説明

スイッチアジャスタ

【課題】動作かんの取付高さが異なる転てつ機に対しても使用可能な互換性、汎用性を備えたスイッチアジャスタを提供する。
【解決手段】転てつ機の動作かん101に連結するジョー部410を形成する中継金具400およびロッド210と、密着力とストロークの設定を行なう一組のナットおよび腕金具とを備え、ロッド210の一端を動作かん101に中継金具400を介して連結し、中継金具400とロッド210との間には回り止め部材500を設け、ロッド210の他端をタイバーに腕金具を介して連結し、ロッド210を、一端部分の軸線中心と本体部分の軸線中心とが、鉛直面において所定間隔離隔するように屈曲形成し、屈曲部分を上側に位置させて連結した場合と、屈曲部分を下側に位置させて連結した場合とで、ロッド210の本体部分の軸線中心と動作かん101の軸線中心との間隔を、変更可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用転てつ装置におけるスイッチアジャスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
転てつ装置は、一般に、図6および図7に示すような構造になっている。すなわち、固定された基本レールRに対して密着かつ移動可能に設けられたトングレールTと、そのトングレールTと基本レールRとの密着状態を保持する鎖錠装置としての電気転てつ機100とから構成されている。
【0003】
電気転てつ機100は、一対の基本レールR,Rの外側の2本の枕木上、すなわち、軌間外に設置されるように構成されている。この電気転てつ機100は、交流モータMを駆動源とし、その交流モータMの駆動力を図示しない摩擦クラッチ、減速歯車及び転換ローラ付転換歯車の順に伝動し、その転換ローラにより動作かん101を移動するように構成されている。
【0004】
動作かん101は、この動作かん101に接続されている図示しないカムが転換ローラにより移動されて、基本レールRに対して直交する方向の直線運動が与えられるように構成されている。そして、この動作かん101に接続されるスイッチアジャスタ200、及びそのスイッチアジャスタ200の先端側に接続されるタイバー300を介して転換装置のトングレールTが転換されるとともに、その転換されたトングレールTの先端位置が正常な位置にあるか否かが照査され、正常な位置にある場合、動作かん101は、図示していないカムバー(ロックピース)で鎖錠されるように構成されている。
【0005】
上記した照査は、転換装置のトングレールTの先端部をフロントロッド104及び接続かん105を介して鎖錠かん106に伝え、その鎖錠かん106に設けられている図示しない切欠にロックピースを挿入できるか否かによって行われ、そのロックピースが切欠に挿入できれば、転換装置の先端位置が正常と判定されるように構成されている。
【0006】
転換装置の先端位置が正常と判定されたとき、動作かん101は、カムバーにより鎖錠され、また、鎖錠かん106もロックピースにより鎖錠されて、転換装置は、二重に鎖錠された状態、いわゆる間接二重鎖錠状態となる。このような転てつ装置の基本的な構成は、例えば、非特許文献1に記載されている。
【0007】
そして、このような転てつ装置におけるスイッチアジャスタ200は、トングレールTが基本レールRと密着するときの密着力を設定するとともに、トングレールTを転換するときのストローク(移動距離)を設定するため装置である。このスイッチアジャスタ200は、電気転てつ機100の動作かん101と、一対のトングレールT,Tを接続しているタイバー300とを、ロッド210および腕金具310並びに一対のナット(図6および図7では図示せず)によって接続してなり、ナットの締結量に応じてタイバー300を押す力を変化させて、トングレールTの密着力を調整している(例えば、特許文献1)。
【0008】
【特許文献1】特開2002−69902号公報
【非特許文献1】平成17年6月28日、社団法人日本鉄道電気技術協会発行、「鉄道技術者のための電気概論 信号シリーズ4 転てつ装置」、第7刷 第38〜47頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、鉄道輸送は、他の輸送手段の追従を許さない程の大量輸送が可能であって、きわめて効率的に、人および物資を目的地へ安全かつ迅速に輸送することができる。また、電気エネルギーによる鉄道輸送は、化石燃料が燃焼する際の有害な排気ガスや、地球温暖化に深刻な影響を与える二酸化炭素の排出が少ない。したがって、鉄道輸送は、いわゆるエコな交通手段であり、近年、益々注目されている。
【0010】
一方、鉄道輸送には、安全性を確保するために、様々な規格や法律等が存在している。すなわち、鉄道設備における諸装置は、厳密な規格或いは仕様書に基づいて設置されており、転てつ装置の一部を構成するスイッチアジャスタも例外ではない。そこで、スイッチアジャスタを構成するロッドは、規格或いは設置箇所に対応する専用品が用いられている。言い換えると、代用品或いは汎用品を用いることは、許されていないのが現状である。
【0011】
そこで、万が一のトラブルに備えて、ロッドの予備品を確保しておかなければならない。また、現場に予備品が無い場合には、予備の到着を待たなければならないので、復旧が遅れるという問題点があった。一方、メーカー側からみても、各規格に基づいて多数の品種を製造・確保しておかなければならないので、在庫管理等が繁雑であり、コストアップの一因ともなっていた。
【0012】
具体的には、例えば、図6に示す転てつ装置の一例と、図7に示す転てつ装置の一例とは、電気転てつ機100の型式が異なっている。すなわち、図6に示すものは、一般に、NS形(モータ)と呼ばれるものであって、普通ポイントや可動クロッシングに用いられる。また、図7に示すものは、耐水形(モータ)と呼ばれるものであり、浸水の恐れのある箇所に用いられている。
【0013】
ところで、電気転てつ機100は、両形式とも、基本レールRと同様に枕木上に設置されている。このため、動作かん101の高さ方向位置がタイバー300より高くなるので、動作かん101に連結するスイッチアジャスタロッド210(以下、単にロッド210という)を、図6(b)並びに図7(b)に示すように、基本レールRの下を潜らせ、高さ方向に折り曲げて動作かん101と連結する構造としている。また、動作かん101とロッド210との接続は、ジョーを介して接続している。
【0014】
このような動作かん101とスイッチアジャスタ200の接続構造では、動作かん101の軸線中心C1とロッド210の軸線中心C2の位置が高さ方向にずれている。なお、このずれ量、すなわち、動作かん101の軸線中心C1とロッド210の軸線中心C2との間隔Lを、オフセットということがある。
【0015】
そして、図6に示すNS形と、図7に示す耐水形とでは、設置構造の違いから、前記オフセットが異なっている。例えば、NS形では、前記オフセット、すなわち動作かん101の軸線中心C1とロッド210の軸線中心C2との間隔Lが、約90mmであるのに対して、耐水形では、動作かん101の軸線中心C1とロッド210の軸線中心C2との間隔Lが、約30mmになっている(図8参照)。
【0016】
したがって、NS形のロッド210を、耐水形に使用することはできないし、その逆も不可能であり、前記したように、互換性、或いは汎用性が全くないのが現状である。
【0017】
一方、電気転てつ機の設置位置が異なると、トングレール等と電気転てつ機との距離が変わる。このため、スイッチアジャスタのロッドやフロントロッドの接続かんの長さが変化する。そこで、ロッドや接続かんのねじ部のストロークでは対応しきれない場合に備えて、長さの異なる複数のロッドや接続かんを用意している。
【0018】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、動作かんの取付高さが異なる転てつ機に対しても使用可能な互換性、汎用性を備えたスイッチアジャスタを提供することを目的とする。また、転てつ機とトングレールとの距離が異なる場合でも、容易に対応可能なスイッチアジャスタを提供可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に係る発明は、鉄道用分岐器において、トングレールを基本レールに密着させる密着力を設定するとともに、トングレールを転換するときのストロークを設定するスイッチアジャスタであって、転てつ機の動作かんに連結するジョー部を形成する中継金具およびロッドと、密着力とストロークの設定を行なう一組のナットおよび腕金具と、を備え、前記ロッドの一端を、前記転てつ機の動作かんに、前記中継金具を介して連結し、前記ロッドの他端を、一対のトングレール間を接続するタイバーに、前記腕金具を介して連結し、前記ロッドを、一端部分の軸線中心と本体部分の軸線中心とが、鉛直面において所定間隔離隔するように屈曲形成し、前記ロッドを前記動作かんに前記中継金具を介して連結するとき、屈曲部分を上側に位置させて連結した場合と、屈曲部分を下側に位置させて連結した場合とで、前記ロッドの本体部分の軸線中心と前記動作かんの軸線中心との間隔を、変更可能にしたことを特徴とする。
【0020】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のスイッチアジャスタであって、前記中継金具と前記ロッドとの間に、回り止め機構を設けたことを特徴とする。
【0021】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のスイッチアジャスタであって、前記転てつ機の動作かんと前記タイバーとを接続するときに、前記中継金具と前記ロッドとの間に、前記回り止め機構と同様の回り止め機構を備える所定長の延長ロッドを介在させて接続し、前記動作かんと前記中継金具との接続点から、前記ロッドと前記腕金具との接続点までの距離を、調整可能にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、動作かんの取付高さが異なる転てつ機に対して、動作かんの軸線中心とロッドの軸線中心との間隔が適合するロッドが存在しない場合であっても、ロッドの上下位置を反転させることによって、動作かんの軸線中心とロッドの軸線中心との間隔を一致させて使用することができる。したがって、スイッチアジャスタに不都合が生じた場合に、迅速な復旧が可能になるし、多数の予備品を確保しておく必要がなくなる。
【0023】
しかも、転てつ機とトングレールとの距離が異なる場合には、延長ロッドを介在させることによって、容易に対応可能である。したがって、異なる長さのロッドを確保する必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の一実施例を図面を参照して説明する。図1は、本発明に係るスイッチアジャスタの正面図である。図2は、スイッチアジャスタの要部を示す正面図であり、(a)は第1の設置状態を示し、(b)は第2の設置状態を示す。図3は、スイッチアジャスタのロッドを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(b)におけるC−C線に沿った断面図である。図4は、スイッチアジャスタに用いる中継金具を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は(a)のD−D線に沿った断面図である。図5は、スイッチアジャスタに用いる回り止め部材を示し、(a)は正面図、(b)は(a)におけるB−B線に沿った断面図である。また、図6および図7は、転てつ装置の概略構成を示す図面であり、図6はNS形の電気転てつ機を用いた場合を、図7を耐水形の電気転てつ機を用いた場合を、それぞれ示している。図8は、NS形および耐水形の電気転てつ機に対応するスイッチアジャスタの説明図であり、(a)はNS形に用いる場合を、(b)は耐水形に用いる場合を、それぞれ示している。
【0025】
スイッチアジャスタ200は、前記したように、電気転てつ機100の動作かん101と、一対のトングレールT,Tに固定した転てつ棒(タイバー300)とを、ロッド210および腕金具310並びに一組のナット320、330によって接続してなり、ナット320、330の締結量に応じてタイバー300を押す力を変化させて、トングレールTの密着力を調整するための装置である。
【0026】
そこで、本発明におけるスイッチアジャスタ200は、電気転てつ機100の動作かん101に連結するロッド210および後述するジョー部を形成する中継金具400と、密着力とストロークの設定を行なう一組のナット320、330および腕金具310とを備えている。すなわち、スイッチアジャスタ200は、ロッド210の一端側を、後述する中継金具400を介して電気転てつ機100の動作かん101に連結し、ロッド210の他端を、腕金具310を介して前記タイバー300に連結している。
【0027】
先ず、タイバー300とロッド210との接続を、図8を参照して、簡単に説明する。一組のナット320、330は、調整ナット320と、筒ナット330とから形成されている。調整ナット320は、密着力を回転角度に応じて調整するためのナットであり、この調整ナット320の雌ねじ部と、ロッド210のタイバー側雄ねじ部211と、を螺合させてロッド210に装着してある。
【0028】
一方、前記調整ナット320と対をなすナットは、ロッド210のタイバー側雄ねじ部211が貫通する筒部を有する筒ナット330である。そして、この筒ナット330は、前記した調整ナット320と所望の間隔を開けて、ロッド210のタイバー側雄ねじ部211に装着してある。この筒ナット330は、一端に延びるスリーブ331を前記筒部として備え、このスリーブ331に回転自在に腕金具310が装着されている。また、腕金具310は連結部311を有し、この連結部311によって、当該腕金具310とトングレール間を結ぶタイバー300とが接続されるようになっている。そして、筒ナット330のスリーブ331と腕金具310とに対峙して、ロッド210のタイバー側雄ねじ部211に螺合する前記調整ナット320が設けられる。
【0029】
筒ナット330または調整ナット320が弛められたとき、スリーブ331に挿通された腕金具310はロッド210の軸方向に移動することが可能で、予め決められたトングレール行程を調整することができる。また、ロッド210には、筒ナット330および調整ナット320の緩みを防止するために、締付けナット332、322がそれぞれ設けられている。
【0030】
また、腕金具310の上面には、一方は筒ナット330にわたり、他方が調整ナット320にわたるように回り止めカバー340が装着されている。この回り止めカバー340は、ロッド210の雄ねじ部211上で同じ向きに揃えられた筒ナット330と調整ナット320とに掛かるように係合させ、振動などによって引き起こされる各ナット320、330の回転を止める。なお、この回り止めカバー340は、腕金具310に割ピンを通すピン312によって固定されている。
【0031】
さらに、腕金具310と組み合う接続板313が設けられる。腕金具310と接続板313とはそれぞれに穿たれる4個のボルト孔に挿通するボルトとそれに螺合するナット314とによって締付けられる。
【0032】
次に、電気転てつ機100の動作かん101と、トングレールTのタイバー300と、を接続するスイッチアジャスタ200のロッド210について、詳細に説明する。
【0033】
ロッド210は、例えば、図3に示すように、一端側が屈曲する金属製の棒材である。すなわち、ロッド210は、ほゞ水平方向に直線状に延在している本体部212と、この本体部212の一端から斜め上方へ延出する屈曲部213と、この屈曲部213の上端からほゞ水平方向へ延出し、雄ねじを形成した動作かん側雄ねじ部214と、前記本体部212の他端からほゞ水平方向に延出し、雄ねじを形成したタイバー側雄ねじ部211と、を備えている。
【0034】
そこで、このロッド210においては、ロッド210の一端部分である動作かん側雄ねじ部214の軸線中心C3と、本体部212の軸線中心C2とが、鉛直面において所定間隔離隔している。すなわち、屈曲部213の鉛直方向の長さ分、両軸線中心C2,C3が離れている。具体的には、屈曲部213は、本体部212の一端から約30度の角度で上方へ延出しており、動作かん側雄ねじ部214の軸線中心C3と、本体部212の軸線中心C2との間隔Pは、例えば約30mmである。なお、この屈曲による間隔P、言い換えると偏位Pは、約30mmに限るものではなく、適宜に設定することができる。また、屈曲部213の角度も、同様に適宜に設定可能である。
【0035】
また、動作かん側雄ねじ部214には、後述する回り止め機構を構成する係合溝215が設けてある。一方、タイバー側雄ねじ部211には、前記した筒ナット330、調整ナット320、および締付ナット332,322が螺合する。
【0036】
動作かん側雄ねじ部214には、動作かん101に接続するための中継金具400を装着する。この中継金具400は、例えば、図4に示すように正面図における形状がほゞL字状をなす部材であり、上面部分には、動作かん101を挿入可能な二股形状のジョー部410を備え、側面部分には、前記したロッド210の動作かん側雄ねじ部214を挿入する取付孔420を開設した取付部430を備えている。なお、ジョー部410には、ジョーピンを挿入するジョー孔411が設けてある。
【0037】
また、ジョー部410の軸線中心C1と、取付孔420の中心線C3との間隔Hは、例えば、約60mmに設定してある。なお、この間隔Hは、約60mmに限るものではなく、適宜に設定できる。
【0038】
取付部430の外端面には、後述する回り止め機構を構成する回り止め部材500が係止するための係止溝421が設けてある。この係止溝421は、図示の実施例によれば、取付孔420の上縁および下縁から、鉛直方向へ向けて穿設した上側係止溝421aおよび下側係止溝421bである。言い換えると、取付孔420は、鉛直方向において、一部が溝状に拡径していると言える。
【0039】
回り止め機構を構成する回り止め部材500は、例えば、図5に示すような、リング状、或いはワッシャー状の部材である。すなわち、座金部分510の中央に挿通孔520を備え、座金部分510の片面には係止突起530が突設してある。この係止突起530は角板状であって、内端(図示の状態では上端)が挿通孔520の内部に突出して内側突起531を形成するとともに、側方へ突出して側方突起532を形成している。
【0040】
そして、内側突起531および側方突起532が、前記したロッド210の係合溝215および中継金具400の係止溝421に係合することにより回り止め機構を構成する。すなわち、内側突起531がロッド210の係合溝215に嵌入する。また、側方突起532が、中継金具400の上側係止溝421aまたは下側係止溝421bに嵌入する。このため、ロッド210に対して中継金具400が回動することがなくなる。
【0041】
次に、前記したようなロッド210と中継金具400と回り止め部材500との組立方法を説明する。先ず、ロッド210を動作かん側雄ねじ部214が上側に位置するようにして、2個の六角ナット611,612を動作かん側雄ねじ部214に螺合させ、これらの六角ナット611,612を所望の位置に配置する。なお、先に螺合させた六角ナット611は、弛み止めナットとなる。
【0042】
ついで、回り止め部材500を、動作かん側雄ねじ部214に装着する。このとき、動作かん側雄ねじ部214の係合溝215に、回り止め部材500の係止突起530の一部である内側突起531を嵌入させ、前記した六角ナット612の端面に当接させる。
【0043】
さらに、中継金具400の取付孔420に、動作かん側雄ねじ部214を挿入して、回り止め部材500の端面に中継金具400の取付部430を当接させる。このとき、回り止め部材500の側方突起532が、中継金具400の下側係止溝421bに嵌入する。また、回り止め部材500の内側突起531が、ロッド210の係合溝215に嵌入する。そこで、回り止め部材500を介して、中継金具400とロッド210との位置関係が確保される。
【0044】
そして、中継金具400の取付孔420から突出している動作かん側雄ねじ部214に、2個の六角ナット613,614を螺合させて締め込むことにより、中継金具400および回り止め部材500をロッド210に対して螺着する。すると、動作かん側雄ねじ部214を上側に位置させたロッド210に対して、中継金具400が固定される。このとき、ジョー部410の軸線中心C1、言い換えると動作かん101の軸線中心と、ロッド210の本体部212の軸線中心C2との間隔L、すなわちオフセットは、例えば、ロッド210の屈曲による偏位Pの約30mmに、中継金具400におけるジョー部410の軸線中心C1と取付孔420の軸線中心C3との間隔Hの約60mmが加わって、L=P+H=約90mmとなる。
【0045】
一方、図2(b)に示すように、動作かん側雄ねじ部214を下側にして中継金具400を取り付けることもできる。このときには、回り止め部材500を、180度回転させて、係止突起530を上側に位置させる。すると、回り止め部材500の側方突起532が、中継金具400の取付孔420の上側に延在している上側係止溝421aに嵌入する。また、回り止め部材500の内側突起531が、ロッド210の係合溝215に嵌入する。このため、中継金具400に対してロッド210が回動することがない。
【0046】
このように、動作かん側雄ねじ部214を下側にして中継金具400を取り付けた場合には、ジョー部410の軸線中心C1、すなわち動作かん101の軸線と、ロッド210の本体部212の軸線中心C2との間隔Lは、ロッド210の屈曲による偏位Pの約30mmと、中継金具400におけるジョー部410の軸線中心C1と取付孔420の軸線中心C3との間隔Hと、の差になる。したがって、動作かん101の軸線中心と、ロッド210の本体部212の軸線中心C2との間隔Lは、L=H−P=約30mmになる。すなわち、オフセットは、約30mmである。
【0047】
そこで、ロッド210の動作かん側雄ねじ部214が上側に位置するようにして中継金具400を取り付けたロッド210は、動作かん101の軸線中心と、ロッド210の本体部212の軸線中心C2との間隔L、すなわちオフセットが約90mmであるので、図6に示すNS形の電気転てつ機100に適用可能である。
【0048】
一方、ロッド210の動作かん側雄ねじ部214を下側に位置するようにして中継金具400を取り付けたロッド210は、動作かん101の軸線中心と、ロッド210の本体部212の軸線中心C2との間隔L、すなわちオフセットが約30mmであるので、図7に示す耐水形の電気転てつ機100に適用可能である。
【0049】
このように、屈曲したロッド210の上下位置を反転させて中継金具400を取り付ければ、ジョー部410の軸線中心と、ロッド210の本体部212の軸線中心との間隔を、変更することができる。このため、形式の異なる電気転てつ機100、すなわち、動作かん101とロッド210との接続高さが異なるスイッチアジャスタ200であっても、ロッド210の向きを変えることによって、ロッド210の接続高さを変更して、容易に適用することができる。したがって、緊急時に、適合するロッド210が無い場合に利用すれば、速やかな復旧が可能になる。なお、適合品を入手できた場合には、この適合品と交換するようにするとよい。
【0050】
一方、電気転てつ機の設置位置が異なると、トングレール等と電気転てつ機との距離が変わる。そこで、本発明に係るスイッチアジャスタ200では、延長ロッド700を用意して、電気転てつ機とトングレールとの間の距離の変化に対応可能としている。すなわち、電気転てつ機の動作かんと、トングレールのタイバーとを接続するときに、前記した回り止め機構を備える所定長の延長ロッド700を介在させて接続するのである。
【0051】
そこで、図9に示す実施例では、長さの異なる2種類の延長ロッド700を用意している。例えば、短い方の延長ロッド700を全長310mmに、長い方の延長ロッド700を全長560mmに設定してある。なお、以下、短い延長ロッド700を短ロッド700−S、長い延長ロッド700を長ロッド700−Lということがある。しかし、これらの短ロッド700−Sおよび長ロッド700−Lは、全長が異なるだけで、構成は同じであるので、延長ロッド700として共通に説明する。
【0052】
図9(a)は、短ロッド700−Sと、前記した回り止め機構を形成する回り止め部材500と、後述する固定調節ナット621,622との分解図である。図9(b)は、長ロッド700−Lの正面図、図9(c)は、延長ロッド700の後述する受入筒部720の外側端面を示す長ロッド700−Lの右側面図である。
【0053】
延長ロッド700は、全長を決定する本体部712の一端に、前記したロッド210の動作かん側雄ねじ部214と同様に構成した雄ねじ部714を備えている。すなわち、この雄ねじ部714には、回り止め機構の一部を構成する係合溝715が、軸線方向に設けてある。したがって、この雄ねじ部714には、前記した回り止め部材500を介在させて前記した中継金具400を取り付けることができ、このとき、中継金具400と延長ロッド700とを、所定の向きで固定可能である。
【0054】
また、延長ロッド700は、本体部712の他端に、内部に雌ねじ部721を有する受入筒部720を備えている。この受入筒部720の外形は、一般のナット類と同様に、六角形をなしており、スパナ等の工具を係止可能に構成してある。したがって、工具を用いて回したり、作業時に延長ロッド700が回転しないように、保持しておくことが可能である。
【0055】
さらに、受入筒部720の外端面には、前記した中継金具400の取付部430と同様に、鉛直方向に係止溝722が設けてある。この係止溝722は、ねじ孔の上縁および下縁から、鉛直方向へ向けて穿設した上側係止溝722aおよび下側係止溝722bである。そして、この係止溝722に、前記した回り止め部材500の係止突起530が嵌入可能である。
【0056】
受入筒部720に形成した雌ねじ部721には、前記したロッド210の動作かん側雄ねじ部214が螺合する。なお、螺進させるとき、前記回り止め部材500の係止突起530と、受入筒部720の係止溝722との嵌合を解いておく。また、ロッド210の動作かん側雄ねじ部214を、延長ロッド700の雌ねじ部721に螺合させる前に、一対のナット621,622を動作かん側雄ねじ部214に螺着しておく。この一対のナット621,622は、ロッド210と延長ロッド700とを、長さ調節可能に固定するためのものである。そこで、この一対のナット621,622を、以下、固定調節ナット621,622ということがある。
【0057】
次に、前記したような構成の延長ロッド700を用いて、スイッチアジャスタ200のロッドの長さを延長する方法を説明する。すなわち、電気転てつ機の動作かん101と中継金具400との接続点Q1から、ロッドと腕金具310との接続点Q2までの距離Kに適合するスイッチアジャスタ200のロッドを形成する仕方を説明する。
【0058】
単独のロッド210では長さが不足する場合には、ロッド210に延長ロッド700を継ぎ足す訳である。このとき、前記したように、先にロッド210の動作かん側雄ねじ部214に、固定調節ナット621,622を予め螺合させておく。なお、この固定調節ナット621,622の位置は、延長されたロッドの全長が概ね所望の長さになる位置とする。
【0059】
次に、回り止め部材500を、動作かん側雄ねじ部214に装着する。すなわち、回り止め部材500の内側突起531を、ロッド210の係合溝215に嵌合させた状態で、固定調節ナット621,622の位置までスライドさせて押し込む。
【0060】
そして、延長ロッド700の受入筒部720に設けた雌ねじ部721に、動作かん側雄ねじ部214を螺合させる。例えば、延長ロッド700側を回転させて、回り止め部材500の位置までねじ込むのである。回り止め部材500の側方突起532が、受入筒部720の側端面に形成した係止溝722に嵌入すると、延長ロッド700を回せなくなるので、ねじ込みを中止する。このとき、ロッド210の係合溝715と延長ロッド700の係合溝715の位置を揃えておく。すなわち、図示の実施例では、両者の係合溝215,715が、ともに下側になるように揃えている(図10(b),(c)参照)。
【0061】
延長ロッド700の係止溝722に、回り止め部材500の側方突起532が嵌入したら、固定調節ナット621,622を締め付けて、ロッド210と延長ロッド700とを固定する。すると、所望の全長を有するスイッチアジャスタ200のロッドを得ることができる。
【0062】
そこで、動作かん101と中継金具400との接続点Q1から、ロッド210と腕金具310との接続点Q2までの距離Kに応じて、図10(a)に示すように、単独のロッド210で接続したり、図10(b)に示すように、短ロッド700−Sを介在させて延長したロッドで接続したり、図10(c)に示すように、長ロッド700−Lを介在させて延長したロッドで接続すればよい。なお、使用する延長ロッド700の長さ、および数は、適宜変更可能である。
【0063】
この延長されたロッドは、元の単独のロッドと同様に、屈曲部分を備えたロッドとなる。したがって、前記した実施例と同様に、屈曲部分が上側、または下側になるように、反転させて中継金具400を取り付けることができる。なお、中継金具400の取付、固定等は、前記した実施例と同様なので、同じ機能を有する部材に、同一符号を付して説明を省略する。
【0064】
このような延長ロッド700を用いるスイッチアジャスタ200によれば、屈曲したロッドの上下位置を反転させて中継金具400を取り付ければ、ジョー部410の軸線中心と、ロッドの本体部の軸線中心との間隔を変更することができるばかりではなく、動作かん101と中継金具400との接続点Q1から、ロッドと腕金具310との接続点Q2までの距離Kに対応して全長を調整可能である。したがって、緊急時に、適合する長さのロッドが無い場合に利用すれば、速やかな復旧が可能になる。なお、適合品を入手できた場合には、この適合品と交換するようにするとよい。
【0065】
以上、本発明を図示の実施例について説明したが、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した構成を変更しない限り適宜に実施できる。例えば、動作かんの軸線中心と、ロッドの本体部の軸線中心との間隔や、中継金具のジョー部の軸線中心と取付孔の軸線中心との間隔は、適宜に設定できる。また、回り止め機構は、他の構成であってもよい。さらに、使用する延長ロッドの数や長さは、適宜設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係るスイッチアジャスタの正面図である。
【図2】図2は、スイッチアジャスタの要部を示す正面図であり、(a)は第1の設置状態を示し、(b)は第2の設置状態を示す。
【図3】スイッチアジャスタのロッドを示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(b)におけるC−C線に沿った断面図である。
【図4】スイッチアジャスタに用いる中継金具を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は(a)のD−D線に沿った断面図である。
【図5】スイッチアジャスタに用いる回り止め部材を示し、(a)は正面図、(b)は(a)におけるB−B線に沿った断面図である。
【図6】NS形の電気転てつ機を用いた転てつ装置の概略構成を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図7】耐水形の電気転てつ機を用いた転てつ装置の概略構成を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図8】(a)は、NS形の電気転てつ機に対応するスイッチアジャスタの説明図、(b)は、耐水形の電気転てつ機に対応するスイッチアジャスタの要部の説明図である。
【図9】(a)は、短い延長ロッドと、回り止め部材と、固定調節ナットの分解図、(b)は、長い延長ロッドの正面図、図9(c)は、延長ロッドの受入筒部の外側端面を示す右側面図である。
【図10】長さの異なるロッドを備えるスイッチアジャスタの正面図を示し、(a)はロッド単独の場合、(b)は短い延長ロッドを併用した場合、(c)は長い延長ロッドを併用した場合、をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0067】
100 転てつ機
101 動作かん
104 フロントロッド
105 接続かん
106 鎖錠かん
200 スイッチアジャスタ
210 ロッド
211 タイバー側雄ねじ部
212 本体部
213 屈曲部
214 動作かん側雄ねじ部
215 係合溝
300 タイバー
310 腕金具
311 連結部
312 ピン
313 接続板
314 ナット
320 調整ナット
322 締付ナット
330 筒ナット
331 スリーブ
332 締付ナット
340 回り止めカバー
400 中継金具
410 ジョー部
411 ジョー孔
420 取付孔
421 係止溝
430 取付部
500 回り止め部材
510 座金部分
520 挿通孔
530 係止突起
531 内側突起
532 側方突起
611 六角ナット
612 六角ナット
613 六角ナット
614 六角ナット
621 固定調節ナット
622 固定調節ナット
700 延長ロッド
712 本体部
714 雄ねじ部
715 係合溝
720 受入筒部
721 雌ねじ部
722 係止溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道用分岐器において、トングレールを基本レールに密着させる密着力を設定するとともに、トングレールを転換するときのストロークを設定するスイッチアジャスタであって、
転てつ機の動作かんに連結するジョー部を形成する中継金具およびロッドと、密着力とストロークの設定を行なう一組のナットおよび腕金具と、を備え、
前記ロッドの一端を、前記転てつ機の動作かんに、前記中継金具を介して連結し、
前記ロッドの他端を、一対のトングレール間を接続するタイバーに、前記腕金具を介して連結し、
前記ロッドを、一端部分の軸線中心と本体部分の軸線中心とが、鉛直面において所定間隔離隔するように屈曲形成し、
前記ロッドを前記動作かんに前記中継金具を介して連結するとき、屈曲部分を上側に位置させて連結した場合と、屈曲部分を下側に位置させて連結した場合とで、前記ロッドの本体部分の軸線中心と前記動作かんの軸線中心との間隔を、変更可能にしたことを特徴とするスイッチアジャスタ。
【請求項2】
前記中継金具と前記ロッドとの間に、回り止め機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載のスイッチアジャスタ。
【請求項3】
前記転てつ機の動作かんと前記タイバーとを接続するときに、前記中継金具と前記ロッドとの間に、前記回り止め機構と同様の回り止め機構を備える所定長の延長ロッドを介在させて接続し、
前記動作かんと前記中継金具との接続点から、前記ロッドと前記腕金具との接続点までの距離を、調整可能にしたことを特徴とする請求項2に記載のスイッチアジャスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−84373(P2010−84373A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253248(P2008−253248)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)
【出願人】(000159423)吉原鉄道工業株式会社 (36)
【Fターム(参考)】