説明

ジルコニウム及びセリウムの混合酸化物を基とする組成物の製造方法

【目的】 熱安定性のある広い比表面積を有するジルコニウム及びセリウムの混合酸化物からなる組成物を製造する方法を提供すること。
【構成】 本発明は、(1)ジルコニウムゾル及びセリウムゾルを所望される最終生成物に対応する理論量で混合し、(2)得られた混合物を噴霧乾燥し、(3)乾燥させた生成物をか焼する、段階からなることを特徴とするジルコニウム及びセリウムの混合酸化物からなる組成物の製造方法、またこのようにして得られた組成物の、特に自動車あと燃え分野に於ける、触媒又は触媒担体としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は改良された比表面積、特に広く熱安定性のある比表面積を有し、従って特に触媒の分野、とりわけ自動車あと燃え(afterburning)の分野で例えば触媒自体及び(又は)触媒担体としての使用に適している、ジルコニウムとセリウムとの混合酸化物を基とする組成物の新規な製造方法に関するものである。本発明はまた得られる組成物の幾つかの可能な使用法にも関するものである。
【0002】
【発明の背景】酸化ジルコニウム及び酸化セリウムは今日特に有意義で有益な2つの成分として知られており、従って、一例として、それらは共に多機能触媒、特に内燃機関からの排気ガスの処理を目的とする触媒、として知られる該触媒用の組成物中に、単独又は組み合わされて使用される度合いが増加してきている。多機能とは、排気ガス中に存在する特に一酸化炭素と炭化水素の酸化を行なうだけでなく、該ガス中に存在する特に窒素酸化物の還元をも為すことができる触媒が意味されるものと理解される(「三元(three-way) 」触媒)。かかる触媒に関してそれらの組成及び作用原理は既に多くの文献に記載されており、数々の特許及び(又は)特許出願の主題を形成してきたものであることは今後記述される。
【0003】現代化学の知識をもってしても酸化ジルコニウム及びセリウムの混合効果を解明するまでには至っておらず、実際、時には矛盾を生じさえするのであるが、それでも現在では該酸化物の両方を含有する工業「三元」触媒は、そのどちらをも又はどちらか一方を含まない触媒よりも総合的に効果があるものであることは確立されたようである。白金、ロジウム及び他の貴金属等の他の触媒成分の為に適切な触媒機能及び(又は)簡単な支持機能を為すことのできる上述のような触媒に於て、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムは概して非結合状態−つまりこれら2つの成分は、最終触媒中に非常に区別のつきやすい酸化物粒子の単純な物理的混合物の形態で見い出される−で存在する。このことは酸化ジルコニウム及び酸化セリウムを基とする該触媒は最も多くの場合対応する酸化物粉末、そうでなければその代りに該酸化物に対し熱分解可能な先駆物質、の入念な混合により得られるという事実に一因を帰する。
【0004】さて、斯界に於て触媒の組成物中へのジルコニウム及びセリウム成分の導入及び使用を、様々な理由により、分離及び非結合の形態で行なうのではなく、その反対に、実質的にそして好ましくは全体に固溶体タイプの真に混合された酸化物ZrO2/CeO2 の形態で直接行なう試みが今日驚くべき増加傾向をもって為されている。しかし、そのような場合、これは触媒の分野に於て全く慣習的な要求でもあるのだが、最大可能な、又好ましくは熱安定性である比表面積を有する混合酸化物を入手することが可能であることが必要となってくる。実際、触媒の効率は一般に触媒(触媒活性相)と反応体との間の接触表面積が広くなるにつれ大きくなるという事実を考慮し、使用開始時及び多かれ少なかれ高温での長時間の使用後両方の状態に於て触媒が可能な限り最も分割された状態で維持されることが適切である−つまり、触媒を構成する固体粒子又は微結晶が可能な限り小さくかつ識別でき、比較的温度に対し安定性のある高い比表面積を有する混合酸化物からのみ得られるものが適している。
【0005】
【発明の概要】本発明はかかる必要性を満足させることを指向するものである。より正確には、本発明は、簡単に、経済的に、及び再現性をもってZrO2/CeO2システムに於ける実質的に又は全体に固溶体タイプの混合酸化物を基とする広い領域に渡る組成物へのアクセスを得ることを可能とする新規な方法を提供することを意図するものであり(「広い領域に渡る組成物」とはここでは固溶体中のジルコニウム及びセリウムの比が下に示されるように非常に広い範囲内で変化することができるということを意味すると理解される)、一方、該組成物の主要な有益性は一つにはセリウム含有量が高い場合に於てさえも広い比表面積を有し、二つには高温でのか焼の後でさえ有意義な比表面積を維持していることにある。
【0006】この目的の為に、本発明に従いジルコニウムとセリウムとの混合酸化物を基とする組成物の調製に適した新規な合成方法が提案され、該方法は以下の実質的段階からなることを特徴とする:(1)初めに、ジルコニウムゾル及びセリウムゾルを要求される理論比で混合し(該ジルコニウムゾルを構成する粒子の平均直径r1 の該セリウムゾルを構成する粒子の平均直径r2 に対する比rは少なくとも5である(r=r1 /r2 ))、(2)このようにして得られた混合物を次に噴霧乾燥し、(3)最後に乾燥させた生成物を改良された比表面積特性を有するジルコニウム及びセリウムの混合酸化物を基とする最終組成物が得られるようにか焼する。
【0007】本発明による方法により、約700℃の低いか焼温度に於て混合酸化物タイプの相を得ることが可能である。このように本方法は、今日固溶体合成分野で知られている事柄に比較して通常考えられない程低い反応温度を使用することを可能とするものであるので、それにより得られる生成物は当然触媒としての使用に適切であるのに十分に高い比表面積を有している。該か焼段階は固溶体相を形成すること、該固溶体の結晶度を向上させること、及び(又は)それらの比表面積を与えられた使用法に対して所望される最終値に調節すること、を実質的に可能にする。このように形成された相はX線解析分析により明らかにされる。更に、本発明により単に出発ゾルのサイズを調節することにより、得られる最終粉末のサイズを容易に調節、制御することが可能である。本発明の他の特徴、態様、有益性は、それを例証することを意図する様々な具体的かつ非制限的な例と共に、下記の記述を読み進めるにつれより完全に明確になるであろう。
【0008】本発明の以下の説明に於て、「比表面積」とはBrunauer-Emmett-Teller方法から確立され"The Journal of the American Chemical Society, 60, 309(1938)"に記載されたASTM標準D3663−78に従う窒素吸着により決定されたB.E.T.比表面積を意味するものと理解される。加えて、「ジルコニウム及びセリウムを基とする混合酸化物」という表現が使用される度に、それはまた酸化ジルコニウム及び(又は)酸化セリウムの固溶体中に更に以下に定義されるドーピング(安定化)成分を含有する組成物(及びその製造方法)も意味するものと理解されなければならない。
【0009】更には、セリウムゾル及びジルコニウムゾルという表現はここではそれらの最も一般の意味に於て解釈される−つまりそれらは水性液体相中のサスペンションに於いてセリウム又はジルコニウムの酸化物及び(又は)水和酸化物(水酸化物)を基とするコロイド寸法の固体微粒子からなる如何なる系をも表し、更に任意に、例えばニトレート、アセテート、アンモニウム等の結合した又は吸着したイオンを残留量含有することが可能である。かかるゾルに於ては、セリウム又はジルコニウムが全体にコロイド形態で、又は同時にイオン形態及びコロイド形態で見られることがあるが、イオン形態により表される比率がゾル中の種の総量の約10%を超えることはない。本発明に於てはセリウム及びジルコニウムが全てコロイド形態であるゾルが使用されることが好ましい。最後に、出発ゾルを構成するコロイドの平均直径とは、Analytical Chemistry, 53, No.8, 1007 A (1981) に於てMichael L. McConnellにより記述された方法に従う準弾性光拡散により決定された液体力学的平均直径を表すものとして理解されなければならない。説明を容易にそして明確にするという理由にのみ関連して、これ以降「平均ゾルサイズ」という表現もまた、区別することなく、与えられたゾルを構成するコロイドの液体力学的平均直径を表すものとして使用される。
【0010】
【発明の具体的な説明】本発明による組成物の合成方法をこれからより詳細に説明する。上述したように、本発明の方法の第一段階はジルコニウムゾルとセリウムゾルとの混合物を調製することからなる。本発明に使用される出発ジルコニウムゾル及びセリウムゾル、並びにそれらを合成する様々な方法は、当業者にはよく知られており既に文献に記載されている。更にそれらのゾルの幾つかは市場で手に入れることができる。
【0011】例えば、ジルコニウムゾルは140〜300℃、好ましくは150〜200℃の温度で塩化ジルコニル又は硝酸ジルコニル溶液を熱いうちに加水分解することにより得ることができ、塩化ジルコニル又は硝酸ジルコニル溶液の濃度はZrO2で表して0.1〜2 mol/lであることが好ましい。また、ジルコニウムゾルを硝酸媒体又は塩酸媒体中に於て硫酸ジルコニウムを80〜150℃、好ましくは約90℃の温度で熱いうちに加水分解することにより調製することも可能であり、硫酸ジルコニウム溶液のSO3/ZrO2モル比は好ましくは0.34〜1であり、その濃度はZrO2で表して0.1〜2 mol/lであることが好ましい。このようにして得られた塩基性硫酸ジルコニウムは次にpHが約8になるまで塩基、好ましくは水性アンモニアにより中和され、洗浄され、次に硝酸溶液の添加により得られたゲルに分散が行なわれ、その時の分散混合物のpHは0.5〜5であることが好ましい。
【0012】本発明に於て5〜500nm、有益的には10〜200nmの平均サイズを有するジルコニウムゾルを使用することが可能である。本発明に使用されるセリウムゾルも同様に全ての適切な技術、特に、しかし非制限的に、ここに援用される本出願人による特許出願FR−A−2583735、FR−A−2583736、FR−A−2583737、FR−A−2596380、FR−A−2596382、FR−A−2621576、及びFR−A−2655972、に記述された方法により得ることができる。
【0013】本発明に於てはその平均サイズが3〜100nm、好ましくは5〜50nmのセリウムゾルを使用することが可能である。出発ゾルの初期pH、濃度及び導入順序は、生じるコロイド混合物が安定かつ均質な性質を持つように選択され調節される。この目的の為に、多かれ少なかれ攪拌操作を行なうことが必要とされる。加えて、セリウム及びジルコニウムの使用量並びに生じる混合物中に存在する量は、所望される最終生成物を得る為に必要とされる理論比率に慣習的にそして単純に対応するものでなければならない。本発明の方法により入手可能となる組成物は以下に詳細に説明される。
【0014】本発明の方法の本質的特徴として、ジルコニウムゾルの平均サイズのセリウムゾルの平均サイズに対する比(これら2つの平均サイズは例えばナノメートルのように同一の単位で表されているものと理解される)は、約5又はそれ以上でなければならない。該比は約10以上であることが好ましく、少なくとも約20であることが更に好ましい。該比が約5未満で得られた生成物は比表面積に特に乏しく、全ての場合に於て触媒としての使用に著しく不十分であることが見出されている。本発明の方法の特に有益性があり好ましい実施態様に於て、上述の混合物に、酸化ジルコニウムZrO2及び(又は)酸化セリウムCeO2が単独及び非結合状態で存在する場合にそれらの酸化物の非表面積を安定化することが知られている成分から選択される3つ目の成分(若しくはドーピング成分)を更に加えることが可能である。つまり酸化ジルコニウム(ジルコニア)及び(又は)酸化セリウムが、上述したように、単独の場合にその比表面積を安定化させることが知られている薬剤が、予期せずそして驚くべきことに、本発明の混合酸化物タイプの組成物の比表面積を実質的にかつ有意義に改良することも可能にすることが見出されたのである。
【0015】希土類金属、とりわけイットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム;アルカリ土類金属、とりわけマグネシウム、カルシウム、バリウム;アルミニウム;シリコン;トリウム;スカンジウム;ガリウム;ホウ素;チタン;バナジウム;ニオブ;タンタル;クロム又はビスマス、から選択される成分の安定化剤を特に本発明に於て単独又は混合物として使用することができる安定化剤として挙げることができるが、勿論、このリストに制限されるものではない。ランタン、アルミニウム、及びシリコンの3つの安定化剤は特に適したものである。安定化剤は最も多くの場合その可溶性塩の形態で混合物中に導入される。ゾルの形態での導入は勿論除外されない。使用される安定化剤の量は、最終生成物中の安定化成分の含量を酸化物の形態で表して、該生成物の全重量の0.1〜20重量%になるような量であるのが一般的である。
【0016】このようにして得られた初期混合物は次に本発明の方法の第二段階に従い乾燥される。本発明に於て、該乾燥は噴霧により、つまりゾルの混合物を熱雰囲気に吹き付けること(噴霧乾燥)により行なわれなければならない。噴霧は、例えばシャワーヘッド若しくは他のタイプのスプレーノズルを使用したもの等、既知の全ての噴霧器を使用して行なうことができる。いわゆる回転噴霧器を使用することもまた可能である。本発明に於て使用し得る様々なスプレー技術として、"Spray Drying" (第二版、1976、出版元 George Godwin - London)という表題を付けられた専門家によるもの特に引用することができる。
【0017】噴霧/乾燥操作を、例えば本出願人により発展され仏国特許出願第2257326号、同2419754号、同2431321号に特に記載されたタイプの「フラッシュ」反応器により行うこともまた可能である。この場合、処理用ガス(熱ガス)は螺旋状に移送され渦流し(vortex sink) に流れ込む。乾燥される混合物は、該ガスの螺旋状軌線の対称軸に合する軌道に沿って注入され、そのことが該ガスを処理される混合物に完全に移動することを可能にする。従って、該ガスは実際2つの機能−第一に噴霧、つまり初期混合物の微細液体粒子への変換、第二に得られた該粒子の乾燥−を提供することになる。更に、反応器内に於ける粒子の極度に低い滞留時間(通常約0.1秒未満)は、とりわけ熱ガスとの長時間の接触により生じる加熱の危険性を制限するという有益性を有している。乾燥雰囲気の温度は広い範囲で変化させることができ、所望される該雰囲気又はその中で噴霧生成物に課せられる平均滞留時間に特に依存する。乾燥条件(温度及び(又は)滞留時間)は、一般的に、少なくとも生成物中に含まれる残留水の除去が完全に又は最終的に完全に行なわれるような条件が慣習的に用いられ、生成物の一定の重量が得られるまで乾燥が行なわれる。
【0018】本発明の方法の最終段階に於て、噴霧により乾燥された後、回収された生成物は最後にか焼されなければならない。このか焼は所望される混合酸化物の形成が完全に行なわれるまで続けられる。このことは更に形成される固溶体相の結晶度を向上及び(又は)完全にすることを可能にし、使用されるか焼温度が高くなるにつれ生成物の比表面積が低くなるという事実を考慮して、本発明の組成物に意図される次の使用温度に従い最終的に調節されることができる。その生成を得るのに絶対に必要な温度及びより正確にはその後の使用温度に少なくとも等しい温度より高い温度で組成物のか焼を行なう有益性は、最終生成物の特性の安定化が促進されることであり、つまりこの操作は特に生成物がその調製の間に晒されたか焼温度よりも過酷な熱条件下に置かれた場合に、該生成物中に発生する可能性のある変化に関連する危険性を制限することを指向するものであるということである。か焼段階は一般に空気下で行なわれるが、例えば不活性ガス中で行なわれるか焼も勿論除外されるものではない。
【0019】上述したように、本発明の方法により700℃程度の非常に低い合成温度で固溶体を得ることが可能であり、得られる固溶体は非常に高い比表面積を有している。固溶体が形成される正確な温度はその組成、特に関連するジルコニウム及びセリウム含量並びにドーピング成分の存在又は不在に大きく依存することは明らかであり、それ故この点に関して一般的規則を述べることはできない。しかし、実際上は最終か焼段階を一般に700〜1000℃、好ましくは800〜1000℃の範囲の温度で適切に実行できることが観察されている。高温、特に所望される固溶体を形成し及び(又は)X線により明確にするのに絶対に必要な温度より高い温度、でのか焼の後でさえ本発明により得られる組成物は全く許容できる比表面積を有している。
【0020】本発明の方法により、これから詳細に説明される特に有益な組成物を得ることが可能である。これらの組成物はまずこのタイプの生成物としては高い、即ち10m2/g以上の比表面積により特徴付けられる。有益的には得られる組成物は少なくとも20m2/g、好ましくは少なくとも30m2/g、より好ましくは少なくとも40m2/gの比表面積を有している。本発明の方法により得られる組成物は、ある場合に於ては、少なくとも50m2/gの比表面積を有することさえ可能である。
【0021】更に、これらの組成物の別の有益的特性として、それらが比較的高いか焼温度に晒された場合に、例えば特に排気消音器に於て触媒分野で使用されたような場合に、全く適切な比表面積をそれらが保っているということが挙げられる。つまり800℃に於ても本発明の組成物は少なくとも20m2/g、好ましくは少なくとも30m2/g、より好ましくは少なくとも40m2/gの比表面積を有しており、これらの組成物が900℃に加熱されても該表面積はまだ少なくとも10m2/g、好ましくは少なくとも20m2/g、より好ましくは少なくとも30m2/gを維持する。換言すれば本発明により得られる組成物はその比表面積に関して非常に良好な熱安定性を有しているということである。得られる組成物中のセリウム及びジルコニウム成分(及び任意にドーピング成分)の存在は簡単な化学分析により明らかにすることができ、一方慣習的X線回析分析はこれらが存在する形態を示す。
【0022】従って、明細書中に上述されたように前述の成分は組成物中に実質的に、そして好ましくは、全体に固溶体又は混合酸化物タイプの結合形態で存在する。これら組成物のX線回析スペクトルは特に立方晶(cubic) 又は正方晶(quadratic) 系に結晶化されされた酸化ジルコニウムに対応する明確に認識できる主相の存在を明らかにし、その単位格子パラメーターは純粋なジルコニウムに比較して多かれ少なかれ置き換えられており、これは酸化ジルコニウム結晶格子中へのセリウム(及び任意にドーピング成分)の混入を反映し、それ故真の固溶体の生成を意味している。セリウム含量が高い場合には、非結合の又は固溶体中にZrO2を含有する特定の量(少量)の酸化セリウムを観察することができる、が、その両方の場合に於て完全に組成物のマトリックス中に埋め込まれている。本発明の方法により得られる組成物は全体として、酸化物の形態で表して、1〜49重量%のセリウム及び99〜51重量%のジルコニウムを含有する。好ましくは、セリウム含量は1〜30重量%であり、ジルコニウム含量は99〜70重量%である。該組成物が上述されたように更にドーピング成分を含有する場合には、該成分の含量は、酸化物の形態で表現して、組成物全体に対して0.1〜20重量%であることができ、1〜10重量%であることが好ましい。
【0023】それ故、本発明により得られる高比表面積を有する固溶体は主にジルコニウムを基とするものではあるが、かなり広い組成物の範囲に渡ることができることが理解される。組成物中のセリウム含量の上限は、実際、酸化ジルコニウムに対するその溶解度の限界のみにより課せられるものである。従って、本発明により得られる組成物の驚く程高い比表面積は、それが非常に多くの使用法を見出すことができるということを意味している。それらは特に触媒分野で、触媒及び(又は)触媒担体として使用されることに適している。それらを、例えば、脱水、水素硫化、水素脱硝、脱硫、水素脱硫、脱ハロゲン化水素、リホーミング、スチームリホーミング、クラッキング、水素添加分解、水素化、脱水素、異性化、不均化、オキシクロリネーション、炭化水素又は他の有機化合物の脱水素環化、酸化及び(又は)還元反応、クラウス反応、内燃機関からの排ガス処理、脱金属、メタン化、又はシフト転化等の様々な反応を行なう為の触媒又は触媒担体として使用することが可能である。
【0024】しかしながら、本発明により得られる組成物の最も重要な使用法の1つは、勿論、上述したように、内燃機関からの排ガスの処理を意図する触媒構成成分としての使用である。本発明により得ることのできる組成物は、より詳細には、特にディーゼル機関からの排ガスの処理を意図する触媒の製造に適している。この出願に於て、該組成物は貴金属等の触媒活性成分に含浸される前又は後に、例えばビーズ形状の触媒を形成する為に成形され、或はセラミック又は金属モノリス等の超耐熱性物体の被膜−この被膜は斯界に於て「ウォッシュコート(wash coat)」として良く知られている−を形成する為に使用される。以下の例は本発明をそれに制限することなく例証するものである。
【0025】
【実施例】
例1CeO2(180g)含有し約5nmの平均コロイドサイズを有するセリウムゾル(7500g)(仏国特許A−2583736号の教示に従い調製されたもの)を、70%ZrO2/30%CeO2 の重量比組成の最終混合酸化物が得られるように、20重量%のZrO2 を含有し100nm(r=20)の平均コロイドサイズを有するジルコニウムゾル(2100g)と混合した。次にこのようにして得られた混合物をBuchi タイプ噴霧器を用いて以下の条件で噴霧乾燥した:−ガスの入口温度:250℃−ガスの出口温度:110℃−噴霧圧力:1.5barこれを回収し、空気下に於て下記の様々な温度でか焼した後、得られた生成物のBET比表面積は以下のとうりであった。
−600℃で6時間のか焼:40m2/g−800℃で6時間のか焼:25m2/g−900℃で6時間のか焼:16m2/g−1000℃で6時間のか焼:15m2/g
【0026】900℃でか焼された生成物には、X線回析スペクトルにより以下の固溶体の存在が観察された:−ZrO2 中にCeO2(約25重量%)を含む第一固溶体相、この固溶体中の微結晶の平均サイズは10nm程度であった。
−CeO2 中にZrO2(約10重量%)を含む第二固溶体相、微結晶の平均サイズは9.5nm程度であった。
【0027】例2平均コロイドサイズが約50nm(r=10)のジルコニウムゾルを使用した違いを除いて例1を繰り返した。900℃で6時間か焼した後に得られた生成物のBET比表面積は15m2/gであった。
【0028】例3この例はドーピング剤、この場合シリコン、の使用に関連して本発明を例証するものである。シリカ(SiO2)の形態で表してそれぞれ5、10、15重量%のシリコンでドープした本発明の組成物を得られるように、シリカゾルをドーピング剤として混合物に加えた点を除いて例1を繰り返した。900℃で6時間か焼した後に得られた生成物のBET比表面積はそれぞれ24、33、39m2/gであった。
【0029】5重量%のシリカをドープした生成物のX線分析により下記の相が更に検出された:−ZrO2 中にCeO2(約20重量%)を含む第一固溶体相、この固溶体中の微結晶の平均サイズは約10nmであった。
−CeO2 中にZrO2(約15重量%)を含む第二固溶体相、微結晶の平均サイズは約9nm規模であった。
【0030】例4この例はドーピング剤としてランタンを使用することに関連して本発明を例証するものである。La23 の形態で表して6重量%のランタンでドープした最終組成物を得られるように、硝酸ランタンをドーピング剤として混合物に加えた点を除いて例1を繰り返した。900℃で6時間か焼した後に得られた生成物のBET比表面積は23m2/gであった。
【0031】例5この例はドーピング剤としてプラセオジムを使用することに関連して本発明を例証するものである。Pr611の形態で表して5重量%のプラセオジムでドープした最終組成物を得られるように、硝酸プラセオジムをドーピング剤として混合物に加えた点を除いて例1を繰り返した。900℃で6時間か焼した後に得られた生成物のBET比表面積は25m2/gであった。
【0032】例6この例はドーピング剤としてアルミニウムを使用することに関連して本発明を例証するものである。Al23 の形態で表して5重量%のアルミニウムでドープした最終組成物を得られるように、ベーム石ゾルをドーピング剤としてジルコニウム及びセリウムゾルの混合物に加えた点を除いて例1を繰り返した。900℃で6時間か焼した後に得られた生成物のBET比表面積は25m2/gであった。
【0033】例7この例はドーピング剤としてチタンを使用することに関連して本発明を例証するものである。TiO2 の形態で表して2重量%の濃度のチタンでドープした最終組成物を得られるように、チタンゾルを上記ゾル混合物に加えた点を除いて例1を繰り返した。
【0034】900℃で6時間か焼した後に得られた生成物のBET比表面積は18m2/gであった。この生成物のX線分析により以下の相が観察された:−ZrO2 中にCeO2(約30重量%)を含む第一固溶体相、この固溶体中の微結晶の平均サイズは8nm程度であった。
−CeO2 中にZrO2(約5重量%)を含む第二固溶体相、微結晶の平均サイズは9nm程度であった。
【0035】例8(比較例)
平均コロイドサイズが約10nm(r=2)のジルコニウムゾルを使用した違いを除いて例1を繰り返した。900℃で6時間か焼した後に得られた生成物のBET比表面積は僅か2m2/gであった。
【0036】例980%ZrO2/20%CeO2 の重量比の最終組成物が得られるように、ジルコニウムゾルとセリウムゾルとの比率を調節した点を除いて例1を繰り返した。900℃で6時間か焼した後に得られた生成物のBET比表面積は30m2/gであった。
【0037】例10ジルコニアに対し、La23 の形態で表して、1重量%のランタンを含有する最終組成物を得られるように、硝酸ランタンをゾル混合物に加えた点を除いて例9を繰り返した。900℃で6時間か焼した後に得られた生成物のBET比表面積は35m2/gであった。
【0038】例11(比較例)
例9に示された重量比(80%ZrO2/20%CeO2)の酸化物を有する最終組成物が得られるように、ジルコニウムゾルとセリウムゾルとの比率を調節した点を除いて比較例8(r=2)を繰り返した。900℃で6時間か焼した後に得られた生成物のBET比表面積は1m2/g未満であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (1)所望される最終生成物に対応する理論比でジルコニウムゾル及びセリウムゾルを混合し(該ジルコニウムゾルを構成する粒子の平均直径r1 の該セリウムゾルを構成する粒子の平均直径r2 に対する比rは少なくとも5である)、(2)このようにして得られた混合物を次に噴霧乾燥し、(3)最後に乾燥させた生成物をか焼する、段階を含むことを特徴とするジルコニウム及びセリウムの混合酸化物を基とする組成物の製造方法。
【請求項2】 該ジルコニウムゾルを構成する粒子の平均直径が5〜500nmであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】 該平均直径が10〜200nmであることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】 該セリウムゾルを構成する粒子の平均直径が3〜100nmであることを特徴とする前記請求項何れか1つに記載の方法。
【請求項5】 該平均直径が5〜50nmであることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】 該比rが10以上であることを特徴とする前記請求項何れか1つに記載の方法。
【請求項7】 該比rが20以上であることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】 酸化ジルコニウム及び(又は)酸化セリウムの比表面積を熱安定化することが知られている成分から選択される3番目の成分(ドーピング成分)が該混合物に加えられることを特徴とする前記請求項何れか1つに記載の方法。
【請求項9】 該ドーピング成分が、希土類金属、とりわけイットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム;アルカリ土類金属、とりわけマグネシウム、カルシウム、バリウム;アルミニウム;シリコン;トリウム;スカンジウム;ガリウム;ホウ素;チタン;バナジウム;ニオブ;タンタル;クロム又はビスマスから単独又は混合物として選択されることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】 該ドーピング成分が、ランタン、アルミニウム、及びシリコンから単独又は混合物として選択されることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】 該か焼が700〜1000℃の温度で行なわれることを特徴とする前記請求項何れか1つに記載の方法。
【請求項12】 該温度が800〜1000℃であることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】 酸化物の形態で表して、51〜99重量%のジルコニウム及び1〜49重量%のセリウムを含有する組成物を得ることを特徴とする前記請求項何れか1つに記載の方法。
【請求項14】 酸化物の形態で表して、0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の上記ドーピング成分を更に含有する組成物を得ることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】 請求項1〜14何れか1つに記載の方法により得られる組成物の触媒又は触媒担体としての或はそれらを製造する為の使用方法。
【請求項16】 多孔質担体が、任意にアルミナとの混合物として、請求項1〜14何れか1つに記載の方法により得られる組成物の少なくとも1種を含むことを特徴とする該多孔質担体及び触媒活性成分からなる触媒。
【請求項17】 多孔質層が、任意にアルミナとの混合物として、請求項1〜14何れか1つに記載の方法により得られる組成物の少なくとも1種を含むことを特徴とする、触媒活性成分がその上に付着された該多孔質層(ウォッシュコート)に被覆された超耐熱性構造(担体)からなるモノリスタイプ触媒。
【請求項18】 内燃機関、特に自動車エンジン、からの排気ガスを処理する為の請求項16及び17何れか1つに記載の触媒の使用方法。