説明

ジョイントコネクタ

【課題】ハウジングを前後方向に短くし、ジョイントコネクタを小型化する。
【解決手段】本発明は、複数の第1アース用電線Wを車両のボディに接地するためのジョイントコネクタ10であって、各電線側端子21が各第1アース用電線Wに接続されてなる複数の端子付き電線20と、各電線側端子21に接続される複数の端子接続部32Bを有し、各端子接続部32Bの後方に配されてこれらを互いに連結してなるつなぎ部32Aが形成された導電板30と、シール部材収容部43を有し、このシール部材収容部43の前方部分に収容された各端子付き電線20を保持するハウジング40と、シール部材収容部43に収容されるシール部材Sとを備え、つなぎ部32Aは、前後方向に関してシール部材Sと同じ位置に配され、かつ、シール部材Sの外周側に配されている構成としたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線を車両のボディに接地するためのジョイントコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のジョイントコネクタとして、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。このジョイントコネクタは、電線の端末に電線側端子が電気的に接続されてなる複数の端子付き電線と、導電板と、これらの端子付き電線および導電板を保持するハウジングとを備えて構成されている。この導電板は、各端子付き電線の電線側端子が端子嵌合方向に嵌合される複数の端子接続部と、これらの端子接続部を連結してなるつなぎ部とを備えている。各端子接続部は、つなぎ部によって短絡され、つなぎ部からボディに引き出されたボディ側接地部を通じてボディに一括して接地される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−40263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のジョイントコネクタでは、ハウジングの内部を液密状にシールするためのシール部材がつなぎ部の後方に装着されているため、ハウジングが全体として前後方向に長くなり、ジョイントコネクタが大型化してしまう。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ハウジングを前後方向に短くし、ジョイントコネクタを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の電線を車両のボディに接地するためのジョイントコネクタであって、各電線側端子が各電線に接続されてなる複数の端子付き電線と、各電線側端子に接続される複数の端子接続部を有し、各端子接続部の後方に配されてこれらを互いに連結してなるつなぎ部が形成された導電板と、シール部材収容部を有し、このシール部材収容部の前方部分に収容された各端子付き電線を保持するハウジングと、シール部材収容部に収容されるシール部材とを備え、つなぎ部は、前後方向に関してシール部材と同じ位置に配され、かつ、シール部材の外周側に配されている構成としたところに特徴を有する。
【0007】
このような構成によると、つなぎ部を、前後方向に関してシール部材と同じ位置に配したから、ハウジングを前後方向に短くすることができ、ジョイントコネクタを小型化できる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
つなぎ部は、シール部材収容部と一体に成形されている構成としてもよい。
シール部材収容部は、一般に、シール部材の弾性に基づく経年劣化により変形することがあり得る。その点、上記の構成によると、シール部材収容部がつなぎ部と一体になって強化されているため、シール部材収容部の形状を維持することができ、経年劣化による変形を規制できる。
【0009】
つなぎ部は、シール部材の周方向に延びる形態をなす構成としてもよい。
このような構成によると、つなぎ部によってシール部材収容部の形状を維持しやすくなる。
【0010】
各電線側端子は、上下2段に分かれてハウジングに保持されており、その保持部分を中心として背合わせ状態で配されている構成としてもよい。
このような構成によると、各電線側端子に接続される各端子接続部をシール部材の外周側に配設しやすくなる。
【0011】
つなぎ部は、シール部材の装着方向と交差する方向に開口するU字状をなす構成としてもよい。
このような構成によると、所定の形状の打ち抜かれた金属板材を曲げ加工するだけでつなぎ部を形成することができ、つなぎ部の製造が容易である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハウジングを前後方向に短くし、ジョイントコネクタを小型化する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態におけるジョイントコネクタの斜視図
【図2】図1のジョイントコネクタから蓋体を外した状態を示した斜視図
【図3】ジョイントコネクタを縦方向に切断した場合における内部構造を示した断面図
【図4】ハウジングを横方向に切断した場合における内部構造を示した断面図
【図5】ハウジングを縦方向に切断した場合における内部構造を示した断面図
【図6】導電板の斜視図
【図7】導電板の平面図
【図8】導電板の左側面図
【図9】導電板の背面図
【図10】端子付き電線の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図10の図面を参照しながら説明する。本実施形態におけるジョイントコネクタ10は、車両におけるワイヤハーネスの一部を構成している。すなわち、ワイヤハーネスは、複数本の電線によって構成されたワイヤハーネス本体と、ジョイントコネクタ10とを備えている。このうちワイヤハーネス本体を構成する電線には、複数本の第1アース用電線Wと、この第1アース用電線Wとは別の第2アース用電線(図示せず)とが含まれる。これらのアース用電線Wは、いずれも導体W1とこれを被覆する絶縁被覆W2とで構成され、ジョイントコネクタ10を介して車両のアース部位に一括して接続される。このアース部位は、図示はしないものの、車両のボディの壁面から内側に突設された接地ボルトによって構成されている。
【0015】
第1アース用電線Wは、ワイヤハーネスに接続された特定の回路を前記アース部位に接地するためのものであり、それぞれの一端が前記アース部位に接続され、他端は前記回路に接続される。前記第2アース用電線は、仮に前記アース部位に損傷などが生じてアース不良が起こった場合でも、このアース部位を他のアース部位に接続するフェールセーフを目的としたものであり、その一端は前記アース部位に接続され、他端は前記他のアース部位に接続される。なお、第2アース用電線は、大きな電流容量を確保すべく、第1アース用電線Wよりも大きな外径を有しており、その端末には第2アース端子(図示せず)が接続されている。
【0016】
ジョイントコネクタ10は、図1に示すように、複数の端子付き電線20と、導電板30と、ハウジング40とを備えて構成されている。
【0017】
このうち端子付き電線20は、図10に示すように、前記した第1アース用電線Wの端末に電線側端子21を電気的に接続したものである。電線側端子21は、箱形をなす端子本体部22と、この端子本体部22の後方に設けられたワイヤバレル23と、このワイヤバレル23の後方に設けられたインシュレーションバレル24とを備えて構成されている。ワイヤバレル23は、第1アース用電線Wの導体W1に圧着され、これにより導体W1と電線側端子21が導通可能に接続されている。また、第1アース用電線Wの絶縁被覆W2の端末には、ゴム栓25が外嵌されており、インシュレーションバレル24がゴム栓25ともども絶縁被覆W2の端末に圧着されている。
【0018】
端子本体部22は、角筒状をなして前後方向に延びる形態をなしている。この端子本体部22の内部には、弾性変形可能な弾性接触片26が収容されている。端子本体部22の内部に相手側端子が嵌合すると、この相手側端子に対して弾性接触片26が弾性的に接触し、電線側端子21と相手側端子が導通可能に接続される。端子本体部22は、ゴム栓25よりも小さめとされており、ゴム栓25が収容されるゴム栓収容部41の内壁と干渉しないようになっている。
【0019】
ハウジング40は合成樹脂製であって、図1および図2に示すように、ゴム製のシール部材Sが装着された蓋体42を取り付け可能なシール部材収容部43を備えている。この蓋体42は、可撓性を有するヒンジ44によってハウジング40と一体に形成されている。シール部材収容部43の前方には、電線側端子21を保持する端子保持部45が連設されており、この端子保持部45の前方には、前記したゴム栓収容部41が設けられている。なお、ゴム栓収容部41と端子保持部45の間には、破断溝46が周設されており、ワイヤハーネスの解体時には破断溝46が破断することにより第1アース用電線Wならびに電線側端子21がゴム栓収容部41とともに車両のボディから撤去される。
【0020】
蓋体42は、図3に示すように、ハウジング40の外側から内側に向けて突出する装着凸部47を有しており、この装着凸部47にシール部材Sが外嵌されて固定されている。また、シール部材Sは、装着凸部47の外周面とシール部材収容部43の内周面との間で狭圧されているため、ハウジング40の内部に後方から浸水することが規制されている。また、蓋体42の外側面には、図2に示すように、左右一対の係止片48,48が設けられており、各係止片48,48と対応するハウジング40の外側面には、各係止片48,48と係止可能な左右一対の係止突起49,49が設けられている。したがって、蓋体42をハウジング40の後部に装着すると、装着凸部47とシール部材Sがシール部材収容部43の開口に嵌合するとともに各係止片48,48が各係止突起49,49に係止した状態にロックされる。
【0021】
端子保持部45の内部には、図5に示すように、電線側端子21が収容されるキャビティCが形成されている。このキャビティCは、上下2段で左右方向に4列に並んで形成されている。このうち上下に配された各キャビティC,Cを仕切る隔壁には、上下一対のランス50,50が上下方向に撓み可能に形成されている。各ランス50は、隔壁から片持ち状をなして後方に延びる形態とされている。
【0022】
各キャビティC,Cを上下方向に仕切る隔壁は、ランス50の基端部から前方に向けて形成されており、ランス50の基端部から後方には存在していない。さらに、各キャビティC,Cを左右方向に仕切る隔壁については、少なくともランス50が形成される高さ範囲においては、ランス50の後方に存在していない。すなわち、端子保持部45におけるランス50の基端部よりも後方には、各電線側端子21が一括して収容される単一の収容空間が形成されている。
【0023】
上下方向に隣り合う各ランス50,50は、背合わせで(上下方向に関して互いに反対方向を向いて)配設されており、これに伴って各電線側端子21,21は、上下2段に分かれてハウジング40に保持され、各ランス50,50を中心として背合わせ状態で配されている。
【0024】
上下方向に隣り合う各ランス50,50の間には、検知用の平板(図示せず)が挿入される半挿入検知空間51が形成されている。この半挿入検知空間51は、各ランス50,50に共用の撓み空間とされている。したがって、各電線側端子21,21を各キャビティC,Cに同時に挿入しようとすると、各ランス50,50が半挿入検知空間51で互いに干渉するものの、各電線側端子21,21を一つずつ各キャビティC,Cに挿入することにより、半挿入検知空間51における各ランス50,50の干渉を避けることができる。
【0025】
電線側端子21の端子本体部22の底壁には、ランス50が進入して係止するランスホール27が開口して形成されている。ランス50がランスホール27に嵌り込んで前後方向に係止した状態では、電線側端子21がキャビティCに収容された状態で端子保持部45に保持される。このとき、ゴム栓25は、ゴム栓収容部41の内部に収容され、ゴム栓収容部41の内周面と絶縁被覆W2の外周面との間で狭圧される。これにより、ゴム栓収容部41からハウジング40の内部に浸水することが規制される。
【0026】
次に、導電板30について説明する。この導電板30は、導電性のよい金属板をプレス加工する(例えば、所定の形状に打ち抜いた後、曲げ加工などを施す)ことによって形成したものである。導電板30は、図6に示すように、その主要部を構成する導電板本体31と、この導電板本体31の一端に設けられた接続部32と、導電板本体31の他端に設けられた回り止め片33とを備えて構成されている。なお、導電板30の構成の説明においては、上下方向および左右方向については図8を基準とし、幅方向については図7の上下方向を基準とする。
【0027】
回り止め片33は、図7に示すように、接続部32に対して幅方向に偏心して配されている。この回り止め片33は、導電板本体31の左側縁から下方に延出した後、その延出端から左方に延出する形態とされている。回り止め片33は、車両のボディに形成された回り止め凹部(図示せず)に嵌り込むことにより、ボルト止め作業に伴う導電板本体31の回り止めを行う。導電板本体31において回り止め片33と同軸をなす位置には、ボディ側接地部34が形成されている。
【0028】
このボディ側接地部34は、左右方向に関して回り止め片33と接続部32の中央付近に配設されている。ボディ側接地部34には、前記した接地ボルトが挿通可能なボルト孔35が形成されている。また、ボディ側接地部34には、前記した第2アース端子をスライドさせて組み付け可能とされている。第2アース端子がボディ側接地部34に組み付けられた状態で接地ボルトに挿通させ、ナット(図示せず)を螺合させてボルト止めすると、導電板30および第2アース端子がボディ側の前記したアース部位に接続される。
【0029】
接続部32は、図9に示すように、シール部材Sの装着方向と交差する方向に開口する略U字状をなすつなぎ部32Aを有し、このつなぎ部32Aの右側縁には、図7に示すように、複数の端子接続部32Bが右方に張り出し形成されている。このつなぎ部32Aは、所定の形状に打ち抜かれた金属板材を曲げ加工することで形成されているため、容易に製造することができる。各端子接続部32Bは平板のタブ状をなして突出する形態をなし、上下2段で幅方向に4つが並んで配されている。各端子接続部32Bは、つなぎ部32Aによって互いに連結され、このつなぎ部32Aと一体に形成されている。また、つなぎ部32Aは、図8に示すように、段差部36を介して導電板本体31の右側縁に連結されている。
【0030】
段差部36は、図6に示すように、導電板本体31の右側縁から上方に立ち上がる形態をなしている。また、段差部36の上縁には、段差部36よりも幅狭の支持片36Aが設けられており、この支持片36Aを介して段差部36の上縁がつなぎ部32Aの左側縁に連結されている。支持片36Aは、段差部36の上縁における幅方向中央に配されており、この支持片36Aの幅方向両側には、一対の切欠部36Bが形成されている。支持片36Aは、略直角に折り曲げられてつなぎ部32Aに連結されており、このつなぎ部32Aと導電板本体31が略平行に配されている。また、支持片36Aと段差部36の境界部分には、貫通孔36Cが板厚方向に貫通して形成されている。さらに、支持片36Aにおける貫通孔36Cの上側には、樹脂製の封止材36Dが全周に亘って塗布されている。
【0031】
ハウジング40は、図3に示すように、導電板30と一体に形成されている。より詳細に説明すると、つなぎ部32Aは、シール部材収容部43と一体に成形されており、導電板30のうちつなぎ部32Aと段差部36の一部がハウジング40のシール部材収容部43にインサート成形されている。図4に示すように、シール部材収容部43の前壁から端子保持部45の内部に向けて各端子接続部32Bが前方に突出する形態で設けられている。詳細には、段差部36の上半分から支持片36Aを介してつなぎ部32Aに亘る範囲がシール部材収容部43に埋設されており、各切欠部36Bおよび貫通孔36Cにおいてはシール部材収容部43を構成する樹脂材が前後方向に貫通する形態で埋め込まれている。
【0032】
言い換えると、段差部36の前後両側に配された樹脂材は、各切欠部36Bおよび貫通孔36Cを通して互いに連結され、かつ、支持片36Aを全周に亘って覆う形態で成形されている。そして、この支持片36Aに塗布された封止材36Dが樹脂材と金属材のプライマーとして機能し、これらを密着させることにより、シール部材収容部43と支持片36Aの界面からハウジング40の内部に浸水することが規制されている。しかも、各切欠部36Bおよび貫通孔36Cにおいて前後の樹脂材が連結されているため、樹脂材と金属材の界面が乖離することが規制され、もって樹脂材と金属材の界面におけるシール性が失われることを確実に規制できるようになっている。
【0033】
シール部材収容部43は、図2に示すように、略方形の角筒状をなして前後方向に貫通する形態をなし、端子保持部45の半挿入検知空間51を後方に臨ませるように形成されている。シール部材収容部43の内部には、図3に示すように、つなぎ部32Aが埋設されている。すなわち、シール部材Sが内部に収容されるシール部材収容部43は、つなぎ部32Aと一体になって強化されており、経年劣化(クリープによる樹脂の変形など)によってシール部材収容部43の開口が広がることを規制できる。このように、シール部材収容部43の形状を維持することができるため、シール部材Sとシール部材収容部43の密着力が低下することはなく、シール部材Sのシール性能を長期間に亘って維持することができる。さらに、つなぎ部32Aがシール部材Sの周方向に延びる形態をなしているため、このつなぎ部32Aによってシール部材収容部43の形状を維持しやすくなっている。その上、つなぎ部32Aは、前後方向に関してシール部材Sと同じ位置に配され、かつ、シール部材Sの外周側に配されているため、シール部材をつなぎ部の後方に配設する構成と比較してハウジング40を前後方向に短くすることができ、もってジョイントコネクタ10を小型化できる。
【0034】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。まず、ジョイントコネクタ10の組み立て方法について説明する。ワイヤハーネス本体からアース接続対象である複数の第1アース用電線Wを引き出し、各第1アース用電線Wの端末に各電線側端子21を装着し、第2アース用電線の端末に第2アース端子を装着する。なお、この端子の装着は、ワイヤハーネス本体のアッセンブリの前に予め行ってもよい。
【0035】
次に、電線側端子21をハウジング40のキャビティCに順次挿入していく。すると、待ち受け状態の端子接続部32Bに対して電線側端子21の端子本体部22が端子嵌合し、弾性接触片26が端子接続部32Bに対して弾性的に接触することにより、電線側端子21と端子接続部32Bが導通可能に接続される。そして、端子嵌合が完了すると、ランス50がランスホール27に進入した状態となり、電線側端子21とランス50とが前後方向に係止することにより、電線側端子21が端子保持部45に対して抜け止め状態に保持される。これとは別に、第2アース端子をボディ側接地部34にスライドさせながら装着し、第2アース端子とボディ側接地部34が積層状態となって組み付けられる。
【0036】
次に、ボディの接地ボルトに対してボルト孔35を挿通させ、ボルト止めを行う。具体的には、ボディ側接地部34および第2アース端子にそれぞれ設けられたボルト孔35に接地ボルトを貫通させ、ボディ側接地部34の設置面をボディの壁面に載置し、接地ボルトにナットが螺合されて締め付けられることにより、このナットとボディの壁面との間にボディ側接地部34および第2アース端子が狭圧されて固定される。これにより、導電板30および各電線側端子21を介して各第1アース用電線Wがボディに接地されるとともに、ボディ側接地部34と重なる第2アース端子を介して第2アース用電線もボディに接地される。
【0037】
次に、蓋体42をシール部材収容部43に対して後方から装着する。蓋体42の装着凸部47に装着されたシール部材Sは、シール部材収容部43の内部に進入し、装着凸部47の外周面とシール部材収容部43の内周面との間にシール部材Sが狭圧された状態となって、シール部材収容部43の開口がシールされる。一方、ハウジング40の前方に配された各ゴム栓収容部41の内部には各ゴム栓25が収容されており、第1アース用電線Wの絶縁被覆W2の外周面とゴム栓収容部41の内周面との間にゴム栓25が狭圧された状態となって、各ゴム栓収容部41の開口がシールされる。なお、シール部材収容部43の下部には、導電板30の支持片36Aがインサート成形されているものの、この支持片36Aには封止材36Dが塗布され、この封止材36Dが樹脂材と金属材の双方に密着することにより、支持片36Aとシール部材収容部43の界面がシールされている。これにより、ハウジング40の内部が液密状にシールされる。
【0038】
以上のように本実施形態では、シール部材収容部43につなぎ部32Aを埋設し、前後方向に関してシール部材Sと同じ位置につなぎ部32Aを配したから、ハウジング40を前後方向に短くすることができ、ジョイントコネクタ10を小型化できる。また、シール部材収容部43がつなぎ部32Aと一体になって強化されているため、シール部材収容部43の形状を維持することができ、経年劣化によるシール部材収容部43の開き変形を防ぐことができる。また、つなぎ部32Aはシール部材Sの周方向に延びる形態をなしているため、つなぎ部32Aによってシール部材収容部43の形状を維持しやすい。また、各ランス50,50を中心として背合わせ状態で上下の電線側端子21,21を配したから、これらの電線側端子21,21に接続される各端子接続部32B,32Bをシール部材Sの外周側に配設しやすい。さらに、シール部材Sの装着方向である前後方向と交差する方向に開口するU字状をなすつなぎ部32Aを形成したから、所定の形状に打ち抜かれた金属板材を曲げ加工するだけでつなぎ部32Aを形成することができ、つなぎ部32Aの製造が容易である。
【0039】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態ではつなぎ部32Aがシール部材収容部43に埋設されているものの、本発明によると、つなぎ部をシール部材収容部の外周面に沿って配設してもよい。
【0040】
(2)上記実施形態ではシール部材Sがシール部材収容部43の内部に嵌合するものを例示しているものの、本発明によると、シール部材がシール部材収容部の外部に嵌合するようにしてもよい。
【0041】
(3)上記実施形態ではつなぎ部32Aがシール部材収容部43と一体に成形されているものの、本発明によると、つなぎ部をシール部材収容部と別体で形成しておき、後でシール部材収容部につなぎ部を組み付けてもよい。また、蓋体につなぎ部を一体に成形してもよい。
【0042】
(4)上記実施形態ではつなぎ部32Aによってシール部材収容部43の形状を維持しているものの、本発明によると、つなぎ部とは別の金属部材をシール部材収容部に組み付けてその形状を維持するようにしてもよい。
【0043】
(5)上記実施形態ではU字状をなすつなぎ部32Aを例示しているものの、本発明によると、例えば、絞り加工を施すことにより環状をなすつなぎ部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…ジョイントコネクタ
20…端子付き電線
21…電線側端子
30…導電板
32A…つなぎ部
32B…端子接続部
40…ハウジング
43…シール部材収容部
45…端子保持部(シール部材収容部の前方部分)
50…ランス(保持部分)
S…シール部材
W…第1アース用電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線を車両のボディに接地するためのジョイントコネクタであって、
各電線側端子が各電線に接続されてなる複数の端子付き電線と、
前記各電線側端子に接続される複数の端子接続部を有し、各端子接続部の後方に配されてこれらを互いに連結してなるつなぎ部が形成された導電板と、
シール部材収容部を有し、このシール部材収容部の前方部分に収容された各端子付き電線を保持するハウジングと、
前記シール部材収容部に収容されるシール部材とを備え、
前記つなぎ部は、前後方向に関して前記シール部材と同じ位置に配され、かつ、前記シール部材の外周側に配されているジョイントコネクタ。
【請求項2】
前記つなぎ部は、前記シール部材収容部と一体に成形されている請求項1に記載のジョイントコネクタ。
【請求項3】
前記つなぎ部は、前記シール部材の周方向に延びる形態をなす請求項1または請求項2に記載のジョイントコネクタ。
【請求項4】
前記各電線側端子は、上下2段に分かれて前記ハウジングに保持されており、その保持部分を中心として背合わせ状態で配されている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のジョイントコネクタ。
【請求項5】
前記つなぎ部は、前記シール部材の装着方向と交差する方向に開口するU字状をなす請求項4に記載のジョイントコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−73798(P2013−73798A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212115(P2011−212115)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)