するとともに内壁に雌螺子部が形成された取付孔が形成された筐体と、を備え、ビスが前記貫通孔に挿入された後に前記取付孔に取り付けられることで前記絶縁台が前記筐体に固定されている。
【0013】
また、前記ジャンパ栓受および前記ジャンパ栓においては、前記ジャンパ栓受側の筐体と前記ジャンパ栓側の筐体とは前記ジャンパ栓受側の絶縁台と前記ジャンパ栓側の絶縁台とを対向させながら接続可能に構成され、前記ジャンパ栓受側の接触片と前記ジャンパ栓側の接触片とは、前記ジャンパ栓受側の筐体と前記ジャンパ栓側の筐体との接続時に、前記ジャンパ栓受側の接触片が前記ジャンパ栓側の接触片に内挿されるよう配置され、前記ジャンパ栓受側の貫通孔と前記ジャンパ栓側の貫通孔とは、前記ジャンパ栓受側の筐体と前記ジャンパ栓側の筐体との接続時に互いに対向するよう配置されている。
【0014】
さらに、前記鉄道車両それぞれが複数の車体配線を備えており、前記ジャンパ栓受が前記複数の車体配線の端部それぞれに取り付けられて同数存在するとともに前記ジャンパケーブルが前記複数の車体配線と同数存在する場合には、次のように構成する。
【0015】
前記ジャンパ栓受においては、前記貫通孔と前記取付孔との組が前記複数の車体配線と同数形成され、前記ビスよりも長尺で先端に雄螺子部が形成された長尺部材が、前記複数の車体配線と同数のジャンパ栓受で互いに異なる位置の前記貫通孔に前記ビスの代わりに挿入された後に前記取付孔に取り付けられることで凸部が形成される。
【0016】
一方、前記ジャンパ栓においては、前記貫通孔と前記取付孔との組が前記複数の車体配線と同数形成され、前記長尺部材が、前記ジャンパ栓受との接続時に前記ビスが挿入された前記栓受側の貫通孔と対向する当該ジャンパ栓側の貫通孔に前記ビスの代わりに挿入された後に前記取付孔に取り付けられることで凸部が形成される。
【0017】
このように構成された本発明のジャンパ連結器によれば、互いに対応するジャンパ栓受とジャンパ栓とを連結させようとすると凸部同士が対向せずに両者の連結を邪魔しないが、互いに対応しないジャンパ栓受とジャンパ栓とを連結させようとすると凸部同士が対向して両者の連結を邪魔する。そして、このような凸部を形成するための改修作業は、ジャンパ連結器を鉄道車両から取り外さずに行うことができる。
【0018】
したがって、連結作業時のヒューマンエラーが発生せず、ジャンパ栓受とジャンパ栓との嵌め合い具合を維持しながら、簡単な作業で実施可能なジャンパ連結器の誤接続防止策を提供することができる。
【0019】
また、本発明のジャンパ連結器によれば、互いに対応しないジャンパ栓受とジャンパ栓とを連結させようとして互いに対向する凸部同士が当接した場合でも、ジャンパ栓受の絶縁台とジャンパ栓の絶縁台との間には二つの凸部が介在するので、ジャンパ栓受側の凸部と接触するジャンパ栓側の凸部の先端部分を支点としてジャンパ栓が傾いてジャンパ栓受側の接触片とジャンパ栓側の接触片とが接触するといった事態が起こりにくくなる。
【0020】
請求項2に係るジャンパ連結器は、請求項1に記載のジャンパ連結器において、前記長尺部材については、ばね座およびワッシャを介して前記取付孔に取り付けられることを特徴とする。
【0021】
このように構成された本発明のジャンパ連結器によれば、互いに対応しないジャンパ栓受とジャンパ栓とを連結させようとして互いに対向する凸部同士が当接した場合でも、ジャンパ栓受の絶縁台とジャンパ栓の絶縁台との間には二つの凸部と二つのばね座および二つのワッシャとが介在するので、ジャンパ栓受側の凸部と接触するジャンパ栓側の凸部の先端部分を支点としてジャンパ栓が傾いてジャンパ栓受側の接触片とジャンパ栓側の接触片とが接触するといった事態が更に起こりにくくなる。
【0022】
請求項3に係るジャンパ連結器は、請求項1または請求項2の何れか1項に記載のジャンパ連結器において、前記ビスについては、ばね座を介さずにワッシャを介して前記取付孔に取り付けられることを特徴とする。
【0023】
このように構成された本発明のジャンパ連結器によれば、互いに対応するジャンパ栓受とジャンパ栓とを連結させようとした場合にビスに対向する長尺部材を、ばね座の分だけ長く設定することができるので、互いに対応しないジャンパ栓受とジャンパ栓とを連結させようとして互いに対向する凸部同士が当接した場合でも、二つの凸部が介在することでジャンパ栓受の絶縁台とジャンパ栓の絶縁台とが互いに離間する距離が大きくなり、ジャンパ栓受側の凸部と接触するジャンパ栓側の凸部の先端部分を支点としてジャンパ栓が傾いてジャンパ栓受側の接触片とジャンパ栓側の接触片とが接触するといった事態が更に起こりにくくなる。
【0024】
請求項4に係るジャンパ連結器は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のジャンパ連結器において、前記長尺部材は、先端に雄螺子部が形成された長尺のビスが筒状の筒状部材に内挿された構成を有することを特徴とする。
【0025】
このように構成された本発明のジャンパ連結器によれば、簡単な構成で凸部を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は実施形態のジャンパ連結器のジャンパ栓受およびジャンパ栓を示す説明図であり、(b)は長尺部材18を示す概略構成図(断面図)である。
【図2】(a)は従来のジャンパ栓受およびジャンパ栓を示す概略説明図であり、(b)は実施形態のジャンパ栓受およびジャンパ栓を示す概略説明図である。
【図3】(a)は実施形態のジャンパ栓受とジャンパ栓とを正常に接続した様子を示す説明図であり、(b)は実施形態のジャンパ栓受とジャンパ栓とを誤って接続した様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
[1.ジャンパ連結器1の構成の説明]
図1(a)に示すように、本実施形態のジャンパ連結器1は、各鉄道車両の車体配線100の端部に取り付けられるジャンパ栓受10と、両端それぞれにジャンパ栓20を備えたジャンパケーブル30と、からなり、ジャンパケーブル30の両端それぞれのジャンパ栓20を、鉄道車両の車体配線100に取り付けられたジャンパ栓受10に接続することで、前後に連なる鉄道車両の車体配線100同士を連結するようになっている。なお、図1(a)ではジャンパケーブル30のうち一方のジャンパ栓20および電線30aの一部のみを図示している。
【0028】
以下に、ジャンパ栓受10の構成およびジャンパ栓20の構成について説明する。
[1.1.ジャンパ栓受10の構成の説明]
ジャンパ栓受10は、筐体11と、蓋12と、絶縁台13と、多数の接触片14と、を備える。
【0029】
筐体11は、前半部が円筒状であり、後半部が後方に行くに従ってその径寸法が小さくなるよう形成されている。また、筐体11の前端部には開口部11aが形成され、この開口部11aにジャンパ栓20の先端部を挿入可能である。また、筐体11の後端部にも開口部11bが形成され、この開口部11bからは鉄道車両の車体配線100が導入されている。また、筐体11の開口部11aの内部には、絶縁台13を取り付けるための取付孔11d,11fが形成されたリブ11c,11eが両側にそれぞれ形成されている。なお、取付孔11d,11fの内壁には雌螺子部(図示省略)が形成されている。
【0030】
また、筐体11の前端部の上部には、略円形の蓋12が取り付けられており、蓋12を回動させることで筐体11の開口部11aを開閉させることができる。
また、筐体11の開口部11aの内部には、円盤形状の絶縁台13が取り付けられている。この絶縁台13は絶縁材料で構成されている。
【0031】
また、図2(a)に示すように、絶縁台13の中央部には、棒状の接触片14が多数植設されている。なお、各接触片14は、車体配線100に含まれる電線100aの数量だけ存在し、筐体11の内部でそれぞれが対応する車体配線100の電線100aに接続されている。
【0032】
さらに、絶縁台13の両端部には、筐体11に取り付けるための貫通孔13a,13bがそれぞれ形成されている。これら貫通孔13a,13bは、絶縁台13の平面状の前面に対して垂直に形成されている。
【0033】
絶縁台13の貫通孔13aに対しては、先端に雄螺子部が形成されたビス15を、ばね座16およびワッシャ17を介して挿通させ、その挿通させたビス15を筐体11の取付孔11dにそれぞれ取り付けている。また、絶縁台13の貫通孔13bに対しても同様に、先端に雄螺子部が形成されたビス15を、ばね座16およびワッシャ17を介して挿通させ、その挿通させたビス15を筐体11の取付孔11fにそれぞれ取り付けている。このとき、絶縁台13は、接触片14が植設される側の平面が露出される姿勢で筐体11に内包される。
【0034】
なお、ジャンパ栓受10のその他の構成については公知技術に従うのでここではその詳細な説明は省略する。
[1.2.ジャンパ栓20の構成の説明]
ジャンパ栓20は、図1(a)に示すように、筐体21と、絶縁台23と、多数の接触片24と、を備える。
【0035】
筐体21は、前半部が円筒状であり、後半部が後方に行くに従ってその径寸法が小さくなるよう形成されている。また、筐体21の前端部には開口部21aが形成されている。
また、ジャンパ栓20の筐体21は、ジャンパ栓受10の筐体11に取り付けることができるようになっている。このとき、ジャンパ栓受10の筐体11の開口部11aとジャンパ栓20の筐体21の開口部21aとが連通する状態となる。
【0036】
また、筐体21の後端部にも開口部21bが形成され、この開口部21bからはジャンパケーブル30の端部が導入されている。
また、筐体21の開口部21aの内部には、絶縁台23を取り付けるための取付孔21d,21fが形成されたリブ21c,21eが両側にそれぞれ形成されている。この取付孔21d,21fの内壁には雌螺子部(図示省略)が形成されている。
【0037】
また、筐体21の開口部21aの内部には、円盤形状の絶縁台23が取り付けられている。この絶縁台23は絶縁材料で構成されている。
また、図2(a)に示すように、絶縁台23の中央部には、筒状の接触片24が多数植設されている。なお、各接触片24は、ジャンパケーブル30に含まれる電線30aの数量だけ存在し、筐体21の内部でそれぞれが対応するジャンパケーブル30の電線30aに接続されている。
【0038】
また、絶縁台23の両端部には、筐体21に取り付けるための貫通孔23a,23bがそれぞれ形成されている。これら貫通孔23a,23bは、絶縁台23の平面状の前面に対して垂直に形成されている。
【0039】
そして、絶縁台23の貫通孔23aに対しては、先端に雄螺子部が形成されたビス25を、ばね座26およびワッシャ27を介して挿通させ、その挿通させたビス25を筐体21の取付孔21dに取り付けている。また、絶縁台23の貫通孔23aに対しても同様に、先端に雄螺子部が形成されたビス25を、ばね座26およびワッシャ27を介して挿通させ、その挿通させたビス25を筐体21の取付孔21fに取り付けている。このとき、絶縁台23は、接触片24が植設される側の平面が露出される姿勢で筐体21に内包される。
【0040】
さらに、ジャンパ栓20は、ジャンパ栓受10側の筐体11とジャンパ栓20側の筐体21との接続時に、ジャンパ栓受10側の接触片14がジャンパ栓20側の接触片24に内挿されるとともに、ジャンパ栓受10側の貫通孔13a,13bに取り付けられたビス15とジャンパ栓20側の貫通孔23a,23bに取り付けられたビス25とが互いに対向するようになっている。
【0041】
なお、ジャンパ栓20のその他の構成については公知技術に従うのでここではその詳細な説明は省略する。
[2.制御回路用のジャンパ連結器1と補助回路用のジャンパ連結器1について]
ところで、鉄道車両の中には、例えば制御回路用の車体配線100および補助回路用の車体配線100といった具合に複数の車体配線100を搭載する車両がある。
【0042】
そこで、本実施形態では、鉄道車両それぞれが二本の車体配線100を備えており、ジャンパ栓受10が二本の車体配線100の端部それぞれに取り付けられて同数存在するとともに、ジャンパケーブル30が二本の車体配線100と同数存在する例を、図2(b)を参照しながら説明する。
【0043】
[2.1.制御回路用のジャンパ栓受10の構成の説明]
図2(b)に示すように左側に配置される制御回路用のジャンパ栓受10においては、次のように構成される。すなわち、絶縁台13の左側の貫通孔13aに対しては、先端に雄螺子部が形成された長尺部材18を、ばね座16およびワッシャ17を介して挿通させ、その挿通させた長尺部材18を筐体11の取付孔11dに取り付けている。また、絶縁台13の右側の貫通孔13bに対しては、先端に雄螺子部が形成されたビス15を、ばね座16を介さずにワッシャ17を介して挿通させ、その挿通させたビス15を筐体11の取付孔11fに取り付けている。
【0044】
なお、長尺部材18は、先端に雄螺子部が形成された長尺のビス18aが筒状の筒状部材18bに内挿された構成を有し、ビス18aの頭部が筒状部材18bの内部に隠蔽される(図1(b)参照)。
【0045】
[2.2.補助回路用のジャンパ栓受10の構成の説明]
図2(b)に示すように右側に配置される補助回路用のジャンパ栓受10においては、次のように構成される。すなわち、絶縁台13の左側の貫通孔13aに対しては、先端に雄螺子部が形成されたビス15を、ばね座16を介さずにワッシャ17を介して挿通させ、その挿通させたビス15を筐体11の取付孔11dに取り付けている。また、絶縁台13の右側の貫通孔13bに対しては、先端に雄螺子部が形成された長尺部材18を、ばね座16およびワッシャ17を介して挿通させ、その挿通させた長尺部材18を筐体11の取付孔11fに取り付けている。
【0046】
[2.3.制御回路用のジャンパ栓20の構成の説明]
制御回路用のジャンパ栓20においては、次のように構成される。すなわち、絶縁台23の左側の貫通孔23aに対しては、先端に雄螺子部が形成されたビス25を、ばね座26を介さずにワッシャ27を介して挿通させ、その挿通させたビス25を筐体21の取付孔21dに取り付けている。また、絶縁台23の右側の貫通孔23bに対しては、先端に雄螺子部が形成された長尺部材28を、ばね座26およびワッシャ27を介して挿通させ、その挿通させた長尺部材28を筐体21の取付孔21fに取り付けている。なお、長尺部材28は、長尺部材18と同様の構成を有するので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0047】
[2.4.補助回路用のジャンパ栓20の構成の説明]
補助回路用のジャンパ栓20においては、次のように構成される。すなわち、絶縁台23の左側の貫通孔23aに対しては、先端に雄螺子部が形成された長尺部材28を、ばね座26およびワッシャ27を介して挿通させ、その挿通させた長尺部材28を筐体21の取付孔21dに取り付けている。また、絶縁台23の右側の貫通孔23bに対しては、先端に雄螺子部が形成されたビス25を、ばね座26を介さずにワッシャ27を介して挿通させ、その挿通させたビス25を筐体21の取付孔21dに取り付けている。
【0048】
[3.実施形態の効果]
(1)このように本実施形態のジャンパ連結器1によれば、互いに対応するジャンパ栓受10とジャンパ栓20とを連結させようとすると凸部(長尺部材18,28)同士が対向せずに両者の連結を邪魔しないが(図3(a)参照)、互いに対応しないジャンパ栓受10とジャンパ栓20とを連結させようとすると凸部同士が対向して両者の連結を邪魔する(図3(b)参照)。そして、このような凸部を形成するための改修作業は、ジャンパ栓受10を鉄道車両から取り外さずに行うことができる。
【0049】
したがって、連結作業時のヒューマンエラーが発生せず、ジャンパ栓受10とジャンパ栓20との嵌め合い具合を維持しながら、簡単な作業で実施可能なジャンパ連結器の誤接続防止策を提供することができる。
【0050】
(2)また、本実施形態のジャンパ連結器1によれば、互いに対応しないジャンパ栓受10とジャンパ栓20とを連結させようとして互いに対向する凸部同士が当接した場合でも、ジャンパ栓受10の絶縁台13とジャンパ栓20の絶縁台23との間には二つの凸部が介在する。このことにより、ジャンパ栓受10側の凸部と接触するジャンパ栓20側の凸部の先端部分を支点としてジャンパ栓20が傾いてジャンパ栓受10側の接触片14とジャンパ栓20側の接触片24とが接触するといった事態が起こりにくくなる。
【0051】
(3)また、本実施形態のジャンパ連結器1によれば、長尺部材18,28についてはばね座16,26およびワッシャ17,27を介して筐体11,21にそれぞれ取り付けられ、ビス15,25についてはばね座16,26を介さずにワッシャ17,27を介して筐体11,21にそれぞれ取り付けられる。このことにより、互いに対応しないジャンパ栓受10とジャンパ栓20とを連結させようとして互いに対向する凸部同士が当接した場合でも、ジャンパ栓受10の絶縁台13とジャンパ栓20の絶縁台23との間には二つの凸部と二つのばね座16,26および二つのワッシャ17,27とが介在する。したがって、ジャンパ栓受10側の凸部と接触するジャンパ栓20側の凸部の先端部分を支点としてジャンパ栓20が傾いてジャンパ栓受10側の接触片14とジャンパ栓20側の接触片24とが接触するといった事態が更に起こりにくくなる。
【0052】
(4)また、本実施形態のジャンパ連結器1によれば、ビス15,25についてはばね座16,26を介さずにワッシャ17,27を介して筐体11,21にそれぞれに取り付けられる。このことにより、互いに対応するジャンパ栓受10とジャンパ栓20とを連結させようとした場合にビス15,25に対向する長尺部材18,28を、ばね座16,26の分だけ長く設定することができる。したがって、互いに対応しないジャンパ栓受10とジャンパ栓20とを連結させようとして互いに対向する凸部同士が当接した場合でも、二つの凸部が介在することでジャンパ栓受10の絶縁台13とジャンパ栓20の絶縁台23とが互いに離間する距離が大きくなり、ジャンパ栓受10側の凸部と接触するジャンパ栓20側の凸部の先端部分を支点としてジャンパ栓20が傾いてジャンパ栓受10側の接触片14とジャンパ栓20側の接触片24とが接触するといった事態が更に起こりにくくなる。
【0053】
(5)また、本実施形態のジャンパ連結器1によれば、長尺部材18は、先端に雄螺子部が形成された長尺のビス18aが筒状の筒状部材18bに内挿された構成を有し、ビス18aの頭部が筒状部材18bの内部に隠蔽され、長尺部材28についても同様の構成を有するので、簡単な構成で凸部を実現できる。
【0054】
[4.他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような様々な態様にて実施することが可能である。
【0055】
(1)上記実施形態では、長尺部材18は、先端に雄螺子部が形成された長尺のビス18aが筒状の筒状部材18bに内挿された構成を有し、ビス18aの頭部が筒状部材18bの内部に隠蔽されるが、これには限られず、長尺部材18を、先端に雄螺子部が形成されるとともに後端が軸状に形成された構成を有するようにしてもよい。なお、長尺部材28についても同様である。
【0056】
このように構成しても、簡単な構成で凸部を実現できる。
【符号の説明】
【0057】
1…ジャンパ連結器、10…ジャンパ栓受、11,21…筐体、12…蓋、13,23…絶縁台、14,24…接触片、15,25…ビス、16,26…ばね座、17,27…ワッシャ、18,28…長尺部材、20…ジャンパ栓、30…ジャンパケーブル、30a…電線、100…車体配線、100a…電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に連なる鉄道車両の車体配線同士を連結するジャンパ連結器であって、
前記車体配線の端部に取り付けられるジャンパ栓受と、前記ジャンパ栓受に接続可能なジャンパ栓が両端それぞれに設けられたジャンパケーブルと、を備え、
前記ジャンパ栓受は、
絶縁材料からなる板状であり、一方の平面に棒状の接触片が植設されるとともにその平面に垂直な貫通孔が形成される絶縁台と、
前記絶縁台を前記接触片が植設される側の平面が露出される姿勢で内包し、前記貫通孔に連通するとともに内壁に雌螺子部が形成された取付孔が形成された筐体と、
を備え、ビスが前記貫通孔に挿入された後に前記取付孔に取り付けられることで前記絶縁台が前記筐体に固定されており、
一方、前記ジャンパ栓は、
絶縁材料からなる板状であり、筒状の接触片が一方の平面に植設されるとともにその平面に垂直な貫通孔が形成される栓側の絶縁台と、
前記絶縁台を前記接触片が植設される側の平面が露出される姿勢で内包し、前記貫通孔に連通するとともに内壁に雌螺子部が形成された取付孔が形成された筐体と、
を備え、ビスが前記貫通孔に挿入された後に前記取付孔に取り付けられることで前記絶縁台が前記筐体に固定されており、
また、前記ジャンパ栓受および前記ジャンパ栓においては、
前記ジャンパ栓受側の筐体と前記ジャンパ栓側の筐体とは前記ジャンパ栓受側の絶縁台と前記ジャンパ栓側の絶縁台とを対向させながら接続可能に構成され、
前記ジャンパ栓受側の接触片と前記ジャンパ栓側の接触片とは、前記ジャンパ栓受側の筐体と前記ジャンパ栓側の筐体との接続時に、前記ジャンパ栓受側の接触片が前記ジャンパ栓側の接触片に内挿されるよう配置され、
前記ジャンパ栓受側の貫通孔と前記ジャンパ栓側の貫通孔とは、前記ジャンパ栓受側の筐体と前記ジャンパ栓側の筐体との接続時に互いに対向するよう配置されており、
さらに、
前記鉄道車両それぞれが複数の車体配線を備えており、前記ジャンパ栓受が前記複数の車体配線の端部それぞれに取り付けられて同数存在するとともに前記ジャンパケーブルが前記複数の車体配線と同数存在する場合には、
前記ジャンパ栓受においては、
前記貫通孔と前記取付孔との組が前記複数の車体配線と同数形成され、
前記ビスよりも長尺で先端に雄螺子部が形成された長尺部材が、前記複数の車体配線と同数のジャンパ栓受で互いに異なる位置の前記貫通孔に前記ビスの代わりに挿入された後に前記取付孔に取り付けられることで凸部が形成され、
一方、前記ジャンパ栓においては、
前記貫通孔と前記取付孔との組が前記複数の車体配線と同数形成され、
前記長尺部材が、前記ジャンパ栓受との接続時に前記ビスが挿入された前記栓受側の貫通孔と対向する当該ジャンパ栓側の貫通孔に前記ビスの代わりに挿入された後に前記取付孔に取り付けられることで凸部が形成されること
を特徴とするジャンパ連結器。
【請求項2】
請求項1に記載のジャンパ連結器において、
前記長尺部材については、ばね座およびワッシャを介して前記取付孔に取り付けられることを特徴とするジャンパ連結器。
【請求項3】
請求項1または請求項2の何れか1項に記載のジャンパ連結器において、
前記ビスについては、ばね座を介さずにワッシャを介して前記取付孔に取り付けられることを特徴とするジャンパ連結器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のジャンパ連結器において、
前記長尺部材は、先端に雄螺子部が形成された長尺のビスが筒状の筒状部材に内挿された構成を有することを特徴とするジャンパ連結器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−180052(P2012−180052A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45330(P2011−45330)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(591150258)株式会社ユタカ製作所 (12)