説明

ジ(アミノメチル)置換芳香族化合物の高選択的な製造方法

【課題】高選択的にジ(アミノメチル)置換芳香族化合物を製造する新規の方法を提供する。
【解決手段】1段目の反応領域で触媒としてPd触媒を用い芳香族ジニトリルを水素化し目的生成物の中間体であるシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物を製造し、その後2段目の反応領域で触媒としてNi触媒若しくはCo触媒を用いシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物を水素化することにより目的ジ(アミノメチル)置換芳香族化合物が高選択的に得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香族ジニトリルを水素化することによりジ(アミノメチル)置換芳香族化合物を製造する製法に関する。ジ(アミノメチル)置換芳香族化合物は、硬化剤、合成樹脂、イソシアネート等の製造原料として有用である。
【背景技術】
【0002】
芳香族ジニトリルの水素化には、種々の金属を用いた触媒系での製造方法が提案されている。例えば、パラジウム触媒を使用しイソフタロニトリルまたはテレフタロニトリルを液体アンモニアおよび無機アルカリの共存下水素化反応を行うことを特徴とする3−シアノベンジルアミンまたは4−シアノベンジルアミンの製造法が提案されている(特許文献1参照。)。また、ニッケルおよび/またはコバルトを含有するラネー触媒を用いて芳香族ジニトリルの一方のニトリル基を水素化し、芳香族シアノメチルアミン(シアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物)を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)。これらの文献には、何れも芳香族シアノメチルアミンの製造法について記載されているが、それに対応するジアミン(ジ(アミノメチル)置換芳香族化合物)の製法については記載されていない。
【0003】
一方、元素周期律表第IVb、VIb、VIIbおよびVIII族の元素並びに亜鉛から選択されるドーピング元素を含むラネーニッケル並びにIVb、VIb、VIIbおよびVIII族の元素並びに亜鉛から選択されるドーピング元素を含むラネーコバルトから選択された触媒を用い脂肪族ジニトリルを対応する脂肪族アミノニトリルへ半水素化する方法が開示されている(特許文献4参照。)。さらに、不均一系で水素化触媒の存在下において脂肪族ニトリルを部分的に対応する脂肪族アミノニトリルに連続的に水素化する反応方法について提案されている(特許文献5参照。)。これらの文献には、脂肪族ニトリルを脂肪族アミノニトリルに半水素化する方法については記載されているが、芳香族ジニトリルを芳香族シアノメチルアミンに半水素化する方法ついては記載されておらず、さらに芳香族シアノメチルアミンの対応するジアミン(ジ(アミノメチル)置換芳香族化合物)への水素化の方法についても記載されていない
【0004】
さらに、芳香族ジニトリルから対応するジアミン(ジ(アミノメチル)芳香族化合物)への1段での水素化については、NiまたはCo系触媒を用いた種々の方法が提案されている。例えば、フタロニトリルを微量の水を含むアルコール中で苛性アルカリを添加したラネーニッケルまたはラネーコバルトを用いて水素化し目的のキシリレンジアミンを生成する方法が提案されている(特許文献6参照。)。また、助触媒成分として酸化マグネシウムを含む担体付きニッケル触媒を用いフタロニトリルからキシリレンジアミンを製造する方法が提案されている(特許文献7参照。)。しかしながら、これらの方法では、副生成物の生成により十分な目的ジアミンの収率が得られていない。
【0005】
【特許文献1】特公昭51−24494号公報
【特許文献2】特開平9−40630号公報
【特許文献3】特開平10−204048号公報
【特許文献4】特公平10−502671号公報
【特許文献5】特表2001−524464号公報
【特許文献6】特公昭38−8719号公報
【特許文献7】特公昭48−22593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高選択的にジ(アミノメチル)置換芳香族化合物を製造する新規の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を鋭意検討した結果、1段目の反応領域で触媒としてPd触媒を用い芳香族ジニトリルを水素化し目的生成物の中間体であるシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物を製造し、その後2段目の反応領域で触媒としてNi触媒若しくはCo触媒を用いシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物を水素化することにより目的ジ(アミノメチル)置換芳香族化合物が高選択的に得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、1段目の反応領域でPdを含有する触媒Xの存在下、下記式(II):
CN−R−CN (II)
(式中、Rは二価の芳香族基を表し、水素化反応に関与しない置換基で置換されていてもよい。)
で表される芳香族ジニトリルの一方のニトリル基を水素化して、下記式(III):
NHCH−R−CN (III)
(式中、Rは前記と同様。)
で表されるシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物とし、2段目の反応領域でNiおよび/またはCoを含有する触媒Yの存在下、1段目で得られたシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物を水素化して下記式(I):
NHCH−R−CHNH (I)
(式中、Rは前記と同様。)
で表されるジ(アミノメチル)置換芳香族化合物とすることを特徴とするジ(アミノメチル)置換芳香族化合物の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1段目の反応領域で触媒としてPdを含有する触媒を用い芳香族ジニトリルを水素化し目的生成物の中間体であるシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物を製造し、その後2段目の反応領域で触媒としてNiおよび/またはCoを含有する触媒を用いシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物を水素化しジ(アミノメチル)置換芳香族化合物にすることにより、高選択率かつ十分な収率でジ(アミノメチル)置換芳香族化合物の製造をすることができる。また、副生成物の生成が極めて少ないため触媒寿命を長期化することができる。従って、本発明の製造法を用いることにより、極めて経済的に芳香族ジニトリルからジ(アミノメチル)置換芳香族化合物を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明で用いられる原料の芳香族ジニトリルは、下記式(II):
CN−R−CN (II)
で表される。Rは二価の芳香族基、例えばフェニレン基、ナフチレン基等を表す。芳香族基上の二個のニトリル基の置換位置は特に制限されず、例えば、芳香族基がフェニレン基である場合には、o−、m−、p−位のいずれでもよい。芳香族基は、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシル基などの水素化反応に関与しない置換基で置換されていてもよい。通常、芳香族ジニトリルの水素化反応においては、芳香環上の置換基によって反応性が大きく変化するが、本発明の方法においては、これらの置換基を有するものにおいても、効率よく反応が進行する。好ましい芳香族ジニトリルは、フタロニトリル、イソフタロニトリル、テレフタロニトリル、1,5−ジシアノナフタレンである。
【0010】
本発明において、水素化に用いられる原料水素は特に精製されたものを使用しなくても良く、工業用グレードでよい。反応領域での水素分圧は、1段目、2段目とも2.0〜20.0MPaの範囲が好ましい。水素分圧が上記範囲内であると、ジアミンの収率が十分であり、圧力の高い耐圧反応器が不要となりコストを低減することができるので好ましい。
【0011】
本発明において、1段目の反応領域では、Pdを含有する触媒Xの存在下、芳香族ジニトリルを水素化して下記式(III):
NHCH−R−CN (III)
(式中、Rは前記と同様。)
で表されるシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物とする。水素化反応は液相にて行うことが好ましく、用いられる溶媒としては、反応中水素により還元を受けない不活性有機溶媒であれば制限はない。例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶媒、メタキシレン、メシチレン、プソイドキュメン等の炭化水素系溶媒、ジオキサン等のエーテル系溶媒などを用いることができる。不活性有機溶媒は、芳香族ジニトリル1重量部に対して1.0〜99.0重量部用いるのが好ましい。また、副生物の生成を抑制するために、溶媒として液体アンモニアを単独で、あるいは上記不活性有機溶媒と混合させて用いることができ、この場合の液体アンモニアの使用量は芳香族ジニトリルに対して0.5〜99重量比の範囲が好ましい。前記範囲であると、副生物が生成しシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物の収率が低下するのが避けられ、また、空時収率が低下するのが避けられるので好ましい。また、溶媒と液体アンモニアを混合して用いる場合の混合比は、液体アンモニアに対して溶媒が0.01〜99.0重量比の範囲が好ましい。
【0012】
本発明において1段目の反応は、回分式および流通式の何れの方法を用いることもできる。反応温度は、20〜150℃の範囲が好ましい。この範囲であると、原料芳香族ジニトリルの転化率が良く、高沸物の生成が抑制されるので、目的生成物の収率が増大し好ましい。
原料芳香族ジニトリルと触媒Xとの接触時間は、原料の種類、原料、溶媒および水素の仕込み組成、反応温度および反応圧力によって異なるが、通常0.01〜10.0時間の範囲である。
【0013】
本発明において芳香族ジニトリルから対応するシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物への1段目の水素化の触媒Xは、公知のPdを含有する触媒を用いて行うことができる。一般には、PdをAl、SiO、けい藻土、SiO−Al、ZrOに担持した触媒、好ましくはAlに担持した触媒が用いられる。Pdの担持量は、触媒Xに対して0.05〜10重量%が好ましい。触媒の使用量は、原料芳香族ジニトリルに対して、Pdとして、0.0001〜0.1重量倍の範囲が好ましい。固定床流通式反応器の場合には、単位Pd重量あたりの芳香族ジニトリル流量が1.0〜2000hr−1となる範囲が好ましい。触媒量がこの範囲であると、水素化が効率よく進み、触媒費の増大が避けられる。
【0014】
本発明において、2段目の反応領域では、Niおよび/またはCoを含有する触媒Yの存在下、前記1段目の反応で生成したシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物を水素化して下記式(I):
NHCH−R−CHNH (I)
(式中、Rは前記と同様。)
で表されるジ(アミノメチル)置換芳香族化合物とする。水素化反応は液相にて行うことが好ましく、用いられる溶媒としては、反応中水素により還元を受けない不活性有機溶媒であれば制限はない。例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶媒、メタキシレン、メシチレン、プソイドキュメン等の炭化水素系溶媒、ジオキサン等のエーテル系溶媒などを用いることができる。不活性有機溶媒は、シアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物1重量部に対して1.0〜99.0重量部用いるのが好ましい。また、副生物の生成を抑制するために、溶媒として液体アンモニアを単独で、あるいは上記不活性有機溶媒と混合させて用いることができ、この場合の液体アンモニアの使用量はシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物に対して0.5〜99重量比の範囲が好ましい。前記範囲であると、副生物が生成し目的ジ(アミノメチル)置換芳香族化合物の収率が低下するのが避けられ、また、空時収率が低下するのが避けられるので好ましい。また、溶媒と液体アンモニアを混合して用いる場合の混合比は、液体アンモニアに対して溶媒が0.01〜99.0重量比の範囲が好ましい。
【0015】
本発明において2段目の反応は、回分式および流通式の何れの方法を用いることもできる。反応温度は、20〜150℃の範囲が好ましい。この範囲であると、シアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物の転化率が良く、高沸物の生成が抑制されるので、目的生成物の収率が増大し好ましい。
シアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物と触媒との接触時間は、原料の種類、原料、溶媒および水素の仕込み組成、反応温度および反応圧力によって異なるが、通常0.01〜10.0時間の範囲である。
【0016】
本発明においてシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物から対応するジ(アミノメチル)置換芳香族化合物への2段目の水素化の触媒Yとしては、公知のNiおよび/またはCoを含有する触媒を用いることができる。一般には、Niおよび/またはCoをAl、SiO、けい藻土、SiO−Al、ZrOに沈殿法で担持した触媒、ラネーニッケル若しくはラネーコバルトが好適に用いられる。触媒金属(Niおよび/またはCo)の担持量は、触媒Yに対して5.0〜90.0重量%が好ましい。触媒の使用量は、原料シアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物に対する触媒金属(Niおよび/またはCo)として、0.1〜2.0重量倍の範囲が好ましい。固定床流通式反応器の場合には、単位触媒金属重量あたりのシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物流量が0.05〜5.0hr−1となる範囲が好ましい。触媒量がこの範囲であると、水素化が効率よく進み、触媒費の増大が避けられる。
【0017】
1段目の反応で得られたシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物を、2段目の反応に供する際には、1段目に固定床反応器を用いた場合以外は、反応液と触媒を分離する必要がある。また、1段目と2段目で同じ溶媒を用いると、1段目の反応液をそのまま2段目の反応に供することができ、効率的である。
2段目の反応で得られたジ(アミノメチル)置換芳香族化合物は、公知の方法を用いて溶媒、触媒と分離、回収される。例えば、反応系から気体成分と液成分を分離後、液成分から蒸留して回収される。
【0018】
従来の方法によるジ(アミノメチル)置換芳香族化合物の製造法は、反応中にアミン類の高沸物が副生して触媒に付着し徐々に差圧が上昇し、触媒の寿命が短くなるため、高沸物を水素化分解して触媒を再生する必要がある。これに対して、本発明の製造方法では副生成物の生成が極めて少ないため触媒寿命を長期化することができる。
【実施例】
【0019】
次に実施例及び比較例により、本発明を更に具体的に説明する。但し本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
【0020】
(Ni触媒調製)
硝酸ニッケル6水和物Ni(NO・6HO 305.0gおよび硝酸コバルト6水和物Co(NO・6HO 13.6gを840gの40℃の純水に溶解し、混合金属塩水溶液を調合した。また、炭酸水素アンモニウムNHHCO 190.6gを純水2.4kgに溶解し、よく撹拌しながら、40℃に昇温した。この炭酸水素アンモニウム水溶液に40℃に保持された混合金属塩水溶液をよく撹拌しながら加えて、炭酸ニッケルの沈殿スラリーを調製した。このスラリーを80℃まで昇温し、30分同温度で保持した。その後、このスラリーを40℃まで冷却し、同温度で保持した。また、ZrOとして25重量%含有する硝酸ジルコニウム水溶液118.4gを300gの純水に混合し、40℃で保持した。さらに、炭酸水素アンモニウムNHHCO 42.8gを純水530gに溶解し40℃に保持した。この硝酸ジルコニウム水溶液および炭酸水素アンモニウム水溶液を炭酸ニッケルの沈殿スラリーに同時に注加し、炭酸ジルコニウムを沈着した。こうして得られた、沈殿スラリーを40℃で保持したまま、30分撹拌した。この沈殿スラリーを濾過洗浄し、沈殿物を得た。この沈殿物を110℃で1晩乾燥し、380℃18時間空気雰囲気下で焼成した。この焼成粉に、3重量%グラファイトを混合し、3.0mmφ×2.5mmに打錠成形した。この成型品を水素気流中400℃で還元した。これを触媒(A)とする。尚、触媒(A)のニッケル担持量は65重量%である。
【0021】
<実施例1>
(イソフタロニトリルの水素化)
100mlのオートクレーブにイソフタロニトリル3.2g、メシチレン10.4g、液体アンモニア10.0gおよびエヌ・イーケムキャット(株)製5重量%Pd−アルミナペレット2.0gを仕込み、水素で4.9MPaに加圧した。このオートクレーブを50℃で圧力の変化が認められなくなるまで振とうした。この反応生成液を分析したところ、イソフタロニトリル転化率は、95.7mol%、3−シアノベンジルアミン収率は87.3mol%、メタキシリレンジアミン収率は7.7mol%であった。さらにこの反応液と触媒を分離し、100mlのオートクレーブに反応液と液体アンモニア10.0gおよび日揮化学(株)製Ni−けい藻土ペレット(Ni担持量:46重量%)2.0gを仕込み、水素で4.9MPaに加圧した。このオートクレーブを50℃で圧力の変化が認められなくなるまで振とうした。この反応生成液を分析したところ、イソフタロニトリル転化率は、100mol%、3−シアノベンジルアミン収率は0.2mol%、メタキシリレンジアミン収率は89.4mol%であった。
【0022】
<実施例2>
(テレフタロニトリルの水素化)
100mlのオートクレーブにテレフタロニトリル3.2g、メシチレン10.4g、液体アンモニア10.0gおよびエヌ・イーケムキャット(株)製5重量%Pd−アルミナペレット2.0gを仕込み、水素で4.9MPaに加圧した。このオートクレーブを50℃で圧力の変化が認められなくなるまで振とうした。この反応生成液を分析したところ、テレフタロニトリル転化率は、94.8mol%、4−シアノベンジルアミン収率は88.8mol%、パラキシリレンジアミン収率は5.8mol%であった。さらにこの反応液と触媒を分離し、100mlのオートクレーブに反応液と液体アンモニア10.0gおよび日揮化学(株)製Ni−けい藻土ペレット(Ni担持量:46重量%)2.0gを仕込み、水素で4.9MPaに加圧した。このオートクレーブを50℃で圧力の変化が認められなくなるまで振とうした。この反応生成液を分析したところ、テレフタロニトリル転化率は、100mol%、4−シアノベンジルアミン収率は0.5mol%、パラキシリレンジアミン収率は87.7mol%であった。
【0023】
<実施例3>
(1,5−ジシアノナフタレンの水素化)
100mlのオートクレーブに1,5−ジシアノナフタレン3.2g、メシチレン10.4g、液体アンモニア10.0gおよびエヌ・イーケムキャット(株)製5重量%Pd−アルミナペレット2.0gを仕込み、水素で4.9MPaに加圧した。このオートクレーブを50℃で圧力の変化が認められなくなるまで振とうした。この反応生成液を分析したところ、1,5−ジニトリルナフタレン転化率は、92.6mol%、1−アミノメチル−5−シアノナフタレン収率は85.4mol%、1,5−ジアミノメチルナフタレン収率は4.0mol%であった。さらにこの反応液と触媒を分離し、100mlのオートクレーブに反応液と液体アンモニア10.0gおよび日揮化学(株)製Ni−けい藻土ペレット(Ni担持量:46重量%)2.0gを仕込み、水素で4.9MPaに加圧した。このオートクレーブを50℃で圧力の変化が認められなくなるまで振とうした。この反応生成液を分析したところ、1,5−ジシアノナフタレン転化率は、100mol%、1−アミノメチル−5−シアノナフタレン収率は0.0mol%、1,5−ジアミノメチルナフタレン収率は88.0mol%であった。
【0024】
<実施例4>
(イソフタロニトリルの水素化)
100mlのオートクレーブにイソフタロニトリル3.2g、メシチレン10.4g、液体アンモニア10.0gおよびエヌ・イーケムキャット(株)製5重量%Pd−アルミナペレット2.0gを仕込み、水素で4.9MPaに加圧した。このオートクレーブを50℃で圧力の変化が認められなくなるまで振とうした。この反応生成液を分析したところ、イソフタロニトリル転化率は、95.7mol%、3−シアノベンジルアミン収率は87.3mol%、メタキシリレンジアミン収率は7.7mol%であった。さらにこの反応液と触媒を分離し、100mlのオートクレーブに反応液と液体アンモニア10.0gおよび触媒(A)2.0gを仕込み、水素で4.9MPaに加圧した。このオートクレーブを50℃で圧力の変化が認められなくなるまで振とうした。この反応生成液を分析したところ、イソフタロニトリル転化率は、100mol%、3−シアノベンジルアミン収率は0.0mol%、メタキシリレンジアミン収率は91.1mol%であった。
【0025】
<実施例5>
(テレフタロニトリルの水素化)
100mlのオートクレーブにテレフタロニトリル3.2g、メシチレン10.4g、液体アンモニア10.0gおよびエヌ・イーケムキャット(株)製5重量%Pd−アルミナペレット2.0gを仕込み、水素で4.9MPaに加圧した。このオートクレーブを50℃で圧力の変化が認められなくなるまで振とうした。この反応生成液を分析したところ、テレフタロニトリル転化率は、94.8mol%、4−シアノベンジルアミン収率は88.8mol%、パラキシリレンジアミン収率は5.8mol%であった。さらにこの反応液と触媒を分離し、100mlのオートクレーブに反応液と液体アンモニア10.0gおよび触媒(A)2.0gを仕込み、水素で4.9MPaに加圧した。このオートクレーブを50℃で圧力の変化が認められなくなるまで振とうした。この反応生成液を分析したところ、テレフタロニトリル転化率は、100mol%、4−シアノベンジルアミン収率は0.2mol%、パラキシリレンジアミン収率は92.1mol%であった。
【0026】
<実施例6>
(1,5−ジシアノナフタレンの水素化)
100mlのオートクレーブに1,5−ジシアノナフタレン3.2g、メシチレン10.4g、液体アンモニア10.0gおよびエヌ・イーケムキャット(株)製5重量%Pd−アルミナペレット2.0gを仕込み、水素で4.9MPaに加圧した。このオートクレーブを50℃で圧力の変化が認められなくなるまで振とうした。この反応生成液を分析したところ、1,5−ジシアノナフタレン転化率は、92.6mol%、1−アミノメチル−5−シアノナフタレン収率は85.4mol%、1,5−ジアミノメチルナフタレン収率は4.0mol%であった。さらにこの反応液と触媒を分離し、100mlのオートクレーブに反応液と液体アンモニア10.0gおよび触媒(A)2.0gを仕込み、水素で4.9MPaに加圧した。このオートクレーブを50℃で圧力の変化が認められなくなるまで振とうした。この反応生成液を分析したところ、1,5−ジシアノナフタレン転化率は、100mol%、1−アミノメチル−5−シアノナフタレン収率は1.5mol%、1,5−ジアミノメチルナフタレン収率は87.1mol%であった。
【0027】
<比較例1>
(イソフタロニトリルの水素化)
100mlのオートクレーブにイソフタロニトリル3.2g、メシチレン10.4g、液体アンモニア10.0gおよび触媒(A)2.0gを仕込み、水素で4.9MPaに加圧した。このオートクレーブを50℃で圧力の変化が認められなくなるまで振とうした。この反応生成液を分析したところ、イソフタロニトリル転化率は、95.5mol%、メタキシリレンジアミン収率は49.4mol%であった。
【0028】
<比較例2>
(テレフタロニトリルの水素化)
100mlのオートクレーブにテレフタロニトリル3.2g、メシチレン10.4g、液体アンモニア10.0gおよび触媒(A)2.0gを仕込み、水素で4.9MPaに加圧した。このオートクレーブを50℃で圧力の変化が認められなくなるまで振とうした。この反応生成液を分析したところ、テレフタロニトリル転化率は、94.4mol%、パラキシリレンジアミン収率は35.6mol%であった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明により得られるジ(アミノメチル)置換芳香族化合物は、硬化剤、合成樹脂、イソシアネート等の製造原料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1段目の反応領域でPdを含有する触媒Xの存在下、下記式(II):
CN−R−CN (II)
(式中、Rは二価の芳香族基を表し、水素化反応に関与しない置換基で置換されていてもよい。)
で表される芳香族ジニトリルの一方のニトリル基を水素化して、下記式(III):
NHCH−R−CN (III)
(式中、Rは前記と同様。)
で表されるシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物とし、2段目の反応領域でNiおよび/またはCoを含有する触媒Yの存在下、1段目で得られたシアノ(アミノメチル)置換芳香族化合物を水素化して下記式(I):
NHCH−R−CHNH (I)
(式中、Rは前記と同様。)
で表されるジ(アミノメチル)置換芳香族化合物とすることを特徴とするジ(アミノメチル)置換芳香族化合物の製造方法。
【請求項2】
前記触媒Xが、0.05〜10重量%のPdを担体に担持した触媒である請求項1に記載のジ(アミノメチル)置換芳香族化合物の製造方法。
【請求項3】
前記触媒Xの担体がアルミナである請求項2に記載のジ(アミノメチル)置換芳香族化合物の製造方法。
【請求項4】
前記触媒Yが、沈殿法でNiおよび/またはCoを担体に担持した触媒である請求項1に記載のジ(アミノメチル)置換芳香族化合物の製造方法。
【請求項5】
前記触媒Yが、ラネーニッケル触媒若しくはラネーコバルト触媒である請求項1に記載のジ(アミノメチル)置換芳香族化合物の製造方法。

【公開番号】特開2004−269510(P2004−269510A)
【公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−31638(P2004−31638)
【出願日】平成16年2月9日(2004.2.9)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】