説明

ジンクフィンガーヌクレアーゼを使用したゼブラフィッシュにおけるゲノム編集

ジンクフィンガータンパク質および切断ドメインもしくは切断半ドメインを含む融合タンパク質を使用する、ゼブラフィッシュにおける1つもしくは複数の遺伝子のゲノム編集のための方法および組成物を、本明細書において開示する。また、該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、ならびに該ポリヌクレオチドおよび融合タンパク質を含む細胞も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府委託研究下で行われる発明に対する権利の記述
非適用
【0002】
本開示は、体細胞および遺伝的遺伝子破壊、ゲノム改変、ゼブラフィッシュ遺伝子の特異的な位置でのランダム変異を保有する対立遺伝子の産生、および相同性指向性修復の誘発を含む、ゼブラフィッシュのゲノム操作の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
ゼブラフィッシュ(Danio rerio)は、その胚発達が他の脊椎動物モデルの生物に優る利点を提供するため、モデル生物として広く使用されてきた。全体的なゼブラフィッシュの世代時間は、マウスの世代時間と同程度であるが、ゼブラフィッシュ胚は、急速に発達し、3日以内で卵子から稚魚に発育する。胚は、大きく、丈夫で、かつ透明であり、外的に母性魚に発達し、これら全てにより実験的操作および観察が容易になる。発達初期にほぼ一定の大きさであることにより、単純な染色法が容易になり、直接水に薬物を添加することにより薬物を投与することができる。偽受精卵が、分割のために生成され、2細胞胚が単一細胞に融合して完全なホモ接合胚を作製する。
【0004】
現在、ゼブラフィッシュにおける逆遺伝学は、概して、モルホリノアンチセンス技術(GeneToolsより市販)を使用して達成される。モルホリノオリゴヌクレオチドは、DNAまたはRNAと同一の塩基を含む、安定した合成巨大分子である。アンチセンスオリゴが相補RNA配列に結合する時、これらは、特異的な遺伝子の発現を減少させる。しかしながら、ゼブラフィッシュにおけるゲノム編集の公知の問題は、ゲノムが条鰭類および総鰭類の相違後に複製を行ったため、アンチセンスオリゴを用いて、確実に2つの遺伝子パラログの活性の発現抑制をすることは、他のパラログによる相補のため容易であるとは限らないことである。
【0005】
従って、ゼブラフィッシュゲノムの修飾方法が必要とされている。部位特異的なゲノム遺伝子座の切断は、従来の相同組み換えに対する、効率的な補足および/または代替を可能にする。二本鎖切断(DSB)の作製は、標的遺伝子座で、相同組み換えの頻度を1000倍以上増加する。つまり、非相同末端結合(NHEJ)による部位特異的DSBの不正確な修復は、遺伝子破壊を生じさせる可能性もある。2つのこのようなDSBの作製から、任意の広い領域の欠失が生じる。ジンクフィンガータンパク質のモジュラーDNA認識優先性により、部位特異的マルチフィンガーDNA結合タンパク質の合理的な設計が可能になる。II型制限酵素FokIのヌクレアーゼドメインの部位特異的ジンクフィンガータンパク質への融合により、部位特異的ヌクレアーゼの作製が可能になる。例えば、米国特許公開第20030232410号、第20050208489号、第20050026157号、第20050064474号、第20060188987号、第20060063231号、および国際公開第WO 07/014275号を参照し、これらの開示は、参照することによりその全体が援用される。
【発明の概要】
【0006】
ゼブラフィッシュにおける1つもしくは複数のパラログの切断、1つもしくは複数のゼブラフィッシュ遺伝子における標的改変(挿入、欠失および/または置換変異)、ゼブラフィッシュにおける1つもしくは複数のパラログの一部または完全な不活性化、相同性指向性修復および/またはゼブラフィッシュ遺伝子の新規対立遺伝子形態をコードするランダム変異の発生の誘発方法を含むが、これらに限定されないゼブラフィッシュにおけるゲノム編集のための組成物を本明細書で開示する。
【0007】
一態様において、ゼブラフィッシュゲノムの関心領域の標的部位に結合するジンクフィンガータンパク質(ZFP)を本明細書で説明し、ここで、ZFPは、1つもしくは複数の設計されたジンクフィンガー結合ドメインを含む。一実施形態において、ZFPは、ゼブラフィッシュの関心の標的ゲノム領域を切断するジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)であり、ここで、ZFNは、1つもしくは複数の設計されたジンクフィンガー結合ドメインおよびヌクレアーゼ切断ドメインもしくは切断半ドメインを含む。切断ドメインおよび切断半ドメインは、例えば、様々な制限エンドヌクレアーゼおよび/またはホーミングエンドヌクレアーゼから取得され得る。一実施形態において、切断半ドメインは、II型制限エンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)から派生する。該ZFNは、特定のゼブラフィッシュ遺伝子配列の1つを特異的に切断してもよい。代替的に、該ZFNは、ゼブラフィッシュパラロガスまたはオルソロガス遺伝子配列を含んでもよい、2つ以上の相同ゼブラフィッシュ遺伝子配列を切断してもよい。
【0008】
該ZFNは、ゼブラフィッシュ遺伝子のコード領域内の、もしくは、例えば、リーダー配列、トレーラー配列、またはイントロン等の遺伝子内もしくは近接する非コード配列での、またはコード領域の上流または下流のいずれかの非転写領域内のゼブラフィッシュ遺伝子に結合および/またはそれを切断してもよい。特定の実施形態において、該ZFNは、標的ゼブラフィッシュ遺伝子のコード配列、または制御配列に結合および/またはそれを切断する。
【0009】
別の態様において、本明細書で説明される1つもしくは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼを含む組成物を本明細書で説明する。ゼブラフィッシュは、独特な標的遺伝子を1つ、または複数のパラロガス標的遺伝子を含んでもよい。したがって、組成物は、例えば、ゼブラフィッシュ細胞に存在する1、2、3、4、5、もしくは最大の、任意の数のパラロガス、または全パラロガス等、ゼブラフィッシュ細胞の1つもしくは複数の遺伝子を標的にする1つもしくは複数のZFPを含んでもよい。一実施形態において、該組成物は、ゼブラフィッシュ細胞の全パラロガス遺伝子を標的とする1つもしくは複数のZFPを含む。別の実施形態において、該組成物は、細胞中の1つの特定のゼブラフィッシュパラロガスを標的とするZFPを1つ含む。
【0010】
別の態様において、本明細書に説明する1つもしくは複数のZFNをコードするポリヌクレオチドを本明細書で説明する。該ポリヌクレオチドは、例えば、mRNAであってもよい。
【0011】
別の態様において、操作可能にプロモータに連結する、本明細書に説明する1つもしくは複数のZFNをコードするポリヌクレオチドを含むZFN発現ベクターを本明細書で説明する。
【0012】
別の態様において、1つもしくは複数のZFN発現ベクターを含むゼブラフィッシュ宿主細胞を本明細書で説明する。ゼブラフィッシュ宿主細胞は、ZFP発現ベクターを用いて、安定して形質転換されるか、一過性に形質移入されるか、またはそれらの組み合わせであってもよい。一実施形態において、当該1つもしくは複数のZFP発現ベクターは、ゼブラフィッシュ宿主細胞で、1つもしくは複数のZFNを発現する。
【0013】
別の態様において、ゼブラフィッシュ細胞の1つもしくは複数のパラロガス遺伝子を切断する方法を本明細書で説明するが、本方法は、(a)1つもしくは複数のZFNを発現し、1つもしくは複数のパラロガス遺伝子を切断する条件下で1つもしくは複数のパラロガス遺伝子の標的部位に結合する、1つもしくは複数のZFNをコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドをゼブラフィッシュ細胞に導入するステップを含む。一実施形態において、ゼブラフィッシュ細胞内の1つの特定のゼブラフィッシュパラロガス遺伝子が、切断される。別の実施形態において、1つもしくは複数のゼブラフィッシュパラログが切断され、例えば、ゼブラフィッシュ細胞に存在する、2、3、4、5、もしくは最大の、任意の数のパラログまたは全てのパラログが切断される。該ポリヌクレオチドは、例えば、mRNAであってもよい。
【0014】
また別の態様において、ゼブラフィッシュ細胞のゲノムに外因性配列を導入する方法を本明細書で説明するが、本方法は、(a)1つもしくは複数のZFNを発現し、1つもしくは複数のパラロガス遺伝子を切断する条件下で1つもしくは複数のパラロガス遺伝子の標的部位に結合する、1つもしくは複数のZFNをコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドをゼブラフィッシュ細胞に導入するステップと、(b)パラロガス遺伝子の切断が、相同組み換えにより外因性ポリヌクレオチドのゲノムへの組み込みを刺激するように、外因性ポリヌクレオチドを該細胞と接触させるステップと、を含む。特定の実施形態において、外因性ポリヌクレオチドは、物理的に該ゲノムに組み込まれる。他の実施形態において、外因性ポリヌクレオチドは、核酸の複製プロセス(例えば、二本鎖切断の相同性指向性修復)を介して、外因性配列の宿主細胞ゲノムへの複写により該ゲノムに取り込まれる。特定の実施形態において、該当1つもしくは複数のヌクレアーゼは、IIS型制限エンドヌクレアーゼの切断ドメインと設計されたジンクフィンガー結合ドメインとの間の融合である。
【0015】
別の実施形態において、ゼブラフィッシュのゲノムにおける1つもしくは複数の遺伝子配列を修飾する方法を本明細書で説明するが、本方法は、(a)1つもしくは複数の標的遺伝子配列を含むゼブラフィッシュ細胞を提供するステップと、(b)該細胞で、第1および第2のジンクフィンガーヌクレアーゼを発現するステップと、を含み、ここで、第1のZFNが第1の切断部位で切断し、第2のZFNが第2の切断部位で切断し、遺伝子配列が第1の切断部位と第2の切断部位との間に位置し、第1と第2の切断部位の切断が非相同末端結合により遺伝子配列の修飾を生じる。特定の実施形態において、非相同末端結合は、第1および第2の切断部位で欠失を生じる。遺伝子配列における欠失の大きさは、第1およびと第2の切断との間の距離により決定される。つまり、関心の任意のゲノム領域での任意の大きさの欠失が取得され得る。25、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000のヌクレオチド対、またはこの範囲の任意の整数値のヌクレオチド対の欠失が取得され得る。さらに、1,000ヌクレオチド対を超えるヌクレオチド対の任意の整数値の配列の欠失は、本明細書に開示される方法および組成物を使用して取得され得る。他の実施形態において、非相同末端結合は、第1と第2の切断部位との間の挿入をもたらす。本明細書に説明する通り、ゼブラフィッシュのゲノムの修飾方法は、例えば、これらの遺伝子の新規対立遺伝子形態を保有する動物の同定または選択を可能にする、遺伝子の不活性化(一部または完全)により、または遺伝子の所定の位置でのランダム変異の作製により、動物(例えば、ヒト)疾患のモデルを作製するために使用され得る。
【0016】
また別の態様において、ゼブラフィッシュの1つもしくは複数標的遺伝子の生殖系列を破壊するための方法を本明細書で説明するが、本方法は、本明細書で説明する任意の方法により、ゼブラフィッシュ胚の1つもしくは複数の細胞のゲノムで1つもしくは複数の遺伝子を修飾するステップと、ゼブラフィッシュ胚を成熟期に到達させるステップと、を含み、ここで、修飾された遺伝子配列が、性的に成熟したゼブラフィッシュの配偶子の少なくとも一部に存在する。
【0017】
別の態様において、関心のゼブラフィッシュ遺伝子座での1つもしくは複数の遺伝的変異対立遺伝子の作製方法を本明細書で説明するが、本方法は、本明細書で説明する任意の方法により、ゼブラフィッシュ胚の1つもしくは複数の細胞のゲノム内の1つもしくは複数の遺伝子を修飾するステップと、ゼブラフィッシュ胚を成熟期まで育成するステップと、性的に成熟したゼブラフィッシュが子孫を生産できるようにするステップと、を含み、ここで、子孫のいくつかは、変異対立遺伝子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ゴールデン遺伝子破壊時のゼブラフィッシュ胚の色素沈着を示す。上方パネルは、野生型生物を示す。上から2番目のパネルは、Lamason et al.(2005)Science 310(5755):1782−6に説明されるようにゴールデン遺伝子が変異した時のゼブラフィッシュ胚を示す。左の一番下のパネルは、golbl+/-背景のゼブラフィッシュの眼の色素沈着を示す。下のパネルの右の3つは、ゴールデン遺伝子に対して向けられた5ngのZFN mRNAを注入されたgolbl+/-ゼブラフィッシュの眼の色素沈着を示す。
【0019】
【図2】様々なゴールデン標的ZFN対(横軸に示す)のZFN mRNAを注入された時に、示される表現型を示すゼブラフィッシュ胚のパーセンテージを図示するグラフである。薄い灰色の棒は、野生型の眼の色素沈着のパーセンテージを示す。暗い灰色の棒は、無色素の眼を有する胚のパーセンテージを示し、白い棒は、スコアされなかった胚のパーセンテージを示す。
【0020】
【図3】ゴールデン標的ZFN mRNAを注入された様々なゼブラフィッシュ胚からの細胞の配列解析を示す。該ZFNにより誘発された欠失および挿入は、示す通りである。
【0021】
【図4】パネルAからDは、尾なし/ブラキュリ(ntl)遺伝子の破壊時のゼブラフィッシュ胚の尾形成を示す。図4Aは、野生型ゼブラフィッシュ胚を示す。図4Bは、Amacher et al.(2002)Development 129(14):3311−23に説明されるように、尾なし遺伝子が変異した時のゼブラフィッシュ胚を示す。図4Cは、ntl+/-遺伝子型を有するゼブラフィッシュ胚を示し、図4Dは、ntl遺伝子に対して向けられた5ngのZFN mRNAを注入されたntl+/-遺伝子型のゼブラフィッシュ胚を示す。
【0022】
【図5】パネルAからHは、野生型、ntlハイポモルフ、およびntl−注入ZFN 胚の尾を示す。図5Aは、5ngのntl−標的ZFN対を注入された胚を示す。図5Bは、ntlハイポモルフntlb487を示す。図5CおよびDは、野生型ゼブラフィッシュ胚を示す。図5EおよびGは、ZFN対をコードする5ngのntlを注入された後のntlb195ヘテロ接合胚におけるntlハイポモルフ表現型を示す。図5FおよびHは、ntlハイポモルフntlb487 胚を示す。
【0023】
【図6】ntl標的ZFNを注入された様々なゼブラフィッシュ胚からの細胞の配列解析を示す。ZFNにより誘発された欠失および挿入は、示す通りである。
【0024】
【図7A】パネルAからCは、尾なし標的ZFNを注入されたゼブラフィッシュにおける、尾形成および尾なし対立遺伝子の一部の配列を示す。図7Aは、野生型非注入ゼブラフィッシュ胚(左のパネル)およびntl標的ZFNをコードするmRNAを注入されたゼブラフィッシュ胚(中央および左のパネル)の尾形成を示す。胚は、ntl様表現型(中央のパネル)を示し、いくつかは、さらに軽い壊死(右のパネル)を示した。脊索のntl発現を検知するための代表的な胚のインサイツハイブリダイゼーションを各パネルに差し込む。
【図7B】パネルAからCは、尾なし標的ZFNを注入されたゼブラフィッシュにおける、尾形成および尾なし対立遺伝子の一部の配列を示す。図7Bは、1つの代表的なntl標的ZFN mRNA注入胚のntl遺伝子座の配列を示す。示すとおり、多数の独特なntl対立遺伝子が観察され、最大70%の配列決定された染色分体が誘発された変異を保有した。
【図7C】パネルAからCは、尾なし標的ZFNを注入されたゼブラフィッシュにおける、尾形成および尾なし対立遺伝子の一部の配列を示す。図7Cは、ntl標的ZFN mRNAが注入された尾なしの成魚ゼブラフィッシュ(図8Aを参照)から採取した少量の後方の組織サンプルのntl遺伝子座の配列を示す。各対立遺伝子型の頻度は、対立遺伝子の記述後に示される。
【0025】
【図8】パネルAからCは、尾形成、および後方の切断を伴うntl標的ZFNをコードするmRNAを注入した野生型胚由来の稚魚ゼブラフィッシュのntl対立遺伝子の一部の配列を示す。図8Aは、正常な稚魚(左の2つのパネル)、ならびに後方が切断された稚魚ゼブラフィッシュ(右の2つのパネル)を示す。図8Bは、野生型(左のパネル)ゼブラフィッシュ胚、および相補クロス(右のパネル)のZFN注入ファウンダー動物の子孫において観察されたntl表現型を表す。ntl標的ZFNをコードするmRNAを注入された野生型の胚は、成魚期まで成長し、ファウンダーの雌からの卵子は、相補クロスのために、ntlb195ヘテロ接合の雄からの精子を用いて生体外で受精させた。図8Cは、相補クロスにおいて表現型ntl子孫を生産した4匹のファウンダー動物からのntl対立遺伝子の配列データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ゼブラフィッシュにおけるゲノム編集(例えば、遺伝子の切断;例えば、切断後の外因性配列の挿入(物理的な挿入、または相同性指向性修復を介した複製による挿入)、および/または切断後の非相同末端結合(NHEJ)等の遺伝子の改変;1つもしくは複数の遺伝子の一部または完全不活性化;改変された内在性遺伝子の発現を作製するためのランダム変異を有する対立遺伝子の生成等)のための組成物および方法を本明細書で説明する。また、例えば、標的ゼブラフィッシュ細胞における1つもしくは複数の遺伝子を編集(改変)するための、これらの組成物(試薬)の作製および使用方法を開示する。したがって、本明細書に説明する方法および組成物は、1つもしくは複数のゼブラフィッシュ遺伝子(パラログ)の標的遺伝子の改変(例えば、ノックイン)および/または(一部または完全)ノックアウト、および/または任意の標的対立遺伝子のランダム変異のための高効率な方法を提供し、したがって、ヒト疾患の動物モデルの作製を可能にする。
【0027】
概要
本明細書に開示する方法の実践ならびに組成物の調製および使用は、特に記載がない限り、当該分野の技術内である生物学、生物化学、クロマチン構造および分析、計算化学、細胞培養、組み換えDNA、および関連する分野における従来の技術を使用する。これらの技術は、文献に詳細に説明されている。例えば、Sambrook et al. MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989およびThird edition,2001;Ausubel et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,New York,1987および周期的に更新されたもの;METHODS IN ENZYMOLOGY,Academic Press,San Diegoシリーズ;Wolffe,CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION,Third edition,Academic Press,San Diego,1998;METHODS IN ENZYMOLOGY,Vol.304,“Chromatin” (P.M.Wassarman and A. P. Wolffe,eds.), Academic Press,San Diego,1999;およびMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Vol.119,“Chromatin Protocols”(P.B.Becker,ed.)Humana Press,Totowa,1999を参照のこと。
【0028】
定義
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、線状または環状構造で、一本鎖または二本鎖型のいずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを意味する。本開示の目的のため、これらの用語は、ポリマーの長さに関して、制限があるように解釈されない。当該用語は、天然のヌクレオチドおよび塩基、糖および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエートのバックボーン)で修飾されるヌクレオチドの既知の類似体を包含し得る。一般的に、特定のヌクレオチドの類似体は、同一塩基対特異性、つまり、AはTと塩基対合する類似体を有する。
【0029】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを意味する。当該用語は、また、1つもしくは複数のアミノ酸が対応する自然発生のアミノ酸の化学類似体または改質誘導体である、アミノ酸ポリマーに使用される。
【0030】
「結合」とは、巨大分子間(例えば、タンパク質と核酸との間)の配列特異の共有結合を意味する。相互作用全体が配列特異である限り、結合相互作用の全ての要素が、配列特異的(例えば、DNZのバックボーンのリン酸残基と接触する)である必要はない。このような相互作用は、概して、10-6-1またはそれ以下の解離係数(Kd)により特徴付けされる。「親和性」は、結合の強度を意味し、結合親和性の増加は、より低いKdと相関する。
【0031】
「結合タンパク質」とは、別の分子に非共有的に結合できるタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合できる。タンパク質結合タンパク質の場合、(ホモダイマー、ホモトリマー等を形成する)タンパク質自体に結合できる、および/または異なる1つのタンパク質または複数のタンパク質の1つもしくは複数の分子に結合できる。結合タンパク質は、2種類以上の結合活性を有することが可能である。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合、RNA結合、およびタンパク質結合活性を有する。
【0032】
「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質(または結合ドメイン)は、構造が亜鉛イオンの配位を通して安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である、1つもしくは複数のジンクフィンガーを通して配列特異の様式でDNAに結合する、タンパク質、またはより大きなタンパク質内のドメインである。ジンクフィンガーDNA結合タンパク質という用語は、しばしば、ジンクフィンガータンパク質またはZFPのように省略される。
【0033】
ジンクフィンガー結合ドメインは、所定のヌクレオチド配列に結合するように「設計」され得る。ジンクフィンガータンパク質の設計方法の例は、設計および選択であるが、これに限定されない。設計されたジンクフィンガータンパク質は、設計/組成が、主に合理的な基準の結果である、自然に発生しないタンパク質である。設計の合理的な基準は、置換規則および既存のZFPの設計および結合データの情報を保存するデータベースの情報を処理するコンピュータ化されたアルゴリズムの適用を含む。例えば、米国特許第6,140,081号;第6,453,242号;および第6,534,261号を参照のこと。また、国際公開第WO98/53058号;第WO98/53059号;第WO98/53060号;第WO02/号、および第WO03/016496号も参照のこと。
【0034】
「選択された」ジンクフィンガータンパク質は、その生成が、主に、ファージディスプレイ法、インターアクショントラップ法、またはハイブリッド選択等の実験プロセスに起因する、自然界で発見されないタンパク質である。例えば、米国特許第5,789,538号、第5,925,523号、第6,007,988号、第6,013,453号、第6,200,759号、国際公開第WO95/19431号、第WO96/06166号、第WO98/53057号、第WO98/54311号、第WO00/27878号、第WO01/60970号、第WO01/88197号、および第WO02/099084号を参照のこと。
【0035】
「配列」という用語は、DNAまたはRNAであり得る、線状、環状、または分枝状であり得る、または一本鎖または二本鎖のいずれか一方であり得る、任意の長さのヌクレオチド配列を意味する。「ドナー配列」という用語は、ゲノムに挿入されるヌクレオチド配列を意味する。ドナー配列は、例えば、長さが2から10,000ヌクレオチドの間(もしくはそれらの間、またはそれ以上の任意の整数)、好ましくは、長さが約100から1,000ヌクレオチドの間(またはそれらの間の任意の整数)、より好ましくは、長さが約200から500ヌクレオチドの間の任意の長さであり得る。
【0036】
「相同、非同一配列」とは、第2配列とある程度の配列相同性を共用するが、その配列は、第2の配列のそれとは同一ではない第1の配列を意味する。例えば、野生型の変異遺伝子の配列を含むポリヌクレオチドは、変異遺伝子の配列に対し、相同かつ非同一である。特定の実施形態において、2つの配列間の相同の程度は、正常な細胞機構を利用して、それらの間の相同組み換えを可能にするのに十分である。2つの相同非同一配列は、任意の長さであり得、それらの非相同の程度は、単一ヌクレオチド(例えば、標的相同組み込みによるゲノム点変異の補正)と同じくらい小さいか、または10またはそれ以上のキロベース(例えば、染色体における所定の異所部位での遺伝子の挿入)と同じくらいの大きさであり得る。相同非同一配列を含む2つのポリヌクレオチドは、長さが同一である必要はない。例えば、20から10,000ヌクレオチドまたはヌクレオチド対の外因性ポリヌクレオチド(つまり、ドナーポリヌクレオチド)が使用され得る。
【0037】
核酸およびアミノ酸配列同一性を決定する技術は、当該分野において周知である。典型的に、このような技術は、遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列の決定、および/またはそれによりコードされるアミノ酸配列の決定、およびこれらの配列の第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列との比較を含む。ゲノム配列も、本様式で決定、および比較され得る。一般的に、同一性は、それぞれ、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に対応する、完全なヌクレオチド対ヌクレオチド、またはアミノ酸対アミノ酸を意味する。2つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの同一性%を決定することにより比較され得る。2つの配列の同一性%は、核酸またはアミノ酸配列に関わらず、2つの整列された配列の間で完全に一致する配列を短い配列の長さで割り、100を掛けた数である。核酸配列のおおよその整列は、Smith and Waterman,Advances in Applied Mathematics2:482−489(1981)の局所相同アルゴリズムにより提供される。本アルゴリズムは、Dayhoff, Atlas of Protein Sequences and Structure,M.O.Dayhoff ed.,5suppl.3:353−358,National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.,USAにより開発され、Gribskov,Nucl. Acids Res.14(6):6745−6763(1986)により基準化されたスコアマトリックスを使用してアミノ酸配列に適用され得る。配列の同一性%を決定するための本アルゴリズムの例示的適用は、「BestFit」ユティリティーアプリケーションにおけるGenetics Computer Group(Madison, WI)により提供される。本方法のデフォルトのパラメータは、Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual,バージョン 8(1995)(Genetics Computer Group,Madison,WIから入手可能)で説明される。本開示の内容で同一性%を確立する好適な方法は、エジンバラ大学(University of Edinburgh)により著作権が保護され、John F. Collins and Shane S.Sturrokにより開発され、IntelliGenetics,Inc.(Mountain View,CA)により広められた、MPSRCHパッケージプログラムを使用することである。本パッケージ一式から、デフォルトのパラメータがスコア表(例えば、12のギャップ開始ペナルティ、1のギャップ伸長ペナルティ、および6のギャップ)のために使用されるSmith−Watermanアルゴリズムが、使用され得る。生成されたデータから、「一致」値は、配列同一性を表す。配列間の同一性%または類似性を計算するための他の適切なプログラムは、概して、当該分野において周知であり、例えば、別のアライメントプログラムは、デフォルトのパラメータを用いて使用されるBLASTがある。例えば、BLASTNおよびBLASTPは、次のデフォルトパラメータを使用して使用され得る:遺伝コード=標準;フィルタ=なし;鎖=両方;カットオフ=60;予想=10;マトリックス=BLOSUM62;記述=50配列;選別=HIGH SCORE;データベース=重複なし, GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+Swissタンパク質+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、次のインターネットアドレスで見出すことができるhttp://www.ncbi.nlm.gov/cgi−bin/BLAST。本明細書に説明する配列に関して、所望する配列同一性の程度の範囲は、約80%から100%で、これらの間の任意の整数値である。典型的に、配列間の同一性は、少なくとも70から75%、好ましくは、80から82%、より好ましくは、85から90%、さらにより好ましくは、92%、またより好ましくは、95%、そして最も好ましくは、98%の配列同一性である。
【0038】
代替的に、ポリヌクレオチド間の配列類似性の程度は、相同領域間の安定した二本鎖の形成の後に、一本鎖特異的ヌクレアーゼを用いた消化、および消化された断片の大きさの決定を可能にする条件下で、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより決定され得る。2つの核酸、または2つのポリペプチド配列は、配列が、上の方法を使用して決定される通り、分子の所定の長さに対して、少なくとも約70から75%、好ましくは、80から82%、より好ましくは、85から90%、さらにより好ましくは、92%、またより好ましくは、95%、そして最も好ましくは、98%の配列同一性を表す時、実質的に、互いに相同である。また、本明細書で使用される、実質的な相同とは、特定のDNAまたはポリペプチド配列に対して完全な同一性を示す配列を意味する。実質的に相同であるDNA配列は、特定のシステム用に定義される通り、例えば、厳密な条件下のサザンハイブリダイゼーション実験で同定され得る。適切なハイブリダイゼーション条件の定義は、当該分野の技術内である。例えば、Sambrook et al.,上記を参照;Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach,editors B.D.Hames and S.J.Higgins,(1985)Oxford;Washington,DC; IRL Press)を参照のこと。
【0039】
2つの核酸断片の選択的ハイブリダイゼーションは、以下のように決定され得る。2つの核酸分子間の配列同一性の程度は、このような分子間のハイブリダイゼーション事象の効率および強度に影響する。部分的に同一の核酸配列は、少なくとも、標的分子に対して完全同一配列のハイブリダイゼーションを部分的に阻害する。完全同一配列のハイブリダイゼーションの阻害は、当該分野で周知であるハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、Southern(DNA)blot, Northern(RNA)blot,solution hybridization等,Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Second Edition,(1989)Cold Spring Harbor, N.Y.を参照)を使用して評価され得る。このようなアッセイは、例えば、低から高までのストリンジェンシーの様々な条件を使用することにより、選択性の様々な程度を使用して実施され得る。ストリンジェンシーの低い条件が使用される場合、非特異結合の不在は、一部の配列同一性の程度さえ欠損する二次プローブ(例えば、標的分子と約30%以下の配列同一性を有するプローブ)を使用して評価され得るため、非特異結合事象において、二次プローブは標的にハイブリダイズしない。
【0040】
ハイブリダイゼーションベースの検知システムが利用される時、参照核酸配列に相補的である核酸プローブが選択され、次に、適切な条件の選択により、プローブおよび参照配列は、選択的に、互いに、ハイブリダイズ、または結合し、二本鎖分子を形成する。中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で参照配列に選択的にハイブリダイズできる核酸分子は、典型的に、選択された核酸プローブの配列と少なくとも約70%の配列同一性を有する、長さが少なくとも約10から14ヌクレオチドの標的核酸配列の検知を可能にする条件下でハイブリダイズする。厳密なハイブリダイゼーション条件は、典型的に、選択された核酸プローブの配列と約90から95%以上の配列同一性を有する、長さが少なくとも約10から14ヌクレオチドの標的核酸配列の検知を可能にする。プローブおよび参照配列が特定の配列同一性の程度を有する、プローブ/参照配列ハイブリダイゼーションに有用であるハイブリダイゼーション条件は、当該分野に周知である通り(例えば、Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach,editors B.D.Hames and S.J.Higgins,(1985)Oxford;Washington,DC; IRL Pressを参照)、決定され得る。
【0041】
ハイブリダイゼーションの条件は、当該分野に精通する者によく知られている。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーション条件が、不一致のハイブリッドに対する低い耐性と相関する高いストリンジェンシーを伴う不一致のヌクレオチドを含むハイブリッドの形成を嫌う程度を意味する。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要因は、当該分野に精通する者によく知られており、温度、pH、イオン強度、および例えば、ホルムアミドおよびジメチルスルホキシド等の有機溶媒の濃度を含むが、これらに限定されない。当該分野に精通する者に周知の通り、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、高温、低イオン強度、および低溶媒濃度により増大される。
【0042】
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーの条件に関して、多数の等価条件が、例えば、次の要因を変化させることにより、特定のストリンジェンシーを確立するために使用され得ることは、当該分野においてよく知られている:配列の長さおよび性質、様々な配列の塩基組成物、塩類および他のハイブリダイゼーション溶液要素の濃度、ハイブリダイゼーション溶液中の遮断薬(例えば、デキストラン硫酸およびポリエチレングリコール)の有無、ハイブリダイゼーション反応温度および時間パラメータ、ならびに様々な洗浄条件。特定のハイブリダイゼーション条件のセットの選択は、当該分野における標準方法(例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,(1989)Cold Spring Harbor,N.Y.を参照のこと)に従い選択される。
【0043】
「組み換え」とは、2つのポリヌクレオチド間での遺伝子情報交換プロセスを意味する。本開示の目的において、「相同組み換え(HR)」とは、例えば、相同性指向性修復メカニズムを介した細胞の二本鎖切断の修復中に起こる、特定のこのような交換形態を意味する。本プロセスは、ヌクレオチド配列相同性を必要とし、「ドナー」分子を「標的」分子のテンプレート修復(つまり、二本鎖切断を受けた分子)に使用し、ドナーから標的への遺伝子情報の転移を生じるため、「非交差型遺伝子変換(non‐crossover gene conversion)」または「短路遺伝子変換(short tract gene conversion)」として様々に知られる。任意の特定の理論に拘束されることなく、このような転移は、破壊標的とドナーとの間に形成されるヘテロ二重DNAの不一致修復、および/またはドナーが標的の一部となる遺伝子情報を再合成するために使用される「合成依存鎖アニーリング」、および/または関連するプロセスを含み得る。このような特異HRは、しばしば、標的分子の配列の改変を生じるため、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全てが、標的ポリヌクレオチドに組み込まれる。
【0044】
「切断」とは、DNA分子の共有結合バックボーンの破壊を意味する。切断は、リン酸ジエステル結合の酵素または化学加水分解を含むがこれらに限定されない様々な方法により開始され得る。一本鎖切断および二本鎖切断の両方が可能であり、二本鎖切断は、2つの異なる一本鎖切断事象の結果として起こり得る。DNA切断は、平滑末端または付着末端のいずれかの生産をもたらす。特定の実施形態において、融合ポリペプチドは、標的二本鎖DNA切断に使用される。
【0045】
「切断半ドメイン」は、(同一または異なる)第2のポリペプチドと併用して、切断活性(好ましくは、二本鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。「第1および第2切断半ドメイン」、「+および-切断半ドメイン」、および「右および左切断半ドメイン」という用語は、互換的に使用され、二量体化する切断半ドメインの対を意味する。
【0046】
「設計された切断半ドメイン」とは、別の切断半ドメイン(例えば、別の設計された切断半ドメイン)と共に偏性ヘテロダイマーを形成するように修飾された切断半ドメインである。参照することによりその全体が本明細書に援用される、米国特許出願第10/912,932号および第11/304,981号、および米国仮出願第60/808,486号(2006年5月25日出願)も参照のこと。
【0047】
「クロマチン」とは、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、およびヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含有するタンパク質を含む。大部分の真核細胞クロマチンは、ヌクレオソームの形態で存在し、ヌクレオソームコアは、ヒストンH2A、H2B、H3およびH4をそれぞれ2つ含有するオクタマーと結合する約150のDNAの塩基対を含み、および(生物体によって様々な長さの)リンカーDNAはヌクレオソームコア間に伸長する。ヒストンH1の分子は、概して、リンカーDNAと結合する。本開示の目的のため、「クロマチン」という用語は、原核および真核の両方の全ての種類の細胞核タンパク質を包含することを意味する。細胞クロマチンは、染色体およびエピソームクロマチンの両方を含む。
【0048】
「染色体」とは、細胞のゲノムの全てまたは一部を含む染色体複合体である。細胞のゲノムは、しばしば、細胞のゲノムを含む全染色体の収集物である、その核型により特徴付けされる。細胞のゲノムは、1つもしくは複数の染色体を含む。
【0049】
「エピソーム」とは、核酸の複製、核タンパク質複合体、または細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む他の構造である。エピソームの例は、プラスミドおよび特定のウイルスゲノムを含む。
【0050】
「利用可能な領域」とは、核酸に存在する標的部位が、標的部位を認識する外因性分子により結合され得る、細胞クロマチンの部位である。任意の特定の理論に拘束されることなく、利用可能な領域は、ヌクレオソーム構造内に組み込まれない領域であると考えられる。利用可能な領域の明確な構造は、しばしば、例えば、ヌクレアーゼ等の化学および酵素プローブに対する感受性により検知され得る。
【0051】
「標的部位」または「標的配列」とは、結合に効率的な条件が存在する場合、結合分子が結合する核酸の一部を定義する核酸配列である。例えば、配列5’−GAATTC-3’は、Eco RI制限エンドヌクレアーゼの標的部位である。
【0052】
「外因性」分子とは、通常、細胞に存在しない分子であるが、1つもしくは複数の遺伝子的、生化学的、または他の方法により細胞に導入され得る分子である。「細胞での正常な存在」は、細胞の特定の発達段階および環境条件に対して決定される。したがって、例えば、胚の筋発生中にのみ存在する分子は、成体の筋細胞に対して外因性分子である。同様に、熱ショックにより誘発された分子は、非熱ショック細胞に対して外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能不全内在性分子の機能バージョンまたは正常に機能する内在性分子の機能不全バージョンを含む。
【0053】
外因性分子は、とりわけ、コンビナトリアルケミストリープロセスにより生成されるような小分子、もしくはタンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖類、上述の分子の任意の修飾された誘導体、または1つもしくは複数の上述の分子を含む任意の複合体等の巨大分子であってもよい。核酸はDNAおよびRNAを含み、一本鎖または二本鎖であり得、線状、分枝状または環状であり得、そして任意の長さであり得る。核酸は、二本鎖、ならびに三本鎖形成核酸を形成できるものを含む。例えば、米国特許第5,176,996号および第5,422,251号を参照のこと。タンパク質は、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチン再構成因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ギラーゼ、およびヘリカーゼを含むが、これに限定されない。
【0054】
外因性分子は、例えば、外因性タンパク質または核酸等、内在性分子のように同一種類の分子であり得る。例えば、外因性核酸は、細胞に導入される感染ウイルスゲノム、プラスミド、もしくはエピソーム、または通常細胞に存在しない染色体を含む。外因性分子を細胞に導入する方法は、当該分野に精通する者に周知であり、脂質介在転移(つまり、中性および陽イオン性脂質を含むリポソーム)、電気穿孔、直接注入、細胞融合、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈、DEAEデキストラン介在転移、およびウイルスベクター介在転移を含むが、これらに限定されない。
【0055】
対照的に、「内在性」分子は、通常、特定の環境条件下の特定の発達段階で、特定の細胞に存在する分子である。例えば、内在性核酸は、染色体、ミトコンドリアのゲノム、葉緑体もしくは他の小器官、または自然発生のエピソーム核酸を含む。追加の内在性分子は、タンパク質、例えば、転写因子および酵素を含むことができる。
【0056】
「融合」分子は、2つ以上のサブユニット分子が連結される、好ましくは、共有結合される分子である。該サブユニット分子は、同一の化学的種類の分子であり得、または異なる化学的種類の分子であり得る。最初の種類の融合分子の例は、融合タンパク質(例えば、ZFP DNA結合ドメインと切断ドメインとの間の融合)および融合核酸(例えば、上述に説明する融合タンパク質をコードする核酸)を含むが、これに限定されない。第2の種類の融合分子は、三本鎖形成核酸とポリペプチドとの間の融合、および副溝バインダーと核酸との間の融合を含むが、これに限定されない。
【0057】
細胞における融合タンパク質の発現は、融合タンパク質の細胞への運搬の、または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの細胞への運搬により生じ得、ポリヌクレオチドが転写され、転写が翻訳されて融合タンパク質を発生させる。トランススプライシング、ポリペプチド切断、およびポリペプチド連結も、細胞でのタンパク質の発現に関与し得る。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチドの運搬方法は、本開示の別の場所で提示される。
【0058】
本開示の目的における「遺伝子」は、このような調節配列がコードおよび/または転写配列に隣接するかどうかに関わらず、遺伝子産物(以下を参照)をコードするDNA領域、ならびに遺伝子産物の産生を調節する全てのDNA領域を含む。つまり、遺伝子は、プロモータ配列、ターミネータ、リボソーム結合部位および内部リボソーム侵入部位等の翻訳調節配列、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界要素、複製開始点、マトリックス付着部位、および遺伝子座制御領域を含むが、これに限定されない。
【0059】
「遺伝子発現」とは、遺伝子に含まれる情報の遺伝子産物への変換を意味する。遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA、または任意の他の種類のRNA)、またはmRNAの翻訳により産生されたタンパク質であり得る。遺伝子産物は、また、キャップ形成、ポリアデニル化、メチル化、および編集等のプロセスにより修飾されたRNA、および例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリスチル化、およびグリコシル化により修飾されたタンパク質を含む。
【0060】
遺伝子発現の「調節」とは、遺伝子の活性を変更することを意味する。発現の調節は、遺伝子の活性化および遺伝子の抑制を含むが、これに限定されない。ゲノム編集(例えば、切断、改変、不活性化、ランダム変異)は、発現を調節するために使用され得る。遺伝子の不活性化は、本明細書に説明する通り、ZFPを含まない細胞と比較した、遺伝子発現の任意の減少を意味する。したがって、遺伝子の不活性化は、部分的または完全であってもよい。
【0061】
「関心領域」とは、例えば、外因性分子を結合することが望ましい、遺伝子、遺伝子内または遺伝子に隣接する非コード配列等の細胞クロマチンの任意の領域である。結合は、標的DNA切断および/または標的再結合の目的のためであり得る。関心領域は、例えば、染色体、エピソーム、細胞小器官ゲノム(例えば、ミトコンドリア、葉緑体)、または感染ウイルスゲノムに存在し得る。関心領域は、遺伝子のコード領域内、例えば、リーダー配列、トレーラー配列またはイントロン等の転写された非コード領域内、またはコード領域の上流または下流のいずれかの非転写領域内であり得る。関心領域は、長さが単一ヌクレオチド対と同じくらい小さいか、もしくは最大2,000ヌクレオチド対、または任意の整数値のヌクレオチド対であり得る。
【0062】
「操作的連結」および「操作的に連結される」(または「操作可能に連結される」)という用語は、2つ以上の要素(配列エレメント)の並置に関して互換的に使用され、両方の要素が正常に機能し、少なくとも1つの要素が、他の要素の少なくとも1つによりもたらされる機能を介在できる可能性を許容するように、要素が配置される。例示として、プロモータ等の転写調節配列は、転写調節配列が1つもしくは複数の転写調節因子の存在または不在に応答して、コード配列の転写レベルを制御する場合、コード配列に操作的に連結される。転写調節配列は、概して、コード配列とシスで操作的に連結されるが、直接隣接する必要はない。例えば、エンハンサーは、隣接しないが、コード配列に操作的に連結される転写調節配列である。
【0063】
融合ポリペプチドについて、「操作的に連結される」という用語は、各要素が、他の要素に連結していない場合に実行し得る場合と同じように、他の要素への連結において同一の機能を実行する事実を意味し得る。例えば、ZFP結合ドメインが切断ドメインに融合される融合ポリペプチドについて、もしZFP DNA結合ドメインの一部が、融合ポリペプチドにおいて、切断ドメインが標的部位の近隣でDNAを切断できる間に、ZFP DNA結合ドメインの一部の標的部位および/またはその結合部位に結合できる場合、ZFP DNA結合ドメインおよび切断ドメインは操作的連結状態にある。
【0064】
タンパク質、ポリペプチド、または核酸の「機能的断片」は、配列が完全長のタンパク質、ポリペプチド、または核酸と同一ではないが、完全長のタンパク質、ポリペプチド、または核酸のように同一の機能を保持するタンパク質、ポリペプチド、または核酸である。機能的断片は、対応する未変性分子のように、多い、少ない、または同じ数の残基を保有できる、そして/または1つもしくは複数のアミノ酸またはヌクレオチド置換基を含有できる。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸にハイブリダイズできる能力)の決定方法は、当該分野においてよく知られている。同様に、タンパク質機能の決定方法もよく知られている。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルタ結合、電気泳動移動度シフト、または免疫沈降アッセイにより決定され得る。DNA切断は、ゲル電気泳動によりアッセイされ得る。上述のAusubel et al.を参照のこと。別のタンパク質と相互作用するタンパク質の能力は、遺伝的および生化学的に両方において、例えば、共免疫沈降、ツーハイブリッドアッセイ、または相補性により決定され得る。例えば、Fields et al.(1989)Nature 340:245−246;米国特許第5,585,245号およびPCT第WO98/44350号を参照のこと。
【0065】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ
1つもしくは複数のゼブラフィッシュ遺伝子のゲノム編集(例えば、切断、改変、不活性化および/またはランダム変異)に使用され得るジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を本明細書で開示する。ZFNは、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)およびヌクレアーゼ(切断)ドメイン(例えば、切断半ドメイン)を含む。
【0066】
A.ジンクフィンガータンパク質
ジンクフィンガー結合ドメインは、選択の配列に結合するように設計され得る。例えば、Beerli et al.(2002)Nature Biotechnol.20:135−141;Pabo et al.(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313−340;Isalan et al.(2001)Nature Biotechnol.19:656−660; Segal et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632−637;Choo et al.(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411−416を参照のこと。設計されたジンクフィンガー結合ドメインは、自然発生全フィンガータンパク質と比較して、新規な結合特異性を有し得る。設計方法は、合理的な設計および様々な種類の選択を含むが、これに限定されない。合理的な設計は、例えば、三重(または四重)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースの使用を含み、各三重または四重ヌクレオチド配列は、特定の三重または四重配列と結合するジンクフィンガーの1つもしくは複数のアミノ酸配列と結合する。例えば、参照することによりその全体が本明細書に援用される、共同所有の米国特許第6,453,242号および第6,534,261号を参照のこと。
【0067】
ファージディスプレイ法およびツーハイブリッドシステムを含む例示的な選択方法は、米国特許第5,789,538号;第5,925,523号;第6,007,988号;第6,013,453号;第6,410,248号;第 6,140,466号;第6,200,759号;および第6,242,568号;ならびに国際公開第WO98/37186;第WO98/53057号;第WO00/27878号;第WO01/88197号および英国特許第GB2,338,237号に開示されている。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインの結合特異性の強化は、例えば、共同所有の国際公開第WO02/077227号に説明されている。
【0068】
標的部位の選択、ZFPおよび融合タンパク質(および同一物をコードするポリヌクレオチド)の設計施行は、当該分野に精通した者に周知であり、米国特許出願公開第20050064474号および第20060188987号に詳細に説明されており、参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0069】
さらに、本明細書および別の文献に開示される通り、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガージンクフィンガータンパク質は、例えば、長さが5つ以上のアミノ酸(例えば、TGEKP(配列番号1)、TGGQRP (配列番号2)、TGQKP(配列番号3)、および/またはTGSQKP(配列番号4))のリンカーを含む、任意の適切なリンカー配列を使用して共に連結されてもよい。長さが6つ以上のアミノ酸の例示的なリンカー配列においては、例えば、米国特許第6,479,626;6,903,185号および第7,153,949号を参照のこと。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間の適切なリンカーのどんな組み合わせも含むことができる。
【0070】
表1は、ゼブラフィッシュゴールデン遺伝子のヌクレオチド配列に結合するように設計されたいくつかのジンクフィンガー結合ドメインを記述し、表4は、ゼブラフィッシュ尾なし遺伝子のヌクレオチド配列に結合するように設計されたいくつかのジンクフィンガー結合ドメインの認識へリックスを示す。特に、2番目から4番目の列は、各タンパク質における、ジンクフィンガーのそれぞれの認識領域のアミノ酸配列(へリックスの開始に対してアミノ酸−1から+6)を示す。各行は、個々のジンクフィンガーDNA結合ドメインを記述する。また、最初の列は、タンパク質の識別番号である。各タンパク質のDNA 標的配列を、表2(ゴールデン設計)および表5(尾なし設計)に示す。
【0071】
以下に説明する通り、特定の実施形態において、4、5、または6フィンガー結合ドメインは、例えば、FokI等のIIs型制限エンドヌクレアーゼの切断ドメイン等の切断半ドメインに融合される。このようなジンクフィンガー/ヌクレアーゼ半ドメイン融合の1つもしくは複数の対は、例えば、米国特許公開第20050064474号に開示される通り、標的切断に使用される。
【0072】
標的切断のために、結合部位の近端は、5つ以上のヌクレオチド対により分離され、融合タンパク質のそれぞれが、DNA標的の反対側の鎖に結合できる。ゼブラフィッシュ遺伝子の標的切断に全ての対様の組み合わせ1を使用することができる。本開示に従い、ZFNは、ゼブラフィッシュのゲノムのあらゆる配列を標的とすることができる。
【0073】
B.切断ドメイン
ZFNも、ヌクレアーゼ(切断ドメイン、切断半ドメイン)を含む。本明細書で開示される融合タンパク質の切断ドメイン部は、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから取得され得る。切断ドメインに由来し得る例示的エンドヌクレアーゼは、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼを含むが、これらに限定されない。例えば、2002−2003 Catalogue,New England Biolabs,Beverly,MA;およびBelfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3379−3388を参照のこと。DNAを切断する追加の酵素も知られている(例えば、S1ヌクレアーゼ;マングビーンヌクレアーゼ;膵DNアーゼI; 小球菌ヌクレアーゼ;イーストHO エンドヌクレアーゼ;Linn et al.(eds.)Nucleases,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1993も参照のこと)。1つもしくは複数のこれらの酵素(またはその機能的断片)は、切断ドメインおよび切断半ドメインの源として使用され得る。
【0074】
同様に、切断活性の二量体化を必要とする切断半ドメインは、上述の通り、任意のヌクレアーゼまたはその一部に由来する。概して、融合タンパク質が切断半ドメインを含む場合、2つの融合タンパク質が切断に必要となる。代替的に、2つの切断半ドメインを含む単一タンパク質も使用され得る。2つの切断半ドメインは、同一のエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来し得るか、または各切断半ドメインは、異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来し得る。さらに、2つの融合タンパク質の標的部位は、好ましくは、互いに対して配置されるため、2つの融合タンパク質の結合は、例えば、二量体化により、切断半ドメインが機能的切断ドメインを形成できるような互いに空間的配向に切断半ドメインを配置する。したがって、特定の実施形態において、標的部位の近端は、5から8のヌクレオチドにより、または15から18のヌクレオチドにより分離される。しかしながら、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2つの標的部位間(例えば、2から50のヌクレオチド対またはそれ以上)に介在できる。一般的に、該切断部位は、標的部位間に位置する。
【0075】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種に存在し、(認識部位で)DNAに配列特異的に結合し、結合部位で、またはその近くでDNAを切断できる。特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から除去される部位でDNAを切断し、分離可能な結合および切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素FokIは、一方の鎖の認識部位から9番目のヌクレオチドで、別の鎖の認識部位から13番目のヌクレオチドで、DNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;第5,436,150号、および 第5,487,994号;ならびにLi et al.(1992)Proc. Natl.Acad.Sci.USA 89:4275−4279;Li et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2764−2768;Kim et al.(1994a)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:883−887;Kim et al.(1994b)J.Biol.Chem.269:31,978−31,982を参照のこと。したがって、一実施形態において、融合タンパク質は、操作されてもよい、または操作されていなくてもよい、少なくとも1つのIIS型制限酵素および1つもしくは複数のジンクフィンガー結合ドメインからの切断ドメイン(または切断半ドメイン)を含む。
【0076】
切断ドメインが結合ドメインから分離可能である提示的なIIS型制限酵素は、Fok Iである。この特定の酵素は、ダイマーとして活性である。Bitinaite et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 10,570−10,575。したがって、本開示の目的のために、本開示の融合タンパク質に使用されるFok I酵素の一部は、切断半ドメインとみなされる。したがって、ジンクフィンガーFok I融合を使用する細胞配列の標的二本鎖切断および/または標的置換のために、それぞれFokI切断半ドメインを含む2つの融合タンパク質が、触媒的に活性切断ドメインを再構成するために使用され得る。代替的に、ジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFok I切断半ドメインを含む単一ポリペプチド分子も、使用され得る。ジンクフィンガー融合を使用する標的切断および標的配列改変のパラメータを本開示の別稿で提供する。
【0077】
切断ドメインまたは切断半ドメインは、機能的切断ドメインを形成するために、切断活性を保持する、または多量体化(例えば、二量体化)する能力を保持するタンパク質の任意の部分であり得る。
【0078】
例示的IIS型制限酵素は、国際公開第WO07/014275号に説明されており、その全体が本明細書に援用される。追加の制限酵素も、分離可能結合および切断ドメインを含み、これらは、本開示により考察される。例えば、Roberts et al.(2003)Nucleic Acids Res.31:418−420を参照のこと。
【0079】
特定の実施形態において、切断ドメインは、例えば、全ての開示が参照することによりその全体が本明細書に援用される、米国特許公開第20050064474号および第20060188987号、および米国出願第11/805,850号(2007年5月23日出願)に説明される、ホモ二量体化を最小限にする、または阻害する1つもしくは複数の設計された切断半ドメイン(二量体化ドメイン変異体とも呼ばれる)を含む。FokIの446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537、および538位置でのアミノ酸残基は、全てFokI切断半ドメインの二量体化の影響の標的である。
【0080】
偏性ヘテロダイマーを形成するFokIの例示的な設計された切断半ドメインは、第1の切断半ドメインが、FokIの490および538位置におけるアミノ酸残基の変異を含み、第2の切断半ドメインが、アミノ酸残基486および499で変異を含む対を含む。
【0081】
したがって、一実施形態において、490での変異はLys(K)でGlu(E)を置換し、538での変異はLys(K)でIso(I)を置換し、486での変異はGlu(E)でGln(Q)を置換し、499位置での変異はLys(K)でIso(I)を置換する。特異的に、本明細書に説明する設計された切断半ドメインは、「E490K:I538K」と称される設計された切断半ドメインを生成するために、切断半ドメインの1つで490(E→K)および538(I→K)位置を変異させることにより、そして、「Q486E:I499L」と称される設計された切断半ドメインを生成するために、別の切断半ドメインで486(Q→E)および499(I→L)位置を変異させることにより調製される。本明細書に説明される設計された切断半ドメインは、異常切断が最小化または消滅される偏性ヘテロダイマー変異体である。例えば、本開示は、全ての目的のため、参照することによりその全体が援用される、米国仮出願第60/808,486号(2006年5月25日出願)の実施例1を参照のこと。
【0082】
本明細書に説明される設計された切断半ドメインは、例えば、米国特許公開第20050064474号(シリアル番号10/912,932、実施例5)および米国特許仮出願シリアル番号60/721,054(実施例28)に説明される、野生型切断半ドメイン(Fok I)の部位特異的変異誘発による、任意の適切な方法を使用して調製され得る。
【0083】
C.ゼブラフィッシュにおける標的切断のさらなる方法
ゼブラフィッシュ遺伝子に標的部位を有する任意のヌクレアーゼが、本明細書に説明される方法で使用され得る。例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼは、非常に長い認識配列を有し、いくつかは、一度ヒトサイズのゲノムに、統計学的基礎にしたがって存在するようである。独特の、またはパラロガスゼブラフィッシュ遺伝子に標的部位を有する任意のこのようなヌクレアーゼは、ゼブラフィッシュ遺伝子、または複数のパラログの標的切断に対して、ジンクフィンガーヌクレアーゼの代わりに、またはそれに追加して使用され得る。
【0084】
例示的なホーミングエンドヌクレアーゼは、I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIIIを含む。これらの認識配列は周知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfort et al.(1997)Nucleic Acids Res. 25:3379-3388;Dujon et al.(1989)Gene82:115-118;Perler et al.(1994)Nucleic Acids Res.22,1125-1127;Jasin(1996)Trends Genet. 12:224-228;Gimble et al.(1996)J.Mol.Biol.263:163-180;Argast et al. (1998)J.Mol.Biol.280:345-353およびNew England Biolabsカタログも参照のこと。
【0085】
大半のホーミングエンドヌクレアーゼの切断特異性は、それらの認識部位に対して絶対ではないが、該部位は、哺乳類サイズのゲノム毎の単一切断事象がホーミングエンドヌクレアーゼの認識部位の単一コピーを含む細胞でホーミングエンドヌクレアーゼを発現することにより取得され得るのに十分な長さである。ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼの特異性が、非天然標的部位に結合するために設計され得ることも報告されている。例えば、Chevalier et al.(2002) Molec.Cell 10:895−905;Epinat et al. (2003)Nucleic Acids Res. 31:2952−2962;Ashworth et al.(2006)Nature 441:656−659;Paques et al.(2007)Current Gene Therapy7:49−66を参照のこと。
【0086】
送達
本明細書に説明されるZFNは、例えば、ZFN mRNAの注入を含む、任意の適切な手段により、標的ゼブラフィッシュ細胞に導入されてもよい。Hammerschmidt et al.(1999)Methods Cell Biol.59:87−115を参照のこと。
【0087】
例えば、開示の全ては、参照することによりその全体が援用される、米国特許第6,453,242号、第6,503,717号、第6,534,261号、第6,599,692号、第6,607,882号、第6,689,558号、第6,824,978号、第6,933,113号、第6,979,539号、第7,013,219号、および第7,163,824号で、ジンクフィンガーを含むタンパク質の送達方法が説明されている。
【0088】
本明細書に説明されるZFNも、1つもしくは複数のZFNをコードする配列を含むベクターを使用して送達されてもよい。プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、およびアデノ関連ウイルスベクター等を含む、任意のベクターシステムが使用されてもよいが、これらに限定されない。参照することによりその全体が援用される、米国特許第6,534,261号、第6,607,882号、第6,824,978号、第6,933,113号、第6,979,539号、第7,013,219号、および第7,163,824号も参照のこと。さらに、任意のこれらのベクターは、1つもしくは複数のZFNをコードする配列をふくんでもよいことは明らかであろう。したがって、2つ以上のZFN対が細胞に導入される時、該ZFNは、同一のベクターまたは異なるベクターにより持ち込んでもよい。複数のベクターが使用される時、各ベクターが、1つもしくは複数のZFNをコードする配列を含んでもよい。
【0089】
従来のウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子転移方法は、ゼブラフィッシュ細胞に設計されたZFPをコードする核酸を導入するために使用され得る。このような方法も、生体外でゼブラフィッシュ細胞にZFPをコードする核酸を投与するために使用され得る。特定の実施形態において、ZFPをコードする核酸は、生体内または生体外使用で投与される。
【0090】
非ウイルスベクター送達システムは、電気穿孔、リポフェクション、微量注入、微粒子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン、または脂質、抱合体、裸DNA、人工ビリオン、および薬剤強化されたDNAの取り込みを含む。例えば、Sonitron2000system(Rich−Mar)を使用するソノポレーションも核酸の送達に使用され得る。ウイルスベクター送達システムは、細胞への送達後にエピソームまたは組み込まれたゲノムのいずれかを有するDNAおよびRNAウイルスを含む。さらなる例示的核酸送達システムは、Amaxa Biosystems(Cologne, Germany)、Maxcyte,Inc.(Rockville, Maryland)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston, MA) およびCopernicus Therapeutics Inc,(米国特許第6008336号を参照)により提供されるものを含む。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、米国特許第4,946,787号、および米国特許第4,897,355号に説明されており、リポフェクション試薬も商業的に販売されている(例えば、Transfectam(商標登録)およびLipofectin(商標登録))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適する陽イオンおよび中性脂質は、Felgnerの国際公開第WO91/17424号、第WO91/16024号のものを含む。細胞(生体外投与)または標的組織(生体内投与)に送達され得る。免疫脂質複合体等の標的リポソームを含む脂質:核酸複合体は、当該分野に精通した者によく理解される(例えば、Crystal,Science 270:404−410(1995);Blaese et al.,Cancer Gene Ther.2:291−297(1995);Behr et al.,Bioconjugate Chem.5:382−389(1994);Remy et al.,Bioconjugate Chem.5:647−654(1994);Gao et al.,Gene Therapy2:710−722(1995);Ahmad et al.,Cancer Res.52:4817−4820(1992)、米国特許第4,186,183号、第4,217,344,号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、および第4,946,787号を参照のこと)。
【0091】
上述の通り、本開示の方法および組成物は、任意の種類のゼブラフィッシュ細胞に使用され得る。ゼブラフィッシュ細胞の子孫、変異体、および誘導体も使用され得る。
【0092】
用途
開示される方法および組成物は、任意のゼブラフィッシュの一つまたは複数の遺伝子のゲノム編集に使用され得る。特定の用途において、本方法および組成物は、例えば、ゼブラフィッシュ遺伝子のパラログ等のゼブラフィッシュのゲノム配列の不活性化に使用され得る。他の用途において、本方法および組成物は、未編集遺伝子と比較して、異なる発現を有する新規対立遺伝子形態の遺伝子の生成を含むランダム変異の生成を可能にするが、それがさらに動物モデルの産出を可能にする。別の用途において、本方法および組成物は、新規対立遺伝子形態のこれらの遺伝子を保有する動物の同定および選択を可能にする遺伝子の定義された位置で、ランダム変異を作製するために使用され得る。他の用途において、本方法および組成物は、外因性(ドナー)配列のゼブラフィッシュゲノムの任意の選択された領域への標的組み込みを可能にする。「組み込み」は、(例えば、宿主細胞のゲノムへの)物理的挿入、および、さらに、核酸複製プロセスを介してドナー配列の宿主細胞ゲノムへのコピーによる組み込みの両方を意味する。ゼブラフィッシュ遺伝子のゲノム編集(例えば、不活性化、組み込みおよび/または標的またはランダム変異)は、例えば、単一切断事象により、切断後の非相同末端結合により、切断後の相同性指向性修復メカニズムにより、切断後のドナー配列の物理的組み込みにより、2つの部位での切断後に2つの切断部位間の配列を削除するような結合により、ミスセンスまたはナンセンスコドンのコード領域への標的組み換えにより、遺伝子または制御領域を破壊するように不適切な配列(つまり、「スタッファー」配列)の遺伝子またはその制御領域への標的組み換えにより、または転写のミススプライシングを引き起こすためにスプライス受容配列のイントロンへの組み換えを標的にすることにより、達成され得る米国特許公開第20030232410号、第20050208489号、第20050026157号、第20050064474号、第20060188987号、第20060063231号、および国際公開第WO07/014275号を参照にし、本開示は、全ての目的のために参照することによりその全体が援用される。
【0093】
ゼブラフィッシュのZFN介在ゲノム編集のための様々な用途がある。例えば、本明細書に開示される方法および組成物は、ヒト疾患のゼブラフィッシュモデルの産生を可能にする。
【実施例】
【0094】
実施例1:ZFNは、ゴールデン/slc24a5(gol)遺伝子座で標的破壊を誘発する
ゴールデン/slc24a5(gol)、または以後ゴールデン遺伝子座、での様々な異なる位置を標的とするZFNは、Urnov et al. (2005) Nature 435(7042):646−651で説明されるように設計され、本質的にプラスミドに組み込まれた。ZFN対は、「Rapid in vivo Identification of Biologically Active Nucleases」という表題の米国特許シリアル第60/995,566号に説明される通り、イーストベースの染色体システムにおける活性に対して選別された。
【0095】
代表的なゴールデンジンクフィンガー設計の認識へリックスを以下の表1に示す。
【表1】

【0096】
ゴールデンジンクフィンガー設計の標的部位を以下の表2に示す。
【表2】

【0097】
Hammerschmidt et al.(1999)Methods Cell Biol.59:87−115に説明される注入により、活性ゴールデン標的ZFN mRNAをゼブラフィッシュ胚に導入し、胚をそれらの色素沈着のために評価した。結果を表3、および図1および2に示す。
【表3】

【0098】
さらに、図3に示す通り、配列解析が様々なZFN処置された胚に実施され、ZFN対がゴールデン遺伝子座で、欠失および挿入変異を誘発したことを示した。
【0099】
二本鎖切断(DSB)がZFN対により誘発されたゴールデン遺伝子座のコドンも決定されて、それをゴールデン開放解読枠(ORF)での同族アミノ酸番号を参照することにより、以下の表Aに示す。
【表4】

【0100】
実施例2:ZFNは、尾なし遺伝子座で標的破壊を誘発する
尾なし/ブラキュリ(ntl)遺伝子座の様々な異なる位置を標的とするZFNは、Urnov et al.(2005)Nature 435(7042):646−651.に説明されるように設計され、基本的にプラスミドに組み込まれた。ZFN対は、「Rapid in vivo Identification of Biologically Active Nucleases」という表題の米国特許シリアル第60/995,566号に説明される通り、イーストベースの染色体システムにおける活性について選別された。
【0101】
代表的な尾なしジンクフィンガー設計の認識へリックスを以下の表4に示す。
【表5】

【0102】
尾なしジンクフィンガー設計の標的部位を以下の表5に示す。
【表6】

【0103】
Hammerschmidt et al.(1999)Methods Cell Biol.59:87−115に説明される注入により、活性尾なし標的ZFN mRNAを野生型とntlb195ヘテロ接合ゼブラフィッシュとの間の交配から得られた1細胞ゼブラフィッシュ胚に導入した。次いで、注入された胚は、ntl表現型のために評価した。16から27%の注入された胚は、ヌル表現型(図4B)を模倣するか、または低形質対立遺伝子ntlb487(表6、図5)に特有である重度の低い表現型のいずれかのntl様表現型(図4D)を表した。配列決定を、ZFN注入された胚のDSB部位周囲の領域で実施し、標的遺伝子座で広範囲の欠失および挿入が観察された(図6)。
【表7】

【0104】
さらに、上述のように、尾なし標的ZFNをコードするmRNAを野生型胚に注入した。図7Aに示す通り、野生型胚へのntl標的ZFNの注入は、ntl表現型を表す胚をもたらした。表7は、DSB部位を取り囲む300bp領域の配列決定の結果を示し、2つの代表的な胚のそれぞれが、それぞれ、60から70%の破壊されたntl対立遺伝子を保有したことを示す(図7Bも参照のこと)。
【0105】
さらに、図7Cに示す通り、図8Aに示すような成魚尾なしフィッシュから得た少量の後方組織サンプルから調製されたDNAの配列解析は、小さな欠失および挿入を示した。ZFN切断部位を取り囲むntl遺伝子座を増幅し、配列決定した。全ての場合において、ntl 変異体保有アンプリコンは、全体の顕著なフラクション(サンプル1;5/25(20%)ntl保有染色分体、2つの異なる対立遺伝子、サンプル2;3/30(10%)ntl保有染色分体、1対立遺伝子、サンプル3;8/29(28%)ntl保有染色分体、4つの異なる対立遺伝子)を表す。
【0106】
二本鎖切断(DSB)がZFN対により誘発されたntl遺伝子座におけるコドンも、決定して、それをntl開放解読枠(ORF)における同族アミノ酸番号を参照することにより、以下の表Bに示す。
【表8】

【0107】
さらに、これらの注入からの表現型的に野生型胚を育成した時、いくつかの稚魚および成魚は、後方の尾の短縮を有した(図8A)。単一の野生型ntl対立遺伝子が、正常な表現型に十分であることを考えれば、これらのデータは、これらのZFNが標的遺伝子の遺伝子座の2つの対立遺伝子破壊を誘発する能力を実証する。
【表9】

【0108】
これらの結果は、ゼブラフィッシュゲノムにおける関心遺伝子で切断を標的とするZFNを使用したゼブラフィッシュ変異体の急速な生成を示し、切断部位で、NHEJのエラープローンプロセスを通した不正DNA修復が、機能的に有害な変異を生じ、ゼブラフィッシュ尾なし遺伝子に向けられたZFNが、発生初期の両方の染色分体に機能欠損変異を誘発することを実証する。
【0109】
実施例3:ZFNは、生殖系列においてntl対立遺伝子で変異を誘発する
ZFNが生殖系列で変異を効率的に誘発することを実証するために、尾なし標的で高忠実度の偏性ヘテロダイマーZFNを注入された野生型胚を成熟期まで育成し、選別した。ZFNを注入された雌の卵子をntlb195対立遺伝子に対してヘテロ接合の雄の精子で生体外で受精した。
【0110】
7匹の雌が分析され、そのうちの4匹が、本相補交差(表8)により測定される1から13%の間の範囲の頻度で、ntl子孫(表8、図8B)を産生した。遺伝子破壊を保有する配偶子の頻度を測定するために、4匹のファウンダー母によって子孫(野生型およびntlの両方)に提供された染色分体に遺伝子型決定を行なった。生殖系列は、5から28%の範囲の頻度で変異を保有した(表8)。直接配列決定は、これらの予想値を確証し、3匹のファウンダーが少なくとも2つの新規対立遺伝子を保有し、1匹のファウンダーが少なくとも1つの対立遺伝子を保有したことを明らかにした(図8C)。
【表10】

【0111】
これらの結果は、ZFNが関心遺伝子座で遺伝的変異対立遺伝子を作製するのに効果的に使用され得ることを確証する。
【0112】
本明細書に記載される全ての特許、特許出願、および出版物は、参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0113】
本開示は、理解を明確にする目的で、図示および実施例により多少詳細に提供したが、様々な変更および修正が本開示の精神および範囲から逸脱することなく実行され得ることが当業者には明らかになるであろう。したがって、前述の説明および実施例は、制限するものとして解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼブラフィッシュ細胞における1つもしくは複数のパラロガスまたはオルソロガス遺伝子配列を切断する方法であって、
ゼブラフィッシュゲノムの標的部位に結合する1つもしくは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼを、前記1つもしくは複数のパラロガスもしくはオルソロガス遺伝子配列を切断するような条件下で、前記ゼブラフィッシュ細胞に導入するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記遺伝子配列を切断するために第1および第2のフィンガーヌクレアーゼが使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記切断ドメインが、IIS型エンドヌクレアーゼからのドメインを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記IIS型エンドヌクレアーゼが、FokIである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つもしくは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼが、前記ゼブラフィッシュゲノムのコード領域で切断する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記1つもしくは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼが、前記ゼブラフィッシュゲノムの非コード領域で切断する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記1つもしくは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼが、前記1つもしくは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼをコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドとして、前記ゼブラフィッシュ細胞に導入される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチドが、RNAである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ゼブラフィッシュ細胞のゲノムに外因性配列を導入する方法であって、
請求項1から8のいずれかに記載の方法に従って、前記ゼブラフィッシュ細胞の前記ゲノムの1つもしくは複数のパラロガス遺伝子を切断するステップと、
前記細胞を外因性ポリヌクレオチドと接触させるステップであって、前記パラロガス遺伝子の切断が、相同組み換えによる前記ゼブラフィッシュゲノムへの外因性配列の組込みを刺激するようにする、ステップと、を含む、方法。
【請求項10】
ゼブラフィッシュ細胞のゲノムにおける1つもしくは複数の遺伝子配列の修飾方法であって、
1つもしくは複数の遺伝子配列を含むゼブラフィッシュ細胞を提供するステップと、
請求項2から8のいずれかに記載の方法に従って前記ゼブラフィッシュ細胞のゲノムを切断するステップであって、前記第1のジンクフィンガーヌクレアーゼが、第1の切断部位で切断し、前記第2のジンクフィンガーヌクレアーゼが、第2の切断部位で切断し、前記遺伝子配列は、前記第1の切断部位と前記第2の切断部位との間に位置し、さらに、前記第1および第2の切断部位の切断が、非相同末端結合による前記遺伝子配列の修飾をもたらす、ステップと、を含む、方法。
【請求項11】
前記非相同末端結合が、前記第1の切断部位と前記第2の切断部位との間に欠失をもたらす、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記非相同末端結合が、前記第1の切断部位と前記第2の切断部位との間に挿入をもたらす、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
新規対立遺伝子形態の1つもしくは複数の選択された遺伝子を保有する、稚魚および成魚ゼブラフィッシュの生成方法であって、
請求項10から12のいずれかに記載の方法に従って、ゼブラフィッシュ胚の細胞を修飾するステップと、
前記ゼブラフィッシュ胚を幼魚または成魚へ発達させるステップと、
前記選択された新規対立遺伝子形態の遺伝子を保有する幼魚または成魚ゼブラフィッシュを選択するステップと、を含む、方法。
【請求項14】
ゼブラフィッシュの生殖系列の1つもしくは複数の標的遺伝子を破壊するための方法であって、
請求項2から8のいずれかに記載の方法に従って、ゼブラフィッシュ胚の1つもしくは複数の細胞のゲノムにおいて1つもしくは複数の遺伝子配列を修飾するステップと、
前記ゼブラフィッシュ胚を成熟期に到達させるステップと、
を含み、前記修飾された遺伝子配列が、前記性的に成熟したゼブラフィッシュの配偶子の少なくとも一部に存在する、方法。
【請求項15】
1つもしくは複数の関心のゼブラフィッシュ遺伝子座における、1つもしくは複数の遺伝的変異対立遺伝子の作製方法であって、
請求項10から12のいずれかに記載の方法に従って、ゼブラフィッシュ胚の1つもしくは複数の細胞のゲノムにおいて1つもしくは複数の遺伝子座を修飾するステップと、
前記ゼブラフィッシュ胚を成熟期まで育成するステップと、
前記性的に成熟したゼブラフィッシュに子孫を生産させるステップと、
を含み、前記子孫の一部が、前記変位対立遺伝子を含む、方法。
【請求項16】
ジンクフィンガーヌクレアーゼであって、
少なくとも4つのジンクフィンガードメインを含むジンクフィンガータンパク質であって、表1および表4の行に記載される認識ヘリックスを含む、ジンクフィンガータンパク質と、
切断ドメインと、を含む、ジンクフィンガーヌクレアーゼ。
【請求項17】
請求項16に従って、ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド。
【請求項18】
請求項16に記載の1つもしくは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼを含む、ゼブラフィッシュ細胞。
【請求項19】
請求項16または17に記載の1つもしくは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼおよび/または1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含む、ゼブラフィッシュ細胞。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2010−539931(P2010−539931A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526946(P2010−526946)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/011136
【国際公開番号】WO2009/042186
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(508241200)サンガモ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (28)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】